(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】リザーブタンク
(51)【国際特許分類】
F01P 11/00 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
F01P11/00 C
(21)【出願番号】P 2019013907
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 和文
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-125940(JP,A)
【文献】特開平6-193444(JP,A)
【文献】特開2018-71452(JP,A)
【文献】特開2018-71453(JP,A)
【文献】特開2018-96321(JP,A)
【文献】実開昭60-173623(JP,U)
【文献】実開昭63-67617(JP,U)
【文献】実公昭47-20606(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータと連通管を介して接続されているタンク本体部を備えており、前記連通管が前記タンク本体部の上部から底部近傍まで挿入されているリザーブタンクであって、
前記タンク本体部内の底面には、立壁で囲われて、前記連通管の下部が挿入される水溜り部が形成されており、
前記タンク本体部の底面における前記水溜り部内と前記水溜り部外とが、前記立壁を跨ぐ通路によって連通しており、
前記通路の一方の開口が前記水溜り部内の底面の位置に設けられており、前記通路の他方の開口が前記水溜り部外の底面の位置に設けられているリザーブタンク。
【請求項2】
請求項1に記載のリザーブタンクであって、
前記タンク本体部における前記水溜り部内の底面と前記水溜り部外の底面とが等しい高さに設定されているリザーブタンク。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のリザーブタンクであって、
前記通路は、前記タンク本体部の冷却水の下限レベル線よりも低い位置に設けられているリザーブタンク。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のリザーブタンクであって、
前記通路は、前記立壁を跨ぎ、一端側が前記水溜り部内の底面近傍まで延び、他端側が前記水溜り部外の底面近傍まで延びる通路壁を備えているリザーブタンク。
【請求項5】
請求項4に記載のリザーブタンクであって、
前記タンク本体部を構成する第1のタンク片と第2のタンク片とを備えており、
前記第1のタンク片の内壁面には、前記通路壁の一方を構成する第1通路壁片と、前記立壁の一方を構成する第1立壁片とを備えており、
前記第2のタンク片の内壁面には、前記通路壁の他方を構成する第2通路壁片と、前記立壁の他方を構成する第2立壁片とを備えており、
前記第1のタンク片の縁部と前記第2のタンク片の縁部とが接合されることで前記タンク本体部が形成され、前記第1通路壁片と前記第2通路壁片とが接合されることで前記タンク本体部内に前記通路壁が形成され、前記第1立壁片と前記第2立壁片とが接合されることで前記タンク本体部内に前記立壁が形成されているリザーブタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータから押し出された冷却水を貯留し、また貯留した冷却水を前記ラジエータに戻すリザーブタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
上記したリザーブタンクに関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のリザーブタンク100では、
図13に示すように、冷却水を貯留するタンク本体部102の底部を絞ることで、タンク本体部102の底面に凹部102wを形成し、前記凹部102w内に連通管104の下部を挿入するようにしている。これにより、例えば、車両旋回時の加速度の影響でタンク本体部102内の冷却水の液面が傾いても、連通管104の下端開口が冷却水の液面から露出し難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、タンク本体部102の底部を絞って、タンク本体部102の底面に凹部102wを形成する構成では、凹部102wの周囲の空間をタンク本体部102の容積として有効に利用できなくなる。即ち、凹部102wの周囲の空間が無駄になるため、これを補うために、タンク本体部102の高さ寸法等を大きくする必要がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、タンク本体部の底部近傍を絞らない形状であっても、連通管の下端開口が冷却水の液面から露出し難いようにして、タンク本体部の容積の無駄をなくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、ラジエータと連通管を介して接続されているタンク本体部を備えており、前記連通管が前記タンク本体部の上部から底部近傍まで挿入されているリザーブタンクであって、前記タンク本体部内の底面には、立壁で囲われて、前記連通管の下部が挿入される水溜り部が形成されており、前記タンク本体部の底面における前記水溜り部内と前記水溜り部外とが、前記立壁を跨ぐ通路によって連通しており、前記通路の一方の開口が前記水溜り部内の底面の位置に設けられており、前記通路の他方の開口が前記水溜り部外の底面の位置に設けられている。
