(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】ポット精紡機における管替装置
(51)【国際特許分類】
D01H 9/06 20060101AFI20220405BHJP
D01H 1/08 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
D01H9/06
D01H1/08
(21)【出願番号】P 2018189104
(22)【出願日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【氏名又は名称】金山 明日香
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 江平
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02843996(US,A)
【文献】米国特許第03030761(US,A)
【文献】特開平07-133519(JP,A)
【文献】特開平08-060430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 9/06
D01H 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下向きに開口するポット開口部を有するポットと、下向きに開口するカバー開口部を有するとともに、前記ポットを囲む固定カバーと、前記ポットの下方でボビンを支持するボビン支持部とを備えるポット精紡機において、前記ボビン支持部に支持されるボビンを満ボビンから空ボビンに入れ替える、ポット精紡機における管替装置であって、
前記ボビンを入れ替えるための駆動機構と、
前記ボビンを入れ替える際に前記ボビンを把持するボビン把持装置を含み、前記駆動機構により所定の方向に移動する移動部分と、
前記移動部分と一体に移動するように前記移動部分に取り付けられるとともに、前記駆動機構により前記移動部分が移動することにより、前記カバー開口部を閉塞する閉塞位置と前記カバー開口部を開放する開放位置とに配置可能な蓋と、
を備え
、
前記蓋は、前記移動部分に固定される第1の蓋部材と、前記第1の蓋部材に相対移動可能に取り付けられる第2の蓋部材と、前記第2の蓋部材を付勢する付勢部材と、を備え、
前記第2の蓋部材は、前記蓋が前記閉塞位置に配置される場合に、前記付勢部材の付勢力により前記固定カバーの下端部に押し当てられる
ポット精紡機における管替装置。
【請求項2】
前記付勢部材はバネ部材である
請求項
1に記載のポット精紡機における管替装置。
【請求項3】
前記固定カバーに対する前記第2の蓋部材の押し当て部分に弾性部材が設けられている
請求項
1または
2に記載のポット精紡機における管替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポット精紡機における管替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポット精紡機においては、導糸管によってポット内に導入した糸を、ポットの高速回転にともなう遠心力を利用してポットの内壁に積層させてケークを形成した後、ポット内でボビンに糸を巻き返している。その際、ポット開口部が開放されたままポットが回転すると、ポット回転中にポット開口部を通してポット外からポット内に流れ込む空気流と、ポット内からポット外に流れ出る空気流が生じるため、ポットの風損が大きくなる。また、ポット外からポット内への空気の流れに乗って風綿がポット内に吸い込まれ、風綿の混入による糸品質の悪化を招くおそれもある。また、ポットを外部に露出させた状態でポットを高速で回転させると、ポット周囲の安全性を確保できなくなる。
【0003】
そこで、ポットの風損を低減するなどの目的で、ポットを固定カバーで囲むとともに、固定カバーのカバー開口部を蓋で閉塞するポット精紡機が知られている。また、ポット精紡機の中には、下向きに開口するポット開口部を有するポットを備え、そのポットを囲む固定カバーのカバー開口部を開閉式の蓋で閉塞可能な構成を採用したものがある(たとえば、特許文献1を参照)。この種のポット精紡機では、ポット開口部と同様にカバー開口部が下向きに配置され、そのカバー開口部を蓋で閉塞することでポットの風損が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、固定カバーのカバー開口部を開閉式の蓋で閉塞する場合は、蓋に働く重力に対抗して蓋を引き上げる必要がある。このため、蓋を動作させるための駆動源をポット精紡機に設ける必要がある。しかしながら、蓋を動作させるための駆動源をポット精紡機に設けると、駆動源の追加によってポット精紡機のコストが上昇してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、蓋を動作させるための駆動源をポット精紡機に追加しなくても、下向きに開口する固定カバーのカバー開口部を蓋によって開閉することができる、ポット精紡機における管替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下向きに開口するポット開口部を有するポットと、下向きに開口するカバー開口部を有するとともに、前記ポットを囲む固定カバーと、前記ポットの下方でボビンを支持するボビン支持部とを備えるポット精紡機において、前記ボビン支持部に支持されるボビンを満ボビンから空ボビンに入れ替える、ポット精紡機における管替装置であって、前記ボビンを入れ替えるための駆動機構と、前記ボビンを入れ替える際に前記ボビンを把持するボビン把持装置を含み、前記駆動機構により所定の方向に移動する移動部分と、前記移動部分と一体に移動するように前記移動部分に取り付けられるとともに、前記駆動機構により前記移動部分が移動することにより、前記カバー開口部を閉塞する閉塞位置と前記カバー開口部を開放する開放位置とに配置可能な蓋と、を備える。
