(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】質量分析装置および質量分析システム
(51)【国際特許分類】
H01J 49/26 20060101AFI20220405BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20220405BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20220405BHJP
G06F 3/14 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
H01J49/26
G01N35/00 A
G01N27/62 D
G06F3/14 400
(21)【出願番号】P 2018216737
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 清
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0047553(US,A1)
【文献】特表2008-518354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/26
G01N 35/00
G01N 27/62
G06F 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルを表示するとともにマスプロファイルデータを解析する情報処理装置と接続可能な質量分析装置であって、
前記情報処理装置には、表示するマスプロファイルにおける質量の範囲が予め指定され、
有線通信により前記情報処理装置と接続可能な有線通信部と、
無線通信により前記情報処理装置と接続可能な無線通信部と、
前記情報処理装置が前記有線通信部と前記無線通信部とのいずれの通信部に接続されているかを判定する接続判定部と、
前記情報処理装置からの動作指令に基づいて試料の質量分析を行う分析部と、
前記分析部による分析結果に基づく試料のマスプロファイルデータを取得するデータ取得部と、
前記情報処理装置が前記無線通信部に接続されていると前記接続判定部により判定された場合、
前記情報処理装置に予め指定された質量の範囲およびマスプロファイルの表示の解像度に基づいてマスプロファイルデータの間引きの割合を決定し、前記データ取得部により取得された
マスプロファイルデータを決定された割合で間引きすることによりマスプロファイルデータのデータ量を低減するデータ量低減部と、
前記データ量低減部によりデータ量が低減されたマスプロファイルデータを前記無線通信部により前記情報処理装置に送信する送信部とを備える、質量分析装置。
【請求項2】
前記情報処理装置は、PC(パーソナルコンピュータ)または携帯端末を含む、請求項
1記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記接続判定部は、前記有線通信部または前記無線通信部に接続された前記情報処理装置が前記PCであるか、前記携帯端末であるかをさらに判定し、
前記データ量低減部は、前記情報処理装置が前記携帯端末であると前記接続判定部により判定された場合、前記データ取得部により取得されたマスプロファイルデータのデータ量を低減する、請求項
2記載の質量分析装置。
【請求項4】
前記PCと前記携帯端末とは、使用者の操作を受け付ける同一のGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を表示する、請求項
2または
3記載の質量分析装置。
【請求項5】
前記情報処理装置は、当該情報処理装置の性能に応じて前記GUIに表示する内容または前記GUIから受け付ける操作の内容を制限する、請求項
4記載の質量分析装置。
【請求項6】
前記情報処理装置は、前記GUIへの使用者の接触操作を受け付けるタッチパネルを含む、請求項
4または
5記載の質量分析装置。
【請求項7】
前記分析部は、試料を撮像することにより画像データを生成する撮像部をさらに備え、
前記データ取得部は、前記撮像部により生成された画像データをさらに取得し、
前記データ量低減部は、前記情報処理装置が前記無線通信部に接続されていると前記接続判定部により判定された場合、前記データ取得部により取得された画像データのデータ量をさらに低減し、
前記送信部は、前記データ量低減部によりデータ量が低減された画像データを前記無線通信部により前記情報処理装置にさらに送信する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の質量分析装置。
【請求項8】
使用者からの操作を受け付ける操作部および試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルを表示する表示部が接続可能な接続部をさらに備え、
前記分析部は、前記操作部からの操作に基づいて試料の質量分析を行い、
前記接続部は、前記データ取得部により取得されたマスプロファイルデータを前記表示部に与える、請求項1~
7のいずれか一項に記載の質量分析装置。
【請求項9】
試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルを表示するとともにマスプロファイルデータを解析する1以上の情報処理装置と、
有線通信または無線通信により前記1以上の情報処理装置に接続され、前記1以上の情報処理装置のうちのいずれかの情報処理装置からの動作指令に基づいて試料の質量分析を行いかつ分析結果に基づく試料のマスプロファイルデータを当該情報処理装置に送信する請求項1~
8のいずれか一項に記載の質量分析装置とを備える、質量分析システム。
【請求項10】
前記質量分析装置と前記1以上の情報処理装置との間の接続は、前記質量分析システムの外部の情報処理装置に対して物理的に分離される、請求項
