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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/51 20060101AFI20220405BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/49 410
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018233495
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2020092896
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
【審査官】武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-057810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0099086(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹部を覆う前身頃領域と、着用者の背部を覆う後身頃領域と、前記前身頃領域及び前記後身頃領域の間に位置すると共に吸収体が配置される股下領域が連設された吸収性物品であって、
前記前身頃領域及び前記後身頃領域のうち、着用者の胴部を挿通可能な胴開口部を形成する胴開口端縁に近接する領域に設けられると共に胴回り方向に沿って環状に延設される伸縮部材が配置され、前記領域を胴回り方向に収縮させる収縮部と、
前記収縮部における着用者側の面の少なくとも一部を覆うように、前記収縮部を形成するシート部材に積層配置される通気路形成シートと、
を備え、
前記通気路形成シートは、
少なくとも貫通孔が形成された第1不織布を有し、
前記貫通孔の外縁部は、前記第1不織布に重ねられた第2不織布側に向かって突出しており、
前記外縁部の少なくとも一部が前記第2不織布に接合され
前記第1不織布は、前記第2不織布よりも、着用状態における着用者の肌面側に配置されている、
吸収性物品。
【請求項2】
前記貫通孔は、一方向に並んで複数形成されており、
前記第2不織布の前記第1不織布に対向する面側には、前記一方向に所定幅で延び、ホットメルトが塗布された接合領域が形成されており、
前記一方向に並ぶ複数の前記貫通孔と前記接合領域との位置が合うように前記第1不織布と前記第2不織布とは重ねられて、前記外縁部の少なくとも一部の長手方向中心が、前記第1不織布の幅方向における前記貫通孔の外縁部に接するように前記接合領域に接合されている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1不織布と前記第2不織布とを有するシート部材を備え、
前記シート部材は、着用者の腹部を覆う前身頃領域又は着用者の背部を覆う後身頃領域
の少なくとも何れかに配置されている、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、吸収性パッド(尿パッド)、生理用品等の吸収性物品が知られている。吸収性物品は、パルプや高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)により形成され、尿や体液等の液体を吸収する吸収体を備えている。吸収性物品と着用者の肌との間には、吸収体に吸収された液体や着用者の汗等から生じる湿気が滞留しやすい。この湿気は、吸収性物品の着用者に蒸れ等の不快感を生じさせ、吸収性物品の着用感を低下させる原因となる。
【0003】
特許文献1には、蒸れを防ぐための通気性を得るために穿孔針によって貫通孔が形成された不織布を備える吸収性物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6402817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
穿孔針によって不織布に貫通孔を形成する場合、穿孔針を所定温度に加熱し、貫通孔を形成する際に不織布に含まれる熱可塑性樹脂材料を加熱変形させて貫通孔の形状を維持するための熱処理が施される。熱処理された貫通孔周囲の不織布は硬くなってしまい、この貫通孔周囲の繊維が着用者の肌等に触れると着用者に不快感が生じて吸収性物品の着用感が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、通気性が得られて蒸れを抑制しつつ、着用感を低下させない吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、第1不織布に形成された貫通孔の外縁部が第2不織布側に向かって突出しており、前記外縁部の少なくとも一部が前記第2不織布に接合されている。
