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特許7052801電力変換装置、モータモジュールおよび電動パワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】電力変換装置、モータモジュールおよび電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220405BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
H02M7/48 M
B62D5/04
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019541654
(86)(22)【出願日】2018-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2018022033
(87)【国際公開番号】W WO2019053974
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2017175461
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】アハマッド ガデリー
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/203300(WO,A1)
【文献】特開2015-033212(JP,A)
【文献】特開2007-099066(JP,A)
【文献】特表昭61-500199(JP,A)
【文献】米国特許第7619383(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力を、一端同士がY結線されたn相(nは3以上の整数)の巻線を有するモータに供給する電力に変換する電力変換装置あって、
前記n相の巻線の他端に接続され、各々がローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を含むn個のレグを有するインバータと、
前記電源と前記n相の巻線との、前記インバータを介した接続・非接続を相毎に切替える第1相分離リレー回路と、
前記インバータの前記n個のレグと並列接続された少なくとも1個のレグを有するサブインバータであって、前記n相の巻線の他端、および、前記n相の巻線の一端をY結線する前記モータの中性点ノードに接続されるサブインバータと、
前記電源と前記n相の巻線との、前記サブインバータを介した接続・非接続を切替え、かつ、前記電源と前記中性点ノードとの接続・非接続を切替える第2相分離リレー回路と、を備え
前記第2相分離リレー回路は、前記電源と前記サブインバータとの接続・非接続を切替え、
前記サブインバータの前記少なくとも1個のレグは、各々がローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を含むn+1個のレグであり、
前記n+1個のレグのうちのn個のレグは、前記n相の巻線の他端に接続され、残りのレグは前記中性点ノードに接続される、電力変換装置。
【請求項2】
前記第2相分離リレー回路は、前記サブインバータと前記n相の巻線との接続・非接続を切替え、かつ、前記サブインバータと前記中性点ノードとの接続・非接続を切替える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第2相分離リレー回路は、前記サブインバータの前記少なくとも1個のレグと前記n相の巻線との接続・非接続、および、前記少なくとも1個のレグと前記中性点ノードとの接続・非接続を切替えるn+1個の第3相分離リレーを有する、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記サブインバータの前記少なくとも1個のレグは、ローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を含む1個のレグであり、
前記n+1個の第3相分離リレーの一端は、前記1個のレグにおける前記ローサイドスイッチ素子と前記ハイサイドスイッチ素子の間のノードに共通に接続され、前記n+1個の第3相分離リレーのうちのn個の第3相分離リレーの他端は、前記n相の巻線の他端に接続され、残りの第3相分離リレーの他端は、前記中性点ノードに接続される、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記n+1個の第3相分離リレーの各々は、双方向スイッチである、請求項3または4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第2相分離リレー回路は、
前記n+1個のレグのn+1個のハイサイドスイッチ素子同士を接続するノードと前記電源の間に接続された第3相分離リレーと、
前記n+1個のレグのn+1個のローサイドスイッチ素子同士を接続するノードとグランドの間に接続された第4相分離リレーと、を有する、請求項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1相分離リレー回路は、
前記インバータにおいて、前記インバータの前記n個のレグを接続するハイサイド側のノードとn個のハイサイドスイッチ素子の間に接続されたn個の第1相分離リレーと、
前記インバータにおいて、前記インバータの前記n個のレグを接続するローサイド側のノードとn個のローサイドスイッチ素子の間に接続されたn個の第2相分離リレーと、を有する、請求項1からのいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項8】
電力変換の制御モードとして正常時の制御モードと異常時の制御モードとを備え、
前記正常時の制御モードにおいて、前記第1相分離リレー回路はオンし、かつ、前記第2相分離リレー回路はオフする、請求項1からのいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項9】
電力変換の制御モードとして正常時の制御モードと異常時の制御モードとを備え、
前記第1相分離リレー回路は、
前記インバータにおいて、前記インバータの前記n個のレグを接続するハイサイド側のノードとn個のハイサイドスイッチ素子の間に接続されたn個の第1相分離リレーと、
前記インバータにおいて、前記インバータの前記n個のレグを接続するローサイド側のノードとn個のローサイドスイッチ素子の間に接続されたn個の第2相分離リレーと、を有し、
前記インバータの前記n個のレグのうちの1個のレグが故障した場合、前記異常時の制御において、
前記n個の第1相分離リレーのうちの、前記インバータの故障したレグに接続された第1相分離リレーと、前記n個の第2相分離リレーのうちの、前記故障したレグに接続された第2相分離リレーと、はオフし、かつ、残りのn-1個の、第1相分離リレーおよび第2相分離リレーはオンし、
前記n+1個の第3相分離リレーのうちの、前記故障したレグと共に巻線の他端に接続された第3相分離リレーはオンし、残りのn個の第3相分離リレーはオフする、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記インバータの前記n個のレグのうちの故障したレグ以外のn-1個のレグと、前記サブインバータの1個のレグとを用いて、前記n相の巻線を通電する、請求項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
電力変換の制御モードとして正常時の制御モードと異常時の制御モードとを備え、
前記第1相分離リレー回路は、
前記インバータにおいて、前記インバータの前記n個のレグを接続するハイサイド側のノードとn個のハイサイドスイッチ素子の間に接続されたn個の第1相分離リレーと、
前記インバータにおいて、前記インバータの前記n個のレグを接続するローサイド側のノードとn個のローサイドスイッチ素子の間に接続されたn個の第2相分離リレーと、を有し、
前記インバータの前記n個のレグのうちのn-2個のレグが故障した場合、前記異常時の制御において、
前記n個の第1相分離リレーのうちの、前記インバータの故障したレグに接続されたn-2個の第1相分離リレーと、前記n個の第2相分離リレーのうちの、前記故障したレグに接続されたn-2個の第2相分離リレーと、はオフし、かつ、残りの2個の、第1相分離リレーおよび第2相分離リレーはオンし、
前記n+1個の第3相分離リレーのうちの、前記中性点ノードに接続された第3相分離リレーはオンし、かつ、残りのn個の第3相分離リレーはオフし、
前記インバータの前記n個のレグのうちの故障したレグ以外の2個のレグと、前記中性点ノードに接続された前記サブインバータの1個のレグとを用いて、前記n相のうちの二相の巻線を通電する、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項12】
電力変換の制御モードとして正常時の制御モードと異常時の制御モードとを備え、
前記第1相分離リレー回路は、
前記インバータにおいて、前記インバータの前記n個のレグを接続するハイサイド側のノードとn個のハイサイドスイッチ素子の間に接続されたn個の第1相分離リレーと、
前記インバータにおいて、前記インバータの前記n個のレグを接続するローサイド側のノードとn個のローサイドスイッチ素子の間に接続されたn個の第2相分離リレーと、を有し、
前記インバータの前記n個のレグのうちの1個のレグが故障した場合、前記異常時の制御において、
