(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】画像作成装置、画像作成方法および学習済みモデルの作成方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20220405BHJP
G06T 1/40 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A61B6/03 360D
A61B6/03 360J
A61B6/03 360T
G06T1/40
(21)【出願番号】P 2020550389
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038168
(87)【国際公開番号】W WO2020075531
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2018191880
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】押川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 渉
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/029467(WO,A1)
【文献】米国特許第7545965(US,B2)
【文献】特開2018-077786(JP,A)
【文献】特開2007-189589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
G06T 1/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元における画素値データを有する3次元データに基づいて、被検体の特定部分を含む領域の2次元の教師入力画像と、前記教師入力画像と同じ画角における前記特定部分を示す画像または前記特定部分を除く画像である教師出力画像と、を生成する学習画像生成部と、
前記教師入力画像と、前記教師出力画像とに同じノイズを付加するノイズ付加部と、
前記ノイズが付加された前記教師入力画像と、前記ノイズが付加された前記教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、前記特定部分を抽出または除去するための学習モデルを学習する学習部と、
撮影された前記特定部分を含む画像から、学習済みの前記学習モデルを用いて、前記特定部分を抽出または除去した画像を作成する画像作成部と、を備える、画像作成装置。
【請求項2】
前記学習画像生成部は、被検体を撮影したコンピュータ断層撮影画像に基づいて、前記3次元データを取得し、前記教師入力画像および前記教師出力画像を、デジタル再構成シミュレーションにより生成するように構成されている、請求項1に記載の画像作成装置。
【請求項3】
前記ノイズ付加部は、画像を撮影した撮影結果のノイズに基づいて調整したノイズを、前記教師入力画像および前記教師出力画像に付加するように構成されている、請求項1に記載の画像作成装置。
【請求項4】
前記ノイズ付加部は、ガウスノイズを付加するように構成されており、画像を撮影した撮影結果のノイズの標準偏差に対応する標準偏差に調整したガウスノイズを、前記教師入力画像および前記教師出力画像に付加するように構成されている、請求項3に記載の画像作成装置。
【請求項5】
前記特定部分は、骨であり、
前記学習画像生成部は、被検体の骨を含む領域の2次元の前記教師入力画像と、被検体の骨を除く前記教師出力画像と、を生成するように構成されており、
前記学習部は、前記ノイズが付加された前記教師入力画像と、前記ノイズが付加された前記教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、骨を除去するための前記学習モデルを学習するように構成されており、
前記画像作成部は、撮影された骨を含む画像から、学習済みの前記学習モデルを用いて、骨を除去した画像を作成するように構成されている、請求項1に記載の画像作成装置。
【請求項6】
前記特定部分は、血管であり、
前記学習画像生成部は、被検体の血管を含む領域の2次元の前記教師入力画像と、被検体の血管を示す前記教師出力画像と、を生成するように構成されており、
前記学習部は、前記ノイズが付加された前記教師入力画像と、前記ノイズが付加された前記教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、血管を抽出するための前記学習モデルを学習するように構成されており、
前記画像作成部は、撮影された血管を含む画像から、学習済みの前記学習モデルを用いて、血管を抽出して画像を作成するように構成されている、請求項1に記載の画像作成装置。
【請求項7】
3次元における画素値データを有する3次元データに基づいて、被検体の特定部分を含む領域の2次元の教師入力画像を生成し、
前記教師入力画像と同じ画角における前記特定部分を示す画像または前記特定部分を除く画像である教師出力画像を生成し、
