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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】圧力検出装置および電子打楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20220405BHJP
   G10D 13/10 20200101ALI20220405BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G10H1/00 A
G10D13/10 160
G10H1/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017134945
(22)【出願日】2017-07-10
(65)【公開番号】P2019015923
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】田鍋 浩之
(72)【発明者】
【氏名】宗田 天志
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-134473(JP,A)
【文献】実開平04-135789(JP,U)
【文献】特開2012-190475(JP,A)
【文献】特開2011-209785(JP,A)
【文献】特開2013-058398(JP,A)
【文献】特開2017-117460(JP,A)
【文献】特開2001-242985(JP,A)
【文献】特開2011-090403(JP,A)
【文献】特開平07-302159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
G10D 13/10
G06F 3/02-3/0488
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも押圧力が加わる接触面積に対応した出力を発生する感圧部と、
操作面を有し、前記操作面に押圧力が加えられた場合に、前記操作面に対向する対向面が前記感圧部に接触して弾性変形するように設けられた部材であって、前記操作面への押圧力に応じた弾性変形により前記対向面が前記感圧部に押圧力を加える接触面積が変化する弾性部材と、
を備え、
前記感圧部は、前記感圧部に対する単位面積当たりの押圧力と、前記感圧部に対して押圧力が加わる接触面積とに対応した出力を発生し、
前記感圧部と前記弾性部材とは、前記操作面への押圧力が大きくなるほど、前記感圧部に対する単位面積当たりの押圧力の変化に起因する出力の変化よりも、前記感圧部に対して押圧力が加わる接触面積の変化に起因する出力の変化の方が大きくなるように設けられている、
ことを特徴とする圧力検出装置。
【請求項2】
前記感圧部は、前記感圧部に対して押圧力が加わる接触面積の変化に対する出力の変化の割合が、前記感圧部に対して押圧力の加わる領域に応じて異なり、
前記感圧部と前記弾性部材とは、前記操作面への押圧力が大きくなるほど、前記感圧部に対して押圧力が加わる接触面積の変化に対する出力の変化の割合がより大きい領域に対して接触する面積が大きくなるように設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項3】
少なくとも押圧力が加わる接触面積に対応した出力を発生する感圧部と、
操作面を有し、前記操作面に押圧力が加えられた場合に、前記操作面に対向する対向面が前記感圧部に接触して弾性変形するように設けられた部材であって、前記操作面への押圧力に応じた弾性変形により前記対向面が前記感圧部に押圧力を加える接触面積が変化する弾性部材と、
を備え、
前記感圧部は、所定の電気抵抗を有する導電部材がシート表面に敷設され、押圧力が低い場合でも前記弾性部材と接触する部位における前記導電部材を敷設する密度よりも、押圧力が高くなった場合に接触面積の増加に伴い新たに接触するようになる部位における前記導電部材を敷設する密度の方が高くなっている、
ことを特徴とする圧力検出装置。
【請求項4】
前記感圧部は、前記導電部材としてカーボンが印刷されたカーボンシート又はカーボン印刷基板であり、前記カーボンを印刷する密度が、前記操作面の中心を含む領域に対応した中心部と、前記中心部の外側にあって前記操作面の外縁周囲を含む領域に対応した周辺部とで異なることを特徴とする請求項3に記載の圧力検出装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記操作面に押圧力が加えられていない場合に、裏面が非均一な形状を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の圧力検出装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記対向面の少なくとも一部が、前記感圧部との接触面に対して、斜めに傾斜または曲線を有していることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の圧力検出装置。
