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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20220405BHJP
   G02B 19/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G02B19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017143443
(22)【出願日】2017-07-25
(65)【公開番号】P2019028084
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-06-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】元田 善規
(72)【発明者】
【氏名】奥村 哲人
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001258(JP,A)
【文献】特開2002-258489(JP,A)
【文献】特開2001-297975(JP,A)
【文献】特開2000-331909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光を発生する光源と、
平面視において第1の軸線に沿う第1の方向の開口量が前記第1の軸線に交差する第2の軸線に沿う第2の方向において一定となるように、前記第2の軸線に沿って千鳥配列された複数の開口部が形成され、前記第1の方向において前記複数の開口部のうちの2つが間をあけて隣り合う複合開口領域と、前記第1の方向において前記複数の開口部のうちの1つが開口する単独開口領域と、が前記第2の方向において交互に形成されており、前記光源と露光用フォトマスクとの間に前記複数の開口部が位置するように配置された絞り部材と、
前記絞り部材の前記複数の開口部のそれぞれと対向して配置され、前記複数の開口部のそれぞれを透過した前記露光光による光像を、それぞれ露光対象物に投影する複数の投影光学系と、
前記光源から前記露光対象物までの間の前記露光光の光路上に配置され、平面視にて少なくとも前記単独開口領域とそれぞれ重なる前記露光対象物上の光量補正領域に照射される前記露光光の光量を低減する光透過量低減部材と、
を備え
前記光透過量低減部材は、
前記露光量の透過率を均一に低下させる均一濃度フィルタからなり、平面視にて少なくとも前記単独開口領域と重なる前記露光対象物上の第1の光量補正領域に照射される前記露光光の光量を低減する第1の光透過量低減部と、
前記第2の方向において前記第1の光透過量低減部と隣接する部位から離れるにつれて前記露光量の透過率が増大する傾斜濃度フィルタからなり、前記第1の光透過量低減部と前記第2の方向において隣接して設けられ、平面視にて前複合開口領域と重なる前記露光対象物上の第2の光量補正領域に照射される前記露光光の光量を低減する第2の光透過量低減部と、
を備える、露光装置。
【請求項2】
前記光透過量低減部材は、
前記投影光学系と前記露光対象物との間に配置された
請求項1に記載の露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶装置などに用いられる大型基板にパターン形成を行う装置として走査型露光装置が知られている。
このような走査型露光装置の一例としては、特許文献1に記載の露光装置が挙げられる。
特許文献1に記載の露光装置では、照明光でマスクを照明し、マスクに形成されたパターンの像を複数の投影光学系によって被露光体であるプレートに露光する。
マスクとプレートとは、同期して同速度で、投影光学系に対してX方向に移動することができる。投影光学系は、それぞれ正立等倍実結像系で構成され、X方向に直交するY方向に沿って千鳥配列されている。
照明光は、各投影光学系の各光軸上に配列されたX方向において二辺が対向する平行四辺形の視野絞りを通して、マスクに照射される。各視野絞りは、Y方向における対辺が、走査方向であるX方向から見て重なる位置関係に配置されている。
各投影光学系は、マスクに形成されたパターンの画像を、平面視において千鳥配列された複数の平行四辺形状の光像として、プレートに投影する。しかし、各投影光学系に対してマスクおよびプレートがX方向に移動することによって、各光像がプレートの表面をX方向に走査する。このため、X方向の走査が終了すると、マスクの全面の画像によってプレートが露光される。
このような露光装置では、走査方向において、単一の視野絞りを通過した光によって露光される第1の領域と、Y方向に隣り合う2つの視野絞りを通過した光によって露光される第2の領域とが発生する。各視野絞りの形状および配列は、第1の領域における走査露光量と、第2の領域における走査露光量とが等しくなるように設定されている。
特許文献1の露光装置は、照度センサによって、照明光の照明強度も各視野絞り上で光強度が均一になるように制御する。
このような露光装置は、マスクに形成されたパターンを、プレートに正確に転写することによって、マスクのパターンをプレート上に複製している。
【0003】
特許文献2に記載の投影露光方法では、走査型露光装置において、投影光学系の投影領域の重ね合わせ誤差に起因する「画面分かれ」を抑制するため、レクチルのパターンの描画位置と基板の搬送位置とを光学系の光軸に垂直かつ走査方向に垂直な方向に所定量ずらすことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-160887号公報
【文献】特開平10-62809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の走査型露光装置では、種々の要因によって、マスクにおけるパターンとプレート上の露光パターンとの間に、製造誤差が生じる。
例えば、マスクに均一性が高い格子状パターンを有する場合、個々のパターンの線幅同士を比較しても視認困難な変動であっても、一定の領域における線幅が全体的に変化していると、濃淡むらとして容易に視認できてしまう場合がある。例えば、液晶装置に用いられるカラーフィルタのブラックマトリクスパターンなどは、特にこのようなムラが視認されやすい。
このため、露光装置の走査方向に沿って発生するパターンの線幅などの変動は抑制される必要がある。
本発明者は、上述のような走査型露光装置において、各視野絞りに対応する各露光光量を正確に一致させても、視野絞りの配置ピッチに対応するピッチでパターンの濃度むらが発生する現象を発見した。本発明者がこの現象を鋭意検討したところ、この濃度むらは、走査方向に延びる帯状の領域でパターンの線幅がわずかに狭くなっているために発生していることが分かった。さらに、濃度むらが発生する領域は、隣り合う視野絞りによる露光領域が重なる継ぎ目領域であることも分かった。
この問題は、複数の投影光学系を用いる走査型露光装置に特有の問題である。例えば、液晶装置の高精細化などの要求が高まるにつれて、このような線幅のむらをさらに低減していく技術が強く求められている。
