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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】含窒素複素環化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/71 20060101AFI20220405BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20220405BHJP
   C07D 491/048 20060101ALI20220405BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
C07D213/71
C07D495/04 105A
C07D491/048
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018005639
(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公開番号】P2019123694
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 修一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 公彦
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/051043(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/086397(WO,A1)
【文献】ZHANG,Y.et al,Synthesis of pyrimido[4,5-b]indoles and benzo[4,5]furo[2,3-d]pyrimidinesvia palladium-catalyzed intramolecular arylation,Tetrahedron Letters,2002年,Vol.43, No.46,p.8235-8239
【文献】Campeau, Louis-Charles; Thansandote, Praew; Fagnou, Keith,High-yielding intramolecular direct arylation reactions with aryl chlorides,Organic Letters ,2005年,Vol.7, No.9,p.1857-1860
【文献】REGISTRY[online],2001年06月28日, [retrieved on 2021.08.18], Retrieved from:STN, CAS登録番号 343778-35-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で表される化合物と下記一般式[2]で表される化合物を反応させ下記一般式[3]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【化1】
(式中、Yは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって含窒素複素環化合物を製造し、前記含窒素複素環化合物を精製することなく、Pd触媒および、下記一般式[5]または下記一般式[6]で表されるイミダゾリニウム塩の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【化2】
(式中、Yは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。R~Rは、水素原子もしくは置換基を表す。Bはアニオンを表す。)
【請求項3】
請求項1に記載の方法によって含窒素複素環化合物を製造し、前記含窒素複素環化合物を精製することなく、下記一般式[7]または下記一般式[8]で表されるカルベン化合物が配位したPd錯体の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【化3】
(式中、Yは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。R~Rは、水素原子もしくは置換基を表す。)
【請求項4】
下記一般式[1]で表される化合物と下記一般式[2]で表される化合物を反応させ下記一般式[3]で表される含窒素複素環化合物を製造し、前記含窒素複素環化合物を精製することなく、Pd触媒および下記一般式[9]で表される化合物の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【化4】
(式中、Yは酸素原子もしくは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。R~R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基を表す。)
【請求項5】
下記一般式[3]で表される化合物をPd触媒および、下記一般式[5]または下記一般式[6]で表されるイミダゾリニウム塩の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【化5】
(式中、Yは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。R~Rは、水素原子もしくは置換基を表す。Bはアニオンを表す。)
【請求項6】
下記一般式[3]で表される化合物を下記一般式[7]または下記一般式[8]で表されるカルベン化合物が配位したPd錯体の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【化6】
(式中、Yは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。R~Rは、水素原子もしくは置換基を表す。)
【請求項7】
下記一般式[3]で表される化合物をPd触媒および下記一般式[9]で表される化合物の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【化7】