前記教師入力画像と、前記教師出力画像とに同じノイズを付加し、
前記ノイズが付加された前記教師入力画像と、前記ノイズが付加された前記教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、前記特定部分を抽出または除去するための学習モデルを学習し、
撮影された前記特定部分を含む画像から、学習済みの前記学習モデルを用いて、前記特定部分を抽出または除去した画像を作成する、画像作成方法。
【請求項8】
3次元における画素値データを有する3次元データに基づいて、被検体の特定部分を含む領域の2次元の教師入力画像を生成し、
前記教師入力画像と同じ画角における前記特定部分を示す画像または前記特定部分を除く画像である教師出力画像を生成し、
前記教師入力画像と、前記教師出力画像とに同じノイズを付加し、
前記ノイズが付加された前記教師入力画像と、前記ノイズが付加された前記教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、前記特定部分を抽出または除去するための学習モデルを学習する、学習済みモデルの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像作成装置、画像作成方法および学習済みモデルの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像作成装置が知られている。たとえば、国際公開第2007/029467号に開示されている。
【0003】
上記国際公開第2007/029467号には、教師入力画像と教師出力画像とに基づいて機械学習を行い、学習結果を用いて、処理対象画像から強調画像を出力する画像処理装置(画像作成装置)が開示されている。この画像処理装置では、多くのパターンを学習するために教師入力画像に複数の画像処理を施して複数の教師入力画像を生成している。たとえば、教師入力画像の画質が粗くなるように処理を行う。この場合、教師入力画像にノイズが含まれることになり、機械学習によりノイズを低減する学習結果を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記国際公開第2007/029467号の画像処理装置では、教師入力画像のノイズを低減する機械学習を行わせるため、ノイズを平滑化するような画像の低周波の領域を抽出するフィルタが学習される。このため、学習結果を用いて画像を作成する場合に、画像が平滑化されて出力画像がボケてしまうという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、機械学習によって学習した学習モデルを用いて画像を作成する際のボケを抑制することが可能な画像作成装置、画像作成方法および学習済みモデルの作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における画像作成装置は、3次元における画素値データを有する3次元データに基づいて、被検体の特定部分を含む領域の2次元の教師入力画像と、教師入力画像と同じ画角における特定部分を示す画像または特定部分を除く画像である教師出力画像と、を生成する学習画像生成部と、教師入力画像と、教師出力画像とに同じノイズを付加するノイズ付加部と、上記ノイズが付加された教師入力画像と、上記ノイズが付加された教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、特定部分を抽出または除去するための学習モデルを学習する学習部と、撮影された特定部分を含む画像から、学習済みの学習モデルを用いて、特定部分を抽出または除去した画像を作成する画像作成部と、を備える。
【0008】
この発明の第1の局面における画像作成装置では、上記のように構成することによって、教師入力画像および教師出力画像の両方に同じノイズが付加されるので、ノイズ成分以外の教師入力画像および教師出力画像の差異である特定部分を、抽出または除去するような画像処理を学習させることができる。これにより、ノイズを平滑化するようなフィルタが学習されないので、作成する画像がボケるのを抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面における画像作成装置において、好ましくは、学習画像生成部は、被検体を撮影したコンピュータ断層撮影画像に基づいて、3次元データを取得し、教師入力画像および教師出力画像を、デジタル再構成シミュレーションにより生成するように構成されている。このように構成すれば、コンピュータ断層撮影画像からデジタル再構成シミュレーションにより複数通りの教師入力画像および教師出力画像のセットを容易に生成することができるので、複数通りのセットを用いて機械学習を行うことができる。これにより、学習モデルの学習精度を向上させることができる。
【0010】
