(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】投射型画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20220405BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20220405BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20220405BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20220405BHJP
F21V 9/14 20060101ALI20220405BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 E
F21S2/00 330
F21S2/00 340
F21V5/04 350
F21V9/14
H04N5/74 A
(21)【出願番号】P 2018160324
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】在原 康貴
(72)【発明者】
【氏名】相崎 隆嗣
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第98/019212(WO,A1)
【文献】特開2001-215448(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0051093(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00 , 21/14
H04N 5/74
F21S 2/00
F21V 5/04 , 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向と前記第1の方向と直交する第2の方向に複数の第1のレンズセルが配列され、入射された光束を前記第1のレンズセルごとの部分光束に分割する第1のフライアイレンズと、
前記第1の方向と前記第2の方向に複数の第2のレンズセルが配列され、それぞれの前記第1のレンズセルより射出した各部分光束をそれぞれの前記第2のレンズセルによって個別に集光する第2のフライアイレンズと、
前記第2のフライアイレンズより入射された光に含まれる第1の偏光と第2の偏光とのうち、照明光として用いられる前記第1の偏光を射出し、照明光として用いられない前記第2の偏光を前記第1の偏光に変換して射出する偏光変換素子と、
を備え、
前記偏光変換素子には、前記第2のフライアイレンズより入射された光の入射面に対して所定の角度を有して、入射した光を反射する反射面と、前記所定の角度を有して、入射した光に含まれる第1の偏光を反射させて第2の偏光を透過させる偏光分離面とが、前記第2のレンズセルの前記第1の方向の大きさの1/2の間隔で前記第1の方向に交互に形成され、
前記偏光変換素子の光の射出面における前記反射面と前記偏光分離面とで挟まれた領域は、前記第1の方向に交互に、1/2波長板が貼り付けられた偏光変換領域と、1/2波長板が貼り付けられていない非偏光変換領域とされており、
前記1/2波長板は、前記第2の方向に配列した前記複数の第2のレンズセルと対向しており、
前記複数の第2のレンズセルは、前記第1及び第2の方向それぞれに偏心しており、
前記複数の第2のレンズセルのうち、前記第1の方向に互いに隣接する各レンズセルは厚さ方向に同じ高さを有しており、前記第1の方向における中央に対して一方の側に位置するレンズセルは前記一方の側の端部に向かうほど他方の側に偏心の程度が大きくなるように偏心し、前記第1の方向における中央に対して前記他方の側に位置するレンズセルは前記他方の側の端部に向かうほど前記一方の側に偏心の程度が大きくなるように偏心し、
前記複数の第2のレンズセルのうち、前記第2の方向に互いに隣接する各レンズセルは前記第2の方向の両端部から中央に向けて厚さ方向に高さが順に高くなっており、前記第2の方向における中央に対して一方の側に位置するレンズセルは前記一方の側の端部に向かうほど他方の側に偏心の程度が大きくなるように偏心し、前記第2の方向における中央に対して前記他方の側に位置するレンズセルは前記他方の側の端部に向かうほど前記一方の側に偏心の程度が大きくなるように偏心し、
