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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】光トランシーバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
G02B6/42
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018025801
(22)【出願日】2018-02-16
(65)【公開番号】P2019144298
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】日野 正登
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-186817(JP,A)
【文献】特開2018-010043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0263453(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/42 - 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストシステムのケージに挿抜される光トランシーバであって、
スライダと、
挿抜方向に沿って前記スライダを移動可能に支持するハウジングと、
回転軸を中心に前記挿抜方向と交差する方向に沿って回動し、前記ケージと係合する係合面、及び前記スライダに係止される係止面を有し、前記ハウジングに支持されるラッチ部材と、を備え、
前記スライダが前記挿抜方向における第1位置にあるときに前記係止面が前記スライダに係止されることにより前記ラッチ部材の回動が規制され、前記スライダが前記挿抜方向における前記第1位置よりも抜出側の第2位置にあるときに前記ラッチ部材の回動の規制が解除され、
前記ラッチ部材は、前記第2位置であるときに前記ハウジングと当接して前記係合面の回動範囲を規制する当接部を更に有し、前記係合面及び前記当接部のそれぞれの面は互いに面一であり、
前記挿抜方向における前記回転軸の前記挿抜方向と交差する方向に沿った軸線の位置が、前記係止面が前記スライダに係止されている前記第1位置のときの前記係合面および前記当接部の位置と同じか当該位置よりも抜出側である、光トランシーバ。
【請求項2】
前記スライダは、前記第1位置において前記当接部との干渉を回避するための凹部を挿入側の端部に有する、請求項に記載の光トランシーバ。
【請求項3】
前記ラッチ部材の前記係止面は、前記スライダに係止されているときに前記挿抜方向に沿って延びており、
前記ハウジングは前記回転軸を有し、前記ラッチ部材は前記回転軸の延在方向に延びる溝を有し、前記回転軸は該溝内に保持され、
前記溝の開口の少なくとも一部は前記係止面に設けられ、前記溝の深さ方向は前記係止面に対して傾斜している、請求項1または請求項2に記載の光トランシーバ。
【請求項4】
前記ハウジングは前記回転軸を有し、前記ラッチ部材は前記回転軸の延在方向に延びる孔を有し、前記回転軸は該孔と嵌合している、請求項1または請求項2に記載の光トランシーバ。
【請求項5】
前記第1位置は、前記係止面と前記スライダの下面が当接されてなり、前記第2位置は、前記係止面と前記スライダの下面が離間されてなる、請求項1~のいずれか1項に記載の光トランシーバ。
【請求項6】
ホストシステムのケージに挿抜される光トランシーバであって、
スライダと、
挿抜方向に沿って前記スライダを移動可能に支持するハウジングと、
回転軸を中心に前記挿抜方向と交差する方向に沿って回動し、前記ケージと係合する係合面、及び前記スライダに係止される係止面を有し、前記ハウジングに支持されるラッチ部材と、を備え、
前記スライダが前記挿抜方向における第1位置にあるときに前記係止面が前記スライダに係止されることにより前記ラッチ部材の回動が規制され、前記スライダが前記挿抜方向における前記第1位置よりも抜出側の第2位置にあるときに前記ラッチ部材の回動の規制が解除され、
前記挿抜方向における前記回転軸の前記挿抜方向と交差する方向に沿った軸線の位置が、前記係止面が前記スライダに係止されているときの前記係合面の位置と同じか当該位置よりも抜出側であり、
前記ラッチ部材の前記係止面は、前記スライダに係止されているときに前記挿抜方向に沿って延びており、
前記ハウジングは前記回転軸を有し、前記ラッチ部材は前記回転軸の延在方向に延びる溝を有し、前記回転軸は該溝内に保持され、
前記溝の開口の少なくとも一部は前記係止面に設けられ、前記溝の深さ方向は前記係止面に対して傾斜している、光トランシーバ。
【請求項7】
ホストシステムのケージに挿抜される光トランシーバであって、
スライダと、
挿抜方向に沿って前記スライダを移動可能に支持するハウジングと、
回転軸を中心に前記挿抜方向と交差する方向に沿って回動し、前記ケージと係合する係合面、及び前記スライダに係止される係止面を有し、前記ハウジングに支持されるラッチ部材と、を備え、
前記スライダが前記挿抜方向における第1位置にあるときに前記係止面が前記スライダに係止されることにより前記ラッチ部材の回動が規制され、前記スライダが前記挿抜方向における前記第1位置よりも抜出側の第2位置にあるときに前記ラッチ部材の回動の規制が解除され、
前記挿抜方向における前記回転軸の前記挿抜方向と交差する方向に沿った軸線の位置が、前記係止面が前記スライダに係止されているときの前記係合面の位置と同じか当該位置よりも抜出側であり、