(式中、Yは酸素原子もしくは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。R~R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機合成化合物の有用な中間体、特に、有機エレクトロルミネッセンス用材料として有用な含窒素複素環化合物およびそれから誘導される含窒素複素環化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アザジベンゾフランを合成する方法として、下記ルートに示したようなピリジン環の窒素原子をN-oxideにしたのちにC-H/C-Hアクチベーション反応で環化し、さらに還元反応によりアザジベンゾフランを合成する方法が知られている。例えば、非特許文献1には、下記ルートの一部に相当する反応式が開示されている。
この方法では、環化反応の収率が低いという問題があった。また、この方法では、ピリジンの窒素原子をN-oxideにした後、還元して元に戻す必要があり工程数が長くなるという問題があった。
【0003】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】Org. Lett. ,2015,17(3), p.426-429
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、短い工程数、高収率で得られる含窒素複素環化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の構成により解決することができた。
【0007】
1.下記一般式[1]で表される化合物と下記一般式[2]で表される化合物を反応させ下記一般式[3]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、Yは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。)
【0010】
2.前記1に記載の方法によって含窒素複素環化合物を製造し、前記含窒素複素環化合物を精製することなく、Pd触媒および、下記一般式[5]または下記一般式[6]で表されるイミダゾリニウム塩の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、Yは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。R~Rは、水素原子もしくは置換基を表す。Bはアニオンを表す。)
【0013】
3.前記1に記載の方法によって含窒素複素環化合物を製造し、前記含窒素複素環化合物を精製することなく、下記一般式[7]または下記一般式[8]で表されるカルベン化合物が配位したPd錯体の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、Yは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。R~Rは、水素原子もしくは置換基を表す。)
【0016】
4.下記一般式[1]で表される化合物と下記一般式[2]で表される化合物を反応させ下記一般式[3]で表される含窒素複素環化合物を製造し、前記含窒素複素環化合物を精製することなく、Pd触媒および下記一般式[9]で表される化合物の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、Yは酸素原子もしくは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。R~R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基を表す。)
【0019】
5.下記一般式[3]で表される化合物をPd触媒および、下記一般式[5]または下記一般式[6]で表されるイミダゾリニウム塩の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【化6】
【0020】
(式中、Yは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。R~Rは、水素原子もしくは置換基を表す。Bはアニオンを表す。)
【0021】
6.下記一般式[3]で表される化合物を下記一般式[7]または下記一般式[8]で表されるカルベン化合物が配位したPd錯体の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【0022】
【化7】
【0023】
(式中、Yは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。R~Rは、水素原子もしくは置換基を表す。)
【0024】
7.下記一般式[3]で表される化合物をPd触媒および下記一般式[9]で表される化合物の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得ることを特徴とする含窒素複素環化合物の製造方法。
【0025】
【化8】
【0026】
(式中、Yは酸素原子もしくは硫黄原子を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。R~Rは置換基を表す。A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2である。mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。R~R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基を表す。)
【発明の効果】
【0027】
本発明の含窒素複素環化合物の製造方法は、含窒素複素環化合物を短い工程数、高収率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明における含窒素複素環化合物の製造方法のフローチャートである。
図2】本発明における含窒素複素環化合物の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明をさらに詳細に述べる。
