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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/26 20160101AFI20220405BHJP
   H02P 6/18 20160101ALI20220405BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
H02P21/26
H02P6/18
B41J11/42
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017161865
(22)【出願日】2017-08-25
(65)【公開番号】P2019041488
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086933
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125117
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一充
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄治
(72)【発明者】
【氏名】藤森 春充
【審査官】大島 等志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-73877(JP,A)
【文献】特開2008-30214(JP,A)
【文献】特開2003-108230(JP,A)
【文献】特開2004-86610(JP,A)
【文献】特開2011-105507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/26
H02P 6/18
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成装置であって、
前記シートを搬送するローラと、
前記ローラを回転駆動するDCブラシレスモータと、
前記DCブラシレスモータを制御するモータ制御装置と
を有し、
前記モータ制御装置は、
入力される指令値に応じて前記DCブラシレスモータをセンサレスベクトル制御するベクトル制御部と、
前記DCブラシレスモータの回転角度量が予定パターンの通りに推移するよう定められた時系列の複数の制御目標値を記憶する記憶部と、
前記複数の制御目標値を順次に前記指令値として前記ベクトル制御部に入力する指令部と、
前記DCブラシレスモータを起動した後の前記回転角度量の推移を、前記ローラにより前記シートを搬送することなく当該DCブラシレスモータを回転させる空転駆動時において検知する検知部と、
前記検知部に検知された前記回転角度量の推移が前記予定パターンとずれる場合に、以後に起動した後の前記回転角度量が前記予定パターンの通りに推移するよう、前記記憶部に記憶されている前記複数の制御目標値を補正する補正部と、
を有する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の制御目標値は、起動から定常回転までの加速時または前記定常回転から停止までの減速時の制御目標値を少なくとも含んでおり、当該複数の制御目標値のそれぞれを前記ベクトル制御部に入力する順序と対応づけるテーブル形式で前記記憶部に記憶されている、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記DCブラシレスモータの起動回数が設定数を超えるごとに、前記複数の制御目標値を補正する、
請求項記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記モータ制御装置は、前記検知部に検知された前記回転角度量の推移を示すデータを蓄積する蓄積部を有し、
前記補正部は、前記蓄積部に蓄積されている前記データに基づいて前記複数の制御目標値を補正する、
請求項または記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記蓄積部は、前記回転角度量の推移が前記検知部によって検知された回数よりも前記データの蓄積数が少なくなるよう蓄積を間引く、
請求項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記指令値は、前記DCブラシレスモータの回転速度の指令値であり、前記複数の制御目標値は、当該回転速度の制御目標値である、
請求項1ないしのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記複数の制御目標値は、前記DCブラシレスモータを駆動する期間のうちの前記回転角度量が前記予定パターンからずれやすい区間について、他の区間よりも密に定められている、
請求項1ないしのいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、複合機などの画像形成装置は、シート(記録用紙)を収納部から取り出して搬送し、搬送中のシートに所定の位置で画像を印刷する。画像形成装置の内部の搬送路には、シートの長さよりも短い間隔でローラが配置されており、画像形成装置は、搬送路上の各位置をシートが所定のタイミングで通過するようにローラの回転駆動を制御する。