前記第1位置は、前記係止面と前記スライダの下面が当接されてなり、前記第2位置は、前記係止面と前記スライダの下面が離間されてなる、光トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光トランシーバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光トランシーバに関する技術が記載されている。図19の(a)は、特許文献1に記載されたパッケージ構造を示す側面図である。この光トランシーバは、ホスト機器内のケージに対して挿抜自在に構成されるパッケージ本体と、パッケージ本体に回動自在に支持された嵌合部材102と、嵌合部材102に接して嵌合部材102の回動を規制する規制部材104とを備える。嵌合部材102の回転軸103は、パッケージ本体の或る面105に沿っており、且つ挿抜方向A1に垂直な方向に延びている。嵌合部材102は、パッケージ本体の面105から突き出してケージ106の穴106aに嵌り込むことにより、パッケージ本体の抜出を規制する。規制部材104は、機器外方向に嵌合部材102の回動の規制が外れる位置まで移動可能に設けられている。図19の(b)に示されるように、規制部材104による嵌合部材102の回動の規制が外れてパッケージ本体が機器外方向に移動するとき、嵌合部材102がケージ106の穴106aの縁に押されて回動することにより、嵌合部材102と穴106aとの嵌合が外れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-91640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホストシステムのケージに挿入される光トランシーバにおいては、挿入後の意図しない抜出を防ぐ為にラッチ機構が設けられる。例えば、特許文献1に記載された構成では、ハウジング(パッケージ)の外方へ突出可能な部材をハウジングの側面に設け、この部材とケージの一部とを係合させることによりラッチ機構を実現する。しかしながら、例えば特許文献1に記載された構成のようにケージと係合する部材に回転軸を設け、該部材を回動させることによって該部材の一部をハウジングの外側へ突出させる場合、その構造によっては、該部材の一部とハウジングとの距離が、係合時よりも回動途中においてより長くなる(すなわち、係合時よりも回動時の方が、該部材の一部がハウジングからより大きく離れる)ことがある。この場合、該部材の一部がケージの被係合部分以外の部分と干渉してしまい、ラッチ機構の円滑な動作を妨げ、ひいては光トランシーバをケージから抜出することが困難になるおそれがある。本発明は、ラッチ機構を構成する回動部材とケージの被係合部分以外の部分との干渉を回避し、ラッチ機構の円滑な動作を実現できる光トランシーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、一実施形態に係る光トランシーバは、ホストシステムのケージに挿抜される光トランシーバであって、スライダと、挿抜方向に沿ってスライダを移動可能に支持するハウジングと、回転軸を中心に挿抜方向と交差する方向に沿って回動し、ケージと係合する係合面、及びスライダに係止される係止面を有し、ハウジングに支持されるラッチ部材と、を備える。スライダが挿抜方向における第1位置にあるときに係止面がスライダに係止されることによりラッチ部材の回動が規制され、スライダが挿抜方向における第1位置よりも抜出側の第2位置にあるときにラッチ部材の回動の規制が解除される。挿抜方向における回転軸の挿抜方向と交差する方向に沿った軸線の位置は、係止面がスライダに係止されているときの係合面の位置と同じか当該位置よりも抜出側である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光トランシーバによれば、ラッチ機構を構成する回動部材とケージの被係合部分以外の部分との干渉を回避し、ラッチ機構の円滑な動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係る光トランシーバ挿抜機構1の構成を示す斜視図である。
図2図2は、光トランシーバ2を斜め上方から見た斜視図である。
図3図3は、スライダ22を斜め下方から見た斜視図である。
図4図4は、主部21の底面21dを斜め下方から見た斜視図であって、底面21dとカバー51との間に収納される他の部品を示す。
図5図5は主部21の底面21d上の構造を示す分解斜視図である。
図6図6は、主部21の底面21dの形状を示す斜視図である。
図7図7の(a)~(c)は、カバー51の形状を示す図である。図7の(a)はカバー51を斜め下方から見た斜視図であり、図7の(b)は(a)のVII-VII線に沿った断面図であり、図7の(c)はカバー51の上面図である。
図8図8の(a)~(c)は、ラッチ部材24の外観を示す図である。図8の(a)はラッチ部材24を斜め上方から見た斜視図であり、図8の(b)はラッチ部材24を前方から見た正面図であり、図8の(c)はラッチ部材24を側方(横方向A3)から見た側面図である。
図9図9は、ラッチ部材24の動作を示す断面図である。図9の(a)は、回転軸51dを通り軸線AXに垂直な断面を示す。図9の(b)は、主部24bを通り軸線AXに垂直な断面を示す。
図10図10は、ラッチ部材24の動作を示す断面図である。図10の(a)は、回転軸51dを通り軸線AXに垂直な断面を示す。図10の(b)は、主部24bを通り軸線AXに垂直な断面を示す。
図11図11は、ラッチ部材24の動作を示す断面図である。図11の(a)は、回転軸51dを通り軸線AXに垂直な断面を示す。図11の(b)は、主部24bを通り軸線AXに垂直な断面を示す。
図12図12は、挿抜方向A1における係合面24iと軸線AXとの位置関係を説明するための図である。
図13図13は、平坦面24cがスライダ22に係止されているときの、挿抜方向A1における軸線AX(回動中心)と係合面24iとの位置関係による作用を説明するための図である。
図14図14の(a)及び(b)は、上記実施形態の第1変形例に係るラッチ部材24A,24Bの形状をそれぞれ示す側面図である。
図15図15は、上記実施形態の第2変形例に係るラッチ部材26およびその周辺構造を示す斜視図である。
図16図16の(a)及び(b)は、ラッチ部材26の外観を示す斜視図である。図16の(a)はラッチ部材26を斜め後方から見た斜視図であり、図16の(a)はラッチ部材26を斜め前方から見た斜視図である。
図17図17の(a)及び(b)は、上記実施形態の第3変形例に係るラッチ部材24C,24Dの外観を示す斜視図である。
図18図18の(a)は、上記実施形態の第4変形例に係るラッチ部材24Eの外観を示す側面図である。図18の(b)は、本変形例に適用されるカバー51Bの外観を示す斜視図である。
