(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】OCTシステム及びOCT方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20220405BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 630
(21)【出願番号】P 2020564698
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2019063252
(87)【国際公開番号】W WO2019224268
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-12-28
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520446894
【氏名又は名称】ハーグ―ストレイト アーゲー
【氏名又は名称原語表記】HAAG-STREIT AG
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】スタルダー, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ロブレド, ルチオ
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0367134(US,A1)
【文献】特表2013-525035(JP,A)
【文献】特表2007-523386(JP,A)
【文献】特表2003-515151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0038885(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0126048(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0196459(US,A1)
【文献】特開2016-129663(JP,A)
【文献】特開2017-140316(JP,A)
【文献】特表2013-525045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00- 3/18
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コヒーレンス断層撮影(OCT)光(15)を放出するためのOCT光源(16)を備えるOCTシステムであって、前記OCTシステムが、前記OCT光(15)を物体ビーム経路(23)と参照ビーム経路(24)とに分割するための第1のビームスプリッタ(40)と、前記物体ビーム経路(23)と前記参照ビーム経路(24)とから干渉信号を生成するための第2のビームスプリッタ(47)と、前記干渉信号をとらえるための検出器(25、52、53)と、を備え、前記物体ビーム経路(23)が、第1の偏光保持光導波路(46)を通して前記第1のビームスプリッタ(40)と前記第2のビームスプリッタ(47)との間で導かれ、前記参照ビーム経路(24)が、第2の偏光保持光導波路(48)を通して前記第1のビームスプリッタ(40)と前記第2のビームスプリッタ(47)との間で導かれ、偏光依存遅延要素(30)が前記物体ビーム経路(23)に配置され、前記第1の偏光保持光導波路(46)又は前記第2の偏光保持光導波路(48)の前記OCT光(15)が、前記偏光保持光導波路(46、48)の第1の軸(61)と第2の軸(62)との間で移動され、それにより、前記OCT光は、前記偏光保持光導波路(46、48)の第1の長手方向セクション内で前記第1の軸を伝搬し、前記偏光保持光導波路(46、48)の第2の長手方向セクション内で前記第2の軸を伝搬し、偏光保持光導波路(46、48)の前記第1の軸(61)及び前記第2の軸(62)は、それぞれ、速軸及び遅軸に対応し、第3の偏光保持光導波路(44)は、前記第3の偏光保持光導波路(44)の出口端部(45)から出射するOCT光(15)が前記偏光依存遅延要素(30)を通過するように、かつ、測定対象物(14)から反射されて戻る前記OCT光(15)の前記物体ビーム経路(23)が前記偏光依存遅延要素(30)、前記第3の偏光保持光導波路(44)及び前記第1のビームスプリッタ(40)を通って前記第1の偏光保持光導波路(46)に続くように、物体アーム(19)において前記第1のビームスプリッタ(40)と前記出口端部(45)との間に延び、
前記参照ビーム経路(24)からの光が、干渉ビームスプリッタ(23、47、56)において前記物体ビーム経路(23)からの光と干渉させられ、前記偏光依存遅延要素(30)は、前記干渉ビームスプリッタ(23、40、47)において、測定対象物(14)から後方散乱された前記OCT光と前記参照ビーム経路(24)から到着する前記OCT光との間の偏光オーバーラップが、前記物体ビーム経路(23)の1つ又は複数の光学要素によって反射された光と、前記参照ビーム経路(24)から到着する前記OCT光との間の偏光オーバーラップよりも大きくなるように構成されている、OCTシステム。
【請求項2】
ファイバコネクタ(51)が前記第1の偏光保持光導波路(46)に配置され、前記ファイバコネクタは、前記偏光保持光導波路の前記第1の軸と前記第2の軸との間で前記OCT光(15)を、移動させることを特徴とする請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項3】
ファイバコネクタ(51)が前記第2の偏光保持光導波路(48)に配置され、前記ファイバコネクタは、前記偏光保持光導波路の前記第1の軸と前記第2の軸との間で前記OCT光(15)を、移動させることを特徴とする請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項4】
前記OCT光(15)が、前記遅延要素(30)に入る前に偏光されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のOCTシステム。
【請求項5】
前記偏光依存遅延要素(30)は、前記物体ビーム経路の前記OCT光(15)がそれを2回通過するように配置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のOCTシステム。
【請求項6】
