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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】車両の開閉構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/12 20060101AFI20220405BHJP
   E06B 9/02 20060101ALI20220405BHJP
   B62D 33/04 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B60J5/12
E06B9/02 A
B62D33/04 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018152399
(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公開番号】P2020026229
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 博隆
【審査官】西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-191753(JP,A)
【文献】特開2014-210539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0025800(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第10230445(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第10233745(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/12
E06B 9/02
9/56 - 9/92
B62D 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた開口を挟んで延在するように配置された一対のガイドレールと、
前記一対のガイドレールに摺動可能にガイドされ、前記開口を開閉する開閉ユニットと、を備え、
前記開閉ユニットは、前記ガイドレールの延在方向に沿って配列された複数のスラットを備え、
複数の前記スラットのうちの2つ以上の前記スラットは、前記ガイドレールの延在方向において湾曲した形状を呈しており、
一の前記スラットの曲率と他の前記スラットの曲率とが異なり、
前記ガイドレールには、前記スラットの外面と接触するシール部材が設けられており、
隣り合う2つの前記スラットにおいて、前記スラットの移動方向の前記開口を開く方向側に位置する前記スラットを第1スラットとし、前記移動方向の前記開口を閉じる方向側に位置する前記スラットを第2スラットとした場合、
前記ガイドレールに沿った前記スラットの移動経路において、前記第2スラットの前記外面は、前記第1スラットの前記外面が移動する軌道よりも前記車両の外側に位置しない、車両の開閉構造。
【請求項2】
前記第1スラット及び前記第2スラットは、前記ガイドレールの延在方向の一端から他端にわたって、一定の曲率で湾曲している、請求項に記載の車両の開閉構造。
【請求項3】
前記第1スラットの平均曲率は、前記第2スラットの平均曲率よりも大きい、請求項に記載の車両の開閉構造。
【請求項4】
車両に設けられた開口を挟んで延在するように配置された一対のガイドレールと、
前記一対のガイドレールに摺動可能にガイドされ、前記開口を開閉する開閉ユニットと、を備え、
前記開閉ユニットは、前記ガイドレールの延在方向に沿って配列された複数のスラットを備え、
複数の前記スラットのうちの2つ以上の前記スラットは、前記ガイドレールの延在方向において湾曲した形状を呈しており、
一の前記スラットの曲率と他の前記スラットの曲率とが異なり、
前記ガイドレールは、前記スラットの内面と接触するシール部材が設けられており、
隣り合う2つの前記スラットにおいて、前記スラットの移動方向の前記開口を開く方向側に位置する前記スラットを第1スラットとし、前記移動方向の前記開口を閉じる方向側に位置する前記スラットを第2スラットとした場合、
前記ガイドレールに沿った前記スラットの移動経路において、前記第2スラットの前記内面は、前記第1スラットの前記内面が移動する軌道よりも前記車両の内側に位置しない、車両の開閉構造。
【請求項5】
前記第1スラット及び前記第2スラットは、前記ガイドレールの延在方向の一端から他端にわたって、一定の曲率で湾曲している、請求項に記載の車両の開閉構造。
【請求項6】