前記n個の第1相分離リレーのうちの、前記インバータの故障したレグに接続された第1相分離リレーと、前記n個の第2相分離リレーのうちの、前記故障したレグに接続された第2相分離リレーと、はオフし、かつ、残りのn-1個の、第1相分離リレーおよび第2相分離リレーはオンし、
前記第2相分離リレー回路はオンする、請求項に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記インバータの前記n個のレグのうちの故障したレグ以外のn-1個のレグと、前記サブインバータの前記n+1個のレグのうちの、前記インバータの故障したレグと共に巻線の他端に接続されたレグとを用いて、前記n相の巻線を通電する、請求項12に記載の電力変換装置。
【請求項14】
電力変換の制御モードとして正常時の制御モードと異常時の制御モードとを備え、
前記第1相分離リレー回路は、
前記インバータにおいて、前記インバータの前記n個のレグを接続するハイサイド側のノードとn個のハイサイドスイッチ素子の間に接続されたn個の第1相分離リレーと、
前記インバータにおいて、前記インバータの前記n個のレグを接続するローサイド側のノードとn個のローサイドスイッチ素子の間に接続されたn個の第2相分離リレーと、を有し、
前記インバータの前記n個のレグのうちのn-2個のレグが故障した場合、前記異常時の制御において、
前記n個の第1相分離リレーのうちの、前記インバータの故障したレグに接続されたn-2個の第1相分離リレーと、前記n個の第2相分離リレーのうちの、前記故障したレグに接続されたn-2個の第2相分離リレーと、はオフし、かつ、残りの2個の、第1相分離リレーおよび2個の第2相分離リレーはオンし、
前記第2相分離リレー回路はオンし、
前記インバータの故障していない2個のレグと、前記サブインバータのn個のレグのうちの前記中性点ノードに接続されたレグとを用いて、前記n相のうちの二相の巻線を通電する、請求項に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記n相の巻線のうちの一相の巻線が故障した場合、
前記インバータのn個のレグのうちの、故障した巻線以外の巻線の中の二相の巻線に接続された2個のレグと、前記中性点ノードに接続した前記サブインバータの前記少なくとも1個のレグとを用いて、前記二相の巻線を通電する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項16】
モータと、
請求項1から15のいずれかに記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置を制御する制御回路と、を有するモータモジュール。
【請求項17】
請求項16に記載のモータモジュールを有する電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、モータモジュールおよび電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動モータ(以下、単に「モータ」と表記する。)、電力変換装置およびECUが一体化された機電一体型モータが開発されている。特に車載分野において、安全性の観点から高い品質保証が要求される。そのため、部品の一部が故障した場合でも安全動作を継続できる冗長設計が取り入れられている。冗長設計の一例として、1つのモータに対して2つの電力変換装置を設けることが検討されている。他の一例として、メインのマイクロコントローラにバックアップ用マイクロコントローラを設けることが検討されている。
【0003】
特許文献1は、第1系統および第2系統を有するモータ駆動装置を開示している。第1系統は、モータの第1巻線組に接続され、第1インバータ部、電源リレーおよび逆接続保護リレーなどを有する。第2系統は、モータの第2巻線組に接続され、第2インバータ部、電源リレーおよび逆接続保護リレーなどを有する。モータ駆動装置に故障が生じていないとき、第1系統および第2系統の両方を用いてモータを駆動することが可能である。これに対し、第1系統および第2系統の一方、または、第1巻線組および第2巻線組の一方に故障が生じたとき、電源リレーは、電源から、故障した系統または故障した巻線組に接続された系統への電力供給を遮断する。故障していない他方の系統を用いてモータ駆動を継続させることが可能である。
【0004】
特許文献2および3も、第1系統および第2系統を有するモータ駆動装置を開示している。一方の系統または一方の巻線組が故障したとしても、故障していない系統によってモータ駆動を継続させることができる。
【0005】
特許文献4は、4つの電気的分離手段、および、2つのインバータを有し、三相モータに供給する電力を変換するモータ駆動装置を開示している。1つのインバータに対し、電源とインバータの間に1つの電気的分離手段が設けられ、インバータとグランド(GND)の間に1つの電気的分離手段が設けられている。故障したインバータにおける巻線の中性点を用いて、故障していないインバータによってモータを駆動することが可能である。そのとき、故障したインバータに接続された2つの電気的分離手段を遮断状態にすることによって、故障したインバータは電源およびGNDから分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-34204号公報
【文献】特開2016-32977号公報
【文献】特開2008-132919号公報
【文献】特許第5797751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の技術では、異常時の制御におけるモータ出力のさらなる向上が求められていた。
【0008】
本開示の実施形態は、異常時の制御におけるモータ出力を向上させることが可能な電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の例示的な電力変換装置は、電源からの電力を、一端同士がY結線されたn相(nは3以上の整数)の巻線を有するモータに供給する電力に変換する電力変換装置あって、前記n相の巻線の他端に接続され、各々がローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を含むn個のレグを有するインバータと、前記電源と前記n相の巻線との、前記インバータを介した接続・非接続を相毎に切替える第1相分離リレー回路と、前記インバータの前記n個のレグと並列接続された少なくとも1個のレグを有するサブインバータであって、前記n相の巻線の一端をY結線する前記モータの中性点ノード、および、前記n相の巻線の他端に接続されるサブインバータと、前記電源と前記n相の巻線との、前記サブインバータを介した接続・非接続を切替え、かつ、前記電源と前記中性点ノードとの接続・非接続を切替える第2相分離リレー回路と、を備え、前記第2相分離リレー回路は、前記電源と前記サブインバータとの接続・非接続を切替え、前記サブインバータの前記少なくとも1個のレグは、各々がローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を含むn+1個のレグであり、 前記n+1個のレグのうちのn個のレグは、前記n相の巻線の他端に接続され、残りのレグは前記中性点ノードに接続される
【発明の効果】
【0010】
本開示の例示的な実施形態によると、第1相分離リレー回路および第2相分離リレー回路のオン・オフ状態を制御モードに応じて適切に決定することによりn相通電制御(典型的には三相通電制御または二相通電制御)を継続して行うことができる。これにより、異常時の制御におけるモータ出力を向上させることが可能な電力変換装置、当該電力変換装置を備えるモータモジュール、および、当該モータモジュールを備える電動パワーステアリング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、例示的な実施形態1によるモータモジュール1000の典型的なブロック構成を示すブロック図である。
図2図2は、例示的な実施形態1による電力変換装置100の回路構成を示す回路図である。
図3図3は、双方向スイッチSW_2Wの構成を示す模式図である。
図4図4は、制御回路300の典型的なブロック構成を示すブロック図である。
図5図5は、三相通電制御に従って巻線M1、M2およびM3に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示するグラフである。
図6A図6Aは、三相通電制御を行ったときの、モータの単位時間当たりの回転数(rps)とトルクT(N・m)との関係を示すグラフである。
図6B図6Bは、二相通電制御を行ったときの、モータの単位時間当たりの回転数(rps)とトルクT(N・m)との関係を示すグラフである。
図7図7は、例示的な実施形態2による電力変換装置100Aの回路構成を示す回路図である。
図8図8は、例示的な実施形態3による電動パワーステアリング装置2000の典型的な構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の電力変換装置、モータモジュールおよび電動パワーステアリング装置の実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0013】
本明細書において、電源からの電力を、三相(U相、V相、W相)の巻線を有する三相モータに供給する電力に変換する電力変換装置を例にして、本開示の実施形態を説明する。ただし、電源からの電力を、四相または五相などのn相(nは4以上の整数)の巻線を有するn相モータに供給する電力に変換する電力変換装置も本開示の範疇である。
【0014】

