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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】反射/透過特性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/50 20060101AFI20220405BHJP
   G01J 1/46 20060101ALI20220405BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20220405BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G01J3/50
G01J1/46
G01N21/27 Z
G01J3/02 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018556540
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2017042520
(87)【国際公開番号】W WO2018110267
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2016240218
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤村 茂樹
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-127661(JP,A)
【文献】特開2007-057529(JP,A)
【文献】特開2011-242392(JP,A)
【文献】特開2008-232920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0048449(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 3/52
G01J 1/46
G01N 21/00 - G01N 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に照射される照明光を発光する光源と、
前記照明光を発光するのに要する電力を前記光源に供給する発光回路と、
前記試料が前記照明光を反射することにより生じる反射光または前記試料が前記照明光を透過させることにより生じる透過光に応じた検出信号を出力する光検出器と、
前記検出信号を積分し積分信号を出力する積分器と、
少なくともひとつの発光時間を記憶する記憶部と、
白色校正が行われる場合に前記積分信号が第1の積分信号となっており測定が行われる場合に前記積分信号が第2の積分信号になっているとした場合に、(1)前記白色校正が行われるときに、前記少なくともひとつの発光時間に含まれる第1の発光時間だけ前記光源が前記照明光を発光するように前記発光回路を制御し、前記第1の積分信号が小さくなるほど補正後の少なくともひとつの発光時間が長くなる第1の補正処理を前記少なくともひとつの発光時間に対して行い、(2)前記測定が行われるときに、前記少なくともひとつの発光時間に含まれる第2の発光時間だけ前記光源が前記照明光を発光するように前記発光回路を制御する制御部と、
前記第2の積分信号から前記試料の反射/透過特性を演算する演算処理部と、
を備える反射/透過特性測定装置であって、
前記記憶部は、前記測定が行われた回数である測定回数をさらに記憶し、
前記制御部は、前記白色校正が行われる場合に、前記第1の積分信号が許容範囲内になく前記測定回数が基準の測定回数より少ないと判定したときに前記第1の補正処理を行い、前記第1の積分信号が前記許容範囲内になく前記測定回数が前記基準の測定回数以上であると判定したときに前記第1の補正処理と異なる第2の補正処理を行い、
前記第1の補正処理は、前記第1の積分信号が前記許容範囲の下限より小さい場合に、前記少なくともひとつの発光時間をより長くし、前記第1の積分信号が前記許容範囲の上限より大きい場合に、前記少なくともひとつの発光時間をより短くする処理であり、
前記第2の補正処理は、前記少なくともひとつの発光時間をより長くする処理である反射/透過特性測定装置。
【請求項2】
前記反射/透過特性測定装置の内部の温度を検出する温度検出器
をさらに備え、
前記少なくともひとつの発光時間が複数の発光時間であり、
前記記憶部は、前記複数の発光時間にそれぞれ対応する複数の温度をさらに記憶し、
前記制御部は、前記白色校正が行われる場合に前記温度検出器により検出される内部の温度が第1の温度となっており前記測定が行われる場合に前記温度検出器により検出される内部の温度が第2の温度になっているとした場合に、(1)前記白色校正が行われるときに、前記複数の温度から前記第1の温度に一致する温度である第1の一致温度を選択し、前記複数の発光時間から前記第1の一致温度に対応する発光時間である第1の対応発光時間を選択し、前記第1の対応発光時間を前記第1の発光時間とし、(2)前記測定が行われるときに、前記複数の温度から前記第2の温度に一致する温度である第2の一致温度を選択し、前記複数の発光時間から前記第2の一致温度に対応する発光時間である第2の対応発光時間を選択し、前記第2の対応発光時間を前記第2の発光時間とする
