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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】壁コーナ用下地材
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/06 20060101AFI20220405BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20220405BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
E04F13/06 A
E04F13/08 101Q
E04F13/07 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018063363
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019173414
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390035253
【氏名又は名称】キョーセー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】南谷 英臣
【審査官】津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-248848(JP,A)
【文献】特開平02-066253(JP,A)
【文献】特開2017-206874(JP,A)
【文献】実開平04-135638(JP,U)
【文献】特開2013-163948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0259929(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02363550(EP,A1)
【文献】中国実用新案第201406802(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/06
E04F 13/08
E04F 13/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂から成り、各一側部が互いに隣接して平行に延びる一対の帯状部と、
合成樹脂から成り、前記各一側部を連結する連結部と、を含み、
前記各帯状部は、
該帯状部の長手方向に延びる第1突条と、
前記第1突条と前記長手方向に垂直な幅方向に間隔をあけて、前記第1突条と平行に延びる第2突条と、を有し、
前記第1突条と前記第2突条との間には、前記長手方向に間隔をあけて複数の透孔が設けられ
前記第1突条および前記第2突条は、前記帯状部の一表面からの突出高さは、0.05~0.2mmであり、前記第1突条および前記第2突条の長手方向に垂直な断面形状が三角形であることを特徴とする壁コーナ用下地材。
【請求項2】
前記長手方向に隣接する各透孔間には、前記帯状部の一表面からの突出高さが、0.05~0.2mmであり、前記長手方向に垂直な断面形状が三角形である、前記長手方向に延びる第3突条が設けられることを特徴とする請求項1に記載の壁コーナ用下地材。
【請求項3】
前記第1および第2突条の頂角θは、30°≦θ≦120°であることを特徴とする請求項1または2に記載の壁コーナ用下地材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の出隅部または入隅部を構成する壁コーナ部に接合される壁コーナ用下地材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁コーナ部には、一般住宅用建物の壁に壁紙(「クロス材」ともいう)を貼るときに、壁コーナ部の凹凸などを覆うために、L字状断面を成す長尺の壁コーナ用下地材(以下、「下地材」と略記する場合がある)が接合される。このような下地材は、合成樹脂から成り、出隅部および入隅部のいずれにも使用され、壁コーナ部にパテ材によって接合される。下地材は、床から天井にわたって接合され、1本の長さは、たとえば2500mm~4000mmである。
【0003】
このような下地材は、合成樹脂の押出成形品によって実現され、壁コーナ部に接合された状態で室内に臨む表面には、パテ材の浮き上がりを抑制するために、ローレット加工とも呼ばれる凹凸加工によって、下地材の長手方向に沿って複数の凹凸が延びる粗面部が形成されている(たとえば、特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-160654号公報
【文献】特開2017-206874号公報