9記載の質量分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置と接続可能な質量分析装置および質量分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置と1以上の情報処理装置とがネットワークにより接続された分析システムが知られている。例えば特許文献1には、1以上の分析装置、1以上のタブレット端末または1以上のPC(パーソナルコンピュータ)、無線LAN(ローカルエリアネットワーク)およびウエブブラウザを含む分析システムが記載されている。1以上のタブレット端末または1以上のPCは、無線LANを経由して1以上の分析装置に接続される。
【0003】
分析装置は、自身を制御するファームウエアと、ウエブサーバと、ウエブサーバに組み込まれかつファームウエアに対して指示を行うアプリケーションとを有する。使用者は、いずれかのタブレット端末またはPCを操作することにより、ウエブブラウザから分析装置のアプリケーションの実行を指示する。これにより、アプリケーションが実行され、ファームウエアにより分析装置の動作が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
質量分析装置を用いて特許文献1に記載された分析システムを構成することが考えられる。この場合、情報処理装置から質量分析装置への動作指令、および質量分析装置から情報処理装置へのデータの送信が高速でかつリアルタイムに行われる必要がある。しかしながら、質量分析装置には、真空ゲージ、真空ポンプ、電圧制御用のアンプおよびスイッチ、試料が載置されたステージ用のモータならびにカメラ等の多種類の制御対象が設けられるとともに、大容量のデータが高速に生成される。そのため、現実的には、無線LANを介して情報処理装置により質量分析装置を効率よく制御することは容易ではない。
【0006】
本発明の目的は、無線接続された情報処理装置により効率よく制御することが可能な質量分析装置および質量分析システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の発明に係る質量分析装置は、試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルを表示するとともにマスプロファイルデータを解析する情報処理装置と接続可能な質量分析装置であって、情報処理装置には、表示するマスプロファイルにおける質量の範囲が予め指定され、有線通信により情報処理装置と接続可能な有線通信部と、無線通信により情報処理装置と接続可能な無線通信部と、情報処理装置が有線通信部と無線通信部とのいずれの通信部に接続されているかを判定する接続判定部と、情報処理装置からの動作指令に基づいて試料の質量分析を行う分析部と、分析部による分析結果に基づく試料のマスプロファイルデータを取得するデータ取得部と、情報処理装置が無線通信部に接続されていると接続判定部により判定された場合、情報処理装置に予め指定された質量の範囲およびマスプロファイルの表示の解像度に基づいてマスプロファイルデータの間引きの割合を決定し、データ取得部により取得されたマスプロファイルデータを決定された割合で間引きすることによりマスプロファイルデータのデータ量を低減するデータ量低減部と、データ量低減部によりデータ量が低減されたマスプロファイルデータを無線通信部により情報処理装置に送信する送信部とを備える。
【0008】
この質量分析装置においては、情報処理装置が有線通信部と無線通信部とのいずれの通信部に接続されているかが接続判定部により判定される。接続された情報処理装置からの動作指令に基づいて分析部により試料の質量分析が行われる。分析部による分析結果に基づく試料のマスプロファイルデータがデータ取得部により取得される。情報処理装置が無線通信部に接続されていると接続判定部により判定された場合、データ取得部により取得されたマスプロファイルデータのデータ量がデータ量低減部により低減される。データ量低減部によりデータ量が低減されたマスプロファイルデータが送信部により無線通信部を介して情報処理装置に送信される。
【0009】
この構成によれば、無線通信部を介して情報処理装置が質量分析装置に接続されている場合には、質量分析装置から情報処理装置に送信されるマスプロファイルデータのデータ量が低減される。そのため、データ取得部により大容量のマスプロファイルデータが高速に取得される場合でも、質量分析装置から情報処理装置へ大容量のマスプロファイルデータが送信されることが防止される。したがって、無線通信の制限された通信速度においても、情報処理装置から質量分析装置への動作指令の伝達が妨げられることがない。これにより、情報処理装置から質量分析装置への動作指令、および質量分析装置から情報処理装置へのマスプロファイルデータの送信を高速でかつリアルタイムに行うことができる。その結果、無線接続された情報処理装置により効率よく質量分析装置を制御することができる。
【0010】
また、データ量低減部は、マスプロファイルデータを圧縮または間引きすることによりデータ量を低減する。この場合、マスプロファイルデータのデータ量を容易に低減することができる。
【0011】
さらに、情報処理装置は、表示すべきマスプロファイルの質量の範囲を指定可能に構成され、データ量低減部は、情報処理装置により指定された質量の範囲およびマスプロファイルの表示の解像度に基づいてマスプロファイルデータの間引きの割合を決定する。この場合、解像度を低減させることなく必要な質量な範囲でマスプロファイルを情報処理装置に表示させることができる。
【0012】
(2)情報処理装置は、PC(パーソナルコンピュータ)または携帯端末を含んでもよい。この場合、情報処理装置としてPCを用いることにより、マスプロファイルデータに高度な解析を行うことができる。また、情報処理装置として携帯端末を用いることにより、使用者は移動しながら質量分析装置と通信を行うことができる。
【0013】
(3)接続判定部は、有線通信部または無線通信部に接続された情報処理装置がPCであるか、携帯端末であるかをさらに判定し、データ量低減部は、情報処理装置が携帯端末であると接続判定部により判定された場合、データ取得部により取得されたマスプロファイルデータのデータ量を低減してもよい。この構成によれば、携帯端末の処理速度が制限されている場合においても、情報処理装置から質量分析装置への動作指令、および質量分析装置から情報処理装置へのデータの送信を高速でかつリアルタイムに行うことができる。これにより、携帯端末により効率よく質量分析装置を制御することができる。