【請求項7】
前記弾性部材の前記対向面は、前記対向面の外縁周囲を所定の曲率で曲面に形成、または前記対向面に下方へ突出する所定曲率の底部曲面を設けるように形成、または前記対向面に所定曲率の包絡面を形成する複数の凸部を行列配置するように形成したことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の圧力検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の圧力検出装置と、
前記圧力検出装置が圧力検出に応じて出力した信号に基づいて打楽器音を発生する音源部と、
を具備することを特徴とする電子打楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子ドラムなどに用いられ、打撃操作(パッド操作)で生じる押圧力を検出する圧力検出装置および電子打楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のパッドを備え、これら各パッドを手で叩いたりスティックで叩いたりすることによってドラム音やパーカッション音等の各種打楽器の音を発音する電子打楽器が知られている。電子打楽器では、演奏者が手又はスティックでパッド面を叩く打撃操作(以下、パッド操作と称す)を検出するセンサの出力に基づき、そのパッド操作が為されたパッドの種類に対応した音色の打楽器音を発生するように構成されている。
【0003】
パッド操作を検出するセンサとして、例えば特許文献1には、弾性を有するパッド部材の裏面に導電性皮膜を形成した被打撃体と、絶縁基板の表面に互いに非導通な複数の導電領域を同心円状に形成したベース部材と、メッシュ状に開口を形成したシート又はネットからなるスペーサとを備え、上記被打撃体とベース部材とを上記スペーサを介して対向配置させ、パッド操作によって被打撃体の導電性皮膜が上記ベース部材における何れかの導電領域に接触導通することで当該パッド操作が為された打点位置を検出する技術が開示されている。
【0004】
加えて、電子打楽器に適用される圧力センサ(圧力検出装置)として、押圧力に応じて連続的に接触抵抗値が変化する感圧抵抗シートを用いたものも知られている。この種の圧力センサ(圧力検出装置)について図8を参照して説明する。図8(a)は、感圧抵抗シートを用いた圧力センサの構造例を示す断面図である。この図において、カーボン印刷基板20は、絶縁基板21上に感圧インクをスクリーン印刷したカーボンパターン層22を備える。
【0005】
下部電極として機能するカーボンパターン層22の上面側には、電気的に絶縁する不導体のスペーサ23を介してカーボンシート24が設けられる。カーボンシート24は、上部電極として機能する。パッド25は、例えば直方体(板状)の弾性樹脂材から形成され、その上面にパッド操作が為される打面Dを有し、当該打面Dに対向する裏面側がカーボンシート24上に載置される。なお、パッド25は、図示されていない部材によって上下方向へ摺動自在に保持される。
【0006】
上記構造によれば、パッド操作によりパッド25の打面Dに加えられる押圧力に応じて、上部電極となるカーボンシート24と、下部電極となるカーボンパターン層22との接触抵抗値が変化し、この接触抵抗値の変化を出力電圧として計測することで圧力検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-234400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図8(a)に図示した構造による圧力センサ(圧力検出装置)では、パッド操作によりパッド25の打面Dに加えられる押圧力に対応した上下電極間の密着度と、上下電極の接触面積とで接触抵抗値が決まる。つまり、こうした接触抵抗値の変化を出力電圧Vとして計測すると、当該出力電圧Vは単位面積当たりの押圧力(上下電極間の密着度)と上下電極の接触面積との特性で表される。
【0009】
例えば図8(b)に図示するように、パッド25の打面Dを比較的に弱い押圧力である押圧力0から押圧力F1の範囲内で押下すると、パッド25の裏面が上部電極(カーボンシート24)を推し込み、これにより撓んだ上部電極(カーボンシート24)と下部電極(カーボンパターン層22)との密着度(単位面積当たりの接触抵抗)が押圧力に応じて大きく変化する。
【0010】
さらに、図8(c)に図示するように、パッド25の打面Dを比較的に強い押圧力である押圧力F1から押圧力F2の範囲内で押下すると、パッド25の裏面が上部電極(カーボンシート24)を、図8(b)に示す状態から更に推し込んでいくが、既に密着度(単位面積当たりの接触抵抗)が増して飽和状態に近づいているため、押圧力に応じた密着度(単位面積当たりの接触抵抗)の変化は少なくなる。
【0011】
一方、接触面積については、パッド25の裏面は平面に形成されているので、図8(b)、(c)に図示する通り、押圧力の強弱に関係なく上部電極(カーボンシート24)と下部電極(カーボンパターン層22)との接触領域がほぼ同じ、つまり接触面積が一定になる。