図19図19の(a)及び(b)は、特許文献1に記載されたパッケージ構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る光トランシーバは、ホストシステムのケージに挿抜される光トランシーバであって、スライダと、挿抜方向に沿ってスライダを移動可能に支持するハウジングと、回転軸を中心に挿抜方向と交差する方向に沿って回動し、ケージと係合する係合面、及びスライダに係止される係止面を有し、ハウジングに支持されるラッチ部材と、を備える。スライダが挿抜方向における第1位置にあるときに係止面がスライダに係止されることによりラッチ部材の回動が規制され、スライダが挿抜方向における第1位置よりも抜出側の第2位置にあるときにラッチ部材の回動の規制が解除される。挿抜方向における回転軸の挿抜方向と交差する方向に沿った軸線の位置は、係止面がスライダに係止されているときの係合面の位置と同じか当該位置よりも抜出側である。
【0009】
この光トランシーバがホストシステムのケージに挿入されると、ラッチ部材の係合面がケージの一部と係合することによって光トランシーバがケージにラッチされる。このとき、スライダが挿抜方向における第1位置にあり、ラッチ部材の係止面がスライダに係止されているので、ラッチ部材の回動が規制されて光トランシーバがケージに安定してラッチされる。そして、この光トランシーバをケージから抜出する際には、まず、作業者の力によってスライダがハウジングに対して相対的に抜出方向に移動する。これにより、スライダは挿抜方向における第2位置に移動し、スライダによる係止面の係止状態が解除されてラッチ部材が回動可能な状態となる。引き続き、ラッチ部材の係合面がケージからの力を受けることによってラッチ部材が回動し、係合面とケージとの係合状態が解除される。
【0010】
また、上記の光トランシーバにおいては、挿抜方向における軸線(すなわちラッチ部材の回動中心)の位置が、係止面がスライダに係止されているときの係合面の位置と同じか当該位置よりも抜出側である。従って、ラッチ部材の係合面とハウジングとの距離は、係合時において最も長くなり、回動途中においては係合時よりも必ず短くなる(すなわち、回動時よりも係合時の方が、係合面がハウジングからより大きく離れる)。故に、上記の光トランシーバによれば、ラッチ部材の係合面がケージの被係合部分以外の部分と干渉することを回避してラッチ機構を円滑に動作させることができ、光トランシーバをケージから容易に抜出することができる。
【0011】
上記の光トランシーバにおいて、ラッチ部材は、ハウジングと当接する当接部を更に有し、係合面がケージと係合しているときのハウジングに対する第1相対的姿勢角と、当接部がハウジングと当接しているときのハウジングに対する第2相対的姿勢角との間で回動してもよい。これにより、スライダが第2位置にあるときのラッチ部材の回動範囲を制限して、スライダが第1位置に再び移動したときのスライダと係止面との接触を確実にすることができる。
【0012】
上記の光トランシーバにおいて、スライダは、第1位置において当接部との干渉を回避するための凹部を挿入側の端部に有してもよい。これにより、ラッチ部材における当接部の配置の自由度を高めることができる。
【0013】
上記の光トランシーバにおいて、ラッチ部材の係止面は、スライダに係止されているときに挿抜方向に沿って延びており、ハウジングは回転軸を有し、ラッチ部材は回転軸の延在方向に延びる溝を有し、回転軸は該溝内に保持され、溝の開口の少なくとも一部は係止面に設けられ、溝の深さ方向は係止面に対して傾斜してもよい。このような構造によれば、ハウジングへのラッチ部材の取り付けを容易にでき、且つ、ハウジングからのラッチ部材の意図しない脱離を抑制することができる。
【0014】
上記の光トランシーバにおいて、ハウジングは回転軸を有し、ラッチ部材は回転軸の延在方向に延びる孔を有し、回転軸は該孔と嵌合してもよい。例えばこのような構造により、ラッチ部材の回動動作を容易に実現することができる。
【0015】
上記の光トランシーバにおいて、第1位置は、係止面とスライダの下面が当接されてなり、第2位置は、係止面とスライダの下面が離間されてなってもよい。
【0016】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光トランシーバの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る光トランシーバ挿抜機構1の構成を示す斜視図である。同図に示すように、光トランシーバ挿抜機構1は、光トランシーバ2と、ホスト装置3に設けられたケージ4とを備える。ホスト装置3は、プリント配線基板31を有しており、プリント配線基板31の実装面31a上には多数の電子部品が実装されている。ケージ4もまた実装面31a上に実装されている。ケージ4は、挿抜方向A1に沿って延びるケージ本体41を有する。挿抜方向A1に垂直なケージ本体41の断面形状は、例えば長方形である。ケージ本体41は、光トランシーバ2を収容する空間を有する。また、ケージ本体41は、挿抜方向A1における該空間の一端に、開口42を有する。開口42は、プリント配線基板31の縁に位置し、プリント配線基板31の外方を向いている。ケージ4は例えば金属製である。
【0018】
光トランシーバ2は、SFP規格に準拠しており、全二重双方向光通信を行う。光トランシーバ2は、挿抜方向A1に沿って、開口42を通じてケージ4のケージ本体41に対し挿抜(挿入及び抜出)される。図2は、光トランシーバ2を斜め上方から見た斜視図である。図2に示すように、光トランシーバ2は、ハウジング20、スライダ22、及びプルタブ23を備える。なお、図2には、挿抜方向A1に加えて、挿抜方向A1と交差(例えば直交)する方向A2、並びに挿抜方向A1及び方向A2と交差(例えば直交)する方向A3が併せて示されている。以下の説明において、方向A2を上下方向、方向A3を横方向と称することがある。
【0019】
