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特許7052268沈水判定システム及び沈水判定方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】沈水判定システム及び沈水判定方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   A47K 4/00 20060101AFI20220405BHJP
   A61H 33/00 20060101ALI20220405BHJP
   G01B 17/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A47K4/00
A61H33/00 C
G01B17/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017184623
(22)【出願日】2017-09-26
(65)【公開番号】P2019058315
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山田 康之
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-146157(JP,A)
【文献】特開2013-034763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0107015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 4/00
A61H 33/00
G01B 17/00
G08B 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において長辺方向と短辺方向を有する浴槽の上部に配置され、前記浴槽の長辺方向に広い指向性を有する超音波を発信し、その反射波である長辺方向反射波を受信する、長辺側超音波発受信装置と
前記浴槽の上部に配置され、前記浴槽の短辺方向に広い指向性を有する超音波を発信し、その反射波である短辺方向反射波を受信する、短辺側超音波発受信装置と、
前記長辺方向反射波に基づいて前長辺側超音波発受信装置から入浴者の頭頂部までの距離である頭頂部距離を算出し、前記短辺方向反射波に基づいて前短辺側超音波発受信装置から前記浴槽の縁部上面までの距離である縁部上面距離を算出し、前記頭頂部距離と前記縁部上面距離とを比較し、その比較結果に基づいて、前記入浴者が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であるか否かを判定する沈水判定装置と、
を備えた、
沈水判定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の沈水判定システムであって、
前記沈水判定装置は、前記縁部上面距離から前記頭頂部距離を引いた差分が所定値以下となった場合、前記入浴者が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であると判定する、
沈水判定システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の沈水判定システムであって、
記長辺側超音波発受信装置及び前記短辺側超音波発受信装置は異なるタイミングで前記超音波を発受信するように構成されている、
沈水判定システム。
【請求項4】
平面視において長辺方向と短辺方向を有する浴槽の上部に配置した長辺側超音波発受信装置を用いて、前記浴槽の長辺方向に広い指向性を有する超音波を発信し、その反射波である長辺方向反射波を受信する、ステップと、
前記浴槽の上部に配置した短辺側超音波発受信装置を用いて、前記浴槽の短辺方向に広い指向性を有する超音波を発信し、その反射波である短辺方向反射波を受信するステップと、
前記長辺方向反射波に基づいて前記長辺側超音波発受信装置から入浴者の頭頂部までの距離である頭頂部距離を算出し、前記短辺方向反射波に基づいて前記短辺側超音波発受信装置から前記浴槽の縁部上面までの距離である縁部上面距離を算出し、前記頭頂部距離と前記縁部上面距離とを比較し、その比較結果に基づいて、前記入浴者が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であるか否かを判定するステップと、
を含む、
沈水判定方法。
【請求項5】
コンピュータに、