このような継ぎ目領域における濃度むらは、例えば、特許文献2における「画面分かれ」とは異なる現象であり、特許文献2に記載の方法では解決されない。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、千鳥配列された複数の投影光学系を用いる場合に、露光領域の継ぎ目に起因する露光むらを低減することができる露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様の露光装置は、露光光を発生する光源と、平面視において第1の軸線に沿う第1の方向の開口量が前記第1の軸線に交差する第2の軸線に沿う第2の方向において一定となるように、前記第2の軸線に沿って千鳥配列された複数の開口部が形成され、前記第1の方向において前記複数の開口部のうちの2つが間をあけて隣り合う複合開口領域と、前記第1の方向において前記複数の開口部のうちの1つが開口する単独開口領域と、が前記第2の方向において交互に形成されており、前記光源と露光用フォトマスクとの間に前記複数の開口部が位置するように配置された絞り部材と、前記絞り部材の前記複数の開口部のそれぞれと対向して配置され、前記複数の開口部のそれぞれを透過した前記露光光による光像を、それぞれ露光対象物に投影する複数の投影光学系と、 前記光源から前記露光対象物までの間の前記露光光の光路上に配置され、平面視にて少なくとも前記単独開口領域とそれぞれ重なる前記露光対象物上の光量補正領域に照射される前記露光光の光量を低減する光透過量低減部材と、を備え、 前記光透過量低減部材は、 前記露光量の透過率を均一に低下させる均一濃度フィルタからなり、平面視にて少なくとも前記単独開口領域と重なる前記露光対象物上の第1の光量補正領域に照射される前記露光光の光量を低減する第1の光透過量低減部と、 前記第2の方向において前記第1の光透過量低減部と隣接する部位から離れるにつれて前記露光量の透過率が増大する傾斜濃度フィルタからなり、前記第1の光透過量低減部と前記第2の方向において隣接して設けられ、平面視にて前複合開口領域と重なる前記露光対象物上の第2の光量補正領域に照射される前記露光光の光量を低減する第2の光透過量低減部と、を備える。
【0010】
上記第1の態様の露光装置においては、前記光透過量低減部材は、前記投影光学系と前記露光対象物との間に配置されてもよい
【発明の効果】
【0011】
本発明の露光装置によれば、千鳥配列された複数の投影光学系を用いる場合に、露光領域の継ぎ目に起因する露光むらを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態の露光装置の一例を示す模式的な正面図である。
図2図1におけるA視の平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態の露光装置に用いる露光用フォトマスクの一例を示す模式的な平面図である。
図4】本発明の第1の実施形態の露光装置に用いる露光用フォトマスクのマスクパターンの一例を示す模式的な拡大図である。
図5】本発明の第1の実施形態の露光装置に用いられる視野絞りの一例を示す模式的な平面図である。
図6】本発明の第1の実施形態の露光装置の主要部の構成を示す模式的な部分断面図である。
図7】本発明の第1の実施形態の露光装置に用いられる光透過量低減部材の一例を示す模式的な平面図である。
図8図7におけるB-B線に沿う透過率分布を示す模式的なグラフである。
図9】比較例の露光について説明する模式図である。
図10】比較例の露光における実効的な露光量について説明する模式図である。
図11】本発明の第1の実施形態の露光装置における露光について説明する模式図である。
図12】本発明の第1の実施形態の露光装置の露光における積算光量について説明する模式的なグラフである。
図13】本発明の第2の実施形態の露光装置に用いられる光透過量低減部材の一例を示す模式的な平面図である。
図14図13におけるD-D線に沿う透過率分布を示す模式的なグラフである。
図15】本発明の第2の実施形態の露光装置の露光における積算光量について説明する模式的なグラフである。
図16】本発明の第3の実施形態の露光装置に用いられる光透過量低減部材の一例を示す模式的な平面図である。
図17図16におけるE-E線に沿う透過率分布を示す模式的なグラフである。
図18】本発明の第3の実施形態の露光装置の露光における積算光量について説明する模式的なグラフである。
図19】本発明の第3の実施形態の変形例の露光装置の光透過量低減部材の透過率分布を示す模式的なグラフである。
図20】本発明の第3の実施形態の変形例の露光装置の露光における積算光量について説明する模式的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の露光装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の露光装置の一例を示す模式的な正面図である。図2は、図1におけるA視の平面図である。図3は、本発明の第1の実施形態の露光装置に用いる露光用フォトマスクの一例を示す模式的な平面図である。図4は、本発明の第1の実施形態の露光装置に用いる露光用フォトマスクのマスクパターンの一例を示す模式的な拡大図である。図5(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態の露光装置に用いられる視野絞りの一例を示す模式的な平面図である。図6は、本発明の第1の実施形態の露光装置の主要部の構成を示す模式的な部分断面図である。図7は、本発明の第1の実施形態の露光装置に用いられる光透過量低減部材の一例を示す模式的な平面図である。図8は、図7におけるB-B線に沿う透過率分布を示す模式的なグラフである。図8のグラフの横軸はX方向の位置、縦軸は透過率を表す。
なお、各図面は模式図のため、形状および寸法は誇張されている(以下の図面も同様)。
【0015】
図1、2に示す露光装置100は、複数の投影光学系によって、フォトマスク1(露光用フォトマスク、図1参照)の露光用パターンを被露光体6(露光対象物)に等倍走査露光する走査型露光装置である。
露光装置100の詳細構成について説明する前に、フォトマスク1の一例について説明する。
【0016】
図3に示すように、フォトマスク1は、光透過性基板1Aと、マスク部1Bと、を備える。
光透過性基板1Aは、露光装置100の照明光を透過できる光透過性を有する適宜の基板の使用が可能である。例えば、光透過性基板1Aは、ガラス基板によって構成されてもよい。光透過性基板1Aの外形は特に限定されない。図3に示す例では、光透過性基板1Aの外形は平面視矩形状である。
【0017】
マスク部1Bは、露光装置100によって被露光体6に投影される露光用パターンとなるマスクパターンPを備える。マスクパターンPは、例えば、光透過性基板1A上に積層された金属などの遮光層がパターニングされて構成される。
等倍露光の露光装置100に用いるマスクパターンPは、被露光体6に形成する露光パターンと同一の形状にすればよい。
マスクパターンPは、光透過性基板1Aの表面において、光透過性基板1Aの長辺に沿うy方向と、光透過性基板1Aの短辺に沿うx方向と、に2次元的に形成されている。
光透過性基板1A上におけるマスクパターンPの位置を記述するため、x方向にはx座標軸が、y方向にはy座標軸がそれぞれ設定されている。図3では、一例として、光透過性基板1Aの外形の一頂点を原点Oとするx座標軸とy座標軸とが設定されている。ただし、xy座標系の原点Oは、光透過性基板1Aにおける適宜の位置に設定されていてもよい。
【0018】
マスクパターンPの具体的な形状は、露光パターンに必要な適宜の形状である。
以下では、マスクパターンPの一例として、光透過部の平面視形状が矩形格子の場合の例で説明する。このような矩形格子状の露光パターンは、例えば、液晶装置におけるカラーフィルタに用いられるブラックマトリクス(BM)を形成するために用いられてもよい。
【0019】
図4にマスクパターンPの拡大図を示す。
マスクパターンPは、平面視矩形状の遮光部1bが、x方向およびy方向において矩形格子状に配列されている。例えば、遮光部1bの配列ピッチは、x方向ではP、y方向ではPである。例えば、フォトマスク1がBM形成用の場合には、ピッチP(P)は、x方向(y方向)におけるサブ画素の配列ピッチに一致している。
各遮光部1bの間には、光透過性基板1A(図3参照)の表面が露出した光透過部1aが形成されている。光透過部1aは、x方向に延びる第1線状部1aと、y方向に延びる第2線状部1aとに分けられる。
第1線状部1aは、一定の線幅L1yを有する。同じく第2線状部1aは、一定の線幅L1xを有する。例えば、フォトマスク1がBM形成用の場合には、線幅L1y、L1xは、それぞれ、y方向、x方向におけるBMの線幅に等しい。
【0020】
ここで、露光装置100の説明に戻る。
図1、2に示すように、露光装置100は、ベース7、第2の駆動部11、第1の駆動部10、照明光源2(光源)、視野絞り3(絞り部材)、投影光学ユニット5、を備える。
【0021】