【0003】
ローラを回転させる駆動源として、回転子に永久磁石を用いたDCブラシレスモータが用いられている。DCブラシレスモータの捲線(コイル)に流す交流電流をd-q座標系のベクトルの成分として制御するベクトル制御によると、ブラシレスモータを効率よく滑らかに回転させることができる。
【0004】
センサレス型のDCブラシレスモータを用いる場合には、回転子の磁極位置を回転角度位置として推定し、その結果に基づいて交流電流を決定するセンサレスベクトル制御が行われる。
【0005】
センサレスベクトル制御の精度を高めるための先行技術として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、速度指令値に基づいてトルク指令値を演算し、モータ電流に基づいて推定した回転子の推定位相値(磁極位置)をトルク指令値に応じて補正し、補正後の推定位相値を用いて交流電流を決定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6003924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
センサレスベクトル制御における磁極位置の推定精度は、モータの回転速度が低いときに回転速度が高いときよりも低くなる。このため、停止状態のモータを起動して加速するとき、および定常回転状態から減速して停止させるときに、回転速度または回転角度位置などの目標値(指令値)に対して実際の値(実力値)が大きくずれることがある。
【0008】
画像形成装置において、シートの搬送に関わるモータの回転角度量は、シートの搬送距離に対応する。このため、シートが印刷位置に到着するときの回転角度量に誤差があると、その誤差がシートと画像との位置ずれとなって印刷物の品質を低下させてしまう、という問題があった。また、搬送方向に離れた2つのローラに1枚のシートが接する状態でこれらのローラをそれぞれ駆動するモータを同時に起動または停止させる場合に、2つのモータの間で回転角度量の推移に差異があると、シートが引っ張られたり押されたりして皺が生じる、という問題もあった。
【0009】
上に述べた特許文献1の技術は、磁極位置の推定の精度を高める技術であるので、推定が実質的に不能となる低速回転時に発生する回転角度量の誤差を特許文献1の技術によって低減するのは難しい。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、回転角度量の推移を所望の推移に近づけることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の形態に係る画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成装置であって、前記シートを搬送するローラと、前記ローラを回転駆動するDCブラシレスモータと、
前記DCブラシレスモータを制御するモータ制御装置と、を有し、前記モータ制御装置は、入力される指令値に応じて前記DCブラシレスモータをセンサレスベクトル制御するベクトル制御部と、前記DCブラシレスモータの回転角度量が予定パターンの通りに推移するよう定められた時系列の複数の制御目標値を記憶する記憶部と、前記複数の制御目標値を順次に前記指令値として前記ベクトル制御部に入力する指令部と、前記DCブラシレスモータを起動した後の前記回転角度量の推移を、前記ローラにより前記シートを搬送することなく当該DCブラシレスモータを回転させる空転駆動時において検知する検知部と、前記検知部に検知された前記回転角度量の推移が前記予定パターンとずれる場合に、以後に起動した後の前記回転角度量が前記予定パターンの通りに推移するよう、前記記憶部に記憶されている前記複数の制御目標値を補正する補正部と、を有する。
【0012】
好ましくは、前記複数の制御目標値は、起動から定常回転までの加速時または前記定常回転から停止までの減速時の制御目標値を少なくとも含んでおり、当該複数の制御目標値のそれぞれを前記ベクトル制御部に入力する順序と対応づけるテーブル形式で前記記憶部に記憶されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、回転角度量の推移を所望の推移に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るモータ制御装置を備えた画像形成装置の構成の概要を示す図である。
図2】モータ制御装置の構成を示す図である。
図3】モータのd-q軸モデルを示す図である。
図4】モータ制御装置のベクトル制御部の構成を示す図である。
図5】モータ駆動部および電流検出部の構成の例を示す図である。
図6】モータの運転パターンの概要を示す図である。
図7】モータの駆動における目標値と実力値とのずれの例を示す図である。
図8】モータの回転角度量の誤差の影響を示す図である。
図9】回転角度量の誤差の変化の傾向を示す図である。
図10】モータ制御装置の記憶部の機能的構成を示す図である。
図11】設定テーブルの構成の例を示す図である。