前記遅延要素(30)がλ/4板であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のOCTシステム。
【請求項7】
前記物体ビーム経路を形成する又は偏向させるすべての光学要素が、前記OCT光源(16)と前記遅延要素(30)との間に配置されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のOCTシステム。
【請求項8】
前記測定対象物(14)に面する前記偏光依存遅延要素(30)の界面が、前記物体ビーム経路(23)に対して傾斜されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のOCTシステム。
【請求項9】
前記物体ビーム経路(23)のセクションが第3の偏光保持光導波路(44)において延びており、前記OCT光(15)が、往路で前記第3の偏光保持光導波路(44)の前記第1の軸を伝搬し、復路で前記偏光保持光導波路(44)の第2の軸を伝搬することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のOCTシステム。
【請求項10】
OCT方法であって、OCT光(15)が、放出され、第1のビームスプリッタ(40)において物体ビーム経路(23)と参照ビーム経路(24)とに分割され、第2のビームスプリッタ(47)が前記物体ビーム経路(23)と前記参照ビーム経路(24)とから干渉信号を生成し、前記物体ビーム経路(23)が、第1の偏光保持光導波路(46)を通して前記第1のビームスプリッタ(40)と前記第2のビームスプリッタ(47)との間で導かれ、前記参照ビーム経路(24)が、第2の偏光保持光導波路(48)を通して前記第1のビームスプリッタ(40)と前記第2のビームスプリッタ(47)との間で導かれ、前記干渉信号が検出器(25、52、53)によってとらえられ、前記OCT光(15)が、前記物体ビーム経路(23)に配置された偏光依存遅延要素(30)を通して導かれ、前記第1の偏光保持光導波路(46)又は前記第2の偏光保持光導波路(48)のいずれかの前記OCT光(15)が、前記偏光保持光導波路(46、48)の第1の軸(61)と第2の軸(62)との間で移動され、それにより、前記OCT光は、前記偏光保持光導波路(46、48)の第1の長手方向セクション内で前記第1の軸を伝搬し、前記偏光保持光導波路(46、48)の第2の長手方向セクション内で前記第2の軸を伝搬し、偏光保持光導波路(46、48)の前記第1の軸(61)及び前記第2の軸(62)は、それぞれ、速軸及び遅軸に対応し、第3の偏光保持光導波路(44)は、前記第3の偏光保持光導波路(44)の出口端部(45)から出射するOCT光(15)が前記偏光依存遅延要素(30)を通過するように、かつ、測定対象物(14)から反射されて戻る前記OCT光(15)の前記物体ビーム経路(23)が前記偏光依存遅延要素(30)、前記第3の偏光保持光導波路(44)及び前記第1のビームスプリッタ(40)を通って前記第1の偏光保持光導波路(46)に続くように、第3の偏光保持光導波路(44)は、物体アーム(19)において前記第1のビームスプリッタ(40)と前記出口端部(45)との間に延
び、前記参照ビーム経路(24)からの光が、干渉ビームスプリッタ(23、47、56)において前記物体ビーム経路(23)からの光と干渉させられ、前記偏光依存遅延要素(30)は、前記干渉ビームスプリッタ(23、40、47)において、測定対象物(14)から後方散乱された前記光と前記参照ビーム経路(24)から到着する前記光との間の偏光オーバーラップが、前記物体ビーム経路(23)の1つ又は複数の光学要素によって反射された光と、前記参照ビーム経路(24)から到着する前記光との間の偏光オーバーラップよりも大きくなるように構成されている、OCT方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OCT光を物体ビーム経路と参照ビーム経路とに放出するためのOCT光源を備えたOCTシステムに関する。物体ビーム経路と参照ビーム経路とから生成された干渉信号は、検出器によってとらえられる。本発明は、追加として、OCT方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンス断層撮影(OCT)はイメージング測定法である。OCT光は、物体、特に、ヒト組織上に導かれる。物体の散乱中心が、光の反射された部分から推定される。その目的のために、物体から反射されて戻る物体ビーム経路が、参照ビーム経路と重ね合わされる。画像情報が、2つのビーム経路の干渉信号を評価することによって得られる。
【0003】
干渉信号は寄生反射によって妨害されることがある。これは、干渉信号が、検査されるべき物体から反射されて戻る光からのみ生じるのではなく、それどころか、干渉信号が、他の光反射、例えば、OCTビーム経路の光学部品からの光反射によっても影響を受けることを意味する。OCT信号の品質は、そのような寄生反射によって悪影響を受けることがある。
【0004】
米国特許出願公開第2015/173607A1号は、第1のステップにおいて測定領域に物体を有する測定を記録すること、及び第2のステップにおいて測定領域に物体を有しない測定を記録することを開示している。寄生反射によって引き起こされるアーチファクトは、2つの測定間の差を形成することによって除去することができる。米国特許出願公開第2018/003479A1号には、眼の偏光感受トモグラフィー画像における減偏光領域を抽出する画像処理装置が記載されている。米国特許出願公開第2017/196459A1号には、ファイバベースの偏光感受OCTシステムが記載されている。欧州特許出願公開第1253398A1号には、コヒーレンス反射計及びOCT装置の一部である光干渉計が記載されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、寄生反射の妨害影響が低減されるOCTシステム及びOCT方法を提示するという目的に基づく。引用された先行技術から進んで、この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項に明示される。
【0006】
本発明によるOCTシステムの場合には、偏光依存遅延要素が物体ビーム経路に配置される。
【0007】
