(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】雌端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20220405BHJP
H01R 13/187 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
H01R13/11 A
H01R13/187 B
(21)【出願番号】P 2018187561
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西谷 章弘
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
(72)【発明者】
【氏名】原 照雄
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/021057(WO,A1)
【文献】実開平04-081484(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
H01R 13/187
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に沿って延びると共に、前記長さ方向の前端に雄端子が挿入される挿入口を有する端子接続部と、
前記端子接続部の内部に配されて、前記長さ方向と交差する高さ方向から前記雄端子と弾性的に接触することにより前記端子接続部との間で前記雄端子を挟む弾性接触片と、
前記端子接続部の内部に、前記長さ方向に沿って間隔を空けて並んで配されて、前記長さ方向及び前記高さ方向と交差する幅方向の一方の側から前記雄端子に弾性的に接触する、複数のばね部材と、
前記端子接続部の内部に、前記幅方向の他方の側から前記幅方向の一方の側に向かって突出するとともに、前記複数のばね部材との間で前記雄端子を挟む突出部と、を有
し、
前記複数のばね部材は、前記長さ方向の前側に位置する前ばね部材と、前記長さ方向の後側に位置する後ばね部材と、を有し、
前記前ばね部材のばね定数は、前記後ばね部材のばね定数よりも小さく設定されている、
雌端子。
【請求項2】
前記複数のばね部材は、前記端子接続部と一体に形成されている、請求項1に記載の雌端子。
【請求項3】
前記複数のばね部材は、前記端子接続部とは別部材である、請求項1に記載の雌端子。
【請求項4】
前記前ばね部材は、前記長さ方向の前方に延びて形成されており、前記後ばね部材は、前記長さ方向の後方に延びて形成されている、請求項
1から請求項3のいずれか一項に記載の雌端子。
【請求項5】
前記前ばね部材及び前記後ばね部材の一方又は双方は、前記高さ方向に延びて形成されている、請求項
1から請求項3のいずれか一項に記載の雌端子。
【請求項6】
前記前ばね部材は前記雄端子と接触する前押圧部を有し、
前記後ばね部材は前記雄端子と接触する後押圧部を有し、
前記突出部は前記長さ方向に沿って延びて形成されており、
前記長さ方向について、前記突出部の前端部は前記前ばね部材の前記前押圧部よりも前方に位置しており、前記突出部の後端部は前記後ばね部材の前記後押圧部よりも後方に位置している、請求項
1から請求項
5のいずれか一項に記載の雌端子。
【請求項7】
前記前ばね部材は前記雄端子と接触する前押圧部を有し、
前記後ばね部材は前記雄端子と接触する後押圧部を有し、
前記弾性接触片は、前記長さ方向について前記前押圧部と前記後押圧部との間に位置すると共に前記雄端子と接触する接触突部を有する、請求項
1から請求項
6のいずれか一項に記載の雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、雌端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄端子が挿入される端子接続部と、この端子接続部内に配されて雄端子と弾性的に接触する弾性片と、を有する雌端子が知られている(特許文献1参照)。弾性片は、端子接続部内に雄端子が進入する進入方向と交差する方向について、雄端子の両側に配されている。この弾性片が進入方向の両側から雄端子を押圧することにより、雄端子の進入方向と交差する方向について、雄端子が移動することを抑制され、これにより、雌端子のうち、雄端子と接触する部分の摺動摩耗が抑制されることが期待された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記の構成によると、雌端子の摺動摩耗を十分に抑制することができないことが懸念された。端子接続部内に雄端子が挿入された状態で、雄端子が、その進入方向と交差する方向に移動し、雄端子の進入方向と交差する方向の両側に配された弾性片のうち、一方の弾性片と雄端子とが接近したと仮定する。すると、一方の弾性片は、その弾発力によって、雄端子を他方の弾性片側に押し返そうとする。
【0005】
しかし、他方の弾性片は、依然として、雄端子が一方の弾性片に接近することを促進する方向の弾発力を、雄端子に付与している。この結果、他方の弾性片の弾発力によって、一方の弾性片の弾発力が相殺されてしまい、雄端子が、その進入方向と交差する方向に移動することを、十分に抑制できない虞が生じるのである。
【0006】