【0014】
(4)PCと携帯端末とは、使用者の操作を受け付ける同一のGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を表示してもよい。この構成によれば、質量分析装置にPCと携帯端末とのいずれが接続されている場合でも、使用者は、PCまたは携帯端末を同一の操作性で操作することができる。
【0015】
(5)情報処理装置は、当該情報処理装置の性能に応じてGUIに表示する内容またはGUIから受け付ける操作の内容を制限してもよい。この場合、情報処理装置は当該情報処理装置の性能に応じた解析を効率よくマスプロファイルデータに行うことができる。
【0016】
(6)情報処理装置は、GUIへの使用者の接触操作を受け付けるタッチパネルを含んでもよい。この場合、GUIの操作性をより向上させることができる。
【0017】
(7)分析部は、試料を撮像することにより画像データを生成する撮像部をさらに備え、データ取得部は、撮像部により生成された画像データをさらに取得し、データ量低減部は、情報処理装置が無線通信部に接続されていると接続判定部により判定された場合、データ取得部により取得された画像データのデータ量をさらに低減し、送信部は、データ量低減部によりデータ量が低減された画像データを無線通信部により情報処理装置にさらに送信してもよい。
【0018】
この場合、画像データに基づいて試料の画像を情報処理装置に表示することができる。また、無線通信部を介して情報処理装置が質量分析装置に接続されている場合には、質量分析装置から情報処理装置に送信される画像データのデータ量が低減される。これにより、情報処理装置から質量分析装置への動作指令、および質量分析装置から情報処理装置への画像データの送信を高速でかつリアルタイムに行うことができる。その結果、無線接続された情報処理装置により効率よく質量分析装置を制御することができる。
【0019】
(8)質量分析装置は、使用者からの操作を受け付ける操作部および試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルを表示する表示部が接続可能な接続部をさらに備え、分析部は、操作部からの操作に基づいて試料の質量分析を行い、接続部は、データ取得部により取得されたマスプロファイルデータを表示部に与えてもよい。この場合、質量分析装置に情報処理装置が接続されない場合でも、操作部により質量分析装置に動作指令を与えることができる。また、試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルを表示部に表示することができる。
【0020】
(9)第2の発明に係る質量分析システムは、試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルを表示するとともにマスプロファイルデータを解析する1以上の情報処理装置と、有線通信または無線通信により1以上の情報処理装置に接続され、1以上の情報処理装置のうちのいずれかの情報処理装置からの動作指令に基づいて試料の質量分析を行いかつ分析結果に基づく試料のマスプロファイルデータを当該情報処理装置に送信する第1の発明に係る質量分析装置とを備える。
【0021】
この質量分析システムにおいては、上記の1以上の情報処理装置が有線通信または無線通信により1以上の上記の情報処理装置に接続される。各情報処理装置においては、質量分析装置から与えられる試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルが表示されるとともにマスプロファイルデータが解析される。
【0022】
質量分析装置においては、無線通信部を介して情報処理装置が質量分析装置に接続されている場合には、質量分析装置から情報処理装置に送信されるマスプロファイルデータのデータ量が低減される。そのため、大容量のマスプロファイルデータが高速に取得される場合でも、質量分析装置から情報処理装置へ大容量のマスプロファイルデータが送信されることが防止される。したがって、無線通信の制限された通信速度においても、情報処理装置から質量分析装置への動作指令の伝達が妨げられることがない。これにより、情報処理装置から質量分析装置への動作指令、および質量分析装置から情報処理装置へのマスプロファイルデータの送信を高速でかつリアルタイムに行うことができる。その結果、無線接続された情報処理装置により効率よく質量分析装置を制御することができる。
【0023】
(10)質量分析装置と1以上の情報処理装置との間の接続は、質量分析システムの外部の情報処理装置に対して物理的に分離されてもよい。この場合、質量分析システムの外部の情報処理装置が質量分析装置に接続されることを容易に防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、無線接続された情報処理装置により効率よく質量分析装置を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る質量分析システムの構成を示す図である。
【
図3】制御装置により行われる質量分析装置の制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図4】変形例に係る質量分析システムの構成を示す図である。
【
図5】他の実施の形態における制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1)質量分析システムの構成
以下、本発明の実施の形態に係る質量分析装置および質量分析システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る質量分析システムの構成を示す図である。
図1に示すように、質量分析システム10は、質量分析装置1と、クライアントの1つ以上の情報処理装置2とにより構成される。質量分析システム10は、1つ以上の質量分析装置1を含んでもよい。質量分析装置1と各情報処理装置2とは、LAN(ローカルエリアネットワーク)により接続される。