図12】初期目標速度の設定の例を示す図である。
図13】制御目標値の補正の概要を示す図である。
図14】制御目標値の補正の例を示す図である。
図15】制御目標値の補正の複数の態様を示す図である。
図16】初期目標速度の設定の他の例を示す図である。
図17】駆動条件別の初期目標速度の設定の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には本発明の一実施形態に係るモータ制御装置20を備えた画像形成装置1の構成の概要が示されている。
【0016】
図1において、画像形成装置1は、電子写真式のプリンタエンジン1Aを備えたカラープリンタである。プリンタエンジン1Aは、水平方向に配列された4個のイメージングステーション4y,4m,4c,4kを有している。イメージングステーション4y~4kのそれぞれは、筒状の感光体5、帯電器6、プリントヘッド7、および現像器8などを有している。
【0017】
カラー印刷モードにおいて、4個のイメージングステーション4y~4kは、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびK(ブラック)の4色のトナー像を並行して形成する。4色のトナー像は、回転中の中間転写ベルト15に順次に一次転写される。最初にYのトナー像が転写され、それに重なるようMのトナー像、Cのトナー像、およびKのトナー像が順次に転写される。
【0018】
一次転写されたトナー像は、二次転写ローラ14と対向するとき、下方の収納カセット1Bから取り出されて搬送されてきたシート(記録用紙)2に二次転写される。そして、二次転写の後、定着器16の内部を通って上部の排紙トレイ19へ送り出される。定着器16を通過するとき、加熱および加圧によってトナー像がシート2に定着する。
【0019】
画像形成装置1の内部におけるシート2の通路である搬送路9には、上流側から順に、給紙ローラ12、レジストローラ13、二次転写ローラ14、定着ローラ17、および排紙ローラ18が配置されている。これらのローラ11~14,17,18の回転により、シート2が搬送される。
【0020】
給紙ローラ12は、収納カセット1Bからそれに積層されているシート群のうちの最上のシート2を取り出して下流へ送る。レジストローラ13は、シート2が到着するときには停止しており、中間転写ベルト15に一次転写されたトナー像とシート2とを位置合わせするタイミングで起動されてシート2を二次転写ローラ14へ送り出す。
【0021】
二次転写ローラ14は、シート2を中間転写ベルト15に密着させる。定着ローラ17は、定着器16に設けられた一対のローラであり、シート2に熱および圧力を加える。排紙ローラ18は、定着処理後のシート2を排紙トレイ19へ排出する。
【0022】
画像形成装置1は、回転駆動源である複数のモータ3a,3b,3c、およびこれらのモータ3a~3cを制御するモータ制御装置20を備えている。モータ3aは、給紙ローラ12を駆動する給紙モータとして、モータ3bは、レジストローラ13を駆動するレジストモータとして、モータ3cは、排紙ローラ18を駆動する排紙モータとして、それぞれ用いられる。
【0023】
以下において、これらのモータ3a~3dを区別することなく、「モータ3」と記すことがある。
【0024】
なお、画像形成装置1は、モータ3a~3dの他にも複数のモータを有している。例えば、二次転写ローラ14、定着ローラ17、感光体5、現像器8内のローラ、およびトナーボトルから現像器8へトナーを補給する機構をそれぞれ駆動するモータなどがある。これらのモータもモータ制御装置20により制御される。
【0025】
モータ3は、DCブラシレスモータ、すなわち永久磁石を用いた回転子が回転する永久磁石同期モータ(PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor)である。そして、モータ3は、センサレス型であって、磁極位置を検出するホール素子センサおよび速度を検出するエンコーダを備えていない。
【0026】
モータ3の固定子は、電気角120°間隔で配置されたU相、V相、W相のコア、および例えばY結線された3つの捲線(コイル)を有している。U相、V相およびW相の3相交流電流を捲線に流してコアを順に励磁することによって回転磁界が生じる。回転子は、この回転磁界に同期して回転する。
【0027】
回転子の磁極数は、2、4、6,8,10またはそれ以上であってもよい。回転子は、アウター式でもよく、インナー式でもよい。また、固定子31のスロット数は3、6、9またはそれ以上であってもよい。
【0028】
図2にはモータ制御装置20の構成が示されている。図2に示すモータ制御装置20は、モータ3a~3cを制御する(図1参照)。なお、図2では、モータ3a~3cのうちのモータ3a,3bに対応する部分の構成が示されている。
【0029】
モータ制御装置20は、ベクトル制御部21a,21b、速度指令部51、および目標設定ブロック52を有する。これらの要素のうち、速度指令部51および目標設定ブロック52は、上位制御部10に設けられている。
【0030】