上記第1の局面における画像作成装置において、好ましくは、ノイズ付加部は、画像を撮影した撮影結果のノイズに基づいて調整したノイズを、教師入力画像および教師出力画像に付加するように構成されている。このように構成すれば、実際に撮影される場合のノイズに応じたノイズを教師入力画像および教師出力画像に付加して機械学習させることができるので、撮影された特定部分を含む画像から学習済みの学習モデルを用いて画像を作成する場合に、ノイズが影響するのを効果的に抑制して、特定部分を抽出または除去することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、ノイズ付加部は、ガウスノイズを付加するように構成されており、画像を撮影した撮影結果のノイズの標準偏差に対応する標準偏差に調整したガウスノイズを、教師入力画像および教師出力画像に付加するように構成されている。このように構成すれば、付加するガウスノイズの標準偏差を、実際に撮影する画像のノイズに合わせることができるので、画像の作成にノイズが影響するのをより効果的に抑制して、特定部分を抽出または除去することができる。
【0012】
上記第1の局面における画像作成装置において、好ましくは、特定部分は、骨であり、学習画像生成部は、被検体の骨を含む領域の2次元の教師入力画像と、被検体の骨を除く教師出力画像と、を生成するように構成されており、学習部は、ノイズが付加された教師入力画像と、ノイズが付加された教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、骨を除去するための学習モデルを学習するように構成されており、画像作成部は、撮影された骨を含む画像から、学習済みの学習モデルを用いて、骨を除去した画像を作成するように構成されている。このように構成すれば、ノイズ成分を極力除去しないで、骨のみを除去するような学習モデルを学習させることができるので、学習モデルを用いて画像を作成することによりボケが抑制されたボーンサプレッション画像を出力することができる。
【0013】
上記第1の局面における画像作成装置において、好ましくは、特定部分は、血管であり、学習画像生成部は、被検体の血管を含む領域の2次元の教師入力画像と、被検体の血管を示す教師出力画像と、を生成するように構成されており、学習部は、ノイズが付加された教師入力画像と、ノイズが付加された教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、血管を抽出するための学習モデルを学習するように構成されており、画像作成部は、撮影された血管を含む画像から、学習済みの学習モデルを用いて、血管を抽出して画像を作成するように構成されている。このように構成すれば、ノイズ成分を極力除去しないで、血管を抽出するような学習モデルを学習させることができるので、学習モデルを用いて画像を作成することによりボケが抑制された血管画像を出力することができる。
【0014】
この発明の第2の局面における画像作成方法は、3次元における画素値データを有する3次元データに基づいて、被検体の特定部分を含む領域の2次元の教師入力画像を生成し、教師入力画像と同じ画角における特定部分を示す画像または特定部分を除く画像である教師出力画像を生成し、教師入力画像と、教師出力画像とに同じノイズを付加し、上記ノイズが付加された前記教師入力画像と、上記ノイズが付加された教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、特定部分を抽出または除去するための学習モデルを学習し、撮影された特定部分を含む画像から、学習済みの学習モデルを用いて、特定部分を抽出または除去した画像を作成する。
【0015】
この発明の第2の局面による画像作成方法では、上記のように構成することによって、教師入力画像および教師出力画像の両方に同じノイズが付加されるので、ノイズ成分以外の教師入力画像および教師出力画像の差異である特定部分を、抽出または除去するような画像処理を学習させることができる。これにより、ノイズを平滑化するようなフィルタが学習されないので、作成する画像がボケるのを抑制することができる。
【0016】
この発明の第3の局面における学習済みモデルの作成方法は、3次元における画素値データを有する3次元データに基づいて、被検体の特定部分を含む領域の2次元の教師入力画像を生成し、教師入力画像と同じ画角における特定部分を示す画像または特定部分を除く画像である教師出力画像を生成し、教師入力画像と、教師出力画像とに同じノイズを付加し、上記ノイズが付加された前記教師入力画像と、上記ノイズが付加された教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、特定部分を抽出または除去するための学習モデルを学習する。
【0017】
この発明の第3の局面による学習済みモデルの作成方法では、上記のように構成することによって、教師入力画像および教師出力画像の両方に同じノイズが付加されるので、ノイズ成分以外の教師入力画像および教師出力画像の差異である特定部分を、抽出または除去するような画像処理を学習させることができる。これにより、ノイズを平滑化するようなフィルタが学習されないので、作成する画像がボケるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、機械学習によって学習した学習モデルを用いて画像を作成する際のボケを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態による画像作成装置を示したブロック図である。
