(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】材料試験機
(51)【国際特許分類】
G01N 3/04 20060101AFI20220405BHJP
G01N 3/08 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G01N3/04 P
G01N3/08
(21)【出願番号】P 2018231733
(22)【出願日】2018-12-11
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 健
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-196880(JP,A)
【文献】国際公開第2015/019446(WO,A1)
【文献】特開平09-054028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00- 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張力および圧縮力の両方の負荷を試験片に与える試験を行う材料試験機であって、
前記負荷を測定するロードセルに取り付ける継手と、前記試験片を取り付ける試験治具と、を接続するアダプタを備え、
前記アダプタは、前記継手にピン接続される棒状体と、前記棒状体と同軸に設けられる筒状体と、を有し、
前記棒状体は、端部に雄ねじ部が形成され、
前記筒状体は、前記雄ねじ部と螺合する第1雌ねじ部が内周面に形成され、前記継手の端面に接合するロックナットになっており、
前記筒状体は、前記試験治具の雄ねじ部と螺合する、前記第1雌ねじ部と同軸の第2雌ねじ部が形成されている
ことを特徴とする材料試験機。
【請求項2】
前記第1雌ねじ部と前記第2雌ねじ部とが連通している
ことを特徴とする請求項1に記載の材料試験機。
【請求項3】
前記棒状体は、長手方向の中間部が前記雄ねじ部よりも小径になっており、
前記筒状体は、前記小径の中間部に対応する前記内周面の部分に突出する突起部を有しており、
前記突起部が前記筒状体の抜け止めになっている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の材料試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の強度を測定する材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の強度を測定する試験機として、その材料からなる試験片に引張力または圧縮力のいずれかの負荷を与える試験を行う材料試験機が知られている。
材料試験機は、一般に、試験対象の試験片に負荷を与える負荷機構と、試験片に与えられている負荷を測定するロードセルと、を備えている。また、負荷機構は、ロードセルに取り付ける継手と、継手に接続する試験治具と、を備えている。試験片は試験治具に取り付けられる。
【0003】
そして、試験片に引張力を与える引張試験を行う場合、試験治具として、引張試験用のものが使用され、継手として、その試験治具をピン接続するタイプのものが使用される。しかしながら、ピン接続では、ピンとピン孔との間の隙間に起因するがたつきがあることから、試験片に圧縮力を与える圧縮試験を行うことができない。そのため、圧縮試験を行う場合、試験治具として、圧縮試験用のものが使用され、継手として、その試験治具と面接合するタイプのものが使用される。
【0004】
このように、従来の材料試験機では、試験の種類が引張試験か圧縮試験かにより、使用する試験治具および継手が異なるため、引張試験の後に圧縮試験を行う場合もその逆の場合も、試験治具だけでなく継手も交換する必要がある。
しかも、試験片に与える負荷が大きい試験では、その大きい負荷に耐えるよう、継手の強度を高める必要があり、必然的に継手の質量も大きくなる。
【0005】
