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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】パネル構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20220405BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B60K37/00 D
B60K37/00 B
B60K35/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018169347
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020040516
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】長橋 怜
(72)【発明者】
【氏名】山口 淳史
(72)【発明者】
【氏名】坂本 多佳子
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-302880(JP,A)
【文献】特開2014-210537(JP,A)
【文献】特開2003-063278(JP,A)
【文献】実開平06-065058(JP,U)
【文献】米国特許第05492360(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から裏面までの厚さを有するパネル本体と、
前記パネル本体内にオプション装置を装備するために前記表面から前記裏面まで後加工によって貫通される開口に設けられ、前記開口の少なくとも周縁を隠蔽する隠蔽部材とを備えたパネル構造において、
前記隠蔽部材は、前記開口内に挿入される筒部と、前記筒部の一端から外方に板状に突出して前記パネル本体の前記表面における前記開口の前記周縁を覆う庇部とを有し、
前記パネル本体は、前記裏面に固定片を有し、
前記固定片は、前記裏面と一体をなす基部と、前記基部と一体をなし、前記裏面から前記厚さ方向に離間しつつ前記開口内に延びる固定部とを含み、
前記固定部には、第1位置決め面が形成され、
前記隠蔽部材は、前記第1位置決め面に当接することによって前記表面と平行な方向の位置決めがされており、
前記表面と平行な方向において、前記第1位置決め面の位置が、前記開口の加工位置に関わらず不変とされていることを特徴とするパネル構造。
【請求項2】
前記固定部は、前記第1位置決め面に対して前記厚さ方向で交差する第2位置決め面が形成され、
前記隠蔽部材は、前記第2位置決め面に当接することによって前記厚さ方向の位置決めがされている請求項1記載のパネル構造。
【請求項3】
前記隠蔽部材には、前記第1位置決め面に当接する第1当接面が前記筒部の外面に形成されるとともに、前記第2位置決め面に当接する第2当接面を有する爪部が形成され、
前記パネル本体及び前記固定片が、前記爪部と前記庇部とで挟持されている請求項2記載のパネル構造。
【請求項4】
前記パネル本体はインスツルメントパネルであり、
前記オプション装置はヘッドアップディスプレイ投影装置であり、
前記隠蔽部材はベゼルである請求項1乃至3のいずれか1項記載のパネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に従来のパネル構造が開示されている。これらのパネル構造は、パネル本体と隠蔽部材とを備えている。パネル本体は表面から裏面までの厚さを有している。隠蔽部材は、パネル本体内にオプション装置を装備するために形成される開口に設けられ、開口の少なくとも周縁を隠蔽する。
【0003】
オプション装置は装備される場合もあれば、装備されない場合もある。このため、オプション装置が装備される場合には、パネル本体に表面から裏面まで後加工によって開口が貫通される。後加工で形成される開口は、パネル本体の成形と同時に形成される開口と比べ、設定位置からずれ易い。
【0004】
このため、特許文献1のパネル構造では、パネル本体に相当する樹脂パネルが裏面にリブを有し、隠蔽部材に相当するリッドが表面及び裏面に係止爪を有している。リブは、樹脂パネルの裏面で一体をなし、設定位置からずれる方向に一定の高さで延びている。このパネル構造では、例え開口がずれていても、樹脂パネルの表面からリブの裏面までの高さが一定になり、リッドの表面及び裏面の係止爪が樹脂パネルの表面とリブの裏面とを挟み得る。こうして、開口の加工精度にかかわらず、リッドがその開口に好適に設けられ得る。
【0005】