本明細書に開示された技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、雌端子のうち、雄端子と接触する部分の摺動摩耗を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示された技術は、雌端子であって、長さ方向に沿って延びると共に、前記長さ方向の前端に雄端子が挿入される挿入口を有する端子接続部と、前記端子接続部の内部に配されて、前記長さ方向と交差する高さ方向から前記雄端子と弾性的に接触することにより前記端子接続部との間で前記雄端子を挟む弾性接触片と、前記端子接続部の内部に、前記長さ方向に沿って間隔を空けて並んで配されて、前記長さ方向及び前記高さ方向と交差する幅方向の一方の側から前記雄端子に弾性的に接触する、複数のばね部材と、前記端子接続部の内部に、前記幅方向の他方の側から前記幅方向の一方の側に向かって突出するとともに、前記複数のばね部材との間で前記雄端子を挟む突出部と、を有する。
【0008】
上記の構成によれば、雄端子は、端子接続部内に配された複数のばね部材と幅方向の一方の側から当接する。これにより雄端子は複数のばね部材から幅方向に沿う弾発力を受けて、突出部に押し付けられる。これにより、雄端子が幅方向に沿って相対的に移動することが抑制される。このとき、複数のばね部材は、端子接続部のうち幅方向の一方の側から雄端子を押圧するようになっているので、雄端子の移動を促進する方向の力を与えないようになっている。この結果、雌端子のうち、雄端子と接触する部分が摺動摩耗することが、抑制される。
【0009】
更に、雄端子が、高さ方向を軸として回転しようとした場合、複数のばね部材は長さ方向に沿って間隔を空けて並んで配されているので、各ばね部材の撓み量が異なるようになっている。すると、雄端子は、複数のばね部材のうち、撓み量の大きい方から、より大きな力を受ける。この結果、雄端子が高さ方向を軸として相対的に回転することが抑制される。この結果、雌端子のうち、雄端子と接触する部分が摺動摩耗することが、抑制される。
【0010】
本明細書に開示された技術の実施態様としては以下の態様が好ましい。
【0011】
前記複数のばね部材は、前記端子接続部と一体に形成されている。
【0012】
上記の構成によれば、複数のばね部材を端子接続部と別体に構成する場合に比べて、部品点数を削減することができる。
【0013】
前記複数のばね部材は、前記端子接続部とは別部材である。
【0014】
上記の構成によれば、複数のばね部材を、端子接続部とは異なる材料や、異なる厚さ寸法で作成することができる。これにより、複数のばね部材を設計する際に、端子接続部の形状や、端子接続部を構成する材料等から受ける制約を小さくすることができる。この結果、複数のばね部材の設計の自由度が向上する。
【0015】
前記複数のばね部材は、前記長さ方向の前側に位置する前ばね部材と、前記長さ方向の後側に位置する後ばね部材と、を有する。
【0016】
上記の構成によれば、雄端子が、高さ方向を軸として回転しようとした場合、前ばね部材と後ばね部材とは、端子接続部の延びる方向である長さ方向に沿って間隔を空けて並んで配されているので、前ばね部材の撓み量と、後ばね部材の撓み量とが異なるようになっている。すると、雄端子は、前ばね部材及び後ばね部材のうち、撓み量の大きい方から、より大きな力を受ける。この結果、雄端子が高さ方向を軸として相対的に回転することが抑制される。
【0017】
前記前ばね部材のばね定数は、前記後ばね部材のばね定数よりも小さく設定されている。
【0018】
上記の構成によれば、雄端子と雌端子との接続作業の初期段階において、雄端子が端子接続部の内部に進入する際の挿入力を小さくすることができる。これにより、雄端子と雌端子との接続作業の効率を向上させることができる。
【0019】
前記前ばね部材は、前記長さ方向の前方に延びて形成されており、前記後ばね部材は、前記長さ方向の後方に延びて形成されている。
【0020】
上記の構成によれば、長さ方向について、前ばね部材の前端部と、後ばね部材の後端部との間隔を大きく設けることができる。これにより、雄端子が高さ方向を軸として回転しようとした場合に、回転軸と、前ばね部材の前端部又は後ばね部材の後端部との間の間隔を大きくすることができる。この結果、雄端子が高さ方向を軸として相対的に回転することを更に抑制することができる。
【0021】
また、前ばね部材及び後ばね部材の一方が雄端子から押圧されると、前ばね部材及び後ばね部材が全体としてシーソーのように作動して、他方のばね部材が一方のばね部材を補助するように、雄端子を押圧することができる。これにより、雄端子が高さ方向を軸として回転することを更に抑制することができる。
【0022】
前記前ばね部材及び前記後ばね部材の一方又は双方は、前記高さ方向に延びて形成されている。
【0023】
上記の構成によれば、長さ方向について端子接続部が十分な長さ寸法を有していない場合であっても、前ばね部材及び後ばね部材の一方又は双方を、端子接続部の高さ方向に延びて形成することができるので、雌端子の設計の自由度を向上させることができる。
【0024】
前記前ばね部材は前記雄端子と接触する前押圧部を有し、前記後ばね部材は前記雄端子と接触する後押圧部を有し、前記突出部は前記長さ方向に沿って延びて形成されており、前記長さ方向について、前記突出部の前端部は前記前ばね部材の前記前押圧部よりも前方に位置しており、前記突出部の後端部は前記後ばね部材の前記後押圧部よりも後方に位置している。
【0025】
上記の構成によれば、長さ方向について、回転軸と前ばね部材の前押圧部との間隔、及び、回転軸と後ばね部材の後押圧部との間隔を大きく設定することができる。これにより、雄端子が高さ方向を軸として相対的に回転することを更に抑制することができる。
【0026】
前記前ばね部材は前記雄端子と接触する前押圧部を有し、前記後ばね部材は前記雄端子と接触する後押圧部を有し、前記弾性接触片は、前記長さ方向について前記前押圧部と前記後押圧部との間に位置すると共に前記雄端子と接触する接触突部を有する。
【0027】
