(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】フィラー含有フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220405BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220405BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220405BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220405BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20220405BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C08J5/18 CFC
C08L101/00
B32B27/18 J
B32B27/20 Z
H01R11/01 501D
H01R11/01 501E
H01B5/16
H01R11/01 501A
(21)【出願番号】P 2017159647
(22)【出願日】2017-08-22
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2016216233
(32)【優先日】2016-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 健
(72)【発明者】
【氏名】久我 生子
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-233202(JP,A)
【文献】特開2016-131152(JP,A)
【文献】国際公開第2016/068168(WO,A1)
【文献】特開2009-074020(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076234(WO,A1)
【文献】特開2010-067360(JP,A)
【文献】特開2010-033793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
C09J 7/00- 7/50
H01B 5/00- 5/16
H01R 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層にフィラーが規則的に配置されているフィラー分散層を有するフィラー含有フィルムであって、
平面視におけるフィラーの面積占有率が25%以下、
フィラーの粒子径Dを、フィラーが球形形状である場合には、その直径として定義し、球形形状でない場合には、フィラー含有フィルムの平面画像又は断面画像に基づき最大長又は球形に模した形状の直径として定義したとき、樹脂層の層厚Laとフィラーの
粒子径Dとの比
(La/D
)が0.3以上1.3以下、フィラー全体に対し、フィラー同士が互いに非接触で存在する個数割合が95%以上であ
り、
フィラー近傍の樹脂層の表面が、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層の接平面に対して傾斜又は起伏を有し、該傾斜では、フィラーの周りの樹脂層の表面が前記接平面に対して欠けており、該起伏では、フィラー直上の樹脂層の樹脂量が、該フィラー直上の樹脂層の表面が前記接平面にあるとしたときに比して少なくなっているフィラー含有フィルム。
【請求項2】
傾斜の最大深さLeとフィラーの粒子径Dとの比(Le/D)は50%未満であり、又は起伏の最大深さLfとフィラーの粒子径Dとの比(Lf/D)は10%未満である請求項1記載のフィラー含有フィルム。
【請求項3】
傾斜又は起伏の最大径Ldとフィラーの粒子径Dとの比(Ld/D)は100%以上であり、傾斜又は起伏におけるフィラーの露出又は直上部分の径Lcとフィラーの粒子径Dとの比(Lc/D)はそれぞれ100%以下である請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項4】
樹脂層の層厚Laとフィラーの粒子径Dとの比(La/D)が1未満である請求項1~3のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項5】
フィラー全体に対し、フィラー同士が互いに非接触で存在する個数割合が99.5%以上である請求項1
~4のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項6】
フィラーが6方格子、正方格子又は斜方格子に配置されており、任意のフィラーP0との距離が近い順に3個のフィラーを選択した場合に、その3個のフィラーとフィラーP0との距離のうち最大の距離と最小の距離との比が1.2以下である請求項1
~5のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項7】
樹脂層よりも最低溶融粘度が低い第2の樹脂層がフィラー分散層に積層されている請求項1~
6のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項8】
フィラー含有フィルムを構成する樹脂層全体の最低溶融粘度が200~4000Pa・sである請求項1~
7のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項9】
第2の樹脂層にフィラーが食い込んでいる請求項
7又は
8記載のフィラー含有フィルム。
【請求項10】
フィラーが導電粒子であり、フィラー分散層の樹脂層が絶縁性樹脂層であり、異方性導電フィルムとして使用される請求項1~
9のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載のフィラー含有フィルムが物品に貼着しているフィルム貼着体。
【請求項12】
請求項1~9のいずれかに記載のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品とが接続されている接続構造体。
【請求項13】
請求項
10記載のフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品とが異方性導電接続されてい
る接続構造体。
【請求項14】
請求項1~
9のいずれかに記載のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品を圧着する接続構造体の製造方法。
【請求項15】
請求項
10記載のフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品を熱圧着することにより第1電子部品と第2電子部品
とを異方性導電接
続する
、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィラーが樹脂層に分散しているフィラー含有フィルムは、艶消しフィルム、コンデンサー用フィルム、光学フィルム、ラベル用フィルム、耐電防止用フィルム、異方性導電フィルムなど多種多様の用途で使用されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
【0003】
例えば、フィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムを用いて異方性導電接続を行うにあたり、端子が捕捉する導電粒子数のばらつきを抑えるため、異方性導電フィルムにおいて導電粒子を特定の配列にすること(特許文献5)、対向する端子の接続信頼性の確保と、隣り合う端子間でのショートの抑制を両立させるために、異方性導電フィルムにおいて互いに離間した導電粒子の数を所定の割合以上とすること(特許文献6)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-15680号公報
【文献】特開2015-138904号公報
【文献】特開2013-103368号公報
【文献】特開2014-183266号公報
【文献】特許4887700号公報
【文献】特開2015-167106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、押圧治具を用いて異方性導電フィルムを電子部品に熱圧着するにあたり、異方性導電フィルムに含有させる導電粒子の個数密度と、押圧治具に必要とされる推力との関係について詳細には検討されていない。
【0006】
そのため、端子の接続信頼性の確保とショートの抑制の点から異方性導電フィルムにおける導電粒子の個数密度を定めても、それを実際に押圧治具にセットして異方性導電接続をすると、導電粒子を端子に押し込むために押圧治具に必要とされる推力が増加し、従前の押圧治具では対応できない場合があり、この場合に押圧治具の改造などを行うと、コストの増加が懸念される。
【0007】