前記第1スラットの平均曲率は、前記第2スラットの平均曲率よりも小さい、請求項に記載の車両の開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における車両の開閉構造としては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の車両の開閉構造は、リヤゲートの周縁部をなすリヤゲートフレームと、リヤゲートフレームにスライド自在に案内された巻取式のシャッターと、シャッターを巻き取る巻取部とを備えている。シャッターは、平板状のスラットを多数上下に重ねて連結した構造を有している。各スラットの両側部分は、リヤゲートフレームの側部に案内されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-113122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両は、その種類によって、車体の構造(形状)が異なる。車両によっては、シャッターが設けられる位置が湾曲していることもある。この場合、従来のように、平板状のスラットを用いると、車体の形状が制限され、車両の意匠性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の一側面は、意匠性の向上が図れる車両の開閉構造を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る車両の開閉構造は、車両に設けられた開口を挟んで延在するように配置された一対のガイドレールと、一対のガイドレールに摺動可能にガイドされ、開口を開閉する開閉ユニットと、を備え、開閉ユニットは、ガイドレールの延在方向に沿って配列された複数のスラットを備え、複数のスラットのうちの2つ以上のスラットは、ガイドレールの延在方向において湾曲した形状を呈しており、一のスラットの曲率と他のスラットの曲率とが異なる。
【0007】
本発明の一側面に係る車両の開閉構造では、一のスラットの曲率と他のスラットの曲率とが異なる。これにより、車両の開閉構造では、車両の形状に応じて、スラットの曲率を設定することにより、車両の形状に応じた開閉ユニットを構成できる。したがって、車両の開閉構造では、車両の意匠性を損なうことなく、車両に開閉ユニットを設けることができる。その結果、車両の開閉構造では、意匠性の向上が図れる。
【0008】
一実施形態においては、ガイドレールには、スラットの外面と接触するシール部材が設けられており、隣り合う2つのスラットにおいて、スラットの移動方向の開口を開く方向側に位置するスラットを第1スラットとし、移動方向の開口を閉じる方向側に位置するスラットを第2スラットとした場合、ガイドレールに沿ったスラットの移動経路において、第2スラットの外面は、第1スラットの外面が移動する軌道よりも車両の外側に位置しなくてもよい。この構成では、開閉ユニットの閉状態において第1スラットとシール部材との位置関係が規定されている構成において、開閉ユニットの移動によって第1スラットの位置に第2スラットが位置したときに、第2スラットの外面が第1スラットの外面が移動する軌道よりも車両の外側に位置しないため、第2スラットがシール部材を押圧しない。これにより、車両の開閉構造では、第2スラットとシール部材との過剰な接触によって、開閉ユニットの移動が阻害されることを回避できる。したがって、車両の開閉構造では、開閉ユニットの操作性が低下することを回避できる。
【0009】
一実施形態においては、第1スラット及び第2スラットは、ガイドレールの延在方向の一端から他端にわたって、一定の曲率で湾曲していてもよい。この構成では、第1スラット及び第2スラットを容易に製造することができる。
【0010】
一実施形態においては、第1スラットの平均曲率は、第2スラットの平均曲率よりも大きくてもよい。この構成では、開閉ユニットの移動によって第1スラットの位置に第2スラットが位置したときに、第2スラットの外面が第1スラットの外面が移動する軌道よりも車両の外側に位置しない構成を実現できる。
【0011】
一実施形態においては、ガイドレールは、スラットの内面と接触するシール部材が設けられており、隣り合う2つのスラットにおいて、スラットの移動方向の開口を開く方向側に位置するスラットを第1スラットとし、移動方向の開口を閉じる方向側に位置するスラットを第2スラットとした場合、ガイドレールに沿ったスラットの移動経路において、第2スラットの内面は、第1スラットの内面が移動する軌道よりも車両の内側に位置しなくてもよい。この構成では、開閉ユニットの閉状態において第1スラットとシール部材との位置関係が規定されている構成において、開閉ユニットの移動によって第1スラットの位置に第2スラットが位置したときに、第2スラットの内面が第1スラットの内面が移動する軌道よりも車両の内側に位置しないため、第2スラットがシール部材を押圧しない。これにより、車両の開閉構造では、第2スラットとシール部材との過剰な接触によって、開閉ユニットの移動が阻害されることを回避できる。したがって、車両の開閉構造では、開閉ユニットの操作性が低下することを回避できる。
