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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】充電設備
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20220405BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220405BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20220405BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20220405BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20220405BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20220405BHJP
   B60L 53/67 20190101ALI20220405BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
H02J7/00 P
H02J13/00 311A
H02J13/00 301A
H02J7/02 J
H02J7/34 B
H02J3/14
B60L53/66
B60L53/67
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019021829
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020129917
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩田 泰城
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-050853(JP,A)
【文献】特開2013-090571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 13/00
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の充電ステーションを備えた充電設備であって、
前記複数の充電ステーションのそれぞれは、
系統電源から供給される電力によって電動車両の二次電池を充電する複数の充電装置と、
前記充電装置及び上位制御装置と通信可能に設けられた充電制御装置と、を備え、
前記複数の充電ステーションの前記充電制御装置は、ネットワークを構築することで互いの情報を取得可能であり、
前記複数の充電ステーションの前記充電制御装置のそれぞれは、
前記二次電池の充電に関する情報である充電情報を前記充電装置から取得する充電情報取得部と、
前記充電装置のいずれに優先的に電力を分配するかを示す情報である優先情報を前記上位制御装置から取得する優先情報取得部と、
前記充電設備で使用することが可能な電力である充電可能電力を前記上位制御装置から取得する充電可能電力取得部と、
前記優先情報、前記充電情報取得部により取得した前記充電情報、及び前記ネットワークを介して他の充電ステーションから取得した前記充電情報から、前記充電可能電力のうち自身の充電ステーションに割り当てられる充電電力を算出する算出部と、を備える充電設備。
【請求項2】
前記算出部は、予め設定された設定時間毎に前記充電電力を算出し、
前記充電装置は、前記充電電力の算出後、次に前記充電電力の算出が行われる前に前記電動車両の接続を検出した場合、次に前記充電電力の算出が行われてから前記二次電池の充電を行う請求項1に記載の充電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
系統電源から供給される電力を複数の充電ステーションに分配する充電システムとしては、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の充電システムは、電動車両の電力源である二次電池を充電する複数の充電ステーションと、複数の充電ステーションに分配される電力を設定する上位制御装置と、を備える。上位制御装置は、充電ステーションの電力需要の傾向から分配する電力を設定する。充電ステーションは、分配された電力に基づき、電動車両の二次電池の充電を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-50853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、各充電ステーションに分配される電力は電力需要に依存している。従って、二次電池の状態などに合わせて適切な電力が設定されているとはいえない。
