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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】結晶性ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/36 20060101AFI20220405BHJP
   C01B 39/26 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C01B39/36
C01B39/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017250805
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019116399
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】満渕 裕幸
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-062234(JP,A)
【文献】特開2015-155096(JP,A)
【文献】特表2000-512608(JP,A)
【文献】特開2004-344829(JP,A)
【文献】国際公開第02/052950(WO,A1)
【文献】WOLOWIEC Magdalena et al.,Desalination and Water Treatment,2017年10月,94,120-128,doi:10.5004/dwt.2017.21537
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
B01D 21/00
C02F 1/52
B01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ源、アルミナ源、水酸基イオン源、および水を含む混合物を水熱合成させてゼオライトスラリーを得、次いでゼオライトスラリーを基準にして、下式であらわされる4級アンモニウム塩100重量ppm~500重量ppmを加え、前記ゼオライトスラリーを濾過脱水する工程を行う結晶性ゼオライトの製造方法。
(CH
ここで、Rは炭素数10~20のアルキル基、Xはハロゲンを表す。
【請求項2】
前記混合物中のSi/Al比が15~50である請求項記載の結晶性ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
得られる結晶性ゼオライトがMFI型ゼオライトである請求項1または2記載の結晶性ゼオライトの製造方法。
【請求項4】
水酸化テトラエチルアンモニウムをテンプレートとして使用し、得られる結晶性ゼオライトがモルデナイト型ゼオライトである請求項1または2記載の結晶性ゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結晶性ゼオライトを工業的に有利に製造する方法に関する。詳しくは、4級アンモニウム塩の存在下でゼオライトスラリーをろ過脱水する、結晶性ゼオライトの製造方法である。
【背景技術】
【0002】
工業的に、結晶性ゼオライトは芳香族化合物の異性化や不均化プロセスの中で固体触媒として使用されている。結晶性ゼオライトは製造の際、1次粒子径が大きくなりすぎると、その外表面積が減少するため、触媒活性が低下する一方、粒径が小さくなりすぎると、濾過性等の取り扱い性が良好でなくなることが知られおり、触媒活性と濾過性を両立させるため、原料中のケイ素に対する水酸化物イオンのモル比により粒径を調整する方法が提案されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-112577号公報
【文献】特開2008-238136号公報
【文献】特開2002-255541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、粒径を調整する方法は触媒活性の観点から必ずしも満足のいくものではなかった。そこで、本発明の目的は、結晶性ゼオライトスラリーのろ過性を向上し、活性の高いゼオライトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記目的を達成するため、以下の結晶性ゼオライトを製造する方法を提供す
る。シリカ源と、アルミナ源、水酸基イオン源、および水を含む混合物を水熱合成させゼオライトスラリーを得、次いでゼオライトスラリーを基準にして、式1であらわされる4級アンモニウム塩100重量ppm~500重量ppmを加え、前記ゼオライトスラリーを濾過脱水する工程を行う結晶性ゼオライトの製造方法。
(CHX ・・・式1