また、特許文献2のパネル構造では、パネル本体に相当する成形体が裏面に係止支持体を有している。この係止支持体は、成形体における裏側の基材と一体をなし、基材に開口を設けたときに開口の側縁に配置され、基材と直交する下方向に屈曲可能なヒンジ部と、ヒンジ部と一体をなす係止面部とからなる。係止面部には、ヒンジ部が下方向に屈曲された場合、ヒンジ部からパネル本体の表面と平行な方向で隔てられて開口側を向くとともに開口内に位置する膨出片部が形成されている。隠蔽部材に相当する部材は、ヒンジ部が屈曲されて膨出片部の先端面によって表面と平行な方向の位置決めがされる。このパネル構造では、例え開口がずれていても、係止支持体のヒンジ部が下方向に屈曲され、係止支持体の係止面部における膨出片部の先端面が表面と平行な方向で一定の位置に保たれるため、部材の係止部が膨出片部に確実に係止される。こうして、開口の加工精度にかかわらず、部材がその開口に好適に設けられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-177523号公報
【文献】特開2003-63278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1のパネル構造では、開口がずれた場合、リッドである隠蔽部材も同じ方向にずれてしまう。
【0008】
また、上記特許文献2のパネル構造では、成形体の一部である係止支持体のヒンジ部を下方に屈曲させるため、係止支持体自体を成形体の残部とは別に屈曲できるようにしなければならない。そのため、パネル本体に対し面方向の位置決めを行う場合、成形体自体が複雑な構造となったり、開口を形成する工程が複雑になったりし、製造コストの高騰化が懸念される。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、製造コストの低廉化を実現しつつ、後加工による形成によって開口が設定位置からずれた場合でも、隠蔽部材を適正な位置に設けることが可能なパネル構造を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパネル構造は、表面から裏面までの厚さを有するパネル本体と、
前記パネル本体内にオプション装置を装備するために前記表面から前記裏面まで後加工によって貫通される開口に設けられ、前記開口の少なくとも周縁を隠蔽する隠蔽部材とを備えたパネル構造において、
前記隠蔽部材は、前記開口内に挿入される筒部と、前記筒部の一端から外方に板状に突出して前記パネル本体の前記表面における前記開口の前記周縁を覆う庇部とを有し、
前記パネル本体は、前記裏面に固定片を有し、
前記固定片は、前記裏面と一体をなす基部と、前記基部と一体をなし、前記裏面から前記厚さ方向に離間しつつ前記開口内に延びる固定部とを含み、
前記固定部には、第1位置決め面が形成され、
前記隠蔽部材は、前記第1位置決め面に当接することによって前記表面と平行な方向の位置決めがされており、
前記表面と平行な方向において、前記第1位置決め面の位置が、前記開口の加工位置に関わらず不変とされていることを特徴とする。
【0011】
本発明のパネル構造では、例え開口がずれていても、固定片の固定部における第1位置決め面が表面と平行な方向で一定の位置に保たれる。このため、隠蔽部材は、第1位置決め面に当接することにより、開口がずれる方向と同じ方向の位置決めがされる。こうして、開口の加工精度にかかわらず、隠蔽部材がその開口に好適に設けられる。
【0012】
また、このパネル構造では、開口を後加工で形成する際、パネル本体の固定片は固定部が裏面から離間しているため、固定部を残しながら開口を容易に形成することができる。そのため、パネル本体自体は比較的簡易な構造であり、開口を形成する工程を複雑化する必要もない。
【0013】
したがって、本発明のパネル構造によれば、製造コストの低廉化を実現しつつ、後加工による形成によって開口が設定位置からずれた場合でも、隠蔽部材を適正な位置に設けることが可能である。
【0014】
固定部は、第1位置決め面に対して厚さ方向で交差する第2位置決め面が形成されていることが好ましい。また、隠蔽部材は、第2位置決め面に当接することによって厚さ方向の位置決めがされていることが好ましい。この場合、隠蔽部材が厚さ方向でも位置決めされる。
【0015】
パネル本体はインスツルメントパネルであり、オプション装置はヘッドアップディスプレイ投影装置であり、隠蔽部材はベゼルであることが好ましい。この場合、車両のインストルメントパネルの適正な位置にベゼルを設けることができ、使用者がヘッドアップディスプレイシステムを好適に使用することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパネル構造によれば、製造コストの低廉化を実現しつつ、後加工による形成によって開口が設定位置からずれた場合でも、隠蔽部材を適正な位置に設けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例の車両の一部の模式断面図である。