前記第1の方向に隣接する2つの第2のレンズセルの第1の境界における前記2つの第2のレンズセルの端部は前記第2のフライアイレンズの厚さ方向にずれて、前記第1の境界には段差が存在し、
前記第2の方向に隣接する2つの第2のレンズセルの第2の境界における前記2つの第2のレンズセルの端部は前記第2のフライアイレンズの厚さ方向に一致して、前記第2の境界には段差が存在せず、
前記第2のレンズセルの前記第1の方向の中央部を透過する中心光は前記偏光分離面に入射し、前記偏光分離面は前記中心光に含まれる前記第1の偏光を反射させて前記第2の偏光を透過させ、
前記偏光分離面で反射した
前記中心光に含まれる前記第1の偏光が入射される反射面は、
前記中心光に含まれる前記第1の偏光を反射して前記偏光変換素子より射出させ、前記偏光分離面を透過した
前記中心光に含まれる前記第2の偏光が入射される1/2波長板は、
前記中心光に含まれる前記第2の偏光を前記第1の偏光に変換して前記偏光変換素子より射出させ、
前記第2のレンズセルの前記第1の境界近傍の周辺部を透過する周辺光は前記反射面に入射し、前記反射面は前記周辺光を反射し、前記反射面で反射した前記周辺光が入射される偏光分離面は、前記周辺光に含まれる前記第1の偏光を反射させて前記第2の偏光を透過させ、
前記偏光分離面で反射した
前記周辺光に含まれる前記第1の偏光が入射される1/2波長板は、
前記周辺光に含まれる前記第1の偏光を前記第2の偏光に変換して前記偏光変換素子より射出させ、前記偏光分離面を透過した
前記周辺光に含まれる前記第2の偏光が入射される他の反射面は、
前記周辺光に含まれる前記第2の偏光を反射して前記偏光変換素子より射出させる
投射型画像表示装置。
【請求項2】
前記複数の第2のレンズセルは、それぞれの前記第2のレンズセルより射出した各部分光束を互いに重畳させるように前記第1及び第2の方向それぞれに偏心している請求項1に記載の投射型画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のフライアイレンズを備える投射型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投射型画像表示装置は、照明光学系に一対のフライアイレンズを備えることがある。各フライアイレンズは、矩形状の複数のレンズセルを備える。照明光学系の性能を向上させるために、フライアイレンズが備える各レンズセルは偏心していることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-23108号公報
【文献】特開2007-78731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フライアイレンズの各レンズセルの偏心の程度は、フライアイレンズ内のレンズセルの位置によって異なり、隣接する2つのレンズセルの境界に段差が存在する(特許文献1または2参照)。境界に段差のあるフライアイレンズを製造すると、各レンズセルの端部に、“だれ”または“かけ”と称される設計上の形状とは異なる形状誤差が発生する。この種の形状誤差は投射される画像品質に悪影響を及ぼす。
【0005】
そこで、レンズセルの境界の段差をなくすようにフライアイレンズを設計して製造することが考えられる。しかしながら、境界の段差をなくすようにフライアイレンズの形状を補正すると、各レンズセルによる照明範囲の大きさが変わってしまい、各レンズセルから射出して重畳された光の明るさが面内で不均一になってしまう。
【0006】
本発明は、フライアイレンズの各レンズセルによる照明範囲の大きさの変化を最小限に抑えつつ、隣接するレンズセルの境界に存在する段差が及ぼす画像品質への悪影響を回避することができる投射型画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の方向と前記第1の方向と直交する第2の方向に複数の第1のレンズセルが配列され、入射された光束を前記第1のレンズセルごとの部分光束に分割する第1のフライアイレンズと、前記第1の方向と前記第2の方向に複数の第2のレンズセルが配列され、それぞれの前記第1のレンズセルより射出した各部分光束をそれぞれの前記第2のレンズセルによって個別に集光する第2のフライアイレンズと、前記第2のフライアイレンズより入射された光に含まれる第1の偏光と第2の偏光とのうち、照明光として用いられる前記第1の偏光を射出し、照明光として用いられない前記第2の偏光を前記第1の偏光に変換して射出する偏光変換素子とを備える投射型画像表示装置を提供する。
