(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】産業車両のブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 13/12 20060101AFI20220405BHJP
B60T 13/14 20060101ALI20220405BHJP
F04B 49/02 20060101ALI20220405BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B60T13/12
B60T13/14
F04B49/02 311
F04B49/06 311
(21)【出願番号】P 2018130903
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2020-10-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち人工知能未来農業創造プロジェクト)」、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】野々垣 保紀
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-156308(JP,A)
【文献】特開平07-205781(JP,A)
【文献】特開平07-186933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00-13/74
F04B 49/02
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転を行う産業車両に具備されたブレーキペダルを押すことによりブレーキユニットを動作させ、前記産業車両にブレーキをかける産業車両のブレーキシステムにおいて、
作動油により駆動され、前記ブレーキペダルを押圧する油圧シリンダと、
タンク内の作動油を吸い込んで吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出される作動油を蓄圧するアキュムレータと、
前記アキュムレータに蓄圧された作動油を前記油圧シリンダに供給する供給位置と、前記油圧シリンダからの作動油を前記タンクに戻す戻り位置とを切り換える電磁切換弁と
、
前記電磁切換弁のソレノイド操作部と接続された電源と、
前記電源と前記ソレノイド操作部との間に接続され、前記電源から出力される電流のスイッチングを行うスイッチング部品と、
前記産業車両の自動運転を制御する自動運転コントローラとを備え、
前記電磁切換弁は、前記ソレノイド操作部が通電されると前記戻り位置となり、前記ソレノイド操作部の通電が解除されると前記供給位置となり、
前記スイッチング部品は、前記自動運転コントローラから送出されるON/OFF信号によって制御され、
前記スイッチング部品がONになると、前記ソレノイド操作部が通電されることで前記電磁切換弁が前記戻り位置となり、
前記スイッチング部品がOFFになると、前記ソレノイド操作部の通電が解除されることで前記電磁切換弁が前記供給位置となり、
前記電源が遮断されると、前記ソレノイド操作部の通電が解除されることで前記電磁切換弁が前記供給位置となる産業車両のブレーキシステム。
【請求項2】
前記電磁切換弁は、前記アキュムレータから前記油圧シリンダへの作動油の供給を許容すると共に、前記油圧シリンダから前記タンクへの作動油の戻りを遮断する前記供給位置と、前記油圧シリンダから前記タンクへの作動油の戻りを許容すると共に、前記アキュムレータから前記油圧シリンダへの作動油の供給を遮断する前記戻り位置とを切り換える3ウェイバルブである請求項
1記載の産業車両のブレーキシステム。
【請求項3】
前記電磁切換弁は、前記アキュムレータから前記油圧シリンダへの作動油の供給を許容する第1開位置と、前記アキュムレータから前記油圧シリンダへの作動油の供給を遮断する第1閉位置とを切り換える第1開閉弁と、前記油圧シリンダから前記タンクへの作動油の戻りを許容する第2開位置と、前記油圧シリンダから前記タンクへの作動油の戻りを遮断する第2閉位置とを切り換える第2開閉弁とを有し、
前記第1開位置及び前記第2閉位置は、前記供給位置を構成し、
前記第1閉位置及び前記第2開位置は、前記戻り位置を構成する請求項
1記載の産業車両のブレーキシステム。
【請求項4】
前記油圧ポンプを駆動する駆動源と、
前記アキュムレータの圧力を検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部により検出された前記アキュムレータの圧力が第1設定圧以下であるときは、前記油圧ポンプを起動させるように前記駆動源を制御し、前記圧力検出部により検出された前記アキュムレータの圧力が第2設定圧以上であるときは、前記油圧ポンプを停止させるように前記駆動源を制御する制御部とを備える請求項1~