【0027】
各情報処理装置2は、据置型またはノート型のPC(パーソナルコンピュータ)2aであってもよいし、タブレット端末またはスマートデバイス等の移動自在な携帯端末2bであってもよい。この場合、情報処理装置2としてPC2aを用いることにより、マスプロファイルデータに高度な解析を行うことができる。また、情報処理装置2として携帯端末2bを用いることにより、使用者は移動しながら質量分析装置1と通信を行うことができる。
【0028】
本実施の形態においては、PC2aは有線LANを介して質量分析装置1に接続され、携帯端末2bは無線LANを介して質量分析装置1に接続される。無線LANによる接続は、アドホック接続であってもよいし、アクセスポイントを介した接続であってもよい。質量分析装置1と各情報処理装置2との間の接続は、外部の情報処理装置に対しては物理的に分離される。そのため、質量分析システム10の外部の情報処理装置が質量分析装置1に接続されることを容易に防止することができる。
【0029】
各情報処理装置2には、GUI(グラフィカルユーザインタフェース)を表示するためのソフトウエア、およびマスプロファイルデータを解析するためのソフトウエアがインストールされている。データの解析は、データベース検索またはデータ同定等の高度な解析を含む。情報処理装置2により高度な解析が可能であるため、後述するサーバ100の制御装置130を小型のPCまたは小型のCPU(中央演算処理装置)基板により構成することが可能である。
【0030】
本実施の形態においては、上記のソフトウエアは、ネイティブアプリケーションソフトウエアであり、PC2aと携帯端末2bとで同一のGUIまたは解析画面を表示させることができる。この構成によれば、質量分析装置1にPC2aと携帯端末2bとのいずれが接続されている場合でも、使用者は、PC2aまたは携帯端末2bを同一の操作性で操作することができる。使用者は、いずれかの情報処理装置2のGUIを操作することにより、分析手順または手法等をリアルタイムに情報処理装置2に与えることができる。
【0031】
各情報処理装置2は、GUIにより受け付けられた分析手順または手法等に基づいて質量分析装置1に動作指令を送信する。また、情報処理装置2は、質量分析装置1からマスプロファイルデータおよび画像データを含む各種データを受信する。ここで、無線LANを介して接続される情報処理装置2(本例では携帯端末2b)により受信されるマスプロファイルデータには、データ量を低減する処理が施されている。情報処理装置2は、受信されたデータに基づいてマスプロファイルまたは試料の画像等をGUIに表示させる。
【0032】
GUIには、情報処理装置2の性能に応じた拡張機能が設けられてもよい。この場合、情報処理装置2の性能に応じた解析を効率よくマスプロファイルデータに行うことができる。例えば、高い性能を有する情報処理装置2においては、高解像度のGUIの表示または複数のGUIの同時表示が行われてもよく、マスプロファイルデータのより高度な解析が行われてもよい。一方で、比較的低い性能を有する情報処理装置2においては、GUIにより表示される内容または受け付けられる内容が制限されてもよい。
【0033】
あるいは、情報処理装置2にタッチパネルが設けられる場合には、使用者の接触操作がGUIに受け付けられてもよい。接触操作は、GUIの表示領域をスクロールするためのスワイプ操作、GUIの表示領域を拡大するためのピンチアウト操作またはGUIの表示領域を縮小するためのピンチイン操作等を含む。この場合、GUIの操作性をより向上させることができる。
【0034】
質量分析装置1は、サーバ100、制御基板200および真空チャンバ300により構成される。サーバ100は、有線通信部110、無線通信部120、制御装置130および記憶装置140を含む。
【0035】
有線通信部110は、質量分析装置1を有線LANに接続するためのインタフェースである。有線通信部110は、有線LANを介してPC2aから動作指令を受信するとともに、制御装置130により取得または処理された各種データをPC2aに送信する。無線通信部120は、質量分析装置1を無線LANに接続するためのインタフェースである。無線通信部120は、無線LANを介して携帯端末2bから動作指令を受信するとともに、制御装置130により取得または処理された各種データを携帯端末2bに送信する。
【0036】
上記のように、制御装置130は、小型のPCまたは小型のCPU基板により構成され、有線通信部110または無線通信部120により受信された動作指令に基づいて後述する制御対象の制御、測定制御またはバッチ測定制御等の指令を制御基板200に与える。また、制御装置130は、制御基板200および制御対象からマスプロファイルデータおよび画像データを含む各種データを取得するとともに、取得されたマスプロファイルデータに処理を行う。データの処理は、フィルタリング等の波形処理またはピーク検出等を含む。さらに、制御装置130は、取得または処理されたデータを記憶装置140または質量分析装置1の外部の記憶装置に記憶させる。
【0037】
制御基板200は、A/D(アナログ/デジタル)変換器210、ファームウエア220および制御回路230を含む。A/D変換器210は、例えば高速でかつ高分解能のデジタイザを含み、真空チャンバ300から後述する検出信号を繰り返し取得し、取得された検出信号をデジタル信号に変換する。
【0038】
ファームウエア220は、リアルタイムOS(オペレーティングシステム)により実現され、サーバ100からの指令に基づいて制御回路230を介して制御対象の動作をリアルタイムに制御する。また、ファームウエア220は、A/D変換器210により変換されたデジタル信号に基づいて高速で大容量のマスプロファイルデータを生成する。
【0039】
真空チャンバ300内には、試料室310および分析室320が配置される。試料室310には、イオン源311およびステージ312が設けられる。イオン源311は、例えばレーザ光源を含み、試料室310内で分析対象の試料をMALDI(マトリックス支援レーザ脱離イオン化)法等によりイオン化する。ステージ312には、分析対象の試料が載置される。ステージ312は、水平面内で直交する二方向に移動可能なXYステージであり、試料のイオン化後に試料室310から分析室320に移動することによりイオンを分析室320に導入する。