【
図2】一実施形態による画像作成装置により画像を作成するための画像を撮影するX線撮影装置を示した図である。
【
図3】一実施形態による学習方法および画像作成方法を説明するための図である。
【
図4】一実施形態による学習画像作成方法を説明するための図である。
【
図5】一実施形態による骨を除去する場合の学習方法を説明するための図である。
【
図6】一実施形態による血管を抽出する場合の学習方法を説明するための図である。
【
図7】一実施形態による学習モデルの学習処理を説明するためのフローチャートである。
【
図8】一実施形態による画像作成処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】一実施形態の変形例による画像作成装置を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1~
図8を参照して、本発明の一実施形態による画像作成装置100の構成、一実施形態の画像作成方法、一実施形態の学習済みモデルの作成方法について説明する。
【0022】
(画像処理装置の構成)
まず、
図1を参照して、第1実施形態による画像作成装置100の構成について説明する。
【0023】
画像作成装置100は、機械学習によって学習済みの学習モデルを用いて、X線撮影した画像の特定部分を抽出または除去した画像を作成するように構成されている。
図1に示すように、画像作成装置100は、学習画像生成部1と、ノイズ付加部2と、学習部3と、画像作成部4とを備えている。また、画像作成装置100は、CT撮影装置10からCT画像を取得可能に構成されている。また、画像作成装置100は、X線撮影装置20からX線撮影画像を取得可能に構成されている。また、画像作成装置100は、表示装置30に、作成した画像を送信可能に構成されている。
【0024】
画像作成装置100は、CT撮影装置10またはX線撮影装置20からデータを取得するため、および、表示装置30にデータを送信するために、通信部を備えている。通信部は、たとえば、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、Display Port、USBポートなどの入出力インターフェースを含んでいる。
【0025】
また、画像作成装置100は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などをハード的な構成として含んでいる。また、画像作成装置100は、記憶部として、HDD(Hard Disk Drive)または不揮発性のメモリなどを含んでいる。
【0026】
X線撮影装置20は、
図2に示すように、天板21と、X線照射部22と、FPD(Flat Panel Detector)23とを含んでいる。天板21は、被検体O(人)を支持するように構成されている。X線照射部22は、被検体Oに向けてX線を照射するように構成されている。FPD23は、X線照射部22から照射され、被検体Oを透過したX線を検出するように構成されている。
【0027】
画像作成装置100の学習画像生成部1は、学習部3により学習モデルを学習するための教師入力画像および教師出力画像を生成するように構成されている。具体的には、学習画像生成部1は、3次元における画素値データを有する3次元データに基づいて、被検体Oの特定部分を含む領域の2次元の教師入力画像と、教師入力画像と同じ画角における特定部分を示す画像または特定部分を除く画像である教師出力画像と、を生成する。詳しくは、学習画像生成部1は、被検体Oを撮影したコンピュータ断層撮影画像(CT画像)に基づいて、3次元データ(3次元のボクセル値を有するデータ)を取得する。そして、学習画像生成部1は、3次元データに基づいて、教師入力画像および教師出力画像を、デジタル再構成シミュレーション(DRR)により生成するように構成されている。
【0028】
また、学習画像生成部1は、1つの3次元データ(CT画像データ)から、複数組の教師入力画像および教師出力画像を生成するように構成されている。たとえば、学習画像生成部1は、1つの3次元データから約10万組程度の教師入力画像および教師出力画像を生成するように構成されている。学習画像生成部1は、デジタル再構成シミュレーションにおける投影角度、投影座標、DRR画像生成のためのパラメータ、コントラスト、エッジ強調などを互いに異ならせて、複数組の教師入力画像および教師出力画像を生成するように構成されている。
【0029】
図4に示すように、学習画像生成部1は、デジタル再構成シミュレーションにより画像を生成する場合に、3次元データ11、X線源12および投影面13を仮想的に配置して、3次元データ11に対して仮想的に投影を行う。そして、学習画像生成部1は、投影面13に投影される画像14を3次元データ11に基づいて計算を行い生成する。