【0008】
前記偏光変換素子には、前記第2のフライアイレンズより入射された光の入射面に対して所定の角度を有して、入射した光を反射する反射面と、前記所定の角度を有して、入射した光に含まれる第1の偏光を反射させて第2の偏光を透過させる偏光分離面とが、前記第2のレンズセルの前記第1の方向の大きさの1/2の間隔で前記第1の方向に交互に形成されている。
【0009】
前記偏光変換素子の光の射出面における前記反射面と前記偏光分離面とで挟まれた領域は、前記第1の方向に交互に、1/2波長板が貼り付けられた偏光変換領域と、1/2波長板が貼り付けられていない非偏光変換領域とされており、前記1/2波長板は、前記第2の方向に配列した前記複数の第2のレンズセルと対向している。
【0010】
前記複数の第2のレンズセルは、前記第1及び第2の方向それぞれに偏心している。前記複数の第2のレンズセルのうち、前記第1の方向に互いに隣接する各レンズセルは厚さ方向に同じ高さを有しており、前記第1の方向における中央に対して一方の側に位置するレンズセルは前記一方の側の端部に向かうほど他方の側に偏心の程度が大きくなるように偏心し、前記第1の方向における中央に対して前記他方の側に位置するレンズセルは前記他方の側の端部に向かうほど前記一方の側に偏心の程度が大きくなるように偏心している。前記複数の第2のレンズセルのうち、前記第2の方向に互いに隣接する各レンズセルは前記第2の方向の両端部から中央に向けて厚さ方向に高さが順に高くなっており、前記第2の方向における中央に対して一方の側に位置するレンズセルは前記一方の側の端部に向かうほど他方の側に偏心の程度が大きくなるように偏心し、前記第2の方向における中央に対して前記他方の側に位置するレンズセルは前記他方の側の端部に向かうほど前記一方の側に偏心の程度が大きくなるように偏心している。前記第1の方向に隣接する2つの第2のレンズセルの第1の境界における前記2つの第2のレンズセルの端部は前記第2のフライアイレンズの厚さ方向にずれて、前記第1の境界には段差が存在する。前記第2の方向に隣接する2つの第2のレンズセルの第2の境界における前記2つの第2のレンズセルの端部は前記第2のフライアイレンズの厚さ方向に一致して、前記第2の境界には段差が存在しない。
【0011】
前記第2のレンズセルの前記第1の方向の中央部を透過する中心光は前記偏光分離面に入射し、前記偏光分離面は前記中心光に含まれる前記第1の偏光を反射させて前記第2の偏光を透過させる。前記偏光分離面で反射した前記中心光に含まれる前記第1の偏光が入射される反射面は、前記中心光に含まれる前記第1の偏光を反射して前記偏光変換素子より射出させ、前記偏光分離面を透過した前記中心光に含まれる前記第2の偏光が入射される1/2波長板は、前記中心光に含まれる前記第2の偏光を前記第1の偏光に変換して前記偏光変換素子より射出させる。
【0012】
前記第2のレンズセルの前記第1の境界近傍の周辺部を透過する周辺光は前記反射面に入射し、前記反射面は前記周辺光を反射し、前記反射面で反射した前記周辺光が入射される偏光分離面は、前記周辺光に含まれる前記第1の偏光を反射させて前記第2の偏光を透過させる。前記偏光分離面で反射した前記周辺光に含まれる前記第1の偏光が入射される1/2波長板は、前記周辺光に含まれる前記第1の偏光を前記第2の偏光に変換して前記偏光変換素子より射出させ、前記偏光分離面を透過した前記周辺光に含まれる前記第2の偏光が入射される他の反射面は、前記周辺光に含まれる前記第2の偏光を反射して前記偏光変換素子より射出させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の投射型画像表示装置によれば、フライアイレンズの各レンズセルによる照明範囲の大きさの変化を最小限に抑えつつ、隣接するレンズセルの境界に存在する段差が及ぼす画像品質への悪影響を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態の投射型画像表示装置の全体的な構成例を示す図である。
【
図2】第1のフライアイレンズ2、第2のフライアイレンズ3、偏光変換素子4を側面から見た側面図である。
【
