(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】化学発光硫黄検出器
(51)【国際特許分類】
G01N 21/76 20060101AFI20220405BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20220405BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G01N21/76
G01N30/06 E
G01N30/74 Z
(21)【出願番号】P 2020560728
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2018047046
(87)【国際公開番号】W WO2020129216
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇真
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168599(WO,A1)
【文献】特開2008-82808(JP,A)
【文献】特開2009-300203(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083794(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/048300(WO,A2)
【文献】アジレントテクノロジー株式会社,硫黄化学発光検出器(SCD)簡易取扱説明書 [オンライン],2007年12月,[検索日 2019.02.25] インターネット: <URL:https://www.chem-agilent.com/cimg/SCD.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/75- 21/83
G01N 30/00- 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼管と、該燃焼管を加熱する加熱手段とを備えた加熱炉と、
前端が前記燃焼管の入口側の端部に挿入され、後端からガスクロマトグラフのカラムの出口側の端部が挿入される不活性ガス導入管と、
前記不活性ガス導入管の内部に、不活性ガスを前記後端から前記前端に向かって流れるように供給する不活性ガス供給手段と、
を有することを特徴とする化学発光硫黄検出器。
【請求項2】
前記不活性ガスが窒素であることを特徴とする請求項1に記載の化学発光硫黄検出器。
【請求項3】
前記不活性ガス導入管の内部において、前記カラムの前記出口側の端部の先端が該不活性ガス導入管の前記前端よりも後退した位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の化学発光硫黄検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学発光硫黄検出器(Sulfur Chemiluminescence Detector)に関する。
【背景技術】
【0002】
化学発光硫黄検出器(SCD)は、化学発光を利用して試料中の硫黄化合物を高感度に検出可能な検出器であり、通常、ガスクロマトグラフ(GC)と組み合わせて使用される(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
GCのカラムで分離された試料成分を含むガス(試料ガス)は、SCDに設けられた加熱炉に導入される。加熱炉は、燃焼管と該燃焼管を加熱するヒータとを備えており、試料ガスが前記燃焼管の内部を通過する過程で酸化され、該試料ガス中の硫黄化合物から二酸化硫黄(SO2)が生成される。更に、このSO2が前記燃焼管の内部を通過する過程で還元されてSO2から一酸化硫黄(SO)が生成される。このSOは、加熱炉の後段に設けられた反応セルに導入され、該反応セル内でオゾン(O3)と混合される。その結果、SOとO3の反応によって二酸化硫黄の励起種(SO2
*)が生成される。このSO2
*が化学発光を経て基底状態に戻る際の発光強度が、光検出器によって検出され、該発光強度から前記試料ガス中に含まれる硫黄化合物が定量される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにSCDをGCと組み合わせて使用する際には、GCのカラムの出口端を、SCDの加熱炉内の前記燃焼管の入口に挿入した状態でガスクロマトグラフィーが行われる。このとき、前記燃焼管の入口付近の温度は450℃~500℃程度となる。
