(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】メタン製造装置、および、メタン製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20220405BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20220405BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018028333
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】佐山 勝悟
(72)【発明者】
【氏名】山本 征治
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-136538(JP,A)
【文献】特開2018-008913(JP,A)
【文献】特表2013-515684(JP,A)
【文献】国際公開第2016/007825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00
C07C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素と水素からメタンを製造するメタン製造装置であって、
メタン化触媒性能を有する触媒を収容し、供給源から供給された二酸化炭素と水素とを含む原料ガスを用いて、メタン化反応を生じさせる第1反応器と、
前記第1反応器の下流側に配置され
る第2反応器であって、メタン化触媒性能を有する触媒を収容し、前記第1反応器で生成されたメタンを含む反応混合ガスを用いて、メタン化反応を生じさせる第2反応器と、
前記第1反応
器で生じた熱を
前記第2反応器に供給する熱供給部と、
前記第2反応器に供給される反応混合ガスに対して、含有する二酸化炭素と水素との比率と、供給流量との少なくとも一方を調整することによって、前記第2反応器におけるメタン化反応の反応量を制御する制御部と、
前記第2反応器において、前記熱供給部によって供給される熱と、メタン化反応の反応熱とによって触媒の活性温度が維持されているか否かに関連する情報を検出する検出部と、を備
え、
前記制御部は、前記検出部によって検出された情報に応じて、前記第2反応器の反応量を制御する、
メタン製造装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のメタン製造装置において、
前記検出部は、前記第2反応器において、触媒の複数の位置のうち、温度が相対的に高い位置である温度ピーク位置を検出するものであり、
前記制御部は、前記検出部によって検出された前記触媒の温度ピーク位置の変化に応じて、前記第2反応器の反応量を制御する、
メタン製造装置。
【請求項3】
請求項
1に記載のメタン製造装置において、
前記検出部は、前記第2反応器で生成されたメタンを含む生成ガスの組成を検出するものであり、
前記制御部は、前記検出部によって検出された前記生成ガスの組成の変化に応じて、前記第2反応器の反応量を制御する、
メタン製造装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載のメタン製造装置は、さらに、
前記第1反応器で生成されたメタンを含む反応混合ガスを前記第2反応器に供給する反応混合ガス流路であって、前記反応混合ガスから水を分離する脱水部が設けられており、脱水後の反応混合ガスを常温で前記第2反応器に供給する反応混合ガス流路を備える、
メタン製造装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載のメタン製造装置は、さらに、
前記供給源から供給された二酸化炭素と水素とを含む原料ガスを常温で前記第1反応器に供給する原料ガス流路を備える、
メタン製造装置。
【請求項6】
メタン製造方法であって、
メタン化触媒性能を有する触媒が収容された第1反応器に、二酸化炭素と水素とを含む原料ガスを供給してメタン化反応を生じさせる工程と、
前記第1反応器の下流側に配置され
、メタン化触媒性能を有する触媒が収容された第2反応器に、前記第1反応器で生成されたメタンを含む反応混合ガスを供給してメタン化反応を生じさせる工程と、
前記第1反応
器で生じた熱を
前記第2反応器に供給する工程と、
前記第2反応器において、前記熱供給部によって供給される熱と、メタン化反応の反応熱とによって触媒の活性温度が維持されているか否かに関連する情報を検出する検出工程と、
前記検出工程において検出された情報に応じて、前記第2反応器に供給される反応混合ガスに対して、含有する二酸化炭素と水素との比率と、供給流量との少なくとも一方を調整し、前記第2反応器におけるメタン化反応の反応量を制御する工程と、を備える、
メタン製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン製造装置、および、メタン製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)からメタン(CH4)を製造する技術が知られている(特許文献1参照)。例えば、引用文献1には、原料ガスと水素の一部とを供給する第1反応器と、第1反応器から来る反応混合ガスに水素の残部を供給する第2反応器と、第2反応器から来る生成ガスの組成を調整する第3反応器と、を備えたメタン製造装置において、第1反応器への水素供給量を調整することによって、第1反応器の反応温度を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、地球温暖化抑制のために、燃焼排ガスやバイオガス等に含まれるCO2をメタン化することによって、CO2排出量の削減を図る技術の向上が望まれている。しかしながら、上記先行技術によっても、CO2からメタンを低コストで製造する技術については、なお、改善の余地があった。例えば、引用文献1の技術では、反応器に供給される反応ガス(CO2とH2の混合ガス)を少なくとも200℃以上に予熱するために外部から熱エネルギーの投入が必要となり、コストの低減が容易ではなかった。