(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】揮発性物質放出管理装置、揮発性物質放出管理方法、及び揮発性物質放出管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/497 20060101AFI20220405BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G01N33/497 C
A01G7/00 603
(21)【出願番号】P 2017201679
(22)【出願日】2017-10-18
【審査請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】今枝 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】松山 崇
(72)【発明者】
【氏名】大森 良太
(72)【発明者】
【氏名】中根 英雄
(72)【発明者】
【氏名】星野 文彦
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-065868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0008228(US,A1)
【文献】井田明, 外,スギから放出される揮発性有機化合物のOH反応性測定および化学分析,大気環境学会誌,2016年,Vol.51, No.2,p.132-143
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/497
A01G 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の植物から放出される揮発性物質の濃度を計測する計測部と、
前記計測部により計測された揮発性物質の濃度と、目標とする濃度との差分を算出する算出部と、
前記計測部による計測位置における前記対象の植物の種類に関する、
植物に対する直接的な処理であって、前記植物から揮発性物質を意図的に放出させるための処理として予め定められた物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を施して前記揮発性物質を前記対象の植物から放出させることを表す情報を用いて、前記差分だけ前記揮発性物質の濃度を増加させるための前記物理的処理及び前記化学的処理の少なくとも一方を導出する導出部と、
前記導出部により導出された物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を出力する出力部と、
を備えた揮発性物質放出管理装置。
【請求項2】
前記植物は、樹木であり、
前記計測部は、前記樹木の枝下よりも低い位置における前記揮発性物質の濃度を計測し、
前記導出部は、前記計測部による計測位置の高さに応じて、前記差分だけ前記揮発性物質の濃度を増加させるための前記物理的処理及び前記化学的処理の少なくとも一方を導出する
請求項1に記載の揮発性物質放出管理装置。
【請求項3】
対象の植物から放出される揮発性物質の濃度を計測する計測部により計測された揮発性物質の濃度と、目標とする濃度との差分を算出し、
前記計測部による計測位置における前記対象の植物の種類に関する、
植物に対する直接的な処理であって、前記植物から揮発性物質を意図的に放出させるための処理として予め定められた物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を施して前記揮発性物質を前記対象の植物から放出させることを表す情報を用いて、前記差分だけ前記揮発性物質の濃度を増加させるための前記物理的処理及び前記化学的処理の少なくとも一方を導出し、
導出した物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を出力する
処理をコンピュータが実行する揮発性物質放出管理方法。
【請求項4】
対象の植物から放出される揮発性物質の濃度を計測する計測部により計測された揮発性物質の濃度と、目標とする濃度との差分を算出し、
前記計測部による計測位置における前記対象の植物の種類に関する、
植物に対する直接的な処理であって、前記植物から揮発性物質を意図的に放出させるための処理として予め定められた物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を施して前記揮発性物質を前記対象の植物から放出させることを表す情報を用いて、前記差分だけ前記揮発性物質の濃度を増加させるための前記物理的処理及び前記化学的処理の少なくとも一方を導出し、
導出した物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を出力する
処理をコンピュータに実行させる揮発性物質放出管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性物質放出管理装置、揮発性物質放出管理方法、及び揮発性物質放出管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物において、種々の病害の原因となる細菌等の繁殖を抑制したり、害虫等の食害を抑制したりするための抵抗性の誘導剤が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、アレロパシー効果を有するカワツルモを、藻類の抑制対象となる、新たな水が流入しない閉鎖水域の水底に、植栽密度を2~5g/Lに調整して植栽する藻類抑制方法が知られている(特許文献2参照)。