【0008】
詳細には、本発明は、吸収性物品であって、貫通孔が形成された第1不織布と、前記第1不織布に重ねられた第2不織布と、を備え、前記貫通孔の外縁部が前記第2不織布側に向かって突出しており、前記外縁部の少なくとも一部が前記第2不織布に接合されている。
【0009】
上記の吸収性物品では、前記第1不織布は、前記第2不織布よりも、着用状態における着用者の肌側に配置されていてもよい。
【0010】
上記の吸収性物品では、前記貫通孔は、一方向に並んで複数形成されており、前記第2不織布の前記第1不織布に対向する面側には、前記一方向に所定幅で延び、ホットメルトが塗布された接合領域が形成されており、前記一方向に並ぶ複数の前記貫通孔と前記接合領域との位置が合うように前記第1不織布と前記第2不織布とは重ねられて、前記外縁部の少なくとも一部が前記接合領域に接合されていてもよい。
【0011】
上記の吸収性物品は、前記第1不織布と前記第2不織布とを有するシート部材を備え、前記シート部材は、着用者の腹部を覆う前身頃領域又は着用者の背部を覆う後身頃領域の少なくとも何れかに配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記の本発明によれば、通気性が得られて蒸れを抑制しつつ、着用感は低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るおむつの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るおむつを展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。
図4図4は、糸ゴム同士の間隔とウェストギャザーに現れる通気路との関係を示した図である。
図5図5は、実施形態に係るおむつに用いられる不織布の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0015】
<実施形態>
図1は、実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)の斜視図である。本願で用いる方向に関する用語は、おむつ1が着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、おむつ1の着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0016】
本実施形態では、吸収性物品の一例として、着用者の腹囲が入る開口部と、着用者の左下肢及び右下肢が挿通される左右一対の開口部とを有する筒状構造のパンツ型使い捨ておむつを例示するが、本願でいう「吸収性物品」は、パンツ型使い捨ておむつに限定されるものでない。本願でいう「吸収性物品」には、例えば、着用者の股下(陰部)を前身頃から後身頃にかけて覆うシート状の部材の一端部付近に固定されたテープを、該シート状の部材の他端部付近に貼り付けることで筒状構造を形成するテープ型使い捨ておむつ等、腹囲と股下を包み得る各種形態の吸収性物品が含まれる。
【0017】
おむつ1は、着用状態において着用者の陰部(股下)を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、着用者の胴周りにおける前身頃に対応する部位であって着用者の腹部側を覆うための前身頃領域1Fと、着用者の胴周りにおける後身頃に対応する部位であって着用者の背部側を覆うための後身頃領域1Rとを有する。ここで、前身頃領域1Fは股下領域1Bの前側に位置し、後身頃領域1Rは股下領域1Bの後側に位置する。本実施形態におけるおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつであるため、前身頃領域1Fの左側の縁と後身頃領域1Rの左側の縁は互いに接合され、前身頃領域1Fの右側の縁と後身頃領域1Rの右側の縁は互いに接合されている。よって、おむつ1には、前身頃領域1Fの上側の縁と後身頃領域1Rの上側の縁とによって胴開口部2Tが形成されている。また、おむつ1には、上記接合が施されない股下領域1Bの左側の部位に左下肢開口部2Lが形成され、股下領域1Bの右側の部位に右下肢開口部2Rが形成されている。そして、おむつ1は、着用者の左下肢が左下肢開口部2Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部2Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部2Tに入るように装着されると、前身頃領域1Fが着用者の腹部側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背部側に配置され、左下肢開