3の何れか一項記載の産業車両のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両のブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両等に使用されるブレーキシステムとしては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載のブレーキシステムは、ブレーキペダルと、このブレーキペダルにロッドを介して連結された真空倍力装置及びマスタシリンダと、ブレーキペダルと真空倍力装置との間に配置され、ロッドと連結されたピストンを有する第1油圧シリンダと、この第1油圧シリンダに油圧配管を介して接続された第2油圧シリンダと、この第2油圧シリンダのピストンを押す可動部材と、可動部材を駆動するモータとを備えている。運転者がブレーキペダルを踏んでいない状態で、モータが回転駆動すると、可動部材が第2油圧シリンダのピストンと共に前進し、第2油圧シリンダ、油圧配管及び第1油圧シリンダの内部に油圧が発生する。このため、第1油圧シリンダのピストンが前進してロッドを押すことにより、真空倍力装置を稼働させ、マスタシリンダにブレーキ油圧が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、ブレーキペダルが踏まれていない状態でも産業車両に自動的にブレーキをかけるために、真空倍力装置及びマスタシリンダを含むブレーキユニットに可動部材及びモータを追加する必要がある。このため、市販されている産業車両のブレーキユニットを改造すると共に、改造に伴うブレーキユニットの信頼性の評価を行う必要性が生じる。
【0005】
本発明の目的は、ブレーキユニットに改造を加えることなく、産業車両に自動的にブレーキをかけることができる産業車両のブレーキシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、産業車両に具備されたブレーキペダルを押すことによりブレーキユニットを動作させ、産業車両にブレーキをかける産業車両のブレーキシステムにおいて、作動油により駆動され、ブレーキペダルを押圧する油圧シリンダと、タンク内の作動油を吸い込んで吐出する油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される作動油を蓄圧するアキュムレータと、アキュムレータに蓄圧された作動油を油圧シリンダに供給する供給位置と、油圧シリンダからの作動油をタンクに戻す戻り位置とを切り換える電磁切換弁とを備える。
【0007】
このようなブレーキシステムにおいては、電磁切換弁が供給位置に切り換わると、アキュムレータに蓄圧された作動油が油圧シリンダに供給され、油圧シリンダによりブレーキペダルが押圧される。すると、ブレーキユニットが動作して、産業車両にブレーキがかかるようになる。このように産業車両に具備されたブレーキユニットに改造を加えることなく、産業車両に自動的にブレーキをかけることができる。
【0008】
電磁切換弁は、電磁切換弁のソレノイド操作部が通電されると戻り位置となり、ソレノイド操作部の通電が解除されると供給位置となってもよい。このような構成では、異常発生時または非常時に電源が遮断されると、電磁切換弁のソレノイド操作部の通電が解除されるため、電磁切換弁が供給位置に切り換わり、アキュムレータから油圧シリンダに作動油が供給されるようになる。従って、電源が遮断されたときは、ブレーキユニットにより産業車両にブレーキがかかった状態となる。
【0009】
電磁切換弁は、アキュムレータから油圧シリンダへの作動油の供給を許容すると共に、油圧シリンダからタンクへの作動油の戻りを遮断する供給位置と、油圧シリンダからタンクへの作動油の戻りを許容すると共に、アキュムレータから油圧シリンダへの作動油の供給を遮断する戻り位置とを切り換える3ウェイバルブであってもよい。この場合には、電磁切換弁の部品点数が1つで済むため、電磁切換弁の構成を単純化することができる。
【0010】
電磁切換弁は、アキュムレータから油圧シリンダへの作動油の供給を許容する第1開位置と、アキュムレータから油圧シリンダへの作動油の供給を遮断する第1閉位置とを切り換える第1開閉弁と、油圧シリンダからタンクへの作動油の戻りを許容する第2開位置と、油圧シリンダからタンクへの作動油の戻りを遮断する第2閉位置とを切り換える第2開閉弁とを有し、第1開位置及び第2閉位置は、供給位置を構成し、第1閉位置及び第2開位置は、戻り位置を構成してもよい。この場合には、電磁切換弁を構成する第1開閉弁及び第2開閉弁として通常の安価な電磁弁が使用可能となるため、電磁切換弁のコストを抑えることができる。
【0011】