これに対し、本発明は、フィラー含有フィルムを物品に接続する場合に、例えば異方性導電フィルムを使用して電子部品を接続する場合において、端子における導電粒子の捕捉性を高め、導通特性を改善し、かつ異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムを電子部品に押し付ける押圧治具に必要とされる推力が過度に高くならないようにすることを課題とする。また、フィラー含有フィルムのフィラーの粒子径とこれを保持する層の厚みとの間の関係を指標として当該フィラー含有フィルムの特性をコントロール(上述した、異方性導電フィルムにおける押圧治具に必要とされる推力の課題はその一例となる)できるようにすることも課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、フィラー含有フィルムを物品で圧着する際にその特性をフィラーの粒子径とこれを保持する層の厚みの比を特定の範囲とすることや、フィラーを規則的に分散させること、フィラー同士が非接触で存在する個数割合を高めること、また、フィラーの面積占有率を調整すること等により、フィラー含有フィルムの特性を調整できることを見出し、本発明を完成させた。その一例として異方性導電フィルムで具体的に説明すると、異方性導電フィルムを電子部品に熱圧着する際に端子における導電粒子等のフィラーの捕捉性を高め、かつ押圧治具に必要とされる推力を低減させるには、導電粒子等のフィラーを樹脂層(好ましくは絶縁性樹脂層)に規則的に分散し、導電粒子等のフィラー同士が非接触で存在する個数割合を高めること、樹脂層の厚さとフィラーの平均粒子径の比を特定の範囲とすること、及び異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムにおけるフィラーの面積占有率を調整することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、樹脂層にフィラーが規則的に配置されているフィラー分散層を有するフィラー含有フィルムであって、
平面視におけるフィラーの面積占有率が25%以下、
樹脂層の層厚Laとフィラーの平均粒子径Dとの比La/Dが0.3以上1.3以下、
フィラー全体に対し、フィラー同士が互いに非接触で存在する個数割合が95%以上であるフィラー含有フィルムを提供する。特に本発明は、フィラー含有フィルムの好ましい一態様として、フィラーが導電粒子であり、フィラー分散層の樹脂層が絶縁性樹脂層であり、異方性導電フィルムとして使用されるフィラー含有フィルムを提供する。
【0010】
また、本発明は、上述のフィラー含有フィルムが物品に貼着しているフィルム貼着体、上述のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品とが接続されている接続構造体、特に、異方性導電フィルムとして使用されるフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品とが異方性導電接続されている接続構造体を提供する。更に、本発明は、上述のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品を圧着する接続構造体の製造方法、並びに、第1物品、第2物品をそれぞれ第1電子部品、第2電子部品とし、異方性導電フィルムとして使用されるフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品を熱圧着することにより第1電子部品と第2電子部品が異方性導電接続された接続構造体を製造する、接続構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)によれば、導電粒子等のフィラーが樹脂層(好ましくは絶縁性樹脂層)に規則的に分散し、フィラー全体に対してフィラー同士が互いに非接触で存在する個数割合が95%以上であるため、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムを電子部品に熱圧着する際に各フィラーに均等に押圧がかかり、また、樹脂層の層厚Laとフィラーの平均粒子径Dとの比La/Dが0.3以上1、3以下であるため、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムを電子部品に熱圧着する際にフィラーの位置ずれが起こり難くなるので、圧着部位におけるフィラーの配列や分散状態を圧着前の状態に維持することができる。したがって、異方性導電フィルムのフィラーが端子に捕捉され易くなる。これは異方性導電フィルム以外の接続においても、同様の傾向が得られる。
【0012】
さらに、本発明のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)によれば、導電粒子等のフィラーの面積占有率が25%以下であるため、フィラーを低圧で物品(電子部品)に押し付けることを確保でき、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムを電子部品に圧着する際に、押圧治具に必要とされる推力が過度に高くなることを防止できる。また、他の態様としては例えば光学フィルムがあるが、フィラーの樹脂層における厚み方向および平面視における非接触で独立した個数割合を調整することで、フィラーの光学的な性能を調整することができる。艶消しフィルムなど外観に直結するものにも同様のことが言える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Aにおけるフィラー(導電粒子)の配置を示す平面図である。
【
図1B】
図1Bは、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Aの断面図である。
【
図2】
図2は、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Bの断面図である。
【
図3】
図3は、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Cの断面図である。
【
図4】
図4は、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Dの断面図である。
【
図5】
図5は、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Eの断面図である。
【
図6】
図6は、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Fの断面図である。
【
図7】
図7は、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Gの断面図である。
【
図8】
図8は、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Hの断面図である。
【
図9】
図9は、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Iの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムを主にして、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0015】
<フィラー含有フィルムの全体構成>
図1Aは、本発明のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Aについて、フィラー(又は導電粒子)1の配置を説明する平面図である。また、
図1Bは、フィラー含有フィルム10AのX-X断面図である。
【0016】
このフィラー含有フィルム10Aのフィラー分散層(又は導電粒子分散層)3では、最低溶融粘度が比較的高粘度の樹脂から形成された樹脂層2の片面にフィラー1が規則的な配列状態で分散している。
【0017】
<フィラー>
フィラー1は、フィラー含有フィルムの用途に応じて、公知の無機系フィラー(金属、金属酸化物、金属窒化物など)、有機系フィラー(樹脂粒子、ゴム粒子など)、有機系材料と無機系材料が混在したフィラー(例えば、コアが樹脂材料で形成され、表面が金属メッキされている粒子(金属被覆樹脂粒子)、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたもの、導電粒子の表面を絶縁処理したもの等)から、硬さ、光学的性能などの用途に求められる性能に応じて適宜選択される。例えば、光学フィルムや艶消しフィルムでは、シリカフィラー、酸化チタンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、メラミンフィラーや種々のチタン酸塩等を使用することができる。コンデンサー用フィルムでは、酸化チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ビスマス、酸化ランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛及びこれらの混合物等を使用することができる。接着フィルムではポリマー系のゴム粒子、シリコーンゴム粒子等を含有させることができる。異方性導電フィルムでは導電粒子を含有させる。導電粒子としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、導電粒子の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来たさない絶縁処理が施されていてもよい。上述の用途別に挙げたフィラーは、当該用途に限定されるものではなく、必要に応じて他の用途のフィラー含有フィルムが含有してもよい。また、各用途のフィラー含有フィルムでは、必要に応じて2種以上のフィラーを併用することができる。
【0018】
フィラーの形状は、フィラー含有フィルムの用途に応じ、球形、楕円球、柱状、針状、それらの組み合わせ等から適宜選択して定められる。フィラー配置の確認が容易になり、均等な状態を維持し易い点から、球形が好ましい。特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、フィラーである導電粒子が、略真球であることが好ましい。導電粒子として略真球のものを使用することにより、例えば、特開2014-60150号公報に記載のように転写型を用いて導電粒子を配列させた異方性導電フィルムを製造するにあたり、転写型上で導電粒子が滑らかに転がるので、導電粒子を転写型上の所定の位置へ高精度に充填することができる。したがって、導電粒子を精確に配置することができる。