【0007】
本発明によると、連通管の下部は、タンク本体部の底面の位置で立壁に囲われた水溜り部に挿入されている。このため、例えば、車両旋回時の加速度の影響で、水溜り部内の冷却水の液面レベルが傾いても、これに起因する水溜り部内の液面低下量は水溜り部がない場合の液面低下量と比べて十分に小さくなる。したがって、連通管の下端開口が液面から露出し難くなる。また、水溜り部内は、立壁を跨ぐ通路によって水溜り部外と連通している。そして、前記通路の一方の開口が前記水溜り部内の底面の位置に設けられており、前記通路の他方の開口が前記水溜り部外の底面の位置に設けられている。このため、水溜り部内の冷却水が減少して液面が低下した場合でも、前記通路の働きで水溜り部外から水溜り部内にサイフォン管の原理により冷却水が供給されて、水溜り部内の液面レベルと水溜り部外の液面レベルとが等しい高さに保持される。したがって、水溜り部の周囲をタンク本体部の容積として有効に利用できる。
【0008】
第2の発明によると、タンク本体部における水溜り部内の底面と前記水溜り部外の底面とが等しい高さに設定されている。
【0009】
第3の発明によると、通路は、タンク本体部の冷却水の下限レベル線よりも低い位置に設けられている。このため、通常は、タンク本体部の冷却水の液面は、前記通路よりも高い位置にあり、連通管の下端開口が液面から露出することはない。
【0010】
第4の発明によると、通路は、立壁を跨ぎ、一端側が水溜り部内の底面近傍まで延び、他端側が前記水溜り部外の底面近傍まで延びる通路壁を備えている。即ち、通路壁の一端側と底面間が一方の開口となり、通路壁の他端側と底面間が他方の開口となる。
【0011】
第5の発明によると、タンク本体部を構成する第1のタンク片と第2のタンク片とを備えており、前記第1のタンク片の内壁面には、前記通路壁の一方を構成する第1通路壁片と、前記立壁の一方を構成する第1立壁片とを備えており、前記第2のタンク片の内壁面には、前記通路壁の他方を構成する第2通路壁片と、前記立壁の他方を構成する第2立壁片とを備えており、前記第1のタンク片の縁部と前記第2のタンク片の縁部とが接合されることで前記タンク本体部が形成され、前記第1通路壁片と前記第2通路壁片とが接合されることで前記タンク本体部内に前記通路壁が形成され、前記第1立壁片と前記第2立壁片とが接合されることで前記タンク本体部内に前記立壁が形成されている。
【0012】
このように、タンク本体部を第1のタンク片と第2のタンク片とから構成することで、タンク本体内に立壁に囲われた水溜り部と通路壁とを容易に形成できるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、タンク本体部の底部近傍を絞らない形状であっても、連通管の下端開口が冷却水から露出しないようになり、タンク本体部の容積の無駄がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1に係るリザーブタンクを備えるラジエータの取付け位置図である。
【
図3】前記ラジエータ、及びリザーブタンクの配管接続図である。
【
図7】前記リザーブタンクの左右方向の縦断面図(
図5のVII-VII矢視断面図)である。
【
図8】前記タンク本体部の第1タンク片と第2タンク片とを接合させる様子を表す平断面図(
図7のVIII-VIII矢視断面図)である。
【
図9】前記タンク本体部の第1タンク片と第2タンク片とを接合させる様子を表す平断面図(
図7のIX-IX矢視断面図)である。
【
図10】前記リザーブタンクの平断面図(
図7のX-X矢視断面図)である。
【
図11】前記リザーブタンクのタンク本体部の第1タンク片と第2タンク片とを接合させる様子を表す平断面図(
図7のXI-XI矢視断面図)である。
【
図12】前記タンク本体部の第1タンク片と第2タンク片とを接合させる様子を表す前後方向の縦断面図(
図7のXII-XII矢視断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
以下、
図1から
図12に基づいて、本発明の実施形態1に係るリザーブタンクの説明を行う。本実施形態に係るリザーブタンク30は、ラジエータ10に取付けられて、前記ラジエータ10から押し出された冷却水を貯留し、またその冷却水を前記ラジエータ10に戻せるように構成されている。ここで、図中における前後左右及び上下は、ラジエータ10、及びリザーブタンク30を備える車両1の前後左右、及び上下に対応している。