産業車両のブレーキシステムは、油圧ポンプを駆動する駆動源と、アキュムレータの圧力を検出する圧力検出部と、圧力検出部により検出されたアキュムレータの圧力が第1設定圧以下であるときは、油圧ポンプを起動させるように駆動源を制御し、圧力検出部により検出されたアキュムレータの圧力が第2設定圧以上であるときは、油圧ポンプを停止させるように駆動源を制御する制御部とを備えてもよい。この場合には、アキュムレータにおける作動油の蓄圧状態が十分に良好に保たれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブレーキユニットに改造を加えることなく、産業車両に自動的にブレーキをかけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る産業車両のブレーキシステムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示されたリレー制御器により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る産業車両のブレーキシステムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る産業車両のブレーキシステムを示す概略構成図である。
図1において、本実施形態のブレーキシステム1は、例えば産業車両であるカウンタバランス式の電動フォークリフト2に搭載されている。ブレーキシステム1は、電動フォークリフト2を自動運転させるために搭載されている。なお、電動フォークリフト2には、自動運転に関するシステムとして、ブレーキシステム1の他に操舵システム及び駆動システム等も搭載されている。
【0016】
ブレーキシステム1は、作業者がブレーキペダル3(後述)を踏み込むことによって電動フォークリフト2を停止させる作業と同じ作用を行う。なお、電動フォークリフト2には、電動フォークリフト2が減速する際における駆動モータによる回生ブレーキもある。電動フォークリフト2の自動運転では、2つのブレーキが併用されている。回生ブレーキは、主にアクセルペダル(図示せず)を戻すことによって行うブレーキである。本実施形態では、回生ブレーキについては省略し、ブレーキペダル3を押すことによるブレーキ、いわゆるメカブレーキに特化して説明する。
【0017】
電動フォークリフト2は、ブレーキペダル3と、ブレーキユニット4とを備えている。ブレーキペダル3は、作業者が運転する時(手動運転時)に作業者により踏み込み操作が行われる踏み込み部3aを有している。作業者により踏み込み部3aが踏み込まれると、ブレーキペダル3が押される。
【0018】
ブレーキユニット4は、ブレーキペダル3が押されると動作する。ブレーキユニット4は、電動フォークリフト2の車輪(図示せず)を制動させるブレーキ装置9と、このブレーキ装置9を作動させるマスターシリンダ10とを有している。
【0019】
マスターシリンダ10は、シリンダチューブ11と、このシリンダチューブ11内に配置されたピストン12と、このピストン12に固定されたピストンロッド13と、シリンダチューブ11内におけるピストンロッド13の反対側(基端側)に配置されたバネ14とを有している。ピストンロッド13の先端は、ブレーキペダル3の裏面と係合する。ブレーキペダル3が押されると、バネ14の付勢力に抗してピストンロッド13が押され、マスターシリンダ10から作動油が流れ出る。マスターシリンダ10から出た作動油はブレーキ装置9に供給され、ブレーキ装置9が作動する。
【0020】
ブレーキシステム1は、ブレーキペダル3を押すことによりブレーキユニット4を動作させ、電動フォークリフト2にブレーキをかけるシステムである。ブレーキシステム1は、油圧シリンダ5と、油圧ポンプ6と、アキュムレータ7と、電磁切換弁8とを備えている。
【0021】
油圧シリンダ5は、電動フォークリフト2の車体に固定されている。油圧シリンダ5は、作動油により駆動され、ブレーキペダル3を押圧する。
【0022】
油圧シリンダ5は、シリンダチューブ15と、このシリンダチューブ15内に配置されたピストン16と、このピストン16に固定されたピストンロッド17と、シリンダチューブ15内におけるピストンロッド17側(先端側)に配置されたバネ18とを有している。ピストンロッド17の先端は、ブレーキペダル3の表面の中央部に当接している。
【0023】
油圧ポンプ6は、駆動源である駆動モータ19により駆動される。油圧ポンプ6は、タンク20内に貯留された作動油を吸い込んで吐出する。油圧ポンプ6の吐出口6aとタンク20との間の流路21には、リリーフ弁22が配設されている。
【0024】
アキュムレータ7は、油圧ポンプ6から吐出される作動油を蓄圧する。アキュムレータ7は、油圧ポンプ6の吐出口6aと流路23を介して接続されている。流路23には、油圧ポンプ6側からアキュムレータ7側への作動油の流れのみを許容するチェック弁24が配設されている。
【0025】