上記の構成によれば、雄端子の挿入工程において、雄端子と、前ばね部材の前押圧部、弾性接触片の接触突部、及び後ばね部材の後押圧部とが、順次、接触するようになっている。これにより、雄端子の挿入力が分散されるので、雄端子の最大挿入力を低減させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本明細書に開示された技術によれば、雌端子のうち、雄端子と接触する部分の摺動摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図4】
図2におけるIII-III線で切断された断面を、
図3とは異なる角度から見た斜視図
【
図9】雄端子と雌端子とが接続された状態を示す一部切欠側断面図
【
図10】雄端子と雌端子とが接続された状態を示す一部切欠平断面図
【
図11】前ばね部材及び後ばね部材の撓み量を示す一部切欠平断面図
【
図12】突出部の前端部を回転中心として雄端子が相対的に回転した状態を示す一部切欠平断面図
【
図13】突出部の前端部を回転中心として雄端子が相対的に回転した状態における、前ばね部材及び後ばね部材の撓み量を示す一部切欠平断面図
【
図14】突出部の後端部を回転中心として雄端子が相対的に回転した状態を示す一部切欠平断面図
【
図15】突出部の後端部を回転中心として雄端子が相対的に回転した状態における、前ばね部材及び後ばね部材の撓み量を示す一部切欠平断面図
【
図25】雌端子を示す、長さ方向と直交する平面で切断された断面図
【
図30】ばね構造体が組み付けられた状態の雌端子を示す側面図
【
図31】ばね構造体が組み付けられた状態の雌端子を示す側面図
【
図32】ばね構造体が組み付けられた状態の雌端子を示す側断面図
【
図33】ばね構造体が組み付けられた状態の雌端子を示す一部切欠斜視図
【
図34】ばね構造体が組み付けられた状態の雌端子を示す平断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
<実施形態1>
本明細書に開示された技術の実施形態1について、
図1から
図15を参照しつつ説明する。本実施形態に係る雌端子10は雄端子11と接続される。なお、以下の説明においては、Z軸方向を高さ方向とし、Y軸方向を長さ方向とし、X軸方向を幅方向として説明する。高さ方向、長さ方向、及び幅方向は互いに交差(直交)している。高さ方向についてはZ軸の矢線で示す方向を上方とし、長さ方向についてはY軸の矢線で示すY方向を前方とし、幅方向についてはX軸の矢線で示す方向を左方とする。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0031】
雄端子11
図7及び
図8に示すように、雄端子11は、導電性の金属板材を所定の形状にプレス加工することにより形成されている。雄端子11は、平板状の雄タブ12を有する。雄端子11は、図示しない電線と接続されていてもよく、また、図示しない機器に接続されていてもよい。雄タブ12は、長さ方向についてほぼ同幅に形成されており、上方から見て略長方形状をなしている(
図8参照)。雄タブ12の先端部は、僅かに先細り形状に形成されている。雄端子11を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態においては、銅又は銅合金が用いられている。
【0032】
雌端子10
図1及び
図2に示すように、雌端子10は、雄端子11の雄タブ12が挿入される筒状をなす端子接続部13と、端子接続部13に連なると共に、電線(図示せず)の端末から露出する芯線(図示せず)の外周に圧着するワイヤーバレル14と、ワイヤーバレル14に連なると共に電線の芯線を被覆する絶縁被覆(図示せず)の外周に圧着するインシュレーションバレル15と、を備える。雌端子10は、導電性の金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。雌端子10を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態においては、銅又は銅合金が用いられている。
【0033】
端子接続部13
図1に示すように、端子接続部13は、長さ方向に延びる角筒状をなしている。端子接続部13の長さ方向の前端部には、雄端子11が挿入される挿入口16が前方に開口されている。
図6に示すように、挿入口16は、前方から見て、略長方形状をなしている。
【0034】
端子接続部13は、底壁17と、底壁17の左側縁から上方に立ち上がる左側壁18と、底壁17の右側縁から上方に立ち上がる右側壁19と、左側壁18の上縁から右方に延びる上壁20と、を有する。
【0035】
弾性接触片22
図5に示すように、端子接続部13の底壁17の前端縁からは、後方へ折り返された形態の弾性接触片22が延出されている。弾性接触片22は、端子接続部13内において、斜め上後方へ片持ち状に延びている。換言すると、弾性接触片22は、後方に向かうほど上壁20に接近する形態で傾斜している。本実施形態に係る弾性接触片22の幅寸法は、長さ方向について同幅に設定されている。
【0036】
図3に示すように、端子接続部13の底壁17の前端縁には、弾性接触片22の幅方向について外側の位置に、後方へ延びる切欠部23が設けられている。この切欠部23により、弾性接触片22が弾性変形した場合でも、その影響が底壁17に及びにくくなっている。
【0037】
図3~
図5に示すように、弾性接触片22の後端部寄りの位置には、幅方向の中央付近に、上方に突出する接触突部24が形成されている。接触突部24は、叩き出し加工によって形成されており、上方から見て円形状をなしている。
【0038】
リブ25
図5及び