【0016】
<ラジエータ10の概要について>
ラジエータ10は、車両1のエンジン2(
図3参照)を冷却するための装置であり、
図1に示すように、車両1のエンジンルームERの前部に設けられたラジエータサポート4に取付けられている。ラジエータ10は、
図3に示すように、冷却水を流すためのラジエータホース15によってエンジン2と接続されている。
【0017】
ラジエータホース15は、
図3に示すように、エンジン2から流れ出た冷却水をラジエータ10に導くアッパホース15uと、ラジエータ10から流れ出た冷却水をエンジン2に導くロアホース15dとを備えている。また、アッパホース15uとロアホース15dとがバイパスホース16によって接続されている。さらに、バイパスホース16とロアホース15dとの接続箇所には、サーモスタット14が設けられている。サーモスタット14は、冷却水の温度が所定温度よりも低いときにバイパスホース16とロアホース15dとを連通させ、ラジエータ10側の流路を閉鎖する。また、サーモスタット14は、冷却水の温度が所定温度よりも高いときにバイパスホース16側の流路を閉鎖し、ラジエータ10とロアホース15dとの流路を連通させる。
【0018】
ラジエータ10の背面の上部中央には、
図2に示すように、リザーブタンク30が取付けられている。また、ラジエータ10の上端中央には、給水口(図示省略)が設けられており、その給水口がラジエータキャップ12によって塞がれている。ラジエータキャップ12には、
図3に示すように、連通管20の一端が接続されており、その連通管20の他端がリザーブタンク30内に挿入されている。ラジエータキャップ12には、ラジエータ10内の圧力が所定値以上になると開弁する加圧弁(図示省略)と、ラジエータ10内の圧力が負圧になると開弁する負圧弁(図示省略)とが設けられている。そして、ラジエータキャップ12の加圧弁、あるいは負圧弁が開弁することで、ラジエータ10とリザーブタンク30とは連通管20とを介して連通する。なお、
図2では、連通管20は省略されている。
【0019】
上記構成により、例えば、冷却水の温度が上昇してラジエータ10内の圧力が所定値以上になると、ラジエータキャップ12の加圧弁が開弁し、ラジエータ10から押し出された冷却水が連通管20によってリザーブタンク30に導かれる。また、冷却水の温度が低下してラジエータ10内の圧力が負圧になると、ラジエータキャップ12の負圧弁が開弁し、リザーブタンク30に貯留されている冷却水が連通管20によってラジエータ10に戻される。ここで、連通管20は、
図3等に示すように、ラジエータ10とリザーブタンク30間に配管される可撓性の連通管本体22と、リザーブタンク30内の上部から底部近傍まで高さ方向に形成されるタンク内連通管24と、前記連通管本体22とタンク内連通管24とを接続する接続管26とから構成されている。
【0020】
<リザーブタンク30の概要について>
リザーブタンク30は、密閉型容器であり、
図4~
図6に示すように、略角形の箱状に形成されている。ここで、リザーブタンク30は、上記したように、ラジエータ10の背面に取付けられているため、図において車両後側がリザーブタンク30の表面側であり、図において車両前側がリザーブタンク30の裏面側である。
【0021】
リザーブタンク30は、
図4に示すように、タンク本体部300と、タンク本体部300の上部中央に形成された注水口312を塞ぐタンクキャップ32と、タンク本体部300をラジエータ10の背面に取付けるための取付け下ピン33、及び左右の取付けブラケット34とから構成されている。ここで、タンクキャップ32には、タンク本体部300内の冷却水がオーバーフローする際に前記冷却水を逃がすためのオーバーフロー通路(図示省略)が形成されている。
【0022】
<タンク本体部300について>
リザーブタンク30のタンク本体部300は、
図5、
図6等に示すように、タンク本体部300の表側(後側)を構成する第1タンク片310と、前記タンク本体部300の裏側(前側)を構成する第2タンク片320とから構成されている。第1タンク片310と第2タンク片320とは、
図8~
図10等に示すように、浅い開放容器状に形成された板状体であり、樹脂の射出成形品である。第1タンク片310と第2タンク片320とには、周縁に接合フランジ部314,324が連続した状態で全周に亘って形成されている。そして、第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面(図番省略)と第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面(図番省略)とが、前後から合わせられて互いに接合されることで、タンク本体部300が形成される。
【0023】
また、第1タンク片310の上部には、
図6、
図7等に示すように、上記したタンク本体部300の注水口312が上向きに形成されている。また、第1タンク片310には、