【0012】
一実施形態においては、第1スラット及び第2スラットは、ガイドレールの延在方向の一端から他端にわたって、一定の曲率で湾曲していてもよい。この構成では、第1スラット及び第2スラットを容易に製造することができる。
【0013】
一実施形態においては、第1スラットの平均曲率は、第2スラットの平均曲率よりも小さくてもよい。この構成では、開閉ユニットの移動によって第1スラットの位置に第2スラットが位置したときに、第2スラットの内面が第1スラットの内面が移動する軌道よりも車両の内側に位置しない構成を実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、意匠性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る車両の開閉構造を備えた車両の後側部分を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された車両の後側部分においてバックドアが開いた状態を示す斜視図である。
図3図3は、図1に示されたバックドアを昇降ガイドレールと共に示す断面図である。
図4図4は、ガイドレールの延在方向に沿って配列された複数のスラットの断面図である。
図5図5は、一実施形態に係るスラットの断面図である。
図6図6は、比較例に係るスラットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1に示されるように、車両1は、車体2を備えている。図中の矢印FRは、車体2の前後方向における前側を示し、図中の矢印UPは、車体2の上下方向における上側を示し、図中の矢印OUTは、車体2の左右方向(車幅方向)における外側を示している。
【0018】
車体2は、ルーフパネル3と、このルーフパネル3の左右両側に配置された一対のサイドパネル4と、を有している。ルーフパネル3は、車体2の上部に設けられている。サイドパネル4は、車体2の側部に設けられている。車体2の後端下部には、バンパー5が設けられている。車体2の後端上部には、スポイラー6が設けられている。
【0019】
車体2の後端部には、図2に示されるように、開口2aが設けられている。開口2aは、ルーフパネル3の後端と一対のサイドパネル4の後端とバンパー5の上端とにより画成されている。
【0020】
車両1は、車体2の後端部の開口2aを覆う開閉式のバックドア7を備えている。バックドア7は、開口2aに対して昇降可能な開閉ユニットである。バックドア7は、車両1の下側から上側に移動することにより開口2aを開き、車両1の上側から下側に移動することにより開口2aを閉じる構成を有する。図1は、バックドア7が閉まった状態を示し、図2は、バックドア7が開いた状態を示している。以下の説明において、バックドア7に関する上下方向は、バックドア7を閉めた状態(図1参照)での方向である。
【0021】
バックドア7は、図3に示されるように、車体2の上下方向に沿って配列された複数のスラット8と、ガイドローラ9a,9bと、リーンフォースメント10と、を備えている。
【0022】
各スラット8は、車幅方向に延在している。最も下側に位置するスラット8には、バックドア7の開閉操作を行うための取っ手11が設けられている。スラット8は、耐衝撃性を有する透明樹脂で形成されている。そのような透明樹脂としては、例えばポリカーボネート又はアクリル樹脂等が挙げられる。スラット8は、外面8aと、内面8bと、を有している。本実施形態では、外面8a及び内面8bは、略平坦面である。隣り合うスラット8同士は、接合部15(図1参照)によって接合されている。
【0023】
複数のスラット8のうち、2つ以上のスラット8は、昇降ガイドレール20の延在方向において湾曲した形状を呈している。本実施形態では、スラット8のそれぞれは、昇降ガイドレール20の延在方向の一端から他端にわたって、一定の曲率で湾曲している。すなわち、本実施形態では、スラット8の所定の位置における曲率と、スラット8の平均曲率とが同じである。スラット8の曲率(曲率半径R)は、車体2の形状に応じて、適宜設定される。
【0024】