図6に示すように、端子接続部13の上壁20には、下方へ叩き出し加工を施すことにより、前後方向に延びるリブ25が形成されている。リブ25の断面形状は概ね半長円形状をなしている。リブ25の下端と弾性接触片22が弾性変形していない状態における接触突部24の上端との間隔は、雄端子11の厚さ寸法よりも小さく設定されている。接触突部24の上端は、長さ方向について、リブ25の長さ寸法の中央位置よりもやや後方の位置に配されるようになっている。
【0039】
ばね部材(前ばね部材26、後ばね部材27)
図3に示すように、端子接続部13の右側壁19には、長さ方向に間隔を空けて、長さ方向の前側に位置する前ばね部材26と、後側に位置する後ばね部材27とが、長さ方向に間隔を空けて並んで設けられている。
【0040】
図2に示すように、端子接続部13の右側壁19には、長さ方向について前側の位置に、略U字形をなす前スリット28が形成されている。前ばね部材26は、前スリット28に囲まれた領域が、端子接続部13の内方に切り起こされることにより形成されている。前ばね部材26は、端子接続部13の右側壁19の長さ方向について中央位置付近から前方に延びた、板ばね状に形成されている。前ばね部材26は、基端を支点として幅方向の外側(右側)に弾性変形するようになっている。前ばね部材26の前端部は自由端となっている。
図3及び
図4に示すように、前ばね部材26の前端部は、幅方向について外方(右方)に曲がっている。前ばね部材26のうち、幅方向について最も内側に位置する部分は前押圧部29とされる。
【0041】
図2に示すように、端子接続部13の右側壁19には、長さ方向について後側の位置に、略U字形をなす後スリット30が形成されている。後ばね部材27は、後スリット30に囲まれた領域が、端子接続部13の内方に切り起こされることにより形成されている。後ばね部材27は、端子接続部13の右側壁19の長さ方向について中央位置付近から後方に延びた、板ばね状に形成されている。後ばね部材27は、基端を支点として幅方向の外側(右側)に弾性変形するようになっている。後ばね部材27の後端部は自由端となっている。
図3及び
図4に示すように、後ばね部材27の後端部は、幅方向について外方(右方)に曲がっている。後ばね部材27のうち、幅方向について最も内側に位置する部分は後押圧部31とされる。
【0042】
図5に示すように、高さ方向について、前ばね部材26の高さ寸法と、後ばね部材27の高さ寸法とは、同じに設定されている。一方、長さ方向について、前ばね部材26の長さ寸法は、後ばね部材27の長さ寸法よりも大きく設定されている。これにより、前ばね部材26のばね定数は、後ばね部材27のばね定数よりも小さく設定されている。
【0043】
図5に示すように、前ばね部材26の前押圧部29と、弾性接触片22の接触突部24と、後ばね部材27の後押圧部31とは、長さ方向についてずれた位置に配されている。詳細には、長さ方向について最も前方の位置に前ばね部材26の前押圧部29が位置し、次に弾性接触片22の接触突部24が位置し、最も後方の位置に後ばね部材27の後押圧部31が位置している。
【0044】
前ばね部材26の上縁、及び後ばね部材27の上縁は、リブ25の下端よりもやや下方に位置している。また、前ばね部材26の下縁、及び後ばね部材27の下縁は、弾性変形していない状態における弾性接触片22の接触突部24の上端よりもやや下方に位置している。これにより、端子接続部13の内部に雄端子11の雄タブ12が挿入され、雄タブ12によって弾性接触片22が下方に弾性変形した状態において、前ばね部材26、及び後ばね部材27は、雄タブ12の右方に位置するようになっている。上記の構成により、前ばね部材26、及び後ばね部材27は、幅方向について右側(幅方向の一方の側に相当)から雄端子11の雄タブ12に弾性的に接触するようになっている。
【0045】
端子接続部13の右側壁19のうち、前スリット28と後スリット30との間に位置する部分は、支持壁32とされる。この支持壁32により、端子接続部13の右側壁19の高さ方向の強度が保持されるようになっている。
【0046】
突出部33
図3及び
図4に示すように、突出部33は、端子接続部13の内部において、幅方向の左側(幅方向の他方の側に相当)から、幅方向の右側(幅方向の一方の側に相当)に向かって突出している。換言すると、突出部33は、端子接続部13の左側壁18を叩き出し加工することにより、前ばね部材26及び後ばね部材27に向かって突出して形成されている。この突出部33は、端子接続部13の左側壁18に、長さ方向に延びて形成されている。突出部33は、高さ方向について、前ばね部材26及び後ばね部材27と対応する高さ位置に設けられている。端子接続部13の内部に雄タブ12が挿入されていない状態では、前ばね部材26及び後ばね部材27と、突出部33とは、互いに対向する位置に配されている。突出部33の断面形状は、幅方向に扁平な半長円形状をなしている。
【0047】
図3に示すように、長さ方向について、突出部33の前端部34は前ばね部材26の前押圧部29よりも前方に位置しており、突出部33の後端部35は後ばね部材27の後押圧部31よりも後方に位置している。
【0048】
図11に二点鎖線で示すように、幅方向について、弾性変形していない状態における前ばね部材26の前押圧部29と、突出部33との間隔は、雄端子11の雄タブ12の幅寸法よりも小さく設定されている。また、幅方向について、弾性変形していない状態における後ばね部材27の後押圧部31と、突出部33との間隔は、雄端子11の雄タブ12の幅寸法よりも小さく設定されている。
【0049】
本実施形態の作用効果
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
図7及び
