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特許7052853表示速度導出装置、表示速度導出方法及び表示速度導出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】表示速度導出装置、表示速度導出方法及び表示速度導出プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020200996
(22)【出願日】2020-12-03
(62)【分割の表示】P 2017023911の分割
【原出願日】2017-02-13
(65)【公開番号】P2021046202
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(72)【発明者】
【氏名】近藤 高広
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-070107(JP,A)
【文献】特開2014-184799(JP,A)
【文献】特開平11-020501(JP,A)
【文献】特開2012-212303(JP,A)
【文献】特開2013-64661(JP,A)
【文献】特開2006-138710(JP,A)
【文献】国際公開第87/03978(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動速度から表示速度を導出する表示速度導出手段を備え、
前記表示速度導出手段は、
前記移動速度を検出する速度検出手段と、
前記移動速度を所定期間記憶し、前記記憶した移動速度から、前記移動体の平均加速度を算出する加速度算出手段と、
前記平均加速度に基づいて前記移動体の走行状態を判定する走行状態判定手段と、
前記判定された走行状態ごとに定められる閾値及び前記所定期間より短い間隔で検出した前記移動速度に基づいて、表示速度を維持するか変更するかを前記所定期間より短い移動速度検出間隔ごとに決定する表示速度決定手段と、
を備えることを特徴とする、表示速度導出装置。
【請求項2】
移動体の移動速度から表示速度を導出する表示速度導出ステップを備え、
前記表示速度導出ステップは、
前記移動速度を検出する速度検出ステップと、
前記移動速度を所定期間記憶し、前記記憶した移動速度から、前記移動体の平均加速度を算出する加速度算出ステップと、
前記平均加速度に基づいて前記移動体の走行状態を判定する走行状態判定ステップと、
前記判定された走行状態ごとに定められる閾値及び前記所定期間より短い間隔で検出した前記移動速度に基づいて、表示速度を維持するか変更するかを前記所定期間より短い移動速度検出間隔ごとに決定する表示速度決定ステップと、
を備えることを特徴とする、表示速度導出方法。
【請求項3】
移動体の移動速度から表示速度を導出する表示速度導出ステップを備え、
前記表示速度導出ステップは、
前記移動速度を検出する速度検出ステップと、
前記移動速度を所定期間記憶し、前記記憶した移動速度から、前記移動体の平均加速度を算出する加速度算出ステップと、
前記平均加速度に基づいて前記移動体の走行状態を判定する走行状態判定ステップと、
前記判定された走行状態ごとに定められる閾値及び前記所定期間より短い間隔で検出した前記移動速度に基づいて、表示速度を維持するか変更するかを前記所定期間より短い移動速度検出間隔ごとに決定する表示速度決定ステップと、
をコンピュータに実行させる、表示速度導出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示速度導出装置、表示速度導出方法及び表示速度導出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の速度を表示するスピードメーターでは、移動体の走行速度を検出する速度センサから算出された速度に基づいて速度値を表示する。スピードメーターにおける速度表示方法には、運転者の感覚に合った表示を行うよう、移動体の加速度に基づいて表示の更新間隔を制御する技術が提案されている。例えば、特許文献1にかかる技術では、移動体の加速度が大きい場合には表示の更新の応答性を高めて実際の速度に対する表示の追従性を高め、加速度が小さい場合には更新の応答性を低くしてちらつきの少ない表示を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-138710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、スピードメーターがデジタル表示の場合、移動体の加速度が小さくても、時間の推移に伴い表示速度の値が頻繁に変化する可能性がある。図7及び図8は、移動体の速度と表示速度との関係の例を示す図である。ここでは、表示速度の値の分解能が1(km/h)であり、速度を切り上げた値を表示速度として表示するスピードメーターにおいて、略定速での表示速度の時間推移を示している。
