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特許7052235放射線画像撮影装置及び放射線画像撮影システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】放射線画像撮影装置及び放射線画像撮影システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
A61B6/00 360Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017135883
(22)【出願日】2017-07-12
(65)【公開番号】P2019017440
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝嶌 和彦
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-099901(JP,A)
【文献】特開2016-147044(JP,A)
【文献】国際公開第2007/141985(WO,A1)
【文献】特開2010-245862(JP,A)
【文献】特開2007-058857(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050606(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/049809(WO,A1)
【文献】特開2004-073341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を受けることで放射線の線量に応じた量の電荷を蓄積する複数の放射線検知素子が二次元状に配列された基板を有する放射線検知部と、
前記複数の放射線検知素子にそれぞれ蓄積された電荷量を信号値として読み出し、各信号値に基づいて第1画像データを生成する読み出し部と、
前記読み出し部が生成した前記第1画像データに対して所定の画像処理を実行し、少なくとも1種類の第2画像データを生成する画像処理手段と、
前記読み出し部が生成した前記第1画像データと前記画像処理手段が生成した前記第2画像データのうちの少なくとも一つを記憶する記憶手段と、
外部端末からの要求に応じて、前記第1画像データと前記第2画像データのうちの少なくとも一つを前記外部端末に送信する通信手段と、
前記外部端末の処理性能を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記所定の画像処理を自身で実行するか否かを選択する選択手段と、を備え
前記通信手段は、前記選択手段が前記所定の画像処理を自身で実行しないと選択した場合に、前記所定の画像処理を実行するための処理プログラムを前記外部端末に送信するようになっており、
前記処理プログラムに、ブラウザ終了又は撮影終了の操作に基づいて、前記外部端末に記憶されている画像データ又はパラメータを消去する処理が含まれていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記通信手段は、前記外部端末から送信された第2画像データを受信
前記記憶手段は、前記外部端末から受信した前記第2画像データを記憶することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
ウェブコンテンツを生成するコンテンツ生成手段を備え、
前記通信手段は、前記外部端末からの要求に応じて、前記コンテンツ生成手段が生成したウェブコンテンツを前記外部端末に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置と、
表示部を有するとともに、前記放射線画像撮影装置と通信する外部端末と、を備えることを特徴とする放射線画像撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置、及びこの装置を備える放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可搬型の放射線画像撮影システムが開発されている。この可搬型の放射線画像撮影システムは、パネル状の放射線画像撮影装置(FPD(Flat Panel Detector)とも称される)や、放射線照射装置が積載された回診車、ノート型PC等で構成された可搬型コンソール等で構成されるのが一般的である。このシステムを用いれば、ユーザー(放射線技師等)が撮影現場へ当該システムを持って出向き、その場で撮影・画像確認などの一連の操作を行うことができる。このため、移動することが困難な患者の放射線画像撮影を容易に行うことが可能となる。
【0003】