図2図2は、実施例のインスツルメントパネルの一部平面図である。
図3図3は、実施例のインスツルメントパネルの一部の拡大断面図である。
図4図4は、実施例のベゼルの一部の拡大断面図である。
図5図5は、実施例のパネル構造の一部の拡大断面図である。
図6図6は、実施例のパネル構造の断面図である。
図7図7は、実施例のパネル構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、前後上下の方向は車両を基準にした方向である。
【0019】
実施例のパネル構造は、図1に示すように、パネル本体を車両1のインスツルメントパネル3とし、隠蔽部材をベゼル5として本発明を具体化したものである。オプション装置はヘッドアップディスプレイ(HUD)投影装置7である。
【0020】
HUD投影装置7が装備される場合、インスツルメントパネル3には、HUD投影装置7の投影像がフロントウインドウ9によって反射して運転者Mに目視され、運転者Mが運転中にその投影像を視認できるように、図2に示すように、開口3aが形成される。この開口3aは略水平に形成される。図1に示すように、開口3aの周縁がベゼル5によって隠蔽される。
【0021】
実施例では、図2に示すように、長方形状の開口3aを形成する。HUD投影装置7が装備されない場合には、インスツルメントパネル3に開口3aは形成されない。このため、開口3aは、インスツルメントパネル3の表面から裏面まで後加工の熱刃切り工程によって貫通される。熱刃切り工程で形成される開口3aは、熱刃切り時の加工バラツキ等によってインスツルメントパネル3自体が弾性変形することから、インスツルメントパネル3の成形と同時に形成される開口と比べ、設定位置に対して1~2mm程度、全体が表面3bと平行な方向にずれ易い。特に開口が狭い第1方向D1に開口3aが設定位置からずれ、ベゼル5も設定位置からずれてしまうと、HUD投影装置7の投影像が運転者Mに目視され難くなってしまう。
【0022】
実施例で用いるインスツルメントパネル3は、図3に示すように、皮革等からなる表皮材31と、発泡ポリウレタンからなる発泡層32と、合成樹脂製の基材33とからなる。表皮材31がインスツルメントパネル3の表面3bを形成し、基材33がインスツルメントパネル3の裏面3cを形成している。
【0023】
基材33には、図2にも示すように、2個の固定片11が形成されている。これら固定片11は、開口3aの設定位置の前方に位置している。両固定片11は、図3に示すように、インスツルメントパネル3の厚さ方向、つまり基材33から下方に延びた後、開口3aに向けて湾曲する形状をなしている。両固定片11は、開口3aの設定位置の前辺3dと平行に延びている。
【0024】
各固定片11は、基材33と一体をなし、裏面3cから表面3bと反対側に延びるとともに、開口3aに向けて延びる基部35と、基部35と一体をなし、裏面3cから厚さ方向に距離tだけ離間しつつ基部35から開口3a内に配置される固定部37とからなる。基部35の裏面3cに当接する部位はT字形状に形成されている。固定部37は、開口3の貫設後には、開口3内に位置する。固定部37の後端は第1位置決め面37aとされている。第1位置決め面37aは、裏面3cに当接する基部35の後端から第1方向D1で距離Lだけ隔てられて開口3a側を向くとともに、図5に示すように、開口3の貫設後には、開口3a内に位置するようになっている。また、図3に示すように、固定部37の先端の下面側は第2位置決め面37bとされている。第2位置決め面37bは、第1位置決め面37aに対して直交しており、図5に示すように、第1位置決め面37aに対して厚さ方向で直交するようになっている。また、図2及び図3に示すように、両固定片11は、第1位置決め面37a及び第2位置決め面37bが互いに同一平面内になるように成形されている。
【0025】
ベゼル5は、図6及び図7に示すように、開口3a内に挿通される筒状をなす筒部51を有している。筒部51の前方上端には、図4~6に示すように、前方に板状に突出する第1庇部52が形成されている。筒部51の側方上端及び後方上端には、図6及び図7に示すように、側方及び後方に板状に突出する第2庇部53が形成されている。第1庇部52は第2庇部53よりも突出長さが長い。
【0026】