請求項に記載の反射/透過特性測定装置。
【請求項3】
表示部
をさらに備え、
前記記憶部は、前記第1の補正処理が行われた回数である補正回数をさらに記憶し、
前記制御部は、前記白色校正が行われる場合に、前記測定回数が基準の測定回数以上であり前記補正回数が基準の補正回数以上であると判定したときに前記表示部にエラー表示を行わせる
請求項1または2に記載の反射/透過特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射/透過特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分光測色計は、試料の分光反射特性を測定する装置である。
【0003】
分光測色計は、試料に照明光を照射し、試料が照明光を反射することにより生じた反射光の分光特性等を測定する。
【0004】
分光測色計においては、例えば、発光回路が発光動作に必要な電力を光源に供給し、光源が照明光を発光する発光動作を行い、光検出器が反射光に応じた検出信号を出力し、積分回路が検出信号を積分し積分信号を出力し、演算処理部が出力された積分信号から分光測色の結果を演算する。
【0005】
分光測色計に備えられる光源および分光測色計に備えられる発光回路が備える素子の特性は、環境に依存するとともに、時間が経過するにつれて変化する。このため、分光測色計の測定性能も、環境に依存するとともに、時間が経過するにつれて変化する。例えば、環境温度が変化した場合は、発光回路が供給する電力が変化し、光源が発光する照明光の光量が変化し、光検出器が受光する反射光の光量が変化し、分光測色計の測定性能が変化する。また、時間が経過するにつれて、光源が劣化し、光源が発光する光の光量が低下し、光検出器が受光する反射光の光量が低下し、分光測色計の測定性能が変化する。
【0006】
分光測色計等の反射特性測定装置において、光源が発光する光の光量が変化した場合でも測定が精度よく行われるようにするための校正が行われる場合がある。特許文献1および2に記載された技術は、その一例である。
【0007】
特許文献1に記載された技術においては、光源の明るさが明るさ検知センサーにより測定され、光源の明るさが正常でないと判断された場合に光源の明るさが正常な明るさに調整される(段落0027および0028)。特許文献1に記載された技術によれば、光源の明るさが正常値に保たれ、測定の信頼性が向上する(段落0030および0034)。
【0008】
特許文献2に記載された技術においては、ラインセンサーの視野内で測定の邪魔にならない位置でかつラインセンサーのピントがあう位置に白色校正板が配置され、色測定が行われる場合に白色校正板が撮像されランプの経時的なエネルギーの減衰量が演算され、減衰量だけ色測定データを補正するための補正値が求められ、色測定値に補正値が掛けられる(段落0008,0012および0035)。特許文献2に記載された技術によれば、安定した色測定値が得られる(段落0035)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平7-55704号公報
【文献】特開2001-99708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された技術に代表される従来の技術においては、照明光の強度が変更されるため、照明光の強度の変更にともなって照明光の分光強度が変化し、測定される分光反射特性に誤差が生じる場合がある。例えば、特許文献1に記載された技術においては、光源の明るさが調整されるため、光源の明るさの調整にともなって投光される光の分光強度が変化し、鮮映性の数値の精度に誤差が生じる場合がある。
【0011】
特許文献1に記載された技術に代表される従来の技術においては、照明光の強度をモニターするための機構が必要になり、反射特性測定装置の構造が複雑になる等の問題が生じる。例えば、特許文献1に記載された技術においては、光源の明るさを測定する明るさ検知センサーが必要になり、塗装面性状測定装置の構造が複雑になる等の問題が生じる。
【0012】
特許文献2に記載された技術に代表される従来の技術においては、分光反射特性を補正するため、反射特性に補正誤差が生じる場合がある。例えば、特許文献2に記載された技術においては、色測定値に補正値が掛けられるため、色測定値に補正誤差が生じる場合がある。
【0013】
特許文献2に記載された技術に代表される従来の技術においては、分光反射特性を補正するため、反射/透過特性測定装置において制御が複雑になる等の問題が生じる。
【0014】
これらの問題は、分光測色計以外の反射特性測定装置においても生じる。また、これらの問題は、透過特性測定装置においても生じる。
【0015】
