(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】マッサージ機
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20220405BHJP
A61H 23/02 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A61H7/00 322B
A61H7/00 323Q
A61H7/00 323S
A61H23/02 357
(21)【出願番号】P 2016111871
(22)【出願日】2016-06-03
【審査請求日】2019-05-28
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000112406
【氏名又は名称】ファミリーイナダ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲田 二千武
(72)【発明者】
【氏名】野津 裕二
(72)【発明者】
【氏名】森友 淳史
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】津田 真吾
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-263269(JP,A)
【文献】特開平11-178877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施療部位を施療する施療部と、
所定の情報を表示および入力する入力表示装置と、
各施療部位の施療態様を設定する設定部と、
前記各施療部位の施療態様の組合せである態様組合せを保存する保存部と、
前記保存部に保存された前記態様組合せに基づいて前記施療部を駆動して施療を行う駆動制御部と、を備え、
前記設定部
により施療部位の施療態様を前記入力表示装置による入力操作を介して設定するとともに設定した施療態様を一時的に記憶し
た後に、前記駆動制御部
により一時的に記憶された前記施療態様に基づいて前記施療部を駆動して設定対象の施療部位を試行的に施療
するステップを有し、
前記ステップは、各施療部位ごとに実行され、
前記設定部によって設定対象の施療部位を順に切り換えながら各施療部位ごとに施療態様を設定する態様設定モードを有し、
前記態様設定モードは、
前記複数の施療部位の施療態様を個々に全て設定する詳細態様設定モードと、
前記複数の施療部位を複数のグループに分類し、1つの施療部位の施療態様を設定することにより、前記1つの施療部位が属するグループの前記1つの施療部位以外の全ての施療部位の施療態様を前記1つの施療部位と同じ施療態様に設定する簡易態様設定モードと、を含み、
複数のマッサージコースを有し、
前記保存部が保存した前記態様組合せを選択することにより、選択した態様組合せに基づいて前記各マッサージコースを行うことができる、マッサージ機。
【請求項2】
前記態様設定モードにおいて前記駆動制御部は設定対象の施療部位のみを施療する、請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記施療態様には施療強度が含まれる、請求項1又は2に記載のマッサージ機。
【請求項4】
前記施療部は、空気袋を膨張収縮して施療部位を施療するエア施療部と、もみ玉を介して施療部位を施療する機械施療部と、を有し、
前記エア施療部で施療される施療部位の施療態様には前記空気袋の膨張収縮テンポが含まれ、前記機械施療部で施療される施療部位の施療態様には施療位置及び施療速度が含まれる、請求項1乃至3のうちいずれか一の項に記載のマッサージ機。
【請求項5】
前記複数のグループには、首から腰にかけての施療部位からなる第1グループ、大腿部から足裏にかけての施療部位からなる第2グループ、上腕から手のひらにかけての施療部位からなる第3グループが含まれる、請求項1乃至4のうちいずれか一の項に記載のマッサージ機。
【請求項6】
前記詳細態様設定モードが中止されたとき、前記保存部は、当該詳細態様設定モードが中止される前に設定された施療部位の施療態様を含む態様組合せの保存が可能である、請求項1乃至5のうちいずれか一の項に記載のマッサージ機。
【請求項7】
前記態様設定モードにおいて設定対象を表示する表示部をさらに備える、請求項1乃至6のうちいずれか一の項に記載のマッサージ機。
【請求項8】
前記態様設定モードにおいて設定対象をアナウンスする音声出力部をさらに備える、請求項1乃至7のうちいずれか一の項に記載のマッサージ機。
【請求項9】
前記保存部は、複数の態様組合せを記憶可能であり、
前記駆動制御部は、前記保存部に保存された複数の態様組合せのうちの1つを選択し、