【0030】
学習画像生成部1は、教師入力画像を生成する場合に、特定部分を含む3次元データ11の部分に仮想的にX線源12からX線を照射して、通過するCT値(ボクセル値)を加算して、2次元の画像14の各画素値を計算する。
【0031】
また、学習画像生成部1は、教師出力画像を生成する場合に、特定部分を含む3次元データ11の部分に仮想的にX線源12からX線を照射して、特定部分のCT値(ボクセル値)のみを加算、または、特定部分のCT値(ボクセル値)を除いて加算して、2次元の画像14の各画素値を計算する。たとえば、特定部分を抽出する場合は、特定部分に対応する範囲のCT値(ボクセル値)のみを加算して、2次元の画像14の各画素値が計算される。また、CT上の特定部分を抽出する際には、公知の3Dセグメンテーション技術を用いてもよいし、治療計画装置が作成した治療計画データから特定部分領域を取得してもよい。また、特定部分を除外する場合は、特定部分に対応する範囲のCT値(ボクセル値)を除いて加算して、2次元の画像14の各画素値が計算される。
【0032】
また、学習画像生成部1は、血管などの動く(拍動する)ものを特定部分とする場合、3次元空間に時間も含めた4次元のデータに基づいて、教師入力画像および教師出力画像を生成するように構成されている。これにより、時間に伴って動く対象でも精度よく学習を行うことが可能である。
【0033】
ノイズ付加部2は、学習画像生成部1により生成した教師入力画像および教師出力画像に、ノイズを付加するように構成されている。ここで、本実施形態では、ノイズ付加部2は、教師入力画像と、教師出力画像とに同じノイズを付加するように構成されている。また、ノイズ付加部2は、画像を撮影した撮影結果のノイズに基づいて調整したノイズを、教師入力画像および教師出力画像に付加するように構成されている。つまり、ノイズ付加部2は、X線撮影装置20により、X線撮影を行った場合に含まれるノイズに基づいて調整されたノイズを付加するように構成されている。X線撮影装置20のX線撮影によるノイズは、たとえば、X線照射部22とFPD23との間に均一の物質(X線透過率が略等しいもの(たとえば、空気、水など))を配置してX線撮影して測定される。
【0034】
また、ノイズ付加部2は、ガウスノイズを付加するように構成されている。また、ノイズ付加部2は、画像を撮影した撮影結果のノイズの標準偏差σに対応する標準偏差σに調整したガウスノイズを、教師入力画像および教師出力画像に付加するように構成されている。つまり、ノイズ付加部2は、X線撮影装置20により、X線撮影を行った場合に含まれるノイズに基づいて同等の標準偏差σに調整されたガウスノイズを付加するように構成されている。
【0035】
また、ノイズ付加部2は、同じ条件により生成した教師入力画像および教師出力画像の組に対して、同じノイズを付加するように構成されている。一方、ノイズ付加部2は、生成する教師入力画像および教師出力画像の組毎に、互いに異なるノイズを付加するように構成されている。また、たとえば、ノイズ付加部2は、生成する教師入力画像および教師出力画像の組毎に、ランダムにパラメータを変化させてノイズを付加するように構成されている。
【0036】
また、本実施形態では、学習部3は、
図3に示すように、ノイズが付加された教師入力画像と、ノイズが付加された教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、特定部分を抽出または除去するための学習モデルを学習するように構成されている。学習部3は、AI(人工知能)により、ノイズが付加された教師入力画像と、ノイズが付加された教師出力画像とに基づいて、画像分析を行うように構成されている。また、学習部3は、畳み込み層を用いて学習を行うように構成されている。また、学習部3は、ディープラーニングにより学習を行うように構成されている。また、学習部3は、ニューラルネットワークを用いて学習を行うように構成されている。
【0037】
なお、学習部3による学習モデルの学習は、被検体O毎に行ってもよいし、X線撮影装置20毎に行ってもよい。また、学習を定期的に行ってもよい。また、異なる被検体Oの学習データを統括した学習モデルを作成してもよい。
【0038】
また、本実施形態では、画像作成部4は、
図3に示すように、撮影された特定部分を含む画像から、学習済みの学習モデルを用いて、特定部分を抽出または除去した画像を作成するように構成されている。つまり、画像作成部4は、X線撮影装置20により撮影した特定部分を含む2次元のX線画像から、学習部3により学習した学習モデルを用いて、特定部分を抽出または除去した2次元の画像を作成するように構成されている。また、画像作成部4は、X線撮影装置20により撮影したリアルタイムの2次元画像から、特定部分を抽出または除去した画像を作成するように構成されている。たとえば、画像作成部4は、被検体Oの治療中などに、X線撮影装置20を用いて透視した画像から、骨を除去したり、血管を抽出したり、ステントなどの器具を抽出したりした画像を作成する。また、画像作成部4は、作成した画像を表示装置30に送信する。これにより、特定部分が抽出または除去された画像が表示装置30に表示される。