本発明の目的は、複数の充電ステーションのそれぞれに分配される充電電力を適切に設定することができる充電設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する充電設備は、複数の充電ステーションを備えた充電設備であって、前記複数の充電ステーションのそれぞれは、系統電源から供給される電力によって電動車両の二次電池を充電する複数の充電装置と、前記充電装置及び上位制御装置と通信可能に設けられた充電制御装置と、を備え、前記複数の充電ステーションの前記充電制御装置は、ネットワークを構築することで互いの情報を取得可能であり、前記複数の充電ステーションの前記充電制御装置のそれぞれは、前記二次電池の充電に関する情報である充電情報を前記充電装置から取得する充電情報取得部と、前記充電装置のいずれに優先的に電力を分配するかを示す情報である優先情報を前記上位制御装置から取得する優先情報取得部と、前記充電設備で使用することが可能な電力である充電可能電力を前記上位制御装置から取得する充電可能電力取得部と、前記優先情報、前記充電情報取得部により取得した前記充電情報、及び前記ネットワークを介して他の充電ステーションから取得した前記充電情報から、前記充電可能電力のうち自身の充電ステーションに割り当てられる充電電力を算出する算出部と、を備える。
【0006】
各充電ステーションの充電制御装置は、ネットワークを介して他の充電ステーションの充電情報を取得可能である。各充電制御装置は、優先情報、自身の充電ステーションの充電情報、及び他の充電ステーションの充電情報に基づき充電電力を算出する。自身の充電ステーションに加えて他の充電ステーションの充電情報も加味して充電電力が算出されるため、充電情報に合わせた適切な充電電力を設定することができる。また、優先情報に基づき充電電力が算出されることで、特定の充電装置に優先的に電力を分配することが可能になる。
【0007】
上記充電設備について、前記算出部は、予め設定された設定時間毎に前記充電電力を算出し、前記充電装置は、前記充電電力の算出後、次に前記充電電力の算出が行われる前に前記電動車両の接続を検出した場合、次に前記充電電力の算出が行われてから前記二次電池の充電を行ってもよい。
【0008】
電動車両の接続を検出した時点で、充電電力の算出を行う場合に比べて充電制御装置が行う制御を簡略化できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の充電ステーションのそれぞれに分配される充電電力を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】充電システムの概略構成図。
図2】充電設備を模式的に示すブロック図。
図3】上位制御装置、充電制御装置及び充電装置の相互作用図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、充電設備の一実施形態について説明する。
図1に示すように、充電システム10は、充電設備20と、上位制御装置40と、を備える。充電設備20は、電力会社等の電力供給者から電力を供給される需要家に設けられている。需要家としては、例えば、工場、公共施設、商用施設が挙げられる。需要家には、充電設備20以外の負荷11が設けられている。系統電源12を通じて電力供給者から供給される電力は、充電設備20及び充電設備20以外の負荷11で共有される。充電システム10は、充電設備20及び負荷11で使用される電力が設定値を上回らないように制御を行うシステムである。
【0012】
充電設備20は、複数の充電ステーション21を備える。本実施形態では、3つの充電ステーション21を例示して説明を行うが、充電ステーション21の数は適宜変更してもよい。
【0013】
図1及び図2に示すように、充電ステーション21は、電動車両50に搭載された二次電池51を充電するための設備である。電動車両50は、二次電池51と、電池制御部52と、通信部53と、を備える。電動車両50とは、充電可能な二次電池51を電力源として走行する車両である。二次電池51は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池等、どのような種類の二次電池を用いてもよい。電動車両50としては、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の乗用車、フォークリフトなどの産業車両等どのような種類のものであってもよい。電池制御部52は、二次電池51の充電率であるSOC:State Of Chargeの推定や、二次電池51の電圧や温度等の二次電池51の状態の監視を行う。通信部53は、二次電池51の充電率等の二次電池51に関する情報を充電ステーション21に送信する。
【0014】
各充電ステーション21は、複数の充電装置22と、充電制御装置31と、を備える。本実施形態では、2つの充電装置22を図示しているが、充電装置22の数は適宜変更してもよい。充電ステーション21とは、充電制御装置31と、この充電制御装置31に配線28によって接続された複数の充電装置22とで構成されたユニットである。複数の充電ステーション21とは、地理的に分離された2つ以上の区画に設けられた2つ以上の充電ステーション21であってもよいし、地理的に同一区画内に設けられた2つ以上の充電ステーション21であってもよい。説明の便宜上、各充電ステーション21を同一構成として説明するが、充電装置22の出力可能な最大充電電力等の充電装置22の仕様は充電ステーション21毎に異なっていてもよい。