また、引用文献1では、2段目以降の反応器に供給される反応ガスは、脱水時に、次の反応に必要な温度(例えば200℃)までしか冷却されないため、脱水量が少なく転化率が低下するおそれがあった。転化率が低下すると、これを向上させるためには多くの反応器が必要となり、装置コストが増大するおそれがあった。また、引用文献1では、反応器に供給されるガスの温度が高く、高温による触媒劣化を抑制するために触媒の冷却を十分におこなう必要がある。そのため、システムが複雑になるほか、一度、外部から投入された熱を冷却することになり、エネルギー効率が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、H2とCO2からメタンを製造するメタン製造装置において、メタン製造コストの低減を図る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、二酸化炭素と水素からメタンを製造するメタン製造装置が提供される。このメタン製造装置は、メタン化触媒性能を有する触媒を収容し、供給源から供給された二酸化炭素と水素とを含む原料ガスを用いて、メタン化反応を生じさせる第1反応器と、前記第1反応器の下流側に配置され、前記第1反応器で生成されたメタンを含む反応混合ガスを用いて、メタン化反応を生じさせる第2反応器と、前記第1反応器と前記第2反応器のうち、一方の反応器で生じた熱を他方の反応器に供給する熱供給部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、第1反応器と前記第2反応器のうち、一方の反応器で生じた熱を他方の反応器に供給することで、他方の反応器に供給されるCO2とH2の混合ガスの予熱や触媒の加熱のために投入される外部エネルギーを低減させることができる。これにより、メタン製造コストの低減を図ることができる。
【0009】
(2)上記形態のメタン製造装置は、さらに、前記第2反応器に供給される反応混合ガスに対して、含有する二酸化炭素と水素との比率と、供給流量との少なくとも一方を調整することによって、前記第2反応器におけるメタン化反応の反応量を制御する制御部と、前記第2反応器において、前記熱供給部によって供給される熱と、メタン化反応の反応熱とによって触媒の活性温度が維持されているか否かに関連する情報を検出する検出部と、を備え、前記制御部は、前記検出部によって検出された情報に応じて、前記第2反応器の反応量を制御してもよい。この構成によれば、熱供給部によって供給される熱と、メタン化反応の反応熱によって、第2反応器においてメタン化反応が継続するように第2反応器の反応量が制御されるため、第2反応器の反応量をメタン化反応が継続可能な最小限の反応量に近づけることができる。これにより、第2反応器において、自立的に反応を継続させつつ、第1反応器における反応量を増やすことができる。第1反応器の反応量を増やすことで、第1反応器から取り出される反応混合ガスを脱水したときの脱水量を増やすことができ、装置全体の転化率の向上を図ることができる。
【0010】
(3)上記形態のメタン製造装置において、前記検出部は、前記第2反応器において、触媒の複数の位置のうち、温度が相対的に高い位置である温度ピーク位置を検出するものであり、前記制御部は、前記検出部によって検出された前記触媒の温度ピーク位置の変化に応じて、前記第2反応器の反応量を制御してもよい。この構成によれば、第2反応器の触媒の温度ピーク位置の変化によって、触媒が活性温度以下になり反応が失活するおそれがある状態か否かを簡易に判定することができる。よって、この構成によれば、簡易な構成によって、第2反応器においてメタン化反応が継続するように第2反応器の反応量を制御することができる。
【0011】
(4)上記形態のメタン製造装置は、さらに、前記第2反応器で生成されたメタンを含む生成ガスの組成の変化を検出する組成検出部を備え、前記制御部は、前記組成検出部によって検出された前記生成ガスの組成の変化に応じて、前記第2反応器の反応量を制御してもよい。この構成によれば、生成ガスの組成の変化によって、第2反応器の触媒が活性温度以下になり反応が失活するおそれがある状態か否かを簡易に判定することができる。よって、この構成によっても、簡易な構成によって、第2反応器においてメタン化反応が継続するように第2反応器の反応量を制御することができる。
【0012】
(5)上記形態のメタン製造装置は、さらに、前記第1反応器で生成されたメタンを含む反応混合ガスを前記第2反応器に供給する反応混合ガス流路であって、前記反応混合ガスから水を分離する脱水部が設けられており、脱水後の反応混合ガスを常温で前記第2反応器に供給する反応混合ガス流路を備えていてもよい。この構成によれば、第1反応器で生成されたメタンを含む反応混合ガスを常温まで冷却して脱水をおこなうことができるため、脱水量を増大させることができる。これにより、転化率の向上を図ることができる。また、脱水後に昇温する必要がないため、第2反応器に供給される反応混合ガスの予熱や触媒の加熱のために投入される外部エネルギーを低減させることができる。
【0013】
(6)上記形態のメタン製造装置は、さらに、前記供給源から供給された二酸化炭素と水素とを含む原料ガスを常温で前記第1反応器に供給する原料ガス流路を備えていてもよい。この構成によれば、第1反応器に供給される原料ガスの予熱や触媒の加熱のために投入される外部エネルギーを低減させることができる。
【0014】
(7)本発明の他の一形態によれば、二酸化炭素と水素からメタンを製造するメタン製造装置が提供される。このメタン製造装置は、メタン化触媒性能を有する触媒を収容し、供給源から供給された二酸化炭素と水素とを含む原料ガスを用いて、メタン化反応を生じさせる第1反応器と、前記第1反応器の下流側に配置され、前記第1反応器で生成されたメタンを含む反応混合ガスを用いて、メタン化反応を生じさせる第2反応器と、前記第2反応器に供給される反応混合ガスに対して、含有する二酸化炭素と水素との比率と、供給流量との少なくとも一方を調整することによって、前記第2反応器におけるメタン化反応の反応量を制御する制御部と、前記第2反応器において、触媒の活性温度が維持されているか否かに関連する情報を検出する検出部と、を備え、前記制御部は、前検出部によって検出された情報に応じて、前記第2反応器の反応量を制御する。
