(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】はんだ付け用フラックス
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K35/363 C
(21)【出願番号】P 2017227383
(22)【出願日】2017-11-28
【審査請求日】2020-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山永 哲也
(72)【発明者】
【氏名】井内 洋介
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-118070(JP,A)
【文献】特開平07-323390(JP,A)
【文献】特開平08-132282(JP,A)
【文献】特開昭62-006796(JP,A)
【文献】特開2002-120089(JP,A)
【文献】特開2018-053248(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060379(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):R
1-O-[-CH
2-CH
2-O]n-R
2
(式(1)中、nは1又は2の整数を示す。nが1のとき、R
1は水素原子を、R
2は炭素数1~4のアルキル基を示し、nが2のとき、R
1及びR
2は独立して炭素数1~3のアルキル基を示す。)で表される、常圧下の沸点が120~200℃であるグリコール系化合物(a1)、水(a2)及び必要に応じて
一般式(2):R
3-O-[-CH
2-CH(CH
3)-O]n-R
4
(式(2)中、nは1又は2を示す。nが1のとき、R
3は炭素数1~4のアルキル基を、R
4は水素原子を示し、nが2のとき、R
3及びR
4は独立して炭素数1~3のアルキル基を示す。)で表される、常圧下の沸点が120~200℃であるグリコール系化合物(a3)のみからなる共沸混合物(A)、並びに活性剤(B)を含み、
(A)成分の常圧下の共沸点が90~100℃であり、
(B)成分の含有量が、フラックスにおける重量比率が0.1~5重量%であり、
(B)成分が、分子内に炭素数2~6のアルキレン基又は炭素数2~6のアルケニレン基を有する脂肪族ジカルボン酸である、
はんだ付け用フラックス(ただし、界面活性剤は含まない)。
【請求項2】
(A)成分が(a1)成分及び(a2)成分からなり、(A)成分における(a1)成分、(a2)成分の重量比率が
、10~45重量%、55~90重量%である、請求項1に記載のはんだ付け用フラックス。
【請求項3】
(A)成分における(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分の重量比率が、5~35重量%、30~90重量%、5~35重量%である、請求項1に記載のはんだ付け用フラックス。
【請求項4】
さらに、ロジン系樹脂(C)及び三級アミン(D)を含む、請求項1~3のいずれかに記載のはんだ付け用フラックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け用フラックスに関する。詳しくは、水系のはんだ付け用フラックスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器への電子部品の実装には、はんだを使用したはんだ付けがコスト面及び信頼性の面で有利であり、一般的に行われている。はんだ付けの方法としては、ヤニ入りはんだをはんだ鏝を用いてはんだ付けする方法、ソルダペースト、ソルダプリフォーム、及びソルダボールなどをリフロー炉で再溶解してはんだ付けを行うリフローはんだ付け法、溶融はんだにプリント基板及び電子部品を接触させてはんだ付けを行うフローはんだ付け法等がある。
【0003】
一般に、フローはんだ付け法には、液状のフラックス(ポストフラックス)が用いられる。当該液状フラックスは、電子回路基板のはんだ付け面の表面酸化被膜を除去し、該はんだ付け面に対する溶融はんだの濡れ性を確保する役割をしている。当該液状フラックスは、ロジンや活性剤などの固形成分を溶剤に溶解させたものであり、はんだ付けの前に、発泡フラクサーやスプレーフラクサーにて電子回路基板のはんだ付け面に塗布される。その後、該電子回路基板はプレヒーター内に投入され、100~150℃で加熱することにより前記溶剤が除去される。
【0004】
前記液状フラックスの溶剤には、ロジンや活性剤がよく溶解するイソプロピルアルコールなどのアルコール類が使用されてきた。しかしながら、アルコールのような揮発性有機化合物(VOC)は大気中に放出されると、大気汚染の原因となるため、近年ではその使用が規制されている。これらの理由により、前記フローはんだ付け法においてもVOC量を低減した液状フラックスが望まれており、主に水を溶剤に用いる水系フラックスがこれまで開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