ハウジング20は、主部21及びカバー51を含んで構成される。主部21は、挿抜方向A1に沿って延びる細長形状の金属部材である。挿抜方向A1に垂直な主部21の断面形状は、例えば長方形である。主部21は、挿抜方向A1に沿って延びる一対の側面21a,21bと、上面21cと、底面21dとを有する。また、主部21は、光ファイバの先端に設けられた光コネクタと結合する一対の光レセプタクル211,212を、挿抜方向A1における一端に収容している。更に、主部21は、ケージ4の内部に設けられた電気的なコネクタと接続される電気的なコネクタを、挿抜方向A1における他端に収容している。なお、以下の説明において、光トランシーバ2の電気的コネクタ側の一端に向く方向を前方と称し、光レセプタクル211,212側の一端に向く方向を後方と称することがある。カバー51は、底面21dに沿って延在する板状の部材であり、光レセプタクル211,212の直下に位置する底面21dの部分(言い換えると、底面21dの後端寄りの部分)を覆っている。カバー51は、例えば亜鉛ダイカスト製である。
【0020】
スライダ22は、ハウジング20に取り付けられ、ハウジング20に対して相対的に挿抜方向A1に沿って移動する部材である。スライダ22は、主に金属製であり、ハウジング20の後端寄りの位置に設けられている。スライダ22は、ハウジング20の主部21の長方形状の断面における3辺(図2に示される側面21a,21b及び底面21dの各一部)を囲んでおり、板状の部材を折り曲げることにより形成されている。スライダ22のうち底面21d上の部分は、主部21とカバー51との間に配置されている。
【0021】
プルタブ23は、スライダ22と連結された略U字状の部材である。プルタブ23は、ハウジング20及びスライダ22よりも柔らかい材料(例えば可撓性樹脂)によって構成されている。略U字状のプルタブ23とスライダ22とが結合されることによって、環が構成される。作業者は、この環の中に指を差し込むことによって、プルタブ23を抜出方向(すなわち後方)に引っ張ることができる。なお、プルタブ23は、作業者がつまむ等によって抜出方向に引っ張ることができればよく、その形状は略U字状に限られない。プルタブ23が抜出方向に引っ張られると、プルタブ23に加えられた力がスライダ22に伝わり、スライダ22がハウジング20に対して相対的に後方に移動する。なお、プルタブ23を引っ張る力がなくなると、後述する弾性部材の作用によって、スライダ22は自動的に、ハウジング20に対して相対的に前方に移動し、元の位置に戻る。
【0022】
図3は、スライダ22を斜め下方から見た斜視図である。スライダ22は、一対の側板22a,22bと、これらの側板22a,22b同士を繋ぐ底板22cとを有する。側板22a,22bは、それぞれハウジング20の主部21の側面21a,21b上に位置し、これらの側面21a,21bに沿ってそれぞれ延びている。底板22cは、主部21の底面21d上に位置し、底面21dに沿って延びている。前述したように、底板22cは主部21の底面21dとカバー51との間に配置される。底板22cには、一対の開口(孔)22d,22eが形成されている。これらの開口22d,22eは、挿抜方向A1を長軸方向とする長円状に形成されている。開口22dと開口22eとは、横方向A3に沿って並んでおり、横方向A3における底板22cの中心を挟んで両側に位置する。
【0023】
また、スライダ22は、底板22cの挿入側の端縁22fから前方に突き出る凸部22gを更に有する。凸部22gは、挿抜方向A1と方向A3とによって規定される架空平面に沿って延びる平板状の部分である。凸部22gの挿入側の端部22hには、後方に向けて穿設された凹部22iが形成されている。凸部22gの厚さ方向すなわち上下方向A2から見た凹部22iの平面形状は、例えばU字状である。更に、スライダ22は、底板22cの厚さ方向の外方に向けて突出する一対の突起22j,22kを更に有する。突起22j,22kは、底板22cの端部22h付近の一部分が折り曲げられることにより形成されている。
【0024】
図4は、主部21の底面21dを斜め下方から見た斜視図であって、底面21dとカバー51との間に収納される他の部品を示す。また、図5は主部21の底面21d上の構造を示す分解斜視図である。図4及び図5に示されるように、カバー51は、ネジ52,53により主部21の底面21dに固定されている。具体的には、主部21の底面21dには円筒状の突起21e,21fが設けられており、ネジ52,53それぞれは、突起21e,21fそれぞれの内側面に螺合する。また、カバー51は、突起21e,21fが開口22d,22e内に挿入された状態で主部21に取り付けられている。前述したように、開口22d,22eは挿抜方向A1を長軸方向とする長円状を呈しているので、スライダ22は、開口22d,22eにガイドされて、カバー51に対して相対的に挿抜方向A1に移動する。また、開口22d,22eは、スライダ22の移動範囲を制限する機能も有する。
【0025】
図6は、主部21の底面21dの形状を示す斜視図である。底面21dには、前述した突起21e,21fが後端部付近に設けられているほか、凹部21gが形成されている。凹部21gは、突起21e,21fに対して挿抜方向A1の前方に形成され、略四角形状といった平面形状を有する。凹部21gの底面は平坦である。凹部21g内には、曲面21hが形成されている。曲面21hは、円筒内面の一部分といった形状を呈しており、挿抜方向A1及び上下方向A2によって規定される断面において、主部21側に凹む円弧状に湾曲している。曲面21hは、挿抜方向A1の後方ないし斜め後方を向くように、凹部21gの前縁付近に設けられている。
【0026】