請求項4に記載の沈水判定方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈水判定システム及び沈水判定方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、浴室の天井に設けた超音波発受信装置を用いて浴槽の水面と入浴者の身体上端部との間の距離を測定し、その測定結果に基づいて浴槽内の入浴者の沈水状態を判定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5488995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、浴槽の水面は上下に変動し易く、上記判定結果の信頼性は低い。
【0005】
本発明の目的は、浴槽内の入浴者が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であるか否かを確実に検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の沈水判定システムは、浴槽の上部に配置され、前記浴槽に向けて超音波を発信し、その反射波を受信する、少なくとも1つの超音波発受信装置と、前記受信した反射波に基づいて、前記少なくとも1つの超音波発受信装置から入浴者の頭頂部までの距離である頭頂部距離と、前記少なくとも1つの超音波発受信装置から前記浴槽の縁部上面までの距離である縁部上面距離と、を算出し、前記頭頂部距離と前記縁部上面距離とを比較し、その比較結果に基づいて、前記入浴者が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であるか否かを判定する沈水判定装置と、を備える。
他の実施形態の沈水判定方法は、浴槽の上部に少なくとも1つの超音波発受信装置を配置し、前記少なくとも1つの超音波発受信装置から前記浴槽に向けて超音波を発信し、その反射波を受信する、発受信ステップと、前記受信した反射波に基づいて、前記少なくとも1つの超音波発受信装置から入浴者の頭頂部までの距離である頭頂部距離と、前記少なくとも1つの超音波発受信装置から前記浴槽の縁部上面までの距離である縁部上面距離と、を算出し、前記頭頂部距離と前記縁部上面距離とを比較し、その比較結果に基づいて、前記入浴者が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であるか否かを判定する沈水判定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記頭頂部距離の比較対象として、殆ど変動することがない前記縁部上面距離を用いているので、浴槽内の入浴者が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であるか否かを確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】沈水判定システムの概略図である。(第1実施形態)
図2】浴室の俯瞰図である。(第1実施形態)
図3】入浴姿勢を示す図である。(第1実施形態)
図4】沈水判定装置の機能ブロック図である。(第1実施形態)
図5】超音波を用いた測距の説明図である。(第1実施形態)
図6】沈水判定システムにおける制御フローである。(第1実施形態)
図7】沈水判定装置の機能ブロック図である。(第2実施形態)
図8】浴室の俯瞰図である。(第2実施形態)
図9】超音波を用いた測距の説明図である。(第2実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
次に、図面を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
(沈水判定システム)
図1に示すように、本実施形態に係る沈水判定システム1は、超音波発受信装置2と、沈水判定装置3と、を備える。超音波発受信装置2は、浴室の浴槽4の上部に位置する天井5に配置され、浴槽4に向けて超音波を発信し、その反射波を受信する。超音波発受信装置2は、浴槽4の上部に配置されている。沈水判定装置3は、超音波発受信装置2が受信した反射波に基づいて、超音波発受信装置2から入浴者6の頭頂部7までの距離である頭頂部距離7Dと、超音波発受信装置2から浴槽4の縁部上面8までの距離である縁部上面距離8Dと、を算出し、頭頂部距離7Dと縁部上面距離8Dとを比較し、その比較結果に基づいて、入浴者6が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であるか否かを判定する。
【0012】
沈水判定装置3には警報装置9が接続されている。沈水判定装置3及び警報装置9は、浴室内外の任意の場所に設置可能であり、超音波発受信装置2に内蔵されていてもよい。超音波発受信装置2、沈水判定装置3及び警報装置9は、互いに有線で接続されていてもよいし、無線で信号を送受信しても良く、インターネットを介して接続されていてもよい。