口部2Lと右下肢開口部2Rが着用者の大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0018】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の左下肢の大腿部を取り巻く左下肢開口部2Lに立体ギャザー3BLが設けられ、着用者の右下肢の大腿部を取り巻く右下肢開口部2Rに立体ギャザー3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される排泄液は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0019】
図2は、実施形態に係るおむつ1の分解斜視図である。また、図3は、実施形態に係るおむつ1を展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。図3(A)は、展開及び伸長した状態のおむつ1を左側から見た場合の内部構造を模式的に示している。図3(B)は、展開及び伸長した状態のおむつ1の平面図を模式的に示している。
【0020】
おむつ1は、着用者に着用された状態において外表面を形成するカバーシート4F,4Rとパッドカバーシート6とを有する。カバーシート4Fは、主におむつ1の前身頃領域1Fの外表面を形成する。また、パッドカバーシート6は、主におむつ1の股下領域1Bの外表面を形成する。また、カバーシート4Rは、主におむつ1の後身頃領域1Rの外表面を形成する。カバーシート4F,4Rとパッドカバーシート6は、おむつ1の外表面の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。ここで、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。
【0021】
また、おむつ1は、カバーシート4Fの着用者側の面(着用者の肌側面)に積層されるインナーカバーシート5Fと、カバーシート4Fの着用者側の面に積層されるインナーカバーシート5Rとを有する。インナーカバーシート5Fは、カバーシート4Fのうち後述する折り返し線4F6よりも股下領域1B側の部分に一致する形状を有するシート状の部材である。インナーカバーシート5Rもインナーカバーシート5Fと同様、カバーシート4Rのうち後述する折り返し線4R6よりも股下領域1B側の部分に一致する形状を有するシート状の部材である。
【0022】
また、おむつ1は、パッドカバーシート6の着用者側の面において順に積層されるバックシート7、吸収体8、センターシート9を有する。パッドカバーシート6は、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有し、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する略長方形のシートである。また、バックシート7、吸収体8、センターシート9は、何れもパッドカバーシート6と同様に略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がパッドカバーシート6の長手方向と一致する状態でパッドカバーシート6に対して順に積層されている。バックシート7は、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、センターシート9は、吸収体8の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このセンターシート9は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が装着された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るセンターシート9を通って吸収体8に浸入し、そこで吸収される。液透過性のシートとしては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが挙げられる。また、センターシート9は親水性を有していてもよい。
【0023】
吸収体8は、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性の高吸収性重合体等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体8は、着用者から排泄された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持する。吸収体8は、1枚のマットからなる単層構造であってもよいし、複数枚のマットを重ね合わせた積層構造であってもよい。また、吸収体8は、目的に応じた適宜の形状を採ることができる。吸収体8の形状としては、例えば、矩形状、中央部付近が括れた砂時計型、その他各種の形状が挙げられる。