偏光依存遅延要素の場合には、通過する光は、偏光状態に応じて違うように遅延される。本発明は、物体ビーム経路に偏光依存遅延要素を配置することにより、物体から反射されて戻る光を寄生反射と区別することが可能になることを認識した。偏光依存遅延要素を通過していない寄生反射は、偏光依存遅延要素を通過した光信号と偏光状態が異なる。物体から反射されて戻る光は干渉信号に強く寄与するが、寄生反射の影響は小さいように、参照ビーム経路の偏光状態を設定することができる。
【0008】
OCT光を物体ビーム経路と参照ビーム経路とに分割するビームスプリッタは、偏光中性ビームスプリッタとすることができる。スプリッタ特性が入射光線の偏光状態と無関係である場合、ビームスプリッタは偏光中性と呼ばれる。本発明は、ビームスプリッタが偏光中性でない実施形態も包含する。
【0009】
参照ビーム経路からの光は、物体ビーム経路からの光と干渉ビームスプリッタで干渉させることができる。干渉ビームスプリッタは偏光中性ビームスプリッタとすることができる。偏光依存遅延要素は、干渉ビームスプリッタにおいて、測定対象物から後方散乱された光と参照ビーム経路から到着する光との間の偏光オーバーラップが、物体ビーム経路の1つ又は複数の光学要素によって反射された光と参照ビーム経路から到着する光との間の偏光オーバーラップよりも大きくなるように構成することができる。偏光オーバーラップという用語は、2つの偏光状態の類似性に関連する。純粋な偏光状態は、ジョーンズベクトルで示すことができ、
【数1】
であり、ここで、a1及びa2は振幅を記述し、θ
1及びθ
2は、電界ベクトルの2つの成分の位相を記述する。そのとき、2つの偏光状態間のオーバーラップは、これらの2つの偏光状態の正規化ジョーンズベクトル間の内積の2乗の絶対値である。したがって、直交する偏光状態の間(例えば、直線水平偏光光と直線垂直偏光光との間、又は左円偏光光と右円偏光光との間)のオーバーラップはゼロに等しい。直線偏光光と円偏光光との間のオーバーラップは0.5であり、2つの同一の偏光状態間のオーバーラップは1である。測定対象物から後方散乱された光と、参照ビーム経路から到着する光との間の偏光オーバーラップは、物体ビーム経路の1つ又は複数の光学要素によって反射された光と参照ビーム経路から到着する光との間の偏光オーバーラップよりも、特に、少なくとも0.2だけ、好ましくは少なくとも0.5だけ、より好ましくは少なくとも0.8だけ大きくすることができる。OCT光が遅延要素に入る前に偏光されていれば有利である。その上、OCT光を物体ビーム経路と参照ビーム経路とに分配するビームスプリッタに入る前にOCT光が偏光されていれば有利である。特に、OCT光は、例えば、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の偏光度をもつ純粋な偏光状態を有することができる。1つの実施形態では、OCT光は、遅延要素又はビームスプリッタに入る前に直線偏光される。
【0010】
OCTシステムは、偏光光源を備えることができ、その結果、光源から発出するOCT光は、既に、偏光状態を有している。それに加えて又はそれの代替として、偏光フィルタが、OCT光源と遅延要素との間に配置されてもよい。偏光フィルタという用語は、一般に、光が偏光状態でのみ通過することができる光学デバイスを表す。
【0011】
それに加えて又はそれの代替として、第1の偏光コントローラが、OCT光源と偏光依存遅延要素との間に配置されてもよい。偏光コントローラという用語は、一般に、目標のように光の偏光状態を設定することができるデバイスを表す。偏光コントローラは、静的又は可変偏光コントローラとして具現化することができる。静的偏光コントローラの場合には、偏光状態は1回調節され、その後、もはや変更されない。可変偏光コントローラの場合には、偏光状態は、動作中に設定することができる。可変偏光コントローラは、例えば、関連するOCT光路の光導波路が1つ又は複数の巻き(turn)で配置され、前記巻きが光導波路の他のセクションに対して機械的に回転可能であることによって実現され得る。特に、光導波路は、互いに無関係に回転することができる複数の巻きのセットを備えることができる。可変偏光コントローラの適切な構成が与えられると、純粋な偏光状態間の任意の所望の変化をこのようにして確立することができる。偏光コントローラは、手動操作用に設計することができ、その結果、偏光状態は、オペレータが手動で設定することができる。偏光コントローラのモーター駆動も可能である。第1の偏光コントローラを使用して、偏光依存遅延要素に入るOCT光を所望の偏光状態することができる。
【0012】
偏光フィルタ及び/又は第1の偏光コントローラは、OCT光源と、OCT光が物体ビーム経路と参照ビーム経路とに分割されるビームスプリッタとの間に配置することができる。ビームスプリッタは、入力側パワーの50%が物体ビーム経路に導かれ、50%が参照ビーム経路に導かれるように構成することができる。ビームスプリッタは、例えば、OCT光源から来る第4の光導波路、物体ビーム経路に関連する第3の光導波路、及び参照ビーム経路に関連する第2の光導波路が接続されるファイバカプラとして具現化することができる。
【0013】
1つの実施形態では、ビームスプリッタは3×3ビームスプリッタとして具現化され、入力側の光が3つの出力チャネル間に分割される。3×3ビームスプリッタは、入力側パワーの30%~40%が、出力チャネルの各々に導かれるように構成することができる。チャネルの各々は入力チャネルとして使用することができる。チャネルのうちのどれが入力チャネルとして使用されるかに関わりなく、3つの出力チャネルがあり得る。
【0014】
偏光依存遅延要素は、物体ビーム経路のOCT光が偏光依存遅延要素を2回通過するように配置することができる。第1の通過中のOCT光の伝搬方向は、第2の通過中の伝搬方向と反対であり得る。特に、OCT光は、測定対象物への往路で1回及び測定対象物から来る復路で1回遅延要素を通過することができる。
【0015】
遅延要素は、遅延要素を通過した後の偏光状態が遅延要素に入る前の偏光状態と直交するように構成することができる。次いで、測定対象物から来る光信号の寄与が最大であり、寄生反射の寄与が最小である干渉信号を生成することができる。物体ビーム経路が遅延要素を2回通過する場合、直交偏光状態は2つの通過の和として生じることができる。例として、遅延要素は、λ/4板として構成することができる。遅延要素は、最初に入る際の直線偏光が円偏光に回転され、そこで、測定対象物から後方散乱された光が遅延要素に対する第2の通過中に直交直線偏光に回転されるように向きを定めることができる。遅延要素を通過した後、偏光状態のさらなる変更なしに、物体ビーム経路を参照ビーム経路と干渉させることができる。