バックドア7では、湾曲した複数のスラット8のうち、一のスラット8の曲率と他のスラット8の曲率とが異なる。すなわち、バックドア7は、曲率の異なる複数のスラット8を含んで構成されている。バックドア7では、隣り合う2つのスラット8において、上側のスラット8の曲率は、下側のスラット8の曲率以上である。言い換えれば、上側のスラット8の曲率半径は、下側のスラット8の曲率半径以下である。バックドア7では、最も上側に位置するスラット8の曲率が最も大きく、他のスラット8の曲率は、最も上側に位置するスラット8の曲率よりも小さい。最も上側に位置するスラット8以外の他の複数のスラット8においては、曲率が上側に隣り合うスラット8の曲率より小さくてもよいし、曲率が上側に隣り合うスラット8と同じであってもよい。
【0025】
例えば、図4に示されるように、バックドア7が、5枚のスラット8を含んで構成されている場合、最も上側に位置する1番目のスラット8(8)の曲率は、他のスラット8(8、8、8、8)の曲率よりも大きい。スラット8(8、8、8、8)において、スラット8とスラット8とは、曲率が異なっていてもよいし、曲率が同じであってもよい。スラット8とスラット8とにおいては、スラット8の曲率がスラット8の曲率以下であればよい。
【0026】
図5に示されるように、スラット8の曲率半径R1とスラット8の曲率半径R2とが、曲率半径R1<曲率半径R2の関係を満たす場合においては、昇降ガイドレール20に沿ったスラット8の移動経路において、スラット8の外面8aは、スラット8の外面8aが移動する軌道よりも外側に位置しない。具体的には、図5に示されるように、スラット8が開く方向に移動して、スラット8の位置を通過するときに、スラット8の外面8aが移動する軌道は、スラット8の外面8aが移動する軌道よりも車両1の内側となる。
【0027】
ガイドローラ9a,9bは、昇降ガイドレール20に沿って移動する。ガイドローラ9a,9bは、リーンフォースメント10の延在方向の端部に回転可能に軸支されている。ガイドローラ9a,9bは、隣り合うスラット8とスラット8との間に配置されている。すなわち、ガイドローラ9a,9bは、隣り合うスラット8同士の接合部15に配置されている。ガイドローラ9a,9bの直径はスラット8とリーンフォースメント10との厚さよりも大きく形成されている。
【0028】
リーンフォースメント10は、車幅方向に延在するように配置されている。リーンフォースメント10は、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、アルミニウム又は鉄等の剛体により形成されている。リーンフォースメント10の両端部には、ガイドローラ9a,9bが回転自在にそれぞれ設けられている。リーンフォースメント10は、スラット8の接合部15に対向する端部の内面8bに取り付けられ、スラット8の端部を補強している。リーンフォースメント10は、隣り合うスラット8が接合部15にて屈曲可能となるようにスラット8に取り付けられている。スラット8は、バックドア7が開く方向の端部とバックドア7が閉じる方向の端部にてガイドローラ9a,9bを介して昇降ガイドレール20に支持される。
【0029】
各サイドパネル4の後端部には、バックドア7を車体2の上下方向に摺動可能にガイドする昇降ガイドレール20がそれぞれ取り付けられている。つまり、車両1は、車体2の後端部に設けられた開口2aを挟んで車体2の上下方向に延在するように配置された1対の昇降ガイドレール20を備えている。昇降ガイドレール20は、断面コの字状に形成されており、開放側が開口2a側を向くように配置されている。昇降ガイドレール20は、バックドア7を閉めた状態において、複数のスラット8の外面8aに沿った形状を有している。
【0030】
上述したバックドア7において、各スラット8は、昇降ガイドレール20の延在方向に沿って配列されている。リーンフォースメント10は、一対の昇降ガイドレール20の対向方向に延在している。
【0031】
昇降ガイドレール20には、バックドア7のガイドローラ9a,9bが走行する収容部21が設けられている。図3に示されるように、収容部21にバックドア7のガイドローラ9a,9bが配置された状態では、スラット8の車幅方位の端部が昇降ガイドレール内に配置される。また、昇降ガイドレール20の車外側側壁の開口2a側の端部の内側面には、バックドア7を封止するサイドシール(シール部材)22が取り付けられている。サイドシール22は、弾性を有する材料で形成されている。昇降ガイドレール20は、バックドア7が開口2aを全閉するように位置したスラット8の外面8a及び内面8bと平行となるように車外側及び車内側の側壁が形成される。サイドシール22は、バックドア7が開口2aを全閉するように位置したスラット8と接触した状態において、スラット8の外面8aを均一に押圧する。これにより、バックドア7が開口2aを全閉するように位置した状態では、サイドシール22とスラット8との密着性が確保される。サイドシール22は、収容部21よりも車幅方向の内側においてバックドア7を挟んで配置されている。
【0032】