選択した態様組合せに基づいて施療部を駆動する、請求項1乃至8のうちいずれか一の項に記載のマッサージ機。
【請求項10】
時計部をさらに備え、
前記駆動制御部は、前記時計部から取得した時刻情報に基づいて、前記保存部に保存された複数の態様組合せのうちの1つを選択する、請求項9に記載のマッサージ機。
【請求項11】
前記駆動制御部は、異なるマッサージコースにおいても前記保存部に保存された複数の態様組合せから同一の態様組合せを選択可能である、請求項9に記載のマッサージ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、複数のエアーバックを備え、各エアーバッグによるマッサージ力の強さを体感しながら、エアーバッグ毎にマッサージ力の強さを設定できるマッサージ機が開示されている。このマッサージ機では、リモコンのボタンで施療部位と強さをそれぞれ選択すると、選択した施療部位が選択した強さで施療される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のマッサージ機は、マッサージ中に強さを設定する場合にはマッサージが一旦中断されてしまい、また、各施療部位のマッサージ力の強さを設定するには施療部位を1つずつ選択する必要がある。このように、上記のマッサージ機は、マッサージ力の強さを設定する操作が煩わしいという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、複数の施療部位の施療態様を設定するにあたり、設定操作の煩わしさを軽減したマッサージ機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るマッサージ機は、複数の施療部位を施療する施療部と、各施療部位の施療態様を設定する設定部と、前記各施療部位の施療態様の組合せである態様組合せを保存する保存部と、前記保存部に保存された前記態様組合せに基づいて前記施療部を駆動する駆動制御部と、を備え、前記設定部が設定対象の施療部位を順に切り換えながら各施療部位の施療態様を設定するとともに設定した施療態様を一時的に記憶し、前記駆動制御部が一時的に記憶された前記施療態様に基づいて前記施療部を駆動して設定対象の施療部位を試行的に施療する態様設定モードを有する。
【0007】
この構成によれば、各施療部位の施療態様を態様設定モードにおいて設定するため、マッサージが中断されることはない。また、態様設定モードでは、設定部が設定対象の施療部位を順に切り換えていくため、被施療者は設定対象を選択していく必要がない。よって、上記のマッサージ機によれば、複数の施療部位の施療態様を設定するにあたり、設定操作の煩わしさを軽減することができる。
【0008】
また、上記のマッサージ機において、前記態様設定モードにおいて前記駆動制御部は設定対象の施療部位のみを施療するようにしてもよい。
【0009】
この構成によれば、施療態様を設定するにあたり、設定対象の施療部位のみが施療されるため、被施療者は設定された施療態様の適否を的確に判断でき、施療態様の設定を適切に行うことができる。
【0010】
また、上記のマッサージ機において、前記施療態様には施療強度が含まれるようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、各施療部位の施療強度を設定することができるため、被施療者の状況に応じた適切な施療を行うことができる。
【0012】
また、上記のマッサージ機において、前記施療部は、空気袋を膨張収縮して施療部位を施療するエア施療部と、もみ玉を介して施療部位を施療する機械施療部と、を有し、前記エア施療部で施療される施療部位の施療態様には前記空気袋の膨張収縮テンポが含まれ、前記機械施療部で施療される施療部位の施療態様には施療位置及び施療速度が含まれるようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、施療部の構造に応じて施療態様を設定することができるため、各施療部位を適切に施療することができる。
【0014】
また、上記のマッサージ機において、前記態様設定モードには選択可能な簡易態様設定モードが含まれており、前記簡易態様設定モードにおいて、前記設定部は、前記複数の施療部位を複数のグループに分類し、1つの施療部位の施療態様を設定することにより、前記1つの施療部位が属するグループの前記1つの施療部位以外の全ての施療部位の施療態様を前記1つの施療部位と同じ施療態様に設定するようにしてもよい。
【0015】
この構成によれば、各グループでそれぞれ1つの施療部位について施療態様の設定を行えば、全ての施療部位についての施療態様の設定が完了する。そのため、各施療部位の施療態様の設定作業を速やかに行うことができる。
【0016】