(実施形態1)

〔モータモジュール1000および電力変換装置100の構造〕

図1は、本実施形態によるモータモジュール1000の典型的なブロック構成を模式的に示している。
【0015】

モータモジュール1000は、典型的に、電力変換装置100、モータ200、制御回路300および角度センサ500を備える。モータ制御手法(例えばセンサレス制御)によっては、角度センサ500は不要な場合がある。
【0016】
モータモジュール1000は、モジュール化され、例えば、モータ、センサ、ドライバおよびコントローラを有する機電一体型モータとして製造および販売され得る。また、モータを駆動するためのシステムであり、モータモジュールの構成要素のうちのモータ以外の構成要素を備え得るシステムを「モータ駆動システム」と呼ぶことができる。そのモータ駆動システムもモジュール化され、製造および販売され得る。
【0017】
電力変換装置100は、インバータ110、サブインバータ120、第1相分離リレー回路130、第2相分離リレー回路140および電流センサ400を有する。電力変換装置100は、電源101(図2を参照)からの電力をモータ200に供給する電力に変換することが可能である。インバータ110は、モータ200に接続される。例えば、インバータ110は、直流電力を、U相、V相およびW相の擬似正弦波である三相交流電力に変換することが可能である。本明細書において、部品(構成要素)同士の間の「接続」とは、主に電気的な接続を意味する。
【0018】
モータ200は、例えば三相交流モータである。モータ200は、U相の巻線M1、V相の巻線M2およびW相の巻線M3を有する。巻線M1、M2およびM3の一端同士はY結線されている。本明細書では、それらの巻線の一端同士をY結線するモータ200のノードを「中性点ノードN」と表記することとする。中性点ノードNは、モータ駆動時に中性点として機能する。
【0019】
制御回路300は、マイクロコントローラなどから構成される。制御回路300は、電流センサ400および角度センサ500からの入力信号に基づいて電力変換装置100を制御する。その制御手法として、例えばベクトル制御、パルス幅変調(PWM)または直接トルク制御(DTC)がある。
【0020】
角度センサ500は、例えばレゾルバまたはホールICである。角度センサ500は、磁気抵抗(MR)素子を有するMRセンサとセンサマグネットとの組み合わせによっても実現される。角度センサ500は、モータ200のロータの回転角(以下、「回転信号」と表記する。)を検出し、回転信号を制御回路300に出力する。
【0021】
図2を参照して、電力変換装置100の具体的な回路構成を説明する。
【0022】
図2は、本実施形態による電力変換装置100の回路構成を模式的に示している。
【0023】
電源101は、所定の電源電圧(例えば12V)を生成する。電源101として、例えば直流電源が用いられる。ただし、電源101は、AC-DCコンバータまたはDC―DCコンバータであってもよいし、バッテリー(蓄電池)であってもよい。
【0024】
ヒューズ102が、電源101とインバータ110との間に接続される。ヒューズ102は、電源101からインバータ110またはサブインバータ120に流れ得る大電流を遮断することができる。ヒューズの代わりにリレーなどを用いてもよい。
【0025】
図示されていないが、電源101とインバータ110との間にコイルが設けられる。コイルは、ノイズフィルタとして機能し、インバータに供給する電圧波形に含まれる高周波ノイズ、またはインバータで発生する高周波ノイズを電源101側に流出させないように平滑化する。また、インバータの電源端子には、コンデンサが接続される。コンデンサは、いわゆるバイパスコンデンサであり、電圧リプルを抑制する。コンデンサは、例えば電解コンデンサであり、容量および使用する個数は設計仕様などによって適宜決定される。
【0026】
インバータ110は、3個のレグを有するブリッジ回路を備える。各レグは、ハイサイドスイッチ素子およびローサイドスイッチ素子を有する。U相レグは、ハイサイドスイッチ素子SW_AHおよびローサイドスイッチ素子SW_ALを有する。V相レグは、ハイサイドスイッチ素子SW_BHおよびローサイドスイッチ素子SW_BLを有する。W相レグは、ハイサイドスイッチ素子SW_CHおよびローサイドスイッチ素子SW_CLを有する。スイッチ素子として、例えば寄生ダイオードが内部に形成された電界効果トランジスタ(典型的にはMOSFET)、または、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)とそれに並列接続された還流ダイオードとの組み合わせを用いることができる。
【0027】
インバータ110は、例えば、U相、V相およびW相の各相の巻線に流れる電流(「相電流」と呼ぶ場合がある。)を検出するための電流センサ400(図1を参照)として、シャント抵抗(不図示)を各レグに有する。電流センサ400は、各シャント抵抗に流れる電流を検出する電流検出回路(不図示)を有する。例えば、シャント抵抗は、各レグにおいて、ローサイドスイッチ素子とGNDの間に接続され得る。
【0028】
シャント抵抗の数は3つに限られない。例えば、U相、V相用の2つのシャント抵抗、V相、W相用の2つのシャント抵抗、または、U相、W相用の2つのシャント抵抗を用いることが可能である。使用するシャント抵抗の数およびシャント抵抗の配置は、製品コストおよび設計仕様などを考慮して適宜決定される。
【0029】
インバータ110のU相レグ(具体的には、ハイサイドスイッチ素子SW_AHおよびローサイドスイッチ素子SW_ALの間のノードna)は、モータ200のU相の巻線M1の他端に接続される。ノードnaと同様に、V相レグのノードnbは、V相の巻線M2の他端に接続され、W相レグのノードncは、W相の巻線M3の他端に接続される。
【0030】
サブインバータ120は、巻線M1、M2、M3の他端およびモータ200の中性点ノードNに接続することが可能である。本開示のサブインバータは、インバータの3個のレグと並列接続された少なくとも1個のレグを有し得る。図2に示す回路構成では、サブインバータ120は、インバータ110の3個のレグと並列接続された1個のレグDを有する。レグDは、ハイサイドスイッチ素子SW_DHおよびローサイドスイッチ素子SW_DLを有する。レグDは、インバータ110のレグと同様に、シャント抵抗を有することができる。
【0031】
レグDのハイサイドスイッチ素子SW_DHおよびローサイドスイッチ素子SW_DLの間のノードndは、後述する第2相分離リレー回路140を介して巻線M1、M2およびM3に接続することが可能である。さらに、ノードndは、第2相分離リレー回路140を介して中性点ノードNに接続することが可能である。
【0032】
例えば、インバータ110を、A相、B相、C相およびD相の四相のレグを備えるインバータと見なすことができる。インバータ110およびサブインバータ120は、レグDを含む4個のレグを備える1個のブリッジ回路として製造され得る。
【0033】
第1相分離リレー回路130は、電源101とインバータ110との接続・非接続を相毎に切替える。換言すると、第1相分離リレー回路130は、電源101と、巻線M1、M2およびM3との、インバータ110を介した接続・非接続を相毎に切替えることができる。
【0034】
第1相分離リレー回路130は、インバータ110において、電源ラインであるハイサイド側のノードと、3個のハイサイドスイッチ素子SW_AH、SW_BHおよびSW_CHとの間に接続された、3個の相分離リレー(第1相分離リレー)ISW_AH、ISW_BHおよびISW_CHを有する。相分離リレーISW_AHはU相レグにある。相分離リレーISW_BHはV相レグにある。相分離リレーISW_CHはW相レグにある。
【0035】
第1相分離リレー回路130は、さらに、インバータ110において、GNDラインであるローサイド側のノードと、3個のローサイドスイッチ素子SW_AL、SW_BLおよびSW_CLとの間に接続された、3個の相分離リレー(第2相分離リレー)ISW_AL、ISW_BLおよびISW_CLを有する。相分離リレーISW_ALはU相レグにある。相分離リレーISW_BLはV相レグにある。相分離リレーISW_CLはW相レグにある。
【0036】
相分離リレーとして、例えば、MOSFETなどの半導体スイッチを用いることができる。サイリスタ、アナログスイッチICなどの他の半導体スイッチまたはメカニカルリレーを用いても構わない。また、IGBTおよびダイオードの組み合わせを用いることができる。
【0037】
図2には、インバータ110のスイッチ素子および各相分離リレーとして、内部に寄生ダイオードを有するMOSFETを例示している。各相のレグにおいて、ハイサイド側の相分離リレーおよびハイサイドスイッチ素子は、順方向電流が、内部の寄生ダイオードに同方向に流れるよう直列に接続される。ローサイド側の相分離リレーおよびローサイドスイッチ素子は、順方向電流が、内部の寄生ダイオードに同方向に流れるよう直列に接続される。
【0038】
第2相分離リレー回路140は、電源101と、巻線M1、M2およびM3との、サブインバータ120を介した接続・非接続を切替える。さらに、第2相分離リレー回路140は、電源101と中性点ノードNとの、サブインバータ120を介した接続・非接続を切替える。具体的に、第2相分離リレー回路140は、サブインバータ120と、巻線M1、M2およびM3との接続・非接続を相毎に切替えることができ、さらに、サブインバータ120と、中性点ノードNとの接続・非接続を切替えることができる。
【0039】
第2相分離リレー回路140は、サブインバータ120のレグDと、巻線M1、M2およびM3との接続・非接続を切替える、3個の相分離リレー(第3相分離リレー)ISW_AD、ISW_BDおよびISW_CDを有する。第2相分離リレー回路140は、さらに、レグDと中性点ノードNとの接続・非接続を切替える相分離リレーISW_Nを有する。このように、第2相分離リレー回路140は、4個の相分離リレーを有する。
【0040】
相分離リレーISW_ADの一端は、レグDのノードndに接続され、その他端は、巻線M1の他端に接続される。相分離リレーISW_BDの一端は、レグDのノードndに接続され、その他端は、巻線M2の他端に接続される。相分離リレーISW_CDの一端は、レグDのノードndに接続され、その他端は、巻線M3の他端に接続される。相分離リレーISW_Nの一端は、レグDのノードndに接続され、その他端は、中性点ノードNに接続される。このように、4個の相分離リレーISW_AD、ISW_BD、ISW_CDおよびISW_Nの一端は、レグDのノードndに共通に接続される。
【0041】
図3は、双方向スイッチSW_2Wの構成を模式的に示している。
【0042】
4個の相分離リレーISW_AD、ISW_BD、ISW_CDおよびISW_Nとして、図示するような双方向スイッチSW_2Wを用いることができる。内部のダイオードが互いに逆方向を向くよう2個の一方向スイッチSW_1Wを組み合わせることによって、双方向スイッチSW_2Wを構成することができる。
【0043】
図4は、制御回路300の典型的なブロック構成を模式的に示している。
【0044】
制御回路300は、例えば、電源回路310と、入力回路320と、コントローラ330と、駆動回路340と、ROM350とを備える。制御回路300は、電力変換装置100に接続される。制御回路300は、電力変換装置100を、具体的には、インバータ110、サブインバータ120、第1相分離リレー回路130および第2相分離リレー回路140(図1を参照)を制御することにより、モータ200を駆動することができる。制御回路300は、目的とするロータの位置、回転速度、および電流などを制御してクローズドループ制御を実現することができる。なお、角度センサ500(図1を参照)に代えてトルクセンサを用いてもよい。この場合、制御回路300は、目的とするモータトルクを制御することができる。
【0045】
電源回路310は、回路内の各ブロックに必要なDC電圧(例えば3V、5V)を生成する。
【0046】
入力回路32
0は、電流センサ400によって検出されたモータ電流値(以下、「実電流値」と表記する。)を受け取る。入力回路320は、コントローラ330の入力レベルに実電流値のレベルを必要に応じて変換し、実電流値をコントローラ330に出力する。入力回路320は、典型的にはアナログデジタル変換回路である。
【0047】
コントローラ330は、モータモジュール1000の全体を制御する集積回路であり、例えば、マイクロコントローラまたはFPGA(Field Programmable Gate Array)である。
【0048】
コントローラ330は、角度センサ500によって検出されたロータの回転信号を受信する。コントローラ330は、実電流値およびロータの回転信号などに従って目標電流値を設定してPWM信号を生成し、それを駆動回路340に出力する。
【0049】
コントローラ330は、電力変換装置100のインバータ110およびサブインバータ120における各スイッチ素子のスイッチング動作(ターンオンまたはターンオフ)を制御するためのPWM信号を生成する。コントローラ330は、さらに、電力変換装置100の各相分離リレー回路内の各相分離リレーのオン・オフの状態を決定する信号を生成することができる。
【0050】
駆動回路340は、典型的にはゲートドライバ(またはプリドライバ)である。駆動回路340は、インバータ110およびサブインバータ120における各スイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御信号(典型的にはゲート制御信号)をPWM信号に従って生成し、各スイッチ素子にその制御信号を与える。本実施形態では、駆動回路340は、コントローラ330からの、各相分離リレーのオン・オフの状態を決定する信号に従って、オン・オフの制御信号(アナログ信号)を生成し、その制御信号をそれらに与えることが可能である。
【0051】
駆動対象が低電圧で駆動可能なモータであるとき、ゲートドライバは必ずしも必要とされない場合がある。その場合、ゲートドライバの機能は、コントローラ330に実装され得る。
【0052】
ROM350は、例えば書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)または読み出し専用のメモリである。ROM350は、コントローラ330に電力変換装置100を制御させるための命令群を含む制御プログラムを格納する。例えば、制御プログラムはブート時にRAM(不図示)に一旦展開される。
【0053】