ここで、Rは炭素数10~20のアルキル基、Xはハロゲンを表す。
【発明の効果】
【0006】
本発明の結晶性ゼオライト製造方法では、式1であらわされる4級アンモニウム塩の存在下でゼオライトスラリーをろ過脱水することにより、ゼオライトスラリーのろ過性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明が製造の対象とする結晶性ゼオライトは、その骨格を構成する元素としてケイ素及び酸素を含むものであり、中でもペンタシル型もしくはモルデナイト型の構造を有するものが好ましく、ペンタシル型もしくはモルデナイト型の構造を有するゼオライトの中でも、特にSi/Al比が15~50であるものが好ましい。ペンタシル型もしくはモルデナイト型のゼオライトは、混合液を自己圧下に自己圧下で水熱合成できる。ペンタシル型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライトを製造する方法にはこれまで種々の方法が開示されている。例えば、特開2008-238136号公報および特開2002-255541号公報などを挙げることができる。
【0008】
本発明においては、シリカ源と、アルミナ源、水酸基イオン源、および水を含む混合物を水熱合成反応に付す。必要に応じて構造規定剤を用いてもよい。シリカ源としては例えば、コロイダルシリカ、シリカゲル、フュームドシリカ等の非晶質シリカ、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸アルカリなどが挙げられ、アルミナ源としてはアルミン酸ソーダなどが挙げられる。
【0009】
また必要に応じて反応原料に構造規定剤等の添加剤を加えることにより合成するゼオライトの骨格構造を制御することができる。例えばペンタシル型ゼオライトを製造する際に酒石酸を加えてもよいし、モルデナイト型ゼオライトを製造する際にテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド等の第4級アンモニウム塩を加えてもよい。
【0010】
水熱合成における温度は、80~200℃が好ましく、水熱合成時間は、1~200時間が好ましい。水熱合成における圧力は、絶対圧で、0.10~2.0MPaの範囲が好ましい。水熱合成の方法は、特に限定されないが、例えば、前記混合物をオートクレーブ等の反応容器に封入し、密閉状態で前記温度条件下、攪拌することにより行われる。
【0011】
本発明では水熱合成で得られた結晶を含む反応混合物(ゼオライトスラリー)に式1であらわされる4級アンモニウム塩を加え、撹拌する。式1であらわされる4級アンモニウム塩におけるRは炭素数10~20のアルキル基であり、Xはハロゲンである。4級アンモニウム塩は、Rで表されるアルキル基が炭素数の異なるアルキル基を有する混合物でもよいが、炭素数14~16のアルキル基が好ましい。Xで表されるハロゲンは、塩素が好ましい。式1であらわされる4級アンモニウム塩を反応混合物(ゼオライトスラリー)を基準として、100重量ppm以上添加することによりゼオライト結晶が凝集し濾過時間を短くする効果が得られる一方、500重量ppm以上添加すると気泡が生成してしまい取り扱いが困難になるため、添加量は100重量ppm以上500重量ppm以下が好ましく、さらに好ましくは、200重量ppm以上500重量ppmである。また、式1で表される4級アンモニウム塩は、リポカード(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社)などの市販品を用いてもよい。
(CHX・・・式1
【0012】
反応混合物の温度は20℃~80℃が好ましい。撹拌後、反応混合物を濾過し、結晶を含む濃縮物と濾液とに分離する。式1で表される4級アンモニウム塩を加えることにより、濾過分離にかかる時間を短縮することができる。濾過の方法としては、膜分離法が好ましい。膜の材質及び孔径は、適宜設定される。濾過は、加圧濾過若しくは吸引濾過もしくは遠心濾過のいずれでもよい。濾過における圧力は適宜設定され、濾液量を一定に保って濾過を行う定流量濾過若しくは膜差圧を一定に保って濾過を行う定圧濾過のいずれでもよい。濾過における温度は、室温~水熱合成反応時の温度の範囲が好ましい。濾過における圧力は、絶対圧で、0.01~1MPaの範囲が好ましい。
【0013】
前記濾過工程で得られた結晶を含む濃縮物を、洗浄により得られる洗浄液の25℃におけるpHが8.5~11.2になるまで水で洗浄する。前記洗浄により得られる洗浄液の25℃におけるpHが8.5~11.2になるまで水で洗浄するには、例えば、洗浄水量を調整することにより、前記pHを前記範囲に調整することができる。