図8に矢線Aで示すように、雌端子10の端子接続部13の挿入口16に、雄端子11の雄タブ12を前方から挿入する。すると、雄タブ12の右側縁の先端部が前ばね部材26の前押圧部29に左方から当接する。これにより、前ばね部材26が幅方向の外側(右側)に弾性変形する。この結果、前ばね部材26の弾発力により、雄端子11が突出部33に向けて、幅方向について左方に押圧される。これにより、雄端子11は前ばね部材26と突出部33によって幅方向から挟まれるようになっている。この結果、雄端子11が幅方向に移動することが抑制される。
【0050】
更に雄端子11を後方へ押し込むと、雄タブ12の下面の先端部が弾性接触片22の接触突部24に上方から当接する。すると、弾性接触片22が下方に弾性変形する。これにより、弾性接触片22が雄タブ12を、高さ方向について下方から押圧する。この結果、雄タブ12は弾性接触片22とリブ25によって上下方向から挟まれるようになっている。この結果、雄端子11と雌端子10とが電気的に接続される(
図9参照)。
【0051】
更に雄端子11を後方へ押し込むと、雄タブ12の右側縁の先端部が後ばね部材27の後押圧部31に左方から当接する。すると、後ばね部材27が幅方向の外側(右側)に弾性変形する。この結果、後ばね部材27の弾発力により、雄端子11が突出部33に向けて、幅方向について左方に押圧される。これにより、雄端子11は後ばね部材27と突出部33によって幅方向から挟まれるようになっている。この結果、雄端子11が、雌端子10に対して、幅方向に相対的に移動することが抑制される(
図10参照)。なお、雄端子11が雌端子10に対して相対的に移動するとは、雄端子11が移動して雌端子10が移動しない場合、雄端子11が移動しないで雌端子10が移動する場合、及び雄端子11と雌端子10の双方が移動する場合を含む。
【0052】
本実施形態によれば、雄端子11の雄タブ12の右側縁は、端子接続部13内に配された前ばね部材26及び後ばね部材27と、幅方向の左方から当接する。これにより、雄タブ12は、前ばね部材26及び後ばね部材27から幅方向に沿う弾発力を受けて、幅方向について左方に押されることにより、突出部33に押し付けられる。これにより、雄端子11が幅方向に沿って移動することが抑制される。このとき、複数のばね部材は、端子接続部13のうち幅方向の右方から雄端子11を押圧するようになっているので、雄端子11の移動を促進する方向の力を与えないようになっている。この結果、雌端子10のうち、雄端子11と接触する部分が摺動摩耗することが、抑制される。
【0053】
更に、雄端子11が、高さ方向を軸として相対的に回転しようとした場合、前ばね部材26及び後ばね部材27は長さ方向に沿って間隔を空けて並んで配されているので、前ばね部材26の撓み量と後ばね部材27の撓み量とが異なるようになっている。すると、雄端子11は、前ばね部材26及び後ばね部材27のうち、撓み量の大きい方から、より大きな力を受ける。この結果、雄端子11が高さ方向を軸として回転することが抑制される。この結果、雌端子10のうち、雄端子11と接触する部分が摺動摩耗することが、抑制される。なお、雄端子11が相対的に回転するとは、雄端子11が回転して雌端子10が回転しない場合、雄端子11が回転せずに雌端子10が回転する場合、及び雄端子11と雌端子10の双方が回転する場合を含む。
【0054】
また、本実施形態によれば、前ばね部材26と後ばね部材27とは、端子接続部13と一体に形成されている。これにより、前ばね部材26及び後ばね部材27を端子接続部13と別体に構成する場合に比べて、部品点数を削減することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、前ばね部材26のばね定数は、後ばね部材27のばね定数よりも小さく設定されている。
【0056】
上記の構成によれば、雄端子11と雌端子10との接続作業の初期段階において、雄端子11が端子接続部13の内部に進入する際の挿入力を小さくすることができる。これにより、雄端子11と雌端子10との接続作業の効率を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、前ばね部材26は、長さ方向の前方に延びて形成されており、後ばね部材27は、長さ方向の後方に延びて形成されている。
【0058】
上記の構成によれば、長さ方向について、前ばね部材26の前端部と、後ばね部材27の後端部との間隔を大きく設けることができる。これにより、雄端子11が高さ方向を軸として相対的に回転しようとした場合に、回転軸と、前ばね部材26の前端部又は後ばね部材27の後端部との間の間隔を大きくすることができる。この結果、雄端子11が高さ方向を軸として相対的に回転することを更に抑制することができる。
【0059】
また、前ばね部材26及び後ばね部材27の一方が雄端子11から押圧されると、前ばね部材26及び後ばね部材27が全体としてシーソーのように作動して、他方のばね部材が一方のばね部材を補助するように、雄端子11を押圧することができる。これにより、雄端子11が高さ方向を軸として相対的に回転することを更に抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、前ばね部材26は雄端子11と接触する前押圧部29を有し、後ばね部材27は雄端子11と接触する後押圧部31を有し、突出部33は長さ方向に沿って延びて形成されており、長さ方向について、突出部33の前端部34は前ばね部材26の前押圧部29よりも前方に位置しており、突出部33の後端部35は後ばね部材27の後押圧部31よりも後方に位置している。
【0061】
上記の構成によれば、長さ方向について、回転軸と前ばね部材26の前押圧部29との間隔、及び、回転軸と後ばね部材27の後押圧部31との間隔を大きく設定することができる。これにより、雄端子11が高さ方向を軸として相対的に回転することを更に抑制することができる。以下に詳細に説明する。