【0016】
OCTシステムは、OCT光源から測定対象物までの経路上で物体ビーム経路を形成するか又は偏向させるすべての光学要素がOCT光源と遅延要素との間に配置されるように構成することができる。物体ビーム経路が遅延要素と測定対象物との間で自由に伝搬することができる場合、さらなる寄生反射は物体ビーム経路のこのセクションで生じ得ない。遅延要素の上流で生じる寄生反射を干渉信号からマスクすることができるので、このようにして測定信号の良好な品質を達成することができる。OCT光が遅延要素と測定対象物との間でさらに通過する可能性のあるハウジングのガラス板は、ビーム形状及びビーム方向がそのようなガラス板を通過する間変わらないままであるので、物体ビーム経路を形成するか又は偏向させる光学要素ではない。遅延要素と測定対象物との間に物体ビーム経路が通過する透明な板をOCTシステムが備える場合、前記板は、物体ビーム経路の光学軸に対して傾斜させることができ、その結果、あり得る寄生反射は横の方に偏向され、干渉信号を妨害しない。
【0017】
寄生反射は、遅延要素自体でも生じる場合がある。寄生反射が干渉信号を妨害しないようにするために、遅延要素は、物体ビーム経路が通過する1つ又は複数の界面が物体ビーム経路に対して傾斜するように配置することができる。これは、特に、物体ビーム経路が遅延要素から測定対象物の方向に出射する界面か、又は物体ビーム経路が測定対象物から来るときに遅延要素に入る界面に関わる可能性がある。界面が物体ビーム経路に対して傾斜されている場合、物体ビーム経路は、界面に直角に衝突するのではなく、むしろ異なる角度で衝突する。寄生反射は、横の方に偏向され、干渉信号を妨害しない。
【0018】
参照ビーム経路のOCT光の偏光状態が、測定対象物から来るOCT光の偏光状態に適合することができるように、第2の偏光コントローラを参照ビーム経路に配置することができる。適合とは、測定対象物から来るOCT光との干渉が最大になるように参照ビーム経路の偏光状態を設定することを意味する。偏光コントローラは、静的偏光コントローラ又は動的偏光コントローラとすることができる。例えば、OCT光が直線偏光されている場合、測定対象物から来るOCT光と、それと干渉させられる参照ビーム経路のOCT光とは、互いに平行な偏光状態にすることができる。
【0019】
それの代替として又はそれに追加して、第2の偏光依存遅延要素を参照ビーム経路に配置することができる。そのような偏光依存遅延要素は、参照ビーム経路からの寄生反射を避けるのに寄与することができる。
【0020】
OCTシステムは、OCT光が通過する1つ又は複数の光導波路を備えることができる。光導波路は、妨害信号が光導波路内で生じないようにするために、モノモード光導波路として具現化することができる。OCTシステムは、第1のファイバカプラを備えることができ、OCT光は、物体ビーム経路と参照ビーム経路とに分割される。第1のファイバカプラは、偏光中性ファイバカプラとすることができる。干渉信号は、第1のファイバカプラで生成することもできる。OCT光を分割するときの伝搬方向は、干渉信号を生成するときの伝搬方向と反対にすることができる。
【0021】
OCTシステムが、干渉信号を生成する第2のファイバカプラを備えることも可能である。第2のファイバカプラは、偏光中性ファイバカプラとすることができる。参照ビーム経路は、第1のファイバカプラと第2のファイバカプラとの間に延びることができる。参照ビーム経路を導く第2の光導波路は、第1のファイバカプラと第2のファイバカプラとの間に配置することができる。参照ビーム経路の長さは、第1のファイバカプラと第2のファイバカプラとの間の光路の長さと一致することができる。
【0022】
OCTシステムは、第1のファイバカプラと第2のファイバカプラとの間を延びる第1の光導波路を備えることができ、第1の光導波路は、物体ビーム経路のセクションを形成する。物体ビーム経路の長さは、全体的に、第1の光導波路の長さと、第1のファイバカプラと物体との間の距離の2倍との和として生じることができる。
【0023】
従来の光導波路には、光導波路の空間構成が変更される場合光の偏光状態が変化する可能性がある性質がある。例として、光の偏光状態は、光導波路が直線で延びるか又は巻きに沿って延びるかどうかによって影響を受けることがある。OCTシステムは、偏光状態のそのような変化を再度補償するために、1つ又は複数の偏光コントローラを備えることができる。
【0024】
OCTシステムは、1つ又は複数の光導波路が偏光保持光導波路として具現化されるように構成することができる。光導波路は、光導波路の座標系に対して、光導波路の入力部及び出力部の偏光状態が、固定した方法で互いに結合されている場合、偏光保持と呼ばれる。空間座標系に対して、偏光状態は、偏光保持光導波路の空間構成を変えることによって変更することができる。偏光保持光導波路は、光が異なる伝搬速度で移動する第1の軸及び第2の軸(遅軸/速軸)を有することができる。光導波路の断面で見るとき、第1の軸と第2の軸とは、互いに直交することができる。偏光保持光導波路の使用は、特に、OCTシステムが、互いに対するシステムの構成要素の空間配置を動作中に変更できるように構成される場合、適切であり得る。これは、通常は、光導波路の変形に関連しており、光導波路の変形は、従来の光導波路の場合にはOCT光の偏光状態に影響を与えることがある。
【0025】
第4の偏光保持光導波路を、OCT光源と第1のファイバカプラとの間に配置することができ、物体ビーム経路と参照ビーム経路とへの分割が達成される。光導波路に供給されるOCT光の直線偏光状態は、第4の偏光保持光導波路の第1の軸と平行に向きを定めることができる。
【0026】
物体ビーム経路の第1のセクションは、第3の偏光保持光導波路として具現化することができる。物体ビーム経路のOCT光は、伝搬の反対方向で第3の偏光保持光導波路を2回通過することができる。この場合、OCT光は、物体への往路で偏光保持光導波路の第1の軸を伝搬することができ、物体から来る復路で偏光保持光導波路の第2の軸を伝搬することができる。
【0027】