上位制御部10は、画像形成装置1の全体の制御を受け持つコントローラである。上位制御部10は、例えば汎用のCPU(Central Processing Unit)、または特定の用途向けのASIC(Application Specific Integrated Circuit )を用いて構成される。速度指令部51および目標設定ブロック52は、上位制御部10のハードウェア構成により、および制御プログラムがプロセッサによって実行されることにより実現される。
【0031】
ベクトル制御部21a,21bは、モータ3a,3bをセンサレスベクトル制御する。すなわち、d-q座標系を基本とした制御モデルを用いて磁極位置および回転速度の推定を行うベクトル制御を行う。ベクトル制御部21aは、モータ3aを駆動するモータ駆動部26aに対して制御信号を出力し、ベクトル制御部21bは、モータ3bを駆動するモータ駆動部26bに対して制御信号を出力する。
【0032】
ベクトル制御部21a,21bの構成は同様であり、これらのそれぞれが「ベクトル制御部21」として機能する。また、モータ駆動部26a,26bの構成は同様であるので、以下において、モータ駆動部26a,26bを区別することなく「モータ駆動部26」と記すことがある。
【0033】
速度指令部51は、ベクトル制御部21a,21bに対して個別に速度指令を与える。詳しくは、ベクトル制御部21a,21bのそれぞれ(つまり、モータ3a,3bのそれぞれ)に応じた制御目標値Dωを目標設定ブロック52から取得し、取得した制御目標値Dωを速度指令値(目標速度)ω*としてベクトル制御部21a,21bに入力する。
【0034】
目標設定ブロック52は、記憶部53、検知部54、蓄積部55、および補正部56を有する。目標設定ブロック52には、ベクトル制御部21a,21bのそれぞれから推定角度θmが入力される。後に目標設定ブロック52の構成要素の機能を詳述する。
【0035】
図3にはモータ3のd-q軸モデルが示されている。モータ3のベクトル制御では、モータ3の捲線に流れる3相の交流電流を、回転子と同期して回転している2相の捲線に流す直流電流に変換して制御を簡単化する。
【0036】
永久磁石の磁束方向(N極の方向)をd軸とし、d軸から電気角でπ/2[rad](90°)進んだ方向をq軸とする。d軸およびq軸はモデル軸である。U相の捲線33を基準とし、これに対するd軸の進み角をθと定義する。この角度θは、U相の捲線33に対する磁極の角度位置(磁極位置)を示す。d-q座標系は、U相の捲線33を基準としてこれより角度θだけ進んだ位置にある。
【0037】
モータ3は回転子32の角度位置(磁極位置)を検出する位置センサを有していないので、ベクトル制御部21は、回転子の磁極位置、すなわち角度θを推定し、その推定した角度θである推定角度θmを用いて回転子の回転を制御する。
【0038】
図4にはモータ制御装置20のベクトル制御部21の構成が、図5にはモータ駆動部26および電流検出部27の構成の例が、それぞれ示されている。
【0039】
図4において、ベクトル制御部21は、指令変換部40、位置制御部41、電流制御部42、出力座標変換部43、PWM変換部44、入力座標変換部45、速度推定部46、および磁極位置推定部47を有する。
【0040】
指令変換部40は、積分演算により、速度指令部51から入力される速度指令値ω*を磁極の目標位置、すなわち回転子の目標角度を示す角度指令値θ*に変換する。なお、指令変換部40を上位制御部10に設けてもよい。
【0041】
位置制御部41は、指令変換部40からの角度指令値θ*と磁極位置推定部47からの推定角度θmとの差を零に近づける比例積分制御(PI制御)のための演算を行い、d-q座標系の電流指令値Id*,Iq*を決定する。推定角度θmは周期的に入力される。位置制御部41は、推定角度θmが入力されるごとに電流指令値Id*,Iq*を決定する。
【0042】
電流制御部42は、電流指令値Id*と入力座標変換部45からの推定電流値(d軸電流値)Idとの差、および電流指令値Iq*と同じく入力座標変換部45からの推定電流値(q軸電流値)Iqとの差を零に近づける比例積分制御のための演算を行う。そして、d-q座標系の電圧指令値Vd*,Vq*を決定する。
【0043】
出力座標変換部43は、磁極位置推定部47からの推定角度θmに基づいて、電圧指令値Vd*,Vq*をU相、V相、およびW相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に変換する。つまり、電圧について2相から3相への変換を行う。
【0044】
PWM変換部44は、電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に基づいて制御信号U+,U-,V+,V-,W+,W-のパターンを生成し、モータ駆動部26へ出力する。制御信号U+,U-,V+,V-,W+,W-は、モータ3に供給する3相交流電力の周波数および振幅をパルス幅変調(PWM: Pulse Width Modulation )により制御するための信号である。
【0045】