ベース7は、被露光体6を載置するため、水平方向に配置された平坦な上面7aを有している。図1に示すように、ベース7は、第2の駆動部11によって水平方向のうちY方向(第1の方向、図示左側から右側に向かう方向)に移動可能に支持されている。第2の駆動部11の構成は特に限定されない。例えば、第2の駆動部11は、Y方向において往復移動可能な1軸ステージで構成されてもよい。ただし、第2の駆動部11は、ベース7を水平面においてY方向に直交するX方向(第2の方向、図1における紙面奥から手前に向かう方向)に移動できるように構成されてもよい。
図2に示すように、本実施形態では、ベース7の移動方向は、水平方向のうちY方向(図2の左から右に向かう方向)に延びる軸線O(第1の軸線)に沿う方向である。
第2の駆動部11は、図示二点鎖線で示すように、ベース7をY方向における移動限度まで移動した後、ベース7をY方向と反対に移動して移動開始位置に戻すことができる。
【0022】
被露光体6には、露光装置100によって、フォトマスク1のマスクパターンPの光像に基づいた露光パターンが露光される。被露光体6は、上面7aよりも小さく、フォトマスク1以下の大きさの矩形板状に形成されている。被露光体6は、その長手方向がY方向と一致するように、上面7a上に載置される。
被露光体6は、適宜の基板上に、フォトリソグラフィを行うための感光性のレジストが塗布されて構成される。
【0023】
図1に示すように、露光装置100において、フォトマスク1は、ベース7に載置された被露光体6と対向する位置に配置される。フォトマスク1は、第1の駆動部10によって駆動可能に設けられた図示略の支持部によって支持される。第1の駆動部10は、図示略の支持部をベース7の上面7aと一定の間隔を保つように、ベース7と同期して平行移動できるようになっている。第1の駆動部10は、第2の駆動部11と同様、Y方向に移動可能な1軸ステージ、XY方向に移動可能な2軸ステージなどが用いられてもよい。
露光装置100におけるフォトマスク1は、y座標軸の正方向がY方向と反対向きとされ、x座標軸がX方向に沿うように配置される。
【0024】
照明光源2は、被露光体6を露光するため、被露光体6上のレジストを感光させる波長を有する照明光(露光光)を発生する。照明光源2は、フォトマスク1の移動領域の上方において図示略の支持部材によって固定支持されている。照明光源2は、鉛直下方に照明光を照射する。
【0025】
視野絞り3は、照明光源2と、フォトマスク1の移動領域との間に配置される。視野絞り3は、図示略の支持部材によって固定支持されている。視野絞り3は、照明光源2が照射する照明光を整形し、照明光を複数の照明領域に分割する。
図5(a)に示すように、視野絞り3は、X方向にw+w(ただし、w<w)のピッチで配列された複数の第1開口部3Aと、Y方向にΔ(ただしΔ>h/2)だけ平行にずれた軸線上でX方向にw+wのピッチで配列された複数の第2開口部3Bと、を有する。
【0026】
第1開口部3Aの平面視形状は、頂角が直角でない等脚台形である。第1開口部3Aは、第1辺3a、第2辺3b、第3辺3c、および第4辺3dで構成される。第1辺3aは等脚台形の上底であり、第2辺3bは等脚台形の下底である。第1辺3a、第2辺3bの長さはそれぞれw、wである。第1辺3a、第2辺3bは、Y方向においてhだけ離れている平行線である。第3辺3c、第4辺3dは、X方向においてこの順に配置された等脚台形の脚である。
【0027】
第2開口部3Bの平面視形状は、平面視において第1開口部3Aを180°回転した形状である。X方向における第2開口部3Bの位置は、第1開口部3Aに対して(w+w)/2だけずれている。このため、第2開口部3Bは、2つの第1開口部3Aの間の中間点に対向する位置に配置されている。
このような配置により、第1開口部3Aおよび第2開口部3Bは、X方向に延びる軸線O(第2の軸線)に沿って千鳥配列されている。
Y方向から見ると、第1開口部3Aおよび第2開口部3Bにおける第3辺3c同士と、第4辺3d同士とは互いに重なっている。Y方向から見ると、第1開口部3Aの第1辺3a(第2辺3b)と第2開口部3Bの第2辺3b(第1辺3a)とにおける端部は同じ位置にある。
【0028】
視野絞り3をY方向に見ると、第1開口部3Aおよび第2開口部3Bの一方のみが開口する単独開口領域rと、第1開口部3Aおよび第2開口部3Bの両方が開口する複合開口領域rと、がX方向に交互に現れる。
視野絞り3では、単独開口領域rのX方向における幅はw、複合開口領域rのX方向における幅は(w-w)/2である。
【0029】
視野絞り3における第1開口部3Aおよび第2開口部3Bの形状、配置は、後述する投影光学ユニット5の配列の都合などによって、適宜の大きさに設定されればよい。以下に、第1開口部3Aおよび第2開口部3Bに関する具体的な寸法例を示す。
(w-w)/2は、例えば、14mm以上18mmとされてもよい。hは、例えば、25mm以上45mmとされてもよい。(w+w)/2は、例えば、95mm以上100mm以下とされてもよい。Δは、例えば、200mm以上300mm以下とされてもよい。
【0030】
露光装置100における視野絞り3は、例えば、図5(b)に示す視野絞り4に置換されてもよい。
視野絞り4は、X方向に2wのピッチで配列された複数の第1開口部4Aと、Y方向にΔだけ平行にずれた軸線上でX方向に2wのピッチで配列された複数の第2開口部4Bと、を有する。
【0031】
第1開口部4Aの平面視形状は、頂角が直角でない平行四辺形である。第1開口部4Aは、第1辺4a、第2辺4b、第3辺4c、および第4辺4dで構成される。第1辺4aおよび第3辺4cは、Y方向における対辺である。第3辺4cおよび第4辺4dは、X方向における対辺である。第1辺3a、第2辺3bの長さはそれぞれwである。第3辺3c、第4辺3dの長さはそれぞれw(ただし、w<w)である。
【0032】
第2開口部4Bの平面視形状は、第1開口部4Aと同じである。X方向における第2開口部4Bの位置は、第1開口部4Aに対してwだけずれている。このため、第2開口部4Bは、2つの第1開口部4Aの間の中間点に対向する位置に配置されている。
このような配置により、第1開口部4Aおよび第2開口部4Bは、X方向に延びる軸線O(第2の軸線)に沿って千鳥配列されている。
Y方向から見ると、第1開口部4Aおよび第2開口部4Bにおける第3辺4c同士と、第4辺4d同士とは互いに重なっている。Y方向から見ると、第1開口部4Aの第1辺4a(第2辺4b)と第2開口部4Bの第2辺4b(第1辺4a)とにおける端部は同じ位置にある。
【0033】
視野絞り4をY方向に見ると、第1開口部4Aおよび第2開口部4Bの一方のみが開口する単独開口領域rと、第1開口部4Aおよび第2開口部4Bの両方が開口する複合開口領域rと、がX方向に交互に現れる。
視野絞り4では、単独開口領域rのX方向における幅は(w-w)、複合開口領域rのX方向における幅はwである。
以下では、特に断らない限り、露光装置100が視野絞り3を備える場合の例で説明する。
【0034】
図1に示すように、投影光学ユニット5は、ベース7上の被露光体6よりも上方であって、かつ視野絞り3との間にフォトマスク1の移動領域を挟んで対向するように配置されている。投影光学ユニット5は、図示略の支持部材によって固定支持されている。
図2に示すように、投影光学ユニット5は、軸線Oに沿って千鳥配列された複数の第1列投影光学系5A(投影光学系)と、複数の第2列投影光学系5B(投影光学系)とを備える。各第1列投影光学系5Aおよび各第2列投影光学系5Bには、それぞれ、後述する光減衰フィルタ8(図6参照)が設けられている。
各第2列投影光学系5Bは、第1列投影光学系5Aと配置が異なるのみで第1列投影光学系5Aと同様の構成を備える。
【0035】
図6に示すように、第1列投影光学系5A(第2列投影光学系5B)は、レンズ5aと、レンズ鏡筒5bと、を備えて構成される。
レンズ5aは、物体像を像面に正立等倍像として結像する結像光学系からなる。
レンズ鏡筒5bは、レンズ5aの光軸が鉛直軸に平行になる姿勢でレンズ5aを保持する。