電力変換装置100の制御モードに、正常時および異常時の制御モードがある。制御回路300(主としてコントローラ330)は、電力変換装置100の制御を正常時の制御モードから異常時の制御モードに切替えることができる。その制御モードに応じて、第1相分離リレー回路130および第2相分離リレー回路140の各相分離リレーのオン・オフの状態が決定される。
【0054】
以下、第1相分離リレー回路130および第2相分離リレー回路140のオン・オフ状態と、オン・オフ状態における、電源101、インバータ110、サブインバータ120、巻線M1、M2、M3および中性点ノードNの電気的な接続関係と、を詳細に説明する。
【0055】
本明細書において、「第1相分離リレー回路130がオンする」とは、第1相分離リレー回路130の全ての相分離リレーISW_AH、ISW_BH、ISW_CH、ISW_AL、ISW_BLおよびISW_CLがオンすることを意味する。「第1相分離リレー回路130がオフする」とは、全ての相分離リレーISW_AH、ISW_BH、ISW_CH、ISW_AL、ISW_BLおよびISW_CLがオフすることを意味する。
【0056】
第1相分離リレー回路130がオンすると、インバータ110は電源101に電気的に接続される。第1相分離リレー回路130がオフすると、インバータ110は電源101から電気的に分離される。
【0057】