入力座標変換部45は、電流検出部27により検出されたU相の電流IuおよびV相の電流Ivの各値からW相の電流Iwの値を算出する。そして、磁極位置推定部47からの推定角度θmと3相の電流Iu,Iv,Iwの値とに基づいて、d-q軸座標系の推定電流値であるd軸電流値Idおよびq軸電流値Iqを算出する。つまり、電流について3相から2相への変換を行う。
【0046】
速度推定部46は、入力座標変換部45からの推定電流値(Id,Iq)と電流制御部52からの電圧指令値Vd*,Vq*とに基づいて、いわゆる電圧電流方程式に従って速度推定値ωmを求める。求められた速度推定値ωmは磁極位置推定部47に入力される。
【0047】
磁極位置推定部47は、速度推定部46からの推定速度ωmに基づいて回転子32の磁極位置を推定する。すなわち、推定速度ωmを積分することにより推定角度θmを算出する。算出された推定角度θmは、位置制御部41、出力座標変換部43、および入力座標変換部45に入力されるとともに、回転角度量を特定するための情報として目標設定ブロック52に入力される。
【0048】
図5に示すように、モータ駆動部26は、モータ3の捲線33~35に電流を流して回転子を駆動するためのインバータ回路である。モータ駆動部26は、3つのデュアル素子261,262,263、およびプリドライブ回路265などを有する。
【0049】
各デュアル素子261~263は、特性の揃った2つのトランジスタ(例えば、電界効果トランジスタ:FET)を直列接続してパッケージに収めた回路部品である。
【0050】
デュアル素子261~263によって、直流電源ライン211から接地ラインへ捲線33~35を介して流れる電流Iが制御される。詳しくは、デュアル素子261のトランジスタQ1,Q2によって、捲線33を流れる電流Iuが制御され、デュアル素子262のトランジスタQ3,Q4によって、捲線34を流れる電流Ivが制御される。そして、デュアル素子263のトランジスタQ5,Q6によって、捲線35を流れる電流Iwが制御される。
【0051】
プリドライブ回路265は、ベクトル制御部21から入力される制御信号U+,U-,V+,V-,W+,W-を、各トランジスタQ1~Q6に適した電圧レベルに変換する。変換後の制御信号U+,U-,V+,V-,W+,W-が、トランジスタQ1~Q6の制御端子(ゲート)に入力される。
【0052】
電流検出部27は、捲線33,34に流れる電流Iu,Ivを検出する。Iu+Iv+Iw=0であるので、検出した電流Iu,Ivの値から計算によって電流Iwを求めることができる。なお、W相電流検出部を有してもよい。
【0053】
電流検出部27は、電流Iu,Ivの流路に挿入されているシャント抵抗による電圧降下を増幅してA/D変換し、電流Iu,Ivの検出値として出力する。すなわち、2シャント方式の検出を行う。シャント抵抗の抵抗値は1/10Ωオーダーの小さい値である。
【0054】
図6にはモータ3の運転パターンの概要が、図7にはモータ3の駆動における目標値と実力値とのずれの例が、図8にはモータ3の回転角度量Θの誤差dΘの影響が、それぞれ示されている。また、図9には回転角度量Θの誤差dΘの変化の傾向が示されている。
【0055】
図6において、モータ3に適用される運転パターン、すなわちモータ3の回転を制御するモータ制御期間90における回転速度ωの推移の設定は、基本的にはいわゆる台形駆動を行う加減速パターンである。つまり、停止状態から駆動を開始して定常速度ω1まで加速し、所定の時間にわたって定常速度ω1を維持し、その後に減速して停止させる。
【0056】
加速区間91の開始タイミング(起動タイミング)、定速区間92の開始タイミング、減速区間93の開始タイミング(停止制御開始タイミング)、および減速区間93の終了タイミング(停止タイミング)は、モータ3の駆動対象に応じてあらかじめ定められる。
【0057】
上に述べたモータ制御装置20の速度指令部51は、このような運転パターンに応じた速度指令値ω*をベクトル制御部21に入力する。少なくとも加速区間91および減速区間93においては、時間の経過につれて刻々と増加または減少する速度指令値ω*を所定の周期ごとに入力する。定速区間92においても同じ速度指令値ω*を繰り返し入力してもよいが、ベクトル制御部21が入力された最新の速度指令値ω*を記憶する方式を採用し、定常速度ω1を示す速度指令値ω*を定速区間92の最初に1回のみ入力するようにしてもよい。
【0058】
画像形成装置1において、速度指令値ω*(回転速度ωの目標値)の推移に忠実にモータ3の回転速度ω(実力値)が推移するのが望ましい。しかし、実際には、図7(A)に示すように、目標値と実力値とにずれが生じる。
【0059】
図7(A)において、目標値の推移(回転速度ωの予定パターンPω)が破線で示され、回転速度ωの実力値の推移が実線で示されている。回転速度ωの予定パターンPωのうち、図示した加速区間91に対応する部分のパターンは、一定の割合で単調に増加する直線パターンである。これに対して、回転速度ωの実力値は、曲線を描くように推移する。特に、回転速度ωが低速であるときには、ベクトル制御の精度が低くなることから、目標値に対する実力値のずれが大きい。
【0060】
回転速度ωの実力値が目標値に対してずれると、必然的に、回転角度量Θについてもその目標値と実力値とにずれが生じる。図7(B)において、回転角度量Θの予定パターンPΘ(目標値の推移)が破線で示され、回転角度量Θの実力値の推移が実線で示されている。また、図7(C)には、回転角度量Θの誤差dΘ(目標値と実力値とにずれ)の推移が示されている。