【0008】
本発明においては、前記蓋は、前記移動部分に固定される第1の蓋部材と、前記第1の蓋部材に相対移動可能に取り付けられる第2の蓋部材と、前記第2の蓋部材を付勢する付勢部材と、を備え、前記第2の蓋部材は、前記蓋が前記閉塞位置に配置される場合に、前記付勢部材の付勢力により前記固定カバーの下端部に押し当てられるものでもよい。
【0009】
本発明において、前記付勢部材はバネ部材であってもよい。
【0010】
本発明において、前記固定カバーに対する前記第2の蓋部材の押し当て部分に弾性部材が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蓋を動作させるための駆動源をポット精紡機に追加しなくても、下向きに開口する固定カバーのカバー開口部を蓋によって開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るポット精紡機の構成例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るポット精紡機における管替装置の構成例を示す概略正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るポット精紡機における管替装置の構成例を示す概略側面図である。
【
図4】固定カバーのカバー開口部を蓋によって閉塞した状態を示す断面図である。
【
図5】ボビン把持装置に蓋を取り付けた状態を示す側面図である。
【
図6】ボビン把持装置に蓋を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図7】ボビン把持装置に蓋を取り付けた状態を示す平面図である。
【
図8】
図7におけるVIII-VIII断面図である。
【
図10】第1の蓋部材を上側から見た斜視図である。
【
図11】第1の蓋部材を下側から見た斜視図である。
【
図12】第2の蓋部材を上側から見た斜視図である。
【
図14】ポット精紡機の動作と管替装置の動作の関係を示すフローチャートである。
【
図15】押し当て力と高さ位置の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
<ポット精紡機の構成>
図1は、本発明の実施形態に係るポット精紡機の構成例を示す概略図である。
図1に示すように、ポット精紡機1は、ドラフト装置10と、吸篠管12と、導糸管14と、ポット16と、固定カバー18と、ボビン支持部20と、を備えている。なお、これらの構成要素は、紡績の一単位となる1つの紡錘を構成するものである。ポット精紡機1は複数の紡錘を備えるものであるが、ここではそのうちの1つの紡錘の構成について説明する。
【0015】
(ドラフト装置)
ドラフト装置10は糸材料を引き伸ばす装置である。ドラフト装置10は、バックローラ対21、ミドルローラ対22およびフロントローラ対23からなる複数のローラ対を用いて構成されている。複数のローラ対は、糸の送り方向の上流側から下流側に向かって、バックローラ対21、ミドルローラ対22およびフロントローラ対23の順に配置されている。
【0016】
各々のローラ対21,22,23は、図示しないドラフト駆動部の駆動に従って回転するものである。各々のローラ対21,22,23の単位時間あたりの回転数(rpm)を比較すると、ミドルローラ対22の回転数はバックローラ対21の回転数よりも高く、フロントローラ対23の回転数はミドルローラ対22の回転数よりも高い。このように各々のローラ対21,22,23の回転数は互いに異なり、この回転数の違い、すなわち回転速度差を利用して、ドラフト装置10は糸材料を細く引き伸ばす。
【0017】
(吸篠管)
吸篠管12は、ドラフト装置10から供給される糸25を吸い込むとともに、吸い込んだ糸25を導糸管14へと送り出すものである。吸篠管12は、ドラフト装置10で引き伸ばされた糸25を、空気の旋回流を利用して吸篠管12内に吸い込む。
【0018】
(導糸管)
導糸管14は、ドラフト装置10から吸篠管12を経由して搬送された糸25をポット16内に導くものである。導糸管14は、細長い管状に形成されている。導糸管14を長さ方向と直交する方向に断面したときの形状は円形になっている。導糸管14は、ドラフト装置10よりも下流側に、吸篠管12およびポット16と同軸に配置されている。導糸管14は、ポット16の上部を貫通してポット16内に挿入されている。導糸管14の上端部は糸導入口14aとして開口し、同下端部は糸排出口14bとして開口している。導糸管14の糸導入口14aから導入された糸25は、導糸管14の糸排出口14bから排出される。