バックドア7が昇降ガイドレール20に沿って開閉動作するときは、ガイドローラ9a,9bが収容部21を走行する。
【0033】
ルーフパネル3の車幅方向両端部の下面側には、バックドア7を車体2の前後方向に摺動可能にガイドするガイドレール(図示しない)がそれぞれ配置されている。つまり、車両1は、車体2の前後方向に延在するように配置された一対のガイドレールを備えている。ガイドレールは、昇降ガイドレール20に連続して配置されていてもよいし、昇降ガイドレール20と若干の間隔をもって配置されていてもよい。なお、ガイドレールの構造については、詳細な説明を省略する。
【0034】
以上のような車両1の開閉構造において、図1に示されるようにバックドア7が全閉した状態では、ロック機構(図示せず)によりバックドア7がロックされている。その状態からバックドア7のロックを解除し、取っ手11を持ってバックドア7を上昇させると、バックドア7が昇降ガイドレール20に沿って車体2の上側に移動すると共に、バックドア7がガイドレールに沿って車体2の前側に移動し、図2に示されるようにバックドア7が開くようになる。
【0035】
バックドア7が開いた状態から、取っ手11を持ってバックドア7を下降させると、バックドア7が昇降ガイドレール20に沿って車体2の下側に移動すると共に、バックドア7がガイドレールに沿って車体2の後側に移動し、バックドア7が閉じるようになる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る車両1の開閉構造では、一のスラット8の曲率と他のスラット8の曲率とが異なる。これにより、車両1の開閉構造では、車両1の形状に応じて、スラット8の曲率を設定することにより、車両1の形状に応じたバックドア7を構成できる。したがって、車両1の開閉構造では、車両1の意匠性を損なうことなく、車両1にバックドア7を設けることができる。その結果、車両1の開閉構造では、意匠性の向上が図れる。
【0037】
図6に示す比較例では、スラット8の曲率半径R1とスラット8の曲率半径R2とが、曲率半径R1>曲率半径R2の関係を満たしている。すなわち、スラット8の曲率は、スラット8の曲率よりも小さい。この構成では、昇降ガイドレール20に沿ったスラット8の移動経路において、スラット8の外面8aは、スラット8の外面8aが移動する軌道よりも外側に位置する。この場合、スラット8の外面8aとサイドシール22との距離が近くなり、スラット8がサイドシール22を押圧する。これにより、サイドシール22の接触がスラット8の移動の負荷となり、バックドア7の移動が阻害される。
【0038】
本実施形態に係る車両1の開閉構造では、バックドア7は、車両1の下側から上側に移動することにより開く構成である。昇降ガイドレール20には、スラット8の外面8aと接触するサイドシール22が設けられている。隣り合う2つのスラット8において、スラット8の移動方向の上側に位置するスラット8を第1スラット(例えば、図5のスラット8)とし、移動方向の下側に位置するスラット8を第2スラット(例えば、図5のスラット8)とした場合、昇降ガイドレール20に沿ったスラット8の移動経路において、第2スラットの外面8aは、第1スラットの外面8aが移動する軌道よりも車両1の外側に位置しない。
【0039】
この構成では、バックドア7の閉状態において第1スラットとサイドシール22との位置関係が規定されている構成において、図5に示されるように、バックドア7の移動によって第1スラットの位置に第2スラットが位置したときに、第2スラットの外面8aが第1スラットの外面8aが移動する軌道よりも車両1の外側に位置しないため、第2スラットがサイドシール22を押圧しない。これにより、車両1の開閉構造では、第2スラットとサイドシール22との過剰な接触によって、バックドア7の移動が阻害されることを回避できる。したがって、車両1の開閉構造では、バックドア7の操作性が低下することを回避できる。
【0040】
本実施形態に係る車両1の開閉構造では、スラット8のそれぞれは、昇降ガイドレール20の延在方向の一端から他端にわたって、一定の曲率で湾曲している。この構成において、車両1の開閉構造では、隣り合う2つのスラット8において、上側のスラット8の曲率は、下側のスラット8の曲率以上である。この構成では、バックドア7の移動によって第1スラットの位置に第2スラットが位置したときに、第2スラットの外面8aが第1スラットの外面8aが移動する軌道よりも車両1の外側に位置しない構成を実現できる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0042】