【文献】特開2016- 2572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図14は従来技術の壁コーナ用下地材100の一部の拡大写真を示す図である。前述の特許文献1~3に記載される従来技術では、下地材100に粗面部が形成されるので、壁コーナ部に貼り付けた下地材100にパテ材をコテまたはヘラなどによって塗布すると、粗面部を構成している凹凸によってパテ材が各透孔101内に均一に充填されず、図14に参照符Fによって示すように、各透孔101内に充填されたパテ材の表面に段差Fが生じてしまう。このような段差Fは、パテ材を塗布後、パテ材に含まれる水分が下地に吸収され、あるいは蒸発して、パテ材の体積が目減りしたことによるものであり、「ヤセ」とも称される。パテ材の段差Fが生じた状態で壁紙を貼り付けると、段差Fの生じている部分には壁紙が付着しないので、壁紙の付着性が低下し、段差Fの壁紙への投影によって、仕上げ後の美観も低下してしまうという問題がある。また、このような段差Fが生じないようにパテ材の塗布作業を行うには、コテおよびヘラなどの塗布用具の操作回数を増やすなど、多くの手間および労力を要し、パテ材の塗布作業の作業性が低下してしまうという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、パテ材の塗布作業の作業性を向上し、パテ材を均一に塗布して平坦な塗布面が得られるようにして、壁紙の付着性および美観を向上することができる壁コーナ用下地材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、合成樹脂から成り、各一側部が互いに隣接して平行に延びる一対の帯状部と、
合成樹脂から成り、前記各一側部を連結する連結部と、を含み、
前記各帯状部は、
該帯状部の長手方向に延びる第1突条と、
前記第1突条と前記長手方向に垂直な幅方向に間隔をあけて、前記第1突条と平行に延びる第2突条と、を有し、
前記第1突条と前記第2突条との間には、前記長手方向に間隔をあけて複数の透孔が設けられ
前記第1突条および前記第2突条は、前記帯状部の一表面からの突出高さは、0.05~0.2mmであり、前記第1突条および前記第2突条の長手方向に垂直な断面形状が三角形であることを特徴とする壁コーナ用下地材である。
【0008】
また本発明は、前記長手方向に隣接する各透孔間には、前記帯状部の一表面からの突出高さが、0.05~0.2mmであり、前記長手方向に垂直な断面形状が三角形である、前記長手方向に延びる第3突条が設けられることを特徴とする。
【0009】
また本発明の前記第1および第2突条の頂角θは、30°≦θ≦120°であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一対の帯状部の各一側部が連結部によって連結される。各帯状部は、該帯状部の一表面からの突出高さが0.05~0.2mmであり、断面形状が三角形である第1突条と、第2突条とを有し、第1突条と第2突条との間には、複数の透孔が設けられる。このように各帯状部が構成されるので、壁コーナ用下地材を壁コーナ部に取付けるに際して、作業者がコテまたはヘラなどの塗布用具によってパテ材を壁コーナ用下地材に塗布するとき、作業者の塗布用具の操作によってパテ材が幅方向の一方または他方に移動すると、パテ材の移動方向の下流側にある第1突条または第2突条によってパテ材の一部が堰き止められて、移動方向とは逆方向の流れが生じ、透孔内へ導かれる。
【0011】
このようなパテ材の移動方向とは逆方向の流れによって、塗布用具の操作に伴うパテ材の移動方向の流れだけでは充填されずに生じた透孔内の空隙にもパテ材が流れ込み、パテ材の塗布時における塗布用具の操作回数を低減し、パテ材の硬化後に各透孔内に段差が生じることが防がれる。これによって、壁コーナ用下地材にパテ材の均一で平坦な塗布面が得られ、壁紙の付着性および美観を向上することができる。
【0012】
また本発明によれば、各帯状部には長手方向に隣接する各透孔間に、帯状部の一表面からの突出高さが、0.05~0.2mmであり、断面形状が三角形である第3突条が設けられるので、壁コーナ用下地材を壁コーナ部に取付けるに際して、作業者がコテまたはヘラなどの塗布用具によってパテ材を壁コーナ用下地材に塗布するとき、移動方向へ移動するパテ材の一部が第3突条によって堰き止められ、堰き止められたパテ材は幅方向に沿う流れが長手方向に沿う流れに変化し、透孔内へ導かれる。このように、各透孔内にパテ材を十分に流れ込ませることが可能となるので、パテ材が硬化した後に均一かつ平坦なパテ材の塗布面が得られ、壁紙の付着性および美観を、より一層向上することができる。
【0013】
また本発明によれば、突条の長手方向に垂直な断面形状が三角形であるので、塗布されたパテ材の塗布面からの第1突条および第2突条の露出量が少なく、これによって壁紙の付着性および美観をより一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の壁コーナ用下地材1の一部を示す拡大断面図である。
図2】壁コーナ用下地材1の一部の拡大正面図である。
図3】壁コーナ用下地材1の断面図である。
図4】壁コーナ用下地材1の一部の正面図である。