【0019】
(ポット)
ポット16は、ケーク24の形成と糸の巻き返しに用いられるものである。ケーク24は、後述する導糸管14の動作によってポット16の内壁に形成される糸の積層体である。ポット16は、円筒形に形成されている。ポット16は、ポット16の中心軸Kまわりに回転可能に設けられている。ポット16の中心軸Kは、鉛直方向と平行に配置されている。このため、ポット16の中心軸方向の一方は上方、他方は下方となっている。ポット16の下端部にはポット開口部26が形成されている。ポット開口部26は、ポット16の内径と同じ径で下向きに開口している。
【0020】
(固定カバー)
固定カバー18は、ポット16を囲むように配置されている。固定カバー18は、固定部27に固定されている。固定カバー18は、ポット16よりも大きな直径で円筒形に形成されている。固定カバー18はポット16と同軸に配置されている。固定カバー18の上端側の開口部は固定部27によって閉塞されている。一方、固定カバー18の下端部にはカバー開口部28が設けられている。カバー開口部28は、固定カバー18の内径と同じ径で下向きに開口している。また、カバー開口部28はポット開口部26よりも下方に配置されている。
【0021】
(ボビン支持部)
ボビン支持部20は、ポット16の下方でボビン30を支持するものである。ボビン支持部20は、昇降レール31と、ボビン支持部材32とを有している。昇降レール31は昇降可能に設けられている。ボビン支持部材32は昇降レール31に取り付けられている。ボビン支持部材32は、ボビン30が着脱自在に装着される部分となる。ボビン支持部材32は、ポット16の中心軸Kで導糸管14と対向するように、導糸管14およびポット16と同軸に配置されている。このため、ボビン支持部材32にボビン30を装着すると、ボビン30はポット16の中心軸K上で導糸管14と対向して配置される。
【0022】
ボビン30は、ボビン外周径がボビン中心軸方向の一端側から他端側に向かって連続的に変化するテーパー構造になっている。ボビン30は、ボビン支持部材32から垂直に起立して支持される。ボビン30の外周径は、ポット16の内壁に形成されるケーク24の最小径よりも小さく設定されている。これにより、ポット16のポット開口部26を通してポット16内にボビン30を挿入して配置するときに、ボビン30とケーク24の接触を避けることができる。
【0023】
<ポット精紡機の動作>
次に、本発明の実施形態に係るポット精紡機の動作について説明する。
まず、粗糸などの糸材料をドラフト装置10で引き伸ばす。ドラフト装置10で引き伸ばされた糸25は、空気の旋回流などを利用して吸篠管12に吸い込まれた後、糸導入口14aから導糸管14に導入される。導糸管14に導入された糸25は、導糸管14の糸排出口14bから排出される。一方で、ポット16は所定の速度で回転させられる。固定カバー18は、ポット16が回転しているか否かにかかわらず常に停止している。
【0024】
上述のように導糸管14の糸排出口14bから排出される糸25には、ポット16の回転による遠心力が働き、この遠心力によって糸25がポット16の内壁に押し付けられる。また、導糸管14の糸排出口14bから排出される糸25は、ポット16の回転によって撚りを加えられた状態でポット16の内壁に巻き付けられる。また、導糸管14は、所定の周期で繰り返し上下方向に往復移動しながら、相対的に下方に変位する。これにより、ポット16の内壁に糸25が巻き付けられるとともに、その巻き付け位置をずらしながら糸25が積層される結果、ポット16の内壁にケーク24が形成される。
【0025】
次に、ポット16の回転を継続したまま、昇降レール31の上昇によってボビン30をポット16内に挿入する。次に、ケーク24を形成している糸をボビン30に巻き返す。ボビン30に対する糸の巻き返しは、たとえば、ケーク24を形成している糸の端に糸ほぐし部材(不図示)を接触させることにより行うことができる。
【0026】
その後、ケーク24を形成しているすべての糸をボビン30に巻き返し終えたら、昇降レール31の下降によってポット16からボビン30を取り出す。このとき、ポット16から取り出されるボビン30は、所定量の糸が巻かれた満管のボビン、すなわち満ボビンとなる。
【0027】
<管替装置の構成>
図2は、本発明の実施形態に係るポット精紡機における管替装置の構成例を示す概略正面図であり、
図3は同概略側面図である。
管替装置40は、ボビン支持部20に支持されるボビン30を満ボビンから空ボビンに入れ替える装置である。管替装置40は、ポット精紡機1が有するすべての錘を対象に一斉にボビンの入れ替えを行う一斉式管替装置に相当する。管替装置40は、ボビンの入れ替えに際してボビン30を把持するボビン把持装置42(
図3を参照)と、ボビン把持装置42を支持するドッフィングバー44と、ドッフィングバー44を昇降動作させるパンタグラフ機構46と、パンタグラフ機構46をチルト動作させるチルト機構48と、を備えている。このうち、ボビン把持装置42およびドッフィングバー44は、本発明における「移動部分」を構成し、パンタグラフ機構46およびチルト機構48は、本発明における「駆動機構」を構成する。