【0062】
図12に示すように、雄タブ12が、突出部33の前端部34を回転中心とし、且つ、高さ方向を軸として相対的に回転しようとする場合、後ばね部材27の後押圧部31が、雄タブ12の右側縁を左方に押圧して支点として機能することにより、雄タブ12の回転を抑制しようとする。本実施形態においては、雄タブ12の回転中心である突出部33の前端部34と、雄タブ12の回転を抑制しようとする支点として機能する後ばね部材27の後押圧部31との間隔L1が、比較的に大きく設定されるようになっている。これにより、回転中心と支点との間隔を比較的に大きく設定することができるので、雄タブ12の相対的な回転を効果的に抑制することができる。
【0063】
このとき、
図13に二点鎖線で示すように、後ばね部材27の弾性変形量は、前ばね部材26の弾性変形量よりも大きくなっている。このため、雄タブ12に対して後ばね部材27が加える力は、雄タブ12に対して前ばね部材26が加える力よりも大きくなっている。このため、雄タブ12が突出部33の前端部34を回転中心とし、且つ高さ方向を軸として相対的に回転することが更に抑制される。
【0064】
一方、
図14に示すように、雄タブ12が、突出部33の後端部35を回転中心とし、且つ、高さ方向を軸として相対的に回転しようとする場合、前ばね部材26の前押圧部29が、雄タブ12の右側縁を左方に押圧して支点として機能することにより、雄タブ12の回転を抑制しようとする。本実施形態においては、雄タブ12の回転中心である突出部33の後端部35と、雄タブ12の回転を抑制しようとする支点として機能する前ばね部材26の前押圧部29との間隔L2が、比較的に大きく設定されるようになっている。これにより、回転中心と支点との間隔を比較的に大きく設定することができるので、雄タブ12の相対的な回転を効果的に抑制することができる。
【0065】
このとき、
図15に二点鎖線で示すように、前ばね部材26の弾性変形量は、後ばね部材27の弾性変形量よりも大きくなっている。このため、雄タブ12に対して前ばね部材26が加える力は、雄タブ12に対して後ばね部材27が加える力よりも大きくなっている。このため、雄タブ12が突出部33の後端部35を回転中心とし、且つ高さ方向を軸として相対的に回転することが更に抑制される。
【0066】
また、本実施形態によれば、長さ方向について、前ばね部材26の前押圧部29と、弾性接触片22の接触突部24と、後ばね部材27の後押圧部31とが、長さ方向について並んで配されている。
【0067】
上記の構成によれば、雄端子11の挿入工程において、雄端子11と、前ばね部材26の前押圧部29、弾性接触片22の接触突部24、及び後ばね部材27の後押圧部31とが、順次、接触するようになっている。これにより、雄端子11の挿入力が分散されるので、雄端子11の最大挿入力を低減させることができる。
【0068】
<実施形態2>
次に、本明細書に開示された技術の実施形態2を
図16から
図18を参照しつつ説明する。
【0069】
本実施形態に係る雌端子50においては、前ばね部材51は、端子接続部52の右側壁53の長さ方向について前端部寄りの位置から後方に延びた、板ばね状に形成されている。前ばね部材51は、基端を支点として幅方向の外側(右側)に弾性変形するようになっている。前ばね部材51の後端部は自由端となっている。
【0070】
また、本実施形態においては、後ばね部材54は、端子接続部52の右側壁53の長さ方向について後端部寄りの位置から前方に延びた、板ばね状に形成されている。後ばね部材54は、基端を支点として幅方向の外側(右側)に弾性変形するようになっている。後ばね部材54の前端部は自由端となっている。
【0071】
前ばね部材51の後端部と、後ばね部材54の前端部とは、長さ方向について隙間を有して配されている。
【0072】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0073】
<実施形態3>
次に、本明細書に開示された技術の実施形態3を
図19から
図21を参照しつつ説明する。
【0074】
本実施形態に係る雌端子60においては、端子接続部62に設けられた後ばね部材61の長さ寸法は、実施形態1にかかる後ばね部材27の長さ寸法に比べて短く設定されている。上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0075】
雄タブ12が、突出部33の長さ方向の前端部を回転中心として高さ方向を軸に相対的に回転した場合に、後ばね部材61の後押圧部31は、雄タブ12の右側縁と、幅方向の右方から当接する。すると、後ばね部材61は幅方向の右方に押圧される。これにより、前ばね部材26及び後ばね部材61が全体としてシーソーのように作動して、前ばね部材26が雄タブ12の右側縁を右方から押圧する。本実施形態においては、後ばね部材61の長さ寸法が比較的に短く設定されている。このため、雄タブ12から後ばね部材61に加えられた力は、前ばね部材26を雄タブ12に押し付ける力に効率よく変換される。この結果、前ばね部材26及び後ばね部材61が協同して雄端子11を突出部33に押し付けるので、雄端子11が高さ方向を軸として相対的に回転することを効果的に抑制することができる。
【0076】
<実施形態4>
次に、本明細書に開示された技術の実施形態4を
図22から
図25を参照しつつ説明する。
【0077】
図22に示すように、本実施形態に係る雌端子70においては、前ばね部材72は、端子接続部71の前側であって、且つ端子接続部71の右側壁76の上端部寄りの位置から下方に延びて形成されている。
図23に示すように、前ばね部材72の下端部の高さ位置は、弾性接触片22の接触突部24の上端部よりも下方に位置している。