図3】第1のフライアイレンズ2、第2のフライアイレンズ3、偏光変換素子4を上面から見た上面図である。
【
図4】第2のフライアイレンズ3と偏光変換素子4とを、第2のフライアイレンズ3側から見た状態を示す平面図である。
【
図5】偏光変換素子4の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態の投射型画像表示装置について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を用いて、一実施形態の投射型画像表示装置の構成例である投射型画像表示装置100の全体的な構成及び動作を説明する。
【0016】
図1において、光源1は白色光を射出する。一例として、光源1は超高圧水銀ランプである。白色光はP偏光とS偏光とを含む不定偏光である。光源1の種類は限定されず、光源1として発光ダイオード(LED)またはレーザダイオードが用いられてもよい。光源1の種類によって、光源1は白色以外の色の光を射出することがある。
【0017】
白色光は、第1のフライアイレンズ2に照射される。第1のフライアイレンズ2は、面内の第1の方向と第1の方向と直交する第2の方向に、矩形状の複数のレンズセルがマトリクス状に配列された構造を有する。第1及び第2の方向は、それぞれ、投射型画像表示装置100が投射する画像の水平方向(X方向)及び垂直方向(Y方向)に相当する。第1のフライアイレンズ2は、入射された白色光の光束をレンズセルごとの部分光束に分割する。
【0018】
第1のフライアイレンズ2より射出した各部分光束は、第2のフライアイレンズ3に照射される。第2のフライアイレンズ3は、第1のフライアイレンズ2と同様に、面内のX方向とY方向に、矩形状の複数のレンズセルがマトリクス状に配列された構造を有する。第2のフライアイレンズ3の各レンズセルは、第1のフライアイレンズ2の各レンズセルと1対1で対応している。第2のフライアイレンズ3の各レンズセルは、第1のフライアイレンズ2の各レンズセルより射出した各部分光束を個別に集光する。
【0019】
第2のフライアイレンズ3の各レンズセルより射出した部分光束が集光して各部分光束を重畳させるために、各レンズセルは偏心している。第2のフライアイレンズ3の各レンズセルの偏心の程度は、レンズセルの位置によって異なる。第2のフライアイレンズ3は、X方向とY方向とのうち、一方の方向には隣接するレンズセルの境界に段差が存在し、他方の方向には隣接するレンズセルの境界に段差が存在しないように構成されている。
【0020】
図1においては、第1のフライアイレンズ2と第2のフライアイレンズ3のレンズセルの数を少なくして、図を簡略化している。第1のフライアイレンズ2及び第2のフライアイレンズ3のレンズセルの数及び形状については後に詳述する。
【0021】
第2のフライアイレンズ3の各レンズセルより射出した部分光束は、偏光変換素子4に入射される。偏光変換素子4は、各部分光束に含まれているP偏光とS偏光とのうちの一方の第1の偏光を照明光として用いるために、照明光として用いられない他方の第2の偏光を第1の偏光に変換する。例えば、本実施形態においては、第1の偏光をS偏光、第2の偏光をP偏光とする。
【0022】
偏光変換素子4は、P偏光をS偏光に変換して射出される偏光を主としてS偏光とするものの、S偏光をP偏光に変換してP偏光を射出することがある。
【0023】
偏光変換素子4の具体的構成及び作用については後述する。本実施形態においては、第2のフライアイレンズ3に入射された時点の偏光としてのS偏光を照明光として用いるが、P偏光が照明光として用いられるように構成されてもよい。
【0024】
偏光変換素子4より射出したS偏光を主とする光は、第2のフライアイレンズ3による集光作用によって集光して各部分光束が互いに重畳した状態で、クロスダイクロイックミラー6に入射される。第2のフライアイレンズ3の各レンズセルが偏心せず、各レンズセルが集光作用を奏しないと、偏光変換素子4の後段に、二点鎖線にて示すようなコンデンサレンズ5が必要となる。第2のフライアイレンズ3の各レンズセルを偏心させることによって、コンデンサレンズ5を省略した構成とすることができる。
【0025】