上述したとおり、電源101とインバータ110の3個のレグとの接続・非接続を相毎に切替えることが可能である。例えば、相分離リレーISW_AH、ISW_ALをオフすることにより、U相レグは電源101から電気的に分離される。V相およびW相レグは電源101に接続されたままである。
【0058】
本明細書において、「第2相分離リレー回路140がオンする」とは、第2相分離リレー回路140の全ての相分離リレーがオンすることを意味する。「第2相分離リレー回路140がオフする」とは、第2相分離リレー回路140の全ての相分離リレーがオフすることを意味する。
【0059】

図2に示す回路構成では、第2相分離リレー回路140がオンすると、サブインバータ120、より具体的には、サブインバータ120のレグDは、巻線M1、M2、M3および中性点ノードNに接続される。第2相分離リレー回路140がオフすると、レグDは、巻線M1、M2、M3および中性点ノードNから電気的に分離される。
【0060】
上述したとおり、サブインバータ120のレグDと、巻線M1、M2およびM3との接続・非接続を相毎に切替えることが可能である。例えば、相分離リレーISW_ADをオンにし、かつ、相分離リレーISW_BD、ISW_CDおよびISW_Nをオフにすることにより、レグDは巻線M1にのみ接続可能である。相分離リレーISW_AD、ISW_BDおよびISW_CDをオフし、かつ、相分離リレーISW_Nをオンすることにより、レグDは中性点ノードNにのみ接続可能である。
【0061】

〔電力変換装置100の動作〕

以下、モータモジュール1000の動作の具体例を説明し、主として電力変換装置100の動作の具体例を説明する。
【0062】
(1.正常時の制御)

先ず、電力変換装置100の正常時の制御方法の具体例を説明する。
【0063】
本明細書において、「正常」とは、インバータ110、サブインバータ120、モータ200の巻線M1、M2およびM3に故障が生じていないことを指す。「異常」とは、インバータのブリッジ回路内のスイッチ素子において故障が発生すること、または、モータの巻線に故障が発生することを指す。スイッチ素子の故障は、主として半導体スイッチ素子(FET)の、オープン故障およびショート故障を指す。「オープン故障」は、FETのソース-ドレイン間が開放する故障(換言すると、ソース-ドレイン間の抵抗rdsがハイインピーダンスになること)を指し、「ショート故障」は、FETのソース-ドレイン間が短絡する故障を指す。巻線の故障は、例えば巻線の断線である。
【0064】
正常時の制御モードでは、制御回路300(主にコントローラ330)は、第1相分離リレー回路130をオンし、かつ、第2相分離リレー回路140をオフする。この制御により、インバータ110は電源101に接続される。換言すると、巻線M1、M2およびM3は、インバータ110を介して電源101に電気的に接続される。また、サブインバータ120のレグDは、巻線M1、M2、M3および中性点ノードNから電気的に分離される。従って、電源101からサブインバータ120を介してモータ200に電力は供給されない。
【0065】
制御回路300は、インバータ110のスイッチ素子のスイッチング動作を制御することにより、三相の巻線M1、M2およびM3を通電することが可能である。本明細書では、このような通電制御を、「三相通電制御」と呼ぶ。
【0066】
図5は、三相通電制御に従って巻線M1、M2およびM3に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示している。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示している。Ipkは各相を流れる相電流の最大値(ピーク電流値)を表している。一般的なY結線の結線方式のモータでは、電流の向きを考慮した三相の巻線に流れる電流の総和は電気角毎に「0」である。
【0067】
制御回路300は、例えば、図5に示される擬似正弦波が得られるようにインバータ110の各スイッチ素子のスイッチング動作を制御する。これにより、電力変換装置100は制御回路300の制御を受けて、巻線M1、M2およびM3を通電することができる。
【0068】

(2.異常時の制御)

電力変換装置100を長期間使用すると、インバータ110のスイッチ素子またはモータ200の巻線に故障が起こる可能性がある。これらの故障は、製造時に発生し得る製造故障とは異なる。そのような故障が発生すると、上述した正常時の制御は不可能となる。
【0069】
故障検知の一例として、駆動回路340は、スイッチ素子のドレイン-ソース間の電圧Vdsを監視し、所定の閾値電圧とVdsとを比較することによって、スイッチ素子の故障を検知する。閾値電圧は、例えば外部IC(不図示)とのデータ通信および外付け部品によって駆動回路340に設定される。駆動回路340は、コントローラ330のポートと接続され、故障検知信号をコントローラ330に通知する。例えば、駆動回路340は、スイッチ素子の故障を検知すると、故障検知信号をアサートする。コントローラ330は、アサートされた故障検知信号を受信すると、駆動回路340の内部データを読み出して、インバータ110における複数のスイッチ素子の中でどのスイッチ素子が故障しているのかを判別することが可能である。
【0070】
故障検知の他の一例として、コントローラ330は、モータの実電流値と目標電流値との差に基づいてスイッチ素子の故障を検知することも可能である。さらに、コントローラ330は、例えば、モータの実電流値と目標電流値との差に基づいて、モータ200の巻線が断線したかどうかを検知することも可能である。ただし、故障検知は、これらの手法に限られず、故障検知に関する公知の手法を広く用いることができる。
【0071】
コントローラ330は、故障検知信号がアサートされると、電力変換装置100の制御を正常時の制御から異常時の制御に切替える。例えば、正常時から異常時に制御を切替えるタイミングは、故障検知信号がアサートされてから10msec~30msec程度である。
【0072】
インバータ110の3個のレグのうちの1個のレグが故障した場合、制御回路300は、第1相分離リレー回路130の中の相分離リレーISW_AH、ISW_BHおよびISW_CHのうちの、インバータ110の故障したレグに接続された相分離リレーと、相分離リレーISW_AL、ISW_BLおよびISW_CLのうちの、故障したレグに接続された相分離リレーと、をオフし、かつ、残りの4個の相分離リレーをオンする。本明細書では、レグのスイッチ素子が故障することを「レグが故障する」と呼ぶ場合がある。
【0073】
制御回路300は、さらに、第2相分離リレー回路140の中の相分離リレーISW_AD、ISW_BDおよびISW_CDのうちの、故障したレグと共に巻線の他端に接続された相分離リレーをオンし、残りの3個の相分離リレーをオフする。
【0074】
電力変換装置100は制御回路300の制御を受けて、インバータ110の3個のレグのうちの故障したレグ以外の2個のレグと、サブインバータ120のレグDとを用いて、巻線M1、M2およびM3を通電することができる。
【0075】
以下、例示的な故障パターンを挙げ、各相分離リレー回路内の相分離リレーの制御方法を詳細に説明する。
【0076】

