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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】光受信モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20220405BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20220405BHJP
【FI】
G02B6/42
H01L31/02 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018033778
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019148717
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】中山 謙一
(72)【発明者】
【氏名】川村 正信
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-154186(JP,A)
【文献】特開2016-170363(JP,A)
【文献】特開2017-034492(JP,A)
【文献】特開2005-122096(JP,A)
【文献】特開2009-282309(JP,A)
【文献】米国特許第07424223(US,B1)
【文献】特開2006-106304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
6/30-6/34
6/42-6/43
H01L 31/00-31/02
31/08-31/10
31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに波長が異なる複数の信号光成分を含む信号光を光ファイバから受け、それぞれの信号光成分を分波して電気信号に変換する光受信モジュールであって、
前記光ファイバと光学的に接続され、前記信号光を前記複数の信号光成分に分波する光分波器と、
前記光ファイバと前記光分波器との間の光路上に配置され、前記信号光の光強度を減衰させる光減衰器と、
前記複数の信号光成分のそれぞれを電気信号に変換する複数の受光素子と、
を備え、
前記光分波器は、前記複数の信号光成分のそれぞれを選択的に透過する複数の誘電体多層膜を有し、
各前記誘電体多層膜は、前記信号光の光軸と交差する第1方向に並んで配置され、
前記光減衰器は、前記第1方向に交差する第2方向に移動して前記信号光を遮蔽するシャッタを有する、
光受信モジュール。
【請求項2】
前記光分波器は、互いに平行な一対の端面を有し前記信号光を透過する光透過部材と、前記光透過部材の一方の前記端面に設けられた光反射材とを更に有し、
前記複数の誘電体多層膜は、前記光透過部材の他方の前記端面上において前記第1方向に並んでいる、
請求項1に記載の光受信モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信量の増大に伴い、互いに波長が異なる複数の信号光成分を重畳した信号光を用いて通信を行う波長多重光通信技術が普及している。特許文献1には、光受信モジュールが記載されている。光受信モジュールにおいては、光分波器によって信号光を複数の信号光成分に分岐した後、受光素子によって各信号光成分を電気信号に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-125045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光受信モジュールにおいて、過大な光強度の信号光が入力されると、受光素子から出力された電流を増幅器(TIA)で処理できないことがあり、これにより受信異常が生じることがある。従って、信号光の光強度を適度に減衰する光減衰器(Variable Optical Attenuators:VOA)を光受信モジュールの内部に配置することが望まれる。一方、光受信モジュールにおいては、各信号光成分が対応する受光素子によって電気信号に変換される。このとき、光分波器における各波長への分波が精度良く行われないことがある。光分波器における各波長への分波が精度良く行われないと、信号光成分に対して隣接する波長の信号光成分の一部が混入することがあり、各信号光成分のアイソレーションが低下する。従って、信号光の受信を正確に行うことができない可能性がある。
【0005】
