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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】可変ノズルターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20220405BHJP
   F01D 17/16 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
F02B37/24
F01D17/16 A
F01D17/16 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017173695
(22)【出願日】2017-09-11
(65)【公開番号】P2019049227
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大蘆 嘉郎
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-309111(JP,A)
【文献】特表2010-501786(JP,A)
【文献】特開2015-194092(JP,A)
【文献】実開昭61-192521(JP,U)
【文献】実開昭62-098702(JP,U)
【文献】実開昭63-014843(JP,U)
【文献】国際公開第2016/052231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F01D 11/00
F01D 17/16
F01D 25/00
F16J 15/16
F16J 15/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンスクロール部の排気をタービンに導入するスクロール流路を画定するノズルリングと、前記スクロール流路に配置された可変ノズルと、前記可変ノズルの回転軸であるノズル軸と、を備え、前記ノズル軸が前記ノズルリングに設けられたノズル軸孔に挿通された、可変ノズルターボチャージャにおいて、
前記ノズル軸孔は、前記ノズル軸を軸支する部分である軸支孔部と、前記ノズル軸孔のうち前記スクロール流路の側の端部に配置されて、前記軸支孔部よりも径の大きい大径孔部と、前記軸支孔部および前記大径孔部の境界部分で前記ノズル軸孔の軸方向に対向する段差部と、を有し、
前記可変ノズルターボチャージャは、前記ノズル軸に嵌められるとともに前記大径孔部に収容される平板状のリング部材で構成されたシール部材を備え、
前記シール部材は、前記シール部材の内周孔および前記ノズル軸の外周面の隙間を非接触でシールするとともに、排気の圧力を受けて前記段差部に接することを特徴とする可変ノズルターボチャージャ。
【請求項2】
タービンスクロール部の排気をタービンに導入するスクロール流路を画定するノズルリングと、前記スクロール流路に配置された可変ノズルと、前記可変ノズルの回転軸であるノズル軸と、を備え、前記ノズル軸が前記ノズルリングに設けられたノズル軸孔に挿通された、可変ノズルターボチャージャにおいて、
前記ノズル軸孔は、前記ノズル軸を軸支する部分である軸支孔部と、前記ノズル軸孔のうち前記スクロール流路の側の端部に配置されて、前記軸支孔部よりも径の大きい大径孔部と、前記軸支孔部および前記大径孔部の境界部分で前記ノズル軸孔の軸方向に対向する段差部と、を有し、
前記可変ノズルターボチャージャは、前記ノズル軸に嵌められるとともに前記大径孔部に収容されて、前記可変ノズルから前記ノズル軸の軸方に向かって拡径する円錐状で厚み方向に対して圧縮力が付与された場合に前記圧縮力に対向する力を生じさせるシール部材を備え、
前記シール部材は、排気の圧力を受けて前記圧縮力が付与された場合に、前記シール部材の内周穴および前記ノズル軸の外周面の密着度を高めるとともに、前記シール部材の外周縁および前記段差部の密着度を高めることを特徴とする可変ノズルターボチャージャ。
【請求項3】