【0013】
図2は、家庭用浴室を天井5から見た俯瞰図である。図2に示すように一般に天井5からは浴室内を一望できる。浴室には洗い場10及び浴槽4が設けられている。浴槽4には、入浴するための湯11が張られている。浴室内における溺死は、浴槽4の湯11に浸かった状態の時に何らかの理由で意識喪失状態になったり、浴槽4から出ようと立ち上がった時に血圧の急速な低下により脳もしくは心臓が虚血状態になったりして浴槽4の湯11に入浴者6の頭部が沈水し、鼻や口などの呼吸器官を浴槽4の湯11が塞ぐことにより発生する。以降、「沈水状態」とは、入浴者6の頭部が浴槽4の湯11に沈水した状態を意味するものとする。
【0014】
図3(a)及び図3(b)に入浴者6の浴槽4内における入浴姿勢を示す。図3(a)には、入浴者6の頭頂部7が縁部上面8よりも十分に上方に位置している入浴姿勢を示している。図3(b)には、例えば入浴者6が意識喪失したことにより自らを支えられなくなり、入浴者6の頭頂部7が下がって縁部上面8に近づいて、沈水状態に進行しかけている入浴姿勢を示している。
【0015】
図1に示した超音波発受信装置2は、浴槽4全体に向けて短時間の超音波を間欠的に発信する。更に、超音波発受信装置2は、発信した超音波が入浴者6の頭頂部7、浴槽4の縁部上面8、又は浴槽4の付属品等で反射した反射波(エコー波)を受信する。
【0016】
沈水判定装置3は、図4に示すように、パルス発生回路20、発振回路21、断続回路22、送信用増幅回路23、発受信切替回路24、受信用増幅回路25、フィルタ回路26、波形分析回路27、頭頂部反射波抽出部28、縁部上面反射波抽出部29、差分算出部30及び沈水判定部31を備える。頭頂部反射波抽出部28、縁部上面反射波抽出部29、差分算出部30及び沈水判定部31は、例えば中央演算処理装置(CPU)の論理回路により構成される。
【0017】
発振回路21は、超音波帯域の交流信号を発生させる。パルス発生回路20は、超音波の発受信時間を決定するためのパルスを発生し、発受信切替回路24、断続回路22及び波形分析回路27に出力する。断続回路22は、パルス発生回路20からのパルスにより制御され、発振回路21からの交流信号をパルス状の振幅を持った交流波形とする。送信用増幅回路23は、断続回路22からの交流信号を増幅する。
【0018】
発受信切替回路24は、パルス発生回路20からのパルスにより制御され、超音波発受信装置2の発受信を切り替える。超音波発受信装置2により、継続時間幅が短いパルス状の超音波が浴槽4に向けて発射される。超音波が入浴者6の頭頂部7や縁部上面8、浴槽4の周辺部分に反射し再び超音波発受信装置2に到達する。反射波が到達する時点において、発受信切替回路24は、超音波発受信装置2の接続先を受信用増幅回路25に切り替える。
【0019】
受信用増幅回路25は、超音波発受信装置2により受信された反射波を増幅する。フィルタ回路26は、超音波発受信装置2が発信した超音波の周波数成分以外の周波数成分を除去する。フィルタ回路26からの出力は波形分析回路27に入力される。
【0020】
図5(a)及び図5(b)は、図3(a)及び図3(b)に示した各入浴姿勢において、波形分析回路27に入力される受信波形を示す。(tx)は距離測定の基準となる送信波形を示し、(rx)は受信波形を示している。
【0021】
図5(a)及び図5(b)に示すように、超音波発受信装置2から浴槽4へ超音波が発信されると、先ず、超音波発受信装置2から最も近い位置にある入浴者6の頭頂部7で反射した受信波形W11が観測され、次に、浴槽4の縁部上面8で反射した受信波形W12が観測され、その後に、湯11の水面で反射した受信波形W13が観測される。
【0022】
ここで、入浴者6は急激な動きや周期的な動きがないので、入浴者6に対応する受信波形W11は他の受信波形から明確に区別することができる。また、縁部上面8は固定物であるから、縁部上面8に対応する受信波形W12は受信強度や出現タイミングに変動がなく、従って、縁部上面8に対応する受信波形W12は他の受信波形から明確に区別することができる。そして、湯11の水面には浴槽4の形状で決定する定在波による波が存在するので、湯11の水面に対応する反射波は、周期的で且つ比較的変動周期が短い傾向にある。従って、湯11の水面に対応する受信波形W13は他の受信波形から明確に区別することができる。
【0023】
図4に示した波形分析回路27は、フィルタ回路26から入力した受信波形に対して、エンベロープ検波を行い、エンベロープ検波波形を出力する。
【0024】