発明の詳細な説明に記載された発明は、これらの問題を解決することを目的とする。発明の詳細な説明に記載された発明が解決しようとする課題は、反射特性/透過特性に誤差が生じることを抑制し、反射/透過特性測定装置の構造が複雑になることを抑制し、反射/透過特性測定装置において制御が複雑になることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明は、試料に照射される照明光を発光する光源と、前記照明光を発光するのに要する電力を前記光源に供給する発光回路と、前記試料が前記照明光を反射することにより生じる反射光または前記試料が前記照明光を透過させることにより生じる透過光に応じた検出信号を出力する光検出器と、前記検出信号を積分し積分信号を出力する積分器と、少なくともひとつの発光時間を記憶する記憶部と、白色校正が行われる場合に前記積分信号が第1の積分信号となっており測定が行われる場合に前記積分信号が第2の積分信号になっているとした場合に、(1)前記白色校正が行われるときに、前記少なくともひとつの発光時間に含まれる第1の発光時間だけ前記光源が前記照明光を発光するように前記発光回路を制御し、前記第1の積分信号が小さくなるほど補正後の少なくともひとつの発光時間が長くなる第1の補正処理を前記少なくともひとつの発光時間に対して行い、(2)前記測定が行われるときに、前記少なくともひとつの発光時間に含まれる第2の発光時間だけ前記光源が前記照明光を発光するように前記発光回路を制御する制御部と、前記第2の積分信号から前記試料の反射/透過特性を演算する演算処理部と、を備える反射/透過特性測定装置であって、前記記憶部は、前記測定が行われた回数である測定回数をさらに記憶し、前記制御部は、前記白色校正が行われる場合に、前記第1の積分信号が許容範囲内になく前記測定回数が基準の測定回数より少ないと判定したときに前記第1の補正処理を行い、前記第1の積分信号が前記許容範囲内になく前記測定回数が前記基準の測定回数以上であると判定したときに前記第1の補正処理と異なる第2の補正処理を行い、前記第1の補正処理は、前記第1の積分信号が前記許容範囲の下限より小さい場合に、前記少なくともひとつの発光時間をより長くし、前記第1の積分信号が前記許容範囲の上限より大きい場合に、前記少なくともひとつの発光時間をより短くする処理であり、前記第2の補正処理は、前記少なくともひとつの発光時間をより長くする処理である。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の反射/透過特性測定装置において、前記反射/透過特性測定装置の内部の温度を検出する温度検出器をさらに備え、前記少なくともひとつの発光時間が複数の発光時間であり、前記記憶部は、前記複数の発光時間にそれぞれ対応する複数の温度をさらに記憶し、前記制御部は、前記白色校正が行われる場合に前記温度検出器により検出される内部の温度が第1の温度となっており前記測定が行われる場合に前記温度検出器により検出される内部の温度が第2の温度になっているとした場合に、(1)前記白色校正が行われるときに、前記複数の温度から前記第1の温度に一致する温度である第1の一致温度を選択し、前記複数の発光時間から前記第1の一致温度に対応する発光時間である第1の対応発光時間を選択し、前記第1の対応発光時間を前記第1の発光時間とし、(2)前記測定が行われるときに、前記複数の温度から前記第2の温度に一致する温度である第2の一致温度を選択し、前記複数の発光時間から前記第2の一致温度に対応する発光時間である第2の対応発光時間を選択し、前記第2の対応発光時間を前記第2の発光時間とする。
【0019】
請求項に記載の発明は、請求項1または2に記載の反射/透過特性測定装置において、表示部をさらに備え、前記記憶部は、前記第1の補正処理が行われた回数である補正回数をさらに記憶し、前記制御部は、前記白色校正が行われる場合に、前記測定回数が基準の測定回数以上であり前記補正回数が基準の補正回数以上であると判定したときに前記表示部にエラー表示を行わせる。
【発明の効果】
【0024】
発明の詳細な説明に記載された発明によれば、反射特性/透過特性に誤差が生じることが抑制され、反射/透過特性測定装置の構造が複雑になることが抑制され、反射/透過特性測定装置において制御が複雑になることが抑制される。
【0025】
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態の分光測色計を図示するブロック図である。
図2】第1実施形態の分光測色計に記憶されるテーブルを示す図である。
図3】第1実施形態の分光測色計における光源の発光光量の発光回路の温度による変化を図示するグラフである。
図4】第1実施形態の分光測色計において行われる白色校正の手順を図示するフローチャートである。
図5】第1実施形態の分光測色計において行われる測定の手順を図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1 第1実施形態
1.1 分光測色計
図1は、第1実施形態の分光測色計を図示するブロック図である。
【0028】