しかし、可搬型の放射線画像撮影システムは高価であるため、撮影数が少ない小病院等では、それが導入の障壁となっている。そこで、専用の可搬型コンソールの代わりに、スマートフォンやタブレット端末等の広く普及している携帯端末を用いることで、システムの製造コストを下げる試みがなされている。
しかし、携帯端末とコンソールとでは画像処理能力に差があることが多い。このため、例えば、コンソールと携帯端末の画像処理能力に応じて、放射線画像撮影装置が出力した画像データを携帯端末に保持させずにコンソールへ送信する通常の撮影モードと、画像データを携帯端末に記憶させ、携帯端末でプレビュー用の簡易な画像処理を行うメモリーモードを排他的に選択する、といった技術(特許文献1参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-147044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された放射線画像撮影システムでは、本格的な画像処理を施した処理済画像を表示することができるのはコンソールのみであり、携帯端末では画質の低いプレビュー用画像しか表示することができない。このため、コンソールから離れた場所にこのシステムを持ち運んで撮影・画像確認を行う場合、プレビュー用画像によって再撮影の判断を行うことになるので、可搬型のコンソールを備えた場合に比べて再撮影の判断精度が下がってしまうという問題がある。
また、特許文献1に記載された放射線画像撮影システムでは、処理済画像をコンソールでしか確認できないため、例えば手術室において、撮影したその場で医師が処理済画像を確認し、手術の可否や手術方針を決定する場合等に対応することができないという問題もある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、可搬型コンソールの代わりに携帯端末を用いる放射線画像撮影システムにおいて、診断に用いることのできる高画質の放射線画像を、ユーザーの要求に応じて携帯端末に迅速に表示できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る放射線画像撮影装置は、
放射線を受けることで放射線の線量に応じた量の電荷を蓄積する複数の放射線検知素子が二次元状に配列された基板を有する放射線検知部と、
前記複数の放射線検知素子にそれぞれ蓄積された電荷量を信号値として読み出し、各信号値に基づいて第1画像データを生成する読み出し部と、
前記読み出し部が生成した前記第1画像データに対して所定の画像処理を実行し、少なくとも1種類の第2画像データを生成する画像処理手段と、
前記読み出し部が生成した前記第1画像データと前記画像処理手段が生成した前記第2画像データのうちの少なくとも一つを記憶する記憶手段と、
外部端末からの要求に応じて、前記第1画像データと前記第2画像データのうちの少なくとも一つを前記外部端末に送信する通信手段と、
前記外部端末の処理性能を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記所定の画像処理を自身で実行するか否かを選択する選択手段と、を備え
前記通信手段は、前記選択手段が前記所定の画像処理を自身で実行しないと選択した場合に、前記所定の画像処理を実行するための処理プログラムを前記外部端末に送信するようになっており、
前記処理プログラムに、ブラウザ終了又は撮影終了の操作に基づいて、前記外部端末に記憶されている画像データ又はパラメータを消去する処理が含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、診断に用いることのできる高画質の放射線画像を、ユーザーの要求に応じて携帯端末に迅速に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る放射線画像撮影システムの概略構成図である。
図2図1の放射線画像撮影システムを構成する放射線画像撮影装置の構成を表すブロック図である。
図3図1の放射線画像撮影システムを構成する携帯端末の構成を表すブロック図である。
図4図3の携帯端末が有する表示部に表示されるメイン画面の一例である。
図5図1の放射線画像撮影システムの動作を表すラダーチャートである。
図6図1の放射線画像撮影システムの動作を表すラダーチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されるものではない。
【0011】
〔放射線画像撮影システムの構成〕
まず、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100の構成について説明する。図1は、本実施形態の放射線画像撮影システム100の概略構成図である。
本実施形態の放射線画像撮影システム100は、図1に示したように、放射線照射装置1や、放射線画像撮影装置2、携帯端末3、コンソール4等で構成されている。