頭頂部反射波抽出部28は、波形分析回路27から出力された受信波形及びそのエンベロープ検波波形の何れか一方又は双方に基づいて、受信した反射波から受信波形W11を入浴者6の頭頂部7での反射波として抽出する。また、縁部上面反射波抽出部29は、波形分析回路27から出力された受信波形及びそのエンベロープ検波波形の何れか一方又は双方に基づいて、受信した反射波から受信波形W12を浴槽4の縁部上面8での反射波として抽出する。
【0025】
差分算出部30は、頭頂部反射波抽出部28により抽出された入浴者6の頭頂部7での反射波(受信波形W11)に基づいて、超音波発受信装置2から入浴者6の頭頂部7までの距離である頭頂部距離7Dを算出する。また、差分算出部30は、縁部上面反射波抽出部29により抽出された浴槽4の縁部上面8での反射波(受信波形W12)に基づいて、超音波発受信装置2から浴槽4の縁部上面8までの距離である縁部上面距離8Dを算出する。そして、差分算出部30は、頭頂部距離7Dと縁部上面距離8Dを比較する。具体的には、差分算出部30は、縁部上面距離8Dから頭頂部距離7Dを引いた差分を算出する。
【0026】
なお、差分算出部30において頭頂部距離7Dは、頭頂部反射波抽出部28が抽出した入浴者6の頭頂部7での反射波について超音波が発信してから受信するまでの遅延時間を算出し、算出した遅延時間に超音波の伝搬速度を掛けることで算出できる。
【0027】
同様に、差分算出部30において縁部上面距離8Dは、縁部上面反射波抽出部29が抽出した浴槽4の縁部上面8での反射波について超音波が発信してから受信するまでの遅延時間を算出し、算出した遅延時間に超音波の伝搬速度を掛けることで算出できる。
【0028】
また、標準気圧における音波の乾燥空気中での伝搬速度v(メートル毎秒)は気温を摂氏T度とすると「v=331.5+0.61T」で求められる。従って、頭頂部距離7Dについては、図5の遅延時間t11を用いると「7D=0.5×t11×v=0.5×t11(331.5+0.61T)」となり、縁部上面距離8Dについては、図5の遅延時間t12を用いると「8D=0.5×t12×v=0.5×t12(331.5+0.61T)」となる。そして、縁部上面距離8Dから頭頂部距離7Dを引いた差分ΔDは、「ΔD=8D―7D=0.5(t12-t11)(331.5+0.61T)」となる。
【0029】
沈水判定部31は、差分算出部30による頭頂部距離7Dと縁部上面距離8Dとの比較結果に基づいて、入浴者6が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であるか否かを判定する。具体的には、沈水判定部31は、差分算出部30によって算出された差分ΔDが所定値以下となった場合、入浴者6が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であると判定する。ここで、所定値とは、例えば、15cmから30cmの範囲内で適宜に設定されるものであり、入浴者6の頭部の大きさや呼吸器の位置等に応じて決定することが好ましい。所定値は、一例として、25cmに設定される。所定値は沈水判定装置3の図示しない記憶装置等に予め記憶させておく。
【0030】
警報装置9は、沈水判定部31により入浴者6が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であると判定された場合に警告を発する。
【0031】
(沈水判定方法)
次に、図6を参照して、本発明の実施の形態に係る沈水判定システム1を用いた沈水判定方法を説明する。
【0032】
ステップS100:
先ず、超音波発受信装置2が、浴槽1へ向けて超音波を発信する。発信した超音波は入浴者6や縁部上面8、湯11の水面等で反射し、反射波が超音波発受信装置2により受信される。
【0033】
ステップS110:
次に、波形分析回路27が、超音波発受信装置2が受信した反射波の波形、そのエンベロープ検波波形を出力する。
【0034】
ステップS120:
次に、頭頂部反射波抽出部28が、波形分析回路27からの出力された受信波形及びそのエンベロープ検波波形に基づいて、受信した反射波のうち受信波形W11を入浴者6の頭頂部7での反射波として抽出する。
【0035】
ステップS130:
次に、縁部上面反射波抽出部29が、波形分析回路27からの出力された受信波形及びそのエンベロープ検波波形に基づいて、受信した反射波のうち受信波形W12を浴槽4の縁部上面8での反射波として抽出する。
【0036】
ステップS140:
次に、差分算出部30が、頭頂部反射波抽出部28により抽出された入浴者6の頭頂部7での反射波に基づいて、頭頂部距離7Dを算出する。同様に、差分算出部30が、縁部上面反射波抽出部29により抽出された浴槽4の縁部上面8での反射波に基づいて、縁部上面距離8Dを算出する。そして、差分算出部30は、縁部上面距離8Dから頭頂部距離7Dを引いて差分ΔDを算出する。