【0015】
図2に示すように、充電装置22は、系統電源12から供給される交流電力を直流電力に変換する変換部23と、電動車両50に接続される充電プラグ24と、第1通信部25と、第2通信部26と、制御部27と、を備える。第1通信部25は、電動車両50の通信部53と情報の送受信を行うための部材である。第2通信部26は、充電制御装置31と情報の送受信を行うための部材である。制御部27は、充電装置22の制御を行う。制御部27は、充電プラグ24が電動車両50に接続されたことを検出可能である。充電プラグ24が電動車両50に接続されると、変換部23と二次電池51とが接続され、第1通信部25と通信部53とが接続される。第1通信部25と通信部53とが接続されることで、制御部27は二次電池51の充電率等の二次電池51に関する情報を取得可能である。制御部27は、第2通信部26を通じて充電制御装置31から指示される充電電力指示値に従い変換部23を制御する。変換部23から出力される直流電力によって二次電池51は充電される。
【0016】
第2通信部26から充電制御装置31には充電情報が送信される。充電情報とは、二次電池51の充電に関する情報、詳細にいえば、充電設備20で二次電池51の充電を行うために必要な情報である。充電情報は、充電装置22の情報、二次電池51の情報及び電動車両50の情報の少なくとも1つを含む。例えば、充電情報には、接続状態情報、識別情報、充電装置22の仕様及び二次電池51に関する情報が含まれる。接続状態情報とは、充電プラグ24が電動車両50に接続されているか、充電装置22による二次電池51の充電が行われているか、充電装置22による二次電池51の充電が完了したか等の充電装置22の充電状態を示す情報である。識別情報とは、充電装置22毎に個別に設定された固有のIDを示す情報である。充電装置22の仕様とは充電装置22の出力可能な最大充電電力等を示す情報である。
【0017】
図1及び図2に示すように、各充電ステーション21の充電制御装置31は、相互に通信可能に接続されている。詳細にいえば、充電設備20はハブ32と、ハブ32と各充電制御装置31とを接続する配線33とを備えており、ハブ32を介して各充電制御装置31同士は相互に接続されている。これにより、各充電制御装置31によってネットワークが構築されている。本実施形態では、複数の充電ステーション21の各充電制御装置31がハブ32によって接続されることで、スター型のローカルエリアネットワークが構築されている。ハブ32は、上位制御装置40と通信可能な状態で接続されている。各充電制御装置31は、ハブ32を介して上位制御装置40と通信可能である。各充電制御装置31は、充電情報を上位制御装置40に送信する。
【0018】
上位制御装置40は、サーバーである。上位制御装置40は、需要家に設けられていてもよいし、需要家とは異なる場所に設けられていてもよい。上位制御装置40は、情報管理部41と、電力管理部42と、を備える。情報管理部41及び電力管理部42は、上位制御装置40のCPUが所定の処理を行うことにより機能する機能部である。
【0019】
情報管理部41は、充電制御装置31から取得した充電情報の蓄積や、解析を行う。即ち、情報管理部41は、充電情報をデータベース化している。
電力管理部42は、充電可能電力を算出する。充電可能電力とは、系統電源12から供給される電力のうち充電設備20で利用可能な電力、即ち、二次電池51の充電に用いることができる電力である。充電可能電力は、充電設備20以外の負荷11で使用されている電力と設定値に基づき算出される電力である。充電可能電力は、負荷11で使用されている電力に充電可能電力を加えても設定値を上回らないように算出される。充電可能電力は、需要家全体で使用されている電力が設定値を上回らないように算出されるといえる。設定値としては、例えば、電力供給者との契約で定められた電力である契約電力や、契約電力よりも低い値が挙げられる。
【0020】
電力管理部42は、充電可能電力と、優先情報とを各充電制御装置31に送信する。優先情報とは、優先的に電力を分配する充電装置22に関する情報である。優先情報は、充電ステーション21を対象として設定されたものであってもよいし、充電装置22を対象として設定されたものであってもよい。即ち、優先情報は、充電ステーション21を構成する複数の充電装置22に優先的に電力を分配させるような情報であってもよいし、充電ステーション21を構成する複数の充電装置22のうち特定の充電装置22のみに優先的に電力を分配させるような情報であってもよい。
【0021】
優先情報は、複数の充電装置22のうち優先的に電力を分配させる1又は複数の充電装置22を指定する情報であってもよいし、複数の充電装置22間の優先順位を指定するものであってもよい。例えば、優先情報が、1つの充電ステーション21に優先的に電力を分配させるように指定する情報の場合、優先情報で指定された1つの充電ステーション21には、残り2つの充電ステーション21よりも優先的に電力が分配される。優先情報が3つの充電ステーション21の優先順位を指定する情報の場合、優先順位が最も高い充電ステーション21への電力の分配が最も優先され、優先順位が2番目に高い充電ステーション21への電力の分配が2番目に優先される。