【0040】
分析室320には、イオン分離装置321および検出部322が設けられる。イオン分離装置321は、例えばイオントラップおよびTOFMS(飛行時間型質量分析器)を含み、ステージ312により導入されたイオンを質量ごとに分離する。検出部322は、例えば二次電子増倍管であり、イオン分離装置321により分離されたイオンを当該イオンの質量に対応する時間差で順次検出し、検出強度を示すアナログの検出信号を制御基板200に与える。
【0041】
また、真空チャンバ300には、真空ポンプ301、真空ゲージ302、高電圧制御部303、高圧電源304、モータ305、モータ制御部306および撮像部307が設けられる。真空チャンバ300、真空ポンプ301、真空ゲージ302、高電圧制御部303、高圧電源304、モータ305、モータ制御部306および撮像部307により分析部3が構成される。真空ポンプ301、真空ゲージ302、高電圧制御部303、モータ制御部306および撮像部307は、制御対象として制御基板200により制御される。
【0042】
真空ポンプ301は、質量分析装置1の起動時に、真空チャンバ300内を真空化する。真空ゲージ302は、真空チャンバ300内の真空度(圧力値)を計測する。高電圧制御部303は、アンプおよびスイッチ等を含み、試料のイオン化およびイオンの分離時に、高圧電源304により発生された高電圧をイオン源311、イオン分離装置321および検出部322に供給する。
【0043】
モータ305は、ステージ312上で試料がイオン化された後、モータ制御部306による制御に基づいてステージ312を試料室310から分析室320に移動させる。撮像部307は、カメラ等の観測光学系を含み、真空チャンバ300内の試料を撮像することにより試料の画像を示す画像データを生成し、生成された画像データをサーバ100に与える。
【0044】
(2)制御処理
図2は、
図1の制御装置130の構成を示す図である。
図3は、制御装置130により行われる質量分析装置1の制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図2に示すように、制御装置130は、機能部として、接続判定部131、動作指令部132、データ取得部133、記憶制御部134、送信部135およびデータ量低減部136を含む。
【0045】
記憶装置140には、質量分析装置1の制御プログラムが記憶される。制御装置130が記憶装置140に記憶された制御プログラムを実行することにより、制御装置130の機能部が実現される。制御装置130の機能部の一部または全てが電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。以下、
図2の制御装置130ならびに
図3のフローチャートを用いて質量分析装置1の制御処理を説明する。
【0046】
まず、接続判定部131は、有線通信部110または無線通信部120に接続された情報処理装置2を検出する(ステップS1)。また、接続判定部131は、ステップS1で検出された情報処理装置2は、有線通信部110に接続されているか否かを判定する(ステップS2)。情報処理装置2が有線通信部110により接続されている場合、接続判定部131はステップS3へ進む。一方、情報処理装置2が有線通信部110により接続されていない場合、すなわち無線通信部120に接続されている場合、接続判定部131はステップS8へ進む。
【0047】
なお、情報処理装置2が有線通信部110に接続されていることは、ステップS1で検出された情報処理装置2が有線LANにより接続されていることを意味する。情報処理装置2が無線通信部120に接続されていることは、ステップS1で検出された情報処理装置2が無線LANにより接続されていることを意味する。
【0048】
ステップS2で、情報処理装置2が有線通信部110に接続されている場合、動作指令部132は、有線通信部110から動作指令が取得されたか否かを判定する(ステップS3)。動作指令が取得されていない場合、動作指令部132は、動作指令が取得されるまで待機する。動作指令が取得された場合、動作指令部132は、ファームウエア220に動作指令を行う(ステップS4)。
【0049】
その後、データ取得部133は、各種データを取得するとともに、取得されたデータに処理を行う(ステップS5)。各種データは、ファームウエア220から取得されるマスプロファイルデータおよび撮像部307から取得される画像データを含む。データの処理は、マスプロファイルデータのフィルタリング等の波形処理またはピーク検出等を含む。
【0050】
記憶制御部134は、ステップS5で取得または処理された各種データを記憶装置140に記憶させる(ステップS6)。送信部135は、ステップS5で取得または処理された各種データを有線通信部110から情報処理装置2に送信し(ステップS7)、制御処理を終了する。
【0051】
ステップS2で、情報処理装置2が有線通信部110に接続されていない場合、動作指令部132は、無線通信部120から動作指令が取得されたか否かを判定する(ステップS8)。動作指令が取得されていない場合、動作指令部132は、動作指令が取得されるまで待機する。動作指令が取得された場合、動作指令部132は、ファームウエア220に動作指令を行う(ステップS9)。その後、データ取得部133は、ステップS5と同様のステップS10を実行する(ステップS10)。記憶制御部134は、ステップS6と同様のステップS11を実行する(ステップS11)。
【0052】
データ量低減部136は、ステップS10で取得または処理されたデータのうちマスプロファイルデータのデータ量を低減する(ステップS12)。データ量は、マスプロファイルデータに圧縮または間引きが施されることにより低減される。ここで、使用者は、情報処理装置2のGUIに表示させるマスプロファイルにおける質量の範囲を予め指定することができる。間引きの割合は、情報処理装置2のGUIに表示されるマスプロファイルの質量の範囲および解像度に応じて決定される。この場合、解像度を低減させることなく必要な質量な範囲でマスプロファイルを情報処理装置2のGUIに表示させることができる。