【0006】
しかしながら、一般的なGC用カラムの耐熱温度は400℃程度であり、GC用カラムを耐熱温度以上の温度下で使用すると、カラムの固定相(液相)の一部が分解され、その分解生成物(環状シロキサン等)がカラムから溶出してカラムブリードとよばれるバックグラウンドシグナルを生じることが知られている。このカラムブリードはSN比を悪化させてSCDの感度低下を引き起こすため、カラムブリードを低減する有効な手段が求められている。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、カラムブリードを低減して該カラムブリードによる感度低下を抑制することのできるSCDを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る化学発光硫黄検出器(SCD)は、
燃焼管と、該燃焼管を加熱する加熱手段とを備えた加熱炉と、
前端が前記燃焼管の入口側の端部に挿入され、後端からガスクロマトグラフのカラムの出口側の端部が挿入される不活性ガス導入管と、
前記不活性ガス導入管の内部に、不活性ガスを前記後端から前記前端に向かって流れるように供給する不活性ガス供給手段と、
を有することを特徴としている。
【0009】
カラムブリードの原因となる環状シロキサンは、カラムの液相が高温下で酸素に晒された場合に生成される。加熱炉の燃焼管には、カラムから溶出する試料ガスを酸化するための酸化剤として酸素(又は空気)が導入されるが、従来のSCDでは、燃焼管の入口側の端部にガスクロマトグラフのカラム(GCカラム)の出口側の端部が直接挿入されていたため、該GCカラムの液相が、前記燃焼管内部で酸素に晒されて、カラムブリードを生じていた。これに対し、上記本発明に係るSCDでは、燃焼管の入口側の端部に前記不活性ガス導入管の前端が挿入され、GCカラムの出口側の端部は、該不活性ガス導入管の後端から挿入される。不活性ガス導入管には、その後端から前端に向かって不活性ガスが流されるため、GCカラムの出口側の端部の先端を該不活性ガス導入管の内部に位置させることにより、該GCカラムの液相が燃焼管内に存在する酸素に晒されることがない。その結果、本発明に係るSCDではカラムブリードの発生を抑えることができる。
【0010】
なお、本発明における不活性ガスとしては、窒素を用いることが望ましいが、その他の不活性ガス(例えばヘリウム)を用いることも可能である。
【0011】
また、上記本発明に係る化学発光硫黄検出器は、前記不活性ガス導入管の内部において、前記カラムの前記出口側の端部の先端が該不活性ガス導入管の前記前端よりも後退した位置に配置されるものとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上で説明したとおり、上記構成から成る本発明に係る化学発光硫黄検出器によれば、カラムブリードの発生を抑えることができ、これにより、該カラムブリードに起因する感度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態によるSCDを備えたGCシステムの外観を示す正面図。
【
図3】前記GCシステムの内部構成を模式的に示す正面図。
【
図4】前記GCシステムの内部構成を模式的に示す上面図。
【
図5】前記SCDの加熱炉付近の構成を示す断面図。
【
図6】前記加熱炉の入口付近の構成を示す拡大断面図。
【
図7】従来のSCDにおける加熱炉の入口付近の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための構成について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態による化学発光硫黄検出器(SCD)を備えたガスクロマトグラフシステム(GCシステム)の外観を示す正面図である。
図2は、本実施形態によるSCDの要部構成を示す図である。
図3及び
図4は、前記GCシステムの内部構造を示す模式図であり、
図3は正面図、
図4は上面図である。
図5は、前記SCDの加熱炉付近の構成を示す断面図である。
【0015】
GC100は、試料導入部110と、カラム140を収容して加熱するカラムオーブン120と、制御基板(図示略)等が収容された制御基板収容部130とを備えている。カラムオーブン120の前面は開閉可能な扉121となっており、制御基板収容部130の前面には操作パネル131が設けられている。
【0016】