また、上記のマッサージ機において、前記複数のグループには、首から腰にかけての施療部位からなる第1グループ、大腿部から足裏にかけての施療部位からなる第2グループ、上腕から手のひらにかけての施療部位からなる第3グループが含まれるようにしてもよい。
【0017】
この構成によれば、各施療部位は上半身、脚、腕の領域に応じたグループに分類されるため、設定作業を速やかに行いつつ、各施療部位の施療態様をおおむね的確に設定することができる。
【0018】
また、上記のマッサージ機において、前記態様設定モードには選択可能な詳細態様設定モードが含まれており、前記詳細態様設定モードにおいて、前記設定部は、前記複数の施療部位の施療態様を個々に全て設定するようにしてもよい。
【0019】
この構成によれば、各施療部位の施療態様を的確に設定することができる。また、簡易態様設定モードと詳細態様設定モードを選択することができるため、設定作業を速やかに行うことを優先するか、設定の的確さを優先するかを状況に応じて選択することができる。
【0020】
また、上記のマッサージ機において、前記詳細態様設定モードが中止されたとき、前記保存部は、当該詳細態様設定モードを中止する前に設定された施療部位の施療態様を含む態様組合せの保存を行うことができるようにしてもよい。
【0021】
この構成によれば、詳細態様設定モードを中止した場合であっても、中止するまでに行った作業が無駄にならないようにすることができる。
【0022】
また、上記のマッサージ機において、前記態様設定モードにおいて設定対象を表示する表示部をさらに備えるようにしてもよい。
【0023】
この構成によれば、被施療者は設定対象を把握することができるため、各施療部位の施療態様を設定する作業を集中して行うことができる。
【0024】
また、上記のマッサージ機において、前記態様設定モードにおいて設定対象をアナウンスする音声出力部をさらに備えるようにしてもよい。
【0025】
この構成の場合も、被施療者は設定対象を把握することができるため、各施療部位の施療態様を設定する作業を集中して行うことができる。
【0026】
また、上記のマッサージ機において、前記保存部は、複数の態様組合せを記憶可能であり、前記駆動制御部は、前記保存部に保存された複数の態様組合せのうちの1つを選択し、選択した態様組合せに基づいて施療部を駆動するようにしてもよい。
【0027】
この構成によれば、被施療者の状況に応じて態様組合せを選択することができるため、被施療者の状況に応じて適切な施療を行うことができる。
【0028】
また、上記のマッサージ機において、時計部をさらに備え、前記駆動制御部は、前記時計部から取得した時刻情報に基づいて、前記保存部に保存された複数の態様組合せのうちの1つを選択するようにしてもよい。
【0029】
一般的に、起床後における適切な施療態様と就寝前における適切な施療態様は異なる。そのため、上記の構成によれば、施療を行う時刻に応じた適切な施療を行うことができる。
【0030】
また、上記のマッサージ機において、前記駆動制御部は、異なる施療コースにおいても前記保存部に保存された複数の態様組合せから同一の態様組合せを選択可能であるようにしてもよい。
【0031】
この構成によれば、いずれのマッサージコースを選択しても、被施療者にとって適切な施療態様で施療を行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のとおり、上記のマッサージ機によれば、複数の施療部位の施療態様を設定するにあたり、設定操作の煩わしさを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】
図2は、マッサージ機における制御系の構成のブロック図である。
【
図3】
図3は、各施療部位の施療態様を設定する操作を説明するための図である。
【
図4】
図4は、各施療部位の施療態様を設定する操作を説明するための図である。
【
図5】
図5は、各施療部位の施療態様を設定する操作を説明するための図である。
【
図6】
図6は、各施療部位の施療態様を設定する操作を説明するための図である。
【
図7】
図7は、各施療部位の施療態様を設定する操作を説明するための図である。
【
図8】
図8は、各施療部位の施療態様を設定する操作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<全体構成>
以下、本発明の一実施形態に係るマッサージ機100について説明する。はじめに、マッサージ機100の全体構成について説明する。
図1は本実施形態に係るマッサージ機100の概略図である。
図1に示すように、マッサージ機100は、椅子型のマッサージ機本体10と、被施療者の複数の施療部位を施療する施療部20と、所定の情報を表示および入力する入力表示装置30と、マッサージ機100全体を制御する制御装置40と、を備えている。