【0028】
ボビン把持装置42には、たとえば、特開平9-87931号公報に記載されたボビン把持装置を適用可能である。同公報に記載されたボビン把持装置は、固定把持部材と可動把持部材とダイヤフラムと付勢手段とを備える。このボビン把持装置では、可動把持部材にダイヤフラムを介して流体圧力を作用させることにより、可動把持部材を解放位置から把持位置へと移動させ、固定把持部材と可動把持部材との間にボビンを把持する。また、このボビン把持装置では、ダイヤフラムへの流体圧力の作用を解除することにより、可動把持部材を付勢手段によって解放位置に移動させ、ボビンの把持を解除する。
【0029】
ドッフィングバー44は、
図2に示すように正面方向から見て水平な姿勢を維持しながら、パンタグラフ機構46の駆動に従って昇降動作するものである。
図3に示すように、ドッフィングバー44にはボビン把持装置42が取り付けられている。また、ボビン把持装置42には蓋50が取り付けられている。蓋50は、固定カバー18のカバー開口部28を開閉するためのものである。蓋50は、ボビン把持装置42やドッフィングバー44と一体に移動するようにボビン把持装置42に取り付けられている。蓋50の構成については後段で説明する。
【0030】
パンタグラフ機構46は、駆動シャフト52を中心に回動可能に支持されている。パンタグラフ機構46は、第1のリンク53と、第2のリンク54と、を備えている。第1のリンク53の一端部53aはドッフィングバー44にピン連結され、第1のリンク53の他端部53bは移動ブラケット55にピン連結されている。ピン連結とは、連結の対象となる2つの部材をピンを用いて回転自在に連結することをいう。駆動シャフト52は、パワーシリンダ51の駆動によって精紡機長手方向Xに往復移動可能に設けられている。移動ブラケット55は、駆動シャフト52と一体に精紡機長手方向Xに移動するように駆動シャフト52に固定されている。
【0031】
第2のリンク54は、第1のリンク53の1/2の長さを有する。第2のリンク54の一端部54aは第1のリンク53の長さ方向の中間部にピン連結されている。第2のリンク54の他端部54bは支持ブラケット56にピン連結されている。支持ブラケット56は、固定ブラケット57により駆動シャフト52の軸方向への移動が規制されている。支持ブラケット56は、精紡機長手方向Xへの駆動シャフト52の移動を許容する状態で、駆動シャフト52に回動可能に取り付けられている。
【0032】
一方、チルト機構48は、以下のように構成されている。
まず、支持ブラケット56にはレバー56aが設けられている。レバー56aは支持ブラケット56に一体に設けられている。レバー56aは、駆動シャフト52の軸方向と直交する方向に突出して配置されている。また、レバー56aの突出端の近傍にはロッド59が配置されている。ロッド59は、駆動シャフト52の軸方向と平行な方向に移動可能に設けられている。ロッド59は、図示しないエアーシリンダの駆動に従って駆動シャフト52の軸方向と平行な方向に往復移動する。
【0033】
ロッド59の近傍にはブラケット61が配置されている。ブラケット61は、精紡機長手方向Xにおいて支持ブラケット56に対応する位置に固定して設けられている。ブラケット61には側面V字状の駆動レバー62がその屈曲部において回動可能に支持されている。駆動レバー62の一端部はロッド59に回動可能に連結されている。駆動レバー62の他端部はリンク63を介してレバー56aと連結されている。そして、ロッド59の往復移動により駆動レバー62が回動されてリンク63が上下動され、レバー56aの先端がリンク63を介して上下動される構成になっている。すなわち、上記エアーシリンダの駆動により支持ブラケット56がレバー56aと一体に駆動シャフト52を中心に回動され、パンタグラフ機構46全体が支持ブラケット56と共に駆動シャフト52を中心に回動される構成になっている。
【0034】
<管替装置の動作>
次に、本発明の実施形態に係る管替装置の動作について説明する。
管替装置40の動作には主に2つの動作がある。1つはパンタグラフ機構46による昇降動作であり、もう1つはチルト機構48によるチルト動作である。
【0035】
(昇降動作)
まず、パワーシリンダ51に駆動によって駆動シャフト52を精紡機長手方向Xに移動させると、精紡機長手方向Xにおいて移動ブラケット55が支持ブラケット56に対して接近または離間する方向に移動する。このとき、移動ブラケット55が支持ブラケット56に接近する方向に移動すると、第1のリンク53と第2のリンク54の動作によりドッフィングバー44が上方に移動する。また、移動ブラケット55が支持ブラケット56から離間する方向に移動すると、第1のリンク53と第2のリンク54の動作によりドッフィングバー44が下方に移動する。したがって、パワーシリンダ51を駆動源としたパンタグラフ機構46の動作によりドッフィングバー44を上下方向に移動、すなわち昇降動作させることができる。
【0036】
(チルト動作)