図7の(a)~(c)は、カバー51の形状を示す図である。図7の(a)はカバー51を斜め下方から見た斜視図であり、図7の(b)は(a)のVII-VII線に沿った断面図であり、図7の(c)はカバー51の上面図である。これらの図に示されるように、カバー51は、略四角形状といった平面形状を有する板状の主部51fと、主部51fに形成された一対の孔51a,51bと、略四角形状といった平面形状を有する板状の突出部51cと、一対の回転軸51d,51eとを有する。主部51fの上面(主部21と対向する面)は凹んでおり、後述する弾性部材25(図4及び図5を参照)を収容可能としている。一対の孔51a,51bそれぞれは、図4及び図5に示されたネジ52,53それぞれを挿通させる孔であって、底面21dの突起21e,21fそれぞれと対向する位置に設けられている。突出部51cは、主部51fの前縁から前方に突出するとともに、カバー51の厚さ方向(上下方向A2)において主部21側に突出している。突出部51cは、前述した底面21dの凹部21gと嵌合し、凹部21gによって横方向A3の移動を規制され、挿抜方向A1にガイドされる。突出部51cの上面(主部21と対向する面)は凹んでおり、後述するラッチ部材24(図4及び図5を参照)を収容可能としている。回転軸51d,51eは、突出部51cの略中央付近に形成された円柱状の突起(凸部)である。回転軸51d,51eは、突出部51cに形成された開口の内側面から、横方向A3に沿って互いに対向する向きに突出している。回転軸51d,51eの円柱の中心軸線は、横方向A3に沿って延びており互いに一致している。このような形状の回転軸51d,51eは、モールド成型により容易に形成可能である。
【0027】
再び図4及び図5を参照する。本実施形態の光トランシーバ2は、ラッチ部材24及び弾性部材25を更に備える。弾性部材25は、主部21の底面21d上に設けられ、底面21dとカバー51との間に配置されている。弾性部材25は、底面21dから突出する突起21e,21fに巻き付けられて移動を規制されている。弾性部材25は、スライダ22に設けられた突起22j,22kを前方に付勢している。本実施形態の弾性部材25は、所謂ねじりばね(トーションばね)といった形状を有する。
【0028】
ラッチ部材24は、本実施形態におけるラッチ機構であり、主部21の底面21d上に設けられ、底面21dとカバー51との間に配置されている。ラッチ部材24は、横方向A3に沿って延在する回転軸51d,51eを中心に挿抜方向A1と交差する方向に沿って回動可能な状態で、カバー51に支持される。図8の(a)~(c)は、ラッチ部材24の外観を示す図である。図8の(a)はラッチ部材24を斜め上方から見た斜視図であり、図8の(b)はラッチ部材24を前方から見た正面図であり、図8の(c)はラッチ部材24を側方(横方向A3)から見た側面図である。これらの図に示されるように、ラッチ部材24は、細長い棒状の軸部24aと、半円柱状の主部24bとを有する。
【0029】
軸部24aは、横方向A3を長手方向とし、横方向A3に沿った軸線AXに沿って延びている。軸部24aは、横方向A3に沿って延びる丸棒の側面が、互いに対向する一対の平坦面24c,24dによって切り欠かれた形状を有する。一対の平坦面24c,24dは互いに平行であり、横方向A3に沿って延びている。更に、軸部24aは、横方向A3における両端部に溝24e,24fを有する。溝24eは、横方向A3における軸部24aの一端面24gまで延在しており、一端面24gに開口を有する。同様に、溝24fは、横方向A3における軸部24aの他端面24hまで延在しており、他端面24hに開口を有する。溝24e,24fそれぞれは、カバー51の回転軸51d,51eの延在方向に延びており、回転軸51d,51eそれぞれと嵌合し、回転軸51d,51eそれぞれを摺動可能に保持する。また、図8の(c)に示されるように、溝24e,24fの深さ方向A4は、平坦面24c,24dに対して傾斜している。すなわち、深さ方向A4と平坦面24c,24dとの成す角(言い換えると、挿抜方向A1と深さ方向A4との成す角)θは、0°以上90°以下である。成す角θは、好ましくは30°以上60°以下である。これは、例えば成す角θが0°もしくは90°に近い場合には、平坦面24c,24dと溝24e,24fとの壁厚が薄くなるが、例えば成す角θが30°以上60°以下である場合には、成す角θが0°もしくは90°に近い場合よりも、平坦面24c,24dと溝24e,24fとの壁厚を厚くでき、強度が向上するからである。一実施例では、成す角θは45°である。そして、溝24e,24fの開口の少なくとも一部は、平坦面24cに設けられている。本実施形態では、溝24e,24fの開口の一部が平坦面24cに設けられ、残部が平坦面24cと平坦面24dとの間の円柱面に設けられている。挿抜方向A1及び上下方向A2に沿った断面における溝24e,24fの底面形状は半円状である。該半円の中心は軸線AXであり、ラッチ部材24の回転軸(回動中心)となる。
【0030】
主部24bは、横方向A3に沿った軸線AXを中心軸線とする円柱が半分に分割された形状(Dカットカム形状)を有する。主部24bは、軸線AX周りの第1周方向位置に設けられた係合面24iと、軸線AX周りの第2周方向位置に設けられた当接部24jと、半円柱面24kとを有する。一例では、係合面24i及び当接部24jは互いに面一の平坦面であり、軸線AXに対して互いに180°異なる周方向位置に設けられている。係合面24iは、図1に示されたケージ本体41に光トランシーバ2が挿入された際にケージ本体41の一部と係合(ラッチ)することにより、光トランシーバ2の意図しない抜出を防ぐ。ケージ本体41から光トランシーバ2を抜出する際には、ラッチ部材24が軸線AXまわりに回動することによってこの係合状態が解除される。当接部24jは、ラッチ部材24が軸線AXまわりに回動した際に、ハウジング20の一部と当接することによってラッチ部材24の回動範囲を規制する。当接部24jは、例えばカバー51の一部に当接する。
【0031】
図9図11は、ラッチ部材24の動作を示す断面図である。図9図11の(a)は、回転軸51dを通り軸線AXに垂直な断面を示す。図9図11の(b)は、主部24bを通り軸線AXに垂直な断面を示す。図9の(b)に示されるように、ラッチ部材24は、底面21dに形成された凹部21gに収容され、主部24bの半円柱面24kが凹部21gの曲面21hに摺動可能に当接する。これにより、ラッチ部材24の回動動作が曲面21hによってガイドされるとともに、上下方向A2及び前方へのラッチ部材24の軸ズレを防止することができる。
【0032】