【0019】
フィラー1の粒子径Dは、配線高さのばらつきに対応できるようにし、また、導通抵抗の上昇を抑制し、且つショートを抑制するために、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは3μm以上9μm以下である。樹脂層2に分散させる前のフィラーの粒子径は、一般的な粒度分布測定装置により測定することができ、また、平均粒子径も粒度分布測定装置を用いて求めることができる。測定装置としては、一例としてFPIA-3000(マルバーン社)を挙げることができる。異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムにおける導電粒子等のフィラーの粒子径Dは、SEMなどの電子顕微鏡観察から求めることができる。この場合、フィラー径Dを測定するサンプル数を200以上とすることが望ましい。また、フィラーの形状が球形でない場合、フィラー含有フィルムの平面画像又は断面画像に基づき最大長または球形に模した形状の直径をフィラーの粒子径Dとすることができる。
【0020】
<フィラーの配列>
本発明のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)においては、導電粒子等のフィラー1がフィルムの平面視にてランダムではなく、規則的に配置されている。フィルムの平面視にてフィラー1は互いに接触することなく存在し、フィルム厚方向にもフィラー1が互いに重なることなく存在していることが好ましい。そのため、フィラー全体に対し、フィラー1同士が互いに非接触で存在する個数割合は95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99.5%以上である。また、各フィラー1のフィルム厚方向の位置も揃っていることが好ましい。例えば、
図1Aに示したようにフィラー1を6方格子配列とし、後述するようにフィラー1のフィルム厚方向の埋込量Lbを揃えることができる。なお、フィラー同士が互いに非接触で存在する個数割合が95%以上のフィラーの分散状態において、フィラーの所定の規則的な配置に対してフィラーが抜けている箇所Pxがあってもよい(
図1A)。このフィラーの抜けは、特性が許容できる範囲において、フィルムの所定の方向に規則的に存在することで確認できる。また、フィラーの抜けをフィルムの長手方向に繰り返し存在させること、あるいはフィラーの抜けている箇所をフィルムの長手方向に漸次増加または減少させることにより、ロット管理が可能となり、フィラー含有フィルム及びそれを用いた接続構造体にトレーサビリティ(追跡を可能とする性質)を付与することも可能となる。これは、フィラー含有フィルムやそれを用いた接続構造体の偽造防止、真贋判定、不正利用防止等にも有効となる。
【0021】
この他、フィラーの規則的な配置の態様としては、長方格子、斜方格子、正方格子、その他の矩形格子等の格子配列を挙げることができる。また、フィラーが所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させてもよい。規則的な配置は、フィルムの長手方向で繰り返されるものであれば特に制限はない。これらの規則配置のなかでも、フィラーが6方格子、正方格子又は斜方格子(即ち、菱形格子)に配置している場合には、任意のフィラーP0との距離が近い順に3個のフィラーP1、P2、P3を選択したときに、その3個のフィラーP1、P2、P3と前記フィラーP0との距離L1、L2、L3のうち、最大の距離(Lmax)と最小の距離(Lmin)との比(Lmax/Lmin)が1以上1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましく、1.05以下であることが更により好ましい(
図1A)。特に、フィラーが6方格子に配列している場合には、任意のフィラーP0との距離が近い順に5個のフィラーP1、P2、P3、P4、P5を選択し、上述と同様に最大の距離(Lmax)と最小の距離(Lmin)との比(Lmax/Lmin)を求めたときに、その比が1以上1.1以下であることが好ましい。フィラーが6方格子、正方格子又は斜方格子(菱形格子)に配置されている場合、最大の距離と最小の距離との比(Lmax/Lmin)は設計上は1となるが、実際には異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの製造時に微小な位置ずれが発生し、また、フィラー含有フィルムを巻装体とすると、フィラー含有フィルムの厚みによっては巻き締まりによっても微小な位置ずれが生じるおそれがある。したがって、上述の比(Lmax/Lmin)の上限は、本発明におけるフィラーの位置ずれの許容範囲となる。本発明ではこの許容範囲を低く抑えることにより、フィラー同士が互いに非接触に、かつ均等に配置されている。そのため、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時に各フィラー1である導電粒子に圧力を均等に加え、導通抵抗のばらつきを実際的に低減させることができる。なお、このように微小な位置ずれをも抑制してフィラーを配置する方法としては、後述するように異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムを製造する場合に予めフィラーが配置されるべき部位が規定された型を作製し、その部位にフィラーを配置し、そのフィラーを樹脂層に転写させることが好ましい。
【0022】
本発明においてフィラー1の配列に格子軸又は配列軸がある場合に、その格子軸又は配列軸はフィラー含有フィルムの長手方向に対して平行でもよくフィラー含有フィルムの長手方向と交叉してもよい。例えば異方性導電フィルムとした場合においては、接続する端子幅、端子ピッチなどに応じて定めることができる。例えば、フィラー含有フィルムをファインピッチ用の異方性導電フィルムとする場合、
図1Aに示したようにフィラー1の少なくとも一つの格子軸Aをフィラー含有フィルム10Aの長手方向に対して斜行させ、フィラー含有フィルム10Aで接続する端子20の長手方向と格子軸Aとのなす角度θを16°~74°にすることが好ましい。異方性導電フィルム以外の用途であっても、このように傾斜させることで捕捉状態を安定にできる効果が見込まれる。
【0023】
本発明において導電粒子等のフィラー1の粒子間距離は、後述するように異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムにおけるフィラー1の面積占有率が25%以下、好ましくは0.5%以上23%以下、より好ましくは1.4%以上20%未満となるように設定する。また、フィラーの個数密度が好ましくは30~32000個/mm2となるように設定する。
【0024】
即ち、面積占有率を25%以下とする限りにおいて、フィラー1の粒子間距離は、フィラー含有フィルムで接続する端子の大きさや端子ピッチに応じて適宜定める。例えば、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電フィルムをファインピッチのCOG(Chip On Glass)に対応させる場合、ショートを防止する点から最近接粒子間距離をフィラー径Dの0.5倍以上にすることが好ましく、0.7倍より大きくすることがより好ましい。一方、フィラー1の捕捉性の点から、最近接粒子間距離をフィラー径Dの4倍以下とすることが好ましく、3倍以下とすることがより好ましい。さらに、ショート抑制を安定させる点から、フィラーの粒子径によらずフィラー間の最近接距離を0.5μm以上とすることが好ましい。
【0025】
<フィラーの個数密度>
本発明において、フィラーの個数密度は、1辺が100μm以上の矩形領域を任意に複数箇所(5箇所以上、好ましくは10箇所以上)設定し、測定領域の合計面積を2mm2以上として求めることができる。個々の領域の大きさや数は、個数密度の状態によって適宜調整すればよい。ファインピッチ用途の比較的個数密度が大きい場合の一例として、フィラー含有フィルム10Aから任意により選択した面積100μm×100μm領域の200箇所について、金属顕微鏡などによる観測画像を用いて個数密度を測定し、それを平均することにより得ることができる。面積100μm×100μm領域は、バンプ間スペース50μm以下の接続対象物において、1個以上のバンプが存在する領域になる。
【0026】
導電粒子等のフィラーの個数密度は、上述のように金属顕微鏡を用いて観察して求める他、画像解析ソフト(例えば、WinROOF、三谷商事(株)等)により観察画像を計測して求めてもよい。
【0027】
フィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムでは、導電粒子等のフィラーの個数密度は、フィラーの面積占有率が25%以下となる限りにおいて、フィラーの粒子径、硬さ等に応じて設定される。即ち、異方性導電フィルムの場合にはフィラーの個数密度が小さすぎるとファインピッチの電子部品の接続に対応することができず、大きすぎるとショートを招くので、粒子径1~30μmの場合に、30~32000個/mm2が好ましく、280~28000個/mm2がより好ましい。
【0028】
<フィラーの面積占有率>