【0005】
図7図8共に移動体の加速度推移は同様であるが、図7における表示速度はグラフの範囲に渡って90(km/h)を示すのに対し、図8では、表示速度はt1とt2の期間において91(km/h)であり、t1とt2の以外の期間では90(km/h)を示す。このように、移動体が同じような加速度の推移で移動しているのにもかかわらず、表示速度が図7では一定値だが図8では一定値にならない。そのため、同じような加速で運転していても表示速度の変化の仕方が異なるため、運転者にとっては違和感を覚える可能性がある。例えば、特許文献1の場合、速度表示の更新間隔を調整しているが、表示速度の閾値を頻繁に跨ぐような加速度のわずかな変化が継続する場合には、表示速度の変化が繰り返されるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、速度表示の追従性を損なうことなく視認性を向上させ、運転者にとってより違和感の少ない速度表示を行う表示速度導出装置、速度表示装置、表示速度導出方法及び表示速度導出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、移動体の移動速度から表示速度を導出する表示速度導出手段を備え、前記表示速度導出手段は、前記移動速度を検出する速度検出手段と、前記移動速度を所定期間記憶し、前記記憶した移動速度から、前記移動体の平均加速度を算出する加速度算出手段と、前記平均加速度に基づいて前記移動体の走行状態を判定する走行状態判定手段と、前記判定された走行状態及び前記所定期間より短い間隔で検出した前記移動速度に基づいて、表示速度を維持するか変更するかを決定する表示速度決定手段と、を備えることを特徴とする、表示速度導出装置を提供する。
【0008】
本発明の第2の態様は、移動体の移動速度から表示速度を導出する表示速度導出ステップを備え、前記表示速度導出ステップは、前記移動速度を検出する速度検出ステップと、前記移動速度を所定期間記憶し、前記記憶した移動速度から、前記移動体の平均加速度を算出する加速度算出ステップと、前記平均加速度に基づいて前記移動体の走行状態を判定する走行状態判定ステップと、前記判定された走行状態及び前記所定期間より短い間隔で検出した前記移動速度に基づいて、表示速度を維持するか変更するかを決定する表示速度決定ステップと、を備えることを特徴とする、表示速度導出方法を提供する。
【0009】
本発明の第3の態様は、移動体の移動速度から表示速度を導出する表示速度導出ステップを備え、前記表示速度導出ステップは、前記移動速度を検出する速度検出ステップと、前記移動速度を所定期間記憶し、前記記憶した移動速度から、前記移動体の平均加速度を算出する加速度算出ステップと、前記平均加速度に基づいて前記移動体の走行状態を判定する走行状態判定ステップと、前記判定された走行状態及び前記所定期間より短い間隔で検出した前記移動速度に基づいて、表示速度を維持するか変更するかを決定する表示速度決定ステップと、をコンピュータに実行させる表示速度導出プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、速度表示の追従性と表示の視認性のバランスを良くし、運転者にとってより違和感の少ない速度表示を行うための表示速度導出装置、速度表示装置、表示速度導出方法及び表示速度導出プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1にかかる速度表示装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態1にかかる走行状態検出テーブルの例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1にかかる表示速度導出テーブルの例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1にかかる表示速度の導出処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態1にかかる略低速の場合における移動体の速度と表示速度との関係の例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態1にかかる微減速から略定速へ変化した場合における移動体の速度と表示速度との関係の例を示す図である。
図7】関連技術にかかる移動体の速度と表示速度との関係の例を示す図である。
図8】関連技術にかかる移動体の速度と表示速度との関係の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明を移動体の一例である車両に搭載した場合の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