【0004】
また、被検対象である1つ以上の植物を生育している区域において、植物から発せられる揮発性物質の濃度、揮発性物質の種類、揮発性物質として含有されている化合物の混合比率、及び上記区域内における揮発性物質の位置情報のうちの少なくとも1つの情報をモニタリングし、上記区域内の植物の状態を診断する植物の診断方法が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4402386号
【文献】特許第5707956号
【文献】特開2016-65868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、植物は、傷をつける等の物理的処理やサリチル酸及びジャスモン酸等の化学物質を塗布する等の化学的処理が施されることによって、揮発性物質を放出する場合がある。この場合、植物から揮発性物質を意図的に放出させることで、植物の周辺の所定の空間における揮発性物質の濃度を目標とする濃度にすることができる。しかしながら、上記特許文献1~特許文献3では、植物から揮発性物質を意図的に放出させることは考慮されていない。
【0007】
本発明は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、所定の空間における揮発性物質の濃度を目標とする濃度にすることができる揮発性物質放出管理装置、揮発性物質放出管理方法、及び揮発性物質放出管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る揮発性物質放出管理装置は、対象の植物から放出される揮発性物質の濃度を計測する計測部と、前記計測部により計測された揮発性物質の濃度と、目標とする濃度との差分を算出する算出部と、前記計測部による計測位置における前記対象の植物の種類に関する、植物に対する直接的な処理であって、前記植物から揮発性物質を意図的に放出させるための処理として予め定められた物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を施して前記揮発性物質を前記対象の植物から放出させることを表す情報を用いて、前記差分だけ前記揮発性物質の濃度を増加させるための前記物理的処理及び前記化学的処理の少なくとも一方を導出する導出部と、前記導出部により導出された物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を出力する出力部と、を備える。
【0009】
なお、本発明に係る揮発性物質放出管理装置は、前記植物が、樹木であり、前記計測部が、前記樹木の枝下よりも低い位置における前記揮発性物質の濃度を計測し、前記導出部が、前記計測部による計測位置の高さに応じて、前記差分だけ前記揮発性物質の濃度を増加させるための前記物理的処理及び前記化学的処理の少なくとも一方を導出してもよい。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る揮発性物質放出管理方法は、対象の植物から放出される揮発性物質の濃度を計測する計測部により計測された揮発性物質の濃度と、目標とする濃度との差分を算出し、前記計測部による計測位置における前記対象の植物の種類に関する、植物に対する直接的な処理であって、前記植物から揮発性物質を意図的に放出させるための処理として予め定められた物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を施して前記揮発性物質を前記対象の植物から放出させることを表す情報を用いて、前記差分だけ前記揮発性物質の濃度を増加させるための前記物理的処理及び前記化学的処理の少なくとも一方を導出し、導出した物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を出力する処理をコンピュータが実行する方法である。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る揮発性物質放出管理プログラムは、対象の植物から放出される揮発性物質の濃度を計測する計測部により計測された揮発性物質の濃度と、目標とする濃度との差分を算出し、前記計測部による計測位置における前記対象の植物の種類に関する、植物に対する直接的な処理であって、前記植物から揮発性物質を意図的に放出させるための処理として予め定められた物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を施して前記揮発性物質を前記対象の植物から放出させることを表す情報を用いて、前記差分だけ前記揮発性物質の濃度を増加させるための前記物理的処理及び前記化学的処理の少なくとも一方を導出し、導出した物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を出力する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定の空間における揮発性物質の濃度を目標とする濃度にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る揮発性物質放出管理装置の概略構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る端末の機能ブロック図である。
【