【0015】
この構成によれば、メタン化反応の反応熱によって、第2反応器においてメタン化反応が継続するように第2反応器の反応量が制御されるため、第2反応器の反応量をメタン化反応が継続可能な最小限の反応量に近づけることができる。これにより、第2反応器において、自立的に反応を継続させつつ、第1反応器における反応量を増やすことができる。
第1反応器の反応量を増やすことで、第1反応器から取り出される反応混合ガスを脱水したときの脱水量を増やすことができ、装置全体の転化率の向上を図ることができる。また、この構成によれば、第2反応器に常温のガスを供給しても反応を継続させることができるため、第2反応器に投入される外部エネルギーを低減させることができる。これらにより、メタン製造コストの低減を図ることができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、メタン製造装置の制御方法、この制御方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、メタン製造方法、メタン製造装置の製造方法、メタン化触媒システム、CO2回収装置、CO2循環システム、燃料製造装置などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態のメタン製造装置の概略構成を示した説明図である。
【
図2】触媒の温度ピーク位置と触媒温度との関係を示した説明図である。
【
図4】第1反応器転化率と第2反応器入口ガス比熱の関係を示した説明図である。
【
図5】第1反応器転化率と第2反応器の反応熱との関係を示した説明図である。
【
図6】第1反応器転化率と第2反応器の昇温との関係を示した説明図である。
【
図7】比較例と本実施形態の冷却割合と転化率との関係を示した説明図である。
【
図8】第2実施形態のメタン製造装置の概略構成を示した説明図である。
【
図9】第3実施形態のメタン製造装置の概略構成を示した説明図である。
【
図10】第4実施形態のメタン製造装置の概略構成を示した説明図である。
【
図11】第5実施形態のメタン製造装置の概略構成を示した説明図である。
【
図12】第6実施形態のメタン製造装置の概略構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態におけるメタン製造装置1の概略構成を示した説明図である。本実施形態のメタン製造装置1は、定常運転時において、メタン化触媒を活性温度に維持するための熱エネルギーを、外部から投入せずにメタン化反応の反応熱を利用するように構成されている。メタン製造装置1は、第1反応器10と、第2反応器20と、CO
2供給源30と、水素供給源40と、原料ガス流路50と、反応混合ガス流路60と、生成ガス流路70と、熱媒体流路80と、制御部90と、を備えている。
【0019】
第1反応器10は、内部においてメタネーション反応によりメタンを生成するための略筒形状の容器であり、二重管によって構成されている。第1反応器10の内側の管内には、触媒11が配置され、両端には、ガス入口12と、ガス出口13とが形成されている。触媒11は、メタン化触媒性能を有する金属を含んでいる。メタン化触媒性能を有する金属としては、例えば、RuやNiを例示することができる。第1反応器10の上流側には原料ガス流路50が接続され、下流側には反応混合ガス流路60が接続されている。原料ガス流路50からCO2とH2とを含む原料ガスが第1反応器10に供給され、メタン化反応によってメタンが生成される。生成されたメタンや未反応のCO2等を含む反応混合ガスは、反応混合ガス流路60を経由して第2反応器20に供給される。
【0020】
第1反応器10の外側の管と内側の管との間には、オイル等の流体の熱媒体(熱流体)が流通する内部流路15が形成されている。内部流路15は、熱媒体流路80の一部として構成されており、熱媒体入口16から内部流路15に流入した熱媒体は、第1反応器10内のメタン化反応によって加熱された後、熱媒体出口17から排出される。熱媒体入口16は、第1反応器10の下流側に設けられており、熱媒体出口17は、第1反応器10の上流側に設けらている。これにより、熱媒体は、触媒11の下流側から上流側に向かって流通するため、より高温となる触媒11の上流側の熱を第2反応器20に供給することができる。
【0021】
第2反応器20は、第1反応器10と同形状、同容量の容器であり、内側の管内には、触媒21が配置され、両端には、ガス入口22と、ガス出口23と、が形成されている。触媒21は、触媒11と同様に、メタン化触媒性能を有する金属とを含んでいる。第2反応器20の上流側には反応混合ガス流路60が接続され、下流側には生成ガス流路70が接続されている。第1反応器10によって生成されたメタンのほか未反応のCO2や第2MFC46から供給されるH2を含む反応混合ガスが反応混合ガス流路60から第2反応器20に供給される。反応混合ガスの供給によって、第2反応器20の内部ではメタン化反応によってメタンが生成される。第2反応器20で生成された生成物(CH4およびH20)を含む生成ガスは、生成ガス流路70を経由して熱交換部71に供給される。熱交換部71では、生成ガスからH20が分離される。
【0022】
第2反応器20の外側の管と内側の管との間には、熱媒体が流通する内部流路25が形成されている。内部流路25は、熱媒体流路80の一部として構成されており、熱媒体入口26から内部流路25に流入した熱媒体は、第2反応器20に供給される反応混合ガスや触媒21を加熱した後、熱媒体出口27から排出される。、熱媒体入口26は、第2反応器20の下流側に設けられており、熱媒体出口27は、第2反応器20の上流側に設けらている。これにより、熱媒体は、触媒21の下流側から上流側に向かって流通するため、メタン化反応の生じにくく相対的に温度が低い触媒21の下流側をより昇温させることができる。
【0023】