【0013】
<発明の実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1にかかる速度表示装置1000の構成を示すブロック図である。速度表示装置1000は、表示速度導出装置100と、速度検出装置102と、表示装置104とを備える。表示速度導出装置100は、仮表示速度算出部10と、走行状態判定部12と、表示速度変化検出部14と、表示速度決定部16とを備える。表示速度導出装置100は、速度検出装置102からの速度200を入力し、表示速度208を導出して表示装置104へ出力する。尚、速度200は、移動体の移動速度の一例である。また、表示速度導出装置100は、表示速度導出手段の一例であり、表示装置104は、表示手段の一例である。
【0014】
速度検出装置102は、車両の速度を検出する。速度検出装置102は、車両の移動に伴って一定の移動距離ごとに出力されるパルスを入力し、パルスにもとづいて算出した速度200を表示速度導出装置100へ出力する。なお、パルス発生の仕組み、及び、パルスから速度を算出する方法は公知の技術によってなされればよいので、ここでは説明を省略する。
【0015】
表示装置104は、LCD(Liquid Crystal Display)やHUD(Head Up Display)と、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)及びメモリ等から構成され、表示速度導出装置100から入力した表示速度208を表示する。表示装置104は、CPU等を用いて表示速度208を有限の桁数、例えば整数値3桁等で表したデジタルメーターを描画し、所定の間隔、例えば30fps(frame per second)でLCDやHUDへ送信して表示する。複数のLED(Light Emitted Diode)、例えば7セグメントLEDによる数値表示でもよく、表示の形態は問わない。また、CPU及びメモリは無くてもよい。なお、デジタルメーターの描画方法や、LCD及びHUDにおける表示方法は公知の技術によってなされればよいので、ここでは説明を省略する。
【0016】
仮表示速度算出部10は、速度検出装置102からの速度200を逐次入力して、仮表示速度202を算出する。仮表示速度算出部10は、速度200に対して表示装置104が表示する速度の表示桁数に合わせて端数処理を行う。例えば、表示装置104の表示桁数が正の整数3桁である場合、速度200を正の無限大方向へ丸めて仮表示速度202とする。仮表示速度算出部10は、算出した仮表示速度202を表示速度変化検出部14と、表示速度決定部16へ出力する。
【0017】
走行状態判定部12は、速度200から走行状態204を判定する走行状態判定手段の一例である。走行状態判定部12は、速度検出装置102からの速度200を逐次入力して、走行状態204を検出する。ここで、走行状態204とは、移動体の速度変化の状態を識別するための情報である。走行状態判定部12は、逐次入力する速度200と、図示しないマイクロコンピュータ等に備わっている計時機能から取得される起動後の経過時間とを関連付けて、リングバッファ等に所定の期間、例えば1秒間記憶する。走行状態判定部12は、記憶した時間と速度200に対し関数近似し、速度の傾き、すなわち加速度を算出する。ここでは、時間をX軸、速度200をY軸として、最小二乗法を用いて一次関数で近似する方法を説明する。最小二乗法を適用すると、加速度a(m/sec)は次のように算出される。
【数1】

・・・(1)
ここで、添え字の「n」は逐次導出した加速度のサンプル番号、Nは最小二乗法を適用させる時間及び速度200のサンプル数、t(sec)、V(m/sec)はそれぞれ時間、速度200である。また、走行状態判定部12は、加速度aから加加速度j(m/sec3)を計算する。加加速度jは次のように算出される。
=(a - an-1)/(1/N) ・・・(2)
【0018】
走行状態判定部12は、算出した加速度及び加加速度とから走行状態を検出するための走行状態検出テーブルを参照して走行状態204を検出する。図2は、本発明の実施の形態1にかかる走行状態検出テーブルの例を示す図である。図示のごとく、加速度条件欄300、加加速度条件欄302、走行状態欄304が含まれる。走行状態判定部12は、次の5つの条件のいずれに該当するかを判定することにより、4種類の走行状態のいずれかを検出する。
【0019】
(条件a)走行状態判定部12は、算出した加速度が閾値1よりも大きく、閾値2よりも小さい場合に、走行状態204が「略定速」と検出する。ここで、例えば、閾値1は-0.5m/secであり、閾値2は0.5m/secとする。略定速の場合、全条件の中で加速度の絶対値が0又は0に近い場合が該当するものとする。
(条件b)走行状態判定部12は、加速度が閾値2以上であれば、走行状態が「加速」と検出する。
