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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】車椅子電動化装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/04 20130101AFI20220405BHJP
【FI】
A61G5/04 711
A61G5/04 707
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018003986
(22)【出願日】2018-01-15
(65)【公開番号】P2019122506
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 玄
(72)【発明者】
【氏名】有賀 嵩紘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 敦
(72)【発明者】
【氏名】野田 康平
(72)【発明者】
【氏名】元岡 歩
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆
(72)【発明者】
【氏名】東 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】犬尾 武
(72)【発明者】
【氏名】清水 治代
(72)【発明者】
【氏名】山西 博道
(72)【発明者】
【氏名】川端 眞人
(72)【発明者】
【氏名】上原 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】森田 智好
(72)【発明者】
【氏名】武田 英敏
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-035046(JP,A)
【文献】特開平11-155911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/04
A61G 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動車椅子の第1のフレームに着脱され、前記手動車椅子の第1の後輪を回転駆動させるための第1の駆動部と、
前記手動車椅子の第2のフレームに着脱され、前記手動車椅子の第2の後輪を回転駆動させるための第2の駆動部と
を具備し、
前記各第1、第2の駆動部は、
前記第1、第2のフレームの1つに固定される第1のベースと、
前記第1のベース上に移動可能に設けられた第2のベースと、
前記手動車椅子の第1、第2の後輪の1つをその側面から挟み込むための1対のローラと、
前記第2のベース上に固定され、前記1対のローラを互いに反対方向に回転させるための回転機構と、
前記回転機構を駆動させるためのモータと、
前記第1、第2のベースの間に組込まれ、前記第2のベースを前記第1のベースに相対的に移動させて前記1対のローラの前記第1、第2の後輪の前記1つの両側面への脱着を行うためのトグルクランプ機構と
を具備する車椅子電動化装置。
【請求項2】
さらに、
前記各第1、第2の駆動部のモータを制御するための制御ユニットと、
前記制御ユニットに接続された操作インタフェースと
を具備する請求項1に記載の車椅子電動化装置。
【請求項3】
手動車椅子の第1のフレームに着脱され、前記手動車椅子の第1の後輪を回転駆動させるための第1の駆動部と、
前記手動車椅子の第2のフレームに着脱され、前記手動車椅子の第2の後輪を回転駆動させるための第2の駆動部と、
前記各第1、第2の駆動部のモータを制御するための制御ユニットと、
前記制御ユニットに接続された操作インタフェースと
を具備し、
前記操作インタフェースは全方向移動スタンド上に設けられ、
前記全方向移動スタンドは、
前記手動車椅子の背もたれに接続可能な第1の取付部と、
前記手動車椅子の横方向の第3のフレームに接続可能な第2の取付部
を具備し、
前記操作インタフェースは、前記第1の取付部が前記背もたれに接続されたときに前記制御ユニットに第1の接続信号を送出するようにし、前記第2の取付部が前記第3のフレームに接続されたときに前記制御ユニットに第2の接続信号を送出するようにした車椅子電動化装置。
【請求項4】