一方、上記エアーシリンダの駆動によってロッド59を駆動シャフト52の軸方向に移動させると、駆動レバー62が回動してリンク63が上下動する。リンク63が上下動すると、レバー56aも上下動する。このため、支持ブラケット56は、駆動シャフト52を中心に回動する。また、パンタグラフ機構46は、移動ブラケット55および支持ブラケット56を介して駆動シャフト52に支持されているため、駆動シャフト52を中心に支持ブラケット56が回動すると、パンタグラフ機構46全体が支持ブラケット56と共に駆動シャフト52を中心に回動する。これにより、パンタグラフ機構46を
図3に示す垂直姿勢からA方向に傾かせたり、一旦傾かせたパンタグラフ機構46を垂直姿勢に戻したりすることができる。したがって、エアーシリンダを駆動源としたチルト機構48の動作により、ボビン把持装置42およびドッフィングバー44を
図3に示すA方向またはその反対のB方向に移動させることができる。以降の説明では、パンタグラフ機構46と一体にボビン把持装置42およびドッフィングバー44を
図3のA方向に移動させるときのチルト機構48の動作を「第1のチルト動作」とし、
図3のB方向に移動させるときのチルト機構48の動作を「第2のチルト動作」という。
【0037】
<蓋の構成>
図4は、固定カバーのカバー開口部を蓋によって閉塞した状態を示す断面図である。また、
図5は、ボビン把持装置に蓋を取り付けた状態を示す側面図であり、
図6は、同斜視図である。また、
図7は、ボビン把持装置に蓋を取り付けた状態を示す平面図であり、
図8は、
図7におけるVIII-VIII断面図、
図9は、
図7におけるIX-IX断面図である。
【0038】
蓋50は、第1の蓋部材71と、第2の蓋部材72と、付勢部材73と、弾性部材74と、を備えている。以下、各々の部材について説明する。
【0039】
(第1の蓋部材)
図10は、第1の蓋部材を上側から見た斜視図であり、
図11は、第1の蓋部材を下側から見た斜視図である。
第1の蓋部材71は、ボビン把持装置42のグリッパ75に固定されるもので、たとえば、樹脂の一体成形品によって構成される。ボビン把持装置42は、パワーシリンダ51を駆動源とするパンタグラフ機構46の動作により、固定カバー18に対して相対的に移動可能となっている。グリッパ75は、ボビン把持装置42の本体部分を構成するものである。グリッパ75の上端部には庇部751が形成され、この庇部751を利用して第1の蓋部材71がグリッパ75に固定されている。
【0040】
また、第1の蓋部材71は、平面視円形に形成されている。第1の蓋部材71は、周壁部711と底板部712と上板部713とを一体に有している。周壁部711は円環状に形成されている。底板部712には複数のピン714が設けられている。各々のピン714は、底板部712から垂直に起立した状態で形成されている。また、底板部712には一対のスナップフィット715が形成されている。各々のスナップフィット715は、底板部712の厚み方向に弾性変形可能に設けられている。
【0041】
周壁部711の外周面には複数のガイド溝716と複数の引っ掛け部717が形成されている。本実施形態においては、一例として、円周方向に120°の角度間隔で3つのピン714が設けられるとともに、3つのピン714に対応して3つのガイド溝716が設けられている。また、各々の引っ掛け部717は、ガイド溝716の上端部に形成されている。第1の蓋部材71の下面側の中央部にはL字形の挟み込み部718が形成されている。挟み込み部718は、底板部712との間にグリッパ75の庇部751を挟み込むものである。第1の蓋部材71は、底板部712と挟み込み部718との間にグリッパ75の庇部751を挟み込み、かつ、一対のスナップフィット715をグリッパ75の肩部752(
図5および
図6を参照)に引っ掛けることにより、グリッパ75に固定される。
【0042】
(第2の蓋部材)
図12は、第2の蓋部材を上側から見た斜視図であり、
図13は、第2の蓋部材を下側から斜視図である。
第2の蓋部材72は、第1の蓋部材71に相対移動可能に取り付けられるもので、たとえば、樹脂の一体成形品によって構成される。第2の蓋部材72は、第1の蓋部材71と同様に平面視円形に形成されている。第2の蓋部材72は、周壁部721と上板部722と段差部723とを一体に有している。周壁部721は円環状に形成されている。上板部722には円環状の突出部724が形成されている。段差部723は、上板部722よりも第2の蓋部材72の外周側に、上板部722よりも一段低く形成されている。段差部723には
図8に示すように弾性部材74が取り付けられる。
【0043】
上板部722の下面側には複数のリブ725が形成されている。複数のリブ725は、第2の蓋部材72の中心部から放射状に延出している。各々のリブ725の延出端には平面視円形の収容孔726が設けられている。収容孔726には付勢部材73の一部が収容される。収容孔726は、第1の蓋部材71が有するピン714に対応して設けられたものである。第1の蓋部材71に第2の蓋部材72を取り付けた状態では、相対応するピン714と収容孔726とが同軸に配置される。また、周壁部721の内周面には複数の爪727が形成されている。複数の爪727は、複数のガイド溝716および複数の引っ掛け部717に対応して形成されたものである。