図25に示すように、前ばね部材72の下端部寄りの部分は、幅方向の左方(内方)に突出して、雄タブ12の右側縁に右方から当接する前押圧部73とされる。
【0078】
また、
図22に示すように、後ばね部材74は、端子接続部71の後ろ側であって、且つ端子接続部71の右側壁76の上端部寄りの位置から下方に延びて形成されている。
図23に示すように、後ばね部材74の下端部の高さ位置は、弾性接触片22の接触突部24の上端部よりも下方に位置している。後ばね部材74の下端部寄りの部分は、幅方向の左方(内方)に突出して、雄タブ12の右側縁に右方から当接する後押圧部75とされる。
【0079】
図25に示すように、前ばね部材72の前押圧部73、及び後ばね部材74の後押圧部75は、雄タブ12が端子接続部
71内に挿入されていない状態で、突出部33と対向するように設けられている。
【0080】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0081】
本実施形態によれば、長さ方向について端子接続部71が十分な長さ寸法を有していない場合であっても、前ばね部材72及び後ばね部材74を、端子接続部71の高さ方向に延びた形状に形成することができる。これにより、雌端子70の設計の自由度を向上させることができる。
【0082】
本実施形態においては、前ばね部材72、及び後ばね部材74の双方が、端子接続部71の上端部寄りの位置から下方に延びる構成としたが、これに限られない。例えば、前ばね部材72、及び後ばね部材74の双方が、端子接続部71の下端部寄りの位置から上方に延びる構成としてもよいし、前ばね部材72、及び後ばね部材74の一方は端子接続部71の上端部寄りの位置から下方に延びる構成とし、他方は端子接続部71の下端部寄りの位置から上方に延びる構成としてもよい。
【0083】
<実施形態5>
次に、本明細書に開示された技術の実施形態5を
図26から
図34を参照しつつ説明する。
【0084】
端子接続部81
図26及び
図27に示すように、本実施形態に係る雌端子80においては、端子接続部81の右側壁82には、前ばね部材、及び後ばね部材は形成されていない。また、端子接続部81の左側壁83には、突出部は形成されていない。このため、端子接続部81は、全体として、長さ方向に延びる角筒状をなしており、底壁17の前端縁から弾性接触片22が後方に折り返された構成を有する。
【0085】
ばね構造体84
図30及び
図31に示すように、端子接続部81の内部には、端子接続部81とは別体の、ばね構造体84が収容される。ばね構造体84は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。ばね構造体84を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の、任意の金属を適宜に選択することができる。本実施形態においては、強度に優れたステンレス鋼が用いられている。ばね構造体84を構成する金属板材の厚さは、雌端子80を構成する金属板材の厚さよりも薄く形成されている。
【0086】
図28に示すように、ばね構造体84は、上壁85と、上壁85の右側縁から下方に延びる右側壁86と、上壁85の左側縁から下方に延びる左側壁87と、を有する。
【0087】
上壁85
ばね構造体84の上壁85は、長さ方向に延びる長方形状をなしている。上壁85には、前後方向に延びる窓部88が、上壁85を貫通して形成されている。各窓部88は、長さ方向に延びる、隅が丸められた長方形状をなしている。窓部88の長さ寸法は、雌端子80の端子接続部81に形成されたリブ25の長さ寸法と、同じか、または大きく設定されている。窓部88の幅寸法は、リブ25の幅寸法と同じか、または大きく設定されている。ばね構造体84が端子接続部81の内部に収容された状態で、窓部88は、端子接続部81のリブ25と対応する位置に設定されている。これにより、ばね構造体84が端子接続部81の内部に収容された状態で、窓部88の内部には、端子接続部81の上壁85に形成されたリブ25が上方から貫通するようになっている。リブ25の下端部は、ばね構造体84の上壁85の下面よりも下方に突出するようになっている。
【0088】
右側壁86
図29に示すように、ばね構造体84の右側壁86の前端部には、下方に突出する右係止部89が形成されている。右係止部89は、端子接続部81の底壁17に設けられた切欠部23に長さ方向の前方から係止することにより、ばね構造体84が端子接続部81に対して、長さ方向について位置決めされる。
【0089】
ばね構造体84の右側壁86には、長さ方向に間隔を空けて、長さ方向の前側に位置する前ばね部材90と、後側に位置する後ばね部材91とが、長さ方向に間隔を空けて並んで設けられている。
【0090】
ばね構造体84の右側壁86には、長さ方向について前側の位置に、略U字形をなす前スリット92が形成されている。前ばね部材90は、前スリット92に囲まれた領域が、ばね構造体84の内方に切り起こされることにより形成されている。前ばね部材90は、ばね構造体84の右側壁86の長さ方向について中央位置付近から前方に延びた、板ばね状に形成されている。前ばね部材90は、基端を支点として幅方向の外側(右側)に弾性変形するようになっている。前ばね部材90の前端部は自由端となっている。前ばね部材90のうち、長さ方向の中央付近は、幅方向について内方(左方)に曲がっている。この曲げ加工された部分は前押圧部93とされる。
【0091】