【0024】
バックシート7、吸収体8、センターシート9は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート7、吸収体8、センターシート9が積層されているパッドカバーシート6で着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート7、吸収体8、センターシート9の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体8に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はセンターシート9を介して吸収体8に接触することになる。
【0025】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート10L,10Rを有する。サイドシート10L,10Rは、センターシート9の長辺の部分に設けられる。そして、サイドシート10L,10Rには糸ゴム10L1,10R1が長手方向に沿って接着されている。よって、サイドシート10L,10Rは、前身頃領域1Fの左側の縁となるカバーシート4Fの縁4F7と、後身頃領域1Rの左側の縁となるカバーシート4Rの縁4R7とが互いに接合され、且つ、前身頃領域1Fの右側の縁となるカバーシート4Fの縁4F8と、後身頃領域1Rの右側の縁となるカバーシート4Rの縁4R8とが互いに接合されることにより、図1に示したような完成状態のおむつ1になると、糸ゴム10L1,10R1の収縮力で長手方向に引き寄せられて折り返し線10L2,10R2に沿ってセンターシート9から立ち上がる。その結果、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRが形成される。なお、カバーシート4Fにおける縁4F7及びカバーシート4Rにおける縁4R7、カバーシート4Fにおける縁4F8及びカバーシート4Rにおける縁4R8の接合方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等によって行うことができる。
【0026】
また、おむつ1は、パッドカバーシート6、バックシート7、吸収体8、センターシート9、サイドシート10L,10Rを挟んでカバーシート4Fの着用者側の面に積層される通気路形成シート11Fと、カバーシート4Rの着用者側の面に積層される通気路形成シート11Rとを有する。通気路形成シート11Fは、センターシート9の長手方向における一端側においてカバーシート4Fに重ねられる。また、通気路形成シート11Rは、センターシート9の長手方向における他端側においてカバーシート4Rに重ねられる。なお、本願においてシートが重なる状態とは、重ね合わされるシート同士が互いに全面的に接触する状態で重なる形態に限定されるものでなく、シートの一部分同士が重なる形態を含む概念である。例えば、通気路形成シート11Fは、パッドカバーシート6の長手方向における一端側の一部分が、カバーシート4Fの一部分に触れる状態で重ねられる。通気路形成シート11Fには、前身頃領域1Fの上側の縁に沿う左右方向に延在する領域に通気用の微細な通気孔が多数配列されている。通気路形成シート11Rにも通気路形成シート11Fと同様、通気孔が多数配列されている。通気孔は、例えば、後述する貫通孔20Aである。
【0027】
上記のように、おむつ1は、吸収体8を間に挟んだバックシート7及びセンターシート9の他、カバーシート4F,4R、通気路形成シート11F,11R、パッドカバーシート6、サイドシート10L,10Rが積み重なって形成されているため、これら複数のシートを積み重ねた積層体を有していると言える。
【0028】
ここで、図3に示すように、カバーシート4Fは、折り返し線4F6において一端側が折り返されている。上述したウェストギャザー3Rは、カバーシート4Fに対して糸ゴム(糸状のゴム)4F2,4F3が接着され、カバーシート4Rに対して糸ゴム(糸状のゴム)4R2,4R3が接着されることで形成される。カバーシート4Fに接着される糸ゴム4F2,4F3は、折り返されると前身頃領域1Fの上側の縁を形成することになる折り返し線4F6沿いに、折り返し線4F6側から糸ゴム4F2、糸ゴム4F3の順に設けられている。また、カバーシート4Rに接着される糸ゴム4R2,4R3も、糸ゴム4F2,4F3と同様、折り返されると後身頃領域1Rの上側の縁を形成することになる折り返し線4R6沿いに、折り返し線4R6側から糸ゴム4R2、糸ゴム4R3の順に設けられている。