第1列投影光学系5A(第2列投影光学系5B)は、フォトマスク1のマスクパターンPとレジストが塗布された被露光体6の上面とを互いに共役な位置関係にする位置に配置される。本実施形態では、第1列投影光学系5Aから被露光体6に向かう出射光は、平行光束になっている。
【0036】
図5(a)に二点鎖線で示すように、第1列投影光学系5Aは、第1開口部3Aを透過する光の光像を被露光体6に投影できるように、第1開口部3Aの下方に配置されている。第2列投影光学系5Bは、第2開口部3Bを透過する光の光像を被露光体6に投影できるように、第2開口部3Bの下方に配置されている。
第1列投影光学系5A(第2列投影光学系5B)は、第1開口部3A(第2開口部3B)を透過する光による光像を正立等倍像として、被露光体6に投影する。このため、第1開口部3A(第2開口部3B)における単独開口領域r、複合開口領域rの光像も、それぞれに鉛直方向に対向する被露光体6上に投影される。
【0037】
第1列投影光学系5Aおよび第2列投影光学系5Bは、第1開口部3Aおよび第2開口部3Bと同様の千鳥配列の位置関係に配置されるために、第1開口部3Aおよび第2開口部3Bの間の間隔は、第1列投影光学系5Aおよび第2列投影光学系5Bが互いに干渉しないような寸法とされている。このため、第1開口部3Aと第2開口部3Bとのy方向におけるピッチΔは、例えば、y方向の開口幅hの6倍から8倍程度のような大きな値になる場合もある。
【0038】
図5(b)に示すように、視野絞り3に代えて視野絞り4が用いられる場合には、第1列投影光学系5Aは、第1開口部4Aを透過する光の光像を被露光体6に投影できるように、第1開口部4Aの下方に配置されている。第2列投影光学系5Bは、第2開口部4Bを透過する光の光像を被露光体6に投影できるように、第2開口部4Bの下方に配置されている。
【0039】
図6に示すように、投影光学ユニット5における各レンズ鏡筒5bの下端部には、それぞれ光減衰フィルタ8(光透過量減衰部材)が配置されている。各光減衰フィルタ8は、レンズ鏡筒5bの下端部と固定されるフィルタホルダ9によって、レンズ5aに対する位置が固定されている。
光減衰フィルタ8は、第1列投影光学系5A(第2列投影光学系5B)を透過した露光光L2A(L2B)を、少なくとも一部の光量が低減された露光光L5A(L5B)に変換する。
露光光L5A(L5B)は、被露光体6上における後述の光量補正領域M図7、11参照)に照射される。ここで、被露光体6上における光量補正領域Mとは、平面視において少なくとも単独開口領域rと重なる領域である。本実施形態では、一例として、光量補正領域Mは単独開口領域rのみと重なる領域とされている。
【0040】
図7に示すように、光減衰フィルタ8は、減光部8a(均一濃度フィルタ)と、光透過部8bと、を備える。
減光部8aは、視野絞り3およびレンズ5aを透過した露光光L2A(L2B)を一定の透過率TL1で減衰させる部位である。
減光部8aは、平面視にて、外形がX方向およびY方向に沿う矩形状に形成されている。減光部8aは、平面視にて、光減衰フィルタ8が対向する第1開口部3A(第2開口部3B)の単独開口領域rの全体を覆う部位に形成されている。このため、減光部8aのX方向における幅は、光減衰フィルタ8が対向する第1開口部3A(第2開口部3B)の単独開口領域rのX方向における幅と等しい。減光部8aのY方向における幅は、光減衰フィルタ8が対向する第1開口部3A(第2開口部3B)の単独開口領域rのY方向における幅以上である。
【0041】
光透過部8bは、光減衰フィルタ8において、減光部8aを除く領域に形成されている。光透過部8bの透過率Tmaxは、減光部8aの透過率TL1よりも大きい。光透過部8bの透過率は、90%以上100%以下であることがより好ましい。
【0042】
このような構成により、光減衰フィルタ8は、X方向において、図8に曲線201で示すような透過率分布を有する。
図8の横軸における符号は、図7に記載されたB-B線上の同符号の点の位置を表す。点aは、B-B線における光減衰フィルタ8のX方向負方向側の端点である。点bから点dまでの区間および点eから点gまでの区間は、それぞれ複合開口領域rと重なる区間である。点c、fはそれぞれ複合開口領域rとのX方向における中点である。点dから点eまでの区間は、単独開口領域rと重なる区間である。点hは、B-B線における光減衰フィルタ8のX方向正方向側の端点である。
減光部8aは、点dから点eまでの間に配置されている。光透過部8bは、点aから点dおよび点eから点hまでの各区間に形成されている。
曲線201は、点dから点eまでの間で一定値TL1、それ以外の位置において一定値Tmax(ただし、Tmax>TL1)をとる折れ線である。
【0043】
光減衰フィルタ8は、例えば、ガラス基板の表面において減光部8aとなる部位に金属薄膜を蒸着するなどして製造されてもよい。
【0044】
このような構成の光減衰フィルタ8によって、視野絞り3およびレンズ5aを透過した露光光L2A(L2B)は、減光部8a、光透過部8bの透過率に応じて光減衰した露光光L5A(L5B)に変換される。減光部8aの透過率TL1は、露光光L5A(L5B)による後述する実効的な露光量のむらが低減できるように、0%を超え100%未満の範囲から選ばれる。減光部8aの透過率TL1の決め方については、後述する動作説明の中で説明する。
【0045】
図6に示すように、フィルタホルダ9は、光減衰フィルタ8を第1列投影光学系5A(第2列投影光学系5B)に対して一定位置に保持する。フィルタホルダ9の中心部には、少なくとも減光部8aを透過した露光光L5A(L5B)を透過させる貫通孔9aが貫通されている。
フィルタホルダ9は、レンズ鏡筒5bに対して、下方から着脱可能に取り付けられている。フィルタホルダ9の着脱手段は、光減衰フィルタ8の減光部8aを平面視にて上述の光量補正領域Mの範囲と重なるように配置できれば、特に限定されない。例えば、レンズ鏡筒5bに対して周方向に位置決め可能な適宜のマウント、ネジ嵌合などが用いられてもよい。本実施形態では、レンズ5aから出射される露光光L5A(L5B)は、光軸に沿う平行光束であるため、光軸方向における光減衰フィルタ8の位置合わせは、高精度に行われなくてもよい。
【0046】
フィルタホルダ9によって、水平方向の位置が位置合わせされた状態で光減衰フィルタ8が保持されると、光減衰フィルタ8は、上述したように、減光部8aが平面視にて光量補正領域Mと重なる位置関係に配置される。
【0047】
次に、露光装置100の動作について説明する。
図9は、比較例の露光について説明する模式図である。図10(a)、(b)は、比較例の露光における実効的な露光量について説明する模式図である。図11は、本発明の第1の実施形態の露光装置における露光について説明する模式図である。図12は、本発明の第1の実施形態の露光装置の露光における積算光量について説明する模式的なグラフである。図12のグラフにおいて、横軸はX方向における位置、縦軸は積算光量を表す。
【0048】
露光装置100の露光動作について説明する前に、まず、図1に示す比較例の露光装置300による露光動作および露光量について説明する。露光装置300は、上記第1の実施形態の露光装置100の投影光学ユニット5に代えて、投影光学ユニット305を備える。投影光学ユニット305は、投影光学ユニット5から光減衰フィルタ8が削除されて構成される。
図9には、投影光学ユニット305の下方に配置された被露光体6の先端部の一部が拡大して示されている。図9の図示には現れないが、視野絞り3と投影光学ユニット305との間には、被露光体6と対向した状態で、フォトマスク1が被露光体6と同期してY方向に移動されている(図1参照)。
図1に示すように、照明光源2が点灯されると、露光光L2A、L2Bが視野絞り3に照射される。露光光L2A、L2Bは、視野絞り3の各第1開口部3A、各第2開口部3B(図5参照)を透過し、フォトマスク1に照射される。
フォトマスク1における光透過部1aを透過した光のうち、第1開口部3Aを通過した光は第1列投影光学系5Aによって、第2開口部3Bを通過した光は第2列投影光学系5Bによって、それぞれ露光光L13A、L13Bとして被露光体6に等倍投影される。