洗浄工程で得られる洗浄後の結晶は、スラリーとして回収してもよいが、乾燥することにより乾燥体として回収するのが好ましい。乾燥方法としては棚段式乾燥機を用いるのが好ましく、乾燥温度は50℃以上300℃以下が好ましい。乾燥後結晶の含水率は10%以下が好ましく、含水率は赤外水分計で測定してもよい。乾燥後結晶の含水率は乾燥時間などにより調整することができる。
【実施例
【0014】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0015】
(実施例1)
苛性ソーダ水溶液(NaOH含量25重量%、HO含量75重量%)27.5グラム、酒石酸粉末9.6グラムをイオン交換水521.4グラムに溶解した。この溶液にアルミン酸ソーダ溶液(Al含量19重量%、NaO含量20重量%、HO含量61重量%)33グラムを加え、均一な溶液とした。この混合液に含水ケイ酸(SiO含量89.0重量%、Al含量0.3重量%、NaO含量0.2重量%、HO含量10.5重量%、ニップシールVN-3、東ソー)108グラムを撹拌しながら徐々に加え、均一なスラリー状水性反応混合物を調製した。反応混合物は、10Lのオートクレーブに入れ密閉し、その後120rpmで撹拌しながら160℃で72時間反応させた。
【0016】
上記で得られた結晶を含むスラリーを70℃に加温し、塩化ジアルキル(C14~C18)ジメチルアンモニウム(商品名リポカード、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社)を200重量ppm加え、120rpmで1時間撹拌後、50mmφヌッチェで5Cろ紙を使用し10分間吸引ろ過した。得られたケークの含水率を赤外水分計で含水率を測定したところ、67%だった。
得られたケークを蒸留水で5回水洗、濾過を繰り返し、約60℃で12時間乾燥し、Cu管球、Kα線を用いるX線回折装置で測定した結果、得られたゼオライトはペンタシル型ゼオライトであることがわかった。
【0017】
(実施例2)
苛性ソーダ水溶液(NaOH含量25重量%、HO含量75重量%)27.5グラム、酒石酸粉末9.6グラムをイオン交換水521.4グラムに溶解した。この溶液にアルミン酸ソーダ溶液(Al含量19重量%、NaO含量20重量%、HO含量61重量%)33グラムを加え、均一な溶液とした。この混合液に含水ケイ酸(SiO含量89.0重量%、Al含量0.3重量%、NaO含量0.2重量%、HO含量10.5重量%、ニップシールVN-3、東ソー)108グラムを撹拌しながら徐々に加え、均一なスラリー状水性反応混合物を調製した。反応混合物は、10Lのオートクレーブに入れ密閉し、その後120rpmで撹拌しながら160℃で72時間反応させた。
【0018】
上記で得られたゼオライト結晶を含むスラリーを70℃に加温し、塩化ジアルキル(C14~C18)ジメチルアンモニウム(商品名リポカード、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社)を500重量ppm加え、120rpmで1時間撹拌後、50mmφヌッチェで5Cろ紙を使用し10分間吸引ろ過した。得られたケークの含水率を赤外水分計で含水率を測定したところ、61%だった。
【0019】
得られたケークを蒸留水で5回水洗、濾過を繰り返し、約60℃で12時間乾燥し、Cu管球、Kα線を用いるX線回折装置で測定した結果、得られたゼオライトはペンタシル型ゼオライトであることがわかった。
【0020】
(比較例1)
苛性ソーダ水溶液(NaOH含量25重量%、HO含量75重量%)27.5グラム、酒石酸粉末9.6グラムをイオン交換水521.4グラムに溶解した。この溶液にアルミン酸ソーダ溶液(Al含量19重量%、NaO含量20重量%、HO含量61重量%)33グラムを加え、均一な溶液とした。この混合液に含水ケイ酸(SiO含量89.0重量%、Al含量0.3重量%、NaO含量0.2重量%、HO含量10.5重量%、ニップシールVN-3、東ソー)108グラムを撹拌しながら徐々に加え、均一なスラリー状水性反応混合物を調製した。反応混合物は、10Lのオートクレーブに入れ密閉し、その後120rpmで撹拌しながら160℃で72時間反応させた。
【0021】
上記で得られたゼオライト結晶を含むスラリーを70℃に加温し、120rpmで1時間撹拌後、50mmφヌッチェで5Cろ紙を使用し10分間吸引ろ過した。得られたケークは含水率が高く、時間経過すると液状化し、赤外水分計で含水量計測不能だった。
【0022】
得られたケークを蒸留水で5回水洗、濾過を繰り返し、約60℃で12時間乾燥し、Cu管球、Kα線を用いるX線回折装置で測定した結果、得られたゼオライトはペンタシル型ゼオライトであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
結晶性ゼオライトスラリーの濾過性を向上し、活性の高いゼオライトを効率よく製造することができる。