電磁切換弁8は、アキュムレータ7及びタンク20と油圧シリンダ5との間に配置されている。電磁切換弁8とアキュムレータ7とは、流路25を介して接続されている。電磁切換弁8とタンク20とは、流路26を介して接続されている。電磁切換弁8と油圧シリンダ5とは、流路27を介して接続されている。電磁切換弁8は、アキュムレータ7に蓄圧された作動油を油圧シリンダ5に供給する供給位置8a(図示の位置)と、油圧シリンダ5からの作動油をタンク20に戻す戻り位置8bとを切り換える。
【0026】
具体的には、電磁切換弁8は、作動油が漏れにくいノンリーク型の3ウェイバルブである。電磁切換弁8は、アキュムレータ7から油圧シリンダ5への作動油の供給を許容すると共に、油圧シリンダ5からタンク20への作動油の戻りを遮断する供給位置8aと、油圧シリンダ5からタンク20への作動油の戻りを許容すると共に、アキュムレータ7から油圧シリンダ5への作動油の供給を遮断する戻り位置8bとを切り換える。
【0027】
電磁切換弁8は、ソレノイド操作部28を有している。ソレノイド操作部28が通電されると、電磁切換弁8は戻り位置8bとなる。ソレノイド操作部28の通電が解除されると、電磁切換弁8は供給位置8aとなる。
【0028】
ソレノイド操作部28は、バルブリレー29及びコンタクタ30を介して電動フォークリフト2の主電源31と接続されている。バルブリレー29は、主電源31から出力される電流のスイッチングを行う。バルブリレー29は、電動フォークリフト2の自動運転を制御する自動運転コントローラ32からのON/OFF信号によって制御される。自動運転コントローラ32からON信号が送出されると、バルブリレー29がONとなり、ソレノイド操作部28が通電される。自動運転コントローラ32からOFF信号が送出されると、バルブリレー29がOFFとなり、ソレノイド操作部28の通電が解除される。
【0029】
コンタクタ30には、非常停止回路33が接続されている。コンタクタ30は、非常停止回路33に非常停止信号が入力されると、主電源31から出力される電流を強制的に遮断する。電動フォークリフト2または作業者の無線携帯端末に設けられた非常停止ボタン34が操作されると、非常停止ボタン34から非常停止回路33に非常停止信号が送られる。また、自動運転コントローラ32から非常停止回路33に非常停止信号が送られることもある。
【0030】
上記の駆動モータ19は、ポンプリレー35及びコンタクタ30を介して主電源31と接続されている。ポンプリレー35は、主電源31から出力される電流のスイッチングを行う。
【0031】
また、ブレーキシステム1は、圧力センサ36と、リレー制御器37とを備えている。圧力センサ36は、アキュムレータ7の圧力を検出する圧力検出部である。圧力センサ36は、流路23に接続されている。リレー制御器37は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。リレー制御器37は、圧力センサ36の検出値に基づいてポンプリレー35を制御する制御部である。
【0032】
図2は、リレー制御器37により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
図2において、リレー制御器37は、まず圧力センサ36の検出値を取得する(手順S101)。
【0033】
そして、リレー制御器37は、圧力センサ36の検出値に基づいて、アキュムレータ7の圧力が下限設定圧(第1設定圧)以下であるかどうかを判断する(手順S102)。下限設定圧は、予め実験等により決められている。
【0034】
リレー制御器37は、アキュムレータ7の圧力が下限設定圧以下であると判断したときは、ポンプリレー35をON制御し(手順S103)、手順S101に戻る。すると、駆動モータ19が通電されるため、油圧ポンプ6が起動し、油圧ポンプ6から吐出された作動油がアキュムレータ7に供給されて蓄圧される。
【0035】
リレー制御器37は、手順S102でアキュムレータ7の圧力が下限設定圧以下でないと判断したときは、圧力センサ36の検出値に基づいて、アキュムレータ7の圧力が上限設定圧(第2設定圧)以上であるかどうかを判断する(手順S104)。上限設定圧は、下限設定圧よりも大きい値であり、予め実験等により決められている。
【0036】
リレー制御器37は、アキュムレータ7の圧力が上限設定圧以上であると判断したときは、ポンプリレー35をOFF制御し(手順S105)、手順S101に戻る。すると、駆動モータ19の通電が解除されるため、油圧ポンプ6が停止し、油圧ポンプ6からアキュムレータ7に作動油が供給されなくなる。
【0037】
リレー制御器37は、手順S104でアキュムレータ7の圧力が上限設定圧以上でないと判断したときは、手順S103,S105を実行せずに手順S101に戻る。
【0038】