上記実施形態では、バックドア7に含まれる全てのスラット8において、湾曲した形状を有し、自身より開き側に位置するスラット8は、自身の曲率以上の曲率を備え、自身より開口2aを閉じる方向側に位置するスラット8は自身の曲率以下の曲率を備える構成を一例に説明した。しかし、バックドア7の一部のスラット8が湾曲した形状を有していてもよい。例えば、開口2aを開く方向側に配置される複数のスラット8のみが湾曲した形状を有し、開口2aを閉じる方向側に配置されたスラット8は湾曲しない平板状のスラット8で形成していてもよい。また、全てのスラット8において自身より開口2aを開く方向側に位置するスラット8は、自身の曲率以上の曲率を備え、自身より開口2aを閉じる方向側に位置するスラット8は自身の曲率以下の曲率を備える構成としたが、これに限らず、隣り合う2つのスラット8において、開口2aを開く方向側に位置するスラット8の曲率が、開口2aを閉じる方向側に位置するスラット8の曲率より大きく形成される構成が含まれていればよい。例えば、最も開口2aを閉じる方向側に配置されるスラット8は平板状に形成され、他のスラット8においては、開口2aを開く方向側に位置するスラット8の曲率が、開口2aを閉じる方向側に位置するスラット8の曲率より大きく形成される構成を満たすように構成されたバックドア7であってもよい。
【0043】
上記実施形態では、スラット8の外面8aと接触するように、サイドシール22が設けられている形態を一例に説明した。しかし、サイドシール22は、スラット8の内面8bと接触するように設けられていてもよい。この構成では、隣り合う2つのスラット8において、スラット8の移動方向の上側に位置するスラット8を第1スラットとし、移動方向の下側に位置するスラット8を第2スラットとした場合、昇降ガイドレール20に沿ったスラット8の移動経路において、第2スラットの内面8bは、第1スラットの内面8bが移動する軌道よりも車両1の内側に位置しない。
【0044】
この構成では、バックドア7の閉状態において第1スラットとサイドシール22との位置関係が規定されている構成において、バックドア7の移動によって第1スラットの位置に第2スラットが位置したときに、第2スラットの内面8bが第1スラットの内面8bが移動する軌道よりも車両1の内側に位置しないため、第2スラットがサイドシールを押圧しない。これにより、第2スラットとサイドシールとの過剰な接触によって、バックドア7の移動が阻害されることを回避できる。したがって、バックドア7の操作性が低下することを回避できる。
【0045】
上記実施形態では、ガイドローラ9a,9bによってバックドア7が昇降ガイドレール20を摺動する形態を一例に説明した。しかし、ガイドローラ9a,9bに代えて、スライドシューによって、バックドア7が昇降ガイドレール20を摺動する形態であってもよい。
【0046】
上記実施形態では、スラット8の外面8a及び内面8bが略平坦面である形態を一例に説明した。しかし、外面8a及び内面8bは、例えば凹凸を有する面であってもよい。また、上記実施形態では、スラット8が一端から他端にわたって一定の曲率で湾曲している(線対称の形状を呈する)形態を一例に説明した。しかし、スラット8の形状をこれに限定されず、スラット8が非対称の形状を呈していてもよい。いずれの構成においても、昇降ガイドレール20に沿ったスラット8の移動経路において、第2スラットの外面8aが、第1スラットの外面8aが移動する軌道よりも車両1の外側に位置しない構成であればよい。または、昇降ガイドレール20に沿ったスラット8の移動経路において、第2スラットの内面8bが、第1スラットの内面8bが移動する軌道よりも車両1の内側に位置しない構成であればよい。つまり、第2スラットのサイドシールが配置される側の面が、第1スラットのサイドシールが配置される側の面が移動する軌道よりも車両1のサイドシールが配置される側に位置しない構成であればよい。
【0047】
上記実施形態では、車両1の車体2の後方に、バックドア7(開閉ユニット)を設ける形態を一例に説明した。しかし、開閉ユニットは、車体の側部に設けられていてもよい。また、バックドア7は開口2aに対し下側から上側に移動することにより開く形態としたが、上側から下側に移動することにより開く形態でもよいし、左右方向に移動することにより開く形態であってもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、スラット8は透明樹脂で形成されている形態を一例に説明した。しかし、スラット8を形成する樹脂としては、透明樹脂以外であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…車両、2a…開口、3…、7…バックドア(開閉ユニット)、8…スラット、8a…外面、8b…内面、22…サイドシール(シール部材)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6