【0039】
図5を参照して、特定部分が骨である例について説明する。
図5に示すように、学習画像生成部1により、特定部分である被検体Oの骨を含む領域の2次元の教師入力画像が生成される。また、学習画像生成部1により、特定部分である被検体Oの骨を除く2次元の教師出力画像が生成される。そして、ノイズ付加部2により、2次元の教師入力画像および教師出力画像に、同じノイズが付加される。学習部3により、同じノイズが付加された教師入力画像および教師出力画像から機械学習により骨を除去するための学習モデルが学習される。そして、この骨を除去するための学習モデルを用いて、画像作成部4により、X線撮影装置20により撮影された被検体OのX線画像から骨が除去された画像が作成される。
【0040】
図6を参照して、特定部分が血管である例について説明する。
図6に示すように、学習画像生成部1により、特定部分である被検体Oの血管を含む領域の2次元の教師入力画像が生成される。また、学習画像生成部1により、特定部分である被検体Oの血管を抽出した2次元の教師出力画像が生成される。そして、ノイズ付加部2により、2次元の教師入力画像および教師出力画像に、同じノイズが付加される。学習部3により、同じノイズが付加された教師入力画像および教師出力画像から機械学習により血管を抽出するための学習モデルが学習される。そして、この血管を抽出するための学習モデルを用いて、画像作成部4により、X線撮影装置20により撮影された被検体OのX線画像から血管が抽出された画像が作成される。
【0041】
(学習モデル学習処理)
次に、
図7を参照して、画像作成装置100による学習モデル学習処理について説明する。
【0042】
ステップS1において、CT撮影装置10により作成されたCT画像(3次元データ)が取得される。ステップS2において、CT画像から複数組の教師入力画像および教師出力画像が生成される。
【0043】
ステップS3において、生成された同じ組の教師入力画像および教師出力画像に対して同じノイズが付加される。ステップS4において、学習モデルが学習される。これにより、特定部分を抽出または除去するための学習済みモデルが生成される。
【0044】
(画像作成処理)
次に、
図8を参照して、画像作成装置100による画像作成処理について説明する。
【0045】
ステップS11において、X線撮影装置20による被検体Oの撮影結果(2次元のX線画像)が取得される。ステップS12において、取得したX線画像から、学習済みモデルを用いて特定部分が抽出または除去された画像が作成される。
【0046】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態では、上記のように、教師入力画像と、教師出力画像とに同じノイズを付加するノイズ付加部2と、上記ノイズが付加された教師入力画像と、上記ノイズが付加された教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、特定部分を抽出または除去するための学習モデルを学習する学習部3とを設ける。これにより、教師入力画像および教師出力画像の両方に同じノイズが付加されるので、ノイズ成分以外の教師入力画像および教師出力画像の差異である特定部分を、抽出または除去するような画像処理を学習させることができる。これにより、ノイズを平滑化するようなフィルタが学習されないので、作成する画像がボケるのを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、学習画像生成部1を、被検体Oを撮影したコンピュータ断層撮影画像に基づいて、3次元データを取得し、教師入力画像および教師出力画像を、デジタル再構成シミュレーションにより生成するように構成する。これにより、コンピュータ断層撮影画像からデジタル再構成シミュレーションにより複数通りの教師入力画像および教師出力画像のセットを容易に生成することができるので、複数通りのセットを用いて機械学習を行うことができる。これにより、学習モデルの学習精度を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、ノイズ付加部2を、画像を撮影した撮影結果のノイズに基づいて調整したノイズを、教師入力画像および教師出力画像に付加するように構成する。これにより、実際に撮影される場合のノイズに応じたノイズを教師入力画像および教師出力画像に付加して機械学習させることができるので、撮影された特定部分を含む画像から学習済みの学習モデルを用いて画像を作成する場合に、ノイズが影響するのを効果的に抑制して、特定部分を抽出または除去することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、ノイズ付加部2を、ガウスノイズを付加するように構成し、画像を撮影した撮影結果のノイズの標準偏差に対応する標準偏差に調整したガウスノイズを、教師入力画像および教師出力画像に付加するように構成する。