図1に示すように、含窒素複素環化合物の製造方法は、一般式[3]で表される化合物を得る工程S101を含む。
【0030】
含窒素複素環化合物の製造方法は、下記一般式[1]で表される化合物と下記一般式[2]で表される化合物を反応させ下記一般式[3]で表される化合物を得るものである。
なお、一般式[3]で表される含窒素複素環化合物は、有機合成化合物の有用な中間体、特に、有機エレクトロルミネッセンス用材料として有用な含窒素複素環化合物である。
【0031】
【化9】
【0032】
一般式[1]~[3]中、Yは酸素原子もしくは硫黄原子を表す。これらのうちで好ましいものは、酸素原子である。
一般式[1]~[3]中、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。これらのうちで好ましいものは、アリール基である。
【0033】
一般式[1]~[3]中、R~Rは置換基を表す。
一般式[1]~[3]中、A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2であり、好ましくは1である。
一般式[1]~[3]中、mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。
【0034】
一般式[1]で表される化合物と一般式[2]で表される化合物を反応させ一般式[3]で表される化合物を得る反応には塩基を併用することが好ましい。塩基としては、例えばアルカリ金属塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、フッ化セシウム、ナトリウムt-ブトキサイド、カリウムt-ブトキサイド等)、アミン誘導体(トリエチルアミン等)等が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、炭酸カリウムである。
【0035】
一般式[1]で表される化合物と一般式[2]で表される化合物を反応させ一般式[3]で表される化合物を得る反応に用いられる反応溶媒としては、非プロトン性溶媒(例えばDMF、DMAc、DMSO、NMP等)、芳香族炭化水素系溶媒(例えばキシレン、ジクロロベンゼン等)、エーテル系溶媒(例えばエチレングリコールジメチルエーテル等)が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、DMSOである。
【0036】
一般式[3]で表される化合物を得る反応の反応温度は、通常、100~160℃が好ましい。反応温度が100℃以上であれば、反応がより促進される。一方、反応温度が160℃以下であれば、副反応を抑制できる。反応温度は、反応をより促進させる観点から、より好ましくは130℃以上である。また、反応温度は、副反応を抑制する観点から、より好ましくは150℃以下である。すなわち、反応温度は、好ましくは100~160℃であり、より好ましくは130~150℃である。
【0037】
図2に示すように、含窒素複素環化合物の製造方法は、一般式[3]で表される化合物を得る工程S101と、一般式[4]で表される化合物を得る工程S102と、を含む。
【0038】
[一般式[4]で表される化合物の製造方法(1)]
含窒素複素環化合物の製造方法は、下記一般式[3]で表される化合物をPd触媒および、下記一般式[5]または下記一般式[6]で表されるイミダゾリニウム塩の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得るものである。
なお、一般式[4]で表される含窒素複素環化合物は、一般式[3]で表される化合物から誘導される含窒素複素環化合物であり、特に、有機エレクトロルミネッセンス用材料として有用な含窒素複素環化合物である。
【0039】
【化10】
【0040】
一般式[3]~[6]中、Yは酸素原子もしくは硫黄原子を表す。これらのうちで好ましいものは、酸素原子である。
一般式[3]~[6]中、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。これらのうちで好ましいものは、アリール基である。
【0041】
一般式[3]~[6]中、R~Rは置換基を表す。
一般式[3]~[6]中、A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2であり、好ましくは1である。
一般式[3]~[6]中、mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。
一般式[3]~[6]中、R~Rは、水素原子もしくは置換基を表す。
【0042】
一般式[3]~[6]中、Bはアニオンを表す。Bで表されるアニオンとしては、例えばハライド、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、アセテート等が挙げられる。
【0043】
Pd触媒としては、例えばPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCldppf、Pd(dba)、Pd/c等が挙げられる。
Pd触媒の使用量は、一般式[3]で表される化合物 1molに対して0.01~0.3molの範囲で用いることが好ましく、0.02~0.1molの範囲で用いることが特に好ましい。
一般式[5]または一般式[6]で表されるイミダゾリニウム塩は、一般式[3]で表される化合物 1molに対して0.01~0.3molの範囲で用いることが好ましく、0.02~0.1molの範囲で用いることが特に好ましい。
【0044】
なお、一般式[3]で表される化合物は、前記したとおり、一般式[1]で表される化合物と一般式[2]で表される化合物を反応させて得たものを用いることができる。ただし、一般式[3]で表される化合物は、この方法以外の方法で得たものを用いることもできる。
なお、いずれの方法においても、得られた一般式[3]で表される化合物は、精製することなく、Pd触媒および、一般式[5]または一般式[6]で表されるイミダゾリニウム塩の存在下での反応に用いることができる。ただし、精製してから用いてもよい。
【0045】
[一般式[4]で表される化合物の製造方法(2)]