そこで、試験の種類を変えても、継手の交換が不要である材料試験機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の材料試験機は、引張試験または圧縮試験のいずれかにしか対応しておらず、試験片に引張力および圧縮力の両方の負荷を与える引張圧縮試験には対応していない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、試験の種類を変えても継手の交換が不要であるだけでなく、引張圧縮試験にも対応できる材料試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、引張力および圧縮力の両方の負荷を試験片に与える試験を行う材料試験機であって、前記負荷を測定するロードセルに取り付ける継手と、前記試験片を取り付ける試験治具と、を接続するアダプタを備え、前記アダプタは、前記継手にピン接続される棒状体と、前記棒状体と同軸に設けられる筒状体と、を有し、前記棒状体は、端部に雄ねじ部が形成され、前記筒状体は、前記雄ねじ部と螺合する第1雌ねじ部が内周面に形成され、前記継手の端面に接合するロックナットになっており、前記筒状体は、前記試験治具の雄ねじ部と螺合する、前記第1雌ねじ部と同軸の第2雌ねじ部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1雌ねじ部と前記第2雌ねじ部とが連通していることを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記棒状体は、長手方向の中間部が前記雄ねじ部よりも小径になっており、前記筒状体は、前記小径の中間部に対応する前記内周面の部分に突出する突起部を有しており、前記突起部が前記筒状体の抜け防止になっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、棒状体の雄ねじ部と筒状体の第1雌ねじ部とが同軸に螺合するアダプタを備え、棒状体が継手にピン接続されるものとなっている。そのため、引張圧縮試験を行う場合は、継手に棒状体をピン接続することによりアダプタをピン接続し、その状態で、ロックナットである筒状体を回して締め、継手の端面に接合させる。これにより、ピン接続のピンがピン孔の内周面に圧接し、ピン接続ががたつかないようにすることができる。そして、筒状体の内周面の第2雌ねじに引張圧縮試験用の試験治具の雄ねじを螺合させ、さらに、その試験治具に試験片を取り付ける。この状態では、試験片に引張力および圧縮力の両方の負荷を与えても、試験治具が継手から外れることがないだけでなく、試験片が試験治具から外れることがない。そのため、この状態で、引張圧縮試験を行うことができる。一方、引張試験を行う場合は、アダプタのピン接続と同様にして、継手に引張試験用の試験治具をピン接続し、引張試験を行うことができる。すなわち、第1の発明によれば、試験の種類を変えても継手の交換が不要であるだけでなく、引張圧縮試験にも対応することができる。
第2の発明によれば、第1雌ねじ部と第2雌ねじ部とが連通しているため、アダプタの軽量化を図ることができる。それにより、試験治具の交換を容易にすることができる。
第3の発明によれば、アダプタの棒状体の中間部が端部の雄ねじ部よりも小径になっており、その小径の中間部に対応する筒状体の内周面の部分に突起部が突出している。そのため、筒状体を棒状体から抜こうとしても、突起部が雄ねじに引っ掛かり、筒状体が抜けないようにすることができる。それにより、予期しない筒状体の脱落による事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る材料試験機の正面図である。
【
図2】材料試験機にアダプタが取り付けられている状態を示す図である。
【
図4】アダプタおよび試験冶具の取り付け方法を説明する図である。
【
図5】引張試験用の試験治具の取り付け方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は実施形態に係る材料試験機1の正面図である。
本実施形態の材料試験機1は、
図1に示すように、引張力および圧縮力の両方の負荷を試験片40に与える試験を行う試験機であり、試験片40に負荷を与える負荷機構2と、試験片40に与えられている負荷を測定するロードセル3と、を備えている。また、負荷機構2は、ロードセル3に取り付ける継手4と、この継手4にピン5により接続(ピン接続)するアダプタ50と、このアダプタ50にねじ接続する上部試験治具(引張圧縮試験用の試験治具)6と、を備えている。このように、材料試験機1において、アダプタ50を設け、そのアダプタ50を介して継手4と上部試験治具6とを接続している。
【0015】
負荷機構2について、より詳しく説明する。