前記第1の取付部は前記全方向移動スタンドに上下方向に摺動可能である請求項に記載の車椅子電動化装置。
【請求項5】
前記第2の取付部は前記第3のフレームに水平方向に摺動可能である請求項に記載の車椅子電動化装置。
【請求項6】
前記操作インタフェースは、
横ハンドルと、
前記横ハンドルが直動方向に移動したときに直動方向信号を発生するための直動変位センサと、
前記横ハンドルが捩り方向に捩られたときに斜行方向信号を発生するための回転角度センサと
を具備する請求項に記載の車椅子電動化装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記直動方向信号、前記斜行方向信号、前記第1、第2の接続信号に応じて前記第1、第2の後輪のモータを駆動する請求項に記載の車椅子電動化装置。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記斜行方向信号及び前記第1の接続信号を受信した場合には、前記第1、第2の後輪のモータを駆動して前記手動車椅子を前記第1、第2の後輪の車軸上の旋回中心に対して旋回させるようにした請求項に記載の車椅子電動化装置。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記斜行方向信号及び前記第2の接続信号を受信した場合には、前記第1、第2の後輪のモータを駆動して前記手動車椅子を前記第1、第2の後輪の車軸上の前記手動車椅子と前記全方向移動スタンドとの中間位置の旋回中心に対して旋回させるようにした請求項に記載の車椅子電動化装置。
【請求項10】
前記操作インタフェースは、
前記手動車椅子の肘掛けに設けられたジョイスティックと、
前記ジョイスティックが直動方向に移動したときに直動方向信号を発生するための第1の回転角度センサと、
前記ジョイスティックが捩り方向に移動したときに斜行方向信号を発生するための第2の回転角度センサと
を具備する請求項に記載の車椅子電動化装置。
【請求項11】
前記制御ユニットは、前記直動方向信号、前記斜行方向信号に応じて前記第1、第2の後輪のモータを駆動する請求項10に記載の車椅子電動化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手動車椅子を電動化するための車椅子電動化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
足が不自由な人の移動のための車椅子として手動車椅子及び電動車椅子がある。手動車椅子の移動は、搭乗者が後輪のハンドリムを回すことによって又は介助者が手押しハンドルを押すことによって行われ、搭乗者又は介助者の労力が大きい。他方、電動車椅子は電動モータによる移動のために搭乗者又は介助者の労力を低減できる。しかし、手動車椅子に代えて電動車椅子を採用することは、電動車椅子が高価であること、かつ手動車椅子を廃棄することから、経済的な負担が大きい。このような経済的負担を低減するために、手動車椅子を電動化するための車椅子電動化装置が提案されている。
【0003】
第1の従来の車椅子電動化装置は、手動車椅子の前輪に対して着脱自在の取付部と、取付部に設けられた1対の電動車輪及び1対の従動輪よりなる駆動部とによって構成されている(参照:特許文献1)。
【0004】
第2の従来の車椅子電動化装置は、手動車椅子の後輪を掬い上げて載置するための略平板状の基体と、車軸が一直線上にあり基体の左右に設けられた1対の電動車輪と、基体の下面後方に設けられた1対の補助輪とによって構成されている。この場合、基体の電動車輪の車軸と補助輪との間の位置に後輪載置孔が設けられている(参照:特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-187472号公報
【文献】特開2011-87728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の第1の従来の車椅子電動化装置においては、取付部の手動車椅子への取付けは容易であるも、電動車輪は小径となるので、移動性能が低いという課題がある。
【0007】