<2-1.三相通電制御>

再び図2を参照する。
【0077】
例えば、インバータ110のU相レグにおけるハイサイドスイッチ素子SW_AHがオープン故障した場合を考える。その場合、制御回路300は、第1相分離リレー回路130において、その故障したスイッチ素子を含むU相レグの相分離リレーISW_AH、ISW_ALをオフし、かつ、V相およびW相レグの4個の相分離リレーISW_BH、ISW_BL、ISW_CHおよびISW_CLをオンする。さらに、制御回路300は、第2相分離リレー回路140において、巻線M1に接続された相分離リレーISW_ADをオンし、かつ、巻線M2、M3に接続された相分離リレーISW_BD、ISW_CD、および、中性点ノードNに接続された相分離リレーISW_Nをオフする。
【0078】
これらの制御により、故障したU相レグは電源101から電気的に分離される。巻線M2、M3は、インバータ110のV相およびW相レグを介して電源101に接続される。中性点ノードNは、電源101から電気的に分離される。一方、U相の巻線M1は、インバータ110のU相レグに代えてサブインバータ120のレグDに接続される。この接続状態において、制御回路300は、インバータ110のV相レグ、W相レグおよびサブインバータ120のレグDを用いて三相通電制御を継続することができる。つまり、サブインバータ120のレグDをインバータ110のU相レグとして機能させることが可能となる。
【0079】
例えば、インバータ110のV相レグにおけるハイサイドスイッチ素子SW_BHがオープン故障した場合を考える。その場合、制御回路300は、第1相分離リレー回路130において、その故障したスイッチ素子を含むV相レグの相分離リレーISW_BH、ISW_BLをオフし、かつ、U相およびW相レグの4個の相分離リレーISW_AH、ISW_AL、ISW_CHおよびISW_CLをオンする。さらに、制御回路300は、第2相分離リレー回路140において、巻線M2に接続された相分離リレーISW_BDをオンし、かつ、巻線M1、M3および中性点ノードN1に接続された相分離リレーISW_AD、ISW_CDおよびISW_Nをオフする。これらの制御により、インバータ110のU相レグ、W相レグおよびサブインバータ120のレグDを用いて三相通電制御を継続することができる。つまり、サブインバータ120のレグDをインバータ110のV相レグとして機能させることができる。
【0080】
例えば、四相交流モータを駆動する、四相のレグを有するインバータにおいて、一相のレグが故障した場合、サブインバータ120のレグDをその故障した相のレグとして用いることが可能となる。このように、本開示は、四相以上の巻線を有する多相モータの駆動にも好適に利用することができる。
【0081】
本実施形態によれば、異常時の制御において、サブインバータ120のレグDを代用することにより3個のレグを用いた三相通電制御を継続して行うことができる。
【0082】
図6Aは、三相通電制御を行ったときの、モータの単位時間当たりの回転数(rps)とトルクT(N・m)の関係を示している。グラフの横軸は、回転数を示し、縦軸は、正規化トルクの値を示す。回転数のWmnは最大回転数を表す。Wcnは、モータ出力特性において、トルクが急激に変化する変化点における回転数を表す。
【0083】
図6Aに示されるいわゆるT-N曲線は、正常時の制御で得られるモータ出力および異常時の制御で得られるモータ出力の特性を示す。異常時の制御で得られるトルク値は、正常時の制御で得られるトルク値で正規化した値を示す。また、比較例として、特許文献1(特開2016-34204号公報)および4(特許第5797751号公報)に開示された制御手法により得られる、異常時の制御におけるモータ出力特性を図6Aに示す。
【0084】
特許文献1のモータ駆動装置では、異常時の制御において第1系統および第2系統の故障していない一方を用いてモータは駆動される。異常時の制御における相電流の最大値は、正常時の制御におけるそれと比べ約50%に低下するので、異常時の制御で得られるトルクも、正常時の制御におけるそれと比べ約50%に低下する。一方、各相の巻線に印加される相電圧の最大値は、正常時および異常時の制御で変化しないので、最大回転数Wmnは維持される。
【0085】
特許文献4のモータ駆動装置では、正常時の制御において、三相の巻線に流れる電流を独立に制御することが可能である。これに対し、異常時の制御では、故障したインバータの中性点を利用して実質的に片側のインバータのみでモータは駆動される。各相の巻線に印加される相電圧の最大値は、正常時のそれと比べ約58%に低下するので、正常時の制御で得られる最大の回転数は、正常時の最大回転数Wmnと比べ約58%に低下する。これにより、高速回転領域が低速側に縮小され、モータをより高速に駆動することができない。一方、モータの相電流の最大値は、正常時および異常時の制御で変化しないので、トルクは維持される。
【0086】
本実施形態によると、正常時と同じ三相通電制御を異常時においても行うことができる。従って、異常時の制御において正常時の制御と同じトルクを得ることができる。さらに、各相の巻線に印加される相電圧の最大値は、正常時および異常時の制御で変化しないので、最大回転数Wmnを維持することができ、また、回転数Wcnを維持することができる。つまり、正常時と異常時の制御の間でモータ出力特性は変わらない。
【0087】
以上を纏めると、図6Aに示すように、従来と比較して、異常時の制御において、トルク、モータの最大回転数Wmnおよび回転数Wcnを正常時と同じ値に維持することができる。その結果、モータ出力、つまり、モータの駆動範囲を改善することが可能となる。特に、高速回転領域においてより高いトルクを得ることができる。異常時の制御におけるモータ出力特性をさらに向上させることができる。
【0088】