本発明のフィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムでは、異方性導電接続時等における押圧治具に必要とされる推力が過度に大きくならないようにする点から導電粒子等のフィラーの面積占有率が25%以下、好ましくは23%以下、より好ましくは20%未満である。また、導通安定性の確保の点から0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、2%以上が更に好ましい。フィラーの面積占有率は、「=[平面視におけるフィラーの個数密度]×[フィラー1個の平面視面積の平均]×100」により算出される。フィラー含有フィルムにおける面積占有率はその用途によって適宜選択すればよく、製造に支障をきたさない限り制限はないが、異方性接続以外の接続においても上記のような安定性のことが言えるため、上記同様の範囲が好ましくなる。
【0029】
式中、フィラーの個数密度は前述の方法で求められ、フィラー1個の平面視面積の平均は、フィルム面の金属顕微鏡などによる観測画像から計測により求められる。前述した画像解析ソフト(WinROOF、三谷商事(株))等を用いてもよい。
【0030】
本発明では、フィラーの面積占有率を、フィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムにおいて、電子部品に熱圧着するときに押圧治具に必要とされる推力の指標とし、フィラーの面積占有率が25%以下となるように、フィラーの粒子径、フィラーの個数密度などを設定する。従来、電子部品の端子幅、端子間距離、フィラーの粒子径、フィラーの配列などに応じて、フィラーの粒子間距離や、個数密度が定められていたが、本発明では、さらにフィラーの面積占有率が25%以下となるようにフィラーの粒子間距離や個数密度を定める。これにより、異方性導電フィルムを電子部品に圧着するときに、過度に高い推力が必要とされることを解消できる。また、他の態様としては例えば光学フィルムがあるが、フィラーの面積占有率など上記のように調整することで、フィラーの光学的な性能を調整することができる。艶消しフィルムなど外観に直結するものにも同様のことが言える。
【0031】
<樹脂層>
(樹脂層の粘度)
樹脂層2の最低溶融粘度は、特に制限はなく、フィラー含有フィルムの用途や、フィラー含有フィルムの製造方法等に応じて適宜定めることができる。例えば、後述の凹み2b、2cを形成できる限り、フィラー含有フィルムの製造方法によっては1000Pa・s程度とすることもできる。一方、フィラー含有フィルムの製造方法として、フィラーを樹脂層の表面に所定の配置で保持させ、そのフィラーを樹脂層に押し込む方法を行うとき、樹脂層がフィルム成形を可能とする点から樹脂層の最低溶融粘度を1100Pa・s以上とすることが好ましい。
【0032】
また、後述のフィラー含有フィルムの製造方法で説明するように、
図1Bに示すように樹脂層2に押し込んだフィラー1の露出部分の周りに凹み2bを形成したり、
図6に示すように樹脂層2に押し込んだフィラー1の直上に凹み2cを形成したりする点から、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、さらに好ましくは3000~15000Pa・s、さらにより好ましくは3000~10000Pa・sである。この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instrument社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。
【0033】
樹脂層2の最低溶融粘度を1500Pa・s以上の高粘度とすることにより、フィラー含有フィルムの物品への圧着時にフィラーの不用な移動を抑制でき、特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、異方性導電接続時に端子間で挟持されるべき導電粒子が樹脂流動により流されてしまうことを防止できる。
【0034】
また、樹脂層2にフィラー1を押し込むことによりフィラー含有フィルム10Aのフィラー分散層3を形成する場合において、フィラー1を押し込むときの樹脂層2は、フィラー1が樹脂層2から露出するようにフィラー1を樹脂層2に押し込んだときに、樹脂層2が塑性変形してフィラー1の周囲の樹脂層2に凹み2b(
図1B)が形成されるような高粘度な粘性体とするか、あるいは、フィラー1が樹脂層2から露出することなく樹脂層2に埋まるようにフィラー1を押し込んだときに、フィラー1の直上の樹脂層2の表面に凹み2c(
図6)が形成されるような高粘度な粘性体とする。そのため、樹脂層2の60℃における粘度は、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。この測定は最低溶融粘度と同様の測定方法で行い、温度が60℃の値を抽出して求めることができる。
【0035】
樹脂層2にフィラー1を押し込むときの該樹脂層2の具体的な粘度は、形成する凹み2b、2cの形状や深さなどに応じて、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。また、このような粘度を好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃で得られるようにする。
【0036】
上述したように、樹脂層2から露出しているフィラー1の周囲に凹み2b(
図1B)が形成されていることにより、フィラー含有フィルムの物品への圧着時に生じるフィラー1の偏平化に対して樹脂から受ける抵抗が、凹み2bが無い場合に比して低減する。このため、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとした場合には、異方性導電接続時に端子で導電粒子が挟持され易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性が向上する。
【0037】
また、樹脂層2から露出することなく埋まっているフィラー1の直上の樹脂層2の表面に凹み2c(
図6)が形成されていることにより、凹み2cが無い場合に比してフィラー含有フィルムの物品への圧着時の圧力がフィラー1に集中し易くなる。このため、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとした場合には、異方性導電接続時に端子で導電粒子が挟持され易くなることで捕捉性が向上し、導通性能が向上する。このような捕捉性の向上は、異方性導電フィルムに限定されるものではなく、異方性導電フィルム以外のフィラー含有フィルムにも同様の効果が期待できる。
【0038】
<凹みに代わる“傾斜”もしくは“起伏”>
図1B、
図6に示すようなフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)の 「凹み」2b、2cは、「傾斜」もしくは「起伏」という観点から説明することもできる。以下に、図面を参照しながら説明する。
【0039】
フィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Aはフィラー分散層3から構成されている(
図1B)。フィラー分散層3では、樹脂層2の片面にフィラー1が露出した状態で規則的に分散している。フィルムの平面視にてフィラー1は互いに接触しておらず、フィルム厚方向にもフィラー1が互いに重なることなく規則的に分散し、フィラー1のフィルム厚方向の位置が揃った単層のフィラー層を構成している。
【0040】
個々のフィラー1の周囲の樹脂層2の表面2aには、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層2の接平面2pに対して傾斜2bが形成されている。なお後述するように、本発明のフィラー含有フィルムでは、樹脂層2に埋め込まれたフィラー1の直上の樹脂層の表面に起伏2cが形成されていてもよい(
図6)。
【0041】
本発明において、「傾斜」とは、フィラー1の近傍で樹脂層の表面の平坦性が損なわれ、前記接平面2pに対して樹脂層の一部が欠けて樹脂量が低減している状態を意味する。換言すれば、傾斜では、フィラーの周りの樹脂層の表面が接平面に対して欠けていることになる。一方、「起伏」とは、フィラーの直上の樹脂層の表面にうねりがあり、うねりのように高低差がある部分が存在することで樹脂が低減している状態を意味する。換言すれば、フィラー直上の樹脂層の樹脂量が、フィラー直上の樹脂層の表面が接平面にあるとしたときに比して少なくなる。これらは、フィラーの直上に相当する部位とフィラー間の平坦な表面部分(
図1B、
図6)とを対比して認識することができる。なお、起伏の開始点が傾斜として存在する場合もある。
【0042】
上述したように、樹脂層2から露出しているフィラー1の周囲に傾斜2b(
図1B)が形成されていることにより、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合、異方性導電接続時にフィラー1が端子間で挟持される際に生じるフィラー1の偏平化に対して樹脂から受ける抵抗が、傾斜2bが無い場合に比して低減するため、端子におけるフィラーの挟持がされ易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性が向上する。この傾斜は、フィラーの外形に沿っていることが好ましい。接続における効果がより発現しやすくなる以外に、フィラーを認識し易くなることで、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの製造における検査などが行い易くなるからである。また、この傾斜および起伏は樹脂層にヒートプレスするなどにより、その一部が消失してしまう場合があるが、本発明はこれを包含する。この場合、フィラーは樹脂層の表面に1点で露出する場合がある。なお、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合、接続する電子部品が多様であり、これらに合わせてチューニングする以上、種々の要件を満たせるように設計の自由度が高いことが望まれるので、傾斜もしくは起伏を低減させても部分的に消失させても用いることができる。