(条件c)走行状態判定部12は、加速度が閾値3より大きく閾値1以下である場合に
、加加速度が閾値4する。
(条件d)走行状態判定部12は、加速度が閾値3より大きく閾値1以下である場合に、加加速度が閾値4以下の場合には、走行状態が「減速」と検出する。
(条件e)走行状態判定部12は、加速度が閾値3以下の場合に、走行状態が「減速」と検出する。
【0020】
そして、走行状態判定部12は、検出した走行状態204を表示速度決定部16へ出力する。上記の形態に依らず、走行状態判定部12は、速度200から走行状態を判定するものであればよい。平均速度を算出して速度200と比較して走行状態を判定してもよく、速度200の変化から走行状態を判定してもよい。
【0021】
表示速度変化検出部14は、仮表示速度算出部10から仮表示速度202を、表示速度決定部16から前回の表示速度208を逐次入力して、表示速度変化フラグ206を生成する。具体的には、表示速度変化検出部14は、前回の表示速度208と仮表示速度202とを比較し、仮表示速度202が前回の表示速度208よりも小さい場合、表示速度変化フラグ206を「0」とする。また、表示速度変化検出部14は、仮表示速度202が前回の表示速度208以上である場合、表示速度変化フラグ206を「1」とする。表示速度変化検出部14は、生成した表示速度変化フラグ206を表示速度決定部16へ出力する。
【0022】
表示速度決定部16は、速度検出装置102からの速度200と、仮表示速度算出部10からの仮表示速度202と、走行状態判定部12からの走行状態204と、表示速度変化検出部14からの表示速度変化フラグ206とを逐次入力し、表示速度208を導出する。具体的には、表示速度決定部16は、表示速度変化フラグ206が1であるときは、仮表示速度202を表示速度208として導出する。また、表示速度決定部16は、表示速度変化フラグ206が0であるときは、前回導出した表示速度208と速度200との差分を算出する。そして、表示速度決定部16は、算出した差分と走行状態204から決定される閾値とを比較し、表示速度208を前回導出した表示速度208とするか、仮表示速度202とするか、を選択する。尚、表示速度決定部16は、走行状態204及び速度200に基づいて、表示速度208を維持するか変更するかを決定する表示速度決定手段の一例である。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態1にかかる表示速度導出テーブルの例を示す図である。表示速度導出テーブルは、表示速度決定部16が表示速度208を導出するために参照するテーブルである。図示のごとく、表示速度導出テーブルには、走行状態欄400と、差分閾値欄402とが含まれる。表示速度決定部16は、走行状態204が「略定速」である場合には、前回導出した表示速度208と速度200との差分を比較するための閾値を差分閾値1とする。そして、表示速度決定部16は、差分が差分閾値1未満であれば前回導出した表示速度208を表示速度208として導出する。一方、表示速度決定部16は、差分が差分閾値1以上であれば仮表示速度202を表示速度208として導出する。ここで、差分閾値1は、例えば1.5(km/h)である。これにより、略定速状態においては前回の表示速度208と速度200との差分が1より大きくても前回の表示速度208を今回の表示速度208として導出する、つまり、前回の表示速度208を維持するので、ちらつきを抑制することができる。
【0024】
また、表示速度決定部16は、走行状態204が「加速」である場合には、差分が差分閾値2未満であれば前回導出した表示速度208を表示速度208として導出する。一方、表示速度決定部16は、差分が差分閾値2以上であれば仮表示速度202を表示速度208として導出する。ここで、差分閾値2は、例えば1.4(km/h)である。これにより、前回の表示速度208と速度200との差分が1より大きくても前回の表示速度208を今回の表示速度208として導出するので、加速状態における短期的な速度の減少によるちらつきを抑制することができる。また、加速状態における短期的な速度の減少は略定速状態における速度の減少よりも小さいので、差分閾値2は差分閾値1よりも小さい値が設定される。
【0025】
さらに、表示速度決定部16は、走行状態204が「微減速から略定速」である場合には、差分が差分閾値3未満であれば前回導出した表示速度208を表示速度208として導出する。一方、表示速度決定部16は、差分が差分閾値3以上であれば仮表示速度202を表示速度208として導出する。ここで、差分閾値3は、例えば1.3(km/h)である。これにより、前回の表示速度208と速度200との差分が1より大きくても前回の表示速度208を今回の表示速度208として導出するので、微減速から略定速状態における短期的な速度の減少によるちらつきを抑制することができる。また、微減速状態から略定速状態へ変化する際、微減速状態では速度が減少しており、ちらつきは少なく、略定速状態へ移行したときのちらつきのみ抑制すればよい。そのため、差分閾値3は差分閾値1よりも小さい値が設定される。