この結果、図9に示すように、被露光体6上には、第1開口部3Aの光像である第1の光像I13Aと、第2開口部3Bの光像である第2の光像I13Bとが結像される。第1の光像I13Aおよび第2の光像I13Bは、マスクパターンPなどの物体像に対応する輝度分布が形成される。ただし、図9では簡単のため輝度分布の図示は省略されている。
第1の光像I13Aおよび第2の光像I13Bは、第1開口部3Aおよび第2開口部3Bと同様、被露光体6上において、x座標軸に平行な軸線O13に沿って千鳥配列される。
【0049】
ベース7がY方向に移動すると、図示斜線で示すように、各第1の光像I13Aおよび各第2の光像I13Bは、幅wの帯状の領域を掃くことになる。このため、各第1の光像I13Aおよび各第2の光像I13Bは、被露光体6上をy方向に走査する。
ただし、第1開口部3Aおよび第2開口部3BはY方向においてΔだけずれている。このため、第1の光像I13Aと第2の光像I13Bとが同時に掃く領域は、x方向において距離(w+w)/2だけずれるとともに、y方向において距離Δだけずれている。
ベース7の移動速度をv(図1参照)とすると、第2の光像I13Bは、T=Δ/vだけ遅れて、先行して第1の光像I13Aが走査しているy方向の領域に到達する。
例えば、走査が開始された時刻tとすると、第2の光像I13Bは、時刻tにおける第1の光像I13Aのy方向の位置に、時刻t=t+Tにおいて到達する。このとき、第2の光像I13Bは、時刻tにおいて結像された互いに隣り合う第1の光像I13Aの間にちょうど嵌り込む。
すなわち、時刻tでは、第1の光像I13Aが並ぶx方向の領域は、第1の光像I13Aによって、飛び飛びに露光されるのみであるが、時刻tにおいては、同領域の非露光部が、第2の光像I13Bによって露光される。これにより、x方向に延びる領域は、時間差Tをあけて、隙間なく帯状に露光される。第1の光像I13Aにおける等脚台形の脚と第2の光像I13Bにおける等脚台形の脚とは、それぞれによる露光領域の継ぎ目の境界を構成している。
【0050】
平面視においてフォトマスク1におけるマスク部1Bは、時刻tにおける第1開口部3Aの第2辺3bよりもY方向の反対方向側に位置する。図9では、一例として、時刻tにおいて、マスク部1Bのy方向における先端が第1開口部3Aの第2辺3bと同位置にある場合が図示されている。このため、時刻tにおいて、第1の光像I13Aにおける等脚台形の下底が、マスク部1Bの端に位置している。
走査によって第1の光像I13Aが掃く領域では、時刻t以降の走査によって、フォトマスク1のマスクパターンPが被露光体6上に投影されていく。マスクパターンPの露光時間は、第1開口部3AにおけるY方向の開口幅hを速度vで割った時間である。第1開口部3Aの第1辺3aと第2辺3bとで挟まれた矩形状領域では、露光時間tはh/vである。以下では、露光時間tをフル露光時間という。
ところが、第1開口部3Aの第3辺3cおよび第4辺3dと、第2辺3bとで挟まれた三角形領域では、x方向における露光時間が0からフル露光時間の間で線形に変化する。
同様に、走査によって第2の光像I13Bが掃く領域では、時間Tだけ遅れて、第1の光像I13Aによるのと同様な露光が行われる。このため、第2の光像I13Bが掃く領域は、フル露光時間tで露光される領域と、フル露光時間t未満で露光される領域とに分かれる。
フル露光時間t未満で露光される領域は、第1の光像I13Aおよび第2の光像I13Bの継ぎ目に関わる露光領域である。
【0051】
比較例においては、第1の光像I13Aおよび第2の光像I13Bによってフル露光時間tで露光される領域は互いに離れており、それぞれ幅wでy方向に延びる帯状の単独露光領域Aを構成する。
これに対して、単独露光領域Aの間の幅(w+w)/2の領域は、第1の光像I13Aおよび第2の光像I13Bによって、フル露光時間t未満で露光される複合露光領域Aを構成する。
複合露光領域Aにおけるx方向の各位置における露光時間は、第1の光像I13Aと第2の光像I13Bとの露光割合が異なるだけで、合計の露光時間はいずれも等しい。
このため、単独露光領域Aにおける露光量と、複合露光領域Aにおける露光量とは、第1の光像I13Aおよび第2の光像I13Bにおける照明光強度が同じであれば、互いに等しくなる。
【0052】
しかしながら、本発明者の観察によれば、被露光体6上において単独露光領域Aに形成される露光パターンに比べると、複合露光領域Aに形成される露光パターンとは、光透過部の線幅がわずかに狭くなる傾向がある。
複合露光領域Aは、一定幅でy方向に延び、かつx方向に等ピッチで形成されるため、線幅の変化が露光パターンにおける帯状の濃度むらとして視認されやすくなっている。例えば、露光装置100によってBM形成用のフォトマスクを形成すると、サブ画素の開口の大きさのむらになるため、規則的な色むらが視認されやすい液晶装置が形成されてしまうおそれがある。
【0053】
露光時間が同じでも線幅が異なる理由は、必ずしもはっきりしているわけではないが、時間Tで表される時間差の影響が考えられる。
レジストは、露光されると光化学反応が進行する結果、現像液によって除去可能になる。ところが、レジストの光化学反応は、反応の立ち上がりにはある程度時間を要する。一方、露光が中断されると急速に反応が停止し、始まった光反応がリセットされてしまう。この結果、連続露光よりも断続的な露光の方が、実効的な露光時間が短くなるため、露光量が低下したのと同様な効果が生じると考えられる。
このため、被露光体6上の複合露光領域Aにおいてレジストの正味の感光に用いられる実効的な露光量は、同じ光量であれば、第1の光像I13Aと第2の光像I13Bとによる露光時間の比率で決まると考えられる。
【0054】
図10(a)に模式的に示すように、第1の光像I13Aが走査する単独露光領域AS1と、第1の光像I13Aが走査する単独露光領域AS2と、に挟まれた複合露光領域Aでは、第1の光像I13Aによる露光時間と、第2の光像I13Bによる露光時間とがx方向に沿って線形に変化する。
例えば、点pで示す位置は、単独露光領域AS1との境界位置であるため、第1の光像I13Aによる露光時間が100%、第2の光像I13Bによる露光時間が0%である。各点における露光時間の比率(%)を、p[t,t]のように表すと、例えば、p[100,0]、p[90,10]、p[80,20]、p[70,30]、p[60,40]、p[50,50]、p[40,60]、p[30,70]、p[20,80]、p10[20,80]、p11[0,100]である。以下では、これらの点pのx方向における位置座標をxで表す(ただし、n=1,…,11)。
このとき、線幅などに影響する実効的な露光量(以下、単に露光量と称する場合がある)は、図10(b)に示すように、複合露光領域Aでは、下に凸の略V字状のグラフで示される。位置x、x11における露光量q、q11は、それぞれ単独露光領域Aにおける露光量qに等しい。例えば、位置xにおける露光量qは、露光量qよりも低く、複合露光領域Aにおける露光量の最小値である。位置x、x11の近傍および位置xの近傍における露光量の変化率は滑らかに変化している。このグラフは、位置xを通る縦軸に関して左右対称である。
このように、複合露光領域Aにおける露光量は、x方向の位置座標を独立変数とする連続関数で表されるが、簡易的には、階段状の変化で近似されてもよい。
例えば、区間Aを位置x2n-1と位置x2n+1との間として、区間Aの平均露光量によって、区間A内の各露光量が近似されてもよい。
【0055】
以上説明したように、比較例の露光装置300による露光では、視野絞り3においてY方向に見た開口量がX方向において一定であっても、複合露光領域Aにおける実効的な露光量が単独露光領域Aに比べて低下する。
本実施形態では、投影光学ユニット5が光減衰フィルタ8を備えることによって、単独露光領域Aにおける露光量を低減させる。これにより、複合露光領域Aにおける実効的な露光量の低下に基づく実効的な露光むらが低減される。
以下、上記比較例の動作と異なる点を中心に説明する。
【0056】