本発明は、光分波器における各波長への分波を精度良く行い、各信号光成分間のアイソレーションの低下を抑制することができる光受信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一形態に係る光受信モジュールは、互いに波長が異なる複数の信号光成分を含む信号光を光ファイバから受け、それぞれの信号光成分を分波して電気信号に変換する光受信モジュールであって、光ファイバと光学的に接続され、信号光を複数の信号光成分に分波する光分波器と、光ファイバと光分波器との間の光路上に配置され、信号光の光強度を減衰させる光減衰器と、複数の信号光成分のそれぞれを電気信号に変換する複数の受光素子と、を備え、光分波器は、複数の信号光成分のそれぞれを選択的に透過する複数の誘電体多層膜を有し、各誘電体多層膜は、信号光の光軸と交差する第1方向に並んで配置され、光減衰器は、第1方向に交差する第2方向に移動して信号光を遮蔽するシャッタを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光分波器における各波長への分波を精度良く行い、各信号光成分間のアイソレーションの低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る光受信モジュールの内部構造を示す斜視図である。
図2図2は、図1の光受信モジュールの内部構造を示す平面図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿った線断面図である。
図4図4は、図1の光受信モジュールの信号光の光路を概略的に示す図である。
図5図5は、図1の光受信モジュールの光分波器の例を示す斜視図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、光減衰器の斜視図である。
図7図7は、図6の光減衰器のシャッタが信号光を遮る様子を概略的に示す図である。
図8図8は、光減衰器のシャッタの位置と信号光の位置との間にずれがある場合における遮蔽板が信号光を遮る様子を概略的に示す図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、信号光の回折をシミュレーションした結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る光受信モジュールは、互いに波長が異なる複数の信号光成分を含む信号光を光ファイバから受け、それぞれの信号光成分を分波して電気信号に変換する光受信モジュールであって、光ファイバと光学的に接続され、信号光を複数の信号光成分に分波する光分波器と、光ファイバと光分波器との間の光路上に配置され、信号光の光強度を減衰させる光減衰器と、複数の信号光成分のそれぞれを電気信号に変換する複数の受光素子と、を備え、光分波器は、複数の信号光成分のそれぞれを選択的に透過する複数の誘電体多層膜を有し、各誘電体多層膜は、信号光の光軸と交差する第1方向に並んで配置され、光減衰器は、第1方向に交差する第2方向に移動して信号光を遮蔽するシャッタを有する。
【0010】
この光受信モジュールは、光ファイバと光学的に接続されて信号光を複数の信号光成分に分波する光分波器と、光ファイバ及び光分波器の間の光路上において信号光の光強度を減衰させる光減衰器とを備える。光分波器は複数の信号光成分のそれぞれを選択的に透過させる複数の誘電体多層膜を有し、複数の誘電体多層膜は信号光の光軸に交差する第1方向に沿って配置される。また、光減衰器は、複数の誘電体多層膜が並ぶ第1方向と交差する第2方向に移動することによって信号光を遮蔽するシャッタを有する。ところで、光減衰器のシャッタが第1方向に移動して信号光を遮蔽する場合、信号光の一部がシャッタに遮蔽されると共に信号光が第1方向に移動することがあり、第1方向に移動した信号光の一部が誘電体多層膜を透過した後に隣接するチャネルに混入する懸念がある。これに対し、前述したように、シャッタが第1方向に交差する第2方向に移動して誘電体多層膜への信号光を遮断する場合、信号光が第1方向に移動しないので、信号光の一部が隣接する誘電体多層膜に混入することを回避することができる。従って、隣接する波長の信号光成分の一部が混入して各信号光成分のアイソレーションが低下することを回避することができるので、光分波器における各波長への分波を精度良く行うことができる。
【0011】
また、光分波器は、互いに平行な一対の端面を有し信号光を透過する光透過部材と、光透過部材の一方の端面に設けられた光反射材とを更に有し、複数の誘電体多層膜は、光透過部材の他方の端面上において第1方向に並んでいる。この場合、光ファイバから光減衰器を介して光分波器に入射した信号光が光透過部材を透過し、光透過部材を透過した信号光成分のうち、特定波長の信号光成分が誘電体多層膜を透過すると共に、特定波長以外の信号光成分は誘電体多層膜において反射する。誘電体多層膜において反射した信号光成分は、光反射材において反射し、その後、隣接する誘電体多層膜に入射する。このように、光反射材を備えることにより、誘電体多層膜からの信号光成分を反射させて隣接する誘電体多層膜に入射させることができる。
