(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】紡機のスピンドル制御方法およびスピンドル制御装置
(51)【国際特許分類】
D01H 1/244 20060101AFI20220405BHJP
D01H 13/16 20060101ALI20220405BHJP
D01H 1/26 20060101ALI20220405BHJP
D01H 13/32 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
D01H1/244
D01H13/16 A
D01H1/26
D01H13/32
(21)【出願番号】P 2018212608
(22)【出願日】2018-11-13
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(72)【発明者】
【氏名】小島 直樹
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-105772(JP,A)
【文献】特開平07-048739(JP,A)
【文献】特開2004-059426(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02565306(EP,A2)
【文献】特開平03-090633(JP,A)
【文献】特開2008-026565(JP,A)
【文献】特開2002-207855(JP,A)
【文献】特公昭51-013776(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 1/244
D01H 13/16
D01H 1/26
D01H 13/32
B65H 55/00-55/04
B65H 55/04-63/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の錘にそれぞれスピンドルが設けられた紡機のスピンドル制御方法であって、
紡出期間を複数の区間に分けて、前記区間ごとにスピンドルの目標回転速度と糸切れの目標数とを設定する設定工程と、
前記紡出期間中、前記複数の錘を対象に糸切れの発生数を前記区間ごとに検出する検出工程と、
前記紡出期間中、前記糸切れの発生数と前記糸切れの目標数との差分を前記区間ごとに演算する演算工程と、
前記紡出期間中、今回の区間に至るまでの複数の区間について、前記糸切れの発生数と前記糸切れの目標数との差分の変化傾向を、前記変化傾向の違いによって分類する分類工程と、
前記紡出期間中、前記演算工程での演算結果と前記分類工程での分類結果とに基づいて、次の区間に適用する前記スピンドルの目標回転速度を変更する変更工程と、
前記紡出期間中、前記変更後の前記スピンドルの目標回転速度に基づいて、前記次の区間の前記スピンドルの回転速度を制御する制御工程と、
を含む紡機のスピンドル制御方法。
【請求項2】
複数の錘にそれぞれスピンドルが設けられた紡機のスピンドル制御装置であって、
紡出期間を複数の区間に分けて、前記区間ごとにスピンドルの目標回転速度と糸切れの目標数とを設定するための設定部と、
前記紡出期間中、前記複数の錘を対象に糸切れの発生数を前記区間ごとに検出する糸切れ検出部と、
前記紡出期間中、前記糸切れの発生数と前記糸切れの目標数との差分を前記区間ごとに演算する演算部と、
前記紡出期間中、今回の区間に至るまでの複数の区間について、前記糸切れの発生数と前記糸切れの目標数との差分の変化傾向を、前記変化傾向の違いによって分類する分類部と、
前記紡出期間中、前記演算部での演算結果と前記分類部での分類結果とに基づいて、次の区間に適用する前記スピンドルの目標回転速度を変更する変更部と、
前記紡出期間中、前記変更後の前記スピンドルの目標回転速度に基づいて、前記次の区間の前記スピンドルの回転速度を制御する制御部と、
を備える紡機のスピンドル制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡機のスピンドル制御方法およびスピンドル制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精紡機や撚糸機などの紡機には、1台の機台に対して、たとえば2千程度の錘が設けられる。このように複数の錘を備える紡機には、各々の錘ごとにスピンドルが設けられる。そして、紡機を運転する場合は、スピンドルの回転速度が予め設定された変速パターンに従って制御される。
【0003】