【0043】
また、樹脂層2から露出することなく埋まっているフィラー1の直上の樹脂層2の表面に起伏2c(
図6)が形成されていることにより、傾斜の場合と同様に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合、異方性接続時に端子からの押圧力がフィラーにかかりやすくなる。また、起伏があることにより樹脂が平坦に堆積している場合よりもフィラーの直上の樹脂量が低減しているため、接続時のフィラー直上の樹脂の排除が生じやすくなり、端子とフィラーとが接触し易くなることから、端子におけるフィラーの捕捉性が向上し、導通信頼性が向上する。
【0044】
上述したフィラーの露出部分の周りの樹脂層2の傾斜2b(
図1B)や、フィラーの直上の樹脂層の起伏2c(
図6)の効果を得られ易くする点か
ら傾斜2bの最大深さLeとフィラー1の粒子径Dとの比(Le/D)は、好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満、さらに好ましくは20~25%であり
、傾斜2b
や起伏2cの最大径Ldとフィラー1の粒子径Dとの比(Ld/D)は、好ましくは100%以上、より好ましくは100~150%であり
、起伏2cの最大深さLfとフィラー1の粒子径Dとの比(Lf/D)は、0より大きく、好ましくは10%未満、より好ましくは5%以下である。
【0045】
なお、傾斜2b又は起伏2cにおけるフィラー1の露出(直上)部分の径Lcは、フィラー1の粒子径D以下とすることができ、好ましくは粒子径Dの10~90%である。また、フィラー1の頂部の1点で露出するようにしてもよく、粒子径Dが樹脂層2内に完全に埋まり、径Lcがゼロとなるようにしてもよい。
【0046】
このような本発明において、樹脂層2の表面の傾斜2b、起伏2cの存在は、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより確認することができ、面視野観察においても確認できる。光学顕微鏡、金属顕微鏡でも傾斜2b、起伏2cの観察は可能である。また、傾斜2b、起伏2cの大きさは画像観察時の焦点調整などで確認することもできる。上述のようにヒートプレスにより傾斜もしくは起伏を減少させた後であっても、同様である。痕跡が残る場合があるからである。
【0047】
(樹脂層の組成)
樹脂層2は、フィラー含有フィルムの用途に応じて導電性でも絶縁性でもよく、また、可塑性でも硬化性であってもよいが、好ましくは絶縁性の硬化性樹脂組成物から形成することができ、例えば、熱重合性化合物と熱重合開始剤とを含有する絶縁性の熱重合性組成物から形成することができる。熱重合性組成物には必要に応じて光重合開始剤を含有させてもよい。絶縁性の硬化性樹脂組成物から形成するものとして、異方性導電フィルムが挙げられる。
【0048】
熱重合開始剤と光重合開始剤を併用する場合に、熱重合性化合物として光重合性化合物としても機能するものを使用してもよく、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させてもよい。好ましくは、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させる。例えば、熱重合開始剤として熱カチオン系硬化開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。
【0049】
光重合開始剤として、波長の異なる光に反応する複数種類を含有させてもよい。これにより、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの製造時における、樹脂層を構成する樹脂の一次光硬化と、異方性導電接続時に電子部品同士を接着するための樹脂の光硬化等の二次光硬化とで使用する波長を使い分けることができる。異方性導電フィルム以外の用途に適用してもよい。
【0050】
異方性導電フィルムの製造時の光硬化では、絶縁性樹脂層に含まれる光重合性化合物の全部又は一部を光硬化させることができる。この光硬化により、絶縁性樹脂層2における導電粒子1の配置が保持乃至固定化され、ショートの抑制と捕捉の向上が見込まれる。また、この光硬化により、異方性導電フィルムの製造工程における絶縁性樹脂層の粘度を適宜調整してもよい。特にこの光硬化は、絶縁性樹脂層2の層厚Laと導電粒子1の平均粒子径Dとの比(La/D)が0.6未満である場合に行うことが好ましい。導電粒子径に対して絶縁性樹脂層2の層厚が薄い場合にも絶縁性樹脂層2で導電粒子の配置の保持乃至固定化をより確実に行うと共に、絶縁性樹脂層2の粘度調整を行い、異方性導電フィルムを用いた電子部品同士の接続において歩留まりの低下を抑制するためである。
【0051】
樹脂層における光重合性化合物の配合量は30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、2質量%未満がさらにより好ましい。光重合性化合物が多すぎると接続時の押し込みにかかる推力が増加するためである。
【0052】
熱重合性組成物の例としては、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性アクリレート系組成物、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物等が挙げられる。熱カチオン重合開始剤を含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物に代えて、熱アニオン重合開始剤を含む熱アニオン重合性エポキシ系組成物を使用してもよい。また、特に支障を来さなければ、複数種の重合性組成物を併用してもよい。併用例としては、カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物の併用などが挙げられる。
【0053】
ここで、(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知の熱重合型(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。
【0054】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0055】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0056】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。また、エポキシ化合物に加えてオキセタン化合物を併用してもよい。
【0057】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0058】
熱カチオン重合開始剤の使用量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0059】
熱重合性組成物は、膜形成樹脂やシランカップリング剤を含有することが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。重量平均分子量は10000以上であることが好ましい。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0060】
熱重合性組成物には、溶融粘度調整のために、上述のフィラー1とは別に絶縁性フィラーを含有させてもよい。これはシリカ粉やアルミナ粉などが挙げられる。絶縁性フィラー粒径20~1000nmの微小なフィラーが好ましく、また、配合量はエポキシ化合物等の熱重合性化合物(光重合性組成物)100質量部に対して5~50質量部とすることが好ましい。フィラー1とは別に含有させる絶縁性フィラーは、フィラー含有フィルムの用途が異方性導電フィルムの場合に好ましく使用されるが、用途によっては絶縁性でなくともよく、例えば導電性の微小なフィラーを含有させてもよい。フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合、フィラー分散層を形成する樹脂層には、必要に応じて、フィラー1とは異なるより微小な絶縁性フィラー(所謂ナノフィラー)を適宜含有させることができる。
【0061】
本発明のフィラー含有フィルムには、上述の絶縁性又は導電性のフィラーとは別に充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有させてもよい。
【0062】
(樹脂層の層厚)