特許文献1には、前記水系フラックスとして水のみを溶剤に用いるフラックスが記載されているが、水の蒸発潜熱及び表面張力の高さのため、前記プレヒーターによる加熱処理を経ても完全には水が除去されず、前記はんだ付けにおいて、はんだボールが多く発生する問題があった。また、溶剤である水の表面張力の高さのため、該水系フラックスは前記はんだ付け面への濡れ広がりが悪い問題もあった。さらに、該水系フラックスは、水に対する活性剤やロジンの溶解性が低いため、不均一な溶液となっており作業性に問題があった。
【0006】
特許文献1には、作業性を向上させるために、水及びイソプロパノールの混合溶剤を用いた水系フラックスも記載されているが、該混合溶剤が引火性の高いイソプロパノールを含むため、該水系フラックスは引火点を有しており消防法で危険物に分類されるので、取り扱い性に問題があった。
【0007】
特許文献2には、水に対して活性剤やロジンを溶解させるために、界面活性剤を含む水系フラックスが記載されている。しかしながら、該水系フラックスを前記はんだ付け面に塗布してはんだ付けをした場合、フラックス残渣に界面活性剤が残存して絶縁抵抗性が低下し、はんだ付け後の電気的信頼性が悪くなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-132282号公報
【文献】特開2002-120089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水を含む場合でも、前記加熱処理における乾燥性が高く、はんだ付け性が良好であり、はんだ付け面への濡れ性も良く、引火点を有さず、均一な性状であり、且つ電気的信頼性が高いはんだ付け用フラックスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の共沸点を有する所定の共沸化合物及び所定の活性剤を含むはんだ付け用フラックスによって、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち本発明は、以下のはんだ付け用フラックスに関する。
【0011】
1.一般式(1):R1-O-[-CH2-CH2-O]n-R2
(式(1)中、nは1又は2の整数を示す。nが1のとき、R1は水素原子を、R2は炭素数1~4のアルキル基を示し、nが2のとき、R1及びR2は独立して炭素数1~3のアルキル基を示す。)で表される、常圧下の沸点が120~200℃であるグリコール系化合物(a1)及び水(a2)を含む共沸混合物(A)、並びに活性剤(B)を含み、
(A)成分の常圧下の共沸点が90~100℃である、はんだ付け用フラックス。
【0012】
2.(A)成分における(a1)成分、(a2)成分の重量比率が、10~45重量%、55~90重量%である、前記項1に記載のはんだ付け用フラックス。
【0013】
3.(B)成分が、分子内に炭素数2~6のアルキレン基又は炭素数2~6のアルケニレン基を有する脂肪族ジカルボン酸である、前記項1又は2に記載のはんだ付け用フラックス。
【0014】
4.さらに、ロジン系樹脂(C)及び三級アミン(D)を含む、前記項1~3のいずれかに記載のはんだ付け用フラックス。
【0015】
5.前記フラックスが界面活性剤を含まない、前記項1~4のいずれかに記載のはんだ付け用フラックス。
【発明の効果】
【0016】
本発明のはんだ付け用フラックス(以下、「フラックス」ということもある。)は、水とグリコール系化合物を含む共沸混合物(A)を溶剤として含むので、溶剤が水のみの水系フラックスに比べ揮発速度が速く乾燥性に優れる。そして、加熱処理後のはんだ付け面には共沸混合物(A)が残存しないので、はんだボールが抑制されてはんだ付け性が良好になる。また、本発明のフラックスは、はんだ付け面への濡れ性が良いものであり、該面への塗工が容易となる。さらに、本発明のフラックスは、はんだ付け工程におけるはんだブリッジも抑制できる。
【0017】
本発明のフラックスは、引火点を有さないものとなっており、取扱いが容易で作業性に優れる。また、本発明のフラックスは、前記共沸混合物に活性剤やロジンが良く溶解して均一な溶液になっており、前記はんだ付け面への塗工がし易い。さらに、本発明のフラックスは、界面活性剤が不要なので、フラックス残渣の絶縁抵抗性が高くなり、はんだ付け後の電気的信頼性が高いものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のフラックスは、特定の沸点を有する所定のグリコール系化合物(a1)(以下、(a1)成分という)及び水(a2)(以下、(a2)成分という)を含む所定の共沸混合物(A)(以下、(A)成分という)、並びに所定の活性剤(B)(以下、(B)成分という)を含む組成物である。なお、本明細書に記載する「共沸混合物」とは、気相と液相の組成が同じである、混合物である。
【0019】
(A)成分は、(a1)及び(a2)成分を含む共沸混合物である。(A)成分は、その常圧下の共沸点(以下、単に、「共沸点」という。)が90~100℃程度であり、好ましくは95~100℃程度、より好ましくは97~99℃程度である。なお、「常圧」とは標準大気圧を意味する。また、(A)成分は、表面張力が水に比べて低いものであり、その値は特に限定されないが、好ましくは45dyn/cm未満であり、より好ましくは35dyn/cm未満である。(A)成分は、水の沸点以下の共沸点と水より低い表面張力を有するため、水に比べて揮発速度が高くなり、前記プレヒーターでの加熱処理(100~150℃)において乾燥性が高くなる。さらに、(A)成分は、高沸点を有する(a1)成分及び水である(a2)成分を主に含むため、引火点を有さない。