ところで、紡機の紡出期間中には、何らかの原因で糸切れが発生することがある。紡出期間とは、スピンドルの回転によってボビンに糸を巻き始めてから巻き終えるまでの期間、すなわち1ドッフ間をいう。紡出期間中に糸切れが発生すると、作業者による糸継ぎ作業が必要になる。このため、糸切れの発生をなるべく抑えたいという要望がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、スピンドルの回転速度が速くなると糸切れが発生しやすくなることを考慮して、紡出期間に発生した糸切れ数の積算値が予め設定された許容値を超えたとき、次回の運転時にスピンドルの回転速度を下げる技術が記載されている。また、特許文献1には、紡出期間を複数の区間に分けて、区間ごとに積算した糸切れ数の積算値が予め設定された許容値を超えた区間があった場合は、その区間について、次回の運転時にスピンドルの回転速度を下げる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、今回の運転による紡出期間中に糸切れ数の積算値が許容値を超えた場合に、次回の運転時にスピンドルの回転速度を下げるようにしているため、糸切れの発生に対するスピンドル制御の応答性が低いという欠点がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、糸切れの発生に対するスピンドル制御の応答性を高めることができる、紡機のスピンドル制御方法およびスピンドル制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の錘にそれぞれスピンドルが設けられた紡機のスピンドル制御方法であって、紡出期間を複数の区間に分けて、前記区間ごとにスピンドルの目標回転速度と糸切れの目標数とを設定する設定工程と、前記紡出期間中、前記複数の錘を対象に糸切れの発生数を前記区間ごとに検出する検出工程と、前記紡出期間中、前記糸切れの発生数と前記糸切れの目標数との差分を前記区間ごとに演算する演算工程と、前記紡出期間中、今回の区間に至るまでの複数の区間について、前記糸切れの発生数と前記糸切れの目標数との差分の変化傾向を、前記変化傾向の違いによって分類する分類工程と、前記紡出期間中、前記演算工程での演算結果と前記分類工程での分類結果とに基づいて、次の区間に適用する前記スピンドルの目標回転速度を変更する変更工程と、前記紡出期間中、前記変更後の前記スピンドルの目標回転速度に基づいて、前記次の区間の前記スピンドルの回転速度を制御する制御工程と、を含む。
【0009】
また、本発明は、複数の錘にそれぞれスピンドルが設けられた紡機のスピンドル制御装置であって、紡出期間を複数の区間に分けて、前記区間ごとにスピンドルの目標回転速度と糸切れの目標数とを設定するための設定部と、前記紡出期間中、前記複数の錘を対象に糸切れの発生数を前記区間ごとに検出する糸切れ検出部と、前記紡出期間中、前記糸切れの発生数と前記糸切れの目標数との差分を前記区間ごとに演算する演算部と、前記紡出期間中、今回の区間に至るまでの複数の区間について、前記糸切れの発生数と前記糸切れの目標数との差分の変化傾向を、前記変化傾向の違いによって分類する分類部と、前記紡出期間中、前記演算部での演算結果と前記分類部での分類結果とに基づいて、次の区間に適用する前記スピンドルの目標回転速度を変更する変更部と、前記紡出期間中、前記変更後の前記スピンドルの目標回転速度に基づいて、前記次の区間の前記スピンドルの回転速度を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紡機でスピンドルを制御する際に、糸切れの発生に対するスピンドル制御の応答性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係るスピンドル制御装置の概略構成図である。
【
図2】スピンドルの目標回転速度の設定例を示す図である。
【
図4】本実施の形態に係るスピンドル制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】(A)および(B)は糸切れ発生数と糸切れ目標数との差分の変化傾向が安定傾向に分類されるパターンの一例を示す図である。
【
図6】(A)および(B)は糸切れ発生数と糸切れ目標数との差分の変化傾向が良化傾向に分類されるパターンの一例を示す図である。
【
図7】(A)および(B)は糸切れ発生数と糸切れ目標数との差分の変化傾向が悪化傾向に分類されるパターンの一例を示す図である。
【
図8】スピンドルの目標回転速度の変更例を示す図である。
【
図9】(A)は次の区間に適用するスピンドルの目標回転速度を遅くする場合の変更例を示し、(B)は次の区間に適用するスピンドルの目標回転速度を速くする場合の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係るスピンドル制御装置の概略構成図である。