図1に図示される分光測色計1000は、試料1020に照明光1040を照射し、試料1020が照明光1040を反射することにより生じる反射光1041を受光し、反射光1041の分光強度を得、分光強度から試料1020の測色値を得る。測色値に代えてまたは測色値に加えて、測色値以外の反射特性が得られてもよい。例えば、分光反射率が得られてもよい。反射光1041に代えて、試料1020が照明光1040を透過させることにより生じる透過光が受光されてもよい。反射光1041に代えて透過光が受光される場合は、反射特性を得る反射特性測定装置である分光測色計1000が、透過特性を得る透過特性測定装置になる。分光測色方式の反射特性測定装置である分光測色計1000が、刺激値直読方式の反射特性測定装置である色彩計に置き換えられてもよい。
【0029】
分光測色計1000は、光源1060、発光回路1061、光検出器1062、積分器1063、A/D変換器1064、制御演算部1065、記憶部1066、温度検出器1067および表示部1068を備える。光検出器1062は、受光素子1080を備える。積分器1063は、積分回路1100を備える。制御演算部1065は、制御部1120および演算部1121を備える。分光測色計1000がこれらの構成物以外の構成物を備えてもよい。
【0030】
光源1060は、キセノンフラッシュランプ、発光ダイオード(LED)等であり、照明光1040を発光する。
【0031】
発光回路1061は、照明光1040を発光するのに要する電力を光源1060に供給する。
【0032】
光検出器1062は、反射光1041に応じた検出信号1140を出力する。受光素子1080は、フォトセンサーとも呼ばれ、反射光1041を受光し、反射光1041に応じた電流を出力する。検出信号1140は、受光素子1080が出力する電流である。反射光1041に代えて透過光が受光される場合は、光検出器1062は透過光に応じた検出信号を出力する。
【0033】
積分回路1100は、検出信号1140を積分し、積分信号1160を出力する。積分信号1160は、受光素子1080が出力した電流を電圧に変換したものである。
【0034】
A/D変換器1064は、アナログ電気信号である積分信号1160をデジタル電気信号である積分信号1180に変換する。
【0035】
制御演算部1065は、組み込みコンピューターであり、インストールされたファームウェアにしたがって動作する。制御演算部1065の機能の一部がソフトウェアを実行しないハードウェアに担われてもよい。制御部1120は、発光回路1061を制御する。演算部1121は、積分信号1180から試料1020の測色値を演算する。したがって、A/D変換器1064および演算部1121は、積分信号1160から試料1020の測色値を演算する演算処理部1190を構成する。
【0036】
記憶部1066は、制御演算部1065から出力された情報を記憶し、後述するテーブル、測定回数および補正回数を記憶する。測定回数は、後述する測定が行われた回数である。補正回数は、後述する補正処理が行われた回数である。
【0037】
温度検出器1067は、発光回路1061の温度を検出する。発光回路1061の温度以外の分光測色計1000の内部の温度が検知されてもよい。
【0038】
表示部1068は、制御演算部1065から出力された情報を表示する。
【0039】
1.2 テーブル
図2は、第1実施形態の分光測色計に記憶されるテーブルを示す図である。
【0040】
図2に図示されるテーブル1200は、記憶部1066に記憶され、発光回路1061の温度と光源1060の発光時間との関係を定義する関係テーブルであり、5個の発光時間である「85μsec」「80μsec」「75μsec」「65μsec」および「60μsec」を含み、5個の温度である「10℃以下」「10-15℃」「15-20℃」「20-35℃」および「35℃以上」を含む。「10℃以下」「10-15℃」「15-20℃」「20-35℃」および「35℃以上」は、「85μsec」「80μsec」「75μsec」「65μsec」および「60μsec」にそれぞれ対応する。テーブル1200が、4個以下または6個以上の発光時間を含み4個以下または6個以上の発光時間にそれぞれ対応する4個以下または6個以上の温度を含むテーブルに置き換えられてもよい。テーブル1200は、温度が低くなるほど発光時間が長くなるように定義されている。
【0041】
テーブル1200に代えて任意の温度に対応する1個の発光時間が記憶部1066に記憶されてもよい。
【0042】
1.3 発光光量の温度依存性
図3は、光源がキセノン管である場合の光源の発光光量の発光回路の温度による変化を図示するグラフである。
【0043】
図3に図示されるように、光源1060の発光光量は、発光回路1061の温度が低下するにつれて低下する。発光回路1061の温度が低下するにつれて光源1060の発光光量が低下するのは、発光回路1061に備えられるコンデンサーの温度が低下するにつれて当該コンデンサーのtanδが増加することで、コンデンサー内部における損失が増加するためである。温度が5℃だけ変化した場合の発光光量の変化は、25℃における発光光量の10%以上になる場合があり、低温側において特に大きくなる。
【0044】
このため、発光回路1061の温度が低くなるにつれて光源1060の発光時間が長くなるように定義されるテーブル1200を参照して発光回路1061の温度が低くなるほど光源1060の発光時間が長くなる補正処理が行われた場合は、光源1060の発光光量の低下が光源1060の発光時間の延長により補償され、積分信号1160の強度が維持され、S/N比の低下等の分光測色計1000の性能の低下が抑制される。