また、放射線画像撮影システム100には、必要に応じて、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)等に接続される。
【0012】
放射線照射装置1は、ジェネレーター11、放射線源12、操作卓13等を備えている。
ジェネレーター11は、コンソール4によって設定された管電圧や管電流、照射時間(mAs値)等に応じた電圧を放射線源12に印加するようになっている。
放射線源12は、放射線を生成可能な図示しない回転陽極や回転陽極に電子ビームを照射するフィラメント等を有しており、ジェネレーター11から印加された電圧に応じた線量の放射線Xを発生させる。
操作卓13は、ユーザー(放射線技師等)が操作可能な曝射スイッチを備えている。そして、操作卓13は、曝射スイッチが操作されたことに基づいて、ジェネレーター11に対し放射線の照射開始(電圧の印加)等を指示するようになっている。
放射線照射装置1は、回診車に組み込まれて、移動可能に構成されることもある。
【0013】
放射線画像撮影装置2は、放射線照射装置1から放射線の照射を受けると、画像データを読み出すように構成されている。そして、読み出した画像データ(Raw画像データ、処理済画像データ等)を携帯端末3やコンソール4へ送信するようになっている。
放射線画像撮影装置2は、撮影台と一体化された専用機型のものでも、可搬型(カセッテ型)のものであっても差し支えないが、放射線照射装置1を移動可能に構成する場合には、可搬型とすることが好ましい。
なお、放射線画像撮影装置2の詳細については後述する。
【0014】
携帯端末3は、従来の可搬型コンソールに代わって放射線画像撮影装置2で撮影した放射線画像を確認するためのものであり、本発明における外部端末をなす。携帯端末3の構成は、特に限定されるものでは無いが、持ち運びができる市販のスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末で構成するのが好ましい。
携帯端末3は、一又は複数の放射線画像撮影装置2と通信ネットワークを介して通信可能に接続されており、放射線画像撮影装置2から送信されてきた画像データに基づく表示用画像を表示可能となっている。
なお、この携帯端末3の詳細については後述する。
【0015】
コンソール4は、可搬型のコンソールとは異なる据え置き型のものであり、放射線照射装置1や放射線画像撮影装置2等と有線又は無線で通信可能に接続されている。
そして、コンソール4は、外部装置(RIS等)からの撮影オーダーやユーザーによる操作に基づいて、放射線照射装置1や放射線画像撮影装置2の各種撮影条件(例えば、撮影する部位等の被写体に関する条件や、管電圧や管電流、照射時間等の放射線の照射に関する条件)を設定することが可能となっている。
【0016】
〔放射線画像撮影装置の構成〕
次に、上記放射線画像撮影システム100を構成する放射線画像撮影装置2の詳細について説明する。図2は、放射線画像撮影装置2のブロック図である。
放射線画像撮影装置2は、図2に示したように、制御部21や、放射線検知部22、読み出し部23、通信部24、記憶部25等を備えて構成されており、各部21~25はバス26によって接続されている。また、図示しない内蔵電源から各部21~25へ電力が供給されるようになっている。
【0017】
制御部21は、CPU、RAM等で放射線画像撮影装置2の各部の動作を統括的に制御するように構成されている。具体的には、電源スイッチが入れられたことや、放射線照射装置1やコンソール4から所定の制御信号を受信したこと、放射線照射装置1から放射線を受けたこと等に基づいて、記憶部25に記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該処理プログラムに従って各種処理を実行する。
【0018】
放射線検知部22は、放射線を受けることで放射線の線量に応じた量の電荷を蓄積する複数の放射線検知素子が二次元状に配列された基板を有するものであればよく、従来公知のものを用いることができる。
すなわち、放射線画像撮影装置2は、シンチレーターを備え、シンチレーターが放射線を受けることで発した光を検知するいわゆる間接型のものであってもよいし、シンチレーター等を介さずに放射線を直接検知するいわゆる直接型のものであってもよい。
また、放射線画像撮影装置2は、放射線照射装置1からの信号に基づいて電荷の蓄積を開始する連携方式のものであってもよいし、放射線照射装置1からの信号なしに自ら放射線の照射を検知して電荷の蓄積を開始する非連携方式のものであっても良い。
【0019】
読み出し部23は、複数の放射線検知素子にそれぞれ蓄積された電荷量を信号値として読み出し、各信号値に基づいてRaw画像データを生成することが可能に構成されていればよく、従来公知のものを用いることができる。