【0044】
(付勢部材)
付勢部材73は、第2の蓋部材72を付勢するものである。本実施形態では一例として付勢部材73がバネ部材、より具体的には圧縮コイルバネによって構成されている。付勢部材73は、ピン714および収容孔726の個数にあわせて3つ設けられている。各々の付勢部材73はピン714に取り付けられている。また、各々の付勢部材73の上側部分は収容孔726に収容されている。これにより、第2の蓋部材72は、3つの付勢部材73によって上方向に付勢されている。
【0045】
(弾性部材)
弾性部材74は、平面視ドーナツ形に形成されている。弾性部材74は、第2の蓋部材72の段差部723に取り付けられている。弾性部材74は、たとえば、スポンジ、ゴムなどの弾性材料、好ましくは、ゴム状弾性を有する軟質の樹脂によって構成される。
【0046】
本実施形態において、蓋50は、第1の蓋部材71、第2の蓋部材72、付勢部材73、および弾性部材74を用いて次のように組み立てられる。
まず、第1の蓋部材71に設けられた3つのピン714にそれぞれ付勢部材73を取り付ける。次に、ピン714の位置と収容孔726の位置を互いに合わせた状態で、第1の蓋部材71に第2の蓋部材72を被せる。このとき、付勢部材73の付勢力に抗して第2の蓋部材72を押し込むと、爪727が引っ掛け部717を乗り越えてガイド溝716に嵌まり込む。これにより、第2の蓋部材72は、ガイド溝716に沿って上下方向に移動可能に支持される。また、第2の蓋部材72は付勢部材73の付勢力によって上方向に付勢され、その付勢力を受けて爪727が引っ掛け部717に突き当てられる。また、蓋50の直径方向において、第1の蓋部材71の周壁部711と第2の蓋部材72の周壁部721との間には、後述する蓋50の傾き補正のための隙間が確保される。
このように蓋50を組み立てることにより、第2の蓋部材72は、第1の蓋部材71に対して相対移動可能に取り付けられる。
【0047】
<蓋による開閉動作>
次に、蓋50を用いて固定カバー18のカバー開口部28を開閉する動作について説明する。
【0048】
まず、
図3に示す状態のもとで、
図4に示すパワーシリンダ51の駆動により駆動シャフト52を精紡機長手方向Xに移動させると、パンタグラフ機構46の動作によってドッフィングバー44が昇降動作する。このとき、ボビン把持装置42に取り付けられている蓋50は、ボビン把持装置42およびドッフィングバー44と一体に移動する。これにより、ドッフィングバー44が上昇動作した場合は、蓋50が固定カバー18に接近する方向、すなわち上方に移動し、ドッフィングバー44が下降動作した場合は、蓋50が固定カバー18から離間する方向、すなわち下方に移動する。
【0049】
このように、蓋50を固定カバー18に接近する方向に移動させたり、蓋50を固定カバー18から離間する方向に移動させたりすることにより、蓋50を少なくとも2つの異なる位置、すなわちカバー開口部28を閉塞する閉塞位置とカバー開口部28を開放する開放位置とに配置することができる。したがって、管替装置40のパンタグラフ機構46の動作を利用して固定カバー18のカバー開口部28を蓋50により開閉することができる。なお、
図3は、蓋50を開放位置に配置した状態を示し、
図4は、蓋50を閉塞位置に配置した状態を示している。
【0050】
次に、ポット精紡機の動作と管替装置の動作の関係について
図14を参照して説明する。
【0051】
まず、管替装置40において、パンタグラフ機構46の動作により蓋50を閉塞位置に配置する(ステップS21)。これにより、固定カバー18のカバー開口部28が蓋50によって閉塞された状態になる。
【0052】
次に、ポット精紡機1において、ポット16の内壁にケーク24を形成する(ステップS11)。ここで、ポット精紡機1がケーク24の形成を開始してから終了するまでの期間を紡出期間と定義すると、蓋50は紡出期間中、閉塞位置に配置されたままになる。このため、ケーク24の形成はカバー開口部28を閉塞した状態で行われる。
【0053】
次に、管替装置40において、パンタグラフ機構46の下降動作により蓋50を閉塞位置から開放位置へと移動させる(ステップS22)。これにより、固定カバー18のカバー開口部28が開放した状態になる。
【0054】
次に、管替装置40において、チルト機構48の第1のチルト動作によりパンタグラフ機構46を
図3のA方向に傾ける(ステップS23)。これにより、ボビン把持装置42と蓋50を、ボビン30と干渉しない退避位置に退避させることができる。
【0055】
次に、ポット精紡機1において、昇降レール31の上昇動作により空のボビン30をポット16内に挿入し、ケーク24を形成している糸をボビン30に巻き返す(ステップS12)。
【0056】
次に、ポット精紡機1において、糸の巻き返しを終えたら、昇降レール31の下降動作によって満管のボビン30をポット16から取り出す(ステップS13)。
【0057】
なお、ポット精紡機1がステップS11でケーク24を形成している間、ボビン30とは別の空ボビンがボビントレイ(不図示)に載せて所定の待機位置まで搬送される。ボビントレイは、ポット精紡機1および管替装置40に対して、空ボビンの搬入と満ボビンの搬出を行うボビン搬送装置に設けられるものである。