第2反応器20には、触媒21の各部位の温度を計測するための複数の熱電対28が設けられている。ここでは、第2反応器20の上流側から下流側に並んで4つの熱電対28(第1熱電対28a、第2熱電対28b、第3熱電対28c、第4熱電対28d)が触媒21に挿入されている。以後、各熱電対28a~28dによって計測された温度をT1~T4と呼ぶ。各熱電対28a~28dによって取得された温度T1~T4は制御部90に出力される。
【0024】
CO2供給源30は、CO2を含有する原料ガスを供給可能な供給源であり、例えば、燃焼炉と、CO2分離器とを含んで構成される。CO2分離器は、燃焼炉の排ガスからCO2を分離して回収するための装置であり、内部にCO2吸蔵(吸着)性能を有する吸着材が収容されている。CO2供給源30から供給される原料ガスは、原料ガス流路50を経由して第1反応器10に供給される。
【0025】
水素供給源40は、例えば、水電解装置や水素タンクによって構成される。水素供給源40から供給されるH2は、第1水素供給流路41から原料ガス流路50を経由して第1反応器10に供給される。また、第2水素供給流路45から反応混合ガス流路60を経由して第2反応器20に供給される。第1水素供給流路41には、第1マスフローコントローラ(第1MFC)42が設けられており、原料ガス流路50から第1反応器10に供給されるH2の量が調整される。第2水素供給流路45には、第2マスフローコントローラ(第2MFC)46が設けられており、反応混合ガス流路60から第2反応器20に供給されるH2の量が調整される。第1MFC42および第2MFC46は、制御部90によって制御される。
【0026】
原料ガス流路50は、CO2供給源30から供給されたCO2と、第1MFC42を介して水素供給源40から供給されたH2を含む原料ガスを第1反応器10に供給するためのガス流路であり、複数のガス配管を含んで構成されている。原料ガス流路50には、CO2供給源30から供給されるCO2を含む原料ガスの流量を測定する流量計51が設けられている。流量計51の下流側には、第1水素供給流路41が接続されており、第1MFC42からH2が供給される。流量計51を通過したCO2を含む原料ガスは、第1MFC42よってH2が付加された後、第1反応器10に供給される。原料ガス流路50には、第1反応器10に供給される原料ガスを加熱するヒータが設けられておらず、原料ガスは常温(例えば、20℃±15℃)のまま第1反応器10に供給される。
【0027】
反応混合ガス流路60は、第1反応器10から送り出された反応混合ガスを第2反応器20に供給するためのガス流路であり、複数のガス配管によって構成されている。反応混合ガス流路60には、熱交換部61が設けられている。熱交換部61は、第1反応器10で生成された生成物(CH4およびH20)を含む反応混合ガスからH20を分離する脱水装置である。熱交換部61は、第1反応器10から送り出された反応混合ガス(100℃~200℃)を常温(例えば、20℃±15℃)まで低下させてH20を分離する。熱交換部61の下流側には、第2水素供給流路45が接続されており、第2MFC46からH2が供給される。H20が分離された常温の反応混合ガスは、第2MFC46によってH2が付加された後、第2反応器20に供給される。反応混合ガス流路60には、第2反応器20に供給される反応混合ガスを加熱するヒータが設けられておらず、反応混合ガスは常温のまま第2反応器20に供給される。
【0028】
熱媒体流路80は、オイル等の流体の熱媒体(熱流体)が流通する流路であり、第1反応器10と第2反応器20のうちの一方の反応器で生じた熱を他方の反応器に供給する。本実施形態では、第1反応器10の反応熱量が第2反応器20の反応熱量よりも大きいため、熱媒体流路80は、第1反応器10のメタン化反応で生じた熱を第2反応器20に供給する。熱媒体流路80は、第1反応器10の内部流路15と、第2反応器20の内部流路25とを含んでいる。第1反応器10の内部流路15を流通し、メタン化反応によって加熱された熱媒体は、第2反応器20の内部流路25を流通することによって触媒21や第2反応器20に供給される反応混合ガスを加熱し、その後、再度、第1反応器10に供給される。熱媒体流路80には、図示しないコンプレッサーと、温度調整部が設けられている。コンプレッサーの駆動によって、第1反応器10と第2反応器20との間で熱媒体を循環させる。温度調整部は、熱媒体の温度を調整する装置であり、第1反応器10で昇温された熱媒体の温度が設定温度(例えば、250℃)よりも高い場合には、常温の熱媒体を付加して温度を調整する。また、設定温度よりも低い場合には、ヒータ等によって設定温度まで加熱する。コンプレッサーおよび温度調整部は、制御部90によって制御される。
【0029】
制御部90は、ROM、RAM、および、CPUを含んで構成されるコンピュータであり、メタン製造装置1の全体の制御をおこなう。制御部90は、第1MFC42、第2MFC46、熱電対28のほか、図示しないセンサ(温度センサ、流量センサ、濃度センサ等)や、熱媒体を循環させるポンプ、温度調整部等と電気的に接続され、熱電対28を含むセンサからの測定値等に基づいて、これらの制御をおこなう。制御部90は、第1MFC42から供給されるH2の供給流量Q1を調整して、第1反応器10におけるメタン化反応の反応量を制御する。また、制御部90は、第2MFC46から供給されるH2の供給流量Q2を調整して、第2反応器20におけるメタン化反応の反応量を制御する。また、制御部90は、第1MFC42と第2MFC46から供給されるH2の合計と、CO2供給源30から供給されるCO2とが、メタン化反応における化学量論比(H2/CO2=4)となるようにH2の供給流量Q1、Q2を制御する。
【0030】
制御部90は、定常運転時の第2反応器20において、外部熱を投入することなく、自立的にメタン化反応が継続するように、第2反応器20のメタン化反応の反応量を制御する。言い換えれば、制御部90は、定常運転時の第2反応器20において、熱媒体流路80によって供給される熱と、メタン化反応の反応熱とによって触媒21の活性温度(例えば、200℃以上)を維持できるように第2反応器20のメタン化反応の反応量を制御する。具体的には、制御部90は、触媒21の各部位の温度T1~T4から、触媒21において温度が相対的に高い温度ピーク位置を特定し、温度ピーク位置が変化(移動)したか否かによって、触媒21の活性温度が維持されているか否かを判定する。そして、その判定結果に応じて第2反応器20のメタン化反応の反応量を制御する。この制御処理の詳細については