【0022】
優先情報でいずれの充電装置22に優先的に充電を行わせるかは、充電設備20の管理者が適宜設定することができる。以下、優先情報によっていずれの充電装置22に優先的に電力を分配させるかをどのような態様で設定するかの一例について説明する。
【0023】
充電ステーション21毎に、電動車両50の種類を指定し、指定された電動車両50の種類に合わせて優先情報を設定してもよい。例えば、複数の充電ステーション21のうちの1つをプラグインハイブリッド自動車用、残りの2つを電気自動車用とした場合、電気自動車用の充電ステーション21に優先的に電力を分配してもよい。プラグインハイブリッド自動車は、エンジンでの走行も可能である一方で、電気自動車の走行可能距離は二次電池51の残容量のみに依存しているため、電気自動車の二次電池51を優先的に充電させる。
【0024】
充電ステーション21毎に、充電態様を指定し、指定された充電態様に合わせて優先情報を設定してもよい。例えば、複数の充電ステーション21のうちの1つを普通充電用、残りの2つを急速充電用とした場合、急速充電用の充電ステーション21に優先的に電力を分配してもよい。急速充電は、普通充電に比べて使用する電力が大きいため、急速充電用の充電ステーション21に優先的に充電を行わせる。
【0025】
上記したように、任意の充電ステーション21に優先的に電力を分配させるように優先情報は設定することができる。上記した例では、充電ステーション21毎に優先情報を定める場合について説明したが、同様の態様で充電装置22毎に優先情報を定めることもできる。
【0026】
上記のように構成された充電システム10では、充電設備20及び負荷11で使用される電力が設定値を上回らないように、各充電装置22への電力の分配が行われる。充電可能電力のうち各充電ステーション21に割り当てられる充電電力は、充電制御装置31によって算出される。充電制御装置31は、通信部34と、優先情報取得部35と、充電可能電力取得部36と、充電情報取得部37と、算出部38と、を備える。通信部34は、充電装置22の第2通信部26と情報を送受信するための部材である。優先情報取得部35、充電可能電力取得部36、充電情報取得部37及び算出部38は、充電制御装置31のCPUが所定の処理を行うことにより機能する機能部である。優先情報取得部35は、上位制御装置40から優先情報を取得する。充電可能電力取得部36は、上位制御装置40から充電可能電力を取得する。充電情報取得部37は、充電装置22から充電情報を取得する。算出部38は、充電電力を算出する。
【0027】
以下、充電制御装置31が行う制御について詳細に説明する。以下の説明において、適宜、充電ステーション21の2つの充電装置22のうちの一方を第1充電装置22Aと表記し、他方を第2充電装置22Bと表記する。第1充電装置22Aには電動車両50が接続されており、第2充電装置22Bには電動車両50の充電が開始された後に電動車両50が接続される。
【0028】
図3に示すように、ステップS1において、上位制御装置40は充電可能電力及び優先情報を充電制御装置31に送信する。図示は省略するが、上位制御装置40は、所定の周期毎に充電可能電力及び優先情報を送信する。同様に、ステップS2において、第1充電装置22Aは、充電情報を充電制御装置31に送信する。図示は省略するが、第1充電装置22Aは、所定の周期毎に充電情報を充電制御装置31に送信する。ステップS2の時点では、第2充電装置22Bには電動車両50が接続されていないため、第2充電装置22Bからは充電情報が送信されない。あるいは、充電情報として、電動車両50が接続されていない旨の情報が送信される。
【0029】
ステップS3において、充電制御装置31は、充電可能電力、優先情報及び自身の充電ステーション21の充電情報を取得する。充電制御装置31は、ステップS3の処理を行うことで、優先情報取得部35、充電可能電力取得部36及び充電情報取得部37として機能する。
【0030】
次に、ステップS4において、充電制御装置31は、ネットワークを介して、他の充電ステーション21から充電情報を取得する。これにより、充電制御装置31は、自身の充電ステーション21における充電装置22の充電情報、及び他の充電ステーション21における充電装置22の充電情報を取得することになる。
【0031】
次に、ステップS5において、充電制御装置31は、充電電力を算出する。充電制御装置31は、ステップS5の処理を行うことで、算出部38として機能する。まず、充電制御装置31は、自身の充電ステーション21での必要電力を算出する。必要電力は、充電情報から算出可能である。必要電力は、少なくとも電動車両50の接続状態を検出できれば算出可能である。例えば、1台の電動車両50が接続されている場合の必要電力を予め設定し、電動車両50が接続されている充電装置22の数に応じて必要電力を算出すればよい。従って、充電情報には、少なくとも接続状態情報が含まれていればよい。充電情報に二次電池51の充電率が含まれている場合、二次電池51の充電率が低いほど必要電力を大きくしてもよい。充電制御装置31に、必要充電率が指示されている場合、必要充電率と二次電池51の充電率の差が大きいほど必要電力を大きくしてもよい。必要充電率とは、電動車両50の駆動に必要となる充電率であり、上位制御装置40や、充電装置22に設けられた入力部によって指示される。例えば、電動車両50がフォークリフトであれば、荷役作業のスケジュールなどから算出された必要充電率が上位制御装置40から指示されてもよい。電動車両50が乗用車であれば、搭乗者が入力部によって走行予定距離を入力することで、走行予定距離から必要充電率が算出されてもよい。