本実施の形態に係るスピンドル制御装置10は、図示しない複数の錘を備える紡機に用いられるものである。スピンドル制御装置10は、上述した複数の錘にそれぞれ設けられるスピンドル1の回転速度を制御する装置である。スピンドル1にはボビン2が装着され、スピンドル1の回転によってボビン2に糸(図示せず)が巻かれる。
【0013】
図1に示すように、スピンドル制御装置10は、スピンドルモータ12と、スピンドルモータ12を制御するモータ制御部13と、スピンドル制御に用いられる各種のデータを記憶する記憶部14と、スピンドルの目標回転速度と糸切れの目標数とを設定するための設定部15と、糸切れ数を検出する糸切れ検出部16と、糸切れの発生数と糸切れの目標数との差分を演算する演算部17と、糸切れの発生数と糸切れの目標数との差分の変化傾向を分類する分類部18と、演算部17での演算結果と分類部18での分類結果とに基づいて、スピンドルの目標回転数を変更する変更部19と、区間認識部20とを備えている。
【0014】
スピンドルモータ12は、スピンドル1を回転させる駆動源となるものである。モータ制御部13は、記憶部14に記憶されるスピンドル変速パターンに基づいて、スピンドルモータ12の駆動を制御する。
【0015】
記憶部14には、
図2に示すように、区間ごとにスピンドルの目標回転速度を示すデータ、すなわちスピンドル変速パターンが記憶される。
図2においては、縦軸にスピンドル目標回転速度(rpm)、横軸に区間をとっている。本実施の形態においては、一例として、紡出期間を該期間の開始側から順に、第1区間から第10区間までの計10区間に分けている。そして、区間ごとにスピンドルの目標回転速度を設定している。紡出期間は、ボビン2に巻き取られる糸の長さによって規定される期間である。スピンドルの目標回転速度は、第1区間から第6区間までは段階的に速くなるように設定され、第6区間から第9区間までは最高速に維持するように設定され、第10区間では最高速よりも遅くなるように設定されている。また、記憶部14には、
図3に示すように、区間ごとに糸切れの目標数を示すデータが記憶される。
図3においては、縦軸に糸切れの目標数、横軸に区間をとっている。糸切れの目標数は、第1区間から第5区間までは段階的に少なくなるように設定され、第5区間から第10区間までは「2」または「1」に設定されている。
【0016】
設定部15は、上述のように紡出期間を複数の区間に分けた場合に、紡機を管理するオペレータが、区間ごとにスピンドルの目標回転速度と糸切れの目標数とを設定するためものである。設定部15は、たとえば図示はしないが、設定用の画面を表示する表示部と、キーボードなどの入力部とを有する。設定部15によって設定される各区間のスピンドルの目標回転速度と糸切れの目標数とは、記憶部14に記憶される。
【0017】
糸切れ検出部16は、紡出期間中、複数の錘を対象に糸切れの発生数を区間ごとに検出するものである。糸切れ検出部16は、糸切れを検知する糸切れ検知センサ21と、糸切れ検知センサ21の検知結果に基づいて、糸切れの発生数をカウントするカウンタ部21とを有する。糸切れ検知センサ21は、上述した複数の錘と1対1の対応関係で設けられる。糸切れ検知センサ21は、対応する錘において糸切れが発生すると、糸切れの発生を知らせる検知信号をカウンタ部22に送る。
【0018】
カウンタ部22は、複数の糸切れ検知センサ21から送られてくる検知信号を用いて、複数の錘を対象に糸切れの発生数をカウントするものである。また、カウンタ部22は、区間認識部20からカウンタ部22へと送られる区間識別信号を基に、現在の区間が紡出期間中のいずれの区間であるかを識別する。そして、上述した糸切れの発生数を区間ごとにカウントする。
【0019】
演算部17は、紡出期間中、糸切れ検出部16が検出した糸切れの発生数と記憶部14に記憶されている糸切れの目標数との差分を区間ごとに演算するものである。演算部17での演算結果は、分類部18と変更部19とに送られる。
【0020】
分類部18は、紡出期間中、今回の区間に至るまでの複数の区間について、糸切れの発生数と糸切れの目標数との差分の変化傾向を、その変化傾向の違いによって分類するものである。具体的な分類の仕方については後段で説明する。分類部18での分類結果は、変更部19に送られる。
【0021】
変更部19は、紡出期間中、演算部17での演算結果と分類部18での分類結果とに基づいて、次の区間に適用するスピンドルの目標回転速度を変更するものである。変更部19による目標回転速度の変更は、記憶部14に記憶されているスピンドル変速パターンのデータを書き換えることで行われる。