【0020】
(a1)成分は、一般式(1):R1-O-[-CH2-CH2-O]n-R2(式(1)中、nは1又は2の整数を示す。nが1のとき、R1は水素原子を、R2は炭素数1~4のアルキル基を示し、nが2のとき、R1及びR2は独立して炭素数1~3のアルキル基を示す。)で表されるグリコール系化合物である。一般式(1)において、nが1であってR2が炭素数5以上のアルキル基の場合、又はnが2であってR1及びR2の少なくとも一方が炭素数4以上のアルキル基で、かつR1及びR2がいずれも水素原子でない場合は、(a1)成分の水溶性が低くなり、(A)成分は均一な溶液にはならない。また、nが2であってR1及びR2のいずれか一方が水素原子の場合、又はnが3以上の場合は、(A)成分の乾燥性が低くなる。
【0021】
(a1)成分は、(A)成分が共沸点を有し、その引火性が低くなる点から、常圧下の沸点が120~200℃程度、好ましくは130~190℃程度、より好ましくは140~180℃程度である。
【0022】
(a1)成分の具体例として、前記一般式(1)のnが1の場合は、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-sec-ブチルエーテル、及びエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル等が挙げられ、nが2の場合は、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-iso-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n - プロピルエーテル、ジエチレングリコールエチル-iso-プロピルエーテル、及びジエチレングリコールエチル-n - プロピルエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その中でも、乾燥性が高くなる点から、エチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、及びジエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0023】
(a2)成分としては、純水、超純水、精製水、蒸留水、イオン交換水、及び水道水等が挙げられる。(a2)成分は軟水であっても硬水であってもよい。
【0024】
(A)成分には、必要に応じて、一般式(2):R3-O-[-CH2-CH(CH3)-O]n-R4(式(2)中、nは1又は2を示す。nが1のとき、R3は炭素数1~4のアルキル基を、R4は水素原子を示し、nが2のとき、R3及びR4は独立して炭素数1~3のアルキル基を示す。)で表されるグリコール系化合物(a3)(以下、(a3)成分)を含んでもよい。一般式(2)において、nが1であってR3が炭素数5以上のアルキル基の場合、又はnが2であってR3及びR4の少なくとも一方が炭素数4以上のアルキル基で、かつR3及びR4がいずれも水素原子でない場合は、(a1)成分の水溶性が低くなり、(A)成分は均一な溶液にはならない。また、nが2であってR3及びR4のいずれか一方が水素原子の場合、又はnが3以上の場合は、(A)成分の乾燥性が低くなる。
【0025】
(a3)成分は、(A)成分が共沸点を有し、その引火性が低くなる点から、常圧下の沸点が120~200℃程度、好ましくは130~190℃程度、より好ましくは140~180℃程度である。
【0026】
(A)成分は、(a3)成分を含んだ場合でも、水より表面張力が低いものとなり、前記同様に乾燥性が高い。さらに、(a3)成分は高沸点を有するので、(A)成分は、前記同様に引火点を有さない。
【0027】
(a3)成分の具体例として、前記一般式(2)のnが1の場合は、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-iso-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-sec-ブチルエーテル、及びプロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル等が挙げられ、nが2の場合は、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-iso-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n -プロピルエーテル、ジプロピレングリコールエチル-iso-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールエチル-n - プロピルエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その中でも、乾燥性が高くなる点から、プロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、及びジプロピレングリコールエチルメチルエーテルからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0028】