【0058】
管替装置40は、ポット精紡機1がステップS12およびステップS13の動作を行っている間、ボビントレイに載せられている空ボビンをグリッパ75で把持して中間ペッグ(不図示)に装着する(ステップS24)。この管替装置40の動作は、パンタグラフ機構46の動作とチルト機構48の動作を利用して行われる。
【0059】
次に、チルト機構48の第2のチルト動作によりパンタグラフ機構46を
図3のB方向に移動させる(ステップS25)。これにより、パンタグラフ機構46は垂直姿勢に戻る。このとき、グリッパ75と蓋50は、ポット16の下方に配置される。
【0060】
次に、昇降レール31の上昇動作によってグリッパ75にボビン30の上端部を挿入した後、ボビン把持装置42の駆動により満管のボビン30をグリッパ75で把持する(ステップS26)。
【0061】
次に、昇降レール31の下降動作により満管のボビン30をボビン支持部材32から取り外す(ステップS27)。
【0062】
その後、パンタグラフ機構46の動作とチルト機構48の動作を利用して満管のボビン30をボビントレイに移載する(ステップS28)。
【0063】
次に、中間ペッグに装着されている空ボビンをボビン把持装置42のグリッパ75で把持した後、パンタグラフ機構46の動作とチルト機構48の動作を利用して空ボビンをボビン支持部材32に装着する(ステップS29)。
以降は、ポット精紡機1および管替装置40において上記同様の動作が繰り返される。
【0064】
図4は、上記ステップS1において蓋50を閉塞位置に配置した状態を示している。この状態では、固定カバー18の下端部に蓋50の弾性部材74が押し当てられる。これにより、固定カバー18の下端部に弾性部材74が密着する。このため、固定カバー18と蓋50との接触部分における密封性を高めることができる。よって、固定カバー18内から固定カバー18外への空気の漏れをより効果的に抑制することができる。また、固定カバー18と蓋50との接触部分に風綿や糸などの異物がかみこんだ場合は、そのかみこみ部分で弾性部材74が局部的に弾性変形する。このため、異物のかみこみに起因する空気の漏れを抑制することができる。
【0065】
また、パンタグラフ機構46の動作によって蓋50を閉塞位置に配置する場合に、管替装置40の部品寸法誤差や部品組立誤差などに起因して、蓋50の姿勢に傾きが生じたり、その傾き度合いにバラツキを生じたりすることが考えられる。この点に関し、本実施形態においては、第1の蓋部材71に移動可能に第2の蓋部材72を取り付けるとともに、第2の蓋部材72を付勢部材73により上方に付勢している。そして、蓋50が閉塞位置に配置される場合、第2の蓋部材72は、付勢部材73の付勢力により固定カバー18の下端部に押し当てられる構成となっている。このため、蓋50の傾きに起因して固定カバー18の下端部に第2の蓋部材72が片当たりした場合でも、第1の蓋部材71に対して第2の蓋部材72が付勢部材73の付勢力を受けながら相対移動することにより、蓋50の傾きを補正することができる。
【0066】
また、パンタグラフ機構46の動作によって蓋50を閉塞位置に配置する場合に、蓋50が停止する高さ位置にバラツキが生じることが考えられる。そのような高さ位置のバラツキについては、固定カバー18の下端部に第2の蓋部材72を押し当てるときに、付勢部材73を構成するバネ部材のストロークで吸収することができる。
【0067】
また、付勢部材73をバネ部材で構成すれば、固定カバー18の下端部に第2の蓋部材72を押し当てるときに、付勢部材73を構成するばね部材のたわみを利用して適正な押し当て力を確保することができる。
【0068】
図15は、押し当て力と高さ位置の関係を示す図である。図中の縦軸は、固定カバー18の下端部に第2の蓋部材72を押し当てるときの押し当て力を示し、横軸は、パンタグラフ機構46の動作によって閉塞位置に停止する蓋50の高さ位置を示している。
図15に示すように、蓋50の高さ位置が高くなると、付勢部材73を構成するバネ部材のたわみ量が徐々に増加するため、第2の蓋部材72の押し当て力が大きくなる。したがって、第2の蓋部材72の押し当て力の適正範囲がFであるとすると、蓋50の高さ位置にHのバラツキがあっても、そのバラツキの範囲内で適正な押し当て力を確保することができる。
【0069】
一方、蓋50を閉塞位置に配置した状態のもとで、パンタグラフ機構46の動作によりドッフィングバー44を下降動作させると、蓋50が固定カバー18から離間する方向に移動する。これにより、蓋50を閉塞位置から開放位置へと移動させ、固定カバー18のカバー開口部28を開放させることができる。また、ボビン支持部材32に装着したボビン30を昇降レール31の昇降動作によってポット16に出し入れする場合は、蓋50を開放位置に配置した状態でチルト機構48の動作によりパンタグラフ機構46を
図3のA方向に傾けることにより、グリッパ75と蓋50を、ボビン30と干渉しない位置に退避させることができる。