【0045】
1.4 白色校正の手順
図4は、第1実施形態の分光測色計において行われる白色校正の手順を図示するフローチャートである。
【0046】
以下では、白色校正が行われる場合に、積分信号1160が第1の積分信号になっており、温度検出器1067により検出される温度が第1の温度になっているとする。
【0047】
ステップS101においては、白色校正が開始される。
【0048】
ステップS101に続くステップS102においては、温度検出器1067が温度を検出する。
【0049】
ステップS102に続くステップS103においては、制御部1120が、第1の発光時間を設定する。第1の発光時間の設定においては、テーブル1200が参照され、5個の温度である「10℃以下」「10-15℃」「15-20℃」「20-35℃」および「35℃以上」から第1の温度に一致する温度である第1の一致温度が選択され、5個の発光時間である「85μsec」「80μsec」「75μsec」「65μsec」および「60μsec」から第1の一致温度に対応する発光時間である第1の対応発光時間が選択され、第1の対応発光時間が第1の発光時間とされる。
【0050】
任意の温度に対応する1個の発光時間が記憶部1066に記憶されている場合は、当該1個の発光時間が第1の発光時間とされる。
【0051】
ステップS103に続くステップS104においては、分光測色計1000が測定動作を行う。測定動作においては、試料1020が、白色校正板になり、制御部1120が、第1の発光時間だけ光源1060が照明光1040を発光するように発光回路1061を制御する。テーブル1200は、温度が低くなるほど発光時間が長くなるように定義されているため、第1の発光時間は、第1の温度が低くなるほど長くなる。
【0052】
ステップS104に続くステップS105においては、制御部1120が、第1の積分信号が許容範囲内にあるか否かを判定する。制御部1120は、ステップS105において第1の積分信号が許容範囲内にあると判定した場合は、ステップS105に続いてステップS106を実行する。制御部1120は、ステップS105において第1の積分信号が許容範囲内にないと判定した場合は、ステップS105に続いてステップS107からS113までを実行する。
【0053】
ステップS106においては、白色校正が完了する。
【0054】
ステップS107においては、制御部1120が、測定回数が基準の測定回数であるN回より少ないか否かを判定する。制御部1120は、測定回数がN回より少ないと判定した場合は、ステップS107に続いてステップS108からS110までを実行する。制御部1120は、測定回数がN回以上であると判定した場合は、ステップS107に続いてステップS111からステップS113までを実行する。
【0055】
測定回数がN回より少ない場合は、白色校正板からの反射光1041の強度が許容範囲内にない原因が光源1060の劣化ではなく光源1060の個体差にあると推定される。一方、測定回数がN回以上である場合は、白色校正板からの反射光1041の強度が許容範囲内にない原因が光源1060の個体差ではなく光源1060の劣化にあると推定される。したがって、ステップS107によれば、光源1060の個体差が存在すると推定される場合は、ステップS108からS110までにおいて光源1060の個体差が存在する場合に適した第1の補正処理が行われ、光源1060の劣化が存在すると推定される場合は、ステップS111からS113までにおいて光源1060の劣化が存在する場合に適した第2の補正処理が行われる。第1の補正処理および第2の補正処理は、互いに異なる。
【0056】
ステップS108においては、制御部1120が、第1の積分信号が許容範囲の下限より小さいのかまたは許容範囲の上限より大きいのかを判定する。制御部1120は、ステップS108において第1の積分信号が許容範囲の下限より小さいと判定した場合は、ステップS108に続いてステップS109を実行する。制御部1120は、ステップS108において第1の積分信号が許容範囲の上限より大きいと判定した場合は、ステップS108に続いてステップS110を実行する。
【0057】
ステップS109においては、制御部1120が、テーブル1200を補正する。ステップS109におけるテーブル1200の補正においては、補正後の5個の発光時間が補正前の5個の発光時間よりそれぞれ長くなるようにテーブル1200に含まれる5個の発光時間の補正処理が行われる。例えば、5個の発光時間が一律に5μsecだけ延長される。5個の発光時間の補正量が互いに異なってもよい。
【0058】
ステップS110においては、制御部1120が、テーブル1200を補正する。ステップS110におけるテーブル1200の補正においては、補正後の5個の発光時間が補正前の5個の発光時間よりそれぞれ短くなるようにテーブル1200に含まれる5個の発光時間の補正処理が行われる。
【0059】
ステップS109およびS110によれば、第1の積分信号が小さくなるほど補正後の5個の発光時間が長くなる補正処理が5個の発光時間に対して行われる。