【0061】
回転角度量Θの予定パターンPΘは、回転速度ωの予定パターンPωに対応する。つまり、速度指令値ω*を積分した角度指令値θ*の推移を表わしている。加速区間91において、回転速度ωの予定パターンPωが単調に増加する直線パターンであるので、回転角度量Θの予定パターンPΘは、二次関数で表わされる単純な曲線を描くように単調に増加する曲線パターンである。
【0062】
これに対して、実際の回転角度量Θ(実力値)は、複雑な曲線を描くように推移する。つまり、回転角度量Θの推移は、回転角度量Θの目標値の推移である予定パターンPΘに対してずれる。特に、起動直後の低速回転時において回転角度量Θに大きな誤差dΘが生じる。
【0063】
ただし、ベクトル制御部21では、上に述べたように、角度指令値θ*と推定角度θmとの差を零に近づけるPI制御が行われことと、低速回転時以外は速度推定の精度が高いこととが相まって、加速区間91の後半では回転角度量Θの誤差dΘはほぼ零になる。
【0064】
なお、角度指令値θ*を算出することなく速度指令値ω*と速度推定値ωmとの差を零に近づけるPI制御を行う場合であっても、回転速度ωの推移によっては、図7(C)のように加速区間91の後半で回転角度量Θの誤差dΘが零になることがあり得る。
【0065】
シート2の搬送に関わるモータ3において、回転角度量Θは、シート2の搬送距離に対応し、回転角度量Θの誤差dΘは、搬送路9におけるシート2の位置ずれとなって印刷物の品質に影響する。
【0066】
シート2に画像を形成するときに回転角度量Θの誤差dΘが残存していると、シート2と画像との搬送方向の位置ずれが生じる。シート2に画像を形成する前または後であっても、例えば図8に示すように搬送方向に離れた2つのローラに1枚のシート2が接する状態などにおいて回転角度量Θの誤差dΘが問題になる。
【0067】
図8(A)では、下流側のローラを駆動するモータ3の回転角度量Θが目標値よりも少ない。つまり、下流側の搬送が遅れている。このため、上流側のローラによりシート2が過剰に押され、シート2に撓みおよび皺が発生する。
【0068】
図8(B)では、図8(A)とは逆に、上流側のローラを駆動するモータ3の回転角度量Θが目標値よりも少ない。つまり、上流側の搬送が遅れている。このため、上流側のローラによりシート2が引っ張られることから、シート2および下流側のローラにストレスが加わる。
【0069】
ところで、回転角度量Θの誤差dΘには、モータ3の個体差およびシート2の厚さのばらつきなどに依存するモータ3の慣性負荷および摩擦負荷の大きさが関係すると考えられる。そこで、同じ型番のモータ3を取り換えて使用したり坪量の近い複数種のシートを順に使用したりするなど、慣性負荷および摩擦負荷が微妙に異なるであろう複数の条件でモータ3を駆動して誤差dΘを測定した。その結果、図9に示すように、条件によって誤差dΘの大きさに差異があるものの、誤差dΘの推移については条件にかかわらず同様の傾向のあることが分かった。例えば、誤差dΘが最も大きくなるタイミングはほとんど同じである。
【0070】
想定される複数の条件下で誤差dΘの推移が同様であるということは、例えばいずれかの条件(条件A)において誤差dΘを低減するよう回転角度量Θを補正すれば、実際の使用時の条件が条件Aと異なっていても、誤差dΘをある程度は低減することができることを意味する。
【0071】
本実施形態のモータ制御装置20には、この知見に基づいて、回転角度量Θの推移を所望の推移に近づける機能が設けられている。以下、この機能を中心にモータ制御装置20の構成および動作を説明する。
【0072】
図10にはモータ制御装置20の記憶部53の機能的構成が、図11には設定テーブル90の構成の例が、それぞれ示されている。
【0073】
図2も参照して、モータ制御装置20は、回転角度量Θの推移を所望の推移に近づける機能ブロックとして、目標設定ブロック52を有する。
【0074】
目標設定ブロック52の記憶部53は、図10に示すように、設定テーブル530、読出し部531、および乗算器532を有する。
【0075】
設定テーブル530は、モータ3の回転角度量Θが予定パターンPΘの通りに推移するよう定められた時系列の複数の制御目標値Dωを記憶する。本実施形態においては、制御目標値Dωとして、初期目標速度ωfと補正係数aとの組が記憶されている。
【0076】
図11(A)に示すように、複数の制御目標値Dωのそれぞれは、ベクトル制御部21に入力する順序と対応づけるテーブル形式で記憶されている。設定テーブル530において、ベクトル制御部21に入力する順序は、起動開始からの経過時間tとされている。
【0077】
図11の例において、経過時間t1~t10は、加速区間91に対応し、経過時間t11は低速区間92に対応し、経過時間t30~t40は、減速区間93に対応する。つまり、設定テーブル530は、起動から定常回転までの加速時の制御目標値Dωを示す起動テーブル530A、および定常回転から停止までの減速時の制御目標値Dωを示す減速テーブル530Bを含んでいる。