物体ビーム経路の第2のセクションは、第1の偏光保持光導波路として具現化することができる。物体ビーム経路の第2のセクションは、第1のファイバカプラと第2のファイバカプラとの間に延びることができる。物体ビーム経路の第2のセクションにおいて、OCT光は、偏光保持光導波路の第2の軸を伝搬することができる。
【0028】
本発明は、さらに、OCTシステムに関し、OCTシステムは、OCT光を放出するためのOCT光源を備え、OCT光を物体ビーム経路と参照ビーム経路とに分割するための第1のビームスプリッタを備え、物体ビーム経路と参照ビーム経路とから干渉信号を生成するための第2のビームスプリッタを備え、干渉信号をとらえるための検出器を備え、物体ビーム経路が、第1の偏光保持光導波路を通して第1のビームスプリッタと第2のビームスプリッタとの間で導かれ、参照ビーム経路が、第2の偏光保持光導波路を通して第1のビームスプリッタと第2のビームスプリッタとの間で導かれ、偏光依存遅延要素が物体ビーム経路に配置され、第1の偏光保持光導波路又は第2の偏光保持光導波路のOCT光が、偏光保持光導波路の第1の軸と第2の軸との間で移動される。
【0029】
偏光保持光導波路の第1の軸及び第2の軸は、それぞれ、速軸及び遅軸に対応する。本発明のこの態様にとって有利なことは、第1の軸と第2の軸との間の移動が、2つの偏光保持光導波路のうちの正確に1つで、すなわち、物体ビーム経路又は参照ビーム経路のいずれかで実行されることである。OCT光が、偏光保持光導波路の2つの遅軸の間で移動される場合、偏光保持光導波路は、OCT光が第1の軸を伝搬する第1の長手方向セクションと、OCT光が第2の軸を伝搬する第2の長手方向セクションとを有する。
【0030】
参照ビーム経路は、第2の偏光保持光導波路として具現化することができる。参照ビーム経路は、第1のビームスプリッタと第2のビームスプリッタとの間に延びることができる。第1のビームスプリッタ及び/又は第2のビームスプリッタは、ファイバカプラ(複数可)として具現化することができる。物体ビーム経路及び参照ビーム経路が、第1のファイバカプラと第2のファイバカプラとの間で平行光路に沿って延びる場合、ファイバコネクタが、光路の一方に配置されてもよく、前記ファイバコネクタは、偏光保持光導波路の第1の軸と第2の軸の間で光を移動させる。言い換えれば、ファイバコネクタの入力側の偏光保持光導波路の第1の軸にある光は、出力側で偏光保持光導波路の第2の軸に移動され、逆の場合も同様である。これは、第1のセクション及び第2のセクションが互いに対して90°だけ回転されるようにファイバコネクタで結合されることによって行われ得る。ファイバコネクタは、プラグ接続の形態で実現することができる。代替として、ファイバスプライスが、さらに、使用されてもよく、接続されるべき2つのファイバ端部がアークによって融合される。第1のファイバカプラと第2のファイバカプラとの間にそのようなファイバコネクタを備える干渉計は、干渉計がOCTシステムに使用されているかどうか、及び偏光依存遅延要素が物体ビーム経路に配置されているかどうかに関係なく、独立した発明内容を有する。
【0031】
ファイバコネクタは、参照ビーム経路に配置することができる。ファイバコネクタは、物体ビーム経路に、具体的には、特に、第1のファイバカプラと第2のファイバカプラとの間に配置される物体ビーム経路のセクションに配置されることも可能である。次いで、OCT光は、参照ビーム経路又は物体ビーム経路の第1のセクションに偏光保持光導波路の第1の軸で延びる。OCT光は、関連するビーム経路の第2のセクションに偏光保持光導波路の第2の軸で延びる。
【0032】
ファイバコネクタが参照ビーム経路に配置される場合、参照ビーム経路の第1のセクションの長さ及び第2のセクションの長さは、物体ビーム経路における条件に対応する互いの比とすることができ、その結果、両方の場合のOCT光は、第1の軸及び第2の軸で同じ距離を進む。本発明の趣旨の範囲内で、そのようなファイバコネクタは、最初に調節され、その後、もはや変更されない偏光コントローラである。
【0033】
OCTシステムは、波長調整可能光源(掃引ソースOCT)により具現化することができる。次いで、OCTシステムは、差測定の目的で、干渉ビームスプリッタで形成される位相シフト干渉信号を検出するために、第1の検出器及び第2の検出器を有することができる。位相シフトは、干渉ビームスプリッタの選択に依存する。例として、対称2×2ビームスプリッタの位相シフトは180°であり、対称3×3ビームスプリッタの位相シフトは120°である。光電流間の差を電圧に変換し、デジタル化することができる。光源の調整プロセスの干渉信号は、スペクトル分解法でデジタル化し、次いで、空間信号に変換することができる。代替として、広帯域光源を使用することも可能であり、そのとき、分光計が検出器として使用される(スペクトルドメインOCT)。
【0034】
第1の検出器及び第2の検出器は、第2のファイバカプラの第1の出力チャネル及び第2の出力チャネルに接続することができ、第2のファイバカプラは、干渉ビームスプリッタを形成することが好ましい。
【0035】
さらに、OCTシステムで第1の検出器及び第2の検出器を用いてそのような差測定を実行することが可能であり、OCT光は、3×3ビームスプリッタで物体ビーム経路と参照ビーム経路とに分割され、3×3ビームスプリッタは、同時に、干渉ビームスプリッタを形成する。OCT光源、第1の検出器、及び第2の検出器は、3×3ビームスプリッタの一方の側で接続され得る。物体ビーム経路及び参照ビーム経路は、3×3ビームスプリッタの他方の側で接続され得る。3×3ビームスプリッタの他方の側の第3のチャネルは、未使用のままとすることができる。1つの実施形態では、第2の参照ビーム経路は第3のチャネルに接続され、前記第2の参照ビーム経路は、第1の参照ビーム経路と異なる長さを有することが好ましい。このようにして、異なる測定領域の間を切り替えることが可能になる。
【0036】
本発明によるOCTシステムは、測定対象物から後方散乱されたOCT光と、寄生反射との両方が、検出器上に導かれ、検出器によって検出されるように構成することができる。これは、寄生反射が干渉信号に寄与せず、OCT光の静止部分が差測定で互いに打ち消し合うので、OCT測定の品質への不利益なしに可能である。したがって、本発明により、検出器の上流のさらなる偏光フィルタをなしで済ますことが可能になる。
【0037】