【0020】
通信部24は、ネットワークインターフェース等により構成され、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等の通信ネットワークを介して接続された外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0021】
記憶部25は、HDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリー等により構成され、各種画像処理プログラムを含む各種処理プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメーターやファイル等を記憶している。
また、記憶部25は、生成したRaw画像データや、携帯端末3から送信されてくる放射線画像の各種画像データを管理するためのデータベースを有している。各画像データには、例えば、患者名、検査種類、日付等の所定の付帯情報が付帯され、各画像データの識別を行うことが可能となっている。
【0022】
このように構成された放射線画像撮影装置2の制御部21は、記憶部25に記憶されている処理プログラムに従って以下のような動作をする。
例えば、制御部21は、必要に応じて(例えば、ユーザーによって、放射線画像撮影システム100が、放射線画像撮影装置2で画像処理を実行するよう設定された場合に)、読み出し部23が生成したRaw画像データに対して所定の画像処理を実行し、少なくとも1種類の処理済画像データを生成することが可能となっている。すなわち、制御部21は、本発明における画像処理手段をなす。
【0023】
ここで実行される画像処理は、医師が診断に用いる診断用画像を生成するための処理であり、散乱線低減処理、ノイズ低減処理、周波数処理、階調処理、空間変換(回転/反転)等の種類がある。なお、1の画像データに対して複数種類の画像処理を施す場合には、施した画像処理毎に処理済画像データ(例えばノイズ低減処理済画像データや、周波数処理済画像データ等)をそれぞれ生成する。また、処理済画像データに対して更に画像処理を施すことも可能である。
【0024】
また、制御部21は、必要に応じて、通信部24を用いて、各種画像処理プログラムを外部(携帯端末3)へ送信させることが可能となっている。
また、制御部21は、通信部24を用いて、各種画像データの少なくともいずれかを外部(携帯端末3)との間で送信させることが可能となっている。具体的には、携帯端末3からの要求に応じて、Raw画像データと処理済画像データのうちの少なくとも一つを携帯端末3に送信することが可能であるとともに、携帯端末3から受信した各種画像データ(処理済画像データや調整済画像データ)を受信することが可能となっている。すなわち、制御部21や通信部24は、本発明における通信手段をなす。
【0025】
なお、携帯端末3からの要求や、適用する画像処理、対象のデータの組合せ情報等に基づいて、送信する処理済画像データを選択するようにしてもよい。例えば、携帯端末3から、特定の画像処理を施した処理済画像データに補正処理を加える旨の要求がなされた場合に、特定の画像処理の一段階前の画像処理を施した処理済画像データを送信する、といったことである。
【0026】
また、ユーザーによる設定によってではなく、例えば、制御部21に、携帯端末3の処理性能を判定する機能を持たせ、その判定結果に基づいて、所定の画像処理を自身で実行するか否かを選択するようにしてもよい。具体的には、放射線画像撮影装置2と携帯端末3の処理性能を比較し、携帯端末3の処理性能の方が高いと判断した(所定の画像処理を自身で実行しないと選択した)場合に、画像処理プログラムを携帯端末3に送信するようにする。この場合、制御部21は、本発明における判定手段及び選択手段をなすこととなる。また、このような場合、自身に携帯端末3から測定結果を受信する機能を持たせるようにするとともに、送信する処理プログラムの中に、携帯端末3に自信の性能を測定させる処理を実行させるものを含ませるようにする。
【0027】
また、制御部21は、基本的には、画像処理と画像処理データの送信のうちのどちらか一方を行うが、これらの動作は上述したように必要に応じて行われるものであり、例えば、複数の画像処理のうち処理順序に依存性の無いものについては、放射線画像撮影装置2と携帯端末3とでそれぞれ分担して別々の画像処理を並行して実行することもできる。
【0028】
また、制御部21は、読み出し部23が生成したRaw画像データ、自らが画像処理を行うことで生成した処理済画像データ、通信部24が携帯端末3から受信した各種画像データ(処理済画像データや調整済画像データ)のうちの少なくとも一つを記憶部25に記憶させることが可能となっている。すなわち、制御部21や記憶部25は、本発明における記憶手段をなす。上述したように、1の画像データに対して複数種類の画像処理を施す場合には、複数種類の処理済画像データが生成されるので、これらがまとめて記憶されることとなる。