【0012】
[本願発明の実施形態の詳細]
本願発明の光受信モジュールの具体例を以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、下記の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲内における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解を容易にするため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る光受信モジュール1Aの内部構成を示す断面斜視図である。図1では、理解を容易にするために、パッケージの蓋部を外し、パッケージの側壁の一部を破断した状態を示している。図2は、光受信モジュール1Aの本体部3Aの内部構造を示す平面図である。図3は、図2のIII-III線に沿った線断面図である。光受信モジュール1Aは、例えば、光トランシーバのROSA(Receiver Optical Sub-Assembly)である。光受信モジュール1Aは、レセプタクル2及び本体部3Aを備える。
【0014】
本体部3Aは、直方体状の中空容器であるパッケージ11を備える。パッケージ11は、金属製の側壁11aと、金属製の底板11bとを有する。底板11bは、長方形状の平板である。底板11bは、方向A1、及び方向A1に交差(例えば直交)する方向A2に沿って延びる平面に沿って延びている。底板11bの材料は、例えば、銅モリブテン又は銅タングステン等の金属であり、熱伝導性が良い材料であることによって放熱性を高めることができる。側壁11aの天面は矩形枠状を呈しており、側壁11aは底板11bの周縁部において立設している。側壁11aは、方向A1と交差する面に沿って延びる一対の側壁11aa,11abを含む。一対の側壁11aa,11abは、方向A1に沿って並んでいる。側壁11aの底板11bとの反対側の開口は、図示しない蓋部によって密閉される。
【0015】
レセプタクル2は、方向A1に沿って延びる段付き円筒状の部材であって、一方の側壁11aaに配置されている。レセプタクル2には、信号光Lを伝搬する光ファイバF(図4参照)が接続される。レセプタクル2は、光コネクタのフェルールが挿入されるスリーブ4と、調芯可能に結合されるジョイントスリーブ5と、本体部3Aに固定されるホルダ6とを有する。スリーブ4、ジョイントスリーブ5及びホルダ6は、共に方向A1に沿って延びる円筒状を呈しており、方向A1に沿って並んでいる。
【0016】
方向A1のホルダ6の一端は、側壁11aaの開口に設けられたブッシュ7を介して側壁11aaに固定される。ホルダ6の他端には、ジョイントスリーブ5を介してスリーブ4が固定される。スリーブ4の内部には、光ファイバFを保持するフェルールが当接するスタブが配置される。ホルダ6の内部には、スタブから出射された信号光Lを平行化(コリメート)するレンズが配置される。ブッシュ7の内部には、光学窓8が配置される。光ファイバFから出射した信号光Lは、スタブを通ってレンズに達し、レンズによって平行化された後、光学窓8を透過してパッケージ11の内部に入り込む。
【0017】
本体部3Aは、フィードスルー13、キャリア部材15,16、光分波器17、反射器18、レンズアレイ19、光学素子20、プリアンプ回路22、配線用部材24及び光減衰器25を有する。キャリア部材15、光分波器17、反射器18、レンズアレイ19、光学素子20、プリアンプ回路22及び光減衰器25の各部品は、パッケージ11の内部に収容される。例えば、方向A2に沿って複数の光学素子20が配置される。
【0018】
フィードスルー13は、側壁11abに配置され、外部回路との電気的接続を行う。フィードスルー13は、例えば、複数のセラミック基板が積層されて形成され、側壁11abの開口に嵌め込まれて組み込まれる。側壁11abの外側に位置するフィードスルー13の一部には、外部回路との電気的な接続を行う複数の端子13aが設けられる。側壁11abの内側の複数の端子と、側壁11abの外側の複数の端子13aとは、フィードスルー13の内部に埋め込まれた配線によって互いに短絡している。
【0019】