また、上述の第2の従来の車椅子電動化装置においては、手動車椅子の後輪を掬い上げて載置することは容易であるも、電動車輪は小径となるので、移動性能が低いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明に係る車椅子電動化装置は、手動車椅子の第1のフレームに着脱され、手動車椅子の第1の後輪を回転駆動させるための第1の駆動部と、手動車椅子の第2のフレームに着脱され、手動車椅子の第2の後輪を回転駆動させるための第2の駆動部とを具備し、各第1、第2の駆動部は、第1、第2のフレームの1つに固定される第1のベースと、第1のベース上に移動可能に設けられた第2のベースと、手動車椅子の第1、第2の後輪の1つをその側面から挟み込むための1対のローラと、第2のベース上に固定され、1対のローラを互いに反対方向に回転させるための回転機構と、回転機構を駆動させるためのモータと、第1、第2のベースの間に組込まれ、第2のベースを第1のベースに相対的に移動させて1対のローラの第1、第2の後輪の1つの両側面への脱着を行うためのトグルクランプ機構とを具備するものである。
また、本発明に係る車椅子電動化装置は、手動車椅子の第1のフレームに着脱され、手動車椅子の第1の後輪を回転駆動させるための第1の駆動部と、手動車椅子の第2のフレームに着脱され、手動車椅子の第2の後輪を回転駆動させるための第2の駆動部と、各第1、第2の駆動部のモータを制御するための制御ユニットと、制御ユニットに接続された操作インタフェースとを具備し、操作インタフェースは全方向移動スタンド上に設けられ、全方向移動スタンドは、手動車椅子の背もたれに接続可能な第1の取付部と、手動車椅子の横方向の第3のフレームに接続可能な第2の取付部とを具備し、操作インタフェースは、第1の取付部が背もたれに接続されたときに制御ユニットに第1の接続信号を送出するようにし、第2の取付部が第3のフレームに接続されたときに制御ユニットに第2の接続信号を送出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、駆動部の手動車椅子のフレームへの着脱は容易であり、しかも、駆動部は手動車椅子の大径の後輪を回転駆動する。従って、電動車輪としての後輪が大径であるので、移動性能を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る車椅子電動化装置が適用される手動車椅子を示す斜視図である。
図2】本発明に係る車椅子電動化装置の実施の形態を示す斜視図である。
図3図2の駆動部20Rの拡大斜視図であり、(A)は駆動部20R及びその周辺を示し、(B)は駆動部20Rを示す。
図4図3の回転機構の詳細を示す裏面側斜視図である。
図5図3のトグルクランプ機構の非クランプ状態を説明するための図であり、(A)は側面図、(B)は斜視図である。
図6図3のトグルクランプ機構のクランプ状態を説明するための図であり、(A)は側面図、(B)は斜視図である。
図7図2の操作インタフェースを示す拡大斜視図である。
図8図2の全方向移動スタンドの動作を説明するための斜視図であり、(A)は縦接続状態(ティルト状態)、(B)は縦接続状態(リクライニング状態)、(C)は横接続状態を示す。
図9図2の制御ユニットの詳細なブロック回路図である。
図10図9のCPUの動作を説明するためのフローチャートである。
図11図10の縦接続状態ステップ1003に用いられる図9のROMに予め記憶された2次元マップ値を示す表である。
図12図10の縦接続状態ステップ1003の演算例を示す上面図である。
図13図10の縦接続状態ステップ1003の演算例を示す上面図である。
図14図10の横接続状態ステップ1005に用いられる図9のROMに予め記憶された2次元マップ値を示す表である。
図15図10の横接続状態ステップ1005の演算例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に係る車椅子電動化装置が適用される手動車椅子を示す図である。尚、図1において、“R”は右側を意味し、“L”は左側を意味する。
【0012】
図1において、手動車椅子10は、パイプ等によるフレーム11R、11L、フレーム11R、11Lの後方に設けられた大径の後輪(タイヤ)12R、12L、フレーム11の前方に設けられた小径の前輪(タイヤ)13R、13L、搭乗者が着座するシート14、背もたれ15、シート14の両側に設けられた肘掛け16R、16L、背もたれ15に設けられ介助者のための手押しハンドル17R、17Lよりなる。尚、フレーム11R、11Lを接続する折畳式の斜め方向フレーム11Mも存在する。