GC100では、試料導入部110においてキャリアガスの流れに試料が導入され、該試料を含むキャリアガスが、カラムオーブン120に収容されたカラム140の入口端に導入される。前記試料は、カラム140を通過する過程で成分毎に分離され、分離された各試料成分を含むガス(以下「試料ガス」とよぶ)が順次カラム140の出口端から溶出する。
【0017】
SCD200は、
図2に示すように、加熱炉210、反応セル231、光学フィルタ232、発光検出部233、オゾン発生器234、オゾンスクラバ235、真空ポンプ236、フローコントローラ237、制御/処理部238、及びこれらを収容する筐体240(
図1参照)を備えている。更に、SCD200は、GC100との境界に配置されて、GC100とSCD200とを連結するためのインターフェース250を備えている。
【0018】
図3及び
図4に示すように、SCD200において加熱炉210は、SCD200の筐体240の上部前側に収容されており、反応セル231及びその他の構成要素(
図3及び
図4では省略)は、筐体240内部の残りの空間(例えば加熱炉210の下方や後方)に収容されている。なお、SCD200の筐体240のうち、加熱炉210が収容されている空間の上面は開閉可能な扉241(
図1参照)となっている。
【0019】
加熱炉210は、
図5に示すように、外部燃焼管211(本発明における「燃焼管」に相当)と、内部燃焼管212と、酸化剤供給管213と、不活性ガス導入管214と、ヒータ215(本発明における「加熱手段」に相当)と、これらを収容するハウジング216とを備えている。以下、
図5に示された各管路、すなわち外部燃焼管211、内部燃焼管212、酸化剤供給管213、不活性ガス導入管214、及び配管251(後述)の、図中の左側に位置する端部を各管路の「左端」とよび、図中右側に位置する端部を各管路の「右端」とよぶ。
【0020】
外部燃焼管211は、酸化剤供給管213の内部に、酸化剤供給管213と同軸に配置されており、不活性ガス導入管214は、その左端(本発明における「前端」)が外部燃焼管211の右端(本発明における「入口側の端部」)に挿入されている。また、内部燃焼管212は、その右端が外部燃焼管211の左端に挿入されている。なお、外部燃焼管211、内部燃焼管212、酸化剤供給管213、及び不活性ガス導入管214は、いずれもアルミナなどのセラミックで構成されている。
【0021】
酸化剤供給管213及び外部燃焼管211の右端には、コネクタ217が取り付けられ、不活性ガス導入管214はこのコネクタ217に挿通されている。なお、酸化剤供給管213及び外部燃焼管211の右端の開口部はコネクタ217によって閉鎖されているが、コネクタ217の左端面には溝が切られており、該溝を介して酸化剤供給管213と外部燃焼管211の間で気体の流通が可能となっている。不活性ガス導入管214の右端(本発明における「後端」)は加熱炉210のハウジング216から突出しており、GC100とSCD200の境界に配置されたインターフェース250の内部に設けられた配管251の左端に接続されている。なお、インターフェース250は、配管251に加えて、これを加熱するためのヒータ252と、配管251及びヒータ252を収容するハウジング253を備えており、SCD200の筐体240の右側壁242に設けられた開口242a及びGC100の筐体の左側壁122に設けられた開口122aに挿通されている。配管251の右端はインターフェース250のハウジング253から突出しており、該右端には第1ジョイント221が取り付けられている。この第1ジョイント221には、不活性ガス導入管214に不活性ガス(ここでは窒素)を供給するための不活性ガス流路264が接続されている。なお、第1ジョイント221には、GC100のカラム140を挿通するための孔(図示略)が設けられている。カラム140の出口側の端部は、この孔から第1ジョイント221に挿通され、インターフェース250内の配管251を経て加熱炉210の内部、具体的には、不活性ガス導入管214の内部に差し込まれる。このとき、カラム140の出口端(本発明における「出口側の端部の先端」)は、不活性ガス導入管214の前端よりも僅かに後退した位置に配置される。
【0022】
一方、酸化剤供給管213、外部燃焼管211、及び内部燃焼管212の左端は、加熱炉210のハウジング216から突出し、更にSCD200の筐体240の左側壁243に設けられた開口243aから外部に突出している。筐体240の外部において、酸化剤供給管213の左端には、第2ジョイント222が取り付けられており、この第2ジョイント222には、酸化剤供給管213に酸化剤(ここでは酸素)を供給するための酸化剤流路265が接続されている。外部燃焼管211は、この第2ジョイント222に挿通されており、その左端には第3ジョイント223が取り付けられている。この第3ジョイント223には、外部燃焼管211に還元剤(ここでは水素)を供給するための還元剤流路266が接続されている。内部燃焼管212は、この第3ジョイント223に挿通されており、その左端は反応セル231に至る移送管270に接続されている。