キャリア部材16は、キャリア部材15の上に配置される。キャリア部材16は、方向A1及び方向A2に沿って延びる平面に沿って延在する平板状の部材である。キャリア部材16は、パッケージ11の底面11cと対向する平坦な裏面16bと、裏面16bの反対側に位置する平坦な表面16aとを有する。キャリア部材15は、パッケージ11の底面11cとキャリア部材16の裏面16bとの間に配置され、キャリア部材16の裏面16bを支持する。キャリア部材15は、キャリア部材16の方向A2の端部に位置する両側縁を支持する一対の支柱部15a,15bを有する。一対の支柱部15a,15bは、光分波器17を挟むと共に、それぞれ方向A1に沿って延びている。
【0020】
一対の支柱部15a,15bによって、キャリア部材16の裏面16bとキャリア部材15との間に光分波器17を配置する空間が形成される。キャリア部材15は、キャリア部材16の線膨張係数と近い線膨張係数を有する。キャリア部材16は、例えば、酸化アルミ(アルミナ)等のセラミックによって構成されている。キャリア部材15は、キャリア部材16と線膨張係数が近い酸化アルミ、窒化アルミ、銅モリブテン又は銅タングステン等によって構成される。
【0021】
光分波器17は、キャリア部材16の裏面16bに接着剤を介して固定されている。光分波器17は、光減衰器25を介して光ファイバFと光学的に結合される。光分波器17は、光減衰器25から出力された信号光L(図4参照)を、互いに波長が異なる複数の信号光成分に分波する。光分波器17は、キャリア部材16に支持される。
【0022】
反射器18は、キャリア部材16の裏面16bに接着剤を介して固定される。反射器18は、光分波器17から出力された複数の信号光成分のそれぞれを反射し、当該信号光成分のそれぞれを複数の光学素子20のそれぞれに導く。本実施形態では、複数の光学素子20は、反射器18の下方(方向A1及び方向A2の双方に交差する方向、及び底面11cの法線方向)に配置されている。反射器18は、方向A1に沿って光分波器17から到達した複数の信号光成分を下方に反射する。反射器18は、例えば、プリズムによって構成される。
【0023】
レンズアレイ19は、反射器18と複数の光学素子20との間の光路上に配置される。レンズアレイ19は、複数の凸レンズを有しており、複数の信号光成分のそれぞれを各光学素子20に向けて集光する。レンズアレイ19は、複数の光学素子20と一体的に組み付けられて底板11bの上方に配置される。レンズアレイ19と底板11bの間にはサブマウント26が介在しており、レンズアレイ19はサブマウント26を介して底板11bの上に配置される。
【0024】
各光学素子20は、対応する信号光成分のそれぞれを電気信号に変換する半導体素子である。各光学素子20は、パッケージ11の底面11cに設けられたサブマウント26の上に搭載されている。各光学素子20は、レンズアレイ19及び反射器18を介して光分波器17と光学的に結合される。各光学素子20は、プリアンプ回路22と電気的に接続されている。プリアンプ回路22は、例えば、トランスインピーダンスアンプ(TIA)を含んでいる。プリアンプ回路22は、複数の光学素子20とフィードスルー13の間に配置され、各光学素子20からの電流信号を電圧信号に変換する。プリアンプ回路22から出力された電圧信号は、フィードスルー13を介して光受信モジュール1Aの外部に出力される。
【0025】
光減衰器25は、光ファイバFから出力された信号光Lの光強度を減衰させる光学部品である。光減衰器25は、光ファイバFと光分波器17との間の信号光Lの光路上に配置される。光減衰器25による信号光Lの減衰量は、外部から光受信モジュール1Aに入力される電気的な制御信号によって制御される。光減衰器25は、方向A1においてレセプタクル2と並んで配置される。
【0026】
光減衰器25は、VOAキャリア23を介して配線用部材24の上部に搭載される。配線用部材24はパッケージ11の底面11c上に配置され、配線用部材24の一部はキャリア部材15とブッシュ7の間に配置される。VOAキャリア23は、板状の部材であって、VOAキャリア23の一方の面が光学窓8と対向するように配線用部材24の上に搭載される。光減衰器25は、光学窓8と光学的に結合され、光学窓8を透過する信号光Lを受ける。光減衰器25の詳細な構成については後述する。
【0027】
次に、光分波器17における分光方式について説明する。図4は、光減衰器25、光分波器17、レンズアレイ19及び光学素子20を通る信号光Lの光路を模式的に示す図である。信号光Lを伝搬する光ファイバFがスリーブ4に接続されると、光ファイバFから光受信モジュール1Aの内部に信号光Lが入力される。信号光Lは、互いに波長が異なる複数の信号光成分が多重化された信号光Lである。ホルダ6に保持されたレンズ6aは、光ファイバFから出力される信号光Lを平行化する。光減衰器25は、レンズ6aによって平行化された信号光Lの光強度を減衰する。
【0028】