【0013】
手動車椅子10の移動は後輪12R、12Lに付随するハンドリム(図示せず、但し、図1の手動車椅子10では想定せず)を回すことによって又は介助者が手押しハンドル17R、17L(17Rは図示せず)を押すことによって行われる。この結果、搭乗者又は介助者の労力が大きくなる。
【0014】
尚、図1の手動車椅子10においては、シート14を傾斜させるためのティルト機構及び背もたれ15をリクライニングさせるためのリクライニング機構を設けることもできる。この場合には、通常、特別の介助者を必要とする。
【0015】
図2は本発明に係る車椅子電動化装置の実施の形態を示す斜視図である。
【0016】
図2においては、図1の手動車椅子10(以下、単に車椅子10とする)の構成要素に対して、後輪12R、12Lを回転駆動するための駆動部20R、20L(20Rは図示せず)、駆動部20R、20Lを制御するための制御ユニット30、及び操作インタフェース40を付加してある。
【0017】
駆動部20R、20Lはフレーム11R、11Lに着脱自在であり、フレーム11R、11Lにねじ等で固定される。また、制御ユニット30はマイクロコンピュータ等によって構成され、駆動部20R、20Lに接続されている。さらに、操作インタフェース40は全方向移動スタンド41の上部に固定され、信号線42によって制御ユニット30に接続されている。
【0018】
全方向移動スタンド41はその下部に少なくとも3つの前後左右に移動可能な車輪41a、41b、41cたとえば自在輪、ボールキャスタ、オムニホイール、メカナムホイール等を有し、移動可能となっている。また、全方向移動スタンド41には、背もたれ15に接続させるために上下方向に摺動可能な取付部43と、フレーム11R又は11Lに接続させるために水平方向に摺動可能な取付部44とが設けられている。全方向移動スタンド41の動作については、後述する。
【0019】
次に、図2の駆動部20Rの拡大斜視図である図3を参照して駆動部20Rの詳細を説明する。尚、図3の(A)は駆動部20R及びその周辺を示し、図3の(B)は駆動部20Rを示す。
【0020】
図3において、下ベース21Dはねじ穴21aを介してねじ(図示せず)によってフレーム11Rに固定され、上ベース21Uは下ベース21D上に後述のトグルクランプ機構25によって移動可能に設けられている。1対のローラ22、22’は表面が弾性部材よりなり、後輪12Rをその両側面から挟込んで把持するためのものであり、上ベース21Uに固定された回転機構23に接続されている。回転機構23はベルト24aを介してDCモータ24によって駆動される。下ベース21D、上ベース21U間のトグルクランプ機構25において、トグルクランプ機構25のポール251を押し上げることによって下ベース21Dに対して上ベース21Uつまり回転機構23を後輪12R側へ移動させ、これにより、ローラ22、22’が後輪12Rの両側面を挟込んで把持できる。
【0021】
次に、図3の回転機構23の裏面側斜視図である図4を参照して回転機構23の詳細を説明する。
【0022】
図4において、回転機構23は、ローラ22に結合した回転部材231、ローラ22’に結合した回転部材231’、及び回転部材232を有する。回転部材231、231’、232はたとえば金属ローラである。この場合、DCモータ24からのベルト24aが巻回される回転軸233は回転部材232を介して回転部材231を回転させると共に、回転部材231’を直接回転させる。従って、回転部材231、231’は互いに逆方向に回転し、この結果、ローラ22、22’は互いに逆方向に回転する。このようにして、ローラ22、22’が後輪12R(12L)を把持して回転すると、後輪12R(12L)は一方向に回転することになる。
【0023】
図5図6を参照してトグルクランプ機構25の動作を説明する。尚、図5図6に示すように、トグルクランプ機構25は、下ベース21Dと上ベース21Uとを接続する4つの筋交252を有し、筋交252をポール251によって傾かせることにより上ベース21Uを下ベース21Dに対して相対的に移動させるものである。
【0024】
図5の非クランプ状態においては、ポール251を下ベース21Dの基準点に対して水平にすることによって筋交252をポール251側へ傾かせ、従って、上ベース21Uを下ベース21Dに対してポール251側に移動させる。この場合、ローラ22、22’は後輪12R(12L)から離脱することになる。