また、ベゼル5は、図4に示すように、第1庇部52の下方に前方に板状に突出する第1爪部54を有している。第1爪部54は前方に向かってやや下り傾斜している。ベゼル5における第1庇部52と第1爪部54との間には、上下方向に延びる第1当接面5aが形成されている。第1当接面5aは、図5に示すように、各固定片11における固定部37の第1位置決め面37aが当接される。
【0027】
また、図4に示すように、第1爪部54の付け根の上面には、略水平に延びる第2当接面5bが形成されている。第2当接面5bは、図5に示すように、各固定片11における固定部37の第2位置決め面37bが当接される。第1庇部52と第1爪部54との間隔は、インスツルメントパネル3における開口3aが形成される部分の厚さと、裏面3cから固定片11の固定部37の裏面までの厚さとの和より、僅かに小さくされている。
【0028】
さらに、ベゼル5は、図6に示すように、第2庇部53の下方に板状に突出する第2爪部55を有している。第2庇部53と第2爪部55との間隔は、インスツルメントパネル3における開口3aが形成される部分の厚さより、僅かに小さくされている。
【0029】
このパネル構造では、図3に示すように、開口3aを熱刃Cによって形成する際、インスツルメントパネル3の固定片11は固定部37が裏面3cから距離tだけ離間しているため、固定部37を残しながら開口3aを容易に形成することができる。そのため、インスツルメントパネル3自体は比較的簡易な構造であり、開口3aを形成する工程を複雑化する必要もない。
【0030】
開口3aを貫設後、図6に示すように、ベゼル5をやや撓ませながら、開口3a内に設ける。具体的には、第2庇部53と第2爪部55との間に開口3aの後方側及び側方側のインスツルメントパネル3を挟み、第1庇部52と第1爪部54との間に開口3aの前方側のインスツルメントパネル3と固定片11の固定部37とを挟む。
【0031】
この際、図5に示すように、例え開口3aがずれていても、固定部37における第1位置決め面37aが第1方向D1で一定の位置に保たれている。このため、ベゼル5は、第1位置決め面37aにより、開口3aがずれる方向と同じ第1方向D1の位置決めがされる。こうして、開口3aの加工精度にかかわらず、ベゼル5がその開口3aに好適に設けられる。
【0032】
また、このパネル構造では、固定部37に第2位置決め面37bが形成され、ベゼル5が第2位置決め面37bによって厚さ方向の位置決めがされているため、ベゼル5が厚さ方向でも位置決めされる。
【0033】
したがって、このパネル構造によれば、製造コストの低廉化を実現しつつ、開口3aがずれた場合でも、車両1のインストルメントパネル3の適正な位置にベゼル5を設けることができ、使用者がHUDシステムを好適に使用することが可能となる。
【0034】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上記実施例では車両1のインストルメントパネル3をパネル本体としたが、パネル本体はこれに限定されない。また、パネル本体は、表皮材31、発泡層32及び基材33からなるものに限定されない。さらに、車両1に用いる場合でも、オプション装置としては、HUD投影装置7に限定されず、エアバッグ、エアコンの吹出装置等を採用し得る。
【0036】
また、開口3aは長方形状には限定されない。隠蔽部材は、ベゼル5のように開口3aの周縁を隠蔽するものに限定されず、開口3a全体を隠蔽するものであってもよい。
【0037】
実施例では、開口3a全体が第1方向D1でずれるため、固定片11を開口3aの一方側である前方のみに設けているが、開口3aの大きさがずれる場合には、固定片11を対向させてもよい。また、固定片11の数は2に限定されないが、より少ないことが好ましい。
【0038】
実施例では、固定部37が裏面3cと平行に延びているが、基部及び固定部を裏面3cから斜め下方に延ばしてもよい。また、第1位置決め面37aは、固定部の後端面に限られず、表面3bと平行かつ第1方向D1と直交する方向に延びる固定部の側面であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、車両のインストルメントパネル装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
3b…表面
3c…裏面
3…パネル本体、インストルメントパネル
7…オプション装置、ヘッドアップディスプレイ(HUD)投影装置
3a…開口
5…隠蔽部材、ベゼル
11…固定片
35…基部
37…固定部
37a…第1位置決め面
37b…第2位置決め面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7