露光装置100の露光動作においては、投影光学ユニット5から出射される露光光L5A、L5Bは光減衰フィルタ8を透過している。このため、露光光L5A、L5Bによって、被露光体6に投影される光像の光量分布が、第1の光像I13A、第2の光像I13Bの光量分布とは異なる点が露光装置300の動作と異なる。被露光体6に投影される光像の光量低下は、光減衰フィルタ8の減光部8aの透過率と光透過部8bの透過率とに基づく。
図11に示すように、露光光L5A(L5B)によって、被露光体6に投影される第1の光像I5A(第2の光像I5B)は、第1光減衰像I8aと第2光減衰像I8bとによって構成される。
第1光減衰像I8aは、第1開口部3A(第2開口部3B)の範囲において減光部8aと重なる領域に形成される。本実施形態の場合、第1光減衰像I8aは、単独開口領域rの範囲の光像である。第1光減衰像I8aの光量は、第1の光像I13A(第2の光像I13B)の光量から、減光部8aの透過率TL1に応じて低下している。
第2光減衰像I8bは、第1開口部3A(第2開口部3B)の範囲において光透過部8bと重なる領域に形成される。本実施形態の場合、第2光減衰像I8bは、複合開口領域rの範囲の光像である。第2光減衰像I8bの光量は、第1の光像I13A(第2の光像I13B)の光量から、光透過部8bの透過率Tmaxに応じて低下している。ただし、Tmax>TL1であるため、第2光減衰像I8bの光量は第1光減衰像I8aの光量に比べて大きい。
【0057】
このため、第1の光像I5A、第2の光像I5Bが被露光体6上を走査した場合の積算光量は、複合開口領域rではあまり低下しないのに対して、単独開口領域rではより大きく低下する。
比較例と対比しやすいように、透過率Tmaxが100%の場合における走査露光時の積算光量を図12に示す。
図12の横軸における符号は、図11に記載されたC-C線上の同符号の点の位置を表す。C-C線上の点i、j、k、m、n、p、q、rは、それぞれ光減衰フィルタ8のB-B線上の点a、b、c、d、e、f、g、hに対応している。このため、点jから点mまでの区間および点nから点qまでの区間は、それぞれ平面視にて複合開口領域rと重なる複合露光領域Aである。点mから点nまでの区間は、平面視にて単独開口領域rと重なる単独露光領域Aである。本実施形態では、単独露光領域Aは光量補正領域Mになっている。
図12における曲線202(実線参照)は本実施形態における積算光量を示し、曲線203(一点鎖線参照)は比較例における積算光量を示す。ただし、複合露光領域Aでは、曲線203は曲線202と重なっている。
【0058】
曲線202、203に示されるように、本実施形態における積算光量は、複合露光領域Aでは、比較例の積算光量と同様になる。このため、複合露光領域Aでは、例えば、点jと点kとの間では、積算光量がΔQ(=q-q)だけ低下している。
これに対して、光量補正領域Mに重なる単独露光領域Aの積算光量は、一定値Q(ただし、q<Q<q)である。
このように、本実施形態では、積算光量の全変動幅ΔQは比較例と変わらない。しかし、単独露光領域Aの積算光量がqからQに低下されることで、単独露光領域Aの露光量に対する複合露光領域Aの露光量の変動量がΔQよりも小さくなる。
特に、減光部8aの透過率TL1を適宜設定することで、Q=(q+q)/2とすれば、単独露光領域Aの露光量に対する複合露光領域Aの露光量の変動量は、ΔQ/2になるため、露光むらが最小化される。このため、減光部8aの透過率TL1は、Q=(q+q)/2となるように設定することがより好ましい。
このようにして、単独露光領域Aの露光量に対する複合露光領域Aの露光量のむらが低減されると、露光領域の継ぎ目に起因する露光むらが低減される。これにより、例えば、マスクパターンPに対応する線幅の変動などが低減され、より高精度の露光パターンが得られる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の露光装置100によれば、千鳥配列された複数の投影光学系を用いる場合に、露光領域の継ぎ目に起因する露光むらを低減することができる。
【0060】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態の露光装置について説明する。
図13は、本発明の第2の実施形態の露光装置に用いられる光透過量低減部材の一例を示す模式的な平面図である。図14は、図13におけるD-D線に沿う透過率分布を示す模式的なグラフである。図14のグラフの横軸はX方向の位置、縦軸は透過率を表す。図15は、本発明の第2の実施形態の露光装置の露光における積算光量について説明する模式的なグラフである。図15のグラフの横軸はX方向の位置、縦軸は積算光量を表す。
【0061】
図1、2に示すように、本実施形態の露光装置110は、上記第1の実施形態の露光装置100の投影光学ユニット5に代えて、投影光学ユニット15を備える。
図6に示すように、投影光学ユニット15は、上記第1の実施形態における投影光学ユニット5の光減衰フィルタ8に代えて、光減衰フィルタ18(光透過量減衰部材)を備える。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0062】
図6に示すように、光減衰フィルタ18は、上記第1の実施形態における光減衰フィルタ8と同様、投影光学ユニット15における第1列投影光学系5A、第2列投影光学系5Bの各レンズ鏡筒5bの下端部に、それぞれ配置されている。各光減衰フィルタ18は、レンズ鏡筒5bの下端部と固定されるフィルタホルダ9によって、レンズ5aに対する位置が固定されている。
光減衰フィルタ18は、第1列投影光学系5A(第2列投影光学系5B)を透過した露光光L2A(L2B)を、少なくとも一部の光量が低減された露光光L15A(L15B)に変換する。
露光光L15A(L15B)は、被露光体6上における後述の光量補正領域M図13参照)に照射される。ここで、被露光体6上における光量補正領域Mとは、平面視において少なくとも単独開口領域rと重なる領域である。本実施形態では、一例として、光量補正領域Mは単独開口領域rと単独開口領域rの両端部に隣接する各複合開口領域rの一部と重なる領域とされている。
【0063】
図13に示すように、光減衰フィルタ18は、上記第1の実施形態の減光部8aに代えて、減光部18a(均一濃度フィルタ)を備える。
【0064】
減光部18aは、上記第1の実施形態の減光部8aのX方向の両端部をそれぞれ複合開口領域rのX方向の幅の50%未満だけ、外側に延ばして構成される。図13に示す例では、減光部18aは、一例として、減光部8aよりも、複合開口領域rのX方向の幅の25%ずつX方向の両側に拡幅されている。
減光部18aは、平面視にて、第1開口部3A(第2開口部3B)の単独開口領域rの全体と、これに隣接するX方向の両側の複合開口領域rの一部の領域(図13では、複合開口領域rの四分の一の領域)とそれぞれ重なるように配置されている。
減光部18aの透過率は、上記第1の実施形態における減光部8aと同様である。
【0065】
本実施形態における光透過部8bは、光減衰フィルタ18において、減光部18aを除く領域に形成されている。
【0066】
このような構成により、光減衰フィルタ18は、X方向において、図14に曲線204で示すような透過率分布を有する。
図14の横軸における符号は、図13に記載されたD-D線上の同符号の点の位置を表す。点a~点hの意味は、上記第1の実施形態の説明と同様である。ただし、点c’(f’)は、線分cd(ef)の中点である。
曲線204は、点c’と点f’との間で、上記第1の実施形態における減光部8aと同様、最小値TL1をとり、それ以外の位置において一定値Tmaxをとる。
光減衰フィルタ18は、光減衰フィルタ8と同様にして製造される。
【0067】
このような構成の光減衰フィルタ18によって、視野絞り3およびレンズ5aを透過した露光光L2A(L2B)は、減光部18aおよび光透過部8bの透過率に応じて光減衰した露光光L15A(L15B)に変換される。
【0068】
露光装置110によれば、上記第1の実施形態の露光装置100と同様にして露光が行われる。