物体ビーム経路は、OCT光が自由に伝搬する、すなわち、光導波路内で導かれないセクションを含むことができる。このセクションは、光導波路の出口端部と測定対象物との間に延びることができる。コリメーション光学ユニットを設けることができ、その結果、物体ビーム経路はコリメート状態でセクションにおいて延びる。OCTシステムは対物レンズを備えることができ、その結果、物体ビーム経路は測定対象物の領域に集束される。本発明による偏光依存遅延要素は、対物レンズと測定対象物との間に配置することができる。
【0038】
物体ビーム経路は、走査デバイスによって横方向に偏向させることができる。横方向の偏向によって、測定対象物の断面の画像を生成することができる。走査デバイスが物体ビーム経路を2つの横方向(例えば、X方向、Y方向)に偏向させるように設計される場合、複数の断面画像から3次元ボリューム画像を構成することができる。
【0039】
例えば、走査デバイスは、2つの走査ミラーを備えることができ、2つの走査ミラーは、互いに直交する軸のまわりに回転可能である。走査ミラーのそのような構成は、測定対象物を走査するために使用することができる走査デバイスの従来の例である。走査デバイスは、コリメーション光学ユニットと物体ビーム経路の対物レンズとの間に配置することができる。物体ビーム経路の光学ユニットはテレセントリック式に設計することができ、その結果、走査デバイスは対物レンズの焦点に配置され、対物レンズと測定対象物との間のビーム経路は、走査中平行に変位される。
【0040】
参照ビーム経路は、OCT光が自由に伝搬する、すなわち光導波路内で導かれないセクションを含むことができる。このセクションは、光導波路の出口端部とミラーとの間に延びることができる。コリメーション光学ユニットは、光導波路の出口端部とミラーとの間に配置することができ、その結果、コリメート状態のOCT光がミラーに衝突する。OCTシステムは、第1の偏光依存遅延要素と第2の偏光依存遅延要素とを備えることができ、第2の偏光依存遅延要素は、参照ビーム経路の前記セクションに配置される。他の実施形態では、参照ビーム経路全体が、1つ又は複数の光導波路内に延びることができる。
【0041】
OCTシステムの光源は、掃引ソース光源とすることができ、掃引ソース光源では、狭帯域OCT光が、調整時間内にスペクトル調整範囲にわたって調整される。検出器は、時間分解法で干渉信号を検出し、それにより、間接的に、干渉信号のスペクトル分解を可能にするフォトダイオードを備えることができる。フォトダイオードの光電流を電圧に変換しデジタル化することができる。掃引ソース光源の調整プロセスの干渉信号は、スペクトル分解法でデジタル化することができ、そして空間信号に変換することができる。走査デバイスによる物体ビーム経路の横方向偏向と組み合わせて、測定対象物の断面画像を作り出すことができる。
【0042】
OCTシステムは、ヒトの眼の測定に使用することができる。光源の線幅は、基準点から40mmの距離までの構造を常に良好に検出できるように選ぶことができる。基準点という用語は、光源から基準点まで及び基準点から再び戻って干渉ビームスプリッタまでの光路長が、光源から参照ビーム経路を介して干渉ビームスプリッタまでの光路長と等しい物体ビーム経路における位置を表す。干渉信号の振動周波数(スペクトル表現において)は、光散乱構造と基準点との間の距離の尺度である。OCTシステムの基準点は、ヒトの眼の前に配置することができる。
【0043】
一般に、正の周波数と負の周波数を区別することは可能ではないので、OCTシステムは、計測デバイスに面する基準点の側にある構造への感受性もある。物体ビーム経路の光学要素は、眼の特定の散乱中心からの距離と基準点からの距離が同じである場合があるから、これらの光学要素の寄生反射は、一般に、妨害の可能性がある。
【0044】
OCTシステムのビーム経路は、上記のものに加えてさらなる構成要素をさらに含むこともできる。例として、掃引ソースOCTでは、OCT光源と、ビームスプリッタによる物体ビーム経路及び参照ビーム経路への分割との間で、OCT光の一部を結合して外に出し、干渉信号のデジタル化のためのクロック信号をOCT光の一部から生成することができる。
【0045】
本発明は、追加として、OCT光が放出されるOCT方法に関する。OCT光は、物体ビーム経路と参照ビーム経路とに分割される。物体ビーム経路と参照ビーム経路とから生成された干渉信号は、検出器によってとらえられる。OCT光は、物体ビーム経路に配置された偏光依存遅延要素を通して導かれる。
【0046】
この方法は、本発明によるシステムとの関連で記載されるさらなる特徴を用いて開発することができる。システムは、本発明による方法との関連で記載されるさらなる特徴を用いて開発することができる。
【0047】
本発明は、添付図面を参照して、有利な実施形態に基づいて以下に例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明によるOCTシステムの第1の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明によるOCTシステムの第2の実施形態を示す図である。
【
図3】本発明によるOCTシステムの第3の実施形態を示す図である。
【
図4】本発明によるOCTシステムの第4の実施形態を示す図である。
【
図5】偏光保持光導波路による断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1に示されるOCTシステムは、ヒトの眼の形態の測定対象物14を検査するのに役立つ。OCT光15が測定対象物14に導かれることによって、OCTビームの軸に沿って測定対象物14の深さの中に延びる画像情報が得られる。OCTビームがそれに垂直な方向に測定対象物14を横切って走査されることによって、測定対象物14の3次元画像を多数の個々の測定記録から得ることができる。
【0050】
OCTシステムは、掃引ソース光源として具現化されたOCT光源16を備える。掃引ソース光源16は、スペクトル的に調整可能な狭帯域光を生成する。すなわち、瞬間ごとに狭帯域光が放出され、狭帯域光の周波数が時間とともに変り、その結果、掃引ソース光源は、調製時間中に周波数範囲にわたって調整される。
【0051】
OCT光源16によって放出されたOCT光15は直線偏光されており、モノモードの光導波路として具現化された第4の光導波路17に供給される。第4の光導波路17は、偏光中性ファイバカプラ18まで延び、第4の光導波路17からのOCT光15は、物体ビーム経路23と参照ビーム経路24とに分割される。物体ビーム経路23は、物体アーム19に沿って測定対象物14まで延びる。参照ビーム経路24は、参照アーム20に沿って参照ミラー25まで延びる。