含窒素複素環化合物の製造方法は、下記一般式[3]で表される化合物を下記一般式[7]または下記一般式[8]で表されるカルベン化合物が配位したPd錯体の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得るものである。
【0046】
【化11】
【0047】
一般式[3]、[4]、[7]、[8]中、Yは酸素原子もしくは硫黄原子を表す。これらのうちで好ましいものは、酸素原子である。
一般式[3]、[4]、[7]、[8]中、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。これらのうちで好ましいものは、アリール基である。
【0048】
一般式[3]、[4]、[7]、[8]中、R~Rは置換基を表す。
一般式[3]、[4]、[7]、[8]中、A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2であり、好ましくは1である。
一般式[3]、[4]、[7]、[8]中、mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。
一般式[3]、[4]、[7]、[8]中、R~Rは、水素原子もしくは置換基を表す。
【0049】
一般式[7]または一般式[8]で表されるカルベン化合物が配位したPd錯体は、一般式[3]で表される化合物 1molに対して0.01~0.3molの範囲で用いることが好ましく、0.02~0.1molの範囲で用いることが特に好ましい。
【0050】
なお、一般式[3]で表される化合物は、前記したとおり、一般式[1]で表される化合物と一般式[2]で表される化合物を反応させて得たものを用いることができる。ただし、一般式[3]で表される化合物は、この方法以外の方法で得たものを用いることもできる。
なお、いずれの方法においても、得られた一般式[3]で表される化合物は、精製することなく、一般式[7]または一般式[8]で表されるカルベン化合物が配位したPd錯体の存在下での反応に用いることができる。ただし、精製してから用いてもよい。
【0051】
[一般式[4]で表される化合物の製造方法(3)]
含窒素複素環化合物の製造方法は、下記一般式[3]で表される化合物をPd触媒および下記一般式[9]で表される化合物の存在下で反応させ下記一般式[4]で表される化合物を得るものである。
【0052】
【化12】
【0053】
一般式[3]、[4]、[9]中、Yは酸素原子もしくは硫黄原子を表す。これらのうちで好ましいものは、酸素原子である。
一般式[3]、[4]、[9]中、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を表す。これらのうちで好ましいものは、アリール基である。
【0054】
一般式[3]、[4]、[9]中、R~Rは置換基を表す。
一般式[3]、[4]、[9]中、A~AはNもしくはCRを表し、Rは水素原子または置換基を表す。ただし、A~AのNの数は1~2であり、好ましくは1である。
一般式[3]、[4]、[9]中、mは0~2の整数、mは0~3の整数を表す。
一般式[3]、[4]、[9]中、R~R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基を表す。
、Rは、好ましくはアリール基である。
10、R11は、好ましくはシクロアルキル基、アルキル基であり、特に好ましくはt-ブチル基である。
【0055】
Pd触媒としては、例えばPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCldppf、Pd(dba)、Pd/c等が挙げられる。
Pd触媒の使用量は、一般式[3]で表される化合物 1molに対して0.01~0.3molの範囲で用いることが好ましく、0.02~0.1molの範囲で用いることが特に好ましい。
【0056】
一般式「9」で表される化合物は、一般式[3]で表される化合物 1molに対して0.01~0.3molの範囲で用いることが好ましく、0.02~0.1molの範囲で用いることが特に好ましい。
一般式「9」で表される化合物は、脂肪族カルボン酸と併用することが好ましく、特に好ましくは、ピバリン酸と併用することが好ましい。
【0057】
なお、一般式[3]で表される化合物は、前記したとおり、一般式[1]で表される化合物と一般式[2]で表される化合物を反応させて得たものを用いることができる。ただし、一般式[3]で表される化合物は、この方法以外の方法で得たものを用いることもできる。
なお、いずれの方法においても、得られた一般式[3]で表される化合物は、精製することなく、Pd触媒および一般式[9]で表される化合物の存在下での反応に用いることができる。ただし、精製してから用いてもよい。
【0058】
一般式[4]で表される化合物の製造方法(1)~(3)において、一般式[4]で表される化合物を得る反応には塩基を併用することが好ましい。塩基としては、例えばアルカリ金属塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、フッ化セシウム、ナトリウムt-ブトキサイド、カリウムt-ブトキサイド等)、アミン誘導体(トリエチルアミン等)等が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、炭酸カリウム、ナトリウムt-ブトキサイド、カリウムt-ブトキサイドである。
【0059】
一般式[4]で表される化合物の製造方法(1)~(3)において、一般式[4]で表される化合物を得る反応の反応温度は、通常、100~160℃が好ましい。反応温度が100℃以上であれば、反応がより促進される。一方、反応温度が160℃以下であれば、副反応を抑制できる。反応温度は、反応をより促進させる観点から、より好ましくは130℃以上である。また、反応温度は、副反応を抑制する観点から、より好ましくは150℃以下である。すなわち、反応温度は、好ましくは100~160℃であり、より好ましくは130~150℃である。
【0060】