図3を用いて後述する。
【0031】
図2は、触媒21の温度ピーク位置と触媒温度との関係を示した説明図である。第2反応器20の反応量が小さくなると、メタン化反応による反応熱量が減少し、触媒21の温度が低下する。このとき、触媒21は、温度ピーク位置が下流側に移動しながら触媒全体の温度が低下する特性を有している。よって、触媒21の各部位の温度T1~T4から、触媒21の温度ピーク位置の移動の有無を検出することで、触媒21が活性温度を維持できる状態か否かを判定することができる。例えば、触媒21の温度ピーク位置が、連続して下流側に移動した場合には、触媒21の全体が活性温度以下になって反応が失活するおそれがある状態であると推定することができる。よって、触媒21の温度ピーク位置が連続して下流側に移動した場合には、第2反応器20へのH
2の供給流量Q2を増やすことで、第2反応器20の反応量を増やし、反応熱によって触媒21を昇温させることができる。通常、2つの反応器を備えるメタン製造装置では、上流側の1段目の反応器の反応量(転化率)が大きくなると、2段目の反応器に供給される反応混合ガス中のH
2とCO
2がメタンによって大きく希釈され、2段目の反応器の反応量が低下し、反応が自己熱のみで維持できない状態となる。本実施形態のメタン製造装置1では、この状態を検出することができるため、第2反応器20において自己熱によって自立的にメタン化反応を継続させつつ、第1反応器10におけるメタン化反応の反応量を増加させることができる。これにより、後述するように転化率の向上を図ることができる。
【0032】
図3は、制御部90の制御処理を示すフローチャートである。制御部90は、メタン製造装置1の始動後(t=t
0[sec])において、まず、フラグ1の値F1を0にセットする(ステップS11)。フラグ1は、後述のS14の判定が1回目か2回目目かを識別するために用いられる。メタン製造装置1の始動時には、第1反応器10や第2反応器20の内部を昇温させるためにN
2ガスが供給されてもよい。その後、第1反応器10と第2反応器20にH
2とCO
2が供給されて、それぞれの反応器においてメタン化反応が生じる定常運転状態となる。次に、制御部90は、第2反応器20内の4つの熱電対28で触媒21の各部位の温度T1~T4を取得し、その中で最も温度の高い熱電対の熱電対番号N
Tmax(t)を識別する(ステップS12)。ここでは、熱電対番号Nは、最も上流側の熱電対から下流側に向かって順に「1」「2」「3」「4」であるものとする。つまり、第1熱電対28aが「1」、第2熱電対28bが「2」、第3熱電対28cが「3」、第4熱電対28dが「4」であり、下流側ほど熱電対番号Nが大きいものとする。
【0033】
ステップS12のδtd秒(δtd=2~60)経過後、制御部90は、再度、触媒21の各部位の温度T1~T4を取得し、その中で最も温度の高い熱電対の熱電対番号NTmax(t)を識別する(ステップS13)。次に、制御部90は、後に識別したNTmax(t)が前に識別したNTmax(t-δtd)以下か否かを判定する(ステップS14)。すなわち、δtd秒間の間に触媒21の温度ピーク位置が移動していない、または、上流側に移動したか否かを判定する。NTmax(t)≦NTmax(t-δtd)の場合、すなわち、触媒21の温度ピーク位置が移動していないか上流側に移動した場合には、フラグ1の値F1を0にセットし(ステップS15)、δtd秒経過後に再度、ステップS13を実行する。触媒21の温度ピーク位置が移動していないか上流側に移動しており、触媒21の活性温度が維持されているため、第1反応器10と第2反応器20の反応量を変化させることなく、そのまま、触媒21の温度ピーク位置の監視が継続される。
【0034】
一方、NTmax(t)>NTmax(t-δtd)の場合、すなわち、温度ピークが下流側に移動した場合には、フラグ1の値F1が0か否かを判定し(ステップS16)、F1が0の場合には、1回目の判定なので、フラグ1の値F1を1にして(ステップS17)、再度、ステップS13を実行する。F1が1の場合には、2回目なので第2反応器20において触媒21が活性温度以下になり反応が失活するおそれがあると判定し、第2反応器20へのH2の供給流量Q2を増加させる(ステップS18)。具体的には、H2供給流量Q2をγ[%](γ=1~20)増加させ、第1反応器10へのH2供給流量Q1をその分減少させる。これにより、第2反応器20の反応量が増加し、触媒21が昇温される。一方、第1反応器10の反応量はその分減少する。その後、フラグ1を0にセットして(ステップS19)、δtd秒経過後に、再度、ステップS13を実行する。以上が制御処理についての説明である。
【0035】
図4~
図6を用いて、第1反応器10におけるメタン化反応の転化率X
1と第2反応器20におけるメタン化反応の反応熱による昇温との関係について説明する。
図4は、第1反応器10の転化率X
1と第2反応器20の入口ガスの比熱との関係を示した説明図である。
図4の横軸は転化率X
1を示し、縦軸は第2反応器20のガス入口22から供給される反応混合ガス(入口ガス)の比熱を示しいている。
図5は、第1反応器10の転化率X
1と第2反応器20の反応熱との関係を示した説明図である。
図6は、第1反応器10の転化率X
1と第2反応器20の反応熱による第2反応器20内部の昇温δTとの関係を示した説明図である。
図6は、
図4の比熱と
図5の反応熱量から算出される。ここでは、昇温δTが175℃以上のときに自己熱のみで第2反応器20でメタン化反応が継続可能となるものとする。
【0036】
第1反応器10の転化率X
1が増加するにつれて、第2反応器20の入り口ガスの比熱は減少する(
図4)が、反応熱量が低下する(
図5)ため、転化率X
1が95%以上となると、第2反応器20では理論上自己熱のみで反応維持ができなくなる。実際には、反応熱のすべてを損失無しで第2反応器20内部の昇温に用いることは困難であり、また、第2反応器20に残存しているすべてのCO