負荷機構2は、さらに、テーブル7と、テーブル7に立設された一対の支柱8と、支柱8の上部間を横架するフレーム9と、各支柱8の内部に回転自在に設けられた不図示のボールねじと、ボールねじの回転に応じて上下動するクロスヘッド10と、を備えている。このクロスヘッド10の上面に、ロードセル3が設置されている。
【0016】
このロードセル3に取り付ける継手4は略円柱状である。そして、この継手4の上端部がロードセル3への取り付け部になっており、下端部がアダプタ50とのピン接続部になっている。
アダプタ50の下端部には、上部試験治具6がねじ接続されており、その上部試験治具6の下方のテーブル7には、下部試験治具11が設けられている。これら上下一対の試験治具6,11は、試験片40の両端部を把持して取り付けるための取り付け部6a,11aを有している。これら取り付け部6a,11aにより、試験片40に引張力および圧縮力が与えられても、試験片40の両端部が試験治具6,11から外れないようになっている。
【0017】
アダプタ50について、より詳しく説明する。
アダプタ50は、
図2および
図3に示すように、略円柱状の棒状体20と、この棒状体20と同軸に設けられる略円筒状の筒状体30と、を有している。これら棒状体20および筒状体30の材料としては、負荷に耐えられる金属などが挙げられる。
【0018】
棒状体20は、長手方向の第1端部(上部)から順に、頭部21,小径部22(中間部),雄ねじ部23(下部)を備える。頭部21は小径部22,雄ねじ部23よりも大径になっており、その頭部21にはピン接続用のピン孔21aが形成されている。小径部22は雄ねじ部23よりも小径になっている。
【0019】
筒状体30は、全長にわたって、中心軸と同軸の貫通孔31を備え、貫通孔31の上部内周面には、棒状体20の雄ねじ部23と螺合する第1雌ねじ部32が形成されている。
筒状体30の上部外周壁には、
図2に示すように、対向する一対の貫通孔33が筒状体30の中心軸に向かって設けられ、それら貫通孔33には雌ねじ部34が形成されている。各雌ねじ部34には、ボルト35が螺合し、それらボルト35の先端部35aが筒状体30の内周面から突出している。その突出している位置は、棒状体20の小径部22に対応する部分となっている。さらに、筒状体30の中間部の外周面に、複数の穴部36が同じ高さ位置に形成されている。
【0020】
アダプタ50において、棒状体20の頭部21の外径は、筒状体30の第1雌ねじ部32の内径よりも大きく、その頭部21は、筒状体30の上端面37の上側に位置している。
筒状体30の下端部には、第1雌ねじ部32と同軸に第2雌ねじ部38が形成されている。その第2雌ねじ部38には、試験冶具6の雄ねじ部6bが螺合する。この実施形態では、第1雌ねじ部32と第2雌ねじ部38とが、一つの貫通孔31に一連に雌ねじを形成して構成されているが、第1雌ねじ部32と第2雌ねじ部38とは連通していなくてもよい。
筒状体30の上端面37は、継手4の下端面41に当接する。筒状体30の外径と、継手4の外径とはほぼ等しく、上端面37と下端面41とはほぼ同じ面積になっている。
【0021】
アダプタ50の継手4へのピン接続方法は、
図4に示すように、まず、継手4におけるピン接続用のピン孔4aと、アダプタ50の棒状体20におけるピン接続用のピン孔21aとを同軸状に位置決めする。次いで、それらピン孔4a,21aにピン5を挿入する。これにより、継手4にアダプタ50(棒状体20)がピン接続される。次に、筒状体30の外周面の穴部36(
図2,
図3参照)に締付用治具を嵌めてから、筒状体30を回して締め、筒状体30の上端面37を継手4の下端面41に接合させる。すなわち、筒状体30がロックナットになっている。
【0022】
続いて、アダプタ50(筒状体30)の第2雌ねじ部38(
図2,
図3参照)に、上部試験治具6をねじ接続する。
この上部試験治具6は、ねじ接続をするための雄ねじ部6bを有している。
ここで、アダプタ50のピン接続と上部試験治具6のねじ接続とは、順番が逆でもよい。すなわち、上部試験治具6をアダプタ50にねじ接続した後に、そのアダプタ50を継手4にピン接続してもよい。
【0023】
アダプタ50が継手4にピン接続しているとともに上部試験治具6がアダプタ50にねじ接続している状態を、
図2に示している。
図2に示すように、アダプタ50のピン接続が可能となるよう、継手4の下端面41に、棒状体20の頭部21を挿入可能とする凹部4bが形成されており、その凹部4bの周側部にピン孔4aが形成されている。