【0025】
図6のクランプ状態においては、ポール251を下ベース21Dの基準点に対して上方に押上げることによって筋交252をポール251側と反対側へ傾かせ、従って、上ベース21Uを下ベース21Dに対してポール251と反対側に移動させる。この場合、ローラ22、22’は後輪12R(12L)を挟込んで把持することになる。
【0026】
図2の操作インタフェース40の拡大斜視図である図7を参照して操作インタフェース40を説明する。
【0027】
図7に示すように、操作インタフェース40は横ハンドル型である。この場合、横ハンドルを直動方向Xに並進させると、直動変位センサ401たとえば直動ポテンショメータがX成分信号(直動方向信号)を発生し、車椅子は前方又は後方に直進する。また、横ハンドルを捩り方向Tに捩ると、回転角度センサ402たとえば回転ポテンショメータがT成分信号(斜行方向信号)を発生し、後輪12R、12Lの推進方向は変化する。さらに、横ハンドルを直動方向X及び捩り方向Tに同時に変化させると、車椅子は左旋回又は右旋回する。
【0028】
図2の操作インタフェース40の全方向移動スタンド41の動作について図8を参照して説明する。
【0029】
図8の(A)、(B)に示すごとく、取付部43は背もたれ15に取付けられる。この場合、シート14がティルトしたり及び/又は背もたれ15がリクライニングしても、取付部43は全方向移動スタンド41を上下摺動するので、取付部43は背もたれ15から外れることはない。尚、取付部43が背もたれ15に取付けられると、操作インタフェース40は手動又は自動で接続信号S1(=“1”)を制御ユニット30に送出する。
【0030】
また、図8の(C)に示すごとく、取付部44はフレーム11R又は11Lに取付けられた横方向の摺動レール44aに取付けられる。これにより、介助者は搭乗者を観察しながら操作インタフェース40を操作できる。この場合、車椅子10が全方向移動スタンド41の進行方向に移動しても、取付部44は摺動レール44aから外れることはない。尚、取付部44が摺動レール44aに取付けられると、操作インタフェース40は手動又は自動で接続信号S2(=“1”)を制御ユニット30に送出する。
【0031】
図2の制御ユニット30の詳細なブロック回路図である図9を参照して制御ユニット30を説明する。
【0032】
図9において、制御ユニット30は、操作インタフェース40からの直動方向X、捩り方向Tの各X、T成分信号をアナログ/ディジタル(A/D)変換するA/D変換器301、302、直動方向X、捩り方向Tの各X、T成分信号及び接続信号S1、S2を処理する中央処理装置(CPU)303、及び後輪12R、12LのDCモータ24のディジタル回転速度VR、VLをD/A変換するD/A変換器304、305、リードオンリメモリ(ROM)306、ランダムアクセスメモリ(RAM)307等よりなる。D/A変換器304、305のアナログ回転速度VR、VL(便宜上、ディジタル回転速度と同一表示とする)は回転方向信号DR、DLと共に後輪12R、12LのDCモータ24の各駆動回路(図示せず)に送出される。
【0033】
図10図9のCPU303の動作を説明するためのフローチャートである。図10のフローチャートは所定時間毎に実行される時間割込みルーチンである。
【0034】
始めに、ステップ1001において、A/D変換器301、302を動作させて図7の操作インタフェース40からの直動方向X、捩り方向Tの各X、T成分をA/D変換して取込む。
【0035】
ステップ1002にて、取付部43が背もたれ15に接続された縦接続状態を示す接続信号S1が“1”か否かを判別し、この結果、S1=“1”であれば、ステップ1003に進み、他方、S1=“0”であれば、ステップ1004に進む。
【0036】
ステップ1003において、直動方向X、捩り方向Tの各X、T成分に基づいて後輪12R、12Lの回転方向DR、DL、回転速度VR、VLの各最適値を演算する。各最適値は、ROM306に図11に示す接続信号S1専用の2次元マップとして予め記憶されている。
【0037】
たとえば、捩り方向Tの成分がゼロで、直動方向XのX成分が正であれば、後輪12R、12Lの回転方向DR、DL及び回転速度VR、VLを
DR=DL=1(正方向回転)
VR=VL=V(T=0で直動方向XのX成分に応じた図11の(A)のROM値に基づいて補間計算した値)