ばね構造体84の右側壁86には、長さ方向について後側の位置に、略U字形をなす後スリット94が形成されている。後ばね部材91は、後スリット94に囲まれた領域が、ばね構造体84の内方に切り起こされることにより形成されている。後ばね部材91は、ばね構造体84の右側壁86の長さ方向について中央位置付近から後方に延びた、板ばね状に形成されている。後ばね部材91は、基端を支点として幅方向の外側(右側)に弾性変形するようになっている。後ばね部材27の後端部は自由端となっている。後ばね部材27のうち、長さ方向の中央付近は、幅方向について内方(左方)に曲がっている。この曲げ加工された部分は後押圧部95とされる。
【0092】
図29に示すように、高さ方向について、前ばね部材90の高さ寸法は、後ばね部材91の高さ寸法よりも、小さな寸法に設定されている。これにより、前ばね部材90のばね定数は、後ばね部材91のばね定数よりも小さく設定されている。一方、長さ方向について、前ばね部材90の長さ寸法と、後ばね部材91の長さ寸法とは、ほぼ同じ寸法に設定されている。
【0093】
ばね構造体84が端子接続部81の内部に収容された状態で、前ばね部材90の上縁は、リブ25の下端よりもやや下方に位置しており、後ばね部材91の上縁は、リブ25の下端よりもやや上方に位置している。また、前ばね部材90の下縁、及び後ばね部材91の下縁は、弾性変形していない状態における弾性接触片22の接触突部24の上端よりもやや上方に位置している。端子接続部81の内部に雄端子11の雄タブ12が挿入され、雄タブ12によって弾性接触片22が下方に弾性変形した状態において、前ばね部材90、及び後ばね部材91は、雄タブ12の右方に位置するようになっている。上記の構成により、前ばね部材90、及び後ばね部材91は、幅方向について右側(幅方向の一方の側に相当)から雄端子11の雄タブ12に弾性的に接触するようになっている。
【0094】
ばね構造体84の右側壁86のうち、前スリット92と後スリット94との間に位置する部分は、支持壁96とされる。この支持壁96により、ばね構造体84の右側壁86の高さ方向の強度が保持されるようになっている。
【0095】
図32及び
図33に示すように、前ばね部材90の前押圧部93と、弾性接触片22の接触突部24と、後ばね部材91の後押圧部95とは、長さ方向についてずれた位置に配されている。詳細には、長さ方向について最も前方の位置に前ばね部材90の前押圧部93が位置し、次に弾性接触片22の接触突部24が位置し、最も後方の位置に後ばね部材91の後押圧部95が位置している。
【0096】
左側壁87
図28に示すように、ばね構造体84の左側壁87の前端部には、下方に突出する左係止部97が形成されている。左係止部97は、端子接続部81の底壁17に設けられた切欠部23に長さ方向の前方から係止することにより、ばね構造体84が端子接続部81に対して、長さ方向について位置決めされる。
【0097】
突出部(前突出部98、後突出部99)
図34に示すように、ばね構造体84の左側壁18には、長さ方向の前側に、ばね構造体84の内方(幅方向の右方)に突出する前突出部98と、この前突出部98と長さ方向に間隔を空けて並ぶと共にばね構造体84の内方(幅方向の右方)に突出する後突出部99と、が、叩き出し加工により設けられている。前突出部98は、前ばね部材90の前押圧部93と対向する位置に形成されており、後突出部99は、後ばね部材91の後押圧部95と対向する位置に形成されている。
【0098】
幅方向について、弾性変形していない状態における前ばね部材90の前押圧部93と、前突出部98との間隔は、雄端子11の雄タブ12の幅寸法よりも小さく設定されている。また、幅方向について、弾性変形していない状態における後ばね部材91の後押圧部95と、後突出部99との間隔は、雄端子11の雄タブ12の幅寸法よりも小さく設定されている。
【0099】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0100】
本実施形態においては、前ばね部材90、及び後ばね部材91が形成されたばね構造体84は、雌端子80の端子接続部81とは別部材とされている。
【0101】
上記の構成によれば、前ばね部材90、及び後ばね部材91を、端子接続部81とは異なる材料、又は異なる厚さ寸法で作成することができる。これにより、前ばね部材90、及び後ばね部材91を設計する際に、端子接続部81の形状や、端子接続部81を構成する材料等から受ける制約を小さくすることができる。この結果、前ばね部材90、及び後ばね部材91の設計の自由度が向上する。
【0102】
<他の実施形態>
本明細書に開示された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に開示された技術の技術的範囲に含まれる。
【0103】
(1)端子接続部、弾性接触片、複数のばね部材、及び突出部が、全て異なる部材であってもよい。
【0104】
(2)1つの雌端子が、3つ以上のばね部材を有する構成としてもよい。
【0105】
(3)端子接続部の左側壁に複数のばね部材が設けられると共に、右側壁に突出部が設けられる構成としてもよい。
【0106】
(4)複数のばね部材の延びる方向は、任意の方向を適宜に選択することができる。例えば、前ばね部材、及び後ばね部材の一方は高さ方向に延びる構成とし、他方は長さ方向に延びる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0107】
10,50,60,70,80:雌端子
11:雄端子
13,52,62,71,81:端子接続部
16:挿入口
22:弾性接触片
24:接触突部
26,51,72,90:前ばね部材(ばね部材の一例)
27,54,61,74,91:後ばね部材(ばね部材の一例)
29,73,93:前押圧部
31,75,95:後押圧部
33:突出部
34:突出部の前端部
35:突出部の後端部
98:前突出部(突出部の一例)
99:後突出部(突出部の一例)