<2-2.二相通電制御>

例えば巻線M1が故障した場合を考える。三相の巻線のうちの一相の巻線が故障すると、三相通電制御は不可能となる。制御回路300は、インバータ110の3個のレグのうちの、故障した巻線以外の二相の巻線に接続された2個のレグと、中性点ノードNと接続したサブインバータ120のレグDとを用いて、故障していない二相の巻線を通電する制御を行うことができる。
【0089】
再び図2を参照する。
【0090】
制御回路300は、第1相分離リレー回路130において、故障した巻線M1に接続されたU相レグの相分離リレーISW_AH、ISW_ALをオフし、かつ、V相およびW相レグの4個の相分離リレーISW_BH、ISW_BL、ISW_CHおよびISW_CLをオンする。さらに、制御回路300は、第2相分離リレー回路140において、相分離リレーISW_AD、ISW_BDおよびISW_CDをオフし、相分離リレーISW_Nをオンする。
【0091】
これらの制御により、故障した巻線M1に接続されたU相レグは電源101から電気的に分離され、巻線M2、M3はV相レグ、W相レグに接続される。巻線M1、M2およびM3は、サブインバータ120のレグDから電気的に分離される。中性点ノードNは、レグDを介して電源101に接続される。この接続状態において、巻線M2、M3の二相を通電することによって、モータ200の駆動を継続することができる。本明細書では、二相のレグを用いて二相の巻線を通電する制御を「二相通電制御」と呼ぶこことする。
【0092】
V相用レグのノードnbから巻線M2を通って中性点ノードNに流れ込む相電流をIと表記し、W相用レグのノードncから巻線M3を通って中性点ノードNに流れ込む相電流をIと表記する。また、中性点ノードNからレグDのノードndに流れ出る電流をIと表記する。二相通電制御において、I+I=Iが成立する。
【0093】
制御回路300は、例えば、インバータ110のV相、W相レグ、および、レグDのスイッチ素子のスイッチング動作を制御することにより、巻線M2、M3を通電することができる。具体的に、I+I=Iを満足するよう、V相レグのノードnb、W相レグのノードncおよび中性点ノードNの電位を制御することにより、二相通電制御を行うことが可能となる。ノードnbおよび中性点ノードNの間の電位差に応じた相電流Iが流れる。ノードncおよび中性点ノードNの間の電位差に応じた相電流Iが流れる。
【0094】
例えば、U相レグのスイッチ素子SW_AHが故障した場合、または、U相レグのスイッチ素子SW_AH、SW_ALが同時に故障した場合においても、制御回路300は、巻線M1が故障した場合と同様に、二相通電制御を行うことができる。例えば、四相交流モータを駆動する、四相のレグを有するインバータにおいて、そのうちの二相のレグが故障した場合、本実施形態の二相通電制御の手法を好適に適用することができる。
【0095】
二相通電制御の手法によると、異常時の制御において、第1相分離リレー回路130を用いて故障したレグを電源101から電気的に分離することができ、かつ、第2相分離リレー回路140を用いてレグDを中性点ノードNに接続することができる。レグDを中性点用レグとして機能させることができる。レグDを用いて中性点ノードNの電位を適切に制御することにより、二相通電制御を行うことが可能となる。モータ200を継続して駆動することができる。
【0096】
図6Bは、二相通電制御を行ったときの、モータの単位時間当たりの回転数(rps)とトルクT(N・m)との関係を示している。図6Aと同様に、グラフの横軸は、回転数を示し、縦軸は、正規化トルクの値を示す。異常時の二相通電制御で得られるトルク値は、正常時の三相通電制御で得られるトルク値で正規化した値を示す。また、比較例として、特許文献1および4に開示された制御手法により得られる、異常時の制御におけるモータ出力特性を図6Bに示す。
【0097】
正常時の三相通電制御における相電流の最大値Ipkを1とした場合、異常時の二相通電制御による相電流の最大値Ipkは、理論上、約0.58になることが知られている。従って、異常時の制御で得られるトルクは、正常時の制御におけるそれと比べ約58%になる。一方、各相の巻線に印加される相電圧の最大値は、正常時および異常時の制御で変化しないので、最大回転数Wmnを維持することができる。また、回転数Wcnを維持することができる。
【0098】
以上を纏めると、図6Bに示すように、従来と比較して、異常時の制御において、モータの最大回転数Wmnおよび回転数Wcnを正常時と同じ値に維持することができる。その結果、モータ出力、つまり、モータの駆動範囲を改善することが可能となる。特に、高速回転領域においてより高いトルクを得ることができる。従来と比べ、得られるトルクは16%(=58/50)高くなる。
【0099】
本実施形態によれば、異常時の制御で三相通電制御ができない場合でも、二相通電制御を行うことができる。二相通電制御または三相通電制御のいずれにおいても、従来と比べてモータ出力特性をさらに向上させることができる。
【0100】

(実施形態2)

〔電力変換装置100Aの構造〕

本実施形態による電力変換装置100Aのサブインバータ120および第2相分離リレー回路140の構造は、実施形態1による電力変換装置100のそれらの構造と異なる。以下、実施形態1との共通の説明は省略し、その差異点を中心に説明する。
【0101】
図7は、本実施形態による電力変換装置100Aの回路構成を模式的に示している。
【0102】
サブインバータ120は、U相レグ、V相レグ、W相レグおよび中性点用レグの4個のレグを有する。U相レグは、ハイサイドスイッチ素子SW_DAHおよびローサイドスイッチ素子SW_DALを有する。V相レグは、ハイサイドスイッチ素子SW_DBHおよびローサイドスイッチ素子SW_DBLを有する。W相レグは、ハイサイドスイッチ素子SW_DCHおよびローサイドスイッチ素子SW_DCLを有する。中性点用レグは、ハイサイドスイッチ素子SW_DNHおよびローサイドスイッチ素子SW_DNLを有する。
【0103】
サブインバータ120の4個のレグは、巻線M1、M2、M3の他端および中性点ノードNに接続される。具体的に説明すると、U相レグにおけるハイサイドスイッチ素子SW_DAHおよびローサイドスイッチ素子SW_DALの間のノードndaは、インバータ110のノードnaと共に、巻線M1の他端に接続される。V相レグのノードndbは、インバータ110のノードnbと共に、巻線M2の他端に接続される。W相レグのノードndcは、インバータ110のノードncと共に、巻線M3の他端に接続される。中性点用レグのノードndnは、中性点ノードNに接続される。
【0104】
第2相分離リレー回路140は、電源101とサブインバータ120との接続・非接続を切替える。第2相分離リレー回路140は、相分離リレー(第3相分離リレー)ISW_DHおよび相分離リレー(第4相分離リレー)ISW_DLを有する。相分離リレーISW_DHは、サブインバータ120の4個のハイサイドスイッチ素子SW_DAH、SW_DBH、SW_DCHおよびSW_DNH同士を接続するハイサイド側のノードndhと電源101の間に接続される。相分離リレーISW_DLは、サブインバータ120の4個のローサイドスイッチ素子SW_DAL、SW_DBL、SW_DCLおよびSW_DLH同士を接続するローサイド側のノードndlとGNDの間に接続される。
【0105】

〔電力変換装置100Aの動作〕

正常時の制御では、制御回路300は、実施形態1で説明したように、第1相分離リレー回路130をオンして、第2相分離リレー回路140をオフする。これにより、インバータ110は電源101に接続されて、サブインバータ120は電源101から分離される。制御回路300は、インバータ110を用いて三相通電制御を行う。
【0106】
インバータ110の3個のレグのうちの1個のレグが故障した場合、異常時の制御において、制御回路300は、第1相分離リレー回路130の中の相分離リレーISW_AH、ISW_BHおよびISW_CHのうちの、インバータ110の故障したレグに接続された相分離リレーと、相分離リレーISW_AL、ISW_BLおよびISW_CLのうちの、故障したレグに接続された相分離リレーとをオフし、かつ、残りの4個の相分離リレーをオンする。制御回路300は、さらに、第2相分離リレー回路140の相分離リレーISW_DH、ISW_DLをオンする。
【0107】
制御回路300は、インバータ110の3個のレグのうちの故障したレグ以外の2個のレグと、サブインバータ120の4個のレグのうちの、故障したレグに接続された巻線の他端に共に接続されたレグとを用いて、三相通電制御を行うことができる。
【0108】
以下、例示的な故障パターンを挙げ、電力変換装置100Aの制御方法を詳細に説明する。
【0109】