【0070】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、管替装置40がボビンの入れ替えのために備えるパンタグラフ機構46の動作を利用して、ドッフィングバー44と共にボビン把持装置42を上下方向に移動させることにより、蓋50を閉塞位置と開放位置とに配置可能な構成を採用している。これにより、蓋50を動作させるための駆動源(以下、「蓋用駆動源」という。)をポット精紡機1や管替装置40に追加しなくても、固定カバー18のカバー開口部28を蓋50によって開閉することができる。このため、蓋用駆動源をポット精紡機1に追加する場合に比べて、ポット精紡機1のコストを低減することができる。また、蓋用駆動源をポット精紡機1に追加すると、蓋用駆動源が他部品と干渉するおそれがあるが、本実施形態によれば蓋用駆動源の追加が不要であるため、他部品との干渉を招くこともない。
【0071】
また、本発明の実施形態においては、第2の蓋部材72が第1の蓋部材71に対して相対移動可能に取り付けられている。また、第2の蓋部材72は付勢部材73によって付勢され、その付勢力によって第2の蓋部材72が固定カバー18の下端部に押し当てられる構成になっている。このため、管替装置40の部品寸法誤差や部品組立誤差などに起因して蓋体50が傾いている場合は、この傾きを補正する方向に第2の蓋部材72が動く。よって、蓋50の傾きを、第1の蓋部材71に対する第2の蓋部材72の相対移動によって補正することができる。
【0072】
また、本発明の実施形態においては、付勢部材73をバネ部材で構成しているため、蓋50を閉塞位置に停止させるときの高さ位置のバラツキをバネ部材のストロークで吸収することができる。さらに、固定カバー18の下端部に第2の蓋部材72を押し当てる場合にも、ばね部材のたわみを利用して適正な押し当て力を確保することができる。
【0073】
また、本発明の実施形態においては、固定カバー18に対する第2の蓋部材72の押し当て部分に弾性部材74を設けた構成を採用しているため、固定カバー18と蓋50との接触部分における密封性を高めて空気の漏れを抑制することができる。
【0074】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0075】
たとえば、上記実施形態においては、カバー開口部28を開閉するための蓋50をボビン把持装置42に取り付けた構成を採用したが、本発明はこれに限らず、たとえば、蓋50をドッフィングバー44に取り付けた構成を採用してもよい。また、本発明における「移動部分」は、ボビン把持装置42やドッフィングバー44に限らず、パンタグラフ機構46の動作によって上下方向に移動する部分であればよい。
【0076】
また、上記実施形態においては、第1の蓋部材71に挟み込み部718と一対のスナップフィット715とを形成し、これらの構成部分を利用して第1の蓋部材71をグリッパ75に固定した構成を採用したが、本発明はこれに限らず、たとえば、ボルトなどの締結具、または接着剤などを用いて第1の蓋部材71をグリッパ75に固定してもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、付勢部材の好ましい例として圧縮コイルバネを例に挙げたが、これに限らず、たとえば、板バネ、ねじりコイルバネなどのバネ部材によって付勢部材を構成してもよいし、バネ以外の部材によって付勢部材を構成してもよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、ポット16を固定カバー18で直接囲む構成を例示したが、これに限らず、ポット16を図示しない回転カバーで囲み、この回転カバーを介してポット16を固定カバー18で囲む構成を採用してもよい。回転カバーは、ポット16と一体に回転するものである。
【0079】
また、固定カバー18のカバー開口部28を蓋50で閉塞する場合、蓋50の中心部には孔が形成されていてもよい。その理由は次のとおりである。固定カバー18のカバー開口部28を開放したままポット16を高速で回転させると、ポット16の回転軸K近傍の空間は負圧になり、ポット16の中心軸Kから離れたポット16の外周側の空間は正圧になる。このため、ポット16の中心軸K近傍の空間では、ポット16外からポット16内に流れ込む空気流が生じ、ポット16の中心軸Kから離れた外周側の空間では、ポット16内からポット16外に流れ出る空気流が生じる。これに対し、固定カバー18のカバー開口部28を蓋50で閉塞した場合は、ポット16の外周側において、ポット16内からポット16外への空気の流れ出しが蓋50によって阻止される。このため、蓋50の中心部に孔が存在しても、その孔を通してポット16内に空気が流れ込むことがない。よって、蓋50の中心部にポット内径の50%以下の孔が形成されていても、空気の漏れを抑制する効果と風綿の吸い込みを抑制する効果は得られる。
【符号の説明】
【0080】
1 ポット精紡機、16 ポット、18 固定カバー、26 ポット開口部、28 カバー開口部、20 ボビン支持部、30 ボビン、40 管替装置、42 ボビン把持装置(移動部分)、44 ドッフィングバー(移動部分)、46 パンタグラフ機構(駆動機構)、48 チルト機構(駆動機構)、50 蓋、71 第1の蓋部材、72 第2の蓋部材、73 付勢部材、74 弾性部材。