【0012】
圧力センサ(圧力検出装置)の押圧力と出力電圧との関係については、押圧力の強弱に関係無く接触面積が一定であると、接触抵抗は密着度に依存して変化することになり、同図(d)に図示するように、上部電極(カーボンシート24)と下部電極(カーボンパターン層22)とが接触した途端に接触抵抗値が下がって出力電圧Vは急峻に立ち上がり、これ以後は押圧力Fに応じて上下電極間の密着度が増加することで低下する接触抵抗値に比例して出力電圧Vが穏やかに増加する特性となる。
【0013】
このような特性では、例えば同図(d)に図示するように、パッド25の打面Dを比較的に弱い押圧力である押圧力0(無反応領域を除く)から押圧力F1まで変化させた場合の出力電圧の変化である出力電圧0から出力電圧V1までの間では十分なダイナミックレンジを確保することができるが、パッド25の打面Dを比較的に強い押圧力である押圧力F1から押圧力F2まで変化させた場合の出力電圧の変化である出力電圧V1から出力電圧V2までの間では十分なダイナミックレンジを確保することができない。
【0014】
つまり、弱い押圧力の動作領域と強い押圧力の動作領域とでのダイナミックレンジのバランスが悪く、全体的なダイナミックレンジが十分に確保されていない。また、ダイナミックレンジのバランスが悪く、全体的に十分なダイナミックレンジを確保し得ない為に操作性(押圧力の分解能)も低下する、という問題もある。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ダイナミックレンジを改善して操作性の向上を図ることができる圧力検出装置および電子打楽器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施態様である圧力検出装置は、少なくとも押圧力が加わる接触面積に対応した出力を発生する感圧部と、操作面を有し、前記操作面に押圧力が加えられた場合に、前記操作面に対向する対向面が前記感圧部に接触して弾性変形するように設けられた部材であって、前記操作面への押圧力に応じた弾性変形により前記対向面が前記感圧部に押圧力を加える接触面積が変化する弾性部材と、を備え、前記感圧部は、前記感圧部に対する単位面積当たりの押圧力と、前記感圧部に対して押圧力が加わる接触面積とに対応した出力を発生し、前記感圧部と前記弾性部材とは、前記操作面への押圧力が大きくなるほど、前記感圧部に対する単位面積当たりの押圧力の変化に起因する出力の変化よりも、前記感圧部に対して押圧力が加わる接触面積の変化に起因する出力の変化の方が大きくなるように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ダイナミックレンジを改善して操作性の向上を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の一実施形態である電子打楽器100の構成を示すブロック図である。
図2図2(a)は圧力検出部10の構造を示す断面図、図2(b)はカーボンパターンの一例を示す図である。
図3図3は圧力検出部10の機能を説明するための図である。
図4図4は第1の変形例による圧力検出部10の構造を説明するための図である。
図5図5は第2の変形例による圧力検出部10の構造を説明するための図である。
図6図6は第3の変形例による圧力検出部10の構造を説明するための図である。
図7図7は不均一な密度分布による導電パターンの一例を示す図である。
図8図8は従来例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態について説明する。
[実施形態の構成]
図1は、本発明の実施の一形態による電子打楽器100の構成を示すブロック図である。図1において、圧力検出部10は、図8に図示した従来例と同様、押圧力に応じて連続的に接触抵抗値が変化する感圧抵抗シートを用いた方式により構成され、パッド操作で生じる押圧力に応じた電圧信号を発生する。本発明の要旨に係る圧力検出部10の構造については追って詳述する。
【0020】
ADC11は、圧力検出部10が発生する電圧信号をAD変換してパッドデータPDを出力する。CPU12は、操作部15から供給される各種スイッチイベントに基づき楽器各部の動作態様を設定する他、ADC11から出力されるパッドデータPDに応じて、発音指示および発音音量(ベロシティVel)を含むノートオンイベントおよび消音指示するノートオフイベントを生成して音源16に供給する。
【0021】
ROM13は、上記CPU12にロードされる各種制御プログラムを記憶する。RAM14は、上記CPU12のワークエリアとして用いられ、各種レジスタ・フラグデータを一時記憶する。操作部15は、例えば装置電源をパワーオン/パワーオフする電源スイッチ(不図示)や、発生する打楽器の音色を選択する音色選択スイッチ等を有し、各種スイッチ操作に応じたスイッチイベントを発生する。
【0022】