【0053】
その後、送信部135は、各種データを無線通信部120から情報処理装置2に送信し(ステップS13)、制御処理を終了する。ステップS13で送信される各種データは、ステップS10で取得されたデータのうちマスプロファイルを除くデータと、ステップS12でデータ量が低減されたマスプロファイルデータとを含む。
【0054】
有線通信部110に図示しない記憶装置が接続されている場合には、送信部135は、ステップS6,S11において、各種データを有線通信部110を介して当該記憶装置に送信してもよい。この場合、ステップS5,S10において取得または処理された各種データを質量分析装置1の外部の記憶装置に記憶させることができる。
【0055】
(3)変形例
図4は、変形例に係る質量分析システム10の構成を示す図である。
図4に示すように、変形例においては、質量分析システム10は、操作部4および表示部5をさらに含む。操作部4は、例えばキーボードとマウス等のポインティングデバイスとを含む。表示部5は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)パネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルである。
【0056】
質量分析装置1のサーバ100は、接続部150をさらに含む。接続部150は、例えばUSB(ユニバーサルシリアルバス)ポートである。接続部150には、操作部4および表示部5が接続される。使用者は、操作部4を操作することにより、接続部150を介して制御装置130に動作指令を与えることができる。また、接続部150を介して制御装置130から送信されるデータに基づいてマスプロファイルまたは試料の画像等が表示部5に表示される。
【0057】
この構成においては、使用者は、質量分析装置1に情報処理装置2を接続しない状態でも、質量分析装置1に動作指令を与えることができ、マスプロファイルまたは試料の画像等を視認することができる。
【0058】
また、接続部150に図示しない記憶装置が接続されている場合には、送信部135は、
図3のステップS6,S11において、各種データを接続部150を介して当該記憶装置に送信してもよい。この場合、ステップS5,S10において取得または処理された各種データを質量分析装置1の外部の記憶装置に記憶させることができる。
【0059】
(4)効果
本実施の形態に係る質量分析システム10においては、質量分析装置1と情報処理装置2とが有線LANまたは無線LANにより接続される。この場合、仮想デスクトップまたはウエブアプリケーションを用いる必要がなく、マルチタッチGUI等の高度なGUIを情報処理装置2により実現することができる。
【0060】
質量分析装置1においては、情報処理装置2が有線通信部110と無線通信部120とのいずれの通信部に接続されているかが接続判定部131により判定される。接続された情報処理装置2からの動作指令に基づいて分析部3により試料の質量分析が行われる。分析部3による分析結果に基づく試料のマスプロファイルデータがデータ取得部133により取得される。情報処理装置2が無線通信部120に接続されていると接続判定部131により判定された場合、データ取得部133により取得されたマスプロファイルデータのデータ量がデータ量低減部136により低減される。データ量低減部136によりデータ量が低減されたマスプロファイルデータが送信部135により無線通信部120を介して情報処理装置2に送信される。
【0061】
この構成によれば、無線通信部120を介して情報処理装置2が質量分析装置1に接続されている場合には、質量分析装置1から情報処理装置2に送信されるマスプロファイルデータのデータ量が低減される。そのため、データ取得部133により大容量のマスプロファイルデータが高速に取得される場合でも、質量分析装置1から情報処理装置2へ大容量のマスプロファイルデータが送信されることが防止される。したがって、無線LANの制限された通信速度においても、情報処理装置2から質量分析装置1への動作指令の伝達が妨げられることがない。これにより、情報処理装置2から質量分析装置1への動作指令、および質量分析装置1から情報処理装置2へのマスプロファイルデータの送信を高速でかつリアルタイムに行うことができる。その結果、無線LANに接続された情報処理装置2により効率よく質量分析装置1を制御することができる。
【0062】
また、質量分析中に情報処理装置2が移動した場合、または情報処理装置2のバッテリが過度に消耗した場合等には、情報処理装置2と質量分析装置1との予期せぬ通信切断が発生することがある。このような場合でも、情報処理装置2から質量分析装置1への動作指令および質量分析装置1から情報処理装置2へ送信されるデータをサーバ100に記憶することができる。これにより、質量分析を継続することが可能になる。
【0063】
(5)他の実施の形態
(a)
図1の質量分析システム10において、質量分析装置1に2つの情報処理装置2(1つのPC2aおよび1つの携帯端末2b)が接続されるが、本発明はこれに限定されない。質量分析装置1に1つの情報処理装置2が接続されてもよい。当該情報処理装置2は、PC2aであってもよいし、携帯端末2bであってもよい。また、
図4の質量分析システム10においては、質量分析装置1に情報処理装置2が接続されなくてもよい。
【0064】
(b)上記実施の形態において、PC2aが有線LANにより質量分析装置1に接続され、携帯端末2bが無線LANにより質量分析装置1に接続されるが、本発明はこれに限定されない。PC2aが無線LANにより質量分析装置1に接続され、携帯端末2bが有線LANにより質量分析装置1に接続されてもよい。あるいは、PC2aおよび携帯端末2bの両方が有線LANにより質量分析装置1に接続されてもよいし、PC2aおよび携帯端末2bの両方が無線LANにより質量分析装置1に接続されてもよい。
【0065】