【0052】
物体アーム19は、偏光中性ファイバカプラ18から出口端部22まで延びる第3の光導波路21を備える。出口端部22において、物体ビーム経路23は、第3の光導波路21から発散状態で出射して、コリメーションレンズ26によってコリメート状態にされる。
【0053】
走査デバイスは、2つの走査ミラー27、28を備え、走査ミラー27、28は、2つの互いに直交する軸のまわりに回転可能である。物体ビーム経路23は、走査デバイス27、28を介して対物レンズ29に導かれる。物体ビーム経路23は、対物レンズ29を通過し、測定対象物14の領域に集束される。
【0054】
物体ビーム経路23が対物レンズ29に衝突する方向は、走査ミラー27、28の回転によって変わる。第2の走査ミラー28は対物レンズ29の焦点に配置されるので、ビーム経路23は、走査デバイス27、28の位置とは無関係に、対物レンズ29の光学軸と平行に、対物レンズ29と測定対象物14との間に延びる。対物レンズ29と測定対象物14との間で、物体ビーム経路23は、λ/4板の形態の偏光依存遅延要素30を通過する。
【0055】
測定対象物14から反射されて戻るOCT光は、反対の伝搬方向で、物体アーム19に沿って移動して偏光中性ファイバカプラ18に戻る。
【0056】
参照アーム20は、第2の光導波路31を備え、第2の光導波路31は、ファイバカプラ18から第2の偏光コントローラ32を介して出口端部33に延びる。出口端部33から発散状態で出射する参照ビーム経路24は、コリメーションレンズ34に衝突する。コリメーションレンズ34から、参照ビーム経路24は、コリメート状態で参照ミラー25まで伝搬する。参照ミラー25によって反射されたOCT光は、反対の伝搬方向で参照アーム20に沿って移動してファイバカプラ18に戻る。
【0057】
参照ミラー25は、ファイバカプラ18と参照アーム20の参照ミラー25との間の光路が、ファイバカプラ18と測定対象物14の基準点との間の物体アーム19の光路と正確に同じ長さになるように配置される。OCT光は、物体アーム19及び参照アーム20に沿って同じ光路距離を進むので、物体ビーム経路23及び参照ビーム経路24がファイバカプラ18で再結合されると干渉信号が生じる。干渉信号がすべて強いほど、測定対象物14内の特定の構造から反射されて戻るOCT光が多い。したがって、干渉信号の評価によって、測定対象物14内の散乱中心を識別することができる。
【0058】
散乱中心が物体ビーム経路の基準点に正確に配置されている場合、物体ビーム経路23の光路長と参照ビーム経路24の光路長とは、正確に等しく、したがって、固定した干渉信号がもたらされる。散乱中心が基準点から離れている場合、干渉信号は振動し(スペクトル表現において)、周波数がすべて高くなるほど、基準点に対する距離が大きくなる。
【0059】
干渉信号は、さらなる光導波路35を介して検出器36に導かれる。干渉信号は、検出器36によってとらえられ、空間的に分解された画像情報に変換される。
【0060】
OCT光源16の線幅、すなわち、放出された光の瞬間スペクトル幅は十分小さいので、例えば、基準点から40mmの距離にある構造を依然として十分に検出することができる。そのような測定範囲により、本発明によるOCTシステムを使用して、捕捉すべきヒトの眼の記録が可能になる。この場合、基準点は、眼のすべての構造が基準点の反対側にあるように眼の直前とすることができる。干渉信号では基準点からの正の距離と負の距離を区別することができないので、基準点の上流に配置される反射を避けることが望ましい。これは、特に、基準点からの距離がOCTシステムの測定深度よりも小さい物体アーム19のそのような光学要素での反射に当てはまる。
図1による例示的な実施形態では、例えば、遅延要素30又は対物レンズ29からの寄生反射は、測定対象物14からの測定信号を損なうことがある。
【0061】
本発明は、測定信号を寄生反射と異なる偏光状態にすることによって、そのような寄生反射の影響を低減するという発想に基づく。参照ビーム経路の偏光状態を適切に設定することによって達成できることは、最大の干渉信号が測定対象物14から反射されて戻るOCT光から生じ、一方、同時に、寄生反射によって生成された干渉信号が最小になることである。
【0062】
OCT光源16によって放出されるOCT光の偏光状態は、第3の光導波路21の出口端部22から出射する光が純粋に直線偏光されているように第1の偏光コントローラ37によって設定される。直線偏光状態は、λ/4板30を通過するまで保持される。この場合、λ/4板は、OCT光が反対の伝搬方向でλ/4板を2回通過した後、OCT光は依然として純粋に直線偏光されているが、直線偏光の方向がオリジナルの直線偏光と直交するように向きを定められる(回転される)。これは、一般に、λ/4板への入口での直線偏光とλ/4板の結晶光学軸との間の角度が45°である場合である。
【0063】
対照的に、λ/4板30を通過していない物体アーム19の光学要素からの寄生反射は、依然として、オリジナルの直線偏光状態を有している。したがって、寄生反射の直線偏光状態は、測定対象物14から反射されて戻されたOCT光の直線偏光状態に対して直交している。
【0064】
参照ビーム経路24の直線偏光状態は、ファイバカプラ18で物体ビーム経路23と参照ビーム経路24を重ね合わせるとき、参照ビーム経路24の直線偏光が測定対象物14から来るOCT光の直線偏光と平行となるように、第2の偏光コントローラ32によって設定される。したがって、測定対象物14から反射されて戻されたOCT光は最大の干渉信号を生成し、一方、同時に、寄生反射によって生成された干渉信号は最小である。
【0065】
OCT光がλ/4板30から測定対象物14の方向で出射するときに生じる寄生反射は、この方法では取り除くことができない。それゆえに、λ/4板30は対物レンズ29の光学軸に対して傾斜され、その結果、これらの寄生反射はファイバカプラ18の方向に導かれるのではなく、むしろ横の方に偏光される。
【0066】
図2による例示的な実施形態では、OCT光源16は、同様に、直線偏光OCT光を放出する掃引ソース光源として具現化される。偏光コントローラ41及び偏光フィルタ42は、OCT光源16と第1のファイバカプラ40との間に配置される。偏光フィルタ42は、特定の方向に直線偏光されているそのような光のみの通過を可能にするように設計される。OCT光の偏光状態は、偏光フィルタ42の直線偏光方向と一致するように偏光コントローラ41によって設定される。言い換えれば、偏光コントローラ41は、最大量の光が偏光フィルタ42の出力部から出射するように設定される。