これにより、付加するガウスノイズの標準偏差を、実際に撮影する画像のノイズに合わせることができるので、画像の作成にノイズが影響するのをより効果的に抑制して、特定部分を抽出または除去することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、学習画像生成部1を、被検体Oの骨を含む領域の2次元の教師入力画像と、被検体の骨を除く教師出力画像と、を生成するように構成する。また、学習部3を、ノイズが付加された教師入力画像と、ノイズが付加された教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、骨を除去するための学習モデルを学習するように構成する。また、画像作成部4を、撮影された骨を含む画像から、学習済みの学習モデルを用いて、骨を除去した画像を作成するように構成する。これにより、ノイズ成分を極力除去しないで、骨のみを除去するような学習モデルを学習させることができるので、学習モデルを用いて画像を作成することによりボケが抑制されたボーンサプレッション画像を出力することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、学習画像生成部1を、被検体Oの血管を含む領域の2次元の教師入力画像と、被検体の血管を示す教師出力画像と、を生成するように構成する。また、学習部3を、ノイズが付加された教師入力画像と、ノイズが付加された教師出力画像とに基づいて機械学習を行うことにより、血管を抽出するための学習モデルを学習するように構成する。また、画像作成部4を、撮影された血管を含む画像から、学習済みの学習モデルを用いて、血管を抽出して画像を作成するように構成する。これにより、ノイズ成分を極力除去しないで、血管を抽出するような学習モデルを学習させることができるので、学習モデルを用いて画像を作成することによりボケが抑制された血管画像を出力することができる。
【0053】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0054】
たとえば、上記一実施形態では、機械学習を行う装置と、画像作成を行う装置とが同一の装置である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、機械学習を行う装置と、画像作成を行う装置とが別個の装置であってもよい。たとえば、
図9に示すように、機械学習を、学習画像生成部1と、ノイズ付加部2と、学習部3とが設けられた画像学習装置200で行ってもよい。また、画像作成を、画像作成部4が設けられた画像作成装置300で行ってもよい。この場合、画像学習装置200は、画像作成装置300に対して遠隔の場所に配置されていてもよい。また、画像学習装置200は、クラウド上に設けられたサーバコンピュータにより構成されていてもよい。
【0055】
また、上記一実施形態では、X線撮影装置の撮影結果から特定部分を抽出または除去するための学習モデルを学習する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線撮影装置以外の撮影装置の撮影結果から特定部分を抽出または除去するための学習モデルを学習する構成でもよい。また、本発明を、学習時の教師出力画像がラベル画像ではなく、教師入力画像と同形態の画像である場合において、広く一般的に適用してもよい。
【0056】
また、上記一実施形態では、撮影結果から特定部分を抽出または除去した画像を作成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、特定部分を抽出または除去した画像から、さらにノイズを除去した画像を作成してもよい。
【0057】
また、上記一実施形態では、被検体が人である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被検体は、人以外の生体であってもよいし、非生体であってもよい。
【0058】
また、上記一実施形態では、特定部分が血管または骨である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、特定部分は、血管および骨以外の部分であってもよい。
【0059】
また、上記一実施形態では、教師入力画像および教師出力画像に付加されるノイズがガウスノイズである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、教師入力画像および教師出力画像に付加されるノイズは、ガウスノイズ以外のノイズであってもよい。
【0060】
また、上記一実施形態では、説明の便宜上、画像作成装置の処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像作成装置の処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 学習画像生成部
2 ノイズ付加部
3 学習部
4 画像作成部
100 画像作成装置
O 被検体