図4に示すように、上記した取付け下ピン33、及び左右の取付けブラケット34が接合フランジ部314から外側に突出するように形成されている。
【0024】
<タンク内連通管24について>
第1タンク片310の内壁面の左右方向中央部には、
図7、
図9等に示すように、タンク内連通管24の内壁面後部を構成する断面角形の溝部316がタンク本体部300の底部Bから上方に延びるように形成されている。第1タンク片310の溝部316は、
図9に示すように、前側が開放されており、その溝部316の開口部が接合フランジ部314の接合面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。即ち、溝部316の開口部を接合フランジ部314の接合面と同一面上に保持するために、第1タンク片310の左右方向中央部が前方に窪むように絞られている。そして、溝部316の開口部が接合面となっている。また、溝部316の上端が、
図7、
図12等に示すように、連通管20の接続管26を構成する横管部317に接続されている。
【0025】
横管部317は、
図11、
図12に示すように、第1タンク片310の壁部を貫通して一定寸法だけ後方に突出している。そして、横管部317の突出部分に対して、
図4に示すように、連通管20の連通管本体22が接続されている。また、横管部317の前端開放部は、
図11に示すように、溝部316の開口部と同様に接合フランジ部314のフランジ面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。即ち、横管部317の前端開放部が接合面となっている。
【0026】
第2タンク片320の内壁面には、
図9、
図10等に示すように、第1タンク片310の溝部316と横管部317とに対応する位置に蓋部326が上下方向に延びるように形成されている。そして、蓋部326の接合面326cが第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。即ち、第2タンク片320の蓋部326の位置は、その蓋部326の接合面326cが第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面と同一面上になるように後方に絞られている。
【0027】
このため、第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面と第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面とが、
図9、
図12等に示すように、前後から合わされることで、第1タンク片310の溝部316の開口部(接合面)と横管部317の前端開放部(接合面)とが第2タンク片320の蓋部326の接合面326cに合わせられるようになる。そして、第1タンク片310の溝部316の開口部(接合面)、及び横管部317の前端開放部(接合面)が第2タンク片320の蓋部326の接合面326cに接合されることで、タンク本体部300内にタンク内連通管24が形成される。ここで、タンク内連通管24の上端位置、即ち、接続管26(横管部317)は、
図4に示すように、冷却水上側レベル線FULLよりも高い位置に設けられており、タンク内連通管24の下端位置は冷却水下側レベル線LOWよりも低い位置に設けられている。
【0028】
<タンク本体部300の底部構造について>
第1タンク片310の底面Bfには、
図7、
図8(
図7のVIII-VIII平断面図)に示すように、タンク内連通管24の溝部316の左側と右側とに第1立壁片341が形成されている。左右の第1立壁片341は、
図8に示すように、第1タンク片310の内壁面と共にタンク本体部300の底面Bfの位置にタンク内連通管24の下端部が挿入される水溜り部Tの後半分T1を形成するための壁である。左右の第1立壁片341は、第1タンク片310の内壁面からその第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面と同位置まで前方に張り出すように設けられている。そして、左右の第1立壁片341の前端が溶着面341eとなっている。即ち、左右の第1立壁片341の溶着面341eは、第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。また、左右の第1立壁片341は、
図7に示すように、冷却水下側レベル線LOWより低い位置に設けられている。
【0029】
第2タンク片320の底面Bfには、
図8に示すように、第1タンク片310の左右の第1立壁片341に対応する位置に左右の第2立壁片342が形成されている。左右の第2立壁片342は、第2タンク片320の内壁面と共にタンク本体部300の底面Bfの位置に水溜り部Tの前半分T2を形成するための壁である。左右の第2立壁片342は、第2タンク片320の内壁面からその第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面と同位置まで後方に張り出すように設けられている。そして、左右の第2立壁片342の後端が溶着面342eとなっている。即ち、左右の第2立壁片342の溶着面342eは、第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。また、左右の第2立壁片342は、第1タンク片310の左右の第2立壁片342と等しい高さ位置に設けられている。