【0035】
マッサージ機本体10は、被施療者が座る座部11と、座部に接続された背もたれ部12と、被施療者の脚を載せる脚載せ部13と、被施療者の腕を挿入する腕挿入部14と、を有している。
【0036】
施療部20は、背中機械施療部21と、ふくらはぎエア施療部22と、足裏エア施療部23と、腕エア施療部24と、手のひらエア施療部25と、を有している。
【0037】
背中機械施療部21は、背もたれ部12に設けられており、もみ玉26を介して施療を行う。背中機械施療部21は、背もたれ部12に沿って移動できるように構成されており、被施療者の首、肩、背中上部、背中下部、及び腰の各施療部位を施療することができる。
【0038】
ふくらはぎエア施療部22は、脚載せ部13に設けられており、空気袋27を膨張収縮して被施療者のふくらはぎを施療する。足裏エア施療部23は、脚載せ部13に設けられており、空気袋27を膨張収縮して被施療者の足裏を施療する。腕エア施療部24は、腕挿入部14に設けられており、空気袋27を膨張収縮して被施療者の前腕を施療する。手のひらエア施療部25は、腕挿入部14に設けられており、空気袋27を膨張収縮して被施療者の手のひらを施療する。
【0039】
入力表示装置30は、被施療者の画面操作を検知する入力部31と、所定の画面を表示する表示部32と、所定の音声を出力する音声出力部33とを有している。本実施形態の入力部31と表示部32は一体に形成されており、いわゆるタッチパネルを構成している。
【0040】
制御装置40は、CPU、ROM、及びRAM等によって構成されており、種々の演算を行うとともに、マッサージ機100全体を制御する。制御系の詳細な構成は、以下で説明する。
【0041】
<制御系の構成>
次に、本実施形態に係るマッサージ機100の制御系の構成について説明する。
図2は、マッサージ機100における制御系の構成のブロック図である。制御装置40は、入力表示装置30の入力部31と電気的に接続されており、入力部31から操作信号を受信することにより操作情報を取得する。また、制御装置40は、施療部20、表示部32、音声出力部33と電気的に接続されており、それぞれ制御信号、表示信号、及び音声信号を送信する。これらの信号に基づいて、施療部20は施療を行い、表示部32は所定の画面を表示し、音声出力部33は所定の音声を出力する。
【0042】
制御装置40は、機能的な構成として、設定部41と、保存部42と、時計部43と、駆動制御部44とを有している。設定部41は、各施療部位の施療態様(施療強度、空気袋27の膨張収縮のテンポ、施療位置、及び施療速度)を設定する機能を有している。保存部42は、設定部41で設定した各施療部位の施療態様の組合せである「態様組合せ」を保存する機能を有している。時計部43は、時刻情報を発信する機能を有している。駆動制御部44は、態様組合せに基づいて施療部20を駆動する機能を有している。
【0043】
<詳細態様設定の操作>
次に、本実施形態に係るマッサージ機100における、各施療部位の施療態様を設定する操作について説明する。
図3乃至
図8は、各施療部位の施療態様を設定する操作を説明するための図であって、表示部32に表示される画面を示している。
【0044】
本実施形態に係るマッサージ機100は、複数のマッサージコースを有しており、被施療者は所望のマッサージコースを選択することができる。被施療者がいずれかのマッサージコースを選択すると、マッサージ機100は、はじめに肩位置検出を行う。つまり、マッサージ機100は、被施療者の上半身に沿うようにして背中機械施療部21を移動させ、その時に背中機械施療部21に設けられた図外のセンサが検出した検出結果に基づいて、被施療者の肩位置を算出する。この肩位置検出を行うことにより、被施療者の首、肩、背中上部、背中下部、及び腰の各施療部位の適切な施療位置を予測することができる。
【0045】
肩位置検出が終了すると、表示部32は
図3に示す画面を表示する。本実施形態に係るマッサージ機100は、各施療部位の施療態様を設定するための態様設定モードを有している。また、態様設定モードには、選択可能な「詳細態様設定モード」及び「簡易態様設定モード」が含まれている。
図3で示す画面において、被施療者が「全身(オール)調節に4分程度時間がかかります」と記載されたオールボタン51に触れると(つまり、タッチパネルを構成する入力部31におけるオールボタン51に対応する部分に触れると)、マッサージ機100は詳細態様設定モードに移行する。一方、「全身(クイック)調節に2分程度時間がかかります」と記載されているクイックボタン52に触れると、マッサージ機100は簡易態様設定モードに移行する。
【0046】
ここでは、まず詳細態様設定モードについて説明する。マッサージ機100が詳細態様設定モードに移行した場合、はじめに首の施療態様の設定を行う。このとき、表示部32は、