図9の(a)に示されるように、通常状態においては、ラッチ部材24の平坦面24cが挿抜方向A1に沿って延びており、ラッチ部材24と底面21dとの間に挿入されたスライダ22の凸部22gの板面が、ラッチ部材24の平坦面24cに接することによりラッチ部材24を係止する。すなわち、平坦面24cは本実施形態における係止面である。これにより、ラッチ部材24の回動が規制される。このときの挿抜方向A1におけるスライダ22の位置を第1位置と称する。すなわち、第1位置とは、係止面である平坦面24cとスライダ22の下面とが互いに当接されてなる状態をいう。また、このときのハウジング20に対するラッチ部材24の軸線AXまわりの相対的な角度を第1相対的姿勢角と称する。この状態において、ラッチ部材24の係合面24iはハウジング20の外側へ突出している。ケージ本体41に光トランシーバ2が挿入される際、ケージ本体41に設けられたラッチ機構の一部である板状の被係合部43が撓んでラッチ部材24を避ける。そして、図9の(a)及び(b)に示されるように、被係合部43に形成された孔43aに係合面24iが達すると、被係合部43の撓みが解消して孔43aと係合面24iとが互いに係合(ラッチ)する。また、このとき、図9の(b)に示されるように、スライダ22が凹部22i(図3を参照)を有することによって、スライダ22と当接部24jとの干渉が回避される。
【0033】
ケージ本体41から光トランシーバ2が抜出される際には、まず、図2に示されたプルタブ23が作業者によって抜出方向(すなわち挿抜方向A1における後方)に引かれる。このプルタブ23に連動して、図10の(a)及び(b)に示されるように、スライダ22も抜出方向に移動する。このときの挿抜方向A1におけるスライダ22の位置を第2位置と称する。すなわち、第2位置とは、係止面である平坦面24cとスライダ22の下面とが互いに離間されてなる状態をいう。第2位置は、第1位置よりも抜出側(後方)にある。これにより、凸部22gの板面による平坦面24cの係止状態が解除され、ラッチ部材24が軸線AXまわりに回動可能となる。なお、このとき凸部22gの縁部が平坦面24cの一部に接していてもよく、その接触部分が挿抜方向A1において軸線AXよりも後方であれば、以降のラッチ部材24の回動を妨げず、また逆方向の回動を防ぐことができる。
【0034】
引き続きプルタブ23が抜出方向に引かれると、ハウジング20がケージ本体41に対して相対的に後方に移動する。これにより、軸線AXが被係合部43に対して相対的に後方に移動するので、係合面24iが孔43aの内側面に押されてラッチ部材24が回動する(図11の(a)及び(b))。これにより、係合面24iと孔43aとの係合(ラッチ)状態が解除されて、光トランシーバ2がケージ本体41から抜出可能となる。当接部24jがカバー51の突出部51cの前端と当接することにより、ラッチ部材24の回動は止まる。このときのハウジング20に対するラッチ部材24の軸線AXまわりの相対的な角度を第2相対的姿勢角と称する。すなわち、本実施形態のラッチ部材24は、前述した第1相対的姿勢角と第2相対的姿勢角との間で回動可能となっている。なお、図4及び図5示された弾性部材25がスライダ22を前方へ付勢しているので、プルタブ23を引く力がなくなると、スライダ22は自動的に前方に移動して元の位置(第1位置)に戻る。このとき、スライダ22の凸部22gの前端が平坦面24cを押し込むので、ラッチ部材24が回動して再び第1相対的姿勢角に戻ったのち、凸部22gが平坦面24cを再び係止する。
【0035】
図12は、挿抜方向A1における係合面24iと軸線AXとの位置関係を説明するための図である。平坦面24cがスライダ22に係止されているときの挿抜方向A1における軸線AXの位置は、図9の(a)に示されるように同方向における係合面24iの位置と同じであってもよく、或いは、図9の(b)に示されるように同方向における係合面24iの位置よりも抜出側(すなわち後方)であってもよい。
【0036】
図13は、平坦面24cがスライダ22に係止されているときの、挿抜方向A1における軸線AX(回動中心)と係合面24iとの位置関係による作用を説明するための図である。同図において、軸線AX1は挿抜方向A1において係合面24iよりも抜出側(後方)に位置し、軸線AX2は挿抜方向A1において係合面24iと同じ位置にあり、軸線AX3は挿抜方向A1において係合面24iよりも挿入側(前方)に位置する。なお、軸線AX1,AX2は本実施形態の軸線AXであり、軸線AX3は前述した特許文献1に係る光トランシーバ(図19を参照)の回転軸103の中心軸線である。また、図中の円弧状の矢印D1,D2及びD3は、係合面24iの最外縁の軌跡である。矢印D1は軸線AX1に対応し、矢印D2は軸線AX2に対応し、矢印D3は軸線AX3に対応している。
【0037】
軸線AX3のように、軸線AXが挿抜方向A1において係合面24iよりも挿入側(前方)に位置する場合、軌跡D3が外側に膨らみ、係合面24iの最外縁とハウジング20との距離が係合時よりも回動途中においてより長くなる(すなわち、係合時よりも回動時の方が、係合面24iの最外縁がハウジング20からより大きく離れる)。この場合、係合面24iがケージ本体41の被係合部43以外の部分と干渉してしまい、ラッチ機構の円滑な動作を妨げ、ひいては光トランシーバ2をケージ4から抜出することが困難になる虞がある。
【0038】
これに対し、本実施形態の光トランシーバ2においては、軸線AX1若しくはAX2のように、挿抜方向A1における軸線AXの位置が、係合面24iの位置と同じか当該位置よりも抜出側である。従って、係合面24iの最外縁とハウジング20との距離は、係合時において最も長くなり、回動途中においては係合時よりも必ず短くなる(すなわち、回動時よりも係合時の方が、係合面24iの最外縁がハウジング20からより大きく離れる)。故に、本実施形態の光トランシーバ2によれば、ラッチ部材24の係合面24iがケージ本体41の被係合部43以外の部分と干渉することを回避してラッチ機構を円滑に動作させることができ、光トランシーバ2をケージ本体41から容易に抜出することができる。
【0039】
なお、軸線AX1のように、挿抜方向A1における軸線AXの位置が係合面24iの位置よりも抜出側である場合、ハウジング20側への軌跡が軸線AX2よりも大きくなり、ハウジング20側により大きなスペースが必要となる。従って、挿抜方向A1における軸線AXの位置は、係合面24iの位置と同じであることがより好ましい。
【0040】