(A)成分は、(a1)成分、(a2)成分及び必要に応じて用いる(a3)成分を各種公知の手段で混合することにより調製する。(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分の重量比率は、特に限定されないが、共沸点を有する点及び乾燥性が高くなる点を考慮して適宜設定できる。具体的には、(A)成分が(a3)成分を含まない場合は、(A)成分における(a1)及び(a2)成分の重量比率は、10~45重量%程度、55~90重量%程度が好ましく、20~40重量%程度、60~80重量%程度がより好ましい。また、(A)成分が(a3)成分を含む場合は、(A)成分における(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分の重量比率は、順に5~35重量%程度、30~90重量%程度、5~35重量%程度が好ましく、10~30重量%程度、40~80重量%程度、10~30重量%程度がより好ましい。
【0029】
(A)成分の含有量は、特に限定されないが、フラックスの良好な濡れ性の点から、フラックスにおける重量比率が75~99.9重量%程度が好ましく、84~99.5重量%程度がより好ましい。
【0030】
(B)成分は、はんだ付け用のフラックスに利用可能な活性剤であれば、各種公知のものを限定なく使用できる。(B)成分としては特に限定されないが、はんだブリッジを抑制する点から、分子内に炭素数2~6のアルキレン基又は炭素数2~6のアルケニレン基を有する脂肪族ジカルボン酸であるのが好ましく、分子内に炭素数4~6のアルキレン基を有する脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。また、該脂肪族ジカルボン酸は、非ハロゲン系脂肪族ジカルボン酸又はハロゲン系脂肪族ジカルボン酸のいずれかでも良いし、両方を含んでも良い。なお、(B)成分は、後述の(C)成分とは異なるものである。
【0031】
(B)成分の具体例としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その中でも、はんだブリッジを抑制する点から、コハク酸、グルタル酸、及びアジピン酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0032】
(B)成分は、(A)成分の共沸点には影響を及ばさない。詳細は不明だが、(B)成分は該共沸点下では固体状態であって蒸気圧がほとんど無く、該共沸点に影響を及ぼさないためと推定される。また、(B)成分は引火性が低いため、(A)及び(B)成分を含むフラックスは通常引火点を有さない。さらに、(B)成分は(A)成分に対する溶解性が高いので、(A)及び(B)成分を含むフラックスは通常均一な溶液となる。
【0033】
(B)成分の含有量は、特に限定されないが、はんだブリッジを抑制する点から、フラックスにおける重量比率が0.1~5重量%程度が好ましく、0.5~3重量%程度がより好ましい。
【0034】
本発明のフラックスは、さらに、ロジン系樹脂(C)(以下、(C)成分とする)及び三級アミン(D)(以下、(D)成分とする)、又はそれらの塩を含んでもよい。
【0035】
(C)成分は、ロジン系樹脂であれば、特に限定されない。(C)成分の具体例としては、例えば、馬尾松、スラッシュ松、メルクシ松、思茅松、テーダ松及び大王松等に由来する天然ロジン(ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン)、天然ロジンを精製して得られる精製ロジン、天然ロジンを水素化反応させて得られる水素化ロジン、天然ロジンを不均化反応させて得られる不均化ロジン、α、β不飽和カルボン酸変性ロジン、重合ロジン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(C)成分は、後述の(D)成分と相互作用し易い点から、α、β不飽和カルボン酸変性ロジンが好ましい。なお、(C)成分も前記(B)成分と同様に、(A)成分の共沸点には影響を及ぼさない。また、(C)成分も引火性が低いので、それを含むフラックスも引火点を有さない。
【0036】
前記α、β不飽和カルボン酸変性ロジンは、前記天然ロジン及び/又は精製ロジン(以下、原料ロジンともいう)にα、β不飽和カルボン酸類をディールス・アルダー付加してなる化合物である。該α、β不飽和カルボン酸類は、(メタ)アクリル酸、フマル酸、及び(無水)マレイン酸等が挙げられる。ディールス・アルダー反応は各種公知の方法に従い行えばよい。具体的には、例えば、撹拌器、還流冷却管、窒素導入管等を備えた反応容器に、原料ロジンとα、β不飽和カルボン酸類とを仕込み、溶媒の存在下若しくは不存在下、及び触媒の存在下又は不存在下に、通常180~240℃程度の温度で通常1~9時間程度両者を反応させればよい。なお、反応容器は密閉構造とし、好ましくは更に窒素等の不活性ガス気流でパージすることがよい。