【0078】
制御目標値Dωを構成する初期目標速度ωfと補正係数aとのうち、初期目標速度ωfは、ベクトル制御部21に順次に入力する複数の速度指令値ω*のそれぞれの初期値であり、画像形成装置1の工場出荷以前に記憶部53内の不揮発性メモリによって記憶される。
【0079】
初期目標速度ωfは、画像形成装置1の製造段階、すなわち経年変化のない状態における誤差dΘの実測値に基づいて、回転角度量Θが図7(B)の予定パターンPΘにできるだけ忠実に推移するよう試行錯誤により定められる。図11(B)中の破線は、図7(B)の予定パターンPΘに対応する回転速度ωの予定パターンPωを示す。
【0080】
初期目標速度ωfの設定の基本としては、回転角度量Θの実力値が目標値よりも少ない負の誤差dΘが生じるときには、誤差dΘの絶対値が大きいほど初期目標速度ωfを高めに設定する。逆に、実力値が目標値よりも多い正の誤差dΘが生じるときには、誤差dΘの絶対値が大きいほど初期目標速度ωfを低めに設定する。設定されて記憶された初期目標速度ωfは、原則として変更されない。
【0081】
制御目標値Dωのうちの補正係数aは、画像形成装置1の経年変化により初期目標速度ωfのままでは誤差dΘが大きくなるおそれがあることに鑑みて、速度指令値ω*を経年変化に応じて補正するためのパラメータとして設けられている。
【0082】
工場出荷時における補正係数aの値、すなわち補正係数aの初期値は、図11(C)のように、経過時間t1~t40について一律に「1.0」である。工場出荷時の設定テーブル530によると、初期目標速度ωfが実質的にそのまま制御目標値Dωとなる。
【0083】
補正係数aは、設定された補正時期が到来したときに、自動的に見直され、必要に応じて補正部55により修正される。補正係数aが初期値と異なる値に修正されることにより、制御目標値Dωは、初期目標速度ωfと異なる値に補正される。
【0084】
図10に戻って、記憶部53の読出し部531は、起動開始からの経過時間tを計時し、計時した経過時間t1~t11、t30~t40に対応づけられている初期目標速度ωfと補正係数aとを設定テーブル530から順々に読み出して乗算器532へ送る。
【0085】
乗算器532は、送られてきた初期目標速度ωfと補正係数aとを乗算し、得られた積を制御目標値Dωとして速度指令部51に送る。速度指令部51に送られた制御目標値Dωは、上に述べた通り、速度指令値ω*としてベクトル制御部21に入力される。
【0086】
図12には初期目標速度ωfの設定の例が、図13には制御目標値Dωの補正の概要が、図14には制御目標値Dωの補正の例が、図15には制御目標値Dωの補正の複数の態様が、それぞれ示されている。
【0087】
図12の例において、定常速度ω1は、図12(C)の通り3200rpmである。仮に、初期目標速度ωfの推移を回転速度ωの予定パターン(直線パターン)の通りに設定すると、図12(A)に示す誤差dΘが生じてしまう。そこで、図12(B)および(C)に示すように初期目標速度ωfを設定する。これにより、図12(D)に示すように、回転角度量Θの誤差dΘを低減することができる。
【0088】
すなわち、ベクトル制御部21に入力する速度指令値ω*を、図13(A)のように予定パターンPωに対して意図的にずらした値に設定する。これにより、ユーザによる画像形成装置1の累積使用時間が短い段階(使用の初期)において、図13(B)のように回転速度ωの実力値は、ほぼ所望の通りに推移する。必然的に回転角度量Θの実力値もほぼ所望の通りに推移する。
【0089】
しかし、累積使用時間が長くなった段階(使用の中期以降)において、図13(C)のように回転速度ωの実力値の所望の値とのずれが顕著になることがある。そこで、モータ制御装置20は、回転角度量Θの実力値が再び所望の通りに推移するよう、図13(D)に示すように速度指令値ω*を変更する。
【0090】
再び図2を参照して、目標値設定ブロック52の検知部54、蓄積部55、および補正部56は、画像形成装置1の経年変化に応じて制御目標値Dωを補正するために設けられた構成要素である。
【0091】
検知部54は、モータ3を起動して停止させるモータ駆動が行われるときに、モータ3を起動した後の回転角度量Θの推移を検知する。詳しくは、ベクトル制御部21から最新の推定角度θmが入力されるごとに回転角度量Θを積算して時系列に記憶する。時系列に記憶することが推移を検知することに相当する。
【0092】
回転角度量Θを積算する処理として、検知部54は、例えば次式により表わされる積算量Σdθを算出する。
【0093】
Σdθ=(360°-θm1)+360°×n+θm2
θm1:積算を開始するときの推定角度θm
θm2:現在の(最新の)推定角度θm
n:推定角度θmが0になるかまたは減少した回数のカウント値
なお、積算量Σdθは、1よりも細かい刻みの回転回数Nに1回転分の角度量(360°)を乗じた値に相当する。
【0094】
なお、検知部54は、画像安定化処理時またはウォームアップ時など、ローラによりシートを搬送することなくモータ3を回転させる空転駆動時においても、回転角度量Θの推移を検知する。空転駆動時の検知では、主にモータ3の慣性負荷の経年変化による回転角度量Θの誤差dΘを検知することができる。