一般式[1]~[8]中、R~Rで表される置換基としては、例えばアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アシルアミノ、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、複素環(例えば、ジベンゾフラン環、アザジベンゾフラン環、ジベンゾジオフェン環、カルバゾール環等)、スルホニル、スルフィニル、ホスホニル、アシル、カルバモイル、スルファモイル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、複素環オキシ、シロキシ、アシルオキシ、カルバモイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミド、ウレイド、スルファモイルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボキシル、2-(2-ピリジル)フェニル等の各基が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、アリール基である。
【0061】
、Rで表される置換基のうち、好ましくはアリール基であり、より好ましくは2つのオルト位に分岐アルキル基を有するものであり、特に2、6-ジイソプロピルフェニル基が好ましい。
【0062】
以下に、本発明の一般式[1]で表される化合物の代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されものではない。
【0063】
【化13】
【0064】
以下に、本発明の一般式[2]で表される化合物の代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されものではない。
【0065】
【化14】
【0066】
以下に、本発明の一般式[3]で表される化合物の代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されものではない。
【0067】
【化15】
【0068】
以下に、本発明の一般式[4]で表される化合物の代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されものではない。
【0069】
【化16】
【0070】
以下に、本発明の一般式[5]で表される化合物の代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されものではない。
【0071】
【化17】
【0072】
以下に、本発明の一般式[6]で表される化合物の代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されものではない。
【0073】
【化18】
【0074】
以下に、本発明の一般式[7]または一般式[8]で表されるカルベン化合物が配位したPd錯体の代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されものではない。
【0075】
【化19】
【0076】
以下に、本発明の一般式[9]で表される化合物の代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されものではない。
【0077】
【化20】
【実施例
【0078】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0079】
実施例1(比較例)
《例示化合物4-4の合成》
【0080】
【化21】
【0081】
窒素気流下、化合物E 11.4g(×1.1mol)、例示化合物2-5 10g(58.8mmol)、炭酸カリウム 20.3g(×2.5mol)をDMSO 80mlに溶解し、135~140℃で7時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去して化合物Fを得た。次に、DMF 50mlを加え、窒素バブリングを20分間行った。Pd(dba) 3.4g(×0.1 mol)、例示化合物9-1 1.6g(×0.1mol)、ピバリン酸 1.8g(×0.3mol)、炭酸カリウム 12.2g(×1.5mol)を加え、150℃で7時間撹拌を行った。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/トルエン)にて精製し白色結晶 3.7gを得た(収率25.5%、純度99.1%)。
例示化合物4-4の構造は、H NMRで確認した。
【0082】
例示化合物4-4 1H NMR (400MHz, CDCl3): 8.70 (d, 1H), 7.92 (m, 3H), 7.74 (d, 1H), 7.57 (m, 3H), 7.47 (dd, 1H), 7.41 (dd, 1H)
【0083】
実施例2(参考例(出願当初の本発明)
《例示化合物4-4の合成》
【0084】
【化22】
【0085】
窒素気流下、例示化合物1-1 8.5g(×1.1mol)、例示化合物2-5 10g(58.8mmol)、炭酸カリウム 20.3g(×2.5mol)をDMSO 80 mlに溶解し、135~140℃で7時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去して例示化合物3-4を得た。次に、DMF 50mlを加え、窒素バブリングを20分間行った。例示化合物7-2 0.76g(×0.02mol)、炭酸カリウム 16.2g(×2mol)を加え、140℃で7時間撹拌を行った。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去した。この懸濁液に酢酸 43mlを加え、氷水冷下一晩撹拌した。析出した結晶を濾過、乾燥し、白色結晶 8.2gを得た(収率56.9%、純度99.8%)。
【0086】
実施例3(参考例(出願当初の本発明)
《例示化合物4-4の合成》
【0087】
【化23】
【0088】