図4に示す画面を表示する。具体的には、表示部32は設定対象と操作ボタン60を表示する。本実施形態では、設定対象(設定対象が首であること)を「首の強さを調整中です」という文字と、強ボタン61の矢印で首を指し示す図で表示している。ただし、設定対象は別の方法で表示してもよい。また、表示部32が表示する操作ボタン60には、矢印形状の強ボタン61、弱ボタン62、上ボタン63、及び下ボタン64、矩形状の切ボタン65、速ボタン67、及び遅ボタン68、並びに円形の決定ボタン66が含まれる。
【0047】
なお、本実施形態では、表示部32は、設定対象及び操作ボタン60の他、「ボタンを押し、気持ちのよい強さ、位置になるように調整して下さい。」という文字からなるガイド情報も表示している。このような、ガイド情報を表示することで、被施療者の誤操作を防ぐとともに設定操作をスムーズに行うことができる。また、表示部32は、上記のとおり設定対象やガイド情報を表示するが、この表示とともに又はこの表示に代えて音声出力部33が設定対象やガイド情報を出力(アナウンス)してもよい。なお、以上のように構成する結果、被施療者が設定対象を確実に認知できれば、各施療部位の施療態様を集中した状態で設定することができる。
【0048】
被施療者は、操作ボタン60を操作することによって各施療部位の施療態様を設定する。被施療者が操作ボタン60のいずれかに触れると、入力部31が制御装置40に操作信号を送信し、設定部41はこの操作信号を受信することにより被施療者がいずれの操作ボタン60に触れたかの操作情報を取得する。設定部41は、取得した操作情報に基づいて、設定対象である施療部位の施療態様を設定する。
【0049】
ここで、設定対象の施療部位は、機械施療部(背中機械施療部21)で施療されるか、エア施療部(ふくらはぎエア施療部22、足裏エア施療部23、腕エア施療部24、手のひらエア施療部25)で施療されるかによって、設定を行う施療態様が異なる。機械施療部で施療される施療部位では「施療強度」と「施療位置」と「施療速度」を設定する一方、エア施療部で施療される施療部位では「施療強度」と「空気袋27の膨張収縮テンポ」を設定する。
【0050】
設定対象が首の場合、首は機械施療部(背中機械施療部21)で施療されることから、設定部41は施療強度と施療位置を設定する。施療強度の設定は次のようにして行う。設定部41は、被施療者が強ボタン61に触れたという情報を取得した場合には施療強度を既に設定されている値よりも大きい値に設定し、被施療者が弱ボタン62に触れたという情報を取得した場合には施療強度を既に設定されている値より小さい値に設定する。また、設定部41は、設定した施療強度を一時的に記憶する。そして、駆動制御部44は施療部20(背中機械施療部21)を駆動し、設定部41が一時的に記憶した施療強度で首のみを試行的に施療する。これにより、被施療者は首の施療強度を体感しながら施療強度を設定することができる。なお、設定部41は、被施療者が切ボタン65に触れたという情報を取得した場合には、首の施療を中止する(つまり、施療強度がゼロである)設定を行う。
【0051】
また、施療位置の設定は次のようにして行う。設定部41は、被施療者が上ボタン63に触れたという情報を取得した場合には施療位置を既に設定されている位置よりも上方に設定し、被施療者が下ボタン64に触れたという情報を取得した場合には施療位置を既に設定されている位置よりも下方に設定する。また、設定部41は、設定した施療位置を一時的に記憶する。このとき、駆動制御部44は施療部20(背中機械施療部21)を駆動し、設定部41が一時的に記憶した施療位置で首を試行的に施療する。これにより、被施療者は首の施療位置を体感しながら施療位置を設定することができる。なお、前述のとおり、肩位置検出により首の適切な施療位置は予測できるが、以上の手順により施療位置を体感しながら首の施療位置を微調整することができる。
【0052】
また、施療速度の設定は次のようにして行う。設定部41は、被施療者が速ボタン67に触れたという情報を取得した場合には施療速度を既に設定されている速度よりも早く設定し、被施療者が遅ボタン68に触れたという情報を取得した場合には施療速度を既に設定されている速度よりも遅く設定する。また、設定部41は、設定した施療速度を一時的に記憶する。このとき、駆動制御部44は施療部20(背中機械施療部21)を駆動し、設定部41が一時的に記憶した施療速度で首を試行的に施療する。これにより、被施療者は首の施療速度を体感しながら施療速度を設定することができる。設定した施療速度は、速ボタン67と遅ボタン68の間に表示された図でも確認することができる。なお、本実施形態における施療速度とは、もみ玉26でもみ施療を行う場合には「もみ速度」であり、たたき施療を行う場合には「たたき速度」である。