【0030】
このため、第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面と第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面とが、
図8に示すように、前後から合わされることで、第1立壁片341の溶着面341eと第2立壁片342の溶着面342eとが合わせられる。そして、第1タンク片310の第1立壁片341の溶着面341eと第2タンク片320の第2立壁片342の溶着面342eとが接合されることで、タンク本体部300の底面Bfには、タンク内連通管24の下端部が挿入される水溜り部Tが形成されるようになる。
【0031】
また、第1タンク片310の内側には、
図7に示すように、左右の第1立壁片341をそれぞれ跨ぐように左右の第1通路壁片350が設けられている。左右の第1通路壁片350は、水溜り部T内と、その水溜り部T外(左側と右側)とを連通させる通路を形成するための壁である。左右の第1通路壁片350は、内側壁部351と天井壁部352と外側壁部353とにより断面略逆U字形に形成されている。そして、第1通路壁片350の内側壁部351の下端と底面Bf間に水溜り部T内の内開口351hが形成されており、外側壁部353の下端と底面Bf間に水溜り部T外の外開口353hが形成されている。
【0032】
左右の第1通路壁片350は、
図9、
図10に示すように、第1タンク片310の内壁面からその第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面と同位置まで前方に張り出すように設けられている。そして、左右の第1通路壁片350の前端が溶着面350eとなっている。即ち、左右の第1通路壁片350の溶着面350eは、第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。また、左右の第1通路壁片350は、天井壁部352の高さ位置が冷却水下側レベル線LOWより低い位置となるように位置決めされている。
【0033】
第2タンク片320の内側には、
図7に示すように、第1タンク片310の左右の第1通路壁片350に対応する位置に左右の第2通路壁片360が形成されている。左右の第2通路壁片360は、第1タンク片310の左右の第1通路壁片350と共に水溜り部T内と、その水溜り部T外(左側と右側)とを連通させる通路を形成するための壁である。左右の第2通路壁片360は、内側壁部361と天井壁部362と外側壁部363とにより断面略逆U字形に形成されており、内側壁部361の下端と底面Bf間に内開口(図番省略)が形成されており、外側壁部363の下端と底面Bf間に外開口(図番省略)が形成されている。
【0034】
左右の第2通路壁片360は、
図9、
図10に示すように、第2タンク片320の内壁面からその第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面と同位置まで後方に張り出すように設けられている。そして、左右の第2通路壁片360の後端が溶着面360eとなっている。即ち、左右の第2通路壁片360の溶着面360eは、第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。
【0035】
このため、第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面と第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面とが、
図9、
図10に示すように、前後から合わされることで、第1通路壁片350の溶着面350eと第2通路壁片360の溶着面360eが合わせられる。そして、第1タンク片310の第1通路壁片350の溶着面350eと第2タンク片320の第2通路壁片360の溶着面360eとが接合されることで、タンク本体部300の底部Bfの水溜り部T内と、その水溜り部T外とが略逆U字形の通路により連通するようになる。
【0036】
<タンク本体部300の製造について>
タンク本体部300の製造では、先ず、射出成形機を使用して樹脂により第1タンク片310と第2タンク片320とが成形される。次に、第1タンク片310と第2タンク片320とが、例えば、熱板溶着される。熱板溶着では、第1タンク片310と第2タンク片320との間に加熱した熱板(図示省略)を挟んで樹脂を溶融させ、前記熱板を除去した後、
図8から
図11に示すように、第1タンク片310と第2タンク片320とを前後から合わせて接合面を溶着させる。
【0037】