クロスダイクロイックミラー6は、入射した光を赤色光(以下、R光)及び緑色光(以下、G光)と、青色光(以下、B光)とに分離する。R光及びG光は、反射ミラー7で反射して進行方向が90度曲げられて、ダイクロイックミラー9に向かう。B光は、反射ミラー8で反射して進行方向が90度曲げられて、フィールドレンズ16に向かう。
【0026】
R光及びG光のうちR光はダイクロイックミラー9を透過してフィールドレンズ10に向かう。G光はダイクロイックミラー9で反射して進行方向が90度曲げられて、フィールドレンズ13に向かう。フィールドレンズ10、13、及び16は、視野の周辺部の光の進行方向を揃えるためのレンズである。
【0027】
フィールドレンズ10を透過したR光は偏光板11を透過して、赤色画像表示素子12に入射される。一例として、偏光板11と後述する偏光板14及び17は、ワイヤグリッド偏光板である。一例として、赤色画像表示素子12と後述する緑色画像表示素子15及び青色画像表示素子18は、反射型液晶表示素子である。典型的には、反射型液晶表示素子はLCOS(Liquid Crystal On Silicon)と称される空間光変調素子である。
【0028】
赤色画像表示素子12は、投射しようとする画像の赤色成分に応じてR光を変調して反射する。赤色画像表示素子12がR光を変調することによって、S偏光がP偏光に変換される。よって、赤色画像表示素子12で反射したR光の変調光は偏光板11で反射して進行方向が90度曲げられて、色合成プリズム22に貼り付けられた偏光板19に向かう。
【0029】
G光はフィールドレンズ13及び偏光板14を透過して、緑色画像表示素子15に入射される。緑色画像表示素子15は、投射しようとする画像の緑色成分に応じてG光を変調して反射する。緑色画像表示素子15がG光を変調することによってS偏光がP偏光に変換される。よって、緑色画像表示素子15で反射したG光の変調光は偏光板14で反射して進行方向が90度曲げられて、色合成プリズム22に貼り付けられた偏光板20に向かう。
【0030】
B光はフィールドレンズ16及び偏光板17を透過して、青色画像表示素子18に入射される。青色画像表示素子18は、投射しようとする画像の青色成分に応じてB光を変調して反射する。青色画像表示素子18がB光を変調することによってS偏光がP偏光に変換される。よって、青色画像表示素子18で反射したB光の変調光は偏光板17で反射して進行方向が90度曲げられて、色合成プリズム22に貼り付けられた偏光板21に向かう。一例として、偏光板19、20、及び21はワイヤグリッド偏光板である。
【0031】
偏光板19、20、及び21は、それぞれ入射したR光、G光、及びB光に含まれる不要なS偏光を除去する。よって、色合成プリズム22には、必要なP偏光のみが入射される。色合成プリズム22は、R光、G光、及びB光を色合成して、合成光を投射レンズ23に向けて射出する。投射レンズ23は、合成光を図示していないスクリーンに拡大して投射する。以上のようにして、投射型画像表示装置100はスクリーンに画像を表示する。
【0032】
図2及び
図3を用いて、第1のフライアイレンズ2、第2のフライアイレンズ3、及び偏光変換素子4の構造、第2のフライアイレンズ3と偏光変換素子4との関係について説明する。
図2は、第1のフライアイレンズ2、第2のフライアイレンズ3、偏光変換素子4を側面から見た状態を示している。本実施形態においては、第2のフライアイレンズ3の各レンズセルより射出して互いに重畳した光は90度回転してスクリーンに投射されるように構成されている。よって、第1のフライアイレンズ2、第2のフライアイレンズ3、偏光変換素子4を側面から見たときの高さ方向がX方向である。
【0033】
図2に示すように、第1のフライアイレンズ2において、X方向に例えば8個のレンズセル201(第1のレンズセル)が配列している。レンズセル201は凸レンズであり、偏心していない。8個のレンズセル201は同じ高さを有する。第2のフライアイレンズ3において、各レンズセル201に対応するように、X方向に8個のレンズセル301(第2のレンズセル)が配列している。レンズセル301は凸レンズであり、X方向に偏心している。
【0034】
詳細には、一点鎖線で示すX方向の中央より上方に位置するレンズセル301は下方に偏心し、中央より下方に位置するレンズセル301は上方に偏心している。即ち、上方に位置するレンズセル301と下方に位置するレンズセル301とは互いにX方向の中央側に偏心している。中央から上方または下方の端部に向かうに従って、レンズセル301の偏心の程度が大きくなっている。8個のレンズセル301は同じ高さを有する。