【0053】
被施療者は、首の施療強度及び施療位置について適正であると判断した場合には、決定ボタン66に触れる。設定部41は、被施療者が決定ボタン66に触れたという情報を取得した場合には、設定対象を切り換える。具体的には、設定部41は、設定対象となる施療部位を首から肩に切り換える。設定対象が肩に切り換わると、表示部32は、
図5に示す画面を表示する。つまり、表示部32は、切り換わった設定対象(つまり、肩)と操作ボタン60を表示する。なお、肩の施療態様を設定するための操作ボタン60に含まれる各種ボタンは、首の施療態様を設定するための操作ボタン60に含まれるものと同じである。
【0054】
設定部41は、被施療者が操作する操作ボタン60から取得する操作情報に基づいて、肩の施療態様を設定する。肩の施療態様を設定する方法は、首の施療態様を設定する方法と同じである。被施療者は、肩の施療強度、施療位置、及び施療速度について適正であると判断した場合には、決定ボタン66に触れる。設定部41は、被施療者が決定ボタン66に触れたという情報を取得した場合には、設定対象を背中上部に切り換える。以後同様に作業を進めることにより、設定部41は、首、肩、背中上部、背中下部、及び腰の順で設定対象の施療部位を切り換えながら、各施療部位の施療態様を設定するとともに、設定した施療態様を一時的に記憶してゆく。
【0055】
設定部41は、腰の施療態様を設定した後、設定対象をふくらはぎに切り換える。このとき、表示部32は、
図6に示す画面を表示する。表示部32は、首や肩などの施療態様を設定する場合と同じように、設定対象と操作ボタン60を表示する。ただし、ふくらはぎは、エア施療部(ふくらはぎエア施療部22)で施療されるため、設定する施療態様は施療強度と空気袋27の膨張収縮テンポである。そのため、表示部32が表示する操作ボタン60には、
図4及び
図5で示した上ボタン63及び下ボタン64は含まれず、速ボタン67及び遅ボタン68は空気袋27の膨張収縮テンポを設定するために使用される。つまり、表示部32は、操作ボタン60として、強ボタン61、弱ボタン62、速ボタン67、遅ボタン68、切ボタン65、及び決定ボタン66を表示する。
【0056】
ふくらはぎの施療強度の設定方法は、首や肩などの施療強度の設定方法と同じである。一方、ふくらはぎの空気袋27の膨張収縮テンポの設定は次のようにして行う。設定部41は、被施療者が速ボタン67に触れたという情報を取得した場合には空気袋27の膨張収縮テンポを既に設定されているテンポよりも速いテンポに設定し、被施療者が遅ボタン68に触れたという情報を取得した場合には空気袋27の膨張収縮テンポを既に設定されているテンポよりも遅いテンポに設定する。また、設定部41は設定した空気袋27の膨張収縮テンポを一時的に記憶する。そして、駆動制御部44は施療部20(ふくらはぎエア施療部22)を駆動し、設定部41が一時的に記憶した空気袋27の膨張収縮テンポでふくらはぎのみを試行的に施療する。
【0057】
被施療者は、ふくらはぎの施療強度及び空気袋27の膨張収縮テンポについて適正であると判断した場合には、決定ボタン66に触れる。設定部41は、被施療者が決定ボタン66に触れたという情報を取得した場合には、設定対象となる施療部位を足裏に切り換える。以降同様に作業を進めることにより、設定部41は、ふくらはぎ、足裏、前腕、手のひらの順で設定対象の施療部位を切り換えながら、各施療部位の施療態様を設定するとともに、設定した施療態様を一時的に記憶してゆく。
【0058】
以上の操作で、各施療部位の施療態様が設定される。その後、表示部32は
図7に示す確認画面を表示する。具体的には、表示部32は、「この設定でよろしいでしょうか?よろしければ、「決定」ボタンを押して下さい。調整したい箇所があれば、その箇所の強さのボタンを押して下さい。」という文字からなるガイド情報を表示するとともに、設定部41が一時的に記憶した各施療部位の施療強度を図と文字で表示する。また、表示部32は、決定ボタン70を表示する。
【0059】
被施療者が、施療部位の施療強度が表示されている部分に触れると、触れた施療部位の施療態様を再度設定することができる。なお、
図6では、各施療部位の施療強度を「切」、「弱」、「中」、「強」の4段階で表示しているが、施療強度をより細かく設定してもよい。この場合、例えば施療強度を数値で表示してもよい。
【0060】
また、被施療者が決定ボタン70に触れると、表示部32は
図8で示す画面を表示する。具体的には、表示部32は、「今回の設定を保存しますか?保存する場所は保存場所を選択し、「保存してコース開始」ボタンを押して下さい。すでにデータがある場所に保存した場合、保存されていたデータは無くなります。」という文字からなるガイド情報を表示するとともに、各施療部位の施療強度を図と文字で表示する。さらに、表示部32は、4つの保存場所ボタン71と、開始ボタン72と、保存ボタン73とを表示する。