図3】実施形態に係る管理台帳データベースに記憶される街路樹エントリの一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る処理内容データベースの一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る処理方法導出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態に係る第1表示画面の一例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る第2表示画面の一例を示す図である。
【
図9】実施形態に係る第3表示画面の一例を示す図である。
【
図10】実施形態に係る第4表示画面の一例を示す図である。
【
図11】実施形態に係る第5表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0015】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る揮発性物質放出管理装置10の構成を説明する。
図1に示すように、揮発性物質放出管理装置10は、GPS(Global Positioning System)機能を有する端末12、及び街路樹から放出される揮発性物質(例えば、テルペン)の濃度を計測する計測部の一例としてのセンサ14を備える。センサ14は端末12に接続され、端末12はセンサ14により計測された揮発性物質の濃度をセンサ14から取得する。端末12の例としては、スマートフォン、タブレットコンピュータ、及びラップトップ型コンピュータ等の情報処理装置が挙げられる。なお、以下では、
図1に示すように、街路樹の枝下の高さを「高さT0」といい、センサ14による揮発性物質の計測位置の高さ(例えば、1m以上2m以下の高さ)を「高さTs」という。また、本実施形態では、一例として、高さTsが高さT0よりも低い場合について説明する。
【0016】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る端末12の機能的な構成を説明する。
図2に示すように、端末12は、記憶部20、取得部22、受付部24、算出部26、導出部28、及び出力部30を備える。記憶部20には、管理台帳データベース(DB)32及び処理内容DB34が記憶される。なお、管理台帳DB32及び処理内容DB34の少なくとも一方が、ネットワークを介して端末12と通信可能な外部装置に記憶されていてもよい。
【0017】
本実施形態に係る管理台帳DB32は、街路樹を管理するためのデータベースである。管理台帳DB32は、街路樹の植樹位置に対応する位置で計測したGPS計測結果を主キーとし、街路樹を撮像した街路樹画像、及び街路樹に関する各種情報を含む街路樹エントリを、街路樹毎に記憶する。街路樹エントリの項目には、一例として
図3に示すように、『登録番号』、『基本情報』、『樹木形状』、『活力状況』、『植栽環境』、『揮発性物質』、及び『備考』が含まれる。
【0018】
ここで、『登録番号』は、管理対象とする街路樹の極近傍でGPS観測により取得した位置情報である。このように、GPS観測により取得した位置情報を用いて、管理対象となる各々の街路樹に「登録番号」を割り振る。
【0019】
『基本情報』は、8つの項目「路線名」、「樹種名」、「植栽年」、「管理履歴」、「障害履歴」、「樹木価値」、「前回調査日時」、及び「全景写真」を有している。「樹種名」には、当該エントリ街路樹の樹木種名が記録される。
【0020】
『樹木形状』は、8つの項目「樹高」、「幹周」、「枝張り」、「枝下高」、「根元周」、「樹木の傾き」、「樹齢」、及び「樹冠形状」を有している。「樹高」には、当該エントリ街路樹の高さが記録される。「枝下高」には、当該エントリ街路樹の根元から力枝(ちからえだ=樹冠で最も長大な枝のこと)の下端部までの高さが記録される。
【0021】
『揮発性物質』は、2つの項目「揮発性物質名」、及び「濃度範囲」を有している。「揮発性物質名」には、当該エントリ街路樹が放出する揮発性物質名が記録される。「濃度範囲」には、当該エントリ街路樹が放出する揮発性物質の濃度の下限値及び上限値が記録される。
【0022】
本実施形態に係る処理内容DB34は、センサ14による計測位置における対象の街路樹の種類に関する、物理的処理及び化学的処理を施して揮発性物質を対象の街路樹から放出させることを表す情報を記憶する。
図4に示すように、本実施形態に係る処理内容DB34は、「樹種名」、「揮発性物質名」、「増加させる濃度」、「計測位置の高さ」、「物理的処理」、及び「化学的処理」を記憶する。「樹種名」列には、街路樹の樹木種名が記録される。「揮発性物質名」列には、街路樹が放出する揮発性物質名が記録される。「増加させる濃度」列には、増加させる揮発性物質の濃度の範囲が記録される。「計測位置の高さ」列には、揮発性物質の計測位置の高さTsの範囲が記録される。「物理的処理」には、街路樹に対する物理的処理の処理内容が記録される。「化学的処理」には、街路樹に対する化学的処理の処理内容が記録される。すなわち、処理内容DB34には、樹種名、揮発性物質名、増加させる揮発性物質の濃度、及び揮発性物質の計測位置の高さの組合せ毎に、物理的処理及び化学的処理が記憶される。
【0023】
取得部22は、センサ14により計測された街路樹が放出する揮発性物質の濃度を取得する。また、取得部22は、GPSによって自端末の位置を示す位置情報を取得する。受付部24は、ユーザによって入力された街路樹の揮発性物質名を受け付ける。また、受付部24は、ユーザによって入力された揮発性物質の計測位置の高さTs、及び揮発性物質の目標濃度を受け付ける。
【0024】
算出部26は、以下の(1)式に従って、受付部24により受け付けられた目標濃度Csに対する、取得部22により取得された揮発性物質の濃度Crの差分濃度Cdを算出する。
Cd=Cs-Cr・・・(1)
【0025】