とする。これにより、車椅子10を後輪12R、12Lの前方側へ直進するようにする。
【0038】
また、捩り方向Tの成分がゼロで、直動方向XのX成分が負であれば、後輪12R、12Lの回転方向DR、DL及び回転速度VR、VLを
DR=DL=1(逆方向回転)
VR=VL=V(T=0で直動方向XのX成分に応じた図11の(A)のROM値に基づいて補間計算した値)
とする。これにより、車椅子10を後輪12R、12Lの後方側へ直進するようにする。
【0039】
さらに、直動方向Xの成分がゼロで、捩り方向TのT成分が正であれば、後輪12R、12Lの回転方向DR、DL及び回転速度VR、VLを
DR=1(正方向回転)
DL=0(逆方向回転)
VR=VL=V(X=0で捩り方向TのT成分に応じた図11の(A)のROM値に基づいて補間計算した値)
とする。これにより、図12の(A)に示すごとく、後輪12R、12Lの軸線A上の中点の旋回中心O1に車椅子10を超信地左旋回L1するようにする。
【0040】
さらにまた、直動方向XのX成分がゼロで、捩り方向TのT成分が負であれば、後輪12R、12Lの回転方向DR、DL及び回転速度VR、VLを
DR=0(逆方向回転)
DL=1(正方向回転)
VR=VL=V(X=0で捩り方向TのT成分に応じた図11の(A)のROM値に基づいて補間計算した値)
とする。これにより、図12の(B)に示すごとく、後輪12R、12Lの軸線A上の中点の旋回中心O1に車椅子10を超信地右旋回R1するようにする。
【0041】
さらにまた、直動方向XのX成分も捩り方向TのT成分も共にゼロでないときには、後輪12R、12Lの回転方向DR、DL、回転速度VR、VLは、直動方向X、捩り方向Tの各X、T成分に応じて予め記憶された図11のROM値を読出して補間計算で設定する。具体的には、上述の捩り方向TのT成分がゼロで直動方向XのX成分に依存する回転速度VR、VLと直動方向XのX成分がゼロで捩り方向TのT成分に依存する回転速度VR、VLとをベクトル的に加算することによって回転速度VR、VLは得られる。これにより、左旋回であれば、図13の(A)に示すごとく、後輪12R、12Lの軸線A上の旋回中心LO2、LO3又はLO4に車椅子10を左旋回L2、L3又はL4するようにし、他方、右旋回であれば、図13の(B)に示すごとく、後輪12R、12Lの軸線A上の旋回中心RO2、RO3又はRO4に車椅子10を右旋回R2、R3又はR4するようにする。この場合、後輪12R、12Lの回転速度差が大きければ、車椅子は小さい径で旋回でき、他方、後輪12R、12Lの回転速度差が小さければ、車椅子は大きい径で旋回できる。
【0042】
また、ステップ1004にて、取付部44がフレーム11R又は11Lの摺動レール44aに取付けられた横接続状態を示す接続信号S2が“1”か否かを判別し、この結果、S2=“1”であれば、ステップ1005に進み、他方、S2=“0”であれば、ステップ1007に進み、このルーチンを終了する。
【0043】
ステップ1005において、直動方向X、捩り方向Tの各X、T成分に基づいて後輪12R、12Lの回転方向DR、DL、回転速度VR、VLの各最適値を演算する。各最適値は、ROM306に図14に示す接続信号S2専用の2次元マップとして予め記憶されている。
【0044】
たとえば、捩り方向Tの成分がゼロで、直動方向XのX成分が正であれば、後輪12R、12Lの回転方向DR、DL及び回転速度VR、VLを
DR=DL=1(正方向回転)
VR=VL=V(T=0で直動方向XのX成分に応じた図14のROM値に基づいて補間計算した値)
とする。これにより、車椅子10を後輪12R、12Lの前方側へ直進するようにする。
【0045】
また、捩り方向Tの成分がゼロで、直動方向XのX成分が負であれば、後輪12R、12Lの回転方向DR、DL及び回転速度VR、VLを
DR=DL=1(逆方向回転)
VR=VL=V(T=0で直動方向XのX成分に応じた図14の(B)のROM値に基づいて補間計算した値)
とする。これにより、車椅子10を後輪12R、12Lの後方側へ直進するようにする。
【0046】
さらに、直動方向Xの成分がゼロで、捩り方向TのT成分が正であれば、後輪12R、12Lの回転方向DR、DL及び回転速度VR、VLを
DR=0(逆方向回転)
DL=0(逆方向回転)