2をメタンに転化させることも困難である。そのため、第2反応器20の反応が維持できる転化率X
1は、実際は95%よりも小さくなる。例えば、実際の試験において、圧力3[atm]、空間速度10000[h-1]でおこなったところ、転化率X
1を70%以上とすると、第2反応器20の反応は維持しなくなった。通常、2つの反応器を備えるメタン製造装置では、上流側の1段目の反応器における転化率をできるだけ高くすることが一般的である。サバティエ反応(CO
2+4H
2⇔CH
4+2H
2O)では、生成ガスからH
2Oを取り除くと平衡が右に移動する。よって、1段目の反応器の反応器でより多く反応させた方が、1段目の反応器から取り出されたガスからより多くのH
2Oを取り除くことができ、装置全体の転化率の向上が図れるためである。しかし、本実施形態のメタン製造装置1は、第2反応器20において自己熱によって自立的に反応が継続できるように、あえて、第1反応器10の転化率を抑制するように構成されている。
【0037】
図7は、比較例と本実施形態における冷却割合と転化率の関係を示した説明図である。ここでは、比較例のメタン製造装置と、本実施形態のメタン製造装置1について、反応器の冷却割合と、転化率との関係について説明する。比較例のメタン製造装置は、1つの反応器(1段)と、その反応器を冷却する冷却装置を備える。本実施形態のメタン製造装置1は、2つの反応器10、20と、熱媒体流路80を備える。
図7の横軸は、反応熱量に対する反応器の冷却割合であり、縦軸は、メタン化反応の転化率を示している。
図7の中空丸点(白丸)をつないだ直線は、比較例における、冷却割合と転化率との関係を示している。
図7の中空四角点(白四角)は、比較例における250℃化学平衡値である。
図7の中実丸点(黒丸)をつないだ直線は、本実施形態における、冷却割合と転化率との関係を示している。
図7の中実四角点(黒四角)は、本実施形態における250℃化学平衡値である。
【0038】
比較例のように反応器が1つのメタン製造装置の場合、外部熱源により原料ガスを予熱して供給すると、250℃の化学平衡値の転化率が得られるが、原料ガスを常温で供給すると、反応器の冷却量をゼロにしても反応熱量が足りず、触媒下流の温度が反応緩和前に活性温度以下となる。そのため、250℃の化学平衡値の転化率には至らない。一方、本実施形態のメタン製造装置1によれば、常温の原料ガスの供給により第1反応器10の転化率が比較例と同様であっても、第2反応器20では、第1反応器10の反応熱が供給されるため、反応緩和前に触媒が活性温度以下となることが抑制される。これにより、メタンの転化率が向上するため、
図7に示すように、冷却量が小さい場合にはほぼ250℃の化学平衡値の転化率が得られる。すなわち、本実施形態のメタン製造装置1によれば、熱媒体流路80によって第1反応器10から第2反応器20に熱が供給されるため、第1反応器10に常温の原料ガスが供給され第1反応器10の転化率が低下しても、第2反応器20において十分な転化率が確保されるため、全体の転化率の低下を抑制できる。また、熱媒体流路80によって第1反応器10から第2反応器20に熱が供給されるため、常温の反応混合ガスを第2反応器20に供給しても第2反応器20において十分な転化率を確保することができる。
【0039】
以上説明した、本実施形態のメタン製造装置1によれば、第1反応器10で生じた熱を第2反応器20に供給することで、第2反応器20に供給される反応混合ガスの予熱や触媒21の加熱のために投入される外部エネルギーを低減させることができる。これにより、メタン製造コストの低減を図ることができる。また、第2反応器20に反応混合ガスを常温で供給することができるため、第2反応器20に供給される反応混合ガスを脱水によって常温まで冷却することができる。これにより、脱水量を増大させることができ、転化率の向上を図ることができる。また、転化率を向上させるために必要な反応器の数を減らすことができる。また、この構成によれば、
図7に示すように、第1反応器10に常温の原料ガスを供給しても、第1反応器10から熱が供給される第2反応器20によって転化率の低下が抑制される。よって、第1反応器10に供給される原料ガスの予熱や触媒11の加熱のために投入される外部エネルギーの低減を図ることができる。また、この構成によれば、第1反応器10から熱が供給される第2反応器20では、より小さい反応量で自立的に自己熱によってメタン化反応を維持することができる。よって、第1反応器10におけるメタン化反応の反応量を増加させることができ、転化率の向上を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態の制御部90は、
図3に示すように、第2反応器20に供給される反応混合ガスのCO
2とH
2の比率を調整することによって、第2反応器20においてメタン化反応が維持できるように、第2反応器20の反応量を制御する。この構成によれば、第2反応器20の反応量を、熱媒体流路80によって供給される熱と、メタン化反応の反応熱によって、メタン化反応が継続可能な最小限の反応量に近づけることができる。これにより、第2反応器20において、外部熱の供給無しで自立的にメタン化反応を継続させつつ、第1反応器10における反応量を増やすことができ、転化率の向上を図ることができる。
【0041】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態におけるメタン製造装置1Aの概略構成を示した説明図である。第2実施形態のメタン製造装置1Aは、第1実施形態のメタン製造装置1(
図1)と比較すると、第2反応器20に供給される反応混合ガスに付加される組成がH
2ではなくCO
2である点が異なる。すなわち、第2実施形態のメタン製造装置1Aは、第1反応器10から取り出された反応混合ガスにCO
2を付加することによって、第2反応器20に供給される反応混合ガスのH
2とCO
2との比率を変更可能に構成されている。
【0042】