前記シール部材は、前記スクロール流路にはみ出さないように前記大径孔部に収容されている請求項1または2記載の可変ノズルターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変ノズルターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの排気のエネルギを利用して吸気を過給するターボチャージャとして、可変ノズルターボチャージャが知られている(例えば特許文献1参照)。具体的には、特許文献1には、タービンスクロール部の排気をタービンに導入するスクロール流路を画定するノズルリングと、このスクロール流路に配置された可変ノズル(ノズルベーン)と、この可変ノズルの回転軸であるノズル軸と、を備える可変ノズルターボチャージャ(可変容量型過給機)が開示されている。なお、この可変ノズルのノズル軸は、ノズルリングに設けられたノズル軸孔に挿通されており、このノズル軸孔によって回転可能に軸支されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/159004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような可変ノズルターボチャージャにおいて、ノズル軸孔の径はノズル軸の径よりも大きいので、ノズル軸孔の内周面と、この内周面に対向するノズル軸の外周面との間には隙間が存在する。このため、スクロール流路の排気の一部が、この隙間にリークする可能性がある。この場合、タービンに流入する排気流量が減少するので、可変ノズルターボチャージャのタービン効率が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、その目的は、タービン効率を向上させることができる可変ノズルターボチャージャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明に係る可変ノズルターボチャージャは、タービンスクロール部の排気をタービンに導入するスクロール流路を画定するノズルリングと、前記スクロール流路に配置された可変ノズルと、前記可変ノズルの回転軸であるノズル軸と、を備え、前記ノズル軸が前記ノズルリングに設けられたノズル軸孔に挿通された、可変ノズルターボチャージャにおいて、前記ノズル軸孔は、前記ノズル軸を軸支する部分である軸支孔部と、前記ノズル軸孔のうち前記スクロール流路の側の端部に配置されて、前記軸支孔部よりも径の大きい大径孔部と、前記軸支孔部および前記大径孔部の境界部分で前記ノズル軸孔の軸方向に対向する段差部と、を有し、前記可変ノズルターボチャージャは、前記ノズル軸に嵌められるとともに前記大径孔部に収容される平板状のリング部材で構成されたシール部材を備え、前記シール部材は、前記シール部材の内周孔および前記ノズル軸の外周面の隙間を非接触でシールするとともに、排気の圧力を受けて前記段差部に接することを特徴とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る可変ノズルターボチャージャは、タービンスクロール部の排気をタービンに導入するスクロール流路を画定するノズルリングと、前記スクロール流路に配置された可変ノズルと、前記可変ノズルの回転軸であるノズル軸と、を備え、前記ノズル軸が前記ノズルリングに設けられたノズル軸孔に挿通された、可変ノズルターボチャージャにおいて、前記ノズル軸孔は、前記ノズル軸を軸支する部分である軸支孔部と、前記ノズル軸孔のうち前記スクロール流路の側の端部に配置されて、前記軸支孔部よりも径の大きい大径孔部と、前記軸支孔部および前記大径孔部の境界部分で前記ノズル軸孔の軸方向に対向する段差部と、を有し、前記可変ノズルターボチャージャは、前記ノズル軸に嵌められるとともに前記大径孔部に収容されて、前記可変ノズルから前記ノズル軸の軸方に向かって拡径する円錐状で厚み方向に対して圧縮力が付与された場合に前記圧縮力に対向する力を生じさせるシール部材を備え、前記シール部材は、排気の圧力を受けて前記圧縮力が付与された場合に、前記シール部材の内周穴および前記ノズル軸の外周面の密着度を高めるとともに、前記シール部材の外周縁および前記段差部の密着度を高めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ノズルリングの大径孔部に収容されたシール部材によって、スクロール流路の排気がノズル軸孔の軸支孔部の内周面とこの内周面に対向するノズル軸の外周面との隙間にリークすることを抑制することができる。したがって、タービン効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る可変ノズルターボチャージャの構成を模式的に示す模式的断面図である。
図2図2(a)~図2(c)は実施形態に係る可変ノズルユニットを説明するための図である。