【0029】
なお、処理済画像データを記憶させる際には、処理を適用したパラメーターも併せて記憶させるようにしてもよい。こうすることで、同じ画像データに対して再度画像処理を行う必要が生じたときに、迅速に処理を行うことができる。
また、処理済画像データのうち、処理コストが小さいものについては、記憶部25に記憶せずに、処理に用いるパラメーターだけ記憶しておくようにしてもよい。これは、処理コストが大きいものと比べたときに、その都度画像処理を行ってもそれほど手間にならない場合があるためであり、このようにすれば、放射線画像撮影装置2の記憶部25の容量を節約することができる。
【0030】
〔携帯端末の構成〕
次に、上記放射線画像撮影システム100を構成する携帯端末3の詳細について説明する。図3は携帯端末3の構成を表すブロック図であり、図4は携帯端末が表示する画面の一例である。
携帯端末3は、図3に示したように、制御部31や、通信部32、記憶部33、表示部34、操作部35等を備えて構成されており、各部31~35はバス36により接続されている。また、図示しない内蔵電源から各部31~35へ電力が供給されるようになっている。
【0031】
制御部31は、CPU、RAM等で携帯端末3の各部の動作を統括的に制御するように構成されている。具体的には、操作部35から操作信号が入力されたことや放射線画像撮影装置2から各種信号やデータを受信したことに基づいて、記憶部33に記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該処理プログラムに従って各種処理を実行したり、表示部34の表示内容を制御したりする。
【0032】
通信部32は、ネットワークインターフェース等により構成され、LAN、WAN、インターネット等の通信ネットワークを介して接続された外部機器との間でデータの送受信を行う。なお、通信部32は、携帯電話回線等を用いて無線通信を行い、通信ネットワークを介して接続された外部機器との間でデータの送受信を行うものであってもよい。
【0033】
記憶部33は、HDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリー等により構成され、各種処理プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメーターやファイル等を記憶している。
また、記憶部25は、放射線画像撮影装置2から送信されてきた放射線画像の各種画像データ(処理済画像データ)や、各種画像処理プログラムを含む処理プログラムを記憶することが可能となっている。
【0034】
表示部34は、LCD等のモニターを備えて構成されており、制御部31から入力される表示信号の指示に従って各種画面を表示する。
【0035】
操作部35は、各種キーを備えたキーボードやマウス等のポインティングデバイス、あるいは表示部34に積層されたタッチパネルを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作、あるいはタッチパネルに対するタッチ操作の位置に応じて入力された操作信号を制御部31に出力する。
【0036】
このように構成された携帯端末3の制御部31は、放射線画像撮影装置2からRaw画像データや各種処理プログラムを受信することにより、以下のような動作をするようになる。
例えば、制御部31は、受信した画像処理プログラムを用いてRaw画像データ又は処理済みデータを画像処理することが可能となる。すなわち、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100は、放射線画像撮影装置2と携帯端末3のいずれでも画像処理を行うことが可能である。
なお、処理プログラムの中に、携帯端末3の処理性能を測定させる処理が含まれている場合には、自身の処理性能を測定し、その結果を放射線画像撮影装置2に送信するようにする。
【0037】
また、制御部31は、通信部32が受信したRaw画像データや処理済画像データ、及び自らが画像処理を行うことで生成した処理済画像データのうちの少なくとも一つを記憶部33に記憶することが可能となる。
【0038】
また、制御部31は、表示部34に、例えば図4に示したような、中央部に表示用画像Iの表示領域Rを有するメイン画面Mを表示させることが可能となる。
また、制御部31は、通信部32が受信したRaw画像データや処理済画像データ、又は自らが画像処理を行うことで生成した処理済画像データに基づく各種表示用画像I(Raw画像、処理済画像、プレビュー画像等)をメイン画面Mの表示領域R(表示部34)に表示させることが可能となる。
【0039】