【0095】
蓄積部55は、検知部54により検知された回転角度量Θの推移を示すデータDΘを蓄積する。データDΘは、時系列の回転角度量Θそのものであってもよいし、予定パターンPΘ(図7参照)に対する回転角度量Θの誤差dΘを時系列に記録したものでもよい。
【0096】
また、データDΘの蓄積は、設定テーブル530の補正が行われるまでに検知された回転角度量Θの推移の全てを記憶するものであってよい。また、メモリ容量に制約がある場合は、回転角度量Θの推移が検知された回数よりもデータDΘの蓄積数が少なくなるよう蓄積を間引いてもよい。
【0097】
補正部56は、検知された回転角度量Θの推移が予定パターンPΘとずれている場合に、以後に起動した後の回転角度量Θが予定パターンPΘの通りに推移するよう、設定テーブル530に記憶されている複数の制御目標値Dωを補正する。その際、制御目標値Dωの補正として、図14に示すように補正係数aを修正する。例えば、誤差dΘが大きくなったタイミング(t3)の補正係数aを1.0から1.2に修正する。その後の経年変化で再び誤差dΘが大きくなると、補正係数aを1.2より大きい値に修正する。
【0098】
補正部56は、あらかじめ定められた補正時期が到来したときに、制御目標値Dωを補正する。補正時期として、例えばモータ3の起動回数(1回…10回…100回…)、累積駆動時間(10時間…50時間…100時間…)、画像形成装置1の稼働日数(1カ月…1年…)が設定値を超えるごとと定めることができる。設定値は、回転角度量Θの誤差dΘが顕在化すると予想される時期を見込んで選定される。
【0099】
補正部56は、図15に示すように、蓄積部55により蓄積されているデータDΘに基づいて、複数の制御目標値Dωを補正する。図15(A)のように前回の補正後に蓄積された全てのデータDΘを用いてもよいし、図15(B)のようにそれを間引いた一定数のデータDΘのみを用いてもよい。
【0100】
補正部56は、蓄積されているデータDΘを平均化し、または出現頻度の高い推移のデータDΘを抽出するなど、所定のアルゴリズムに従って補正係数aの補正後の値を決定する。
【0101】
図16には初期目標速度ωfの設定の他の例が、図17には駆動条件別の初期目標速度ωfの設定の例が、それぞれ示されている。
【0102】
図16に示すように、制御目標値Dωを構成する初期目標速度ωfは、モータ3を駆動する期間のうちの回転角度量Θが予定パターンPΘからずれやすい区間911について、他の区間912,92よりも密に定めることができる。
【0103】
図17に示すように、制御目標値Dωを示す設定テーブル530は、モータ3の駆動条件別に設けられる。図17では、印刷に使用するシート2に応じてモータ3の定常速度ω1を切替える画像形成装置1が想定されている。例えば、シート2として厚紙を使用する印刷では、普通紙を使用する印刷時よりも搬送速度を遅くするため、定常速度ω1を下げる。
【0104】
図17においては、定常速度ω1を3000rpmとする場合の設定テーブル530aと、定常速度ω1を2000rpmとする場合の設定テーブル530bとが示されている。モータ制御装置20の記憶部53は、定常速度ω1の切替えに応じて、対応する設定テーブル530a,530bから初期目標速度ωfおよび補正係数aを読み出してこれらの積である制御目標値Dωを速度指令部51に送る(図10参照)。
【0105】
以上の実施形態によると、モータ3の回転角度量Θの推移を所望の推移に近づけることができる。シート2を適正に搬送することができ、シート2の撓み、皺の発生、画像との位置ずれを低減し、印刷物の品質を高めることができる。
【0106】
定期的に制御目標値Dωを補正するので、経年変化その他の要因によって回転角度量Θが大きくずれるタイミングが変化しても、回転角度量Θの推移を適正化することができる。
【0107】
上に述べた実施形態において、速度指令値ω*に代えて角度指令値(位置指令値)θ*を上位制御部10からベクトル制御部21に入力する場合には、回転角度量Θが予定パターンP Θの通りに推移するよう時系列の角度指令値θ*を定めておけばよい。この時系列の角度指令値θ*を順次にベクトル制御部21に入力することにより、回転角度量Θの推移を所望の推移に近づけることができる。
【0108】
上に述べた実施形態において、画像形成装置1およびモータ制御装置20のそれぞれの全体または各部の構成、処理の内容、順序、またはタイミング、モータ3の構成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 画像形成装置
2 シート
3,3a~3c モータ(DCブラシレスモータ)
12,13,14,17,18 ローラ
20 モータ制御装置
21,21a.21b ベクトル制御部
51 速度指令部(指令部)
53 記憶部
54 検知部
55 蓄積部
56 補正部
91 加速区間(加速時)
93 減速区間(減速時)
911 区間
DΘ データ
Dω 制御目標値
PΘ 予定パターン
Θ 回転角度量
ω* 速度指令値(指令値)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17