また、ロックナットである筒状体30を回して締め、筒状体30の上端面37を継手4の下端面41に接合させた状態では、ピン接続のピン5の周側面が、アダプタ50のピン孔21aの内周面および継手4のピン孔4aの内周面に圧接している。これにより、ピン接続ががたつかない状態になっている。
【0024】
そして、上部試験治具6および下部試験治具11に試験片40の両端部を取り付ける(
図1参照)。
この状態では、試験片40に引張力および圧縮力の両方の負荷を与えても、上部試験治具6が継手4から外れることがないだけでなく、試験片40が上部試験治具6および下部試験治具11から外れることもない。そのため、この状態で引張圧縮試験を行うことができる。
【0025】
この実施形態では、引張試験用の上部試験治具60(
図5参照)を使用することにより、引張試験を行うことができる。この上部試験治具60は、アダプタ50の棒状体20の頭部21と同じ形状および同じ大きさの頭部61を備えている。
引張試験を行う場合は、まず、
図4に示すアダプタ50のピン接続と逆の手順で、アダプタ50のロックナットである筒状体30を回して緩め、ピン接続のピン5を抜き、アダプタ50を上部試験治具6と共に継手4から取り外す。次いで、
図5に示すように、アダプタ50のピン接続と同様にして、継手4におけるピン接続用のピン孔4aと、上部試験治具60におけるピン接続用のピン孔61aとを同軸状に位置決めしてから、それらピン孔4a,61aにピン5を挿入する。このようにして、上部試験治具60を継手4にピン接続する。また、不図示の下部試験治具も引張試験用に交換する。この状態で、引張試験を行うことができる。
【0026】
以上のように、引張圧縮試験にアダプタ50を使用することにより、引張圧縮試験も引張試験も、使用する継手4を同じものとすることができることから、引張圧縮試験の後に引張試験を行う場合もその逆の場合も、継手4の交換を不要にすることができる。
また、継手4にピン接続されるアダプタ50と引張試験用の上部試験治具60との交換は、ピン5の抜き差しにより安全に行うことができる。
【0027】
さらに、アダプタ50は、上部試験治具6との接続部(第2雌ねじ部38)とロックナット(筒状体30)とが一体になっている。そのため、アダプタ50は、構成部品を少なくできることから、継手4との接合面(上端面37)の平行度などの寸法精度を高くすることができるだけでなく、それ自体の大きさを小さくして軽量化することができる。また、その軽量化により、アダプタ50と引張試験用の上部試験治具60との交換をより安全にすることができる。
【0028】
また、この実施形態では、アダプタ50において、筒状体30の外周壁を貫ぬくボルト35の先端部35aが筒状体30の内周面から突出し、その突出している位置が棒状体20の小径部22に対応する部分となっている。そのため、アダプタ50を継手4から取り外す際に、ロックナットである筒状体30を緩め過ぎたとしても、ボルト35の先端部35aが棒状体20の下端部の雄ねじ部23に引っ掛かり、筒状体30が棒状体20から外れないようになっている。この点でも、安全性が確保されている。
【0029】
上述した実施形態では、アダプタ50において、ボルト35の先端部(突起部)35aを筒状体30の内周面から突出させたが、ボルト35に替えてピンなどでもよい。
また、筒状体30の内周面における突起部がなくても、継手4の交換が不要であるだけでなく、引張圧縮試験にも対応できるという所期の目的を達成することができる。
【0030】
また、上述した実施形態では、アダプタ50に引張圧縮試験用の上部試験治具6をねじ接続したが、その上部試験治具6を取り外し、圧縮試験用の上部試験治具をアダプタ50にねじ接続すると、圧縮試験を行うことができる。この場合も、上述した実施形態と同様、試験治具の交換だけでよく、継手4の交換は不要となる。
【0031】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形および応用が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 材料試験機
3 ロードセル
4 継手
4a ピン孔
5 ピン
6 上部試験治具
11 下部試験治具
20 棒状体
21a ピン孔
22 小径部
23 雄ねじ部
30 筒状体(ロックナット)
32 第1雌ねじ部
35a 先端部(突起部)
38 第2雌ねじ部
40 試験片
50 アダプタ
60 上部試験治具