例えば、インバータ110のU相レグにおけるハイサイドスイッチ素子SW_AHがオープン故障した場合を考える。その場合、制御回路300は、第1相分離リレー回路130において、その故障したスイッチ素子を含むU相レグの相分離リレーISW_AH、ISW_ALをオフし、かつ、V相およびW相レグの4個の相分離リレーISW_BH、ISW_BL、ISW_CHおよびISW_CLをオンする。制御回路300は、さらに、第2相分離リレー回路140の相分離リレーISW_DH、ISW_DLをオンする。
【0110】
これらの制御により、故障したU相レグは電源101から電気的に分離される。巻線M2、M3は、インバータ110のV相およびW相レグを介して電源101に接続される。また、巻線M1は、インバータ110のU相レグに代えてサブインバータ120のU相レグを介して電源101に接続される。この接続状態において、制御回路300は、インバータ110のV相レグ、W相レグおよびサブインバータ120のU相レグを用いて、三相通電制御を継続することができる。つまり、サブインバータ120のU相レグをインバータ110のU相レグとして機能させることができる。
【0111】
例えば、インバータ110のU相レグのハイサイドスイッチ素子SW_AHおよびV相レグのハイサイドスイッチ素子SW_BHの2個のスイッチ素子がオープン故障した場合を考える。その場合、制御回路300は、第1相分離リレー回路130において、その故障したスイッチ素子を含むU相レグ、V相レグの4個の相分離リレーISW_AH、ISW_AL、ISW_BHおよびISW_BLをオフし、かつ、W相レグの相分離リレーISW_CH、ISW_CLをオンする。制御回路300は、さらに、第2相分離リレー回路140の相分離リレーISW_DH、ISW_DLをオンする。
【0112】

これらの制御により、故障したU相レグおよびV相レグは電源101から電気的に分離される。巻線M3は、インバータ110のW相レグを介して電源101に接続される。また、巻線M1、M2は、インバータ110のU相レグ、V相レグに代えて、サブインバータ120のU相レグ、V相レグを介して電源101に接続される。この接続状態において、制御回路300は、インバータ110のW相レグ、サブインバータ120のU相レグおよびV相レグを用いて、三相通電制御を継続することができる。つまり、サブインバータ120のU相レグ、V相レグをインバータ110のU相レグ、V相レグとして機能させることができる。
【0113】
インバータ110の3個の全てのレグが故障した場合、制御回路300は、インバータ110に代えてサブインバータ120の3個のレグを用いて三相通電制御を継続することができる。
【0114】
本実施形態による電力変換装置100Aにおいても、制御回路300は、実施形態1と同様に、二相通電制御を行うことが可能である。
【0115】
例えば、インバータ110のU相レグにおけるハイサイドスイッチ素子SW_AHがオープン故障した場合を考える。その場合、制御回路300は、三相通電制御の場合と同様に、第1相分離リレー回路130および第2相分離リレー回路140を制御して、インバータ110の故障したU相レグを電源101から電気的に切り離し、インバータ110のV相およびW相レグを介して巻線M2、M3を電源101に接続する。制御回路300は、三相通電制御の場合とは異なり、インバータ110の故障していないV相レグ、W相レグおよびサブインバータ120の中性点用レグを用いて、巻線M2、M3を通電する二相通電制御を行うことができる。
【0116】
巻線が故障した場合、制御回路300は、実施形態1と同様に、二相通電制御を行うことができる。例えば巻線M1が故障した場合、制御回路300は、第1相分離リレー回路130の相分離リレーISW_AH、ISW_ALをオフすることにより、インバータ110のU相レグを電源101から切り離し、インバータ110のV相およびW相レグを介して巻線M2、M3を電源101に接続する。制御回路300は、インバータ110の故障していないV相レグ、W相レグおよびサブインバータ120の中性点用レグを用いて、巻線M2、M3を通電する二相通電制御を行うことができる。
【0117】
例えば、四相交流モータを駆動する、四相のレグを有するインバータにおいて、そのうちの二相のレグが故障した場合、本実施形態による二相通電制御の手法を好適に適用することができる。
【0118】
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、異常時の制御において、サブインバータ120のレグを用いることにより二相通電制御または三相通電制御を行うことができる。二相通電制御または三相通電制御のいずれにおいても、従来と比べてモータ出力特性をさらに向上させることができる。
【0119】

(実施形態3)

図8は、本実施形態による電動パワーステアリング装置2000の典型的な構成を模式的に示す。
【0120】
自動車等の車両は一般に、電動パワーステアリング(EPS)装置を有する。本実施形態による電動パワーステアリング装置2000は、ステアリングシステム520、および補助トルクを生成する補助トルク機構540を有する。電動パワーステアリング装置2000は、運転者がステアリングハンドルを操作することによって発生するステアリングシステムの操舵トルクを補助する補助トルクを生成する。補助トルクにより、運転者の操作の負担は軽減される。
【0121】
ステアリングシステム520は、例えば、ステアリングハンドル521、ステアリングシャフト522、自在軸継手523A、523B、回転軸524、ラックアンドピニオン機構525、ラック軸526、左右のボールジョイント552A、552B、タイロッド527A、527B、ナックル528A、528B、および左右の操舵車輪529A、529Bから構成され得る。
【0122】
補助トルク機構540は、例えば、操舵トルクセンサ541、自動車用電子制御ユニット(ECU)542、モータ543および減速機構544などから構成される。操舵トルクセンサ541は、ステアリングシステム520における操舵トルクを検出する。ECU542は、操舵トルクセンサ541の検出信号に基づいて駆動信号を生成する。モータ543は、駆動信号に基づいて操舵トルクに応じた補助トルクを生成する。モータ543は、減速機構544を介してステアリングシステム520に、生成した補助トルクを伝達する。
【0123】
ECU542は、例えば、実施形態1によるコントローラ330および駆動回路340などを有する。自動車ではECUを核とした電子制御システムが構築される。電動パワーステアリング装置2000では、例えば、ECU542、モータ543およびインバータ545によって、モータ駆動ユニットが構築される。そのユニットに、実施形態1または2によるモータモジュール1000を好適に用いることができる。
【0124】
本開示の実施形態は、シフトバイワイヤ、ステアリングバイワイヤ、ブレーキバイワイヤなどのエックスバイワイヤおよびトラクションモータなどのモータ制御システムにも好適に用いられる。例えば、本開示の実施形態によるモータ制御システムは、日本政府および米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)によって定められたレベル0から4(自動化の基準)に対応した自動運転車に搭載され得る。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本開示の実施形態は、掃除機、ドライヤ、シーリングファン、洗濯機、冷蔵庫および電動パワーステアリング装置などの、各種モータを備える多様な機器に幅広く利用され得る。
【符号の説明】
【0126】
100、100A:電力変換装置、101:電源、102:ヒューズ、110:インバータ、120:サブインバータ、130:第1相分離リレー回路、140:第2相分離リレー回路、200:モータ、300:制御回路、310:電源回路、320:入力回路、330:マイクロコントローラ、340:駆動回路、350:ROM、400:電流センサ、500:角度センサ、1000:モータモジュール、2000:電動パワーステアリング装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8