これにより、第1タンク片310と第2タンク片320との接合フランジ部314,324が接合されてタンク本体部300が形成される。また、第1タンク片310の溝部316の開口部と横管部317の前端開放部とに第2タンク片の蓋部326の接合面326cが接合されて、タンク内連通管24が形成される。さらに、第1タンク片310の第1立壁片341の溶着面341eと第2タンク片320の第2立壁片342の溶着面342eとが接合されることで、タンク本体部300の底面Bfにタンク内連通管24の下端部が挿入される水溜り部Tが形成される。また、第1タンク片310の第1通路壁片350の溶着面350eと第2タンク片320の第2通路壁片360の溶着面360eとが接合されることで、水溜り部T内と水溜り部T外とを連通する断面略逆U字形の通路が形成される。
【0038】
<実施形態1で使用した用語と本発明の用語との対応について>
第1タンク片310が本発明の第1のタンク片に相当し、第2タンク片320が本発明の第2のタンク片に相当する。また、第1タンク片310の接合フランジ部314が本発明の第1のタンク片の縁部に相当し、第2タンク片320の接合フランジ部324が本発明の第2のタンク片の縁部に相当する。さらに、第1、第2通路壁片350,360の内側壁部351,361の下端と底面Bf間の内開口351hが本発明における通路の一方の開口に相当し、第1、第2通路壁片350,360の外側壁部353,363の下端と底面Bf間の外開口353hが本発明における通路の他方の開口に相当する。また、冷却水下側レベル線LOWが本発明の下限レベル線に相当する。
【0039】
<実施形態に係るリザーブタンク30の長所について>
本実施形態に係るリザーブタンク30によると、タンク内連通管24(連通管)の下端部は、タンク本体部300の底面Bfの位置で第1、第2立壁片341,342(立壁)に囲われた水溜り部Tに挿入されている。このため、例えば、車両旋回時の加速度の影響で、
図7に示すように、水溜り部T内の冷却水の液面レベルL1e,L2eが傾いても、これに起因する水溜り部T内の液面低下量は水溜り部Tがない場合の液面レベルL1,L2の低下量と比べて十分に小さくなる。したがって、タンク内連通管24の下端開口が液面から露出し難くなる。
【0040】
また、水溜り部T内と水溜り部T外とは、立壁341,342を跨ぐ通路によって連通している。そして、通路の一方の開口351hが水溜り部T内の底面Bfの位置に設けられており、通路の他方の開口353hが水溜り部Tの周囲の底面Bfの位置に設けられている。このため、水溜り部T内の冷却水が減少して液面が低下した場合でも、前記通路の働きで水溜り部T外から水溜り部T内にサイフォン管の原理により冷却水が供給される。即ち、タンク本体部300の底部において水溜り部T内の液面レベルと水溜り部T外の液面レベルとが等しい高さに保持される。したがって、水溜り部Tの周囲をタンク本体部300の容積として有効に利用できる。また、タンク本体部300を第1タンク片310と第2タンク片320とから構成することで、タンク本体部300内に立壁341,342に囲われた水溜り部Tと第1、第2通路壁350,360とを容易に形成できる。
【0041】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、第1タンク片310の第1立壁片341と内壁面とにより水溜り部Tの後半分T1を平面略角形に形成し、第2タンク片320の第2立壁片342と内壁面とにより水溜り部Tの前半分T2を平面略角形に形成する例を示した。しかし、第1タンク片310の第1立壁片341を平面半円状に形成して水溜り部Tの後半分T1を形成し、第2タンク片320の第2立壁片342を平面半円状に形成して水溜り部Tの前半分T2を形成することも可能である。また、本実施形態では、第1タンク片310の第1通路壁片350と第2タンク片320の第2通路壁片360とを断面略逆U字形に形成する例を示した。しかし、第1タンク片310の第1通路壁片350と第2タンク片320の第2通路壁片360とを断面半円状に形成することも可能である。また、本実施形態では、水溜り部Tの左右に通路壁片350,360を形成する例を示したが、タンク内連通管24をタンク本体部300とは別体のチューブ等から形成することで、左右一方の通路壁片350,360を省略するが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10・・・・ラジエータ
20・・・・連通管
24・・・・タンク内連通管(連通管)
30・・・・リザーブタンク
300・・・タンク本体部
310・・・第1タンク片(第1のタンク片)
314・・・接合フランジ部(縁部)
320・・・第2タンク片(第2のタンク片)
324・・・接合フランジ部(縁部)
341・・・第1立壁片(立壁)
342・・・第2立壁片(立壁)
350・・・第1通路壁片
351h・・内開口(通路の一方の開口)
353h・・外開口(通路の他方の開口)
360・・・第2通路壁片
T・・・・・水溜り部
LOW・・・冷却水下側レベル線(下限レベル線)