【0061】
本実施形態では、4か所に設定部41が一時的に記憶した各施療部位の施療態様の組合せである態様組合せを保存することができる。つまり、4組の態様組合せを保存することができる。具体的には、被施療者が4つの保存場所ボタン71のいずれかに触れ、続いて保存ボタン73に触れると、設定部41が一時的に記憶した態様組合せが保存部42の対応する保存場所に保存される。そして、その後詳細態様設定モードが終了して当初選択したマッサージコースが開始される。一方、被施療者が開始ボタン72に触れると、態様組合せは保存されることなく詳細態様設定モードが終了して当初選択したマッサージコースが開始される。また、各マッサージコースでは、駆動制御部44は保存部42に保存された態様組合せに基づいて施療部20を駆動する。なお、保存場所の名称(保存場所ボタン71に表示される名称)は任意に設定することができる。
【0062】
また、
図3乃至
図8で示すように、画面にコース選択ボタン53が含まれる。被施療者がこのコース選択ボタン53に触れると、表示部32はマッサージコースを選択するための画面を表示する。そして、詳細態様設定モードにおいて、被施療者がこのコース選択ボタン53に触れた場合には、詳細態様設定モードは中止される。この場合、詳細態様設定モードが中止される前に設定され一時的に保存された施療部位の施療態様を含んだ態様組合せを保存部42に保存することができる。これにより、詳細態様設定モードで行った作業が無駄になるのを防ぐことができる。
【0063】
なお、詳細態様設定モードが中止されたとき、詳細態様設定モードが中止される前に施療態様が設定されなかった施療部位(以下、「未設定施療部位」と称す)については、既に保存されている施療態様が適用される。ここで、本実施形態では、各施療部位の施療強度の初期設定を「弱」としている。そのため、事前に施療態様の設定が行われていない場合、未設定施療部位の施療強度は「弱」に設定される。本実施形態において、各施療部位の施療強度の初期設定を「弱」としているのは、被施療者が安心して施療できるようにするためである。
【0064】
<簡易態様設定の操作>
次に、簡易態様設定モードについて説明する。前述のとおり、
図3に示す画面において、被施療者がクイックボタン52に触れることでマッサージ機100が簡易態様設定モードに移行する。マッサージ機100が簡易態様設定モードに移行した場合、はじめに首の施療態様の設定を行う。簡易態様設定モードにおける首の施療態様の設定方法は、詳細態様設定モードにおける首の施療態様の設定方法と同じである。よって、このとき表示部32は、
図4に示す画面を表示する。
【0065】
ここで、簡易態様設定モードにおいては、設定部41は各施療部位を、首から腰にかけての施療部位(首、肩、背中上部、背中下部、腰)からなる第1グループ、大腿部から足裏にかけての施療部位(ふくらはぎ、足裏)からなる第2グループ、上腕から手のひらにかけての施療部位(前腕、手のひら)からなる第3グループに分類する。そして、設定部41は、1つの施療部位の施療態様を設定することにより、当該1つの施療部位が属するグループの当該1つの施療部位以外の全ての施療部位の施療態様を当該1つの施療部位と同じ施療態様に設定する。
【0066】
例えば、首の施療強度を「中」に設定した後、設定部41は被施療者が決定ボタン66に触れたという情報を取得すると、首が属する第1グループの肩、背中上部、背中下部、腰の施療強度を首の施療強度と同じ「中」に設定する。そして、設定部41は、設定した首、肩、背中上部、背中下部、腰の施療強度を一時的に記憶する。なお、第1グループにおける施療態様の反映は、施療強度及び施療速度については行うが、施療位置については行わない。
【0067】
その後、設定部41は、施療対象をふくらはぎに切り換えて、ふくらはぎの施療態様を設定する。簡易態様設定モードにおけるふくらはぎの施療態様の設定方法は、詳細態様設定モードにおけるふくらはぎの施療態様の設定方法と同じである。よって、このとき表示部32は、
図6に示す画面を表示する。そして、第2グループにおいても施療態様の反映を行う。例えば、ふくらはぎの施療強度を「強」に設定した後、設定部41は被施療者が決定ボタン66に触れたという情報を取得すると、ふくらはぎが属する第2グループの足裏の施療強度をふくらはぎの施療強度と同じ「強」に設定する。なお、第2グループでは、施療態様のうち施療強度及び空気袋27の膨張収縮テンポの両方について他の施療部位に反映する。そして、設定部41は、設定したふくらはぎ及び足裏の施療態様を一時的に記憶する。
【0068】