【0023】
なお、移送管270は可撓性のチューブで構成されており、SCD200の筐体240の外部で折り返して筐体240の左側壁243に設けられた別の開口243b(
図4参照)から再び筐体240の内部に進入し、筐体240内の反応セル231に接続されている。なお、
図5では図示を省略しているが、SCD200の左側壁243の外面には、開口243a、243bを覆う位置に開閉可能なカバー271が設けられている。
【0024】
不活性ガス流路264、酸化剤流路265、及び還元剤流路266は、いずれもフローコントローラ237に接続されており、このフローコントローラ237によって、不活性ガス供給源261、酸化剤供給源262、及び還元剤供給源263からそれぞれ不活性ガス流路264、酸化剤流路265、及び還元剤流路266に供給されるガスの流量が制御される。なお、不活性ガス供給源261、酸化剤供給源262、及び還元剤供給源263は、例えば、それぞれ窒素、酸素、及び水素を充填したガスボンベ等から成るものとすることができる。
【0025】
不活性ガス供給源261からフローコントローラ237を経て不活性ガス流路264に供給された窒素は、第1ジョイント221、及び配管251を経て不活性ガス導入管214の右端(後端)に流入し、不活性ガス導入管214の内部を右端(後端)から左端(前端)に向かって進行する。すなわち、本実施形態における不活性ガス流路264、第1ジョイント221、及び配管251が、本発明における「不活性ガス供給手段」に相当する。なお、本実施例では不活性ガスとして窒素を使用するが、その他の不活性ガス(例えばヘリウム)を使用することも可能である。
【0026】
酸化剤供給源262からフローコントローラ237を経て酸化剤流路265に供給された酸素は、第2ジョイント222を介して酸化剤供給管213の左端に流入し、酸化剤供給管213の内壁と外部燃焼管211の外壁との間の空間を右方に向かって進行する。酸化剤供給管213の右端に達した酸素は、コネクタ217の左端面に形成された溝(上述)から外部燃焼管211の内部に流入し、外部燃焼管211内を左方に向かって進行する。なお、本実施形態では、酸化剤として酸素を使用するものとするが、酸化剤として空気を使用することもできる。
【0027】
還元剤供給源263からフローコントローラ237を経て還元剤流路266に供給された水素は、第3ジョイント223を経て外部燃焼管211の左端に流入し、外部燃焼管211の内壁と内部燃焼管212の外壁との間の空間を右方に向かって進行する。内部燃焼管212の右端付近まで到達した水素は、そこから内部燃焼管212の中に引き込まれ、内部燃焼管212の内部を左方に向かって進行する。
【0028】
GC100のカラム140の出口端から加熱炉210の内部に導入された試料ガスは、外部燃焼管211の右端にて酸素と混合され、外部燃焼管211の内部を左に向かって進行しつつ、高温で酸化分解される。このとき、試料成分が硫黄化合物である場合には、二酸化硫黄が生成される。酸化分解された試料成分を含むガスは、外部燃焼管211の左端付近から導入される水素と共に内部燃焼管212に引き込まれる。前記酸化分解された試料成分に二酸化硫黄が含まれる場合は、ここで二酸化硫黄が水素と反応して一酸化硫黄に還元される。内部燃焼管212を通過したガスは、移送管270を通じて反応セル231に導入される。
【0029】
移送管270から反応セル231に送られたガスは、反応セル231内でオゾンと混合される。このとき、一酸化硫黄とオゾンの反応によって生じる化学発光が光学フィルタ232を介して光電子増倍管等から成る発光検出部233で検出される。なお、前記オゾンは、酸化剤供給源262から酸素流路267を経て供給される酸素を用いてオゾン発生器234で生成され、反応セル231に供給される。このとき、酸素流路267を経てオゾン発生器234に供給される酸素の流量もフローコントローラ237によって制御される。反応セル231の下流には、オゾンスクラバ235と真空ポンプ236が設けられており、真空ポンプ236によって吸引された反応セル231内のガスは、オゾンスクラバ235によってオゾンを除去された上で、外部に排気される。
【0030】