電動フォークリフト2の自動運転時に、自動運転コントローラ32からOFF信号が送出されると、バルブリレー29がOFFとなり、電磁切換弁8のソレノイド操作部28が通電されないため、電磁切換弁8が供給位置8aに切り換えられる。すると、アキュムレータ7に蓄圧された作動油が流路25,27を流れて油圧シリンダ5に供給され、油圧シリンダ5のピストンロッド17がバネ18の付勢力に抗してブレーキペダル3を押す。ブレーキペダル3が押されると、ブレーキペダル3がマスターシリンダ10のピストンロッド13をバネ14の付勢力に抗して押すため、マスターシリンダ10からブレーキ装置9に作動油が供給され、ブレーキ装置9が作動する。これにより、電動フォークリフト2は、ブレーキがかかった状態となる。
【0039】
自動運転コントローラ32からON信号が出力されると、バルブリレー29がONとなり、電磁切換弁8のソレノイド操作部28が通電されるため、電磁切換弁8が戻り位置8bに切り換えられる。すると、油圧シリンダ5の作動油が流路27,26を流れてタンク20に戻る。従って、油圧シリンダ5のピストンロッド17によるブレーキペダル3の押圧が解除され、ブレーキペダル3によるマスターシリンダ10のピストンロッド13の押圧が解除されるため、マスターシリンダ10からブレーキ装置9に作動油が供給されず、ブレーキ装置9が作動しない。これにより、電動フォークリフト2は、ブレーキが解除された状態となる。
【0040】
また、電動フォークリフト2の走行中に異常等が発生することで、例えば非常停止ボタン34が操作されると、コンタクタ30により主電源31が遮断される。従って、電磁切換弁8のソレノイド操作部28の通電が強制的に解除されるため、電磁切換弁8が供給位置8aに切り換えられる。これにより、電動フォークリフト2は、上述したようにブレーキがかかった状態となり、自動的に減速及び停止する。
【0041】
以上のように本実施形態にあっては、電磁切換弁8が供給位置8aに切り換わると、アキュムレータ7に蓄圧された作動油が油圧シリンダ5に供給され、油圧シリンダ5によりブレーキペダル3が押圧される。すると、ブレーキユニット4が動作して、電動フォークリフト2にブレーキがかかるようになる。このように電動フォークリフト2に具備されたブレーキユニット4に改造を加えることなく、電動フォークリフト2に自動的にブレーキをかけることができる。これにより、ブレーキユニット4の改造に伴うブレーキユニット4の信頼性の評価を行う必要がない。
【0042】
また、本実施形態では、電磁切換弁8は、ソレノイド操作部28が通電されると戻り位置8bとなり、ソレノイド操作部28の通電が解除されると供給位置8aとなる。このような構成により、異常発生時または非常時に主電源31が遮断されると、電磁切換弁8のソレノイド操作部28の通電が解除されるため、電磁切換弁8が供給位置8aに切り換わり、アキュムレータ7から油圧シリンダ5に作動油が供給されるようになる。従って、主電源31が遮断されたときは、ブレーキユニット4により電動フォークリフト2にブレーキがかかった状態となる。
【0043】
また、本実施形態では、電磁切換弁8として3ウェイバルブを使用するので、電磁切換弁8の部品点数が1つで済む。従って、電磁切換弁8の構成を単純化することができる。
【0044】
また、本実施形態では、主電源31が遮断されると、ブレーキユニット4により電動フォークリフト2にブレーキがかかった状態となると共に、電磁切換弁8としてノンリーク型のバルブを使用するので、電動フォークリフト2にパーキングブレーキをかける必要がない。
【0045】
また、本実施形態では、アキュムレータ7の圧力が下限設定圧以下であるときは、油圧ポンプ6を起動させるように駆動モータ19が制御され、アキュムレータ7の圧力が上限設定圧以上であるときは、油圧ポンプ6を停止させるように駆動モータ19が制御されるので、アキュムレータ7における作動油の蓄圧状態が十分に良好に保たれる。
【0046】
図3は、本発明の第2実施形態に係る産業車両のブレーキシステムを示す概略構成図である。
図3において、本実施形態のブレーキシステム1は、上記の第1実施形態における電磁切換弁8に代えて、電磁切換弁40を備えている。
【0047】
電磁切換弁40は、アキュムレータ7と油圧シリンダ5との間に配置された開閉弁41(第1開閉弁)と、油圧シリンダ5とタンク20との間に配置された開閉弁42(第2開閉弁)とを有している。開閉弁41とアキュムレータ7とは、流路43を介して接続されている。開閉弁41と油圧シリンダ5とは、流路44を介して接続されている。開閉弁42と油圧シリンダ5とは、流路45を介して接続されている。開閉弁42とタンク20とは、流路46を介して接続されている。
【0048】
開閉弁41,42は、ノンリーク型の電磁弁である。開閉弁41は、アキュムレータ7から油圧シリンダ5への作動油の供給を許容する開位置41a(第1開位置)と、アキュムレータ7から油圧シリンダ5への作動油の供給を遮断する閉位置41b(第1閉位置)とを切り換える。開閉弁42は、油圧シリンダ5からタンク20への作動油の戻りを許容する開位置42a(第2開位置)と、油圧シリンダ5からタンク20への作動油の戻りを遮断する閉位置42b(第2閉位置)とを切り換える。