その後、設定部41は、施療対象を前腕に切り換えて、前腕の施療態様を設定する。前腕の施療態様の設定方法は、ふくらはぎの施療態様の設定方法と同じである。第3グループにおいても施療態様の反映を行う。例えば、前腕の施療強度を「ゼロ(切)」に設定した後、設定部41は被施療者が決定ボタン66に触れたという情報を取得すると、前腕が属する第3グループの手のひらの施療強度を前腕の施療強度と同じ「ゼロ」に設定する。なお、第2グループと同様、第3グループにおいても、施療態様のうち施療強度及び空気袋27の膨張収縮テンポの両方について他の施療部位に反映する。この場合、設定部41は、設定した前腕及び手のひらの施療態様を一時的に記憶する。
【0069】
その後、詳細態様設定モードと同じようにして、設定部41が一時的に記憶した各施療部位の施療態様の組合せである態様組合せを保存部42に保存する。このように、簡易態様設定モードでは、各グループの1つの施療部位について施療態様の設定を行えば、全ての施療部位における施療態様の設定が完了する。そのため、各施療部位の施療態様の設定を速やかに行うことができる。しかも、本実施形態では、各施療部位を上半身、脚、及び腕に応じてグループ分けしているため、各施療部位の施療態様をほぼ適切に設定することができる。
【0070】
ただし、簡易態様設定モードにおけるグループ分けは、上記のものに限られない。例えば、各施療部位を首から腰にかけての施療部位からなる第1グループ、臀部から大腿部にかけての施療部位からなる第2グループ、ふくらはぎから足裏にかけての施療部位からなる第3グループといったように分類してもよい。
【0071】
また、以上では、マッサージコースを選択した後に、態様設定モードに移行する場合について説明したが、マッサージコースを選択した後に毎回態様設定モードに移行しなくてもよい。つまり、保存部42が保存した態様組合せから1つ選択することにより、選択した態様組合せに基づいて各マッサージコースを行うこともできる。具体的には、表示部32が
図3に示す画面を表示しているときに、被施療者は「すでにある設定を使用」と記載された設定使用ボタン54に触れると画面が切り換わり、その切り換わった画面によって保存した態様組合せを選択することができる。そして、選択した態様組合せに基づいて駆動制御部44は施療部20を駆動して施療が行われる。
【0072】
また、保存部42に保存された態様組合せの選択を被施療者が行うのではなく、駆動制御部44が行ってもよい。例えば、駆動制御部44は、時計部43から取得した時刻情報に基づいて、保存部42に保存された複数の態様組合せのうちの1つを選択してもよい。具体的には、駆動制御部44は、午前中には施療強度が比較的強く設定された態様組合せを選択し、夜には施療強度が比較的弱く設定された態様組合せを選択する。一般的には起床後においては体を活性させるために施療強度が強いマッサージが適切であるとされ、就寝前においてはリラックスできるように施療強度が弱いマッサージが適切であるとされている。そのため、上記のように構成すれば、被施療者がマッサージを行うときの状況に応じて適切な施療を行うことができる。
【0073】
なお、
図3の画面には、「すぐにコース開始強さは全て「弱」になります」と記載された開始ボタン55が示されている。被施療者がこの開始ボタン55に触れると、各施療部位の施療強度が弱に設定された状態でマッサージが行われる。そのため、態様組合せを保存する前には、被施療者はこの開始ボタン55に触れることでマッサージコースを開始することができる。
【0074】
以上のとおり、本実施形態に係るマッサージ機100は、設定部41が設定対象の施療部位を順に切り換えながら各施療部位の施療態様を設定するとともに設定した施療態様を一時的に記憶し、駆動制御部44が一時的に記憶された施療態様に基づいて施療部20を駆動して設定対象の施療部位を試行的に施療する態様設定モードを有している。そのため、各施療部位の施療態様を設定する際にマッサージが中断されることはなく、また、被施療者は設定対象を選択していく必要がない。よって、本実施形態に係るマッサージ機100によれば、複数の施療部位の施療態様を設定するにあたり、設定操作の煩わしさを軽減することができる。
【0075】
なお、上記のとおり、本実施形態の施療部位は、首、肩、背中上部、背中下部、腰、ふくらはぎ、足裏、前腕、及び手のひらであったが、施療部位はこれらに限られない。例えば、被施療者の臀部、大腿部、及び上腕を施療する施療部をマッサージ機100に設け、施療部位として臀部、大腿部、及び上腕等を追加してもよい。
【符号の説明】
【0076】
20 施療部
21 背中機械施療部
22 ふくらはぎエア施療部
23 足裏エア施療部
24 腕エア施療部
25 手のひらエア施療部
26 もみ玉
27 空気袋
32 表示部
33 音声出力部
41 設定部
42 保存部
43 時計部
44 駆動制御部
100 マッサージ機