また、本実施形態のように、ラッチ部材24は、軸線AX周りの第2周方向位置に設けられてハウジング20と当接する当接部24jを更に有し、係合面24iがケージ4の被係合部43と係合しているときのハウジング20に対する第1相対的姿勢角と、当接部24jがハウジング20と当接しているときのハウジング20に対する第2相対的姿勢角との間で回動してもよい。これにより、スライダ22が第2位置(図10及び図11を参照)にあるときのラッチ部材24の回動範囲を制限して、スライダ22が第1位置(図9を参照)に再び移動したときのスライダ22と平坦面24cとの接触を確実にすることができる。
【0041】
また、本実施形態のように、スライダ22は、第1位置(図9を参照)において当接部24jとの干渉を回避するための凹部22iを挿入側の端部に有してもよい。これにより、ラッチ部材24における当接部24jの配置の自由度を高め、例えば軸線AXに対して係合面24iとは反対側の周方向位置に当接部24jを配置することが可能になる。
【0042】
また、本実施形態のように、ラッチ部材24の平坦面24cは、スライダ22に係止されているときに挿抜方向A1に沿って延びており、ハウジング20は回転軸51d,51eを有し、ラッチ部材24は回転軸51d,51eの延在方向に延びる溝24e,24fを有し、回転軸51d,51eは該溝24e,24f内に保持され、溝24e,24fの開口の少なくとも一部は平坦面24cに設けられ、溝24e,24fの深さ方向A4は平坦面24cに対して傾斜してもよい。このような構造によれば、ハウジング20へのラッチ部材24の取り付けを容易にでき、且つ、ハウジング20からのラッチ部材24の意図しない脱離を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態のように、ラッチ部材24の溝24e,24fの深さ方向A4は、平坦面24cに対して傾斜してもよい。これにより、溝24e,24fと平坦面24cとを隔てる部分を肉厚にすることができ、ラッチ部材24の機械的強度を高めることができる。
【0044】
(第1変形例)
図14の(a)及び(b)は、上記実施形態の第1変形例に係るラッチ部材24A,24Bの形状をそれぞれ示す側面図である。これらのラッチ部材24A,24Bと上記実施形態のラッチ部材24との相違点は、回転軸51d,51eを保持する溝24e,24fの深さ方向である。図14の(a)に示されるラッチ部材24Aでは、溝24e,24fの深さ方向A5が、平坦面24cに対して垂直であり、係合面24iの面に対して平行である。言い換えると、ラッチ部材24Aが第1相対的姿勢角(図9及び図10を参照)であるときに、深さ方向A5は挿抜方向A1に対して直交している。また、図14の(b)に示されるラッチ部材24Bでは、溝24e,24fの深さ方向A6が、平坦面24cに対して平行であり、係合面24iの面に対して垂直である。言い換えると、ラッチ部材24Bが第1相対的姿勢角(図9及び図10を参照)であるときに、深さ方向A6は挿抜方向A1に対して平行である。溝24e,24fの深さ方向は上記実施形態の方向A4に限られるものではなく、例えば本変形例の方向A5若しくは方向A6であってもよい。
【0045】
(第2変形例)
図15は、上記実施形態の第2変形例に係るラッチ部材26およびその周辺構造を示す斜視図である。また、図16の(a)及び(b)は、ラッチ部材26の外観を示す斜視図である。図16の(a)はラッチ部材26を斜め後方から見た斜視図であり、図16の(a)はラッチ部材26を斜め前方から見た斜視図である。図16に示されるように、本変形例のラッチ部材26は、細長い棒状の軸部26aと、主部26bとを有する。軸部26aは、横方向A3を長手方向とし、横方向A3に沿った軸線AXに沿って延びている。軸部26aは、横方向A3に沿って延びる丸棒の側面が、互いに交差する一対の平坦面26c,26dによって切り欠かれた形状を有する。一対の平坦面26c,26dは互いに垂直であり、横方向A3に沿って延びている。更に、軸部26aは、横方向A3における両端部から突出する円柱状の回転軸26e,26fを有する。回転軸26e,26fの中心軸線は横方向A3に沿って延びており、軸線AXと一致している。また、図15に示されるように、カバー51Aの突出部51cには、回転軸51d,51e(図7参照)に代えて、溝51g,51hが設けられている。溝51g,51hそれぞれは、回転軸26e,26fの延在方向に延びており、回転軸26e,26fそれぞれを保持して、回転軸26e,26fそれぞれと嵌合する。これにより、ラッチ部材26は軸線AXを回動中心として回動可能に支持される。なお、カバー51Aの形状は、回転軸51d,51e(図7参照)に代えて溝51g,51hを有する他は、上記実施形態のカバー51と同様である。
【0046】
主部26bは、軸線AXと交差する方向に延びる部分であって、横方向A3における軸部26aの中央部分に設けられている。主部26bは、軸線AX周りの第1周方向位置に設けられた係合面26iを有する。一例では、係合面26iは横方向A3に沿った平坦面である。係合面26iは、図1に示されたケージ本体41に光トランシーバ2が挿入された際に、被係合部43の孔43a(図9図11を参照)と係合する。また、ケージ本体41から光トランシーバ2を抜出する際には、ラッチ部材26が軸線AXまわりに回動することによってこの係合状態が解除される。
【0047】
平坦面26cは、本変形例における係止面である。平坦面26cは、係合面26iが被係合部43の孔43aと係合している状態において、図15に示されるようにスライダ22の凸部22gと接触し、凸部22gによって係止される。これにより、ラッチ部材26の回動が規制される。ケージ本体41から光トランシーバ2が抜出される際には、スライダ22がラッチ部材26に対して相対的に後方に移動し、凸部22gが平坦面26cから離れて係止状態が解除される。
【0048】
ラッチ部材の形状は上記実施形態のラッチ部材24のような形状に限られず、例えば本変形例のラッチ部材26のような形状であってもよい。その場合であっても、挿抜方向A1における軸線AXの位置が同方向における係合面26iの位置と同じかそれよりも後方に位置していれば、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0049】