【0022】
区間認識部20は、紡出期間中、第1区間から第10区間までのうち、現在紡糸を行っている区間、すなわち今回の区間が、いずれの区間であるかを認識するものである。紡機においては、1つのボビン2に巻き取るべき糸の長さが予め決められている。このため、区間認識部20は、スピンドル1の回転に従ってボビン2に巻き取られる糸の長さを計測し、この計測結果に基づいて、現在紡糸を行っている区間がいずれの区間であるかを認識する。区間認識部20での認識結果は、モータ制御部13、演算部17、分類部18、変更部19およびカウンタ部22にそれぞれ送られる。
【0023】
続いて、本実施の形態に係るスピンドル制御方法について説明する。
本実施の形態に係るスピンドル制御方法は、
図4に示すように、設定工程S1と、検出工程S2と、演算工程S3と、分類工程S4と、変更工程S5と、制御工程S6を含む。
【0024】
(設定工程S1)
設定工程S1は、上述した設定部15を用いてオペレータにより行われる。設定工程S1においては、上述したように紡出期間を計10区間に分けて、区間ごとにスピンドルの目標回転速度と糸切れの目標数とを設定する。設定工程S1で設定されたスピンドルの目標回転速度および糸切れの目標数に関するデータは記憶部14に記憶される。
【0025】
(検出工程S2)
検出工程S2は、紡出期間中、糸切れ検出部16によって行われる。その際、複数の糸切れ検知センサ21は、対応する錘において糸切れが発生すると、その旨を知らせる検知信号をカウンタ部22に送る。これに対し、カウンタ部22は、区間認識部20からカウンタ部22に与えられる区間識別信号を基に、現在の区間が紡出期間中のいずれの区間であるかを識別する。そして、カウンタ部22は、紡出期間中の各区間において、いずれかの糸切れ検知センサ21から検知信号が送られてくると、その都度、糸切れの発生数を1ずつ増やすようにカウントする。これにより、たとえば、第3区間において、5個の糸切れ検知センサ21からそれぞれ検知信号がカウンタ部22に送られたとすると、第3区間の糸切れの発生数は「5」と検出される。また、第5区間において、3個の糸切れ検知センサ21からそれぞれ検知信号がカウンタ部22に送られたとすると、第5区間の糸切れの発生数は「3」と検出される。
【0026】
(演算工程S3)
演算工程S3は、紡出期間中、演算部17によって行われる。その際、演算部17は、上述のように検出工程S2で検出した糸切れの発生数と糸切れの目標数との差分を区間ごとに演算する。たとえば、X区間のおける糸切れの発生数をCx、X区間における糸切れの目標数をYxとすると、演算部17は、糸切れの発生数Cxと糸切れの目標数Yxとの差分ΔXを、ΔX=Cx-Yxの数式に従って演算する。これにより、X区間において、糸切れの発生数Cxと糸切れの目標数Yxとが同じであれば、差分ΔXがゼロになる。また、X区間において、糸切れの発生数Cxが糸切れの目標数Yxよりも多ければ、差分ΔXが正の値となり、糸切れの発生数Cxが糸切れの目標数Yxよりも少なければ、差分ΔXが負の値となる。
【0027】
(分類工程S4)
分類工程S4は、紡出期間中、分類部18によって行われる。その際、分類部18は、たとえば、今回の区間が第4区間であるとすると、今回の区間に至るまでの複数の区間、たとえば、第2区間、第3区間および第4区間の3つの区間について、糸切れの目標数と糸切れの発生数との差分の変化傾向を、その変化傾向の違いに応じて分類する。
【0028】
本実施の形態においては、一例として、今回の区間をX区間、前回の区間をX-1区間、前々回の区間をX-2区間とし、上記差分の変化傾向を、今回の区間に至るまでの3つの区間、すなわちX区間、X-1区間およびX-2区間について、良化傾向、安定傾向および悪化傾向のいずれかに分類することとした。安定傾向は、たとえば
図5(A)または(B)に示すように、最小値のゼロを中心とした±2の範囲を所定範囲とすると、糸切れの発生数と糸切れの目標数との差分が所定範囲内で変化している場合である。良化傾向は、たとえば
図6(A)または(B)に示すように、糸切れの発生数と糸切れの目標数との差分が上記所定範囲を超える区間が存在し、かつ、その差分が今回の区間に近づくにつれて正の値の領域から負の値の領域に向かって変化している場合である。悪化傾向は、たとえば
図7(A)または(B)に示すように、糸切れの発生数と糸切れの目標数との差分が上記所定範囲を超える区間が存在し、かつ、その差分が今回の区間に近づくにつれて負の値の領域から正の値の領域に向かって変化している場合である。なお、上記差分の変化傾向を分類するにあたって、分類数や分類の仕方はこれに限らず、種々の変更が可能である。
【0029】
(変更工程S5)