図3図3(a)~図3(d)は実施形態の変形例に係る可変ノズルユニットを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、実施形態に係る可変ノズルターボチャージャ1について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように模式的に図示されており、図面上の各部位の寸法比は必ずしも実物とは一致しない。図1は、本実施形態に係る可変ノズルターボチャージャ1の構成を模式的に示す模式的断面図である。なお、図1は、可変ノズルターボチャージャ1のうちターボ軸線6(これは後述するターボ軸4の軸線である)よりも一方の側が模式的に断面図示されている。また、図1には、参考用としてX-Y-Zの直交座標が設けられている。このY軸はターボ軸線6に平行な軸である。
【0010】
可変ノズルターボチャージャ1は、排気管や吸気管等の配管を介して、車両のエンジンに接続されている。このエンジンの一例として、本実施形態では、ディーゼルエンジンを用いている。可変ノズルターボチャージャ1は、タービン2と、コンプレッサ3と、ターボ軸4と、ターボ軸受5と、タービンハウジング7と、コンプレッサハウジング8と、軸受ハウジング9と、可変ノズルユニット20とを備えている。
【0011】
タービン2及びコンプレッサ3は、ターボ軸4によって接続されている。タービン2は、複数枚のタービン翼を有するタービン翼車によって構成されている。コンプレッサ3は、複数枚のコンプレッサ翼を有するコンプレッサ翼車によって構成されている。ターボ軸受5は、ターボ軸4を軸支する軸受であり、軸受ハウジング9に収容されている。
【0012】
タービンハウジング7は、その内部にタービン2を収容している。コンプレッサハウジング8は、その内部にコンプレッサ3を収容している。タービンハウジング7には、タービンスクロール部10及び排気出口11が設けられている。コンプレッサハウジング8には、吸気入口12及びコンプレッサスクロール部13が設けられている。エンジンから排出された排気(E)は、タービンスクロール部10に流入し、次いで、タービン2に当接し、その後、排気出口11から排出される。コンプレッサハウジング8の吸気入口12には、可変ノズルターボチャージャ1よりも上流側の吸気(A)が流入する。
【0013】
タービン2は、タービンスクロール部10から流入した排気のエネルギを受けて、ターボ軸線6を回転中心として回転する。タービン2が回転すると、ターボ軸4を介してタービン2に接続されたコンプレッサ3も回転する。コンプレッサ3が回転することにより、コンプレッサ3は吸気を過給する。この過給された吸気はコンプレッサスクロール部13から排出されてエンジンに供給される。このようにして可変ノズルターボチャージャ1は、排気のエネルギを利用して吸気を過給している。
【0014】
続いて、可変ノズルユニット20について説明する。図2(a)は、可変ノズルターボチャージャ1の可変ノズルユニット20の一部を拡大して模式的に示す模式的拡大断面図である。図1及び図2(a)を参照して、可変ノズルユニット20は、一対のノズルリング(第1ノズルリング21及び第2ノズルリング22)と、可変ノズル30と、ノズル軸40と、可変ノズル駆動機構80と、シール部材の一例としてのシールワッシャ50と、を備えている。
【0015】
第1ノズルリング21及び第2ノズルリング22は、それぞれ、ターボ軸線6を中心軸
とするリング状の部材によって構成されている。具体的には、第1ノズルリング21及び第2ノズルリング22は、タービン2の周囲を囲むようなリング状の部材によって構成されている。
【0016】
第1ノズルリング21の第2ノズルリング22に対向する対向面と、第2ノズルリング22の第1ノズルリング21に対向する対向面との間には、スクロール流路23が画定されている。このスクロール流路23は、タービンスクロール部10の排気をタービン2に導入するための内部排気流路である。
【0017】
可変ノズル30は、タービンスクロール部10に配置されている。なお、図1図2には、1個の可変ノズル30のみが図示されているが、実際には、可変ノズルユニット20は複数個の可変ノズル30を備えている。具体的には、可変ノズル30は、隣接する可変ノズル30との間に所定間隔を有しつつ、ターボ軸線6を中心軸として円周状に複数個、配置されている。
【0018】
ノズル軸40は、可変ノズル30の回転軸である。なお、図2(a)には、ノズル軸40の軸線であるノズル軸線41が図示されている。各々の可変ノズル30は、ノズル軸線41を回転中心として回転する。なお、本実施形態に係るノズル軸線41は、X-Y-Zの直交座標のY軸に平行な軸線となっている。
【0019】