【0026】
表示速度決定部16は、以上のように導出した表示速度208を表示装置104へ出力する。
【0027】
言い換えると、走行状態判定部12は、走行状態204に基づいて表示速度決定部16における表示速度変更の判定基準となる閾値を変更する。また、走行状態204が略定速状態である場合の閾値は、走行状態204が他の走行状態である場合の閾値と比べて大きい。
【0028】
尚、表示速度導出装置100は、汎用的なコンピュータ装置で実現可能である。その場合、表示速度導出装置100は、図示しない構成としてCPU等の制御部を備えるものとする。さらに、図示しない構成として内蔵の記憶部は、図示しない構成として本実施の形態に係る処理が実装されたコンピュータプログラムである表示速度導出プログラム等を記憶するものとする。そして、制御部が記憶部に格納された表示速度導出プログラム等を読み込み、実行する。これにより、表示速度導出装置100は、仮表示速度算出部10、走行状態判定部12、表示速度変化検出部14及び表示速度決定部16等として動作する。
【0029】
続いて、以上の構成による表示速度導出装置100の動作を説明する。図4は、本発明の実施の形態1にかかる表示速度の導出処理の流れを説明するためのフローチャートである。まず、仮表示速度算出部10は、速度検出装置102から入力した速度200から仮表示速度202を算出する(S10)。また、走行状態判定部12は、速度検出装置102から入力した速度200から加速度と加加速度を算出し(S12)、走行状態204を導出する(S14)。尚、ステップS10とステップS12及びS14との順序は、逆でも並列でもよい。またステップS12とS14は、速度200の平均速度算出または速度変化量算出などの手段によって走行状態204を導出してもよい。尚、加速度の算出は、加速度センサなどの加速度検出手段を別に備え、この出力を使用することとしてもよい。
【0030】
次に、表示速度変化検出部14は、前回の表示速度208と仮表示速度202とを比較し、表示速度変化フラグ206を生成する。そして、仮表示速度202が前回の表示速度208よりも小さい場合(S16のYes)、表示速度決定部16は走行状態204に応じて差分閾値を選択する(S18)。また、仮表示速度202が前回の表示速度208以上の場合(S16のNo)、表示速度決定部16は仮表示速度202を今回の表示速度208として導出する(S30)。
【0031】
ステップS18において走行状態204が「略定速」であれば(S18の略定速)、表示速度決定部16は差分閾値1を選択する(S20)。また、ステップS18において走行状態204が「加速」であれば(S18の加速)、表示速度決定部16は差分閾値2を選択する(S22)。また、ステップS18において走行状態204が「微減速から略定速」であれば(S18の微減速->略定速)、表示速度決定部16は差分閾値3を選択する(S24)。さらに、ステップS18において走行状態204が「減速」であれば(S18の減速)、表示速度決定部16は仮表示速度202を今回の表示速度208として導出する(S30)。
【0032】
走行状態204が「減速」以外の場合、ステップS20、S22又はS24の後、表示速度決定部16は、前回の表示速度208と今回の速度200との差分と選択された閾値とを比較し(S26)、閾値未満であれば(S26のYes)前回の表示速度を表示速度208として導出する(S28)。一方、閾値以上であれば、表示速度決定部16は、仮表示速度202を表示速度208として導出する(S30)。
【0033】
このように、本実施の形態によれば、仮表示速度を算出して前回の表示速度と比較し、仮表示速度を今回の表示速度として導出した際に値がマイナス方向へ変化するかどうかを検出する。値がマイナス方向へ変化する場合、今回検出された速度と前回の速度表示値の差分が小さければ前回の表示速度を今回の表示速度として導出するようにした。そのため、速度表示がちらつかず、運転者が速度を把握しやすくなるという効果がある。そして、運転者が速度を把握しやすくなるので、安全性が向上する。
【0034】
図5は、本発明の実施の形態1にかかる略低速の場合における移動体の速度と表示速度との関係の例を示す図である。ここでは、t3の期間において移動体の速度が90(km/h)を跨いで変化しているが、表示速度は91(km/h)のままであることを示す。そのため、本発明の実施の形態1により移動体の速度が略定速の場合に表示速度が一定値となっており、運転者にとっての違和感は緩和されている。
【0035】