【0049】
開閉弁41の開位置41a及び開閉弁42の閉位置42bは、電磁切換弁40においてアキュムレータ7に蓄圧された作動油を油圧シリンダ5に供給する供給位置を構成している。開閉弁41の閉位置41b及び開閉弁42の開位置42aは、電磁切換弁40において油圧シリンダ5からの作動油をタンク20に戻す戻り位置を構成している。
【0050】
開閉弁41は、ソレノイド操作部47を有している。ソレノイド操作部47が通電されると、開閉弁41は閉位置41bとなる。ソレノイド操作部47の通電が解除されると、開閉弁41は開位置41aとなる。開閉弁42は、ソレノイド操作部48を有している。ソレノイド操作部48が通電されると、開閉弁42は開位置42aとなる。ソレノイド操作部48の通電が解除されると、開閉弁42は閉位置42bとなる。ソレノイド操作部47,48は、バルブリレー29及びコンタクタ30を介して主電源31と接続されている。
【0051】
開閉弁41のソレノイド操作部47及び開閉弁42のソレノイド操作部48が通電されないことで、開閉弁41が開位置41aに切り換えられると共に開閉弁42が閉位置42bに切り換えられると、アキュムレータ7に蓄圧された作動油が流路43,44を流れて油圧シリンダ5に供給される。このため、電動フォークリフト2は、上述したようにブレーキがかかった状態となる。
【0052】
開閉弁41のソレノイド操作部47及び開閉弁42のソレノイド操作部48が通電されることで、開閉弁41が閉位置41bに切り換えられると共に開閉弁42が開位置42aに切り換えられると、油圧シリンダ5の作動油が流路45,46を流れてタンク20に戻る。このため、電動フォークリフト2は、上述したようにブレーキが解除された状態となる。
【0053】
このような本実施形態においても、電動フォークリフト2に具備されたブレーキユニット4に改造を加えることなく、電動フォークリフト2に自動的にブレーキをかけることができる。また、主電源31が遮断されたときは、ブレーキユニット4により電動フォークリフト2にブレーキがかかった状態となる。
【0054】
また、本実施形態では、電磁切換弁40を構成する開閉弁41,42として通常の安価な電磁弁が使用可能となるため、電磁切換弁40のコストを抑えることができる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、非常停止回路33に非常停止信号が入力されると、コンタクタ30により電動フォークリフト2の主電源31が遮断されるが、自動運転コントローラ32専用の電源が具備されている場合には、非常停止回路33に非常停止信号が入力されると、自動運転コントローラ32専用の電源も遮断されることになる。
【0056】
また、上記実施形態では、自動運転コントローラ32からのON/OFF信号によって制御されるバルブリレー29が設けられているが、特にそのようなバルブリレー29を設けなくてもよい。この場合、非常停止時には、コンタクタ30によって主電源31が強制的に遮断されるため、電磁切換弁のソレノイド操作部が通電されず、アキュムレータ7から油圧シリンダ5に作動油が供給され、結果的に電動フォークリフト2にブレーキがかかる。
【0057】
また、上記実施形態のブレーキシステム1は、自動運転を行う電動フォークリフト2に搭載されているが、電動フォークリフト2は、作業者による手動運転と自動運転とが切り替え可能であってもよい。この場合には、油圧シリンダ5は、作業者によるブレーキペダル3の踏み込み動作の妨げにならない箇所に配置される。
【0058】
また、上記実施形態のブレーキシステム1は、バッテリの電力により駆動される電動フォークリフト2に搭載されているが、本発明は、エンジンにより駆動されるフォークリフトにも適用可能である。
【0059】
さらに、上記実施形態のブレーキシステム1は、電動フォークリフト2に搭載されているが、本発明は、ブレーキペダルが具備されていれば、フォークリフト以外の産業車両(例えばトーイングトラクタ等)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…ブレーキシステム、2…電動フォークリフト(産業車両)、3…ブレーキペダル、4…ブレーキユニット、5…油圧シリンダ、6…油圧ポンプ、7…アキュムレータ、8…電磁切換弁、8a…供給位置、8b…戻り位置、19…駆動モータ(駆動源)、20…タンク、28…ソレノイド操作部、36…圧力センサ(圧力検出部)、37…リレー制御器(制御部)、40…電磁切換弁、41…開閉弁(第1開閉弁)、41a…開位置(第1開位置)、41b…閉位置(第1閉位置)42…開閉弁(第2開閉弁)、42a…開位置(第2開位置)、42b…閉位置(第2閉位置)、47,48…ソレノイド操作部。