音源16は、公知の波形メモリ読み出し方式により構成され、時分割動作する複数の発音チャンネルを備える。この音源16は、各種打楽器音の波形データを記憶しており、CPU12から供給されるノートオンイベントに従って予め設定された打楽器音の波形データを読み出すと共に、読み出した打楽器音の波形データを、ノートオンイベントに含まれるベロシティVelに基づいて音量制御して得た再生波形データを出力する。サウンドシステム17は、音源16から出力される再生波形データをアナログ形式の再生波形信号にD/A変換し、当該再生波形信号から不要ノイズを除去する等のフィルタリングを施した後、信号増幅してスピーカから放音する。
【0023】
[圧力検出部10の構造]
次に、図2を参照して圧力検出部10の構造を説明する。図2(a)は、圧力検出部10の構造の一例を示す断面図である。この図において、カーボン印刷基板101は、絶縁基板101a上に感圧インクをスクリーン印刷したカーボンパターン層101bを備える。下部電極として機能するカーボンパターン層101bは、矩形状の導電パターンを複数備える。
【0024】
複数の導電パターンは、図2(b)に図示するように、中心部では導電パターンの間隔を広くしてパターン密度を「疎」とし、外縁(外周)部では導電パターンの間隔を狭めてパターン密度を「密」とした不均一な密度分布を有する。下部電極として機能するカーボンパターン層101bの上面側には、電気的に絶縁する不導体のスペーサ102を介してカーボンシート103が設けられる。カーボンシート103は、上部電極として機能する。
【0025】
パッド104は、例えばシリコン樹脂等の弾性変形する円板状の樹脂材から形成される。なお、パッド104の形状は、円板状に限らず直方体(板状)であっても構わない。パッド104の上面には、パッド操作が為される打面Dが設けられる。パッド104の打面Dに対向する裏面側は、外縁周囲を所定の曲率で曲面形成し、この曲面に連なる裏面側の平面がカーボンシート103上に載置される。なお、パッド104は、図示されていない部材によって上下方向へ摺動自在に保持される。
【0026】
このような構造によれば、例えば図3(a)に図示するように、パッド104の打面Dを弱い押圧力F1で押下した場合には、パッド104の裏面が上部電極(カーボンシート103)を押し込み、これにより導電パターンを敷設する密度が「疎」となる領域の下部電極(カーボンパターン層101b)に接触する。この場合、上部電極(カーボンシート103)は、パターン密度が「疎」となる領域のカーボンパターン層101bに接触する。
【0027】
これに対し、例えば同図(b)に図示するように、パッド104の打面Dを弱い押圧力F1より強い押圧力F2で押下した場合には、パッド104の裏面外縁に形成した曲面が弾性変形により撓む。つまり、強い押圧力F2によってパッド104の裏面外縁が潰れ、同図(a)に図示する接触領域よりも大きい接触領域になるので、パッド104の裏面の面積(接触面積)が増加することが判る。そして、パッド104の裏面の面積(接触面積)の増加に伴い上部電極(カーボンシート103)は、主にパターン密度が「密」となる領域のカーボンパターン層101bに接触することなる。
【0028】
したがって、同図(c)に図示するように、パッド104の打面Dを弱い押圧力F1で押下した場合(同図(a)参照)には、主にパターン密度が「疎」となる領域のカーボンパターン層101bに上部電極(カーボンシート103)が接触する為に比較的大きな接触抵抗値となり、この結果、出力電圧V1となる。
【0029】
一方、パッド104の打面Dを弱い押圧力F1より強い押圧力F2で押下した場合(同図(b)参照)には、パッド104の裏面外縁が弾性変形により潰れて接触面積が増大し、かつ主にパターン密度が「密」となる領域のカーボンパターン層101bに接触する為に小さな接触抵抗値となり、この結果、出力電圧V2となる。
【0030】
すなわち、押圧力が強くなるのに応じて、パッド104の裏面外縁に形成した曲面が潰れて上下電極の接触面積を増大させる一方、上部電極(カーボンシート103)が接触する下部電極(カーボンパターン層101b)のパターン密度が「疎」から「密」に変化する為、従来のように、両電極が接触した途端に接触抵抗値が下がって出力電圧が急峻に立ち上がる特性にはならず、パッド104の打面Dに加える押圧力にほぼ比例する形で両電極間の接触抵抗値が変化する結果、出力電圧Vが穏やかに増加する「押圧力-出力電圧」特性となる。
【0031】
こうした特性では、図3(c)に図示した通り、パッド104の打面Dを弱い押圧力F1で押下した場合の出力電圧V1と、強い押圧力F2で押下した場合の出力電圧V2との差分ΔV2が、従来例における差分ΔV1(図8(d)参照)よりも大きくなるので、ダイナミックレンジを改善して操作性に係る分解能を高めることが可能になる。
【0032】
[変形例]
次に、変形例について説明する。上述した実施形態では、パッド104の裏面外縁に形成した曲面が潰れて上下電極の接触面積を増大させながら、上部電極(カーボンシート103)が接触する下部電極(カーボンパターン層101b)のパターン密度を「疎」から「密」に変化させることによって、ダイナミックレンジを改善して操作性に係る分解能を高めるようにしたが、変形例では「押圧力-出力電圧」の特性を任意に変更して操作性の向上を図った圧力検出部10の構造について説明する。