【0037】
ステップS150:
次に、沈水判定部31は、差分ΔDが所定値以下であるか判定する。沈水判定部31が差分ΔDが所定値以下でないと判定した場合、処理を終了する。一方、沈水判定部31が差分ΔDが所定値以下であると判定した場合、ステップS160において警報装置9が警報を発し、処理を終了する。
【0038】
図6に示した一連の手順は、図6と等価なアルゴリズムのプログラムにより、図1に示した沈水判定システム1を制御して実行できる。このプログラムは、図示を省略した記憶装置等に記憶させればよい。また、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に保存し、この記録媒体を記憶装置に読み込ませることにより、本発明の実施の形態の一連の手順を実行することができる。
【0039】
以上に、本願発明の第1実施形態を説明したが、上記第1実施形態は、以下の特徴を有している。
【0040】
即ち、沈水判定システム1は、浴室の浴槽4の上部に位置する天井5に配置され、浴槽4に向けて超音波を発信し、その反射波を受信する、超音波発受信装置2と、受信した反射波に基づいて、超音波発受信装置2から入浴者6の頭頂部7までの距離である頭頂部距離7Dと、超音波発受信装置2から浴槽4の縁部上面8までの距離である縁部上面距離8Dと、を算出し、頭頂部距離7Dと縁部上面距離8Dとを比較し、その比較結果に基づいて、入浴者6が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であるか否かを判定する沈水判定装置3と、を備える。以上の構成によれば、頭頂部距離7Dの比較対象として、殆ど変動することがない縁部上面距離8Dを用いているので、浴槽4内の入浴者6が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であるか否かを確実に検出することができる。
【0041】
また、沈水判定装置3は、縁部上面距離8Dから頭頂部距離7Dを引いた差分ΔDが所定値以下となった場合、入浴者6が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であると判定する。以上の構成によれば、入浴者6が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であることを簡単な計算で検出することができる。
【0042】
また、沈水判定方法は、浴室の浴槽4の上部に位置する天井5に超音波発受信装置2を配置し、超音波発受信装置2から浴槽4に向けて超音波を発信し、その反射波を受信する、発受信ステップ(S100)と、受信した反射波に基づいて、超音波発受信装置2から入浴者6の頭頂部7までの距離である頭頂部距離7Dと、超音波発受信装置2から浴槽4の縁部上面8までの距離である縁部上面距離8Dと、を算出し、頭頂部距離7Dと縁部上面距離8Dとを比較し(S140)、その比較結果に基づいて、入浴者が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であるか否かを判定する(S150)沈水判定ステップ(S110-S150)と、を含む。以上の方法によれば、頭頂部距離7Dの比較対象として、殆ど変動することがない縁部上面距離8Dを用いているので、浴槽4内の入浴者6が沈水状態に進行する可能性がある入浴姿勢であるか否かを確実に検出することができる。
【0043】
なお、浴槽4内に水中用の超音波センサを設け、この超音波センサにより入浴者の有無を沈水判定に先立って判定してもよい。
【0044】
(第2実施形態)
次に、図7から図9を参照して、第2実施形態を説明する。
【0045】
上記第1実施形態では、図4に示すように、沈水判定システム1は、超音波発受信装置2を1つのみ備えているとした。これに対し、本実施形態において沈水判定システム1は、図7に示すように、超音波発受信装置として、長辺側超音波発受信装置40と、短辺側超音波発受信装置41と、を備えている。また、沈水判定装置3は、更に、指向性切替回路32と、指向性切替制御回路33と、を備えている。
【0046】
図8に示すように、浴槽4は、平面視において、紙面縦方向に一致する長辺方向と、紙面横方向に一致する短辺方向と、を有している。浴槽4は、平面視において、紙面縦方向に一致する長手方向と、紙面横方向に一致する短手方向と、を有している。
【0047】