本発明のフィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムでは、樹脂層2の層厚Laとフィラー1の粒子径Dとの比(La/D)が0.3以上1.3以下である。ここで、フィラー1の粒子径Dは、その平均粒子径を意味する。樹脂層2の層厚Laが大き過ぎてこの比が過度に大きくなると、異方性導電接続時にフィラーが端子に押し付けられにくくなると共に、樹脂流動によりフィラーが流されやすくなる。そのためフィラーが位置ずれしやすくなり、端子におけるフィラーの捕捉性が低下する。また、フィラーを端子に押し付けるために押圧治具に必要とされる推力も増大し、低圧実装の妨げになる。反対に樹脂層2の層厚Laが小さすぎてこの比が過度に小さくなると、フィラー1を樹脂層2によって所定の配置に維持することが困難となる。特に、樹脂層2におけるフィラー1の配置の維持の点から、この比(La/D)は、好ましくは0.3より大きく、より好ましくは0.4以上とする。また、異方性導電接続時の過度な樹脂流動の抑制及び低圧実装の実現の点から、好ましくは1以下である。フィラー1を樹脂層2から露出させることを容易とし、低圧実装をより容易にする点からは、この比(La/D)を1未満とすることが好ましく、より好ましくは0.6未満、さらに好ましくは0.5以下である。この場合、フィラー1は樹脂層2を貫通していてもよい。
【0063】
(樹脂層におけるフィラーの埋込状態)
本実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Aでは、フィラー1は、
図1Bに示すように、埋込率(Lb/D)が30%以上100%以下で、フィラー1が樹脂層2の片面から突出するように埋め込まれている。この他、本発明のフィラー含有フィルムとしては、
図2に示すフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Bのように、埋込率100%あるいはその近傍で、フィラー1が樹脂層2の片面から露出し、そのフィルム面とフィラー1の頂部1aとが略面一となるように埋め込まれている態様、
図3に示すフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Cのように、樹脂層2の片面においてフィラー1がそのフィルム面と略面一となり、反対面においてフィラー1がフィルム面から露出せずに突出している態様、
図4に示すフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Dのように樹脂層2の片面においてフィラー1がフィルム面よりも埋め込まれて露出し、他面からはフィラー1が露出せずにフィルム面から突出している態様、
図5に示すフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Eのように、樹脂層2の表面に凹みがなく、フィラー1がその頂部1aの1点で樹脂層2から露出している態様、
図6に示すフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Fのように、フィラー1が樹脂層2から露出せず、フィラー1の直上の樹脂層2の表面に凹み(周囲の樹脂層の表面よりも凹んでいる部分)2cを有している態様などを挙げることができる。
【0064】
ここで、埋込率とは、フィラー1が埋め込まれている樹脂層2の表面2a(樹脂層2の表裏の面のうち、フィラー1が露出している側の表面、又はフィラーが樹脂層2に完全に埋め込まれている場合には、フィラーとの距離が近い表面)であって、隣接するフィラー間の中央部における接平面2pと、フィラー1の最深部との距離を埋込量Lbとした場合に、フィラー1の粒子径Dに対する埋込量Lbの割合(Lb/D)である(
図1B)。したがって、
図4に示すように、フィラー1がフィルム面よりも深く埋め込まれている場合には、埋込率(Lb/D)は100%より大きくなり、一例として105%以下を挙げることができる。フィラー1が樹脂層2を貫通している場合の埋込率(Lb/D)は、100%となる。
【0065】
埋込率を好ましくは30%以上とすることにより、フィラー1を樹脂層2によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持することができ、また、埋込率を100%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは60%未満とすることにより、樹脂層2を構成する樹脂のうち、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時にフィラーを流動させて捕捉率を低下させるように作用する樹脂の量を低減させることができる。また、不要な樹脂層2が少なくなることで、フィラーが押し込まれ易くなる。これに対し、埋込率が30%未満であると、異方性導電接続時に樹脂層2上をフィラー1が転がりやすく、フィラー1を所定の位置に維持させることが難しいため捕捉率が低下する。また、埋込率が100%を超え、フィラーが樹脂層2に完全に埋没していると、異方性導電接続時にフィラー1が樹脂層2の樹脂流動によって流され、捕捉性が低下し、ショートが起こる場合がある。また、フィラーが樹脂層2から露出している程度を揃えることによって、その特性が向上する効果が見込める。一例として、光学フィルムの性能がフィラーに依存する場合、平面視における分散性(独立性)と露出の程度に一定以上の規則性があれば、単純に混練しているバインダーを塗布するなどして得たものよりも、性能の向上や品質の安定性が得られると推察される。
【0066】
なお、本発明において、埋込率(Lb/D)の数値は、フィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムに含まれる全フィラー数の99%以上、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.99%以上が、当該埋込率(Lb/D)の数値になっていることをいう。したがって、埋込率が30%以上100%以下とは、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムに含まれる全フィラー数の99%以上、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.99%以上の埋込率が30%以上100%以下であることをいう。このように全フィラーの埋込率(Lb/D)が揃っていることにより、異方性導電フィルムの場合には押圧の加重がフィラーに均一にかかるので、端子におけるフィラーの捕捉状態が良好になり、導通の安定性が向上する。単純にフィラー含有フィルムを貼着させただけの場合においても、単純に混練しているバインダーを塗布するなどして得たもの以上の、上述したような効果が得られると推察できる。
【0067】
上述のフィラー含有フィルム10B(
図2)、10C(
図3)、10E(
図5)では、樹脂層2のフィルム面とフィラー1の頂部1aとが略面一となっていることにより、樹脂層2からフィラー1が突出しているフィラー含有フィルム10A(
図1B)に比して、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時に個々のフィラー1周辺のフィルム厚方向における樹脂量が均一になるという利点がもたらされる。特に、フィラー含有フィルム10E(
図5)では、異方性導電接続においてフィラーを端子又はバンプに押し込むときに、フィラー1の頂部1a周辺の樹脂量が均一であるため、フィラー1が移動しにくくなり、捕捉性が高まりショートを抑制できる効果が期待できる。これは、特にファインピッチやバンプ間スペースが狭い場合に有効である。
【0068】
また、上述のフィラー含有フィルム10A(
図1B)、10B(
図2)、10C(
図3)、10D(
図4)では、樹脂層2の表裏の表面のうち、フィラー1が埋め込まれている面の、フィラー1と接している部分及びその近傍が周囲の平坦な表面2aに比して凹んでいる。この凹み2bは、フィラー含有フィルムの製造時に樹脂層2にフィラー1を押し込む場合に、押し込み時の樹脂層の粘度が上述の好ましい粘度範囲にあるときに形成される場合がある。樹脂層2の表面に凹み2bがあることにより、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時にフィラー1が端子間で挟持される際に生じるフィラー1の扁平化に対して樹脂層2から受ける抵抗が、凹み2bが無い場合に比して低減し、端子におけるフィラーの押し込みが均一になり易い効果が期待できる。このようにフィラー含有フィルムとしては、単純に混練しているバインダーを塗布するなどして得たものよりも、フィラーと樹脂の状態に特異性があることから、性能や品質に特徴が生じること(性能向上や品質安定化など)が期待できる。
【0069】
また、フィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10F(
図6)における凹み2cも、フィラー含有フィルムの製造時に樹脂層2にフィラー1を押し込む場合に、押し込み時の樹脂層2が上述の好ましい粘度範囲にある場合に形成される。樹脂層2の表面に凹み2cが形成されていることにより、凹み2cが無い場合に比して、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時の圧力がフィラー1に集中し易くなり、端子におけるフィラーの押し込みが均一になり易い効果が期待できる。このようにフィラー含有フィルムとしては、単純に混練しているバインダーを塗布するなどして得たものとの違いも、上記同様である。
【0070】
なお、樹脂層2の表面の凹み2b、2cの存在は、フィラー含有フィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより確認することができ、走査型電子顕微鏡による面視野観察においても確認できる。また、光学顕微鏡、金属顕微鏡でも観察することができる。
【0071】
<変形態様>
本発明のフィラー含有フィルムとしては、フィラー分散層3に、樹脂層2を構成する樹脂よりも好ましくは最低溶融粘度が低い第2の樹脂層4を積層することができる(
図7~