【0037】
前記α、β不飽和カルボン酸変性ロジンは、反応後に各種公知の方法で水素化を施してもよい。水素化は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、水素化触媒の存在下、通常1~25MPa、好ましくは5~20MPaの水素加圧下で、0.5~7時間程度、好ましくは1~5時間加熱することが挙げられる。水素化触媒としては、パラジウムカーボン、ロジウムカーボン、ルテニウムカーボン、及び白金カーボンなどの担持触媒、パラジウム、ニッケル、及び白金等の金属粉末等、各種公知のものを使用することができる。触媒の使用量は、α、β不飽和カルボン酸変性ロジン100重量部に対して、通常0.01~5重量部程度、好ましくは0.01~3.0重量部である。また、水素化温度は100~300℃程度、好ましくは150~290℃である。
【0038】
(C)成分の酸価(JIS K 0070。以下、酸価というときは同様。)は、特に限定されないが、後述の(D)成分と相互作用し易い点で、160mgKOH/g以上が好ましく、180~310mgKOH/g程度がより好ましい。
【0039】
(C)成分の含有量は、特に限定されないが、フラックス残渣の絶縁抵抗性が高くなる点で、フラックスにおける重量比率が0.5~15重量%程度が好ましく、1~10重量%程度がより好ましく、1~5重量%程度が特に好ましい。
【0040】
(C)成分には、所望の特性を損なわない限り、非ロジン系樹脂を併用することもできる。非ロジン系樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフイン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂等の合成樹脂や、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ナイロンゴム、ナイロン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマーなどが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
(D)成分は、三級アミンであれば、特に限定されない。(D)成分は、フラックスに(C)成分を用いる場合に必須使用され、(C)成分のカルボキシル基と(D)成分のアミノ基とが相互作用することで、(C)及び(D)成分は(A)成分に対する溶解性が高くなる。(D)成分は、(A)成分への溶解性が高い点から、20℃における水への溶解度が少なくとも10重量%の親水性アミンであるのが好ましく、同様の点から、下記一般式(3)で表されるモノアミン(D1)(以下、(D1)成分ともいう。)及び下記一般式(4)で表されるポリアミン(D2)(以下、(D2)成分ともいう。) がより好ましい。(D)成分は、(D1)成分又は(D2)成分のいずれか1成分でもよいし、両方の成分を含んでもよい。
【0042】
一般式(3):(R5)(3-m)N-[CH2-CH(Y)-OH]m
(式(3)中、Yは水素原子又はメチル基を示し、mは1~3の整数を示す。mが1のとき、R3は炭素数1~3のアルキル基を示し、mが2のとき、R5は炭素数1~4のアルキル基を示す。)
【0043】
一般式(4):(R6)R7N-(CH2)l-NR8(R9)
(式(4)中、lは1~6の整数を示し、R6、R7、R8及びR9は独立して炭素数1~3のアルキル基を示す。)
【0044】
(D1)成分の具体例としては、例えば、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、2-(ジ-n-プロピルアミノ)エタノール、2-(ジ-iso-プロピルアミノ)エタノール、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール、1-ジエチルアミノ-2-プロパノール、1-ジ-n-プロピルアミノ-2-プロパノール、1-ジ-iso-プロピルアミノ-2-プロパノール、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-プロピルジエタノールアミン、N-iso-プロピルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-iso-ブチルジエタノールアミン、N-sec-ブチルジエタノールアミン、N-tert-ブチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その中でも、溶解性の点から、2-(ジ-iso-プロピルアミノ)エタノール、1-ジエチルアミノ-2-プロパノール、及びN-n-ブチルジエタノールアミンからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0045】