光分波器17は、光透過部材31と、複数(例えば4つ)の波長フィルタとしての誘電体多層膜32a~32dと、光反射膜33(光反射材)とを有する。光透過部材31は、互いに対向する一対の端面31a,31bを有する。信号光Lは、一方の端面31aから光透過部材31の内部に入射する。端面31a及び端面31bは互いに平行に延びている。端面31aの法線、及び端面31bの法線は、信号光Lの光軸に対して傾斜している。
【0029】
一方の端面31aの一部(信号光Lが入射する部分以外の部分)には光反射膜33が設けられており、他方の端面31bには誘電体多層膜32a~32dが設けられている。誘電体多層膜32a~32dは、端面31bにおいて信号光Lの光軸と交差する方向に並んでいる。誘電体多層膜32a~32dのそれぞれは、信号光Lに含まれる複数の信号光成分のそれぞれを選択的に透過し、他の信号光成分を反射する。すなわち、誘電体多層膜32a~32dのそれぞれは、特定波長の信号光成分を透過し、特定波長以外の信号光成分を反射する。また、光反射膜33は、全ての波長の信号光Lを反射する。
【0030】
互いに波長が異なるλ,λ,λ,λ(λ>λ>λ>λ)の信号光成分のそれぞれが信号光Lに含まれる場合、誘電体多層膜32aは、λの信号光成分L1を透過すると共に、波長λ,λ,λ(λ以外)の各信号光成分を反射する。誘電体多層膜32aにおいて反射した波長λ,λ,λの信号光成分のそれぞれは、光反射膜33において反射し、誘電体多層膜32bに達する。
【0031】
誘電体多層膜32bは、波長λの信号光成分L2を透過し、波長λ,λ(λ以外)の信号光成分を反射する。誘電体多層膜32bにおいて反射した波長λ,λの各信号光成分は、光反射膜33において再び反射し、誘電体多層膜32cに達する。誘電体多層膜32cは、波長λの信号光成分L3を透過し、波長λ(λ以外)の信号光成分L4を反射する。
【0032】
誘電体多層膜32cにおいて反射した信号光成分L4は、光反射膜33において再び反射し、誘電体多層膜32dに達する。誘電体多層膜32dは、信号光成分L4を透過する。このように、信号光Lは複数の信号光成分L1~L4に分光される。信号光成分L1~L4のそれぞれは、レンズアレイ19によって集光され、それぞれ対応する光学素子20に入射する。
【0033】
図5は、光分波器17を示す斜視図である。図5に示されるように、光透過部材31は、直方体状を呈しており、前述した端面31a及び端面31bに加えて、互いに対向する一対の側面31c,31dと、互いに対向する一対の上面31e及び底面31fとを有する。上面31eは、キャリア部材16の裏面16bと対向し、例えば、接着剤を介して裏面16bに固定される。
【0034】
例えば、誘電体多層膜32a~32dのそれぞれは、信号光Lの光軸と交差する方向A3(第2方向)に長く延びる矩形状とされている。誘電体多層膜32a~32dのそれぞれの長手方向は方向A3であり、誘電体多層膜32a~32dのそれぞれの短手方向は方向A4(第1方向)である。方向A4は、誘電体多層膜32a~32dが並ぶ方向であって、信号光Lの光軸及び方向A3の双方に交差(例えば直交)する方向である。一例として、誘電体多層膜32a~32dのそれぞれの方向A4の幅W1は、誘電体多層膜32a~32dのそれぞれの長さW2よりも短く、幅W1は500μm以上且つ750μm以下であり、長さW2は1mmである。
【0035】
本実施形態において、方向A3は、パッケージ11の底面11cの法線が延びる方向(すなわちパッケージ11の高さ方向)と一致する。方向A4は、方向A3に直交すると共に、方向A2に対して傾斜する方向である。光透過部材31の端面31bは、方向A3及び方向A4に延びる平面に沿っている。誘電体多層膜32a~32dのそれぞれは、端面31bにおいて方向A4に沿って互いに隣接しつつ並んでおり、互いに接触している。
【0036】
図6(a)及び図6(b)は、光減衰器25を示す斜視図である。図6(a)及び図6(b)に示されるように、光減衰器25は、板状の本体25aと、本体25aに設けられた一対の端子25b,25cと、本体25aに形成された開口25dの内部に配置されたシャッタ25eとを有する。本体25aは方向A2及び方向A3に延びる平面に沿って延在しており、光減衰器25は開口25dの内部を信号光Lが通過するように配置される。
【0037】
端子25b,25cは開口25dに対して方向A3に一対に設けられており、一対の端子25b,25cの間に開口25dが設けられる。一対の端子25b,25cに印加される電圧に応じて発生する静電気力により、開口25dの内部でシャッタ25eが方向A3(第2方向)に沿って移動する。シャッタ25eは、例えば、円形状とされている。シャッタ25eの直径は、例えば、信号光Lの光径の1倍以上且つ2倍以下である。