なお、メイン画面Mやそこに表示される表示用画像Iは、携帯端末3に別途インストールするコンソールアプリケーションによって表示されるものとしてもよいが、携帯端末3が元々有するブラウザで表示されるウェブコンテンツとするのが好ましい。ブラウザを用いると、一連の撮影操作の流れの中で、処理対象のデータと処理プログラムを送信するため、携帯端末3に対し、アプリケーション等の明示的なインストールが不要となる。その結果、特定の処理プログラムのみをため、コンソールアプリを全て送信する場合に比べ、処理プログラムの送信時間を短縮することができる。また、携帯端末3の故障・バッテリー切れ等が発生しても、他の一般的な携帯端末で代用することが可能となる。更に、コンソール4や放射線画像撮影装置2のプログラム等の更新に伴う携帯端末3のアプリケーション更新といったメンテナンスも不要となる。
なお、処理プログラムもウェブコンテンツとし、携帯端末3へ送信することが可能である。その場合には、ウェブブラウザ上で実行可能なJavaScript(登録商標)やWebAssemblyの形式とすることが望ましい。
【0040】
ブラウザで表示用画像Iを表示する場合、放射線画像撮影装置2をウェブサーバーとして機能させる必要があるので、放射線画像撮影装置2の記憶部25には、ウェブサーバープログラムや、ウェブアプリケーションプログラム等を記憶させることになる。
また、ブラウザで表示用画像Iを表示する場合には、放射線画像撮影装置2が、携帯端末3からの要求に応じて、画像データから表示用画像Iのウェブコンテンツを生成し、それを携帯端末3に送信することとなる。この場合、制御部21は、本発明におけるコンテンツ生成手段をなす。
【0041】
また、必要に応じて、放射線画像撮影装置2から携帯端末3へ送信する処理プログラムに、放射線画像撮影装置から受信したRaw画像データ又は処理済画像データにゲイン補正、オフセット補正、あるいは欠陥補正等の画像補正を行う機能を持たせる処理を含めるようにしてもよい。このようにすれば、放射線画像撮影装置2毎に生じる画像データの個体差を補正することができる。これらの画像補正は、放射線画像撮影装置2で行ってもよい。
また、処理プログラムに、一度取得した処理プログラムをブラウザ内にキャッシュしたり、バージョンが異なる場合のみ処理プログラムを再取得したりする処理を含めるようにしてもよい。このようにすれば、同じ画像処理を行う場合に、処理プログラムの受信の必要がなくなるので、表示の迅速化の観点から好ましい。
【0042】
また、処理プログラムに、処理の重要度や処理コストに応じて、実行する画像処理を一部省略する、もしくは一部の処理の実行を放射線画像撮影装置2に差し戻す処理を含めるようにしてもよい。このようにすれば、携帯端末3の制御部31に過度の負担がかかるのを防ぐことができる。
また、処理プログラムに、ブラウザ終了あるいは撮影終了の操作に基づいて、記憶部33に記憶されている画像データやパラメーターを消去する処理を含めるようにしてもよい。このようにすれば、撮影終了後は、携帯端末3に患者の個人情報が残らなくなるので、セキュリティの観点から好ましい。
【0043】
〔放射線画像撮影システムの動作〕
次に、放射線画像撮影システム100の動作について説明する。
図5は放射線画像撮影システム100を用いた放射線画像撮影から表示までの流れであって、携帯端末3で画像処理を行う場合の流れを表すラダーチャートであり、図6は放射線画像撮影装置2で画像処理を行う場合の流れを表すラダーチャートである。
【0044】
まず、画像処理を携帯端末3側で行うよう設定された場合の動作について説明する。図5に示したように、ユーザーが、携帯端末3の操作部35を介してメイン画面Mの表示開始を指示すると(ステップS1)、携帯端末3が表示部34にメイン画面Mを表示する(ステップS2)。
メイン画面Mをブラウザで表示する場合には、ステップS1の後、携帯端末3が放射線画像撮影装置2にメイン画面Mのウェブページを要求する信号を送信する(ステップS1a)。そして、放射線画像撮影装置2がウェブページの生成を行い(ステップS1b)、それを携帯端末3へ送信する(ステップS1c)ことで、メイン画面Mの表示が開始される。
【0045】
また、ステップS1~S2と並行又は前後して、放射線画像撮影装置2が放射線画像の撮影を行い(ステップS3)、生成したRaw画像データを記憶部25に記憶する(ステップS4)。
ステップS3よりも後のタイミングでユーザーが携帯端末3の操作部35を介して処理済画像の表示を指示すると(ステップS5)、携帯端末3が放射線画像撮影装置2にRaw画像データを要求する信号を送信する(ステップS6)。そして、放射線画像撮影装置2が画像処理プログラムを携帯端末3へ送信し(ステップS7)、更にRaw画像データを携帯端末3へ送信する(ステップS8)。