長辺側超音波発受信装置40は、図8において符号40aで示す楕円形状の破線のように、浴槽4の長辺方向に広く短辺方向に狭い指向性を有する超音波を発信可能に構成されている。浴槽4の長辺方向に広い指向性によれば、入浴者6がどちらを向いて入浴していても、問題なく入浴者6の頭頂部7に向けて超音波が発信されることになる。なお、好ましくは、長辺側超音波発受信装置40が発信する超音波は、浴槽4の縁部上面8よりも内側の領域にのみ発信されるとよい。
【0048】
短辺側超音波発受信装置41は、図8において符号41aで示す楕円形状の破線のように、浴槽4の長辺方向に狭く短辺方向に広い指向性を有する超音波を発信可能に構成されている。好ましくは、短辺側超音波発受信装置41が発信する超音波は、浴槽4の長辺側の縁部上面8を含み、浴槽4の短辺側の縁部上面8を含まない領域に発信されるとよい。また、好ましくは、短辺側超音波発受信装置41が発信する超音波の領域の中心は、平面視で浴槽4の長辺方向中央及び短辺方向中央に実質的に一致するとよい。以上の指向性によれば、入浴者6の頭頂部7に向けて超音波が発信されることがない。
【0049】
なお、長辺側超音波発受信装置40及び短辺側超音波発受信装置41が発信する超音波に指向性を付与するには、既に知られた種々の公知の手段を適用し得る。例えば、第1に、超音波放射面に僅かな凹凸を持たせることである。即ち、超音波放射面のうち凸部分は指向性を広げる作用を有し、凹部分は指向性を狭める作用を有する。第2に、圧電素子を収容するケースの肉厚を不均一とすれば、肉厚の厚い部分では振動が抑えられることで、均一でない指向性が得られる。
【0050】
図7に戻り、指向性切替制御回路33は、指向性切替回路32に、所定の時間間隔で制御信号を出力する。
【0051】
指向性切替回路32は、指向性切替制御回路33から制御信号が入力されるたびに、発受信切替回路24の接続先を、長辺側超音波発受信装置40と短辺側超音波発受信装置41の間で切り替える。以上の構成により、長辺側超音波発受信装置40及び短辺側超音波発受信装置41は異なるタイミングで超音波を発受信するように構成されている。例えば、長辺側超音波発受信装置40による超音波の発受信と、短辺側超音波発受信装置41による超音波の発受信と、は交互に実行される。
【0052】
以上の構成によれば、長辺側超音波発受信装置40から発信された超音波は入浴者6の頭頂部7では反射し易く、浴槽4の縁部上面8では反射し難い。従って、図9(a)に示すように、長辺側超音波発受信装置40での受信波形には、入浴者6の頭頂部7に対応する受信波形W11は現れるものの、縁部上面8に対応する受信波形W12は殆ど現れない。従って、長辺側超音波発受信装置40での受信波形を分析することで、入浴者6の頭頂部7に対応する受信波形W11を、縁部上面8に対応する受信波形W12から区別して確実に抽出することができるようになる。
【0053】
同様に、短辺側超音波発受信装置41から発信された超音波は入浴者6の頭頂部7では反射し難く、浴槽4の縁部上面8では反射し易い。従って、図9(b)に示すように、短辺側超音波発受信装置41での受信波形には、入浴者6の頭頂部7に対応する受信波形W11は殆ど現れないものの、縁部上面8に対応する受信波形W12は現れる。従って、短辺側超音波発受信装置41での受信波形を分析することで、縁部上面8に対応する受信波形W12を、入浴者6の頭頂部7に対応する受信波形W11から区別して確実に抽出することができるようになる。
【0054】
そして、沈水判定装置3は、長辺側超音波発受信装置40に対応する反射波に基づいて頭頂部距離7Dを算出すると共に、短辺側超音波発受信装置41に対応する反射波に基づいて縁部上面距離8Dを算出する。以上の構成によれば、頭頂部距離7Dと縁部上面距離8Dを確実に算出することができる。
【0055】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明抽出事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 沈水判定システム
2 超音波発受信装置
3 沈水判定装置
4 浴槽
5 天井
6 入浴者
7 頭頂部
7D 頭頂部距離
8 縁部上面
8D 縁部上面距離
9 警報装置
10 洗い場
11 湯
20 パルス発生回路
21 発振回路
22 断続回路
23 送信用増幅回路
24 発受信切替回路
25 受信用増幅回路
26 フィルタ回路
27 波形分析回路
28 頭頂部反射波抽出部
29 縁部上面反射波抽出部
30 差分算出部
31 沈水判定部
32 指向性切替回路
33 指向性切替制御回路
40 長辺側超音波発受信装置
41 短辺側超音波発受信装置
W11 受信波形
W12 受信波形
W13 受信波形
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9