導出部28は、管理台帳DB32を参照し、取得部22により取得された自端末の位置に最も近い位置の街路樹を示す街路樹エントリを特定する。また、導出部28は、特定した街路樹エントリから、街路樹の樹木種名、街路樹の枝下の高さT0、及び受付部24により受け付けられた揮発性物質名に対応する揮発性物質の濃度の範囲を取得する。また、導出部28は、取得した街路樹の樹木種名、街路樹の枝下の高さT0、揮発性物質の濃度の範囲、及び受付部24により受け付けられた揮発性物質名を出力部30に出力する。
【0026】
また、導出部28は、処理内容DB34を参照し、差分濃度Cdだけ揮発性物質の濃度を増加させる物理的処理及び化学的処理を導出する。具体的には、導出部28は、取得した街路樹の樹木種名と、受付部24により受け付けられた揮発性物質名及び計測位置の高さTsと、差分濃度Cdと、に対応して管理台帳DB32の「物理的処理」列及び「化学的処理」列の各々に記憶された処理内容を、差分濃度Cdだけ揮発性物質の濃度を増加させる物理的処理及び化学的処理として導出する。
【0027】
出力部30は、現在日時、導出部28から入力された街路樹の樹木種名、街路樹の枝下の高さT0、揮発性物質の濃度の範囲、及び揮発性物質名を表す情報を、後述する表示装置53に出力する。また、出力部30は、導出部28により導出された物理的処理及び化学的処理を示す情報を表示装置53に出力する。
【0028】
また、出力部30は、揮発性物質の計測位置の高さTs、及び目標濃度を入力するための表示画面を表す情報を表示装置53に出力する。また、出力部30は、取得部22により取得された揮発性物質の濃度Cr、及び算出部26により算出された差分濃度Cdを示す情報を表示装置53に出力する。
【0029】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る端末12のハードウェア構成を説明する。端末12は、
図5に示すコンピュータで実現される。
図5に示すように、端末12は、CPU(Central Processing Unit)50、一時記憶領域としてのメモリ51、及び不揮発性の記憶部52を含む。また、端末12は、液晶ディスプレイ等の表示装置53、表示装置53と一体化されたタッチパネル等の入力装置54、及びネットワークに接続されるネットワークI/F(InterFace)55を含む。CPU50、メモリ51、記憶部52、表示装置53、入力装置54、及びネットワークI/F55は、バス56に接続される。また、センサ14は、不図示の入出力I/Fを介してバス56に接続される。
【0030】
記憶部52は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、及びフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部52には、処理方法導出プログラム58が記憶される。CPU50は、記憶部52から処理方法導出プログラム58を読み出してからメモリ51に展開し、展開した処理方法導出プログラム58を実行する。CPU50が処理方法導出プログラム58を実行することで、
図2に示す取得部22、受付部24、算出部26、導出部28、及び出力部30として機能する。また、
図2に示す記憶部20は、
図5に示す記憶部52によって実現される。
【0031】
また、処理方法導出プログラム58により実現される機能は、例えば半導体集積回路、より詳しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で実現することも可能である。
【0032】
次に、
図6を参照して、本実施形態に係る揮発性物質放出管理装置10の作用を説明する。端末12のCPU50が処理方法導出プログラム58を実行することによって、
図6に示す処理方法導出処理が実行される。
【0033】
図6のステップS10で、受付部24は、ユーザによって入力装置54を介して入力された街路樹の揮発性物質名を受け付ける。ステップS12で、取得部22は、GPSによって自端末の位置を示す位置情報を取得する。また、導出部28は、管理台帳DB32を参照し、取得部22により取得された自端末の位置に最も近い位置の街路樹を示す街路樹エントリを特定する。また、導出部28は、特定した街路樹エントリから、街路樹の樹木種名、街路樹の枝下の高さT0、及びステップS10で受け付けられた揮発性物質名に対応する揮発性物質の濃度の範囲を取得する。
【0034】
ステップS14で、出力部30は、現在日時、ステップS12で取得された街路樹の樹木種名、街路樹の枝下の高さT0、揮発性物質の濃度の範囲、及び揮発性物質名を示す情報を表示装置53に出力する。ステップS14の処理により、一例として
図7に示すように、現在日時、街路樹の樹木種名、街路樹の枝下の高さT0、揮発性物質の濃度の範囲、及び揮発性物質名を表示する第1表示画面が表示装置53に表示される。ユーザは、第1表示画面の内容を確認し、「OK」ボタンを指定する。第1表示画面において「OK」ボタンが指定されるとステップS16の処理が実行される。
【0035】
ステップS16で、出力部30は、揮発性物質の計測位置の高さTs、及び目標濃度を入力するための第2表示画面を表す情報を表示装置53に出力する。ステップS16の処理により、一例として
図8に示すように、第2表示画面が表示装置53に表示される。ユーザは、入力装置54を介して、揮発性物質の計測位置の高さTs、及び目標濃度を入力し、かつセンサ14を対象の街路樹の近傍の計測位置の高さTsに設置した後、「OK」ボタンを指定する。第2表示画面において「OK」ボタンが指定されるとステップS18の処理が実行される。
【0036】