【0032】
充電制御装置31は、自身の充電ステーション21の必要電力を算出する処理と同様の処理によって、他の充電ステーション21の必要電力を算出する。充電制御装置31は、自身の充電ステーション21での必要電力と、その他の充電ステーション21での必要電力とを加算して、充電設備20全体での必要電力を求める。充電制御装置31は、充電設備20全体での必要電力に占める自身の充電ステーション21の必要電力の割合を求める。充電制御装置31は、算出された割合と、充電可能電力とに基づき、基礎充電電力を算出する。例えば、算出された割合と、充電可能電力とを乗算することで基礎充電電力を算出する。基礎充電電力は、マージンや係数を考慮して算出された値であってもよい。基礎充電電力とは、優先情報を加味しない場合に、各充電ステーション21に分配される電力である。
【0033】
次に、充電制御装置31は、優先情報に基づき、基礎充電電力から充電ステーション21に分配される電力である充電電力を算出する。充電制御装置31は、基礎充電電力に係数を乗算することで充電電力を算出してもよい。例えば、優先情報により1つの充電ステーション21に優先的に電力を分配するように指定されている場合、当該充電ステーション21の係数を1.2、他の2つの充電ステーション21の係数を0.9としてもよい。優先情報で充電ステーション21の優先順位が定められている場合、優先順位の高い充電ステーション21から順に、係数を1.1、1.0、0.9としてもよい。また、係数を乗算するのに代えて、基礎充電電力に優先情報に応じた固定値を加減することで、充電電力を算出してもよい。即ち、充電制御装置31は、優先情報に基づき、優先度の高い充電ステーション21に優先して電力を分配できればよく、充電電力の算出方法は任意である。なお、充電装置22に対して優先情報が設定されている場合、優先して電力が分配される充電装置22の数や、優先順位の高い充電装置22の数で係数や固定値を定めればよい。
【0034】
次に、ステップS6において、充電制御装置31は、充電電力指示値を算出する。充電電力指示値は、充電電力及び充電情報に基づき算出される。また、充電ステーション21の複数の充電装置22のうち一部が優先的に電力の分配が行われる充電装置22に指定されている場合、優先情報も加味して充電電力指示値が算出される。この場合、充電ステーション21の場合と同様に、優先情報に応じて充電電力指示値に係数を乗算したり、充電電力指示値に固定値を加減すればよい。
【0035】
次に、ステップS7において、充電制御装置31は、充電電力指示値を第1充電装置22Aに送信する。ステップS8において、第1充電装置22Aは、充電電力指示値に従って二次電池51の充電を行う。
【0036】
充電制御装置31は、予め設定された設定時間T1毎に充電電力を算出する。設定時間T1は、充電装置22や、二次電池51の充電電力指示値に対する追従性に基づき設定されている。充電電力指示値を充電装置22に出力した後に、二次電池51に実際に供給される電力が充電電力指示値に追従するには時間を要する。設定時間T1としては、二次電池51に実際に供給される電力が充電電力指示値に追従するのに要する時間よりも長い時間に設定される。
【0037】
ステップS5での充電電力の算出後、次に充電電力の算出が行われるステップS51の前にステップS9で第2充電装置22Bが電動車両50の接続を検出したとする。この場合、ステップS10において、第2充電装置22Bから充電制御装置31に充電情報が送信される。ステップS11において、充電制御装置31は第2充電装置22Bからの充電情報を取得することで、電動車両50が第2充電装置22Bに接続されたことを認識する。
【0038】
充電制御装置31は、第2充電装置22Bに電動車両50が接続された場合、ステップS51で充電電力の算出が行われるまでの間、充電装置22に充電電力指示値を送信しない。即ち、充電制御装置31は、電動車両50の接続を契機とした充電電力の算出を行わず、設定時間T1の経過のみを契機として充電電力の算出を行う。第2充電装置22Bは、電動車両50の接続の検出から、次に充電電力の算出が行われるまで充電を行わずに待機することになる。
【0039】
ステップS5での充電電力の算出から設定時間T1が経過すると、ステップS51で充電電力の算出が行われる。すると、ステップS61において、2つの充電装置22に対する充電電力指示値が算出される。ステップS71において、2つの充電装置22に対して充電電力指示値が送信される。これにより、ステップS81,ステップS82において、2つの充電装置22に接続された各電動車両50の二次電池51が充電される。
【0040】
本実施形態の作用について説明する。