図9)。この第2の樹脂層4は、樹脂層2よりも最低溶融粘度が低いため、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時に電子部品のバンプ等の端子によって形成される空間を充填し、対向する電子部品同士の接着性を向上させることができる。即ち、異方性導電フィルムを用いた電子部品の低圧実装を可能とするため、及び異方性導電接続時の樹脂層2の樹脂流動を抑制してフィラー1の粒子捕捉性を向上させるため、樹脂層2の粘度を高くすると共に、フィラー1が位置ずれを起こさない限りで樹脂層2の厚さは薄くすることが望ましいが、樹脂層2の厚さを過度に薄くすると、対向する電子部品同士を接着させる樹脂量の不足を招くことから接着性の低下が懸念される。これに対し、異方性導電接続時に樹脂層2よりも粘度が低い第2の樹脂層4を設けることにより、電子部品同士の接着性も向上させることができ、第2の樹脂層4の流動性が高いことから端子によるフィラーの挟持や押し込みを阻害し難くすることができる。
【0072】
フィラー分散層3に第2の樹脂層4を積層する場合、第2の樹脂層4が凹み2bの形成面上にあるか否かに関わらず、ツールで加圧する電子部品に第2の樹脂層4が貼られるようにする(樹脂層2がステージに載置される電子部品に貼られるようにする)ことが好ましい。このようにすることで、フィラーの不本意な移動を避けることができ、捕捉性を向上させることができる。異方性導電フィルム以外であっても、同様になると推察される。
【0073】
樹脂層2と第2の樹脂層4との最低溶融粘度比は、差があるほど電子部品の電極やバンプによって形成される空間が第2の樹脂層4で充填されやすくなり、電子部品同士の接着性を向上させることができる。また、この差があるほどフィラー分散層3中に存在する樹脂の移動量が相対的に少なくなり、端子間のフィラー1が樹脂流動により流されにくくなることにより、端子におけるフィラーの捕捉性が向上するので好ましい。実用上は、樹脂層2と第2の樹脂層4との最低溶融粘度比は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。一方、この比が大きすぎると長尺のフィラー含有フィルムを巻装体にした場合に、樹脂のはみだしやブロッキングの虞があるので、実用上は15以下が好ましい。第2の樹脂層4の好ましい最低溶融粘度は、より具体的には、上述の比を満たし、かつ3000Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下であり、特に100~2000Pa・sである。
【0074】
なお、第2の樹脂層4は、樹脂層2と同様の樹脂組成物において、粘度を調整することにより形成することができる。
【0075】
また、第2の樹脂層4の層厚は、好ましくは4~20μmである。もしくは、フィラー径に対して、好ましくは1~8倍である。
【0076】
また、樹脂層2と第2の樹脂層4を合わせたフィラー含有フィルム10G、10H、10I全体の最低溶融粘度は、好ましくは、200~4000Pa・sである。
【0077】
第2の樹脂層4の具体的な積層態様としては、例えば、
図7に示すフィラー含有フィルム10Gのように、フィラー分散層3の片面に第2の樹脂層4を積層することができる。この場合、フィラー1の粒子径Dと樹脂層2の層厚Laとの関係は、前述のようにLa/Dを0.3以上1.3以下とする。
【0078】
図8に示すフィラー含有フィルム10Hのように、フィラー1が樹脂層2の片面から突出している場合に、その突出している面に第2の樹脂層4を積層し、第2の樹脂層4にフィラー1を食い込ませてもよい。フィラー1の埋込率が0.95以下の場合、このように樹脂層4を積層することが好ましく、0.9以下の場合はより好ましい。
【0079】
図9に示すフィラー含有フィルム10Iのように、フィラー1が埋め込まれている樹脂層2の面と反対側の面に第2の樹脂層4を積層してもよい。
【0080】
(第3の絶縁性樹脂層)
第2の樹脂層4と樹脂層2を挟んで反対側に第3の樹脂層が設けられていてもよい。第3の樹脂層をタック層として機能させることができる。第2の樹脂層4と同様に、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を充填させるために設けてもよい。
【0081】
第3の樹脂層の樹脂組成、粘度及び厚みは第2の樹脂層と同様でもよく、異なっていても良い。樹脂層2と第2の樹脂層4と第3の樹脂層を合わせたフィラー含有フィルムの最低溶融粘度は特に制限はないが、200~4000Pa・sとすることができる。
【0082】
(その他の積層態様)
フィラー含有フィルムの用途によっては、複数のフィラー分散層を積層してもよく、積層したフィラー分散層間に、第2の樹脂層のようにフィラーを含有していない層を介在していてもよく、最外層に第2の樹脂層や第3の樹脂層を設けてもよい。
【0083】
<フィラー含有フィルムの製造方法>
フィラー分散層3の単層から形成されている本発明のフィラー含有フィルムは、例えば、樹脂層2の表面にフィラー1を所定の配列で保持させ、そのフィラー1を平板又はローラーで樹脂層2に押し込む。
【0084】
ここで、樹脂層2におけるフィラー1の埋込量Lbは、フィラー1の押し込み時の押圧力、温度等により調整することができ、また、凹み2b、2cの有無、形状及び深さは、押し込み時の樹脂層2の粘度、押込速度、温度等により調整することができる。
【0085】
また、樹脂層2にフィラー1を保持させる手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、転写型を使用して樹脂層2にフィラー1を保持させる。転写型としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料の転写型材料に対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって開口を形成したものを使用することができる。なお、転写型は、板状、ロール状等の形状をとることができる。
【0086】
フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、その異方性導電フィルムを用いて電子部品の接続を経済的に行うには、フィラー含有フィルムである異方性導電フィルムはある程度の長尺であることが好ましい。そこで異方性導電フィルムは長さを、好ましくは5m以上、より好ましくは10m以上、さらに好ましくは25m以上に製造する。一方、異方性導電フィルムを過度に長くすると、異方性導電フィルムを用いて電子部品の製造を行う場合に使用する従前の接続装置を使用することができなくなり、取り扱い性も劣る。そこで、異方性導電フィルムは長さを好ましくは5000m以下、より好ましくは1000m以下、さらに好ましくは500m以下に製造する。異方性導電フィルムのこのような長尺体は、巻芯に巻かれた巻装体とすることが取り扱い性に優れる点から好ましい。異方性導電フィルム以外の用途であっても、同じもしくは類似した理由により、上限は上記同様と考える。
【0087】
<フィラー含有フィルムの使用方法>
本発明のフィラー含有フィルムは、従前のフィラー含有フィルムと同様に使用することができ、フィラー含有フィルムを貼り合わせることができれば物品に特に制限はない。フィラー含有フィルムの用途に応じた種々の物品に圧着により、好ましくは熱圧着により貼着することができる。この貼り合わせ時には光照射を利用してもよく、熱と光を併用してもよい。例えば、フィラー含有フィルムの樹脂層が、該フィラー含有フィルムを貼り合わせる物品に対して十分な粘着性を有する場合、フィラー含有フィルムの樹脂層を物品に軽く押し付けることによりフィラー含有フィルムが一つの物品の表面に貼着したフィルム貼着体を得ることができる。この場合に、物品の表面は平面に限られず、凹凸があってもよく、全体として屈曲していてもよい。物品がフィルム状又は平板状である場合には、圧着ローラーを用いてフィラー含有フィルムをそれらの物品に貼り合わせてもよい。これにより、フィラー含有フィルムのフィラーと物品を直接的に接合させることもできる。
【0088】
また、対向する2つの物品の間にフィラー含有フィルムを介在させ、熱圧着ローラーや圧着ツールで対向する2つの物品を接合し、その物品間でフィラーが挟持されるようにしてもよい。また、フィラーと物品とを直接接触させないようにしてフィラー含有フィルムを物品で挟み込むようにしてもよい。
【0089】
特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、熱圧着ツールを用いて、該異方性導電フィルムを介してICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品とを異方性導電接続する際に好ましく使用することができる。異方性導電フィルムを用いてICチップやウェーハーをスタックして多層化してもよい。なお、本発明の異方性導電フィルムで接続する電子部品は、上述の電子部品に限定されるものではない。近年、多様化している種々の電子部品に使用することができる。
【0090】
したがって、本発明は、本発明のフィラー含有フィルムを種々の物品に圧着により貼着した接続構造体や、その製造方法を包含する。特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、その異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を異方性導電接続する接続構造体の製造方法や、それにより得られた接続構造体、即ち、本発明の異方性導電フィルムにより電子部品同士が異方性導電接続されている接続構造体も包含する。
【0091】