図1を参照して、可変ノズル駆動機構80は、可変ノズル30を回転させるための回転駆動機構である(なお、図1において、可変ノズル駆動機構80の各構成部材の図示は省略されている)。可変ノズル駆動機構80は、軸受ハウジング9に設けられた可変ノズル駆動室14に配置されている。可変ノズル駆動機構80は、ノズル軸40のスクロール流路23の側とは反対側の端部(Y方向側の端部)に接続されており、ノズル軸40を回転させることで、可変ノズル30を回転させる。なお、この可変ノズル駆動機構80は、例えば特許文献1に例示されているような公知の可変ノズルターボチャージャに用いられている、公知の可変ノズル駆動機構を適用することができるので、この詳細な構成の説明は省略する。
【0020】
可変ノズル駆動機構80によって各々の可変ノズル30が回転することで、互いに隣接する可変ノズル30同士の間隔(この間隔は、一般に、ベーン間隔と称されている)が変化する。このベーン間隔が狭くなった場合、スクロール流路23の排気が絞られるので、スクロール流路23を通過してタービン2に流入する排気流速が増大する。この結果、タービン2の回転速度を増大させることができる。このように、可変ノズルターボチャージャ1は、可変ノズル30の回転角度を調整することで、タービン2の回転数を調整することができる。
【0021】
図2(b)は、図2(a)の可変ノズルユニット20のうち第1ノズルリング21及び第2ノズルリング22を抜粋した模式的拡大断面図である。図2(c)は、図2(a)の可変ノズルユニット20のうち、可変ノズル30、ノズル軸40、及びシールワッシャ50を抜粋した模式的拡大断面図である。
【0022】
図2(a)及び図2(c)に示すように、本実施形態に係るノズル軸40は、一様な外径を有する軸本体部42によって構成されている。また、ノズル軸40の軸本体部42には、シールワッシャ50(すなわち、シール部材)が嵌められている。具体的には、本実施形態に係るシールワッシャ50は、平板状のリング部材によって構成されている。そして、シールワッシャ50の内周孔52(リングの内周側の孔)が軸本体部42の外周面43に嵌められている。
【0023】
図2(b)に示すように、第1ノズルリング21には、ノズル軸孔60が設けられている。本実施形態に係るノズル軸孔60は、ノズル軸線41の方向(Y軸に沿った方向)に貫通した貫通孔によって構成されている。前述したノズル軸40は、このノズル軸孔60に挿通されている。
【0024】
具体的には、ノズル軸孔60は、ノズル軸40を回転可能に軸支する軸支孔部61と、この軸支孔部61よりも径の大きい大径孔部62と、を有している。大径孔部62は、ノズル軸孔60のうちスクロール流路23の側の端部(ノズル軸孔60の-Y方向側の端部)に設けられている。軸支孔部61は、大径孔部62のY方向側の端部に接続されている。これにより、ノズル軸孔60は、大径孔部62と軸支孔部61との境界部分に段差部63を有している。
【0025】
軸支孔部61の径は、ノズル軸40の軸本体部42の径よりも僅かに大きく設定されている。これにより、ノズル軸40が回転する場合には、ノズル軸40の軸本体部42の外周面43が軸支孔部61の内周面64に摺動しながら回転する。
【0026】
大径孔部62の径は、シールワッシャ50の外径よりも大きく設定されている。そして、ノズル軸40に嵌合されたシールワッシャ50は、スクロール流路23にはみ出さないように、大径孔部62に収容されている。具体的には、本実施形態に係るシールワッシャ50の厚み(ノズル軸線41の方向の長さ)は、大径孔部62の厚み以下に設定されており、これにより、シールワッシャ50の-Y方向側の端面はスクロール流路23にはみ出さないように(換言すると、第1ノズルリング21の-Y方向側の端面よりも-Y方向側に突出しないように)設定されている。
【0027】
そして、この大径孔部62に収容されたシールワッシャ50は、ノズル軸孔60の軸支孔部61の内周面64とこの内周面64に対向するノズル軸40の外周面43との隙間をシールしている。
【0028】
具体的には、本実施形態に係るシールワッシャ50の内周孔52とノズル軸40の軸本体部42の外周面43との隙間は、スクロール流路23の排気がこの隙間を通過し難いように、微小に設定されている。したがって、この隙間によるラビリンス効果によって、スクロール流路23の排気が、この隙間を通過して軸支孔部61の内周面64と内周面64に対向するノズル軸40の外周面43との隙間にリークすることが抑制されている。
【0029】