このため、糸ゴム4F2,4F3は、伸縮方向となる胴回り方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4Fに設けられることになる。また、糸ゴム4R2,4R3は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4Rに設けられることになる。よって、縁4F7と縁4R7が互いに接合され、縁4F8と縁4R8が互いに接合されると、糸ゴム4F2,4F3と糸ゴム4R2,4R3は、胴開口部2Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成し、胴開口部2Tを胴周り方向に収縮させる機能を発揮する。すなわち、糸ゴム4F2,4F3と糸ゴム4R2,4R3は、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。
【0029】
更に、カバーシート4Fには糸ゴム4F4,4F5が接着され、カバーシート4Rには糸ゴム4R4,4R5が接着されている。糸ゴム4F4,4F5は、カバーシート4Fのうち糸ゴム4F3よりも股下領域1B側の領域に設けられる伸縮部材である。ただし、糸ゴム4F4,4F5は、カバーシート4Fの左端から右端まで途切れることなく接着される糸ゴム4F2,4F3とは異なり、吸収体8に対応する部位となる幅方向中央部が所定の横幅分だけカットされている。カバーシート4Fは、吸収体8に対応する部位となる幅方向中央部がカットされた糸ゴム4F4,4F5を有することにより、吸水による吸収体8の膨張を阻害することなく、着用者の下腹部に適度な密着感を付与する。カバーシート4Rについてもカバーシート4Fと同様であり、吸収体8に対応する部位となる幅方向中央部が所定の横幅分だけカットされた糸ゴム4R4,4R5がカバーシート4Rに接着されることで、着用者の下腹部に適度な密着感を付与する。
【0030】
糸ゴム4F2は、図1に示した前身頃領域1Fの上側の縁となる部分に沿って左右方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F2は、所定の間隔を空けて3本平行に設けられている。そして、糸ゴム4F3は、3本ある糸ゴム4F2の隣で糸ゴム4F2と同様に左右方向に延在するように複数本設けられている。糸ゴム4F3は、おむつ1が着用された状態において、着用者の骨盤の左右両端部が位置する部位の付近に位置することで、おむつ1を着用者の腰に保持させる機能を主に担う。また、糸ゴム4F2は、おむつ1が着用された状態において、着用者の腹囲を糸ゴム4F3よりも上側で包囲することにより、おむつ1から液体が漏出するのを防ぐ機能や、糸ゴム4F3の収縮力に起因する着用者への圧迫感を緩和する機能、おむつ1内の湿気を排出する機能を担う。なお、糸ゴム4F4と糸ゴム4F5は、図3に示されるように、糸ゴム4F3の隣で糸ゴム4F3と同様に左右方向に延在するように複数本設けられている。そして、上述したように、糸ゴム4F4,4F5は、吸収体8に対応する部位がカットされている。
【0031】
図4は、前身頃領域1Fにおいて、糸ゴム4F2同士の間隔とウェストギャザー3Rに現れる通気路の大きさとの関係を示した図である。図4(A)で示される図は、ウェストギャザー3Rを着用者の肌が触れる方から見た場合の図である。また、図4(B)で示される図は、おむつ1の側方から見た場合のウェストギャザー3R内の内部構造を示した図である。また、図4(C)で示される図は、おむつ1の上方からウェストギャザー3Rを見た場合の様子を示した図である。また、図4(D)で示される図は、ウェストギャザー3Rが収縮した状態における、おむつ1の上方からウェストギャザー3Rを見た場合の状態を示した図である。図4では、説明の便宜上、ウェストギャザー3Rのうち前身頃領域1Fが図示されているが、ウェストギャザー3Rのうち後身頃領域1Rの部分についても同様である。
【0032】
図4に示されるように、カバーシート4Fは、図2に示した折り返し線4F6で折り返され、更に通気路形成シート11Fが重ねられて接合される。接合は、各糸ゴムとシートが伸長された状態で行われる。図4(A)で示される図にある符号Sの破線は、接合された部分である。また、図4(C)および図4(D)で示される図にある符号Sの箇所は、接合された部分である。
【0033】