なお、放射線画像撮影装置2は、Raw画像データを、例えば低解像度に間引いた画像と、Raw画像の残りの画像に分けて複数回送信する構成としてもよいし、携帯端末3のモニター解像度が低い場合などには、間引き画像のみを送信する構成としてもよい。これにより、撮影後の画像表示をより高速で行うことができる。
また、ステップS4は、ステップS7やステップS8と並行して行ってもよいし、ステップS7やステップS8より後に行ってもよい。
【0046】
その後、携帯端末3がRaw画像データ及び画像処理プログラムを受信すると、携帯端末3がRaw画像データに所定の画像処理を施す(ステップS9)。ここでの処理は、上述した複数の画像処理の内の少なくとも1種類の画像処理を行う。そして、画像処理によって得られた処理済画像データを記憶部33に記憶する(ステップS10)。
そして、画像処理によって得られた処理済画像データに基づく処理済画像を表示部34に表示し(ステップS11)、処理済画像データを放射線画像撮影装置2に送信する(ステップS12)。
【0047】
なお、ステップS10とS11は、並行して行ってもよいし、順序を逆にしてもよい。
また、ステップS8~ステップS11を完全に終えた後にステップS12を行うのではなく、ステップS8からS11の各処理を複数回に分けて繰り返すようにしてもよい。すなわち、ステップS8において、一部のRaw画像データを一旦送信し、その一部のRaw画像データに対して、ステップS9~ステップS11を行い、その後、ステップS8に戻り、残りのRaw画像データを送信し(ステップS8)、再度ステップS9~ステップS11を繰り返すようにしてもよい。
【0048】
その後、放射線画像撮影装置2が処理済画像データを受信すると、放射線画像撮影装置2がそれを記憶部33に記憶する(ステップS13)。
このように、処理済画像データが放射線画像撮影装置2内に記憶されるため、携帯端末3で処理済画像を確認したいときに、別の場所に設置してあるコンソール4まで画像データを取得しに戻ることなく処理済画像を表示することができるので、処理済画像の表示を迅速に行うことができる。
【0049】
ところで、ステップS5~S13は、場合によって(例えば、ユーザーが異なる種類の処理済画像を見比べようとする場合等)、複数回繰り返される場合がある。そのような場合、放射線画像撮影装置2は、ステップS8において、それまでに携帯端末3が行った画像処理によって生成し記憶部25に記憶した処理済画像データを呼び出し、Raw画像データの代わりに携帯端末3に送信することもできる。こうすることで、受信した処理済画像データをそのまま表示したり、当該処理済画像データを基に画像処理を行ったりすることができるので、処理済画像の表示要求がなされる度に、Raw画像データから画像処理を行うよりも、ユーザーが所望する処理済画像を迅速に表示することができる。
【0050】
また、処理済画像を確認したユーザーが、画像の調整が必要であると判断する場合がある。そのような場合、ユーザーが、携帯端末3の操作部35を介して処理済画像に対する画像調整を指示すると(ステップS12a)、携帯端末3が、調整パラメーターの更新を受けて、処理済画像データの再処理(調整)を行う(ステップS12b)。そして、画像調整によって得られた調整済画像データに基づく調整済画像を表示部34に表示し(ステップS12c)、調整済画像データを放射線画像撮影装置2に送信して(ステップS12d)、ステップS13へ進む。
【0051】
処理済画像又は調整済画像の確認を終えたユーザーが、携帯端末3の操作部35を介してメイン画面Mの終了を指示すると(ステップS14)、携帯端末3が、表示部34に表示されていたメイン画面Mを閉じる(ステップS15)。なお、携帯端末3が画像データの消去機能を備えている場合には、ステップS15の後に、記憶部33に記憶されていたRaw画像データ、処理済画像データ及び調整済画像データを消去する(ステップS15a)。こうすることで、携帯端末3の盗難・紛失があったとしても、患者情報が流出しないので、セキュリティ面の観点から好ましい。なお、このようにしても、処理済画像が放射線画像撮影装置2に残されているので、以降の表示の迅速性は損なわれない。
放射線画像撮影装置2に記憶された各種画像データは、コンソール4の設置された部屋(撮影室の前室等)に移動してからコンソール4に移される。
なお、ここでは、各種画像データを、放射線画像撮影装置2からコンソール4へ送信することとしたが、携帯端末3からコンソール4へ送信する構成としてもよい。
【0052】
このとき、処理済みデータとともに調整パラメーターをコンソール4に送信し、コンソール4で調整作業を継続するようにしてもよい。
また、放射線画像撮影装置2から携帯端末3へ間引き画像のみを送信する場合には、コンソール4が受信した調整パラメーターに基づいて、フルサイズの画像に対して画像処理を適用する構成としてもよい。