発光検出部233からの検出信号は制御/処理部238に送られ、制御/処理部238にて該検出信号に基づいて試料ガス中の硫黄化合物の濃度が求められる。制御/処理部238は、例えばCPU、ROM、RAM、及び外部周辺機器などと通信するための入出力回路などを備えたマイクロコンピュータなどにより具現化することができ、例えばROMに格納された制御プログラムや制御用パラメータに従った演算処理を、CPUを中心に実行することによって、前記検出信号の処理や、各部の動作制御、具体的には、加熱炉210のヒータ215、インターフェース250のヒータ252、発光検出部233、オゾン発生器234、真空ポンプ236、及びフローコントローラ237等の制御が行われる。
【0031】
なお、外部燃焼管211及び内部燃焼管212の内部での酸化還元反応を促進するため、ヒータ215によって、加熱炉210の内部は、最も高温になる領域で500℃以上(望ましくは700℃~1200℃)に加熱される。また、このとき加熱炉210の入口付近の温度は450℃~500℃程度となる。
【0032】
上記入口付近の温度は、GCのカラム140として一般的に用いられるキャピラリーカラム、すなわち溶融石英管の内壁に固定相(液相)を塗布して成るカラムの耐熱温度(400℃程度)を超えており、このような温度下でカラム140の液相が酸素に晒された場合、該液相の一部が分解され、その分解生成物によってカラムブリードが引き起こされる。
【0033】
本実施形態のSCDにおける不活性ガス導入管214は、このカラムブリードを抑制するために設けられている。本実施形態のSCDにおける加熱炉の入口付近の拡大図を
図6に、従来のSCDにおける加熱炉の入口付近の拡大図を
図7に示す。なお、
図7において、
図6と同一又は対応する構成要素には下3桁が共通する符号を付している。
【0034】
従来のSCDでは、
図7に示すように、外部燃焼管1211の右端(入口側の端部)にカラム1140の出口側の端部が直接挿入されていたため、カラム1140の液相が、酸化剤供給流路1213によって外部燃焼管1211の右端付近に導入される酸化剤(酸素又は空気)に晒され、これによりカラムブリードが引き起こされていた。これに対し、本実施形態に係るSCDでは、
図6に示すように、外部燃焼管211の入口側の端部に不活性ガス導入管214の前端が挿入されており、カラム140の出口端は不活性ガス導入管214の後端から該不活性ガス導入管214の内部に挿入され、該カラム140の先端は、不活性ガス導入管214の前端から僅かに後退した位置に配置されている。不活性ガス導入管214には、上記の通り、その後端から前端に向かって不活性ガス(窒素)が流されているため、カラム140の出口端はこの不活性ガスの流れの中に配置されることとなり、外部燃焼管211内に存在する酸素や空気に晒されることがない。そのため、カラム140が高温下に配置されてもカラムブリードの発生を抑えることができ、SCDの感度低下を抑制することができる。
【0035】
更に、前記不活性ガスの流れによって外部燃焼管211における試料ガスの滞留時間を短くすることができるため、試料ガスに含まれる金属成分等によって外部燃焼管211が汚染されるのを防止する効果も達成される。
【0036】
また、前記不活性ガスとして窒素を用いた場合には、不活性ガス導入管214の前端から外部燃焼管211内に供給される窒素により、外部燃焼管211及び内部燃焼管212の内部における酸化還元反応が促進され、その結果、SCDの感度が安定するという効果も得られる。
【0037】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。例えば、上記実施形態では、横型の加熱炉(すなわち水平方向に延在する燃焼管を内蔵した加熱炉)を備えたSCDに本発明を適用する例を示したが、これに限らず、特許文献1に記載のような縦型の加熱炉(すなわち鉛直方向に延在する燃焼管を内蔵した加熱炉)を備えたSCDにも本発明を同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
100…GC
110…試料導入部
120…カラムオーブン
130…制御基板収容部
140…カラム
200…SCD
210…加熱炉
211…外部燃焼管
212…内部燃焼管
213…酸化剤供給管
214…不活性ガス導入管
215…ヒータ
216…ハウジング
231…反応セル
232…光学フィルタ
233…発光検出部
234…オゾン発生器
235…オゾンスクラバ
236…真空ポンプ
237…フローコントローラ
238…制御/処理部
240…筐体
250…インターフェース
251…配管
252…ヒータ
253…ハウジング