露光装置110の露光動作においては、投影光学ユニット15から出射される露光光L15A、L15Bは光減衰フィルタ18を透過している。このため、露光光L15A、L15Bによって、被露光体6に投影される第1の光像(第2の光像)光像の光量分布が、第1の光像I8A、第2の光像I8Bの光量分布とは異なる点が露光装置100の動作と異なる。
【0069】
露光光L15A、L15Bが被露光体6上を走査した場合の積算光量のグラフを図15示す。ただし、図15には、図12と同様、上述の比較例と対比しやすいように、透過率Tmaxが100%の場合における走査露光時の積算光量が示されている。
図15の横軸における符号i~rは、被露光体6上における図13の点a~hの対応点を表す。ただし、点c’、f’に対応する位置は、それぞれ符号m’、n’で示されている。点j’、q’は、第1列投影光学系5Aに隣り合う第2列投影光学系5Bに配置された減光部8aの点f’、c’に相当する位置を表す。
このため、点jから点mまでの区間および点nから点qまでの区間は、それぞれ平面視にて複合開口領域rと重なる複合露光領域Aである。点mから点nまでの区間は、平面視にて単独開口領域rと重なる単独露光領域Aである。
本実施形態では、光減衰フィルタ18の減光部18aの透過光が照射される光量補正領域Mは、単独開口領域rの全体と重なる領域と、そのX方向両側において複合開口領域rの四分の一と重なる領域と、からなる。
図15における曲線205(実線参照)は本実施形態における積算光量を示し、曲線203(一点鎖線参照)は比較例における積算光量を示す。曲線206(破線参照)は、各光減衰フィルタ18の作用による光減衰量を示す。
【0070】
曲線206に示されるように、本実施形態における積算光量は、光量補正領域Mの範囲で、透過量が一定の割合で低下するため、曲線203で表される比較例の積算光量は、全体的に低下する。グラフ上では、比較例の積算光量が下方に平行移動する。例えば、点mから点nまでの積算光量はqからQに低下する。同様に、点jから点j’、点m’から点m、点nから点n’、および点qから点q’の各領域の光量が点mから点nまでの光量Q以下に低下する。
このため、曲線205に示されるように、本実施形態における積算光量は、単独露光領域AではQ(ただし、q<Q<q)、複合露光領域Aでは、qからQの間で振動する光量分布を示す。
本実施形態における光減衰フィルタ18によれば、透過率TL2と、第1減光部18aおよび第2減光部18bの透過率の変化率と、を適宜に設定することによって、積算光量の全変動幅Q-qの大きさを、比較例の積算光量の全変動幅ΔQよりも小さくすることができる。
このように、本実施形態では、積算光量の全変動幅Q-q自体を比較例よりも低減することができる。さらに、複合露光領域Aにおける露光量のむらの大きさも低減されるため、露光領域の継ぎ目に起因する露光むらが低減される。これにより、例えば、マスクパターンPに対応する線幅の変動などが低減され、より高精度の露光パターンが得られる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の露光装置110によれば、千鳥配列された複数の投影光学系を用いる場合に、露光領域の継ぎ目に起因する露光むらを低減することができる。
【0072】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態の露光装置について説明する。
図16は、本発明の第3の実施形態の露光装置に用いられる光透過量低減部材の一例を示す模式的な平面図である。図17は、図16におけるE-E線に沿う透過率分布を示す模式的なグラフである。図17のグラフの横軸はX方向の位置、縦軸は透過率を表す。図18は、本発明の第3の実施形態の露光装置の露光における積算光量について説明する模式的なグラフである。図18のグラフの横軸はX方向の位置、縦軸は積算光量を表す。
【0073】
図1、2に示すように、本実施形態の露光装置120は、上記第1の実施形態の露光装置100の投影光学ユニット5に代えて、投影光学ユニット25を備える。
図6に示すように、投影光学ユニット25は、上記第1の実施形態における投影光学ユニット5の光減衰フィルタ8に代えて、光減衰フィルタ28(光透過量減衰部材)を備える。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0074】
図6に示すように、光減衰フィルタ28は、上記第1の実施形態における光減衰フィルタ8と同様、投影光学ユニット25における第1列投影光学系5A、第2列投影光学系5Bの各レンズ鏡筒5bの下端部に、それぞれ配置されている。各光減衰フィルタ28は、レンズ鏡筒5bの下端部と固定されるフィルタホルダ9によって、レンズ5aに対する位置が固定されている。
光減衰フィルタ28は、第1列投影光学系5A(第2列投影光学系5B)を透過した露光光L2A(L2B)を、少なくとも一部の光量が低減された露光光L25A(L25B)に変換する。
露光光L25A(L25B)は、被露光体6上における上記第2の実施形態と同様の光量補正領域M図16参照)に照射される。
【0075】
図16に示すように、光減衰フィルタ28は、第1減光部28a(均一濃度フィルタ)と、第2減光部28b(傾斜濃度フィルタ)と、第3減光部28c(傾斜濃度フィルタ)と、上記第2の実施形態と同様の光透過部18cと、を備える。
【0076】
第1減光部18aは、視野絞り3およびレンズ5aを透過した露光光L2A(L2B)を一定の透過率TL3で減衰させる部位である。第1減光部18aは、透過率が異なる以外は、上記第1の実施形態における減光部8aと同様に形成されている。
【0077】
第2減光部28bは、視野絞り3およびレンズ5aを透過した露光光L2A(L2B)を第1開口部3A(第2開口部3B)における第1の光量補正領域mにおいて、透過率TmaxからTL3の範囲で、X方向正方向に漸次減衰させる部位である。
第3減光部28cは、視野絞り3およびレンズ5aを透過した露光光L2A(L2B)を第1開口部3A(第2開口部3B)における第2の光量補正領域mにおいて、透過率TmaxからTL3の範囲で、X方向負方向に漸次減衰させる部位である。
【0078】
第2減光部28bおよび第3減光部28cにおける透過率の変化率は、光量補正領域Mにおける光量補正の必要に応じて、例えば、実験、シミュレーションなどに基づいて設定される。第2減光部28bおよび第3減光部28cにおける透過率の変化率は、一定(直線変化)でもよいし、適宜の関数に基づいて変化していてもよい。透過率の変化率は、単調でもよいし、非単調でもよい。さらに、透過率の変化は滑らかな変化には限定されない。例えば、透過率は、ステップ状に変化していてもよい。
【0079】
このような構成により、光減衰フィルタ28は、X方向において、図17に曲線207で示すような透過率分布を有する。
図17の横軸における符号は、図16に記載されたE-E線上の同符号の点の位置を表す。点a~点hの意味は、上記第1の実施形態の説明と同様である。
曲線207は、点cでTmaxをとり、点cから点dに向かって漸次透過率が減少し、点dから点eまでの間で一定値TL3をとる。曲線207は、点eから点fに向かって漸次透過率が増大し、点fでTmaxをとる。曲線207はそれ以外の位置においては一定値Tmaxをとる。
【0080】
光減衰フィルタ28は、例えば、ガラス基板の表面において第1減光部28a、第2減光部28b、および第3減光部28cとなる部位に金属薄膜を蒸着するなどして製造されてもよい。
【0081】
このような構成の光減衰フィルタ28によって、視野絞り3およびレンズ5aを透過した露光光L2A(L2B)は、第1減光部28a、第2減光部28b、第3減光部28c、および光透過部18cの透過率に応じて光減衰した露光光L25A(L25B)に変換される。透過率TL3は、露光光L25A(L25B)による後述する実効的な露光量のむらが低減できるように、0%を超え100%未満の範囲から選ばれる。
【0082】
露光装置120によれば、上記第1の実施形態の露光装置100と同様にして露光が行われる。