(c)上記実施の形態において、情報処理装置2が有線LANにより質量分析装置1に接続されている場合には、当該情報処理装置2により受信されるマスプロファイルデータにデータ量を低減する処理が施されないが、本発明はこれに限定されない。情報処理装置2として携帯端末2bが有線LANにより質量分析装置1に接続されている場合には、当該携帯端末2bにより受信されるマスプロファイルデータにデータ量を低減する処理が施されてもよい。
【0066】
この構成によれば、携帯端末2bの処理速度が制限されている場合においても、情報処理装置2から質量分析装置1への動作指令、および質量分析装置1から情報処理装置2へのデータの送信を高速でかつリアルタイムに行うことができる。これにより、携帯端末2bにより効率よく質量分析装置1を制御することができる。
【0067】
図5は、他の実施の形態における制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図5の制御処理は、ステップS2とステップS3との間にステップS2aが設けられる点を除き、
図3の制御処理と同様である。
図5の制御処理においては、ステップS2で、情報処理装置2が有線LANにより接続されている場合、接続判定部131は、ステップS1で検出された情報処理装置2はPC2aであるか否かを判定する(ステップS2a)。
【0068】
ステップS2aで情報処理装置2はPC2aであると判定された場合、接続判定部131はステップS3に進む。一方、ステップS2aで情報処理装置2はPC2aではないと判定された場合、すなわち、情報処理装置2は携帯端末2bであると判定された場合、接続判定部131はステップS8に進む。なお、ステップS2からステップS8へ進んだ場合と、ステップS2aからステップS8へ進んだ場合とでは、ステップS12におけるデータ量の低減の程度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0069】
(d)上記実施の形態において、マスプロファイルデータ以外のデータにデータ量を低減する処理が施されないが、本発明はこれに限定されない。情報処理装置2が無線LANにより質量分析装置1に接続されている場合には、当該情報処理装置2により受信されるマスプロファイルデータ以外のデータにデータ量を低減する処理が施されてもよい。マスプロファイルデータ以外のデータは、例えば撮像部307により生成される画像データであってもよい。
【0070】
この構成においては、無線通信部120を介して情報処理装置2が質量分析装置1に接続されている場合には、質量分析装置1から情報処理装置2に送信される画像データのデータ量が低減される。これにより、情報処理装置2から質量分析装置1への動作指令、および質量分析装置1から情報処理装置2への画像データの送信を高速でかつリアルタイムに行うことができる。その結果、無線接続された情報処理装置2により効率よく質量分析装置1を制御することができる。
(6)参考形態
(6-1)第1の参考形態に係る質量分析装置は、試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルを表示するとともにマスプロファイルデータを解析する情報処理装置と接続可能な質量分析装置であって、有線通信により情報処理装置と接続可能な有線通信部と、無線通信により情報処理装置と接続可能な無線通信部と、情報処理装置が有線通信部と無線通信部とのいずれの通信部に接続されているかを判定する接続判定部と、情報処理装置からの動作指令に基づいて試料の質量分析を行う分析部と、分析部による分析結果に基づく試料のマスプロファイルデータを取得するデータ取得部と、情報処理装置が無線通信部に接続されていると接続判定部により判定された場合、データ取得部により取得されたマスプロファイルデータのデータ量を低減するデータ量低減部と、データ量低減部によりデータ量が低減されたマスプロファイルデータを無線通信部により情報処理装置に送信する送信部とを備える。
この質量分析装置においては、情報処理装置が有線通信部と無線通信部とのいずれの通信部に接続されているかが接続判定部により判定される。接続された情報処理装置からの動作指令に基づいて分析部により試料の質量分析が行われる。分析部による分析結果に基づく試料のマスプロファイルデータがデータ取得部により取得される。情報処理装置が無線通信部に接続されていると接続判定部により判定された場合、データ取得部により取得されたマスプロファイルデータのデータ量がデータ量低減部により低減される。データ量低減部によりデータ量が低減されたマスプロファイルデータが送信部により無線通信部を介して情報処理装置に送信される。
この構成によれば、無線通信部を介して情報処理装置が質量分析装置に接続されている場合には、質量分析装置から情報処理装置に送信されるマスプロファイルデータのデータ量が低減される。そのため、データ取得部により大容量のマスプロファイルデータが高速に取得される場合でも、質量分析装置から情報処理装置へ大容量のマスプロファイルデータが送信されることが防止される。したがって、無線通信の制限された通信速度においても、情報処理装置から質量分析装置への動作指令の伝達が妨げられることがない。これにより、情報処理装置から質量分析装置への動作指令、および質量分析装置から情報処理装置へのマスプロファイルデータの送信を高速でかつリアルタイムに行うことができる。その結果、無線接続された情報処理装置により効率よく質量分析装置を制御することができる。
(6-2)データ量低減部は、マスプロファイルデータを圧縮または間引きすることによりデータ量を低減してもよい。この場合、マスプロファイルデータのデータ量を容易に低減することができる。
(6-3)情報処理装置は、表示すべきマスプロファイルの質量の範囲を指定可能に構成され、データ量低減部は、情報処理装置により指定された質量の範囲およびマスプロファイルの表示の解像度に基づいてマスプロファイルデータの間引きの割合を決定してもよい。この場合、解像度を低減させることなく必要な質量な範囲でマスプロファイルを情報処理装置に表示させることができる。
(6-4)情報処理装置は、PC(パーソナルコンピュータ)または携帯端末を含んでもよい。この場合、情報処理装置としてPCを用いることにより、マスプロファイルデータに高度な解析を行うことができる。また、情報処理装置として携帯端末を用いることにより、使用者は移動しながら質量分析装置と通信を行うことができる。