【0035】
X方向に並んだ複数のレンズセル301の各レンズセル301の表面の下方側の端部を301a、上方側の端部を301bとする。X方向に互いに隣接する2つのレンズセル301の端部301aと端部を301bとは一致しておらず、第2のフライアイレンズ3の厚さ方向にずれている。即ち、隣接する2つのレンズセル301の境界には段差が存在する。なお、一点鎖線で示すX方向の中央を挟む2つのレンズセル301の境界には段差は存在しない。
【0036】
図3は、第1のフライアイレンズ2、第2のフライアイレンズ3、偏光変換素子4を上面から見た状態を示している。第1のフライアイレンズ2、第2のフライアイレンズ3、偏光変換素子4を上面から見たときの幅方向がY方向である。
【0037】
図3に示すように、第1のフライアイレンズ2において、Y方向に例えば14個のレンズセル201が配列している。第2のフライアイレンズ3において、各レンズセル201に対応するように、Y方向に14個のレンズセル301が配列している。レンズセル301はY方向に偏心している。
【0038】
詳細には、一点鎖線で示すY方向の中央に対して一方の側(
図3の上方)に位置するレンズセル301は他方の側(
図3の下方)に偏心し、中央に対して他方の側(
図3の下方)に位置するレンズセル301は一方の側(
図3の上方)に偏心している。即ち、一方の側に位置するレンズセル301と他方の側に位置するレンズセル301とは互いにY方向の中央側に偏心している。中央からY方向の端部に向かうに従って、レンズセル301の偏心の程度が大きくなっている。14個のレンズセル301は、Y方向の端部から中央に向けて高さが順に高くなっている。
【0039】
Y方向に並んだ複数のレンズセル301の各レンズセル301の表面の
図3の下方側の端部を301c、上方側の端部を301dとする。Y方向に互いに隣接する2つのレンズセル301の端部301cと端部301dとは一致しており、第2のフライアイレンズ3の厚さ方向にずれていない。即ち、Y方向においては、隣接する2つのレンズセル301の境界には段差が存在しない。
【0040】
図2に戻り、偏光変換素子4の内部には、X方向に、実線にて示す反射面41と破線にて示す偏光分離面42とが交互に形成されている。反射面41及び偏光分離面42は、偏光変換素子4の光の入射面に対して所定の角度を有するように形成されている。所定の角度は45度が好適である。本実施形態においては、反射面41は入射した光を反射し、偏光分離面42はP偏光を透過させてS偏光を反射させる。
【0041】
反射面41と偏光分離面42とで挟まれた領域を領域43及び44とする。領域43と領域44とのX方向の距離は同じである。各レンズセル301のX方向の大きさは、領域43と領域44とを合わせたX方向の距離と同じである。偏光変換素子4の光の射出面における各領域44の部分には、1/2波長板45が貼り付けられている。1/2波長板45のX方向の距離は、レンズセル301のX方向の大きさの1/2である。
【0042】
偏光変換素子4の光の射出面における各領域44の部分には1/2波長板45が貼り付けられており、領域44を偏光変換領域44と称することとする。偏光変換素子4の光の射出面における各領域43の部分には1/2波長板45が貼り付けられておらず、領域43を非偏光変換領域43と称することとする。偏光変換素子4には、非偏光変換領域43と偏光変換領域44とが、レンズセル301のX方向の大きさの1/2の間隔でX方向に交互に形成されている。
【0043】
図4は、第2のフライアイレンズ3と偏光変換素子4とを、第2のフライアイレンズ3側から見た状態を示している。
図4における偏光変換素子4の非偏光変換領域43及び偏光変換領域44の位置は、偏光変換素子4の射出面における位置を示している。1/2波長板45は、Y方向に配列した複数のレンズセル301と対向している。
【0044】
図4において、X方向に隣接する2つのレンズセル301の境界である端部301a及び301bは段差となっており、段差となっている状態を太実線で表している。太実線で示す境界の段差は、1/2波長板45が貼り付けられていない非偏光変換領域43に対向している。一方、Y方向に隣接する2つのレンズセル301の境界である端部301c及び301dは段差となっておらず、1/2波長板45と交差している。