窒素気流下、例示化合物1-1 8.5g(×1.1mol)、例示化合物2-5 10g(58.8mmol)、炭酸カリウム 20.3g(×2.5mol)をDMSO 80mlに溶解し、135~140℃で7時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去して例示化合物3-4を得た。次に、別の容器にDMF 50mlを加え、窒素バブリングを20分間行った。Pd(dba) 3.4g(×0.1mol)、例示化合物6-1 2.8g(×0.1mol)、KOBu-t 0.79g(×0.12mol)を加えて10分撹拌した。前記残留物、炭酸カリウム 12.2g(×1.5mol)を加え、140℃で7時間撹拌を行った。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/トルエン)にて精製し白色結晶 10.1gを得た(収率70.0%、純度99.1%)。
【0089】
実施例4(本発明)
《例示化合物4-4の合成》
【0090】
【化24】
【0091】
窒素気流下、例示化合物1-1 8.5g(×1.1mol)、例示化合物2-5 10g(58.8mmol)、炭酸カリウム 20.3g(×2.5mol)をDMSO 80mlに溶解し、135~140℃で7時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去して例示化合物3-4を得た。次に、DMF 50mlを加え、窒素バブリングを20分間行った。Pd(dba) 3.4g(×0.1mol)、例示化合物9-1 1.6g(×0.1mol)、ピバリン酸 1.8g(×0.3mol)、炭酸カリウム12.2g(×1.5mol)を加え、150℃で7時間撹拌を行った。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/トルエン)にて精製し白色結晶 9.4gを得た(収率65.0%、純度99.1%)。
【0092】
実施例5(参考例(出願当初の本発明)
《例示化合物4-2の合成》
【0093】
【化25】
【0094】
窒素気流下、例示化合物1-2 8.5g(×1.1mol)、例示化合物2-3 8.8g(58.8mmol)、炭酸カリウム 20.3g(×2.5mol)をDMSO 80mlに溶解し、135~140℃で7時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去して例示化合物3-2を得た。次に、DMF 50mlを加え、窒素バブリングを20分間行った。例示化合物7-1 0.67g(×0.02mol)、炭酸カリウム 16.2g(×2mol)を加え、140℃で7時間撹拌を行った。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/トルエン)にて精製し白色結晶 8.5gを得た(収率64.0%、純度99.0%)。
【0095】
実施例6(本発明)
《例示化合物4-3の合成》
【0096】
【化26】
【0097】
窒素気流下、例示化合物1-3 8.5g(×1.1mol)、例示化合物2-4 10.4g(58.8mmol)、炭酸カリウム 20.3g(×2.5mol)をDMSO 80mlに溶解し、135~140℃で7時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去して例示化合物3-3を得た。次に、DMF 50mlを加え、窒素バブリングを20分間行った。Pd(dba) 3.4g(×0.1mol)、例示化合物9-3 1.9g(×0.1mol)、ピバリン酸 1.8g(×0.3mol)、炭酸カリウム 12.2g(×1.5mol)を加え、150℃で7時間撹拌を行った。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/トルエン)にて精製し白色結晶 9.2gを得た(収率62.0%、純度99.1%)。
【0098】
実施例7(本発明)
《例示化合物4-12の合成》
【0099】
【化27】
【0100】
窒素気流下、例示化合物1-1 8.5g(×1.1mol)、例示化合物2-10 11g(58.8mmol)、炭酸カリウム 20.3g(×2.5mol)をDMSO 80mlに溶解し、135~140℃で7時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去して例示化合物3-12を得た。次に、別の容器にDMF 50mlを加え、窒素バブリングを20分間行った。Pd(dba) 3.4g(×0.1mol)、例示化合物5-1 2.8g(×0.1mol)、KOBu-t 0.79g(×0.12mol)を加えて10分撹拌した。前記残留物、炭酸カリウム 12.2g(×1.5mol)を加え、140℃で7時間撹拌を行った。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/トルエン)にて精製し白色結晶 9.4gを得た(収率61.1%、純度99.0%)。
【0101】
実施例8(参考例(出願当初の本発明)
《例示化合物4-4の合成》
【0102】
【化28】
【0103】
窒素気流下、例示化合物1-1 8.5g(×1.1mol)、例示化合物2-5 10g(58.8mmol)、炭酸カリウム 20.3g(×2.5mol)をDMSO 80mlに溶解し、135~140℃で7時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去して例示化合物3-4を得た。次に、DMF 50mlを加え、窒素バブリングを20分間行った。例示化合物8-2 0.76g(×0.02mol)、炭酸カリウム 16.2g(×2mol)を加え、140℃で7時間撹拌を行った。酢酸エチルを加えて、水洗し、減圧蒸留で溶媒を除去した。この懸濁液に酢酸 43mlを加え、氷水冷下一晩撹拌した。析出した結晶を濾過、乾燥し、白色結晶 8.1 gを得た(収率56.2%、純度99.8%)。
【0104】
実施例中の各化合物の同定はMASSおよびNMRスペクトルで行い、それぞれ目的化合物であることを確認した。その他の例示化合物も上記の方法に準じて合成することができる。
【0105】
以上のとおり、本発明、又は参考例(出願当初の本発明)の製造方法により、有機合成化合物の有用な中間体である含窒素複素環化合物およびそれから誘導される含窒素複素環化合物は、短い工程数、高収率で得られる。また、本発明、又は参考例(出願当初の本発明)の製造方法により得られる含窒素複素環化合物は、特に有機エレクトロルミネッセンス用材料として有用であり、優れた効果を有する。
図1
図2