(6-5)接続判定部は、有線通信部または無線通信部に接続された情報処理装置がPCであるか、携帯端末であるかをさらに判定し、データ量低減部は、情報処理装置が携帯端末であると接続判定部により判定された場合、データ取得部により取得されたマスプロファイルデータのデータ量を低減してもよい。この構成によれば、携帯端末の処理速度が制限されている場合においても、情報処理装置から質量分析装置への動作指令、および質量分析装置から情報処理装置へのデータの送信を高速でかつリアルタイムに行うことができる。これにより、携帯端末により効率よく質量分析装置を制御することができる。
(6-6)PCと携帯端末とは、使用者の操作を受け付ける同一のGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を表示してもよい。この構成によれば、質量分析装置にPCと携帯端末とのいずれが接続されている場合でも、使用者は、PCまたは携帯端末を同一の操作性で操作することができる。
(6-7)情報処理装置は、当該情報処理装置の性能に応じてGUIに表示する内容またはGUIから受け付ける操作の内容を制限してもよい。この場合、情報処理装置は当該情報処理装置の性能に応じた解析を効率よくマスプロファイルデータに行うことができる。
(6-8)情報処理装置は、GUIへの使用者の接触操作を受け付けるタッチパネルを含んでもよい。この場合、GUIの操作性をより向上させることができる。
(6-9)分析部は、試料を撮像することにより画像データを生成する撮像部をさらに備え、データ取得部は、撮像部により生成された画像データをさらに取得し、データ量低減部は、情報処理装置が無線通信部に接続されていると接続判定部により判定された場合、データ取得部により取得された画像データのデータ量をさらに低減し、送信部は、データ量低減部によりデータ量が低減された画像データを無線通信部により情報処理装置にさらに送信してもよい。
この場合、画像データに基づいて試料の画像を情報処理装置に表示することができる。また、無線通信部を介して情報処理装置が質量分析装置に接続されている場合には、質量分析装置から情報処理装置に送信される画像データのデータ量が低減される。これにより、情報処理装置から質量分析装置への動作指令、および質量分析装置から情報処理装置への画像データの送信を高速でかつリアルタイムに行うことができる。その結果、無線接続された情報処理装置により効率よく質量分析装置を制御することができる。
(6-10)質量分析装置は、使用者からの操作を受け付ける操作部および試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルを表示する表示部が接続可能な接続部をさらに備え、分析部は、操作部からの操作に基づいて試料の質量分析を行い、接続部は、データ取得部により取得されたマスプロファイルデータを表示部に与えてもよい。この場合、質量分析装置に情報処理装置が接続されない場合でも、操作部により質量分析装置に動作指令を与えることができる。また、試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルを表示部に表示することができる。
(6-11)第2の参考形態に係る質量分析システムは、試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルを表示するとともにマスプロファイルデータを解析する1以上の情報処理装置と、有線通信または無線通信により1以上の情報処理装置に接続され、1以上の情報処理装置のうちのいずれかの情報処理装置からの動作指令に基づいて試料の質量分析を行いかつ分析結果に基づく試料のマスプロファイルデータを当該情報処理装置に送信する第1の参考形態に係る質量分析装置とを備える。
この質量分析システムにおいては、上記の1以上の情報処理装置が有線通信または無線通信により1以上の上記の情報処理装置に接続される。各情報処理装置においては、質量分析装置から与えられる試料のマスプロファイルデータに基づいてマスプロファイルが表示されるとともにマスプロファイルデータが解析される。
質量分析装置においては、無線通信部を介して情報処理装置が質量分析装置に接続されている場合には、質量分析装置から情報処理装置に送信されるマスプロファイルデータのデータ量が低減される。そのため、大容量のマスプロファイルデータが高速に取得される場合でも、質量分析装置から情報処理装置へ大容量のマスプロファイルデータが送信されることが防止される。したがって、無線通信の制限された通信速度においても、情報処理装置から質量分析装置への動作指令の伝達が妨げられることがない。これにより、情報処理装置から質量分析装置への動作指令、および質量分析装置から情報処理装置へのマスプロファイルデータの送信を高速でかつリアルタイムに行うことができる。その結果、無線接続された情報処理装置により効率よく質量分析装置を制御することができる。
(6-12)質量分析装置と1以上の情報処理装置との間の接続は、質量分析システムの外部の情報処理装置に対して物理的に分離されてもよい。この場合、質量分析システムの外部の情報処理装置が質量分析装置に接続されることを容易に防止することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…質量分析装置,2…情報処理装置,2a…PC,2b…携帯端末,3…分析部,4…操作部,5…表示部,10…質量分析システム,100…サーバ,110…有線通信部,120…無線通信部,130…制御装置,131…接続判定部,132…動作指令部,133…データ取得部,134…記憶制御部,135…送信部,136…データ量低減部,140…記憶装置,150…接続部,200…制御基板,210…A/D変換器,220…ファームウエア,230…制御回路,300…真空チャンバ,301…真空ポンプ,302…真空ゲージ,303…高電圧制御部,304…高圧電源,305…モータ,306…モータ制御部,307…撮像部,310…試料室,311…イオン源,312…ステージ,320…分析室,321…イオン分離装置,322…検出部