第2実施形態の制御部90は、第1MFC52から供給されるH2の供給流量と、第2MFC32から供給されるCO2の供給流量とを調整して、第1反応器10におけるメタン化反応の反応量を制御する。また、制御部90は、第3MFC36から供給されるCO2の供給流量を調整して、第2反応器20におけるメタン化反応の反応量を制御する。制御部90は、第2MFC32と第3MFC36から供給されるCO2の合計と、第1MFC52から供給されるH2とが、メタン化反応における化学量論比(H2/CO2=4)となるようにこれらの供給流量を制御する。
【0043】
以上説明した、第2実施形態のメタン製造装置1Aによれば、第1実施形態とは異なり、第2反応器20へのCO2供給量を調整することによっても、第2反応器20のメタン化反応の反応量の制御をおこなうことができる。よって、第2実施形態のメタン製造装置1Aによっても、定常運転時の第2反応器20において、外部熱を投入することなく、メタン化反応が継続するように、第2反応器20のメタン化反応の反応量を制御することができる。
【0044】
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態におけるメタン製造装置1Bの概略構成を示した説明図である。第3実施形態のメタン製造装置1Bは、第1実施形態のメタン製造装置1と比較すると、第2反応器20に供給される反応混合ガスに付加される組成がH
2だけではなく、H
2とCO
2の両方である点が異なる。すなわち、第3実施形態のメタン製造装置1Bは、第1反応器10から取り出された反応混合ガスにH
2とCO
2の両方を付加することによって、第2反応器20に供給される反応混合ガスのH
2とCO
2との比率を変更可能に構成されている。
【0045】
第3実施形態の制御部90は、第1MFC42から供給されるH2の供給流量と、第3MFC33から供給されるCO2の供給流量とを調整して、第1反応器10におけるメタン化反応の反応量を制御する。また、制御部90は、第2MFC46から供給されるH2の供給流量と、第4MFC34から供給されるCO2の供給流量を調整して、第2反応器20におけるメタン化反応の反応量を制御する。制御部90は、第1MFC42と第2MFC46から供給されるH2の合計と、第3MFC32と第4MFC34から供給されるCO2の合計とが、メタン化反応における化学量論比(H2/CO2=4)となるようにこれらの供給流量を制御する。
【0046】
以上説明した、第3実施形態のメタン製造装置1Bによれば、第1実施形態とは異なり、H2とCO2の両方の供給量を調整することによっても、第2反応器20のメタン化反応の反応量の制御をおこなうことができる。よって、第3実施形態のメタン製造装置1Bによっても、定常運転時の第2反応器20において、外部熱を投入することなく、メタン化反応が継続するように、第2反応器20のメタン化反応の反応量を制御することができる。
【0047】
<第4実施形態>
図10は、第4実施形態におけるメタン製造装置1Cの概略構成を示した説明図である。第1実施形態のメタン製造装置1は、供給されるガスのH
2とCO
2との比率を変更することによって第1反応器10と第2反応器20のそれぞれのメタンの反応量を制御していた。第4実施形態のメタン製造装置1Cは、供給されるガスのH
2とCO
2との比率は一定であるが流量を変更することによって、第1反応器10と第2反応器20のそれぞれのメタンの反応量を制御する。
【0048】
第4実施形態の制御部90は、第1MFC48から供給されるH2と、CO2供給源30から供給されるCO2とが、メタン化反応における化学量論比(H2/CO2=4)となるように第1MFC48を制御する。そして、第2MFC56から供給されるH2とCO2との混合ガスの供給流量を調整して、第1反応器10におけるメタン化反応の反応量を制御する。また、制御部90は、第3MFC57から供給される混合ガスの供給流量を調整して、第2反応器20におけるメタン化反応の反応量を制御する。
【0049】
以上説明した、第4実施形態のメタン製造装置1Cによれば、第1実施形態とは異なり、H2とCO2の比率が一定の混合ガスの供給流量を調整することによっても、第2反応器20のメタン化反応の反応量の制御をおこなうことができる。よって、第4実施形態のメタン製造装置1Cによっても、定常運転時の第2反応器20において、外部熱を投入することなく、メタン化反応が継続するように、第2反応器20のメタン化反応の反応量を制御することができる。
【0050】
<第5実施形態>
図11は、第5実施形態におけるメタン製造装置1Dの概略構成を示した説明図である。第5実施形態のメタン製造装置1Dは、第1実施形態のメタン製造装置1と比較すると、熱電対28が第1反応器10に設けられている点と、熱媒体流路81において、第2反応器20から第1反応器10に熱が供給される点が異なる。第5実施形態のメタン製造装置1Dは、第2反応器20の反応熱量が第1反応器10の反応熱量よりも大きいため、熱媒体流路80は、第2反応器20のメタン化反応で生じた熱を第1反応器10に供給する。
【0051】
第5実施形態の制御部90は、定常運転時の第1反応器10において、熱媒体流路81によって第2反応器20から供給される熱と、メタン化反応の反応熱とによって触媒11の活性温度(例えば、200℃以上)を維持できるように第1反応器10のメタン化反応の反応量を制御する。具体的には、制御部90は、触媒11の各部位の温度T1~T4から、触媒11において温度が相対的に高い温度ピーク位置を特定し、温度ピーク位置が変化(移動)したか否かによって、触媒11の活性温度が維持されているか否かを判定する。そして、その判定結果に応じて、第1MFC42から供給されるH2の供給流量Q1を調整して第1反応器10のメタン化反応の反応量を制御する。
【0052】
以上説明した、第5実施形態のメタン製造装置1Dによれば、第2反応器20で生じた熱を第1反応器10に供給することによって、第1反応器10に供給される原料ガスの予熱や触媒11の加熱のために投入される外部エネルギーを低減させることができる。よって、この構成によっても、メタン製造コストの低減を図ることができる。なお、熱電対28は、第1反応器10と第2反応器20の両方に設けられていてもよい。この場合には、制御部90は、触媒11と触媒21のそれぞれの温度ピーク位置の変化から、それぞれの反応器において反応が失活するおそれがあるか否かを判定し、判定結果からそれぞれの反応量を制御してもよい。