(D2)成分の具体例としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,5-ジアミノペンタン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラ-n-プロピルヘキサメチレンジアミン、及びN,N,N’,N’-テトラ-iso-プロピルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その中でも、溶解性の点から、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、及びN,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミンからなる群より選ばれる1 種以上が好ましい。
【0046】
(D)成分の含有量は、特に限定されないが、はんだブリッジを抑制し、前記絶縁抵抗性が高くなる点で、フラックスにおける重量比率が0.1~5重量%程度が好ましく、0.5~3重量%程度がより好ましい。(D)成分の含有量が、0.1重量%未満では(C)成分の(A)成分に対する溶解性が悪く、5重量%を超えると前記絶縁抵抗性が低下する。また、(D1)及び(D2)成分を併用する場合は、(D1)+(D2)の総量100重量部に対して、(D1)成分が10~50重量部程度、(D2)成分が50~90重量部程度であるのが好ましい。
【0047】
フラックスにおける(C)成分と(D)成分との含有比率は特に限定されないが、(A)成分への溶解性及び前記絶縁抵抗性が高くなる点から、通常重量比[(C)/(D)]が70/30~95/5程度、好ましくは80/20~90/10程度である。
【0048】
本発明のフラックスは、(C)及び(D)成分の代わりに、(C)成分と(D)成分から形成される塩を含めてもよい。該塩は、(C)成分と(D)成分とをそれぞれ前記含有量で用いて、各種公知の手段で中和反応させることで得られる。本発明のフラックスは、(C)及び(D)成分の代わりに該塩を用いても、所望の特性を損なわない。
【0049】
本発明のフラックスは、その製造方法は特に限定されないが、(A)及び(B)成分、並びに必要に応じて(C)及び(D)成分を、各種公知の手段で混合することにより調製する。なお、(C)成分と(D)成分から予め塩を形成させて、(C)及び(D)成分の代わりに該塩を混合させてもよい。フラックスにおける各成分の含有量は特に限定されないが、(C)及び(D)成分を含まない場合は、フラックスにおける(A)及び(B)成分の重量比率は、95~99.9重量%程度、0.1~5重量%程度が好ましく、97~99.5重量%程度、0.5~3重量%程度がより好ましい。また、フラックスが(C)及び(D)成分を含む場合には、(A)~(D)成分の重量比率は、順に75~99.3重量%程度、0.1~5重量%程度、0.5~15重量%程度、0.1~5重量%程度が好ましく、84~98重量%程度、0.5~3重量%程度、1~10重量%程度、0.5~3重量%程度がより好ましい。
【0050】
また、本発明のフラックスには、所望の特性を損なわない限り、(B)成分以外のその他活性剤(E)(以下、(E)成分とする)を併用しても良い。(E)成分としては、例えば、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン2酸、クロレンド酸、ダイマー酸等の二塩基酸;ピコリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の一塩基酸;1,2,3,4-テトラブロモブタン、1,2-ジブロモ-1-フェニルエタン、1-ブロモ-2-ブタノール、1-ブロモ-2-プロパノール、1,4-ジブロモ-2,3-ブタンジオール、trans/cis-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオール、3-ブロモプロピオン酸、2-ブロモペンタン酸、エチルアミン臭素酸塩、ジエチルアミン臭素酸塩等のハロゲン含有化合物等が挙げられる。その中でも、はんだブリッジを抑制する点から、trans/cis-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、1-ブロモ-2-プロパノール、及び2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。また、(E)成分の含有量は特に限定されないが、はんだブリッジを抑制し、前記絶縁抵抗性が高くなる点から、フラックスにおける重量比率が0.01~5重量%程度が好ましく、0.03~3重量%程度がより好ましい。
【0051】
本発明のフラックスは、所望の特性を損なわない限り、前記(A)~(E)成分以外に、酸化防止剤、防黴剤、艶消し剤等の添加剤を含有しても良い。フラックス中の添加剤の含有量は特に限定されないが、通常0.1~5重量%程度である。
【0052】
本発明のフラックスは、溶剤である(A)成分の乾燥性が高いため、フラックス自体の乾燥性も高いものとなる。そして、前記加熱処理後のはんだ付け面には(A)成分が残存していないため、はんだ付け工程において、はんだボールが抑制されてはんだ付け性が良好になる。また、本発明のフラックスは、(A)成分の表面張力の低さのため、はんだ付け面への濡れ性が良いものとなり、該面への塗工がし易い。さらに、本発明のフラックスは、はんだ工程におけるはんだブリッジも抑制できる。