変更工程S5は、紡出期間中、変更部19によって行われる。その際、変更部19は、上述した演算部17での演算結果と分類部18での分類結果とに基づいて、次の区間に適用するスピンドルの目標回転速度を変更する。
【0030】
図8は、スピンドルの目標回転速度を変更するための参照データを示す図である。この参照データは、あらかじめ記憶部14に記憶しておき、必要に応じて変更部19が記憶部14から読み出して参照する構成とすればよい。
図8においては、今回の区間をX区間とし、このX区間における糸切れの発生数と糸切れの目標数との差分ΔXが、4≦ΔXの場合、0<ΔX≦3の場合、ΔX=0の場合、-3≦ΔX<0の場合、ΔX≦-4の場合に分けられている。差分ΔXをどのような基準で分けるかは任意に変更可能である。また、
図8においては、今回の区間に至るまでの差分の変化傾向が、良化傾向、安定傾向および悪化傾向の3つに分けられている。そして、次の区間に適用するスピンドルの目標回転速度を変更するための係数K1,K2,K3,K4,K5,K6およびK7が設定されている。係数K1,K2,K3,K4,K5,K6およびK7は、次の区間に適用するスピンドルの目標速度を変更する場合に、変更前のスピンドルの目標回転数に乗算される係数である。変更工程S5において、変更部19は、演算部17での演算結果と分類部18での分類結果とに基づいて、いずれかの係数を抽出し、抽出した係数を、次の区間に適用予定であった、変更前のスピンドルの目標回転数に乗算することにより、次の区間に適用するスピンドルの目標回転速度を変更する。一例を挙げると、変更部19は、演算部17での演算結果が0<ΔX≦3であり、かつ、分類部18での分類結果が安定傾向であった場合は、係数K3を抽出し、この係数K3を変更前のスピンドルの目標回転数に乗算することにより、次の区間に適用するスピンドルの目標回転速度を変更する。
【0031】
係数K1,K2,K3,K4,K5,K6およびK7の大小関係は、K1<K2<K3<K4<K5<K6<K7となっている。また、係数K4は1.0であり、係数K1,K2およびK3は、それぞれ0より大きく、かつ1.0より小さい値であり、係数K5,K6およびK7は、それぞれ1.0より大きい値である。このため、次の区間であるX+1区間において、スピンドルの目標回転速度の変更に係数K4を適用する場合は、変更の前後でスピンドルの目標回転速度は変わらない。これに対し、スピンドルの目標回転速度の変更に係数K1,K2およびK3のいずれかを適用する場合は、
図9(A)に示すように、変更前のスピンドルの目標回転速度Vaに比べて変更後のスピンドルの目標回転速度Vbは遅くなる。また、スピンドルの目標回転速度の変更に係数K5,K6およびK7のいずれかを適用する場合は、
図9(B)に示すように、変更前のスピンドルの目標回転数Vaに比べて変更後のスピンドルの目標回転速度Vbが速くなる。なお、上述のようにX+1区間でスピンドルの目標回転速度を変更した後、その次の区間であるX+2区間でもスピンドルの目標回転速度を変更する場合は、X+2区間に適用する係数を変更前のスピンドルの目標回転速度に乗算した値に、x+1区間おける変更前後のスピンドルの目標回転速度差を加算して得られる目標回転速度を、X+2区間のスピンドルの目標回転速度とすればよい。この点は、X+1区間とX+2区間との間だけでなく、X区間とX+1区間との間でも同様である。
【0032】
(制御工程S6)
制御工程S6は、紡出期間中、モータ制御部13によって行われる。その際、モータ制御部13は、上記変更工程S3で変更されたスピンドルの目標回転速度に基づいて、次の区間のスピンドルの回転速度を制御する。具体的には、モータ制御部13は、次の区間のスピンドルの回転速度が、変更後のスピンドルの目標回転速度となるように、スピンドルモータ12の駆動を制御する。
【0033】
<実施形態の効果>
本実施の形態においては、紡出期間中に、各区間について糸切れの発生数と糸切れの目標数との差分を演算した演算結果と、糸切れの発生数と糸切れの目標数との差分の変化傾向を分類した分類結果とに基づいて、次の区間に適用するスピンドルの目標回転速度を変更する。そして、紡出期間中に、変更後のスピンドルの目標回転速度に基づいて、次の区間のスピンドルの回転速度を制御する。これにより、紡出期間中の糸切れの発生を迅速かつ適切にスピンドル制御に反映させることができる。このため、糸切れの発生に対するスピンドル制御の応答性を高めることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 スピンドル、13 モータ制御部(制御部)、15 設定部、16 糸切れ検出部、17 演算部、18 分類部、19 変更部。