【0053】
<第6実施形態>
図12は、第6実施形態におけるメタン製造装置1Eの概略構成を示した説明図である。第6実施形態のメタン製造装置1Eは、第1実施形態のメタン製造装置1と比較すると、熱電対28を備えておらず、メタン濃度検出部72を備えている点が異なる。第6実施形態のメタン製造装置1Eは、第2反応器20から取り出される生成ガスの組成の変化によって、第2反応器20において反応が失活するおそれがあるか否かを判定する。
【0054】
メタン濃度検出部72は、生成ガス流路70に設けられており、第2反応器20から取り出される生成ガスのメタン濃度を検出する。第2反応器20の反応量が小さくなり、触媒21の温度が低下すると、第2反応器20の転化率が悪化し、生成ガスのメタン濃度が低下する。よって、生成ガスのメタン濃度の変化を検出することで、触媒21が活性温度を維持できる状態か否かを判定することができる。第6実施形態の制御部90は、メタン濃度検出部72によって検出されたメタン濃度が低下すると、触媒21の全体が活性温度以下になって反応が失活するおそれがある状態であると判定する。そして、第2反応器20の反応量を増大させて、触媒21を昇温させる。
【0055】
以上説明した、第6実施形態のメタン製造装置1Eによれば、第1実施形態のように熱電対28によって触媒21の温度ピークの変化を検出する方法以外の方法によっても、触媒21が活性温度を維持できる状態か否かを判定することができる。
【0056】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
[変形例1]
第1実施形態では、定常運転中に触媒21の温度ピーク位置が下流側へ移動した否かによって、触媒21が活性温度を維持できる状態か否かを判定している。しかし、触媒21が活性温度を維持できる状態か否かを判定する方法は、これに限定されず、他の方法であってもよい。例えば、4つの熱電対28a~28dによって検出された温度T1~T4の平均温度を算出し、平均温度が連続的に低下する場合に、触媒21の全体が活性温度以下になって反応が失活するおそれがある状態であると判定してもよい。なお、熱電対の本数も4本以外の本数であってもよい。
【0058】
[変形例2]
第1実施形態のメタン製造装置1は、
図3に示すように、第2反応器20においてメタン化反応が維持できるように、第2反応器20の反応量を制御するものとした。しかし、メタン製造装置1は、この制御をおこなわす、第2反応器20において、自己熱によって自立的にメタン化反応が継続可能な程度の一定の反応量を維持するように構成されていてもよい。この場合であっても、メタン製造装置1は、第1反応器10から第2反応器20に熱を供給する熱媒体流路80を備えているため、第2反応器20に供給される反応混合ガスの予熱や触媒21の加熱のために投入される外部エネルギーを低減させることができる。なお、メタン製造装置1は、
図3に示すように、第2反応器20においてメタン化反応が維持できるように、第2反応器20の反応量を制御する方が好ましい。第2反応器20の反応量をメタン化反応が継続可能な最小限の反応量に近づけることができるためである。これにより、第2反応器20において、外部熱の供給無しで自立的にメタン化反応を継続させつつ、第1反応器10における反応量を増やし、転化率の向上を図ることができる。
【0059】
[変形例3]
第1実施形態のメタン製造装置1は、熱媒体流路80を備えているものとした。しかし、メタン製造装置1は、熱媒体流路80を備えていなくてもよい。この場合であっても、、
図3に示すように、第2反応器20においてメタン化反応が維持できるように、第2反応器20の反応量を制御することによって、第2反応器20の反応量を、熱媒体流路80によって供給される熱と、メタン化反応の反応熱によって、メタン化反応が継続可能な最小限の反応量に近づけることができる。これにより、第2反応器20において、外部熱の供給無しで自立的にメタン化反応を継続させつつ、第1反応器10における反応量を増やすことができ、転化率の向上を図ることができる。なお、メタン製造装置1は、熱媒体流路80を備えている方がより好ましい。第1反応器10から供給される熱によって、第2反応器20では、より小さい反応量で自立的に自己熱によってメタン化反応を維持することができ、第1反応器10の反応量をさらに増加させることができるためである。
【0060】
[変形例4]
第1実施形態のメタン製造装置1は、2つの反応器10、20を備えているものとした。しかし、メタン製造装置1は、反応器を3以上備えていてもよい。この場合、熱媒体流路80は、いずれか1以上の反応器の熱を他の1以上の反応器に供給するように構成されていれば、反応器に供給されるガスの予熱や触媒の加熱のために投入される外部エネルギーを低減させることができる。なお、最も下流側の反応器に熱が供給されるように構成されることが好ましい。最も下流側の反応器の反応量が低下すると全体の転化率が低下するためである。
【0061】
[変形例5]
第1実施形態のメタン製造装置1は、熱媒体流路80を流通する熱媒体としてオイルを例示している。しかし、熱媒体は、オイルに限定されず、例えば、溶融塩、ガスなどであってもよい。第1実施形態のメタン製造装置1は、触媒11、21の代わりに、高級炭化水素およびアルコール生成触媒(Fe系触媒、その他、CuやCo等でも可)を反応器10、20の内部に備えていてもよい。
【0062】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0063】
1、1A~1E…メタン製造装置
10…第1反応器
20…第2反応器
11、21…触媒
12、22…ガス入口
13、23…ガス出口
15、25…内部流路
16、26…熱媒体入口
17、27…熱媒体出口
28…熱電対
40…水素供給源
50…原料ガス流路
60…反応混合ガス流路
61…熱交換部
70…生成ガス流路
71…熱交換部
72…メタン濃度検出部
80、81…熱媒体流路
90…制御部