折り返し線4F6においてカバーシート4Fが折り返された状態でカバーシート4Fと通気路形成シート11Fとを接合する接合部分Sは、図4(A)で示される図を見ると判るように、図1に示した前身頃領域1Fの上側の縁に対し直角の方向に延在する直線状の形態となっている。接合部分Sは、平行に複数設けられており、更に各間隔が大小交互となるように設けられている。よって、接合部分Sは、図4を見ると判るように、二重線が等間隔で並ぶような形態となっている。接合部分Sによって構成される二重線が等間隔で並ぶような形態を採ることにより、図4(D)で示されるように、収縮後のウェストギャザー3Rに第1通気路12と第2通気路13が交互に形成される。これは、接合が各糸ゴムとシートを伸長した状態で行われ、その後に伸長状態が解かれてウェストギャザー3Rが糸ゴム4F2の収縮力で縮むと、二重線を構成する2つの接合部分Sの間という間隔の狭い部分でシートの撓みにより相対的に小さい第1通気路12が形成され、二重線同士の間という間隔の広い部分ではシートの撓みにより相対的に大きい第2通気路13が形成されるためである。
【0034】
二重線が等間隔で並ぶような形態の接合部分Sが形成されることにより、収縮後のウェストギャザー3Rにはシートの撓みにより形成される第1通気路12と第2通気路13が大小交互に波型で形成される。図4(D)に二点鎖線で示す符号SSは、おむつ1を着用者が着用した場合に、通気路形成シート11Fに当接する肌面を仮想線として示したものである。第2通気路13は、おむつ1を着用者が装着した際に、通気路形成シート11Fの肌当接面と着用者の肌との間に形成される隙間として形成される。おむつ1と着用者の肌面との間における湿気は、ウェストギャザー3Rに形成される第1通気路12、第2通気路13を通じて外部に排出することができる。これにより、おむつ1は、着用者の蒸れ感を抑制できる。また、おむつ1は、通気路形成シート11Rが配置されるウェストギャザー3Rの後身頃領域1Rにおいても同様の通気路を備えているので、おむつ1は、ウェストギャザー3Rの後身頃領域1Rにおいても同様の効果を得ることができる。
【0035】
次に、カバーシート4F,4R、インナーカバーシート5F,5R、パッドカバーシート6、通気路形成シート11F,11Rに用いることができる不織布について説明する。図5(A)は、カバーシート4F,4R、インナーカバーシート5F,5R、パッドカバーシート6、通気路形成シート11F,11Rに用いることができる不織布20,21の平面図である。不織布21は不織布20に重ねられており、不織布20及び不織布21は、長手方向と幅方向が一致して同じ大きさを有している。例えば、不織布20,21を重ね合わせたシート部材をカバーシート4F,4R、インナーカバーシート5F,5R、パ
ッドカバーシート6、通気路形成シート11F,11Rに用いてもよい。この場合、当該シート部材は、これらのシートに合わせた寸法及び形状に裁断される。また、完成状態のおむつ1において、重なる2つシートの一方に不織布20を用い、他方のシートに不織布21を用いてもよい。例えば、通気路形成シート11Fに不織布20を用い、インナーカバーシート5Fやカバーシート4Fに不織布21を用いてもよい。
【0036】
図5(A)に示すように、不織布20には、貫通孔20Aが複数形成されている。貫通孔20Aは、不織布20の一方の面側と他方の面側を貫通して形成されている。貫通孔20Aは、通気用の孔(通気孔)であり、おむつ1内の蒸れを抑制するために設けられている。実施形態においては、貫通孔20Aは、円形状に形成されている。また、貫通孔20Aの直径は、1mm~1.5mm程度である。なお、貫通孔20Aの形状は円形状に限られず、貫通孔20Aの形状は、例えば、楕円形、多角形(三角形、四角形等)等であってもよい。貫通孔20Aの大きさや個数は特に限定されないが、例えば、開口面積が0.5~10mmの孔であれば5~200個程度が不織布20に形成されることが好ましい。
【0037】
不織布20の長手方向に見て、貫通孔20Aは一列に並んで複数形成されている。また、不織布20の幅方向に見て、貫通孔20Aは互い違いに並んでいる。複数の貫通孔20Aは、全体として千鳥状に配列されている。なお、複数の貫通孔20Aは、全体としてマトリクス状に配列されていてもよい。
【0038】
図5(B)は、図5(A)の点線で囲んだ領域Aを拡大して示す図である。貫通孔20Aは、不織布20の長手方向に並んで複数形成されている。また、不織布21の不織布20に対向する面側には、不織布20,21の長手方向に所定幅で延び、ホットメルトが塗布された接合領域21Aが形成されている。接合領域21Aの長手方向中心は、不織布20の幅方向における貫通孔20Aの外縁部に接している。なお、接合領域21Aは、複数の貫通孔20Aが並ぶ方向に延びるように設けられる。例えば、複数の貫通孔20Aが不織布20,21の幅方向に並んで形成されている場合には、接合領域21Aは、不織布20,21の幅方向に所定幅で延びるように形成されていてもよい。
【0039】