VR=V1(捩り方向TのT成分に応じた図14のROM値に基づいて補間計算した値)
VL=V2(>V1)(捩り方向TのT成分に応じた図14のROM値に基づいて補間計算した値)
とする。これにより、図15の(A)に示すごとく、後輪12R、12Lの車軸A上の車椅子と全方向移動スタンド41との中間位置(たとえば等距離Dの位置)の旋回中心O5に車椅子10及び全方向移動スタンド41を左旋回L5するようにする。従って、車椅子10の推進方向は全方向移動スタンド41に障害にならない。
【0047】
さらにまた、直動方向XのX成分がゼロで、捩り方向TのT成分が負であれば、後輪12R、12Lの回転方向DR、DL及び回転速度VR、VLを
DR=1(正方向回転)
DL=1(正方向回転)
VR=V1(捩り方向TのT成分に応じた図14のROM値に基づいて補間計算した値)
VL=V2(>V1)(捩り方向TのT成分に応じた図14のROM値に基づいて補間計算した値)
とする。これにより、図15の(B)に示すごとく、後輪12R、12Lの車軸A上の車椅子10と全方向移動スタンド41との中間位置(たとえば等距離Dの位置)の旋回中心O5に車椅子10及び全方向移動スタンド41を右旋回R5するようにする。従って、車椅子10の推進方向を全方向移動スタンド41に障害にならない。
【0048】
さらにまた、直動方向Xの成分も捩り方向Tの成分も共にゼロでないときには、後輪12R、12Lの回転方向DR、DL、回転速度VR、VLは、直動方向X、捩り方向Tの各X、T成分に応じて予め記憶された図14のROM値を読出して補間計算で設定する。具体的には、上述の捩り方向TのT成分がゼロで直動方向XのX成分に依存する回転速度VR、VLと直動方向XのX成分がゼロで捩り方向TのT成分に依存する回転速度VR、VLとをベクトル的に加算することによって回転速度VR、VLは得られる。従って、この場合も、全方向移動スタンド41に障害にならないようにする。
【0049】
次に、ステップ1006にて、後輪12Rの回転方向DR及び回転速度VRを後輪12LつまりDCモータ24の駆動回路に送出し、また、後輪12Lの回転方向DL及び回転速度VLを後輪12LつまりDCモータ24の駆動回路に送出する。
【0050】
そして、ステップ1007にてこの時間割込みルーチンは終了する。
【0051】
尚、上述の実施の形態においては、操作インタフェースは横ハンドル型であったが、肘掛け16R又は16L上に設けられたジョイスティック型とすることもできる。この場合には、ジョイスティックを直動方向Xに傾けると、第1の回転角度センサがX成分信号(直動方向信号)を発生し、車椅子10は後輪12R、12Lの前方又は後方に直進し、また、ジョイスティックを捩り方向Tに傾けると、第2の回転角度センサがT成分信号(斜行方向信号)を発生し、車椅子の推進方向が変化し、さらに、ジョイスティックを直動方向X及び捩り方向Tに同時に変化させると、車椅子10は左旋回又は右旋回する。
【0052】
また、上述の実施の形態においては、操作インタフェース40と制御ユニット30との接続は有線、無線のいずれでもよい。
【0053】
さらに、本発明は、上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更も適用し得る。
【符号の説明】
【0054】
10:手動車椅子
11R、11L、11M:フレーム
12R、12L:後輪
13R、13L:前輪
14:シート
15:背もたれ
16R、16L:肘掛け
17R、17L:手押しハンドル
21D:下ベース
21U:上ベース
22、22’:ローラ
23:回転機構
231、231’、232:回転部材
233:回転軸
24:モータ
24a:ベルト
25:トグルクランプ機構
251:ポール
252:筋交
30:制御ユニット
301、302:アナログ/ディジタル(A/D)変換器
303:中央処理装置(CPU)
304、305:ディジタル/アナログ(D/A)変換器
306:リードオンリメモリ(ROM)
307:ランダムアクセスメモリ(RAM)
40:操作インタフェース
41:全方向移動スタンド
41a、41b、41c:前後左右に移動可能な車輪
42:信号線
43、44:取付部
401:直動変位センサ(直動ポテンショメータ)
402:回転角度センサ(回転ポテンショメータ)
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