【0033】
(1)第1変形例
図4は、第1変形例による圧力検出部10の構造を説明するための図である。なお、この図において、前述した実施形態と共通する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。図4(a)に図示する第1変形例が、図2(a)に図示した実施形態と相違する点は、パッド104の裏面に下方へ突出する所定曲率の底部曲面を設けると共に、下部電極(カーボンパターン層101b)に所定ピッチで疎パターンおよび密パターンを敷設した点にある。
【0034】
上記構造によれば、パッド104の打面Dを押圧すると、先ずパッド104の裏面に設けた底部曲面が上下電極を接触させる。この際、接触面積は小さく、かつ上部電極(カーボンシート103)が下部電極(カーボンパターン層101b)の疎パターンに接触するので、大きな接触抵抗値となる。そして、次第に押圧力を増すと、底部曲面が潰れてパッド104の裏面が平面になり、接触面積が増加して接触抵抗値が下がり始める。さらに押圧力を増せば、パッド104の裏面外縁に形成した曲面が潰れて上下電極の接触面積が最大になり、接触抵抗値も最少となる。
【0035】
この結果、「押圧力-出力電圧」の特性は、同図(b)に図示する通り、所定の押圧力が加えられる迄の間、出力電圧Vは徐々に増加(接触抵抗値が徐々に低下)し、所定以上の押下力になると、出力電圧Vが急激に増加(接触抵抗値が急激に減少)する特性になる。このような特性は、パッド104の打面Dを弱打した場合のパッド操作を演奏ミスとして排除したり、例えば和太鼓などの強打する打楽器音を入力する特性として有用になる。
【0036】
(2)第2変形例
図5は、第2変形例による圧力検出部10の構造を説明するための図である。なお、この図において、前述した実施形態と共通する要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。図5(a)に図示する第2変形例が、図2(a)に図示した実施形態と相違する点は、パッド104の裏面を所定曲率の曲面に形成した点にある。
【0037】
上記構造によれば、パッド104の打面Dを押圧すると、先ずパッド104の裏面の曲面が上下電極を接触させる。この際、接触面積は小さく、かつ上部電極(カーボンシート103)が下部電極(カーボンパターン層101b)の疎パターンに接触するので、大きな接触抵抗値となる。そして、次第に押圧力を増すと、曲面が潰れてパッド104の裏面が平面になり、接触面積が増加して接触抵抗値が下がり始める。さらに押圧力を増せば、パッド104の裏面の曲面が潰れて上下電極の接触面積が最大になり、接触抵抗値も最少となる。この結果、「押圧力-出力電圧」の特性は、同図(b)に図示する通り、押圧力Fに応じて出力電圧Vがほぼ線形に増加する特性になる。このような特性は、例えばパッド104の打面Dを弱打したり強打したりするスネアドラム音等を入力する特性として有用になる。
【0038】
(3)第3変形例
図6は、第3変形例による圧力検出部10の構造を説明するための図である。なお、この図において、前述した実施形態と共通する要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。図6(a)に図示する第3変形例が、図2(a)に図示した実施形態と相違する点は、パッド104の裏面に、図6(b)に図示するように、所定曲率の包絡面を形成する複数の凸部を行列配置した点にある。
【0039】
こうした構造によれば、前述した実施形態と同様、押圧力が強くなるのに応じて、パッド104の裏面に形成した複数の凸部が潰れて上下電極の接触面積を増大させる一方、上部電極(カーボンシート103)が接触する下部電極(カーボンパターン層101b)のパターン密度が「疎」から「密」に変化する為、従来のように、両電極が接触した途端に接触抵抗値が下がって出力電圧が急峻に立ち上がる特性にはならず、パッド104の打面Dに加える押圧力にほぼ比例する形で両電極間の接触抵抗値が変化する結果、出力電圧Vが穏やかに増加する「押圧力-出力電圧」特性となる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、パッド104の打面Dに加わる押圧力が強くなるのに連れて、パッド104の裏面外縁に形成した曲面が弾性変形により潰れることで上下電極の接触面積を増大させる一方、上部電極(カーボンシート103)が接触する下部電極(カーボンパターン層101b)のパターン密度が「疎」から「密」に変化する。
【0041】
すなわち、パッド104の打面Dに加わる押圧力と、この押圧力による弾性変形で変化するパッド104の裏面の面積とに対応した所定の特性に基づいて接触抵抗値を発生するので、従来のように、上部電極(カーボンシート103)と下部電極(カーボンパターン層101b)とが接触した途端に接触抵抗値が下がって出力電圧が急峻に立ち上がる特性にはならず、パッド104の打面Dに加える押圧力にほぼ比例する形で両電極間の接触抵抗値が変化する結果、ダイナミックレンジを改善して操作性に係る分解能を高めることが可能になる。