ステップS18で、受付部24は、第2表示画面においてユーザにより入力された揮発性物質の計測位置の高さTs、及び目標濃度Csを受け付ける。ステップS20で、取得部22は、センサ14により計測された街路樹が放出する揮発性物質の濃度Cr(実測値)を取得する。ステップS22で、算出部26は、上記(1)式に従って、ステップS18で受け付けられた目標濃度Csに対する、ステップS20で取得された揮発性物質の濃度Crの差分濃度Cdを算出する。
【0037】
ステップS24で、出力部30は、ステップS20で取得された揮発性物質の濃度Cr、及びステップS22で算出された差分濃度Cdを示す情報を表示装置53に出力する。ステップS24の処理により、一例として
図9に示すように、揮発性物質の濃度Cr、及び差分濃度Cdを表示する第3表示画面が表示装置53に表示される。ユーザは、第3表示画面の内容を確認し、「OK」ボタンを指定する。第3表示画面において「OK」ボタンが指定されるとステップS26の処理が実行される。
【0038】
ステップS26で、導出部28は、ステップS22で算出された差分濃度Cdが0よりも高いか否かを判定する。この判定が肯定判定となった場合は、処理はステップS28に移行する。ステップS28で、導出部28は、前述したように、処理内容DB34を参照し、ステップS22で算出された差分濃度Cdだけ揮発性物質の濃度を増加させる物理的処理及び化学的処理を導出する。
【0039】
ステップS30で、出力部30は、ステップS28で導出された物理的処理及び化学的処理を示す情報を表示装置53に出力する。ステップS30の処理により、一例として
図10に示すように、物理的処理及び化学的処理を表示する第4表示画面が表示装置53に表示される。ユーザは、第4表示画面の内容を確認し、必要に応じて物理的処理及び化学的処理の少なくとも一方を対象の街路樹に施す。ステップS30の処理が終了すると、本処理方法導出処理が終了する。
【0040】
また、ステップS26の判定が否定判定となった場合は、処理はステップS32に移行する。ステップS32で、出力部30は、対応が不要であることを示す情報を表示装置53に出力する。ステップS32の処理により、一例として
図11に示すように、揮発性物質の濃度の実測値が目標濃度より高いため対応が不要である旨を示すメッセージを表示する第5表示画面が表示装置53に表示される。ステップS32の処理が終了すると、本処理方法導出処理が終了する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、対象の街路樹から放出される揮発性物質の濃度の実測値と、目標濃度との差分を算出している。また、算出した差分だけ揮発性物質の濃度を増加させるための物理的処理及び化学的処理を導出し、導出した物理的処理及び化学的処理を出力している。従って、所定の空間における揮発性物質の濃度を目標とする濃度にすることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、センサ14による濃度の計測位置の高さに応じて物理的処理及び化学的処理を導出している。揮発性物質の大半は街路樹の枝上の葉から放出されており、枝下よりも下の部分では濃度の勾配が生じる。本実施形態では、センサ14による濃度の計測位置の高さを考慮しているため、物理的処理及び化学的処理を精度良く導出することができる。この結果、所定の空間における揮発性物質の濃度を目標とする濃度にすることができる。
【0043】
なお、上記実施形態において、端末12が実行した処理方法導出処理を、ネットワークを介してセンサ14に接続された情報処理装置が実行してもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、街路樹から放出される揮発性物質の濃度を差分濃度Cdだけ増加させる物理的処理及び化学的処理を導出する場合について説明したが、これに限定されない。街路樹以外の樹木から放出される揮発性物質の濃度を差分濃度Cdだけ増加させる物理的処理及び化学的処理を導出する形態としてもよいし、樹木以外の植物から放出される揮発性物質の濃度を差分濃度Cdだけ増加させる物理的処理及び化学的処理を導出する形態としてもよい。例えば、対象の植物が花類の場合は、センサ14はフェニルプロパノイドの濃度を計測する。また、例えば、対象の植物が草本類の場合は、センサ14は青葉アルコールの濃度を計測する。また、物理的処理及び化学的処理の双方ではなく、物理的処理及び化学的処理の何れか一方を導出する形態としてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、端末12が、導出した物理的処理及び化学的処理を表示装置53に表示する場合について説明したが、これに限定されない。導出した物理的処理及び化学的処理をスピーカー等の音声装置に出力する形態としてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、処理方法導出プログラム58が記憶部52に予め記憶されている態様を説明したが、これに限定されない。処理方法導出プログラム58は、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、処理方法導出プログラム58は、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 揮発性物質放出管理装置
12 端末
14 センサ
20、52 記憶部
22 取得部
24 受付部
26 算出部
28 導出部
30 出力部
32 管理台帳DB
34 処理内容DB
50 CPU
53 表示装置
58 処理方法導出プログラム