露光装置120の露光動作においては、投影光学ユニット25から出射される露光光L25A、L25Bは光減衰フィルタ28を透過している。このため、露光光L25A、L25Bによって、被露光体6に投影される第1の光像(第2の光像)光像の光量分布が、第1の光像I8A、第2の光像I8Bの光量分布とは異なる点が露光装置100の動作と異なる。
【0083】
露光光L25A、L25Bが被露光体6上を走査した場合の積算光量のグラフを図18示す。ただし、図18には、図12と同様、上述の比較例と対比しやすいように、透過率Tmaxが100%の場合における走査露光時の積算光量が示されている。
図18の横軸における符号i~rは、被露光体6上における図16の点a~hの対応点を表す。
このため、点jから点mまでの区間および点nから点qまでの区間は、それぞれ平面視にて複合開口領域rと重なる複合露光領域Aである。点mから点nまでの区間は、平面視にて単独開口領域rと重なる単独露光領域Aである。
図18における曲線208(実線参照)は本実施形態における積算光量を示し、曲線203(一点鎖線参照)は比較例における積算光量を示す。曲線209(破線参照)は、各光減衰フィルタ28の作用による光減衰量を示す。
【0084】
曲線208に示されるように、本実施形態における積算光量は、単独露光領域Aおよび複合露光領域Aの両方が光量補正領域Mになっているため、曲線203で表される比較例の積算光量は、全体的に低下する。
本実施形態では、第1減光部28aによって第1の光量補正領域mの積算光量がQ(ただし、q<Q<q)になるように、透過率TL3が設定される。
このため、第2減光部28b(第3減光部28c)による第2の光量補正領域mの積算光量の最大値Qは、Q<Q<qを満足する。第2の光量補正領域mの積算光量の最小値はqになる。
この結果、曲線209に示される積算光量の全変動幅がQ-q<ΔQとなるため、比較例に比べて積算光量の変動幅自体が低減される。
さらに、透過率TL3を適宜設定することによって、大部分の単独露光領域Aにおける積算光量となるQの値をQとqとの中間の値に設定することが可能である。この場合、積算光量Qに対する露光むらを(Q+q)/2(<ΔQ/2)以下にできるため、上記第1の実施形態に比べて、露光領域の継ぎ目に起因する露光むらがさらに低減される。これにより、例えば、マスクパターンPに対応する線幅の変動などが低減され、より高精度の露光パターンが得られる。
特に、上記第2の実施形態では、積算光量の全変動幅を低減するために比較例の最低の積算光量よりもさらに低光量となる部位が生じるのに対して、本実施形態の光減衰フィルタ28によれば、積算光量の最低値は比較例と同様である。このため、本実施形態によれば、積算光量の相対的な低下量が、上記第2の実施形態よりも少なくなる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態の露光装置120によれば、千鳥配列された複数の投影光学系を用いる場合に、露光領域の継ぎ目に起因する露光むらを低減することができる。
【0086】
[変形例]
次に、本実施形態において、露光むらをさらに低減できる具体的な変形例について説明する。
図19は、本発明の第3の実施形態の変形例の露光装置の光透過量低減部材の透過率分布を示す模式的なグラフである。図19のグラフの横軸はX方向の位置、縦軸は透過率を表す。図20は、本発明の第3の実施形態の変形例の露光装置の露光における積算光量について説明する模式的なグラフである。図20のグラフの横軸はX方向の位置、縦軸は積算光量を表す。
【0087】
本変形例は、光減衰フィルタ28による透過率の設定のみが上記第3の実施形態と異なる。
図19に示すように、本変形例では、第1減光部28aの透過率TL3は、単独露光領域Aにおける積算光量をqに設定できる大きさとされる。
本変形例では、第2減光部28b(第3減光部28c)の透過率は、複合露光領域Aにおける比較例の実効的な積算光量の低下量を相殺するように、点dから点c(点eから点fに向かって、透過率TL3からTmaxまで漸次増大させるように設定される。
このような本変形例の光減衰フィルタ28における積算光量の補正効果は図20における曲線209(破線参照)のように、比較例の積算光量を示す曲線203(一点鎖線参照)を上下方向に反転させたような曲線で表される。
この結果、本変形例の光減衰フィルタ28を透過した露光光の実効的な積算光量は、図20に曲線208(実線参照)で示すような一定値qになる。
このように、本変形例によれば、光減衰フィルタ28の透過率分布を、比較例の実効的な積算光量に対して、最適化を図ることによって、露光むらを除去することが可能になる。
【0088】
なお、上記各実施形態の説明では、露光装置において、光源、絞り部材、および投影光学系(以下、露光部と称する)が固定され、露光用フォトマスクおよび露光対象物(以下、被露光物と称する)が移動することによって走査露光が行われる場合の例で説明した。しかし、走査露光は、露光部と、被露光物と、が走査方向(Y方向、第1の方向)に相対移動して、相対走査が行われればよい。したがって、露光装置において、露光部が走査方向に移動し、被露光物が固定されていてもよい。さらに、露光装置において、露光部および被露光物がそれぞれ移動してもよい。
【0089】
上記各実施形態の説明では、第1の方向と第2の方向とが互いに直交する場合の例で説明した。しかし、第1の方向と第2の方向とは、平面上において互いに交差する方向であればよく、交差角は直角には限定されない。
【0090】
上記各実施形態の説明では、フォトマスク1が第1の駆動部10によって移動され、被露光体6がベース7を移動する第2の駆動部11によって移動される場合の例で説明した。しかし、フォトマスク1とベース7とは1つの駆動部によって走査方向に移動されてもよい。
【0091】
上記各実施形態の説明では、視野絞り3、4が、投影光学系の全体に重なる1枚の1枚のアパーチャからなる場合の例で説明した。しかし、視野絞り3、4は、投影光学系のNAの範囲に開口部を形成し、開口部を透過する光以外を投影光学系に入射させない構成であれば、2以上のアパーチャの組み合わせによって構成されてもよい。
【0092】
上記各実施形態の説明では、光透過量低減部材が、投影光学系と露光対象物との間に配置される場合の例で説明した。しかし、光透過量低減部材は、光源から露光対象物までの間であれば、どの位置に配置されていてもよい。
【0093】
上記第1の実施形態の説明では、投影光学ユニット5が、X方向における被露光体6の全幅を露光する場合の例で説明した。しかし、単一のフォトマスク1によって、被露光体6の露光パターンを露光できれば、投影光学ユニット5は、X方向の一部を覆う大きさでもよい。この場合、露光装置100におけるY方向の走査露光を、X方向にずらして複数回行うことによって、被露光体6の全体が露光される。
【0094】
以上、本発明の好ましい各実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0095】
1 フォトマスク(露光用フォトマスク)
2 照明光源(光源)
3、4 視野絞り(絞り部材)
3A、4A 第1開口部(開口部)
3B、4B 第2開口部(開口部)
5、15、25 投影光学ユニット
5A 第1列投影光学系(投影光学系)
5B 第2列投影光学系(投影光学系)
6 被露光体(露光対象物)
8、18、28 光減衰フィルタ(光透過量減衰部材)
8a、18a 減光部(均一濃度フィルタ)
28a 第1減光部(第1の光透過量低減部、均一濃度フィルタ)
28b 第2減光部(第2の光透過量低減部、傾斜濃度フィルタ)
28c 第3減光部(第2の光透過量低減部、傾斜濃度フィルタ)
100、110、120 露光装置
複合露光領域
、AS1、AS2 単独露光領域
5A、I8A 第1の光像
5B、8B 第2の光像
2A、L2B、L5A、L5B、L15A、L15B、L25A、L25B、 露光光
、M 光量補正領域
第1の光量補正領域
第2の光量補正領域
、O 軸線(第2の軸線)
軸線(第1の軸線)
P マスクパターン
複合開口領域
単独開口領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20