また、スクロール流路23の排気の圧力を受けて、シールワッシャ50がY方向に押圧されることで、シールワッシャ50はノズル軸孔60の段差部63に接するようになる。これにより、シールワッシャ50と段差部63との隙間は略ゼロになる。また、大径孔部62の内周面65とシールワッシャ50の外周面51との隙間は、スクロール流路23の排気がこの隙間に流入し難いように、微小に設定されている。したがって、これらの隙間によるラビリンス効果によって、スクロール流路23の排気が、大径孔部62の内周面65とシールワッシャ50の外周面51との隙間、及び、シールワッシャ50と段差部63との隙間を通過して、軸支孔部61の内周面64と内周面64に対向するノズル軸40の軸本体部42の外周面43との隙間にリークすることも抑制されている。
【0030】
すなわち、本実施形態によれば、大径孔部62に収容されたシールワッシャ50によってラビリンスシール構造が形成されており、これにより、スクロール流路23の排気がノズル軸孔60の軸支孔部61の内周面64と内周面64に対向するノズル軸40の外周面43との隙間にリークすることが抑制されている。
【0031】
なお、図2(a)及び図2(c)に示すように、本実施形態に係るノズル軸40の軸本
体部42は、可変ノズル30よりもさらに-Y方向側に突出した構造になっている。このため、図2(b)に示すように、本実施形態に係る第2ノズルリング22には、軸本体部42の可変ノズル30よりも-Y方向側に突出した部位が挿入されるノズル軸孔70が形成されている。仮に、軸本体部42が可変ノズル30よりも-Y方向側に突出した部位を有さない構造の場合には、第2ノズルリング22のノズル軸孔70は不要である。
【0032】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。まず、比較例として、シールワッシャ50及び大径孔部62を有していない可変ノズルターボチャージャを想定する。この比較例に係る可変ノズルターボチャージャの場合、スクロール流路の排気の一部が、ノズル軸孔の軸支孔部の内周面とこの内周面に対向するノズル軸の外周面との隙間にリークする可能性がある。この場合、このリークした排気の分だけ、タービンに流入する排気流量が減少するので、可変ノズルターボチャージャのタービン効率は低下してしまう。具体的には、比較例の場合、特に低速域におけるタービン効率が低下してしまう。
【0033】
これに対して、本実施形態に係る可変ノズルターボチャージャ1によれば、大径孔部62に収容されたシールワッシャ50によって、スクロール流路23の排気がノズル軸孔60の軸支孔部61の内周面64と内周面64に対向するノズル軸40の外周面43との隙間にリークすることを抑制することができる。また、シールワッシャ50が、スクロール流路23にはみ出さないように大径孔部62に収容されているので、スクロール流路23にはみ出したシールワッシャ50によってスクロール流路23の排気の流動が阻害されることも抑制されている。したがって、本実施形態によれば、タービン効率を向上させることができる。特に、低速域におけるタービン効率を向上させることができる。
【0034】
なお、本実施形態において、シールワッシャ50はスクロール流路23にはみ出さないように大径孔部62に収容されているが、この構成に限定されるものではない。シールワッシャ50は、その一部がスクロール流路23にはみ出していてもよい。この場合においても、シールワッシャ50のシール機能によって、スクロール流路23の排気がノズル軸孔60の軸支孔部61の内周面64と内周面64に対向するノズル軸40の外周面43との隙間にリークすることを抑制することは可能である。但し、本実施形態のように、シールワッシャ50が、スクロール流路23にはみ出さないように大径孔部62に収容されている場合の方が、スクロール流路23にはみ出したシールワッシャ50によってスクロール流路23の排気の流動が阻害されることを抑制できる点で、タービン効率を効果的に向上させることができる。この点において、シールワッシャ50はスクロール流路23にはみ出さないことが好ましい。
【0035】
(実施形態の変形例)
続いて、上述した実施形態の変形例に係る可変ノズルターボチャージャ1aについて説明する。本変形例に係る可変ノズルターボチャージャ1aは、可変ノズルユニット20に代えて可変ノズルユニット20aを備える点において、前述した実施形態に係る可変ノズルターボチャージャ1と異なっている。図3(a)は、本変形例に係る可変ノズルユニット20aの一部を拡大して模式的に示す模式的拡大断面図である。図3(b)は、図3(a)の可変ノズルユニット20aのうち第1ノズルリング21及び第2ノズルリング22を抜粋した模式的拡大断面図である。図3(c)は、図3(a)の可変ノズルユニット20aのうち、可変ノズル30、ノズル軸40、及びシールワッシャ50aを抜粋した模式的拡大断面図である。図3(d)は、シールワッシャ50aの模式的斜視図である。