【0038】
図6(a)はシャッタ25eの位置が信号光Lの光路上にない状態を示しており、図6(b)はシャッタ25eの位置が信号光Lの光路上にある状態を示している。図6(a)に示される状態では、信号光Lは減衰されることなく光減衰器25を通過する。一方、図6(b)に示される状態では、信号光Lは遮蔽され、例えば信号光Lは完全に遮蔽されて信号光Lの減衰率は100%となっている。シャッタ25eの位置は、図6(a)及び図6(b)に示される各位置の間で所望の減衰量に応じて調節される。
【0039】
ところで、図8の参考例の光減衰器に示されるように、シャッタ125eの方向A2の位置が信号光Lの方向A2の位置からずれている場合、シャッタ125eが信号光Lに向かって方向A3に移動しても十分に信号光Lを減衰できないことが想定される。この場合、シャッタ125eを信号光Lに向かって方向A3に移動してもシャッタ125eによって信号光Lを完全に遮蔽することができず、方向A2に信号光Lの漏れ光が生じうる。
【0040】
これに対し、本実施形態の光減衰器25は、図6及び図7に示されるように、シャッタ25eの方向A2の位置が信号光Lの方向A2の位置と合うように設けられる。シャッタ25eの方向A2の位置が信号光Lの方向A2の位置と一致していることにより、シャッタ25eが信号光Lに向かって方向A3に移動するときに、信号光Lを効果的に減衰させることができる。従って、シャッタ25eを信号光Lに向かって方向A3に移動してシャッタ25eによって信号光Lを完全に遮蔽することができるので、方向A2への信号光Lの漏れ光を抑制することができる。
【0041】
一対の端子25b,25cのそれぞれに対応する一対の配線パターンがVOAキャリア23に設けられる。図2に示されるように、光減衰器25がVOAキャリア23に固定されるときに、光減衰器25の一対の端子25b,25cのそれぞれはVOAキャリア23の当該配線パターンに導電接合される。VOAキャリア23の上面には、当該配線パターンから引き出された一対のボンディングパッド23a,23bが設けられている。ボンディングパッド23a,23bは、ボンディングワイヤ及び配線用部材24上の配線を介して、フィードスルー13の対応する端子とそれぞれ電気的に接続される。
【0042】
ところで、従来の光受信モジュールでは、複数の誘電体多層膜を備える光分波器において各波長への分波が精度よく行われないという事象が起こりうる。以下では、この事象について説明する。例えば、図5に示されるように複数の誘電体多層膜が光分波器に設けられた光受信モジュールでは、複数の誘電体多層膜が並ぶ方向A4に沿って光減衰器のシャッタが移動することがある。この従来の光受信モジュールでは、光減衰器のシャッタを方向A4に移動させることによって光分波器への入射光を減衰している。このように、光減衰器のシャッタが複数の誘電体多層膜が並ぶ方向A4に移動して信号光を遮蔽する場合、信号光の一部が光減衰器に遮蔽されると共に信号光が方向A4に移動することがあり、方向A4に移動した信号光の一部が誘電体多層膜を透過した後に隣接するチャネルに混入する懸念がある。
【0043】
図9(a)及び図9(b)は、前述した従来の光受信モジュールにおける信号光の回折の様子を測定した結果を示す図である。図9(a)及び図9(b)の横軸はシャッタの方向A4(X方向)の位置(単位:mm)を示しており、縦軸は方向A3(Y方向)の位置(単位:mm)を示している。より具体的には、図9(a)及び図9(b)は、信号光の中心軸とシャッタの中心点とがX方向にそれぞれ150μm、200μm離れている状態を示している。
【0044】
図9(a)及び図9(b)に示されるように、信号光の中心軸とシャッタの中心点とが近づくに従って、信号光の回折の程度が大きくなり、信号光のX方向への光径が大きくなっていることがわかる。従って、例えば図9(a)に示される信号光が誘電体多層膜に入射するときには、X方向に拡がった信号光の一部が誘電体多層膜の縁部近傍に入射する。X方向に拡がった信号光の一部が誘電体多層膜の縁部近傍に入射すると、波長ごとの分波が精度よく行われないと共に、各信号光成分に対して隣接する波長の信号光成分の一部が混入する。このように隣接する波長の信号光成分の一部が混入して、各信号光成分間のアイソレーションが低下するという事象が発生しうる。これに対し、本実施形態に係る光受信モジュール1Aでは、シャッタ25eを方向A3に移動させることにより上記の事象の発生が抑制される。
【0045】