図6は、本発明の実施の形態1にかかる微減速から略定速へ変化した場合における移動体の速度と表示速度との関係の例を示す図である。図6では、時刻315までは微減速であり、時刻315以降に略定速へ変化していることを示す。ここで、時刻315付近における加加速度が閾値4を超えて変化している。そのため、単純に入力速度を切り上げて表示する場合(二点鎖線)には、表示速度は96(km/h)と95(km/h)とを頻繁に変化してしまう。一方、本発明での表示速度(太字の実線)は、時刻315付近では96(km/h)をしばらく維持している。そのため、表示速度のちらつきが少なく安定した表示を実現できる。すなわち、速度表示の追従性と表示の視認性のバランスが良く、運転者にとってより違和感の少ない速度表示を行うことができる。
【0036】
尚、上記では、微減速から略定速の場合について示したが、略定速から微加速した場合にも同様に実施することは可能であり、その場合、同様の効果を奏する。
【0037】
尚、走行状態が「加速」というのは、一定期間(例えば1秒)の平均加速度が閾値以上である場合であり、その中での細かい減速や、加速から減速への切り替わりが起こり得るものである。そのため、走行速度が表示速度より下がっていても走行状態が「加速」と判断される場合がある。このような際の閾値を定速走行状態よりも小さく設定することで、速度表示の追従性を高めている。
【0038】
本発明の実施形態は上述したように、車両の速度表示計がデジタル表示である場合に、その表示する値にヒステリシスを持たせ、頻繁な表示値の変更による視認性の悪化を防止するものである。具体的には、実際の走行速度が表示値を超えた場合はすぐに表示に反映させ、走行速度が表示値を下回った場合には、その速度差が走行状態により設定される閾値を超えるまでは現在の表示値を維持させる。この技術により、速度が上がった場合の表示の追従性を確保しながら、表示値が頻繁に変更されることを防ぐものである。
【0039】
また、特許文献1との差異としては、次のようなものが挙げられる。まず、速度表示の更新間隔を長くすることや短くするのではなく、速度表示値を変化させるか維持するかを制御している点である。特許文献1にある速度表示の更新間隔の制御では、加速度がほぼ一定の定速走行状態であっても、更新間隔が長くなるだけであり、表示速度の変更自体は行われる。一方、本発明の実施形態では、閾値を超える速度変化または加速度の変化がない限り、表示速度を一定とすることができ、運転者の視認性悪化を防止できる。
【0040】
また、本発明の実施形態では、特許文献1と異なり、パラメータとして加加速度を用いている。加加速度を用いることで、単純な加速度の数値だけではない車両の走行状態を判定することができる。具体的には、減速から略定速走行への移行中であることを検出し、その際に、表示速度を維持できる。
【0041】
さらに、本発明の実施形態では、特許文献1と異なり、加速度及び加加速度によって判定される走行状態に応じて、表示制御のためのヒステリシス閾値を変更するものである。加速度と加加速度によって車両の走行状態を判定し、略定速で走行していると判断できる場合はヒステリシスを持たせた速度表示とすることで、速度表示の頻繁な変更を防ぐことができる。加速時(所定の期間内での平均値が加速と判定された時)や減速から定速走行への移行時には、前述のヒステリシスの閾値を定速走行時より小さく設定することで、実際の走行速度と速度表示のズレを最小限に留めることができる。
【0042】
<その他の発明の実施の形態>
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【0043】
また、上述の映像記録制御装置の任意の処理は、CPUにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0044】
また、コンピュータが上述の実施の形態の機能を実現するプログラムを実行することにより、上述の実施の形態の機能が実現される場合だけでなく、このプログラムが、コンピュータ上で稼動しているOS(Operating System)もしくはアプリケーションソフトウェアと共同して、上述の実施の形態の機能を実現する場合も、本発明の実施の形態に含まれる。さらに、このプログラムの処理の全てもしくは一部がコンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットによって行われて、上述の実施の形態の機能が実現される場合も、本発明の実施の形態に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1000 速度表示装置
100 表示速度導出装置
10 仮表示速度算出部
12 走行状態判定部
14 表示速度変化検出部
16 表示速度決定部
102 速度検出装置
104 表示装置
200 速度
202 仮表示速度
204 走行状態
206 表示速度変化フラグ
208 表示速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8