【0053】
本発明のフラックスは、引火点を有さないので非危険物であり、取扱いが容易で作業性に優れる。また、本発明のフラックスは、(A)成分に他成分が良く溶解しているため、均一な溶液であり前記はんだ付け面への塗工がし易い。さらに、本発明のフラックスは、界面活性剤が不要なので、フラックス残渣の絶縁抵抗性が高くなり、はんだ付け後の電気的信頼性が高いものとなる。
【0054】
本発明のフラックスを、はんだ付け面に塗工する方法は特に制限されず、例えば、端子部品をそのまま浸漬する方法や、はんだ付け面に各種フラクサー(スプレー等)によって塗工する方法が挙げられる。また、本発明のフラックスは、各種公知のはんだ付けにおいて用いることができるが、フローはんだ付け法に用いることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲がこれら実施例に限定されるものではない。また実施例中で「部」「%」は特に断りのない限り、「重量部」「重量%」を意味する。
【0056】
(共沸混合物(A)の調製)
製造例1
200mlのナス型フラスコに、(a1)成分:グリコール系化合物としてエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル(ETB)を20g、及び(a2)成分:水としてイオン交換水(以下、単に水という。)を80g入れ、よく混合することにより、溶液を調製した。
【0057】
次いで、当該ナス型フラスコに、理論段数N=10に相当する蒸留カラム、ト字管、温度計およびリービッヒ冷却器を接続した。次いで、常圧下、当該ナス型フラスコをオイルバスで加熱し、当該溶液を沸騰させて、沸点100℃以下の留分のみを採取することにより共沸混合物(A)を得た。
【0058】
次いで、前記共沸混合物(A)の各成分の組成比(重量%)を、デジタル濃度計PR-201α((株)アタゴ製)を用いて測定した。組成比を表1に示す。
【0059】
製造例2~6、比較製造例1~5
製造例1において、(a1)成分を表1に示されるものに変更した他は、製造例1と同様にして各種共沸混合物(A)を調製して、各成分の組成比を測定した。
【0060】
<引火点>
各製造例及び比較製造例で得られた共沸混合物(A)について、クリーブランド開放法(JIS K2265-4)に準拠して引火点を測定した。評価結果を表1に示す。
(評価基準)
○:クリーブランド方式で引火しない。
×:クリーブランド方式で引火する。
【0061】
<共沸点>
各製造例及び比較製造例で得られた共沸混合物(A)の共沸点については、各製造例及び比較製造例において各溶液を沸騰させた際、発生した蒸気の温度を測定することにより求めた。評価結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
表1の組成比の単位は重量%である。表1の略語は、以下の通りである。
(化合物の略語及び詳細)
EM:エチレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株)製)
EIP:エチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル(東京化成工業(株)製)
ETB:エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル(東京化成工業(株)製)
DEME:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(東京化成工業(株)製)
DEDE:ジエチレングリコールジエチルエーテル(東京化成工業(株)製)
DEMIP:ジエチレングリコールメチル-iso-プロピルエーテル(東京化成工業(株)製)
ENH:エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル(東京化成工業(株)製)
DENB:ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(東京化成工業(株)製)
DEMNB:ジエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(東京化成工業(株)製)
IPA:イソプロパノール(東京化成工業(株)製)
【0063】
(フラックスの調製)
実施例1
製造例1で得られた共沸混合物(A)99.28部に、コハク酸( 東京化成工業(株) 製、以下同様。) を0.72部溶解させることによって、フラックスを調製した。組成を表2に示す。
【0064】
実施例2~14、比較例1~6
表2~4に示す原料組成に変更した他は、実施例1と同様にして各種フラックスを調製した。なお、比較製造例4で得られた共沸混合物(A)’は引火点を有しており、消防法の危険物に該当するため、フラックス調製においては使用しなかった。
【0065】
<フラックス外観>
各実施例及び比較例で得られたフラックスを、25℃で1時間静置させた後、当該フラックスの外観を目視で判定し、以下の基準によって評価した。評価結果を表2~4に示す。