(第3変形例)
図17の(a)及び(b)は、上記実施形態の第3変形例に係るラッチ部材24C,24Dの外観を示す斜視図である。これらの図は、それぞれラッチ部材24C,24Dを斜め前方から見た様子を示している。ラッチ部材24C,24Dは、主部24bと、軸部24pとを有する。主部24bは、上記実施形態と同様に半円柱状を呈しており、係合面24i、当接部24j、及び半円柱面24kを有する。軸部24pは、上記実施形態の軸部24aに代えて設けられ、横方向A3を長手方向とし、横方向A3に沿った軸線AXに沿って延びている。ラッチ部材24Cにおいては、軸部24pは横方向A3における主部24bの両側に設けられ、ラッチ部材24Dにおいては、軸部24pは横方向A3における主部24bの片側のみに設けられている。軸部24pは、横方向A3に沿って延びる円筒の側面が、互いに対向する一対の平坦面24c,24dによって切り欠かれた形状を有する。一対の平坦面24c,24dは互いに平行であり、横方向A3に沿って延びている。円筒状の軸部24pの内側には、横方向A3に沿って延びる孔24tが設けられている。孔24tは、軸部24p及び主部24bを貫通する。この孔24tには、横方向A3に沿った軸線AXを中心線とする丸棒状の回転軸(不図示)が挿入・嵌合される。孔24tは、この回転軸を摺動可能に保持する。なお、本変形例ではカバー51の回転軸がラッチ部材24C,24Dを横方向A3に貫通する。組み立て容易性のため、カバー51の回転軸は片持ち状に突出部51cに支持される。ラッチ部材24Dの形状であれば、ラッチ部材24Cの形状と比較してカバー51の回転軸を短くすることができ、回転軸の機械的強度を高めることができる。なお、係合面24i、当接部24j、及び平坦面24cの機能は上記実施形態と同様である。
【0050】
ラッチ部材の形状は上記実施形態のラッチ部材24のような形状に限られず、例えば本変形例のラッチ部材24C若しくは24Dのような形状であってもよい。その場合であっても、挿抜方向A1における軸線AXの位置が同方向における係合面26iの位置と同じかそれよりも後方に位置していれば、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0051】
(第4変形例)
図18の(a)は、上記実施形態の第4変形例に係るラッチ部材24Eの外観を示す側面図である。本変形例のラッチ部材24Eは、主部24bと、軸部24sとを有する。主部24bは、上記実施形態と同様に半円柱状を呈しており、係合面24i、当接部24j、及び半円柱面24kを有する。軸部24sは、上記実施形態の軸部24aに代えて設けられ、横方向A3を長手方向とし、横方向A3に沿った軸線AXに沿って延びている。軸部24sは、横方向A3に沿って延びており、互いに対向する一対の平坦面24c,24dを有する。一対の平坦面24c,24dは互いに平行であり、横方向A3に沿って延びている。係合面24i、当接部24j、及び平坦面24cの機能は上記実施形態と同様である。また、ラッチ部材24Eは、軸部24sから主部24bにわたる後端面に形成された溝24rを更に有する。溝24rは、横方向A3に沿って延びており、その延在方向に垂直な断面の形状は半円形である。該半円形の中心は軸線AXと一致する。
【0052】
図18の(b)は、本変形例に適用されるカバー51Bの外観を示す斜視図である。カバー51Bは、上記実施形態の回転軸51d,51e(図7を参照)に代えて、半円柱部51iを有する。半円柱部51iは、横方向A3に沿って延びており、その中心軸線は軸線AXと一致する。半円柱部51iは、ラッチ部材24Eの溝24rと摺動可能に嵌合する。回転軸は全周が曲面である必要は無く、本変形例のように最低限の曲面のみをカバー51Bに形成してもよい。その場合であっても、挿抜方向A1における軸線AXの位置が同方向における係合面26iの位置と同じかそれよりも後方に位置していれば、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0053】
本発明による光トランシーバは、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では軸線AXに関して係合面24iとは反対側に当接部24jが設けられているが、当接部24jはラッチ部材24が回動した際にハウジング20のいずれか一部に当接すればよく、軸線AXの周方向における当接部24jの位置は任意である。また、上記実施形態では係合面24iの形状は平坦面とされているが、係合面24iの形状はこれに限らず様々な形状を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…光トランシーバ挿抜機構、2…光トランシーバ、3…ホスト装置、4…ケージ、20…ハウジング、21…主部、21a,21b…側面、21c…上面、21d…底面、21e,21f…突起、21g…凹部、21h…曲面、22…スライダ、22a,22b…側板、22c…底板、22d,22e…開口、22f…端縁、22g…凸部、22h…端部、22i…凹部、22j,22k…突起、23…プルタブ、24,24A,24B,24C,24D,24E…ラッチ部材、24a…軸部、24b…主部、24c,24d…平坦面、24e,24f…溝、24g…一端面、24h…他端面、24i…係合面、24j…当接部、24k…半円柱面、24p…軸部、24r…溝、24s…軸部、24t…孔、25…弾性部材、26…ラッチ部材、26a…軸部、26b…主部、26c,26d…平坦面、26e,26f…回転軸、26i…係合面、31…プリント配線基板、31a…実装面、41…ケージ本体、42…開口、43…被係合部、43a…孔、51,51A,51B…カバー、51a,51b…孔、51c…突出部、51d,51e…回転軸、51f…主部、51g,51h…溝、51i…半円柱部、52,53…ネジ、211,212…光レセプタクル、A1…挿抜方向、A2…上下方向、A3…横方向、A4,A5,A6…深さ方向、AX,AX1,AX2,AX3…軸線。
図1
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