【0045】
図5を用いて、偏光変換素子4の作用を説明する。
図5において、第2のフライアイレンズ3の各レンズセル301には、第1のフライアイレンズ2の各レンズセル201より射出したP偏光及びS偏光を含む部分光束が入射する。レンズセル301に入射する光のうち、レンズセル301のX方向の中央部を透過する中心光L1と、境界近傍の周辺部を透過する周辺光L2とに分けて考える。
【0046】
レンズセル301のX方向のどの範囲を中央部、どの範囲を周辺部とするかは決定的な事項とすることができる。
【0047】
図5に示すように、中心光L1に含まれるP偏光とS偏光とのうちのP偏光は、偏光分離面42を透過して1/2波長板45に入射する。1/2波長板45はP偏光をS偏光に変換するので、偏光変換領域44よりS偏光が射出される。中心光L1に含まれるP偏光とS偏光とのうちのS偏光は、偏光分離面42で反射して進行方向が90度曲げられ、さらに、反射面41で反射して進行方向が90度曲げられて、非偏光変換領域43より射出される。
【0048】
周辺光L2に含まれるP偏光及びS偏光は、反射面41で反射して進行方向が90度曲げられて偏光分離面42に入射する。偏光分離面42に入射したP偏光とS偏光とのうちのP偏光は偏光分離面42を透過して、他の反射面41に入射する。他の反射面41は、偏光分離面42を透過したP偏光が入射する次の反射面41である。反射面41に入射したP偏光は反射面41で反射して進行方向が90度曲げられて、非偏光変換領域43より射出される。
【0049】
偏光分離面42に入射したP偏光とS偏光とのうちのS偏光は偏光分離面42で反射して進行方向が90度曲げられて、1/2波長板45に入射する。1/2波長板45はS偏光をP偏光に変換するので、偏光変換領域44よりP偏光が射出される。
【0050】
以上のように、第2のフライアイレンズ3は、X方向に隣接する2つのレンズセル301の境界(第1の境界)には段差が存在するものの、Y方向に隣接する2つのレンズセル301の境界(第2の境界)には段差が存在しない。Y方向に隣接するレンズセル301の境界のみ段差をなくしているので、各レンズセル301による照明範囲の大きさの変化を最小限に抑えることができる。
【0051】
よって、各レンズセル301による照明範囲の大きさは、X方向及びY方向双方の境界に段差を有する形状における照明範囲の大きさと比較してほとんど変わらず、各レンズセル301から射出して重畳された光の明るさが面内で不均一となることはほとんどない。
【0052】
図5で説明したように、偏光変換素子4は、X方向のレンズセル301の境界近傍の周辺部を透過する周辺光L2に基づいてP偏光を射出する。ところが、P偏光は照明光として用いられないため、レンズセル301の端部に“だれ”または“かけ”の形状誤差があったとしても、スクリーンに投射される画像の品質に悪影響を及ぼすことがない。
【0053】
図4に示すように、Y方向のレンズセル301の境界は1/2波長板45と交差するように対向しているものの、Y方向に隣接するレンズセル301の境界には段差が存在しない。従って、Y方向のレンズセル301の境界近傍の周辺部を透過する周辺光がスクリーンに投射される画像の品質に悪影響を及ぼすこともない。
【0054】
本実施形態においては、複数のレンズセル301は、それぞれのレンズセル301より射出した各部分光束を互いに重畳させるようにX方向及びY方向双方に偏心している。よって、投射型画像表示装置100は、偏光変換素子4の後段に各部分光束を重畳させるためのコンデンサレンズ5を必要としない。コンデンサレンズ5を省略した構成とすることにより、部品点数を減らすことができ、光がコンデンサレンズ5を透過することによって明るさが低減することもない。
【0055】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。本発明の投射型画像表示装置は、一対のフライアイレンズと偏光変換素子とを備える構成であればよく、偏光変換素子より後段の構成は特に限定されない。
【符号の説明】
【0056】
1 光源
2 第1のフライアイレンズ
3 第2のフライアイレンズ
4 偏光変換素子
41 反射面
42 偏光分離面
43 非偏光変換領域
44 偏光変換領域
45 1/2波長板
201,301 レンズセル
301a,301b,301c,301d 端部