各充電ステーション21の充電制御装置31は、ネットワークを介して他の充電ステーション21の充電情報を取得可能である。これにより、各充電制御装置31は、優先情報、自身の充電ステーション21の充電情報、及び他の充電ステーション21の充電情報に基づき充電電力を算出可能である。自身の充電ステーション21に加えて他の充電ステーション21の充電情報も加味して充電電力が算出されるため、各充電ステーション21に分配される充電電力を適切に設定することができる。仮に、充電ステーション21の電力需要の傾向に応じて充電電力が設定される場合、充電情報を考慮せずに充電電力が設定されるため、二次電池51の状態などを考慮せずに充電電力が設定されることになる。また、必要電力の多い充電ステーション21に電力が多く分配されるとは限らない。これに対し、充電ステーション21の充電情報に応じて充電電力を算出する場合、充電ステーション21に接続されている電動車両50の台数や、二次電池51の充電率等を加味して充電電力が算出される。他の充電ステーション21の充電情報も加味して充電電力を算出することで、必要電力の多い充電ステーション21に電力の分配を多くすることが可能になる。優先情報に基づき充電電力が算出されることで、特定の充電装置22に優先的に電力を分配することが可能になる。優先情報は、充電設備20の管理者が適宜設定することができるため、充電電力の細かい設定が可能になる。
【0041】
上位制御装置40が充電電力を算出し、各充電制御装置31に充電電力を指示することも考えられる。しかしながら、上位制御装置40に充電情報を送信し、上位制御装置40に充電電力を算出させると、上位制御装置40が一括で各充電ステーション21の充電電力を算出することになり、上位制御装置40の負荷が大きい。また、上位制御装置40と充電制御装置31との通信遅延により、充電情報に基づいて算出された充電電力が反映されるのに時間を要する場合がある。これに対して、充電制御装置31が充電電力を算出する場合、充電制御装置31は自身の充電ステーション21の充電電力を算出すればよい。複数の充電ステーション21の充電電力を一部の装置で一括して算出する必要がないため、一部の装置に負荷が集中することが抑制される。また、各充電制御装置31が充電電力を算出することで、通信遅延が生じることを抑制できる。
【0042】
図2に二点鎖線で示すように、充電ステーション21に充電装置22を増設する場合、充電装置22と充電制御装置31とを配線28によって接続する必要がある。仮に、各充電ステーション21で充電制御装置31を共通化し、充電設備20で充電制御装置31を1つしか設けない場合、配線28が長くなりやすい。また、1つの充電制御装置31に接続される充電装置22の数が多くなり、通信仕様の複雑化を招く。これに対して、充電ステーション21毎に充電制御装置31を設けると、複数の充電制御装置31のうち最も近い充電制御装置31に配線28を接続することができる。従って、配線28の長さを短くすることができる。また、複数の充電制御装置31に分散して充電装置22を接続できるため、通信仕様の複雑化が生じにくい。
【0043】
本実施形態の効果について説明する。
(1)充電制御装置31は、自身の充電ステーション21に加えて他の充電ステーション21の充電情報も加味して充電電力を算出する。従って、充電情報に合わせた適切な充電電力を設定することができる。また、優先情報に基づき充電電力を算出することで、特定の充電装置22に優先的に電力を分配することが可能になる。
【0044】
(2)充電装置22は、充電電力の算出後、次に充電電力の算出が行われる前に電動車両50の接続を検出した場合、次に充電電力の算出が行われてから二次電池51の充電を行う。電動車両50の接続を契機に充電電力を算出する場合に比べて充電制御装置31が行う制御を簡略化することができる。
【0045】
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○充電制御装置31は、電動車両50が充電装置22に接続されたことを契機に充電電力を算出してもよい。この場合、充電装置22に電動車両50が接続されてから充電が開始されるまでの時間が短くなる。
【0046】
○充電制御装置31は、電動車両50が充電装置22に接続されたことを契機に充電装置22に充電を行わせてもよい。例えば、充電制御装置31は、充電電力に余剰分があれば、余剰分の電力によって、充電装置22に接続された電動車両50の二次電池51を充電してもよい。
【0047】
○各充電ステーション21の充電制御装置31は、無線機器によりネットワークを構築していてもよい。
○各充電制御装置31によって構築されるネットワークは、バス型のローカルエリアネットワークであってもよいし、リング型のローカルエリアネットワークであってもよい。これらの場合、充電制御装置31を接続するためのハブ32を用いなくてもよい。
【符号の説明】
【0048】
12…系統電源、20…充電設備、21…充電ステーション、22…充電装置、31…充電制御装置、35…優先情報取得部、36…充電可能電力取得部、37…充電情報取得部、38…算出部、40…上位制御装置、50…電動車両、51…二次電池。
図1
図2
図3