続いて、本実施形態に係る光受信モジュール1Aから得られる作用効果について詳細に説明する。図4及び図5に示されるように、光受信モジュール1Aは、光ファイバFと光学的に接続されて信号光Lを複数の信号光成分L1~L4に分波する光分波器17と、光ファイバF及び光分波器17の間の光路上において信号光Lの光強度を減衰させる光減衰器25とを備える。光分波器17は複数の信号光成分L1~L4のそれぞれを選択的に透過させる複数の誘電体多層膜32a~32dを有し、複数の誘電体多層膜32a~32dは信号光Lの光軸に交差する方向A4に沿って配置される。また、光減衰器25は複数の誘電体多層膜32a~32dが並ぶ方向A4と交差する方向A3に移動することによって信号光Lを遮蔽するシャッタ25eを有する。
【0046】
前述したように、光減衰器25のシャッタ25eが方向A4に交差する方向A3に移動して誘電体多層膜32aへの信号光Lを遮断する場合、信号光Lが方向A4に移動することを抑制することができる。よって、信号光Lの一部が隣接するチャネル(光軸上の受光素子)に混入することを回避することができる。従って、隣接する波長の信号光成分L1~L4の一部が混入して各信号光成分L1~L4のアイソレーションが低下することを回避することができるので、光分波器17における各波長への分波を精度良く行うことができる。
【0047】
また、光分波器17は、互いに平行な一対の端面31a,31bを有し信号光Lを透過する光透過部材31と、光透過部材31の一方の端面31aに設けられた光反射膜33とを更に有し、複数の誘電体多層膜32a~32dは、光透過部材31の他方の端面31b上において方向A4に並んでいる。よって、光ファイバFから光減衰器25を介して光分波器17に入射した信号光Lが光透過部材31を透過し、光透過部材31を透過した信号光成分L1~L4のうち、特定波長の信号光成分が誘電体多層膜32a~32dのそれぞれを透過すると共に、特定波長以外の信号光成分は誘電体多層膜32a~32cにおいて反射する。誘電体多層膜32a~32cにおいて反射した信号光成分は、光透過部材31を透過して光反射膜33に達し光反射膜33において反射した後、隣接する誘電体多層膜32b~32dに入射する。
【0048】
このように、光反射膜33を備えることにより、誘電体多層膜32a~32cからの信号光成分を反射させて隣接する誘電体多層膜32b~32dに入射させることができる。すなわち、光透過部材31に信号光Lが入射すると、信号光Lが一対の端面31a,31b間において反射を繰り返すと共に、各信号光成分L1~L4が各誘電体多層膜32a~32dを透過する。よって、複数の信号光成分L1~L4を分光することができる。なお、図示は省略するが、光分波器17は、光透過部材31のような直方体状の光透過部材を用いずに、個々に光反射膜33又は誘電体多層膜32a~32dが設けられる光透過部材をキャリア基板上に個別に並べることによって構成することもできる。
【0049】
以上、実施形態に係る光受信モジュールについて説明したが、本発明に係る光受信モジュールは、前述の実施形態に限定されず種々の変形が可能である。すなわち、光受信モジュールの各部の構成は、特許請求の範囲の要旨の範囲内において適宜変更可能である。例えば、前述の実施形態では、円形状のシャッタ25eについて説明したが、例えば、シャッタの形状は、四角形状であってもよく、適宜変更可能である。また、前述の実施形態では、板状の本体25aを備えた光減衰器25について説明したが、光減衰器の形状は板状に限定されず適宜変更可能である。このように、光受信モジュールの構成部品の形状、大きさ及び配置態様は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
1A…光受信モジュール、2…レセプタクル、3A…本体部、4…スリーブ、5…ジョイントスリーブ、6…ホルダ、7…ブッシュ、8…光学窓、11…パッケージ、11a,11aa,11ab…側壁、11c…底面、13…フィードスルー、13a…端子、15,16…キャリア部材、15a,15b…支柱部、16a…表面、16b…裏面、17…光分波器、18…反射器、19…レンズアレイ、20…光学素子、22…プリアンプ回路、23…VOAキャリア、23a,23b…ボンディングパッド、24…配線用部材、25…光減衰器、25a…本体、25b,25c…端子、25d…開口、25e…シャッタ、26…サブマウント、31…光透過部材、31a,31b…端面、31c,31d…側面、31e…上面、31f…底面、32a~32d…誘電体多層膜、33…光反射膜、A1、A2,A3,A4…方向、F…光ファイバ、L…信号光、L1~L4…信号光成分、W1…幅、W2…長さ。
図1
図2
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図6
図7
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図9