接合領域21Aには、貫通孔20Aの外縁部20Bが接合される。図5(B)において、外縁部20Bを点線の円で囲んで示している。外縁部20Bは、貫通孔20Aを一周囲んでいる。外縁部20Bは、不織布21側に向かって突出しており、外縁部20Bの一部が接合領域21Aに接合されている。不織布20,21は、不織布20の長手方向に並ぶ複数の貫通孔20Aと接合領域21Aとの位置が合うように、より具体的には、外縁部20Bと接合領域21Aとが重なるように、重ね合わされる。これにより、外縁部20Bは、接合領域21Aに接合される。不織布20,21を合わせた際に、各外縁部20Bの少なくとも一部と重なり、各外縁部20Bの少なくとも一部と接合領域21Aとが重なって外縁部20Bが接合領域21Aに接合される。なお、接合領域21Aの所定幅は、外縁部20Bの幅以上とするのが好ましい。
【0040】
図5(C)は、図5(B)中のB-B線で不織布20,21を切断した断面図である。B-B線は、不織布20,21の表面を直交する方向(厚さ方向)にみて、貫通孔20Aの中心及び当該貫通孔20Aの外縁部20Bが接合される2本の接合領域21Aを通る線である。図5(C)に示す断面図は、当該貫通孔20Aと2本の接合領域21Aを含んでいる。
【0041】
図5(C)に示すように、貫通孔20Aの外縁部20Bは、不織布21側に向かって突出しており、外縁部20Bの一部が接合領域21Aに接合されている。実施形態では、外縁部20Bの先端が接合領域21Aに接合されている。なお、不織布21において、貫通孔20Aと重なる領域21Bに切り込みを形成することで、通気性をより向上することが
できる。
【0042】
貫通孔20Aは、穿孔針を所定温度以上に加熱し、貫通孔を形成する際に不織布20に含まれる熱可塑性樹脂材料を加熱変形させて、貫通孔の形状を維持するための熱処理が施される。熱処理された貫通孔20A周囲の外縁部20Bは硬くなってしまうが、外縁部20Bの一部は不織布21の接合領域21Aに接合されている。また、おむつ1において、不織布20は、不織布21よりも、着用状態における着用者の肌側に配置される。外縁部20Bの少なくとも一部を不織布21に接合して固定することによって、外縁部20Bが着用者の肌に触れることを防ぎ、着用感が低下することを防ぐことができる。
【0043】
なお、おむつ1は、不織布20,21を有するシート部材を備え、当該シート部材は、前身頃領域1F又は後身頃領域1Rの少なくとも何れかに配置されていてもよい。例えば、当該シート部材が、ウェストギャザー3Rに配置される通気路形成シート11F、11Rに用いられてもよい。これにより、通気路形成シート11F、Rに貫通孔20Aによる通気性を確保し、図4(D)に示す第1通気路12に貫通孔20Aを通じて湿気をより導入し易くすることができる。
【0044】
また、おむつ1は、不織布20,21を重ねることで、不織布20,21が配置される領域を嵩高にすることができ、クッション性を向上させることができる。また、不織布20,21を位置合わせして重ね合わせた際に、図5(C)に示す領域21B内にはホットメルトが塗布された接合領域21Aが存在しない方が好ましい。これは、ホットメルトが固まって着用者の肌に直接又は間接的に接触すると着用感が低下してしまう虞があるためである。ホットメルトが塗布された接合領域21Aの面積を必要最小限にするため、不織布20,21を重ね合わせた際に、接合領域21Aは外縁部20Bと重なる領域に設けられていることが好ましい。これにより、おむつ1の着用感の低下を防ぐことができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、おむつ1が例示されていたが、その他の形態の吸収性物品においても上記構成や製造方法を適用可能である。上記構成や製造方法を適用可能な吸収性物品としては、例えば、パンツ型の使い捨ておむつ、テープ型の使い捨ておむつ、尿パッド、軽失禁パッドといったギャザー付きの各種形態の吸収性物品や、ギャザーの無いフラットな吸収性物品を挙げることができる。
【符号の説明】
【0046】
1・・おむつ:1B・・股下領域:1F・・前身頃領域:1R・・後身頃領域:2T・・胴開口部:2L・・左下肢開口部:2R・・右下肢開口部:3BL,3BR・・立体ギャザー:3R・・ウェストギャザー:4F,4R・・カバーシート:4F1,4R1・・開口:4F2,4F3,4F4,4F5,4R2,4R3,4R4,4R5,10L1,10R1・・糸ゴム:4F6,4R6,10L2,10R2・・折り返し線:4F7,4F8,4R7,4R8・・縁:5F,5R・・インナーカバーシート:6・・パッドカバーシート:7・・バックシート:8・・吸収体:9・・センターシート:10L,10R・・サイドシート:11F,11R・・通気路形成シート:S・・接合部分:12・・第1通気路:13・・第2通気路:20,21・・不織布:20A・・貫通孔:20B・・外縁部:21A・・接合領域:21・・領域
図1
図2
図3
図4
図5