また、コンソール4に、自身の持つ処理プログラムと放射線画像撮影装置2が持つ処理プログラムとを比較する機能を持たせ、放射線画像撮影装置2の持つ処理プログラムの方が古いと判断した場合には、自身の持つ処理プログラムを放射線画像撮影装置2に送信し、放射線画像撮影装置2内の処理プログラムを更新させるようにしてもよい。
【0053】
次に、画像処理を放射線画像撮影装置2側で行うよう設定された場合の動作について説明する。図6に示したように、開始からステップS5までの流れは、携帯端末3で画像処理を行う場合と同様である。
ステップS5の後は、携帯端末3が放射線画像撮影装置2に処理済画像データを要求する信号を送信する(ステップS6A)。そして、放射線画像撮影装置2が、Raw画像データに所定の画像処理を施し(ステップS7A)、画像処理によって得られた処理済画像データを携帯端末3へ送信する(ステップS8A)。なお、ここで、Raw画像をそのまま送信することもできる。
また、ステップS8Aと並行又は前後して、処理済画像データを記憶部25に記憶する(ステップS13A)。
【0054】
ステップS8Aの後、携帯端末3が処理済画像データを受信すると、携帯端末3が処理済画像データに基づく処理済画像を表示部34に表示する(ステップS11)。
【0055】
ところで、放射線画像撮影装置2で画像処理を行う場合においても、ユーザーの要求によって、ステップS5~S13Aが複数回繰り返される場合がある。そのような場合、放射線画像撮影装置2は、ステップS7Aにおいて、過去に記憶部25に記憶しておいた処理済画像データを呼び出し、Raw画像データの代わりに処理済画像データに対して画像処理を施したり、ステップS8Aにおいて、過去に記憶しておいた処理済画像データをそのまま送信したりすることもできる。こうすることで、上記携帯端末3で画像処理を行う場合と同様に、ユーザーが所望する処理済画像を迅速に表示することができる。
【0056】
また、この場合においても、処理済画像を確認したユーザーが、画像の調整が必要であると判断する場合がある。そのような場合、ユーザーが、携帯端末3の操作部35を介して処理済画像に対する画像調整を指示すると(ステップS12a)、携帯端末3が、調整パラメーターを放射線画像撮影装置2へ送信する(ステップS12e)。そして、放射線画像撮影装置2が、調整パラメーターを用いて処理済画像データの再処理(調整)を行う(ステップS12f)。そして、画像調整によって得られた調整済画像データを携帯端末3へ送信する(ステップS12g)。また、ステップS12gと並行又は前後して、処理済画像データを記憶部25に記憶する(ステップS13A)。
ステップS12gの後、携帯端末3が調整済画像データを受信すると、携帯端末3が調整済画像データに基づく調整済画像を表示部34に表示する(ステップS12c)。
ステップS14以降の流れは、上記携帯端末3で画像処理を行う場合と同様である。
【0057】
以上のように、本実施形態の放射線画像撮影システム100の放射線画像撮影装置2は、放射線を受けることで放射線の線量に応じた量の電荷を蓄積する複数の放射線検知素子が二次元状に配列された基板と、複数の放射線検知素子にそれぞれ蓄積された電荷量を信号値として読み出し、各信号値に基づいてRaw画像データ(第1画像データ)を生成する読み出し部と、読み出し部が生成した画像データに対して所定の画像処理を実行し、少なくとも1種類の処理済画像データ(第2画像データ)を生成可能な画像処理手段と、読み出し部が生成したRaw画像データと画像処理手段が生成した処理済画像データのうちの少なくとも一つを記憶する記憶手段と、通信可能に接続された携帯端末3(外部端末)からの要求に応じて、Raw画像データと処理済画像データのうちの少なくとも一つを携帯端末3に送信する通信手段と、を備える。
【0058】
こうすることで、従来のようにコンソール4ではなく、放射線画像撮影装置2自身が画像処理を行うので、コンソール4と離れた場所で撮影を行う場合であっても、撮影後直ちに、携帯端末3の表示部34にプレビュー画像よりも高画質の表示用画像Iを表示することができる。このため、再撮影の判断の制度が低下してしまうのを防ぐことができる。
また、様々な画像処理が施されることで生成される診断用画像もその場で表示することができるので、手術室等において、医師がその場で診断を行うことができる。
【符号の説明】
【0059】
100放射線画像撮影システム
1放射線照射装置
11ジェネレーター
12放射線源
13操作卓
2放射線画像撮影装置
21制御部
22放射線検知部
23読み出し部
24通信部
25記憶部
26バス
3携帯端末(外部端末)
31制御部
32通信部
33記憶部
34表示部
35操作部
36バス
4コンソール
I 表示用画像
M メイン画面
R 表示領域
X 放射線
図1
図2
図3
図4
図5
図6