【0067】
偏光保持光導波路として具現化される第4の光導波路43は、偏光フィルタ42と第1のファイバカプラ40との間に延びる。偏光保持光導波路43は、光全体が光導波路43の速軸62に供給されるように偏光フィルタ42に接続される。
【0068】
第1のファイバカプラ40において、OCT光は、物体ビーム経路23と参照ビーム経路24とに分割される。物体アーム19において、第3の偏光保持光導波路44が、第1のファイバカプラ40と出口端部45との間に延びる。第3の偏光保持光導波路44は、光導波路43、44の速軸62が一致するように第1のファイバカプラ40に接続される。したがって、第4の偏光保持光導波路43の速軸62からのOCT光は、第3の偏光保持光導波路44の速軸62に渡る。
【0069】
光導波路44の出口端部45と測定対象物14との間の物体アーム19の構成要素は、
図1による例示的な実施形態のものと同一である。したがって、測定対象物14から反射されて戻るOCT光の部分は、λ/4板30を2回通過している。この場合、λ/4板は、反射されて戻るOCT光の直線偏光状態が、第3の光導波路44の出口端部45から出射する光の直線偏光状態と直交するように、向きを定められる(回転される)。これは、一般に、λ/4板への入口での直線偏光とλ/4板の結晶光学軸との間の角度が45°である場合である。直交する偏光状態のために、反射されて戻るOCT光は、第3の偏光保持光導波路44の遅軸61に入る。
【0070】
測定対象物14から反射されて戻るOCT光の物体ビーム経路23は、第1のファイバカプラ40を通って、ファイバカプラ40と第2のファイバカプラ47との間に延びる第1の偏光保持光導波路46に続く。第1の偏光保持光導波路46は、第3の光導波路44の遅軸61からのOCT光が第1の光導波路46の遅軸61に渡るように第1のファイバカプラ40に接続される。
【0071】
参照ビーム経路24は、第2の偏光保持光導波路48を通って延び、第2の偏光保持光導波路48は、第1のファイバカプラ40と第2のファイバカプラ47との間に配置され、第1のセクション49と第2のセクション50とにさらに分割される。第1のセクション49と第2のセクション50とは、ファイバコネクタ51において互いに接続され、第2のセクション50は、第1のセクション49に対して90°だけ回転される。
【0072】
第1のファイバカプラ40において、OCT光源16から来る光は、第2の偏光保持光導波路48の第1のセクション49の速軸62に導かれる。第2の光導波路48の第2のセクション50の遅軸61への移動が、ファイバコネクタ51で達成される。第1のセクション49の長さは、第3の光導波路44の長さと一致し、その結果、物体アーム及び参照アームのOCT光は、速軸62で同じ経路距離を進む。第2の光導波路48の第2のセクション50の長さは、第3の光導波路44の長さと第1の光導波路46の長さの和と一致し、その結果、遅軸61で進んだ経路距離は、参照アームと物体アームとで同一である。物体ビーム経路における基準点の位置は、第1のセクション49の長さを介して選ぶことができる。次いで、第1のセクション49の光学長は、第3の光導波路44の光学長と出口点45から基準点までの光路長の2倍との和と一致しなければならない。
【0073】
物体ビーム経路23及び参照ビーム経路24からの干渉信号が、第2のファイバカプラ47で生じる。180°だけ位相シフトされている第2のファイバカプラ47からの干渉信号が、2つの検出器52、53によってとらえられる。2つの検出器52、53間の差形成によって信号の静的部分を除去することができ、それにより、高い解像度の有用な信号がもたらされる。検出器52、53の光電流の差は、電圧に変換され、デジタル化される。この場合、OCT光源16の調整プロセスの干渉信号が、最初に、スペクトル分解法でデジタル化され、次いで、空間信号に変換される。OCTビームを走査デバイス27、28により横方向に偏向させることによって、測定対象物14の断面画像を作り出すことができる。
【0074】
この実施形態においても、測定対象物14から反射されて戻るOCT光の部分と、物体アーム19の光学要素の寄生反射とは、互いに直交する偏光状態を有する。第1の光導波路46の遅軸61で搬送されたOCT光は、第2のファイバカプラ47の干渉信号に最大に寄与するが、速軸62で搬送された寄生反射は、干渉信号で最小でしか見いだされない。
図2による実施形態は、OCT光の偏光状態が、光導波路43、44、46、48の曲げ状態とは無関係に、偏光保持光導波路43、44、46、48を使用することの結果として保持されるという利点を有する。したがって、OCTシステムの要素は、干渉信号が品質を失うことなく、光導波路43、44、46、48を変形させることにより互いに対して移動することができる。
【0075】
図3による実施形態は、ファイバコネクタ51が物体ビーム経路に配置されているという点で
図2と異なる。したがって、第1の偏光保持光導波路46は、OCT光が遅軸61で搬送される第1のセクション54と、OCT光が速軸62で搬送される第2のセクション55とを有する。OCTシステムの光導波路の長さは、参照ビーム経路24と物体ビーム経路23の長さが一致する基準点が測定対象物14の直前にあるように互いに調整される。
【0076】
図4による実施形態では、
図1との違いは、OCT光源16からのOCT光15が3×3ファイバカプラ56に供給されることである。前述と同様に、物体アーム19及び参照アーム20は、3×3ファイバカプラの最初の2つの出力チャネルに接続され、第3の出力チャネル59は未使用のままである。3×3ファイバカプラ56の反対側では、OCT光源16に加えて、2つの検出器52、53が光導波路57、58を介して接続される。このようにして、
図2との関連で上述したような差測定を実行することができる。光導波路17、21、31、57、58は、非偏光保持単一モードファイバである。第2の偏光依存遅延要素60が、参照ビーム経路24に配置され、第1の偏光依存遅延要素30と一致するように向きを定められ(回転され)、その結果、測定対象物14から後方散乱されたOCT光15は最大の干渉信号を生成する。