異方性導電フィルムを用いた電子部品の接続方法としては、異方性導電フィルムが導電粒子分散層3の単層からなる場合、各種基板などの第2電子部品に対し、異方性導電フィルムの導電粒子1が表面に埋め込まれている側から仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの導電粒子1が表面に埋め込まれていない側にICチップ等の第1電子部品を合わせ、熱圧着することにより製造することができる。異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層に熱重合開始剤と熱重合性化合物だけでなく、光重合開始剤と光重合性化合物(熱重合性化合物と同一でもよい)が含まれている場合、光と熱を併用した圧着方法でもよい。このようにすれば、導電粒子の不本意な移動は最小限に抑えることができる。また、導電粒子が埋め込まれていない側を第2電子部品に仮貼りして使用してもよい。尚、第2電子部品ではなく、第1電子部品に異方性導電フィルムを仮貼りすることもできる。
【0092】
また、異方性導電フィルムが、導電粒子分散層3と第2の絶縁性樹脂層4の積層体から形成されている場合、導電粒子分散層3を各種基板などの第2電子部品に仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの第2の絶縁性樹脂層4側にICチップ等の第1電子部品をアライメントして載置し、熱圧着する。異方性導電フィルムの第2の絶縁性樹脂層4側を第1電子部品に仮貼りしてもよい。また、導電粒子分散層3側を第1電子部品に仮貼りして使用することもできる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムについて、実施例により具体的に説明する。
【0094】
実施例1~5、比較例1
(1)異方性導電フィルムの製造
表1に示した配合で、導電粒子分散層を形成する絶縁性樹脂層形成用樹脂組成物、及び第2の絶縁性樹脂層形成用樹脂組成物をそれぞれ調製した。絶縁性樹脂層の最低溶融粘度は3000Pa・s以上であり、この絶縁性樹脂層の最低溶融粘度と第2の絶縁性樹脂層の最低溶融粘度の比は2以上であった。
【0095】
絶縁性樹脂層(高粘度樹脂層)を形成する樹脂組成物をバーコータ-でフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に表2に示す厚さの絶縁性樹脂層を形成した。同様にして、第2の絶縁性樹脂層を表2に示す厚さでPETフィルム上に形成した。
【0096】
【0097】
一方、導電粒子(平均粒子径3.5μm)2が平面視で
図1Aに示す6方格子配列となり、導電粒子の粒子間距離が3.5μm、個数密度が23600個/mm
2となるように金型を作製した。この金型に、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で流し込み、冷やして固めることで、凹部が
図1Aに示す配列パターンの樹脂型を形成した。
【0098】
この樹脂型の凹部に導電粒子(積水化学工業(株)製、Ni/Auメッキ樹脂粒子、平均粒子径3.5μm)を充填し、その上に上述の絶縁性樹脂層を被せ、60℃、0.5MPaで押圧することで貼着させた。そして、型から絶縁性樹脂層を剥離し、絶縁性樹脂層上の導電粒子を(押圧条件:60~70℃、0.5MPa)で該絶縁性樹脂層内に押し込み、導電粒子分散層を形成した(実施例1~5)。
【0099】
比較例1では表1に示した絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物に導電粒子を混合し、導電粒子が単層でランダムに分散した絶縁性樹脂層(個数密度50000個/mm2)を形成した。
【0100】
各実施例及び比較例の埋込率(Lb/D)及び絶縁性樹脂層における導電粒子の埋込状態(絶縁性樹脂層からの導電粒子の露出の有無)を金属顕微鏡により観察し、導電粒子の面積占有率を求めた。また、導電粒子全体に対し、導電粒子同士が互いに非接触で存在する個数割合(導電粒子の非接触割合)を金属顕微鏡で50μm×50μmを10箇所観測することにより求めた。表2に示す。
【0101】
さらに、導電粒子分散層の表面に第2の絶縁性樹脂層を積層することにより2層タイプの異方性導電フィルムを作製した(実施例1~5、比較例1)。この場合、実施例1~5では導電粒子を押し込んだ側の導電粒子分散層の表面に第2の絶縁性樹脂層を積層した。
【0102】
【0103】
(2)評価
(1)で作製した実施例及び比較例の異方性導電フィルムについて、接続に十分な面積で裁断し、以下のようにして(a)初期導通抵抗、(b)導通信頼性、(c)平均粒子捕捉数、(d)ショート率を評価した。結果を表2に示す。
【0104】
(a)初期導通抵抗
以下に示す評価用ICとガラス基板とを180℃、60MPa、5秒で異方性導電フィルムを介して加熱加圧し、評価用接続物を得た。このとき、押圧治具に必要な推力は125Nであった。
【0105】
評価用IC:
外形 1.8×20.0mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ30×85μm、バンプ間距離50μm、バンプ高さ15μm
【0106】
ガラス基板
ガラス材質 コーニング社製1737F
外形 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0107】
得られた評価用接続物の導通抵抗を4端子法で測定した。初期導通抵抗は実用上2Ω以下が好ましく、0.6Ω以下であることがより好ましい。
【0108】
(b)導通信頼性
(a)で得た評価用接続物を、温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を、初期導通抵抗と同様に測定した。導通抵抗は実用上5Ω以下であることが好ましい。
【0109】
(c)平均粒子捕捉数
(a)と同様の評価用ICを使用し、この評価用ICと端子パターンが対応するITOパターンガラス基板とを、(a)と同様の条件で加熱加圧し、加熱加圧後の端子対100個について導電粒子の捕捉数を計測し、その平均を求めた。平均粒子捕捉数は、実用上、端子あたり3個以上が好ましい。
【0110】
(d)ショート率
ショート率の評価用ICを使用し、(a)初期導通抵抗の評価と同様にして評価用接続物を得、得られた評価用接続物のショート数を計測してショート率(即ちショート発生率)を求め、次の基準で評価した。
【0111】
ショート率の評価用IC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group))
外形 15×13mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ25×140μm、バンプ間距離7.5μm、バンプ高さ15μm
【0112】
ショート率評価基準
A:50ppm未満
B:50ppm以上200ppm未満
C:200ppm以上
【0113】
表2から、実施例1~5の異方性導電フィルムは、絶縁性樹脂層2の層厚Laと導電粒子の平均粒子径Dとの比La/Dが0.3~1.3なので、初期導通抵抗、導通信頼性、平均粒子捕捉数のいずれも良好であり、測定値のバラツキも少なく安定していた。特に、実施例1を勘案すると、La/Dは0.3より大きい方が好ましいことがわかり、La/Dが0.5の実施例2は初期導通抵抗も導通信頼性も平均粒子捕捉数も優れていたことがわかる。なお、La/Dの数値として0.3~1.3の範囲が許容されるということは、La/Dがこの範囲となる限り、絶縁性樹脂層2の層厚が、設計時の所定の厚さから変動してもよいことを意味し、異方性導電フィルムの製造コスト上有利であり、特に異方性導電フィルムが長尺で樹脂層の層厚の変動が懸念される場合に有利となる。なお、実施例3では実施例4および5と同様に、絶縁性樹脂層と導電粒子が面一になっている箇所も一部存在した。
【0114】
これに対し、比較例1では、導電粒子の個数密度が高く、面積占有率が25%を超えており、押圧治具による推力が不足し、導通信頼性が劣っていた。平均粒子捕捉数では、バラツキが大きかった。また、ショート率も劣っていた。
【0115】
初期導通抵抗の評価用接続物を得るために評価用ICとガラス基板とを加熱加圧するにあたり、加熱加圧条件を温度180℃、圧力30MPa、5秒とすることで圧力を下げたところ、実施例1及び実施例2では初期導通抵抗が0.2Ωとなり、比較例1では1.2Ωとなった。また、加熱加圧条件において圧力を上げ、温度180℃、圧力90MPa、5秒としたところ、実施例1、実施例2及び比較例1のいずれも初期導通抵抗が0.2Ωとなった。これにより、比較例1では、初期導通抵抗0.2Ωを達成するために、90MPaの圧力が必要であったが、実施例1及び実施例2では30MPaで達成できたことがわかり、本実施例の異方性導電フィルムによれば、低圧実装が可能になることが確認できた。
【符号の説明】
【0116】
1 フィラー(導電粒子)
2 樹脂層(絶縁性樹脂層)
2b 凹み(傾斜)
2c 凹み(起伏)
3 フィラー分散層(導電粒子分散層)
4 第2の樹脂層
10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10I フィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)
La 樹脂層の層厚
Lb 隣接するフィラー間の中央部における接平面とフィラーの最深部との距離
Lc 傾斜又は起伏におけるフィラーの露出(直上)部分の径
Ld フィラーの周り又は直上の樹脂層の傾斜又は起伏の最大径
Le フィラーの周りの樹脂層における傾斜の最大深さ
Lf フィラーの直上の樹脂層における起伏の最大深さ