【0036】
本変形例に係る可変ノズルユニット20aは、シール部材の一例として、シールワッシャ50に代えて、シールワッシャ50aを備える点において、前述した実施形態に係る可変ノズルユニット20と異なっている。このシールワッシャ50aは、シールワッシャ50aの厚み方向に対して圧縮力が付与された場合に、この圧縮力に対抗する力を生じさせるシールワッシャである。
【0037】
このような機能を有するものであれば、シールワッシャ50aの具体的な形状は特に限定されるものではないが、本変形例に係るシールワッシャ50aは、一例として、シールワッシャ50aの径方向の中央部がシールワッシャ50aの外周部に対して一方の側(具体的には-Y方向側)に突出した、円錐状の皿バネタイプのシールワッシャによって構成されている(図3(c)及び図3(d)参照)。この場合、シールワッシャ50aの厚み方向(Y軸に沿った方向)に対して圧縮力が付与された場合、シールワッシャ50aは圧縮力に対抗する力(具体的にはバネ力)を生じさせる。
【0038】
本変形例によれば、上述した実施形態の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏することができる。具体的には、スクロール流路23の排気の圧力によって、シールワッシャ50aに対して圧縮力が付与された場合に、シールワッシャ50aの内周孔52とノズル軸40との密着度を高めることができ、また、シールワッシャ50aの外周縁53とノズル軸孔60の段差部63との密着度を高めることもできる。これにより、スクロール流路23の排気がシールワッシャ50aの内周孔52とノズル軸40との隙間、及び、シールワッシャ50aの外周縁53とノズル軸孔60の段差部63との隙間を通過することを効果的に抑制することができる。この結果、スクロール流路23の排気が軸支孔部61の内周面64と内周面64に対向するノズル軸40の外周面43との隙間にリークすることを効果的に抑制することができるので、タービン効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0039】
なお、シールワッシャ50aは、ノズル軸40及び大径孔部62への組み付け時(すなわち、製造工程時)において、厚み方向に所定量圧縮されるような圧縮力が付与された状態で、組み付けられていることが好ましい。なお、この場合、ノズル軸40の外周面43には、シールワッシャ50aの内周孔52が引っかかるような部位(例えば溝等)が形成されていると、シールワッシャ50aに圧縮力を付与した状態でノズル軸40及び大径孔部62へ容易に組み付けられる点で好ましい。
【0040】
このように、シールワッシャ50aに圧縮力が付与された状態でシールワッシャ50aがノズル軸40及び大径孔部62へ組み付けられることで、シールワッシャ50aのバネ力を常時発生させることができるので、シールワッシャ50aの内周孔52とノズル軸40との密着度を向上させ、シールワッシャ50aの外周縁53とノズル軸孔60の段差部63との密着度を向上させることができる。この結果、スクロール流路23の排気のリークを効果的に抑制することができるので、タービン効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0041】
また、上述したようにシールワッシャ50aに圧縮力が付与された状態でシールワッシャ50aがノズル軸40及び大径孔部62へ組み付けられることで、仮にスクロール流路23の排気に圧力脈動(圧力の変動)が生じた場合であっても、この圧力脈動によってシールワッシャ50aが-Y方向に変位して(シールワッシャ50aが浮き上がって)、シールワッシャ50aの外周縁53が段差部63から離れることを効果的に抑制することができる。この点においても、タービン効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0042】
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1,1a 可変ノズルターボチャージャ
2 タービン
3 コンプレッサ
10 タービンスクロール部
20,20a 可変ノズルユニット
21 第1ノズルリング
22 第2ノズルリング
23 スクロール流路
30 可変ノズル
40 ノズル軸
42 軸本体部
43 外周面
50,50a シールワッシャ(シール部材)
60 ノズル軸孔
61 軸支孔部
62 大径孔部
63 段差部
64 内周面
図1
図2
図3