【0060】
ステップS109が実行された後は、再びステップS102が実行される。また、ステップS110が実行された後は、再びステップS102が実行される。これにより、第1の積分信号が許容範囲内にあるようになるまで第1の補正処理が繰り返される。
【0061】
ステップS111においては、制御部1120が、テーブル1200が補正済であるか否かを判定する。制御部1120は、ステップS111においてテーブル1200が補正済でないと判定した場合は、ステップS111に続いてステップS112を実行する。制御部1120は、ステップS111においてテーブル1200が補正済であると判定した場合は、ステップS111に続いてステップS113を実行する。
【0062】
ステップS112においては、制御部1120が、テーブル1200を補正する。ステップS112におけるテーブル1200の補正においては、補正後の5個の発光時間が補正前の5個の発光時間よりそれぞれ長くなるようにテーブル1200に含まれる5個の発光時間の補正処理が行われる。これにより、測定回数がN回より多くなっているにもかかわらずテーブル1200が補正されていない場合は、テーブル1200が補正される。
【0063】
ステップS113においては、制御部1120が、表示部1068にエラー表示を行わせる。エラー表示は、光源1060が劣化していることを示す警告表示である。これにより、測定回数がN回以上であり補正回数が1回以上であると判定されたときに、エラー表示が行われる。測定回数がN回以上であり補正回数が1回以上であると判定された場合は、光源1060の劣化が存在すると推定されるため、エラー表示は、光源1060の劣化が存在すると推定される場合に行われる。1回という基準の回数が他の基準の回数に置き換えられてもよい。
【0064】
ステップS112が実行された後は、再びステップS102が実行される。
【0065】
1.5 測定の手順
図5は、第1実施形態の分光測色計において行われる測定の手順を図示するフローチャートである。
【0066】
以下では、測定が行われる場合に、積分信号1160が第2の積分信号になっており、温度検出器1067により検出される温度が第2の温度になっているとする。
【0067】
ステップS121においては、測色が開始される。
【0068】
ステップS121に続くステップS122においては、温度検出器1067が温度を検出する。
【0069】
ステップS122に続くステップS123においては、制御部1120が、第2の発光時間を設定する。第2の発光時間の設定においては、テーブル1200が参照され、5個の温度である「10℃以下」「10-15℃」「15-20℃」「20-35℃」および「35℃以上」から第2の温度に一致する温度である第2の一致温度が選択され、5個の発光時間である「85μsec」「80μsec」「75μsec」「65μsec」および「60μsec」から第2の一致温度に対応する発光時間である第2の対応発光時間が選択され、第2の対応発光時間が第2の発光時間とされる。
【0070】
ステップS123に続くステップS124においては、分光測色計1000が測色動作を行う。測色動作においては、制御部1120が、第2の発光時間だけ光源1060が照明光1040を発光するように発光回路1061を制御する。テーブル1200は、温度が低くなるほど発光時間が長くなるように定義されているため、第2の発光時間は、第2の温度が低くなるほど長くなる。
【0071】
ステップS124に続くステップS125においては、制御部1120が、第2の積分信号が飽和しているか否かを判定する。制御部1120は、ステップS125において第2の積分信号が飽和していないと判定した場合は、ステップS126を実行する。制御部1120は、ステップS126において第2の積分信号が飽和していると判定した場合は、ステップS127を実行する。
【0072】
ステップS126においては、演算処理部1190が、第2の積分信号から測色値を演算し、測色が完了する。
【0073】
ステップS127においては、制御部1120が、表示部1068にエラー表示を行わせる。エラー表示は、校正を促す警告表示である。
【0074】
第1実施形態の分光測色計1000によれば、照明光1040の強度が変更されず、光源1060の測色値に補正が行われないため、測色値に誤差が生じることが抑制され、分光測色計1000において制御が複雑になることが抑制される。また、照明光1040の強度をモニターするための機構が不要であるため、分光測色計1000の構造が複雑になることが抑制される。
【0075】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る反射/透過特性測定装置は、反射/透過特性を測定する測定分野において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0077】
1000 分光測色計
1060 光源
1061 発光回路
1062 光検出器
1063 積分器
1064 A/D変換器
1065 制御演算部
1066 記憶部
1067 温度検出器
1068 表示部
1190 演算処理部
図1
図2
図3
図4
図5