(評価基準)
○:フラックスの外観が均一である。
×:フラックスの外観が白濁又は分離している。
【0066】
<フラックス濡れ性>
各実施例及び比較例で用いた共沸混合物(A)について、自動表面張力計CBVP-A3(協和界面科学(株)製)を使用し、Wilhelmy法(プレート法)により25℃における表面張力を測定し、該表面張力から以下の評価基準によってフラックスの濡れ性を評価した。評価結果を表2~4に示す。共沸混合物(A)の表面張力が低いほど、本発明のフラックスの濡れ性は高い。
(評価基準)
◎:表面張力が35dyn/cm未満。
○:表面張力が35dyn/cm以上、45dyn/cm未満。
△:表面張力が45dyn/cm以上、55dyn/cm未満。
×:表面張力が55dyn/cm以上。
【0067】
<フラックス乾燥性>
各実施例及び比較例で用いた共沸混合物(A)を軟膏缶に1.00g量り取り、80℃に設定した精密恒温器DF-62(ヤマト科学(株)製)の中に静置させ、共沸混合物(A)が完全に揮発するまでの時間(乾燥時間)を測定し、該乾燥時間から以下の評価基準によってフラックスの乾燥性を評価した。評価結果を表2~4に示す。溶剤である共沸混合物(A)の乾燥性が高いなら、本発明のフラックスの乾燥性も高い。
(評価基準)
◎:乾燥時間が25分未満。
○:乾燥時間が25分以上、35分未満。
△:乾燥時間が35分以上、45分未満。
×:乾燥時間が45分以上。
【0068】
<はんだ付け性能(はんだブリッジ)>
リードピッチが0.5mm、0.65mmのQFP(Quad Flat Package)部品が搭載されたプリント基板に、各実施例及び比較例で得られたフラックスを0.6g/cm2噴霧した。フラックス塗布後のプリント基板を噴流はんだ付け装置でプレヒート及びフローはんだ付けを行い、QFPのブリッジ(はんだブリッジ)の有無にてはんだ付け性能を評価した。評価基準は以下の通りである。評価結果を表2~4に示す。
(フローはんだ付け条件)
プリント基板の大きさ:10cm×15cm
フラックス塗布装置:SPT-300XL(生産技研サービス製)
噴流はんだ付け装置:セルソルダーC250(ヴィクトリー製)
はんだ組成:Sn-0.7Cu-0.05Ni-Ge(ソルダーコート(株)製LLS227N)
フラックス塗布量:0.6g/cm2
プレヒート温度:110℃
はんだ付け温度:255℃
はんだ付け時間:3秒
(評価基準)
◎:リードピッチが0.5mm及び0.65mmのQFP部品において、いずれもブリッジが発生しない。
○:リードピッチが0.65mmのQFP部品においてブリッジが発生せず、0.5mmのQFP部品においてブリッジが発生する。
×:リードピッチが0.5mm及び0.65mmのQFP部品において、いずれもブリッジが発生する。
【0069】
<はんだ付け性能(はんだボール)>
前記フローはんだ付け後のプリント基板において、飛散しているはんだボールの数を目視で数えて、はんだ付け性能を評価した。評価基準は以下の通りである。評価結果を表2~4に示す。
(評価基準)
◎:はんだボールが3個以下 。
○:はんだボールが4~7個。
×:はんだボールが8個以上。
【0070】
<絶縁抵抗性>
JISZ3197に規定されているくし型基板2型に、各実施例及び比較例で得られたフラックスを塗布した。該フラックスを塗布した基板を110℃の乾燥機で5分間乾燥させ、235℃のはんだ浴(金属種:Sn-37Pb)に3秒間浸しはんだ付けを行った。その後、基板を引き上げ、室温まで冷却させた。さらに、該基板を温度85℃、湿度85%の恒温恒湿槽内に放置して、168時間後のフラックス残渣の抵抗値(Ω)を測定して絶縁抵抗性を評価した。評価基準は以下の通りである。評価結果を表2~4に示す。
(評価基準)
○:抵抗値が1.0×108Ω以上。
×:抵抗値が1.0×108Ω未満。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
表2~4中の配合量の単位は重量部であり、略語及び注釈は、以下の通りである。
(1)界面活性剤。
(2)フラックスが二層に分離したので、他の評価はしなかった。
(化合物の略語及び詳細)
コハク酸:東京化成工業(株) 製
グルタル酸:東京化成工業(株) 製
アジピン酸:東京化成工業(株) 製
KE-604:アクリル化ロジン(酸価236mgKOH/g、荒川化学工業(株)製)
マルキードNo.31:フマル化ロジン(酸価186mgKOH/g、荒川化学工業(株)製)
マルキードNo.33:マレイン化ロジン(酸価303mgKOH/g、荒川化学工業(株)製)
TMHMDA:N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン(東京化成工業(株) 製)
BIDE:N-ブチルジエタノールアミン(東京化成工業(株) 製)
DBD:trans-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール(ハイケム(株)製)
LDA:ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(第一工業製薬(株)製)