【0042】
また、パッド104の裏面に下方へ突出する所定曲率の底部曲面や、所定曲率の曲面に形成したり、所定曲率の包絡面を形成する複数の凸部を形成したりする一方、上部電極(カーボンシート103)が接触する下部電極(カーボンパターン層101b)のパターン密度を各様に変化させることで「押圧力-出力電圧」の特性を任意に変更して操作性の向上を図ることが可能になる。
【0043】
なお、上述した実施形態では、下部電極として機能するカーボンパターン層101bにおいて、「疎」の領域と「密」の領域とに区分して導電パターンを敷設する密度を不均一にしたが、これに限らず、例えば図7に図示する一例のように、導電パターンを敷設する密度を「疎」から「密」に連続的に変化させる態様としても構わない。
【0044】
以上、本発明の実施形態(含む変形例)について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0045】
以下では、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された各発明について付記する。
(付記)
[請求項1]
少なくとも押圧力が加わる接触面積に対応した出力を発生する感圧部と、
操作面を有し、前記操作面に押圧力が加えられた場合に、前記操作面に対向する対向面が前記感圧部に接触して弾性変形するように設けられた部材であって、前記操作面への押圧力に応じた弾性変形により前記対向面が前記感圧部に押圧力を加える接触面積が変化する弾性部材と、
を備えることを特徴とする圧力検出装置。
[請求項2]
前記弾性部材は、前記操作面に押圧力が加えられていない場合に、裏面が非均一な形状を有することを特徴とする請求項1記載の圧力検出装置。
[請求項3]
前記感圧部は、前記感圧部に対する単位面積当たりの押圧力と、前記感圧部に対して押圧力が加わる接触面積とに対応した出力を発生し、
前記感圧部と前記弾性部材とは、前記操作面への押圧力が大きくなるほど、前記感圧部に対する単位面積当たりの押圧力の変化に起因する出力の変化よりも、前記感圧部に対して押圧力が加わる接触面積の変化に起因する出力の変化の方が大きくなるように設けられている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の圧力検出装置。
[請求項4]
前記感圧部は、前記感圧部に対して押圧力が加わる接触面積の変化に対する出力の変化の割合が、前記感圧部に対して押圧力の加わる領域に応じて異なり、
前記感圧部と前記弾性部材とは、前記操作面への押圧力が大きくなるほど、前記感圧部に対して押圧力が加わる接触面積の変化に対する出力の変化の割合がより大きい領域に対して接触する面積が大きくなるように設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載の圧力検出装置。
[請求項5]
前記弾性部材は、前記対抗面の少なくとも一部が、前記感圧部との接触面に対して、斜めに傾斜または曲線を有していることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の圧力検出装置。
[請求項6]
前記感圧部は、所定の電気抵抗を有する導電部材がシート表面に敷設され、押圧力が低い場合でも前記弾性部材と接触する部位と、押圧力が高くなった場合に接触面積の増加に伴い新たに接触するようになる部位とで前記導電部材を敷設する密度が異なることを特徴とする請求項5記載の圧力検出装置。
[請求項7]
前記感圧部は、前記導電部材としてカーボンが印刷されたカーボンシート又はカーボン印刷基板であり、前記カーボンを印刷する密度が中心部と周辺部とで異なることを特徴とする請求項5または6記載の圧力検出装置。
[請求項8]
前記弾性部材の前記対向面は、前記対向面の外縁周囲を所定の曲率で曲面に形成、または前記対向面に下方へ突出する所定曲率の底部曲面を設けるように形成、または前記対向面に所定曲率の包絡面を形成する複数の凸部を行列配置するように形成したことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の圧力検出装置。
[請求項9]
請求項1乃至8の何れかに記載の圧力検出装置と、
前記圧力検出装置が圧力検出に応じて出力した信号に基づいて打楽器音を発生する音源部と、
を具備することを特徴とする電子打楽器。
【符号の説明】
【0046】
10 圧力検出部
101、20 カーボン印刷基板
101a、21 絶縁基板
101b、22 カーボンパターン層
102、23 スペーサ
103、24 カーボンシート
104、25 パッド
D 打面
11 ADC
12 CPU
13 ROM
14 RAM
15 操作部
16 音源
17 サウンドシステム
100 電子打楽器
図1
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図8