図5】壁コーナ用下地材1が出隅の壁コーナ部W1に取付けられた状態を示す水平断面図である。
図6】壁コーナ用下地材1が入隅の壁コーナ部W1に取付けられた状態を示す水平断面図である。
図7】本発明の他の実施形態の壁コーナ用下地材1aを示す断面図である。
図8】本発明のさらに他の実施形態の壁コーナ用下地材1bの一部の拡大断面図である。
図9】壁コーナ用下地材1bの一部の正面図である。
図10】本発明のさらに他の実施形態の壁コーナ用下地材1cの一部を示す拡大正面図である。
図11】本発明のさらに他の実施形態の壁コーナ用下地材1dの一部を示す拡大正面図である。
図12】本発明のさらに他の実施形態の壁コーナ用下地材1eの一部を示す拡大正面図である。
図13】本発明のさらに他の実施形態の壁コーナ用下地材1fの一部を示す拡大正面図である。
図14】従来技術の壁コーナ用下地材100の一部の拡大写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の一実施形態の壁コーナ用下地材1の一部を示す拡大断面図であり、図2は壁コーナ用下地材1の一部の拡大正面図であり、図3は壁コーナ用下地材1の断面図であり、図4は壁コーナ用下地材1の一部の正面図である。図5は壁コーナ用下地材1が出隅の壁コーナ部W1に取付けられた状態を示す水平断面図であり、図6は壁コーナ用下地材1が入隅の壁コーナ部W1に取付けられた状態を示す水平断面図である。なお、図1は壁コーナ用下地材1をマッチングラインm1で分割して示している。
【0016】
本実施形態の壁コーナ用下地材(以下、「下地材」と略記する)1は、建物の壁Wの出隅を成す壁コーナ部W1に接着剤によって、図1において紙面に垂直な上下方向である床から天井にわたって貼付けられて接合される。その後、壁Wには、壁コーナ部W1の下地材1を覆うようにして、壁紙が貼付けられる。ここに、壁コーナ部W1とは、2つの壁面W2,W3が交差する略鉛直な一直線状の交差線W4およびその近傍領域をいうものとする。このような下地材1は、出隅を成す壁コーナ部W1と同様に、壁Wの入隅を構成する図6に示すコーナ部W1aにも内外を反転させて用いることができる。前記壁Wは、たとえば石膏ボードによって実現される。
【0017】
下地材1は、合成樹脂から成り、各一側部が互いに隣接して平行に延びる一対の帯状部2a,2bと、合成樹脂から成り、前記各一側部を連結する連結部3とを含む。各帯状部2a,2bは、本実施形態では、連結部3を通る中心軸線L1に関して対称に構成されるので、一方の帯状部2aの構成について説明し、他方の帯状部2bの説明は省略する。なお、他の実施形態では、各帯状部2a,2bは、連結部3に関して左右対称ではなく、たとえば一方の帯状部2a(または2b)の幅が他方の帯状部2b(または2a)の幅よりも大きい下地材であってもよい。
【0018】
本実施形態において、一方の帯状部2aは、該帯状部2aの長手方向に延びる第1突条によって構成される突条部6a1と、突条部6a1と長手方向に垂直な幅方向に間隔をあけて長手方向に延びる第2突条によって構成される突条部6a2とを有する。各突条部6a1,6a2の間には、複数の透孔4aが形成される。本実施形態では、3列の透孔4aが形成される。他方の帯状部2bもまた、一方の帯状部2aと同様に構成され、3列の透孔4bが形成される。
【0019】
なお、説明の便宜上、複数の透孔4a,4bによって構成される各3列の透孔列のうち、着目した1つの透孔列の両側に形成される2列の突条部を、参照符6a1,6a2または6b1,6b2と表記する。各透孔4a,4bは、本実施形態では、内径DがD=4mmであり、長手方向に間隔ΔL1、幅方向に間隔ΔL2をあけて形成される。長手方向の間隔ΔL1は、たとえば8mmであり、幅方向の間隔ΔL2は、たとえば12mmである。
【0020】
連結部3は、幅L10=1.0mmであり、各帯状部2a,2bと同じ厚みT1とされる。この厚みT1は、たとえば0.4mmである。連結部3は、各帯状部2a,2bの一表面内に厚さT2だけ喰い込んで一体に形成された薄膜部3aを有する。薄膜部3aの幅L11は、たとえば5.0mmであり、厚みT2は、たとえば0.05mmである。このような薄膜部3aによって、各帯状部2a,2bを連結部3が外側に凸となるように山折りに屈曲された際に、連結部3に発生する引張応力を各帯状部2a,2bへ分散させ、連結部3内の応力集中を緩和し、各帯状部2a,2b間の連結力を高めている。
【0021】
各列を成す突条部6a1,6a2;6b1,6b2のそれぞれは、平行でかつ隣接した2本の突条によって構成される。また、パテ材は、粗目から細目まで様々な粒子を含む。パテは、コテおよびヘラなどの塗布用具の移動方向Bの操作によって同方向に移動されると、パテ材の粒子が、1本目の突条を乗り越えても、2本目の突条で捉えることができ、これによってパテ材の移動方向Bが反転した流れB1を発生させ、透孔4a,4bに効率よく流入させ、仮想線Cで示されるように、パテ材を均一かつ平坦に各突条部6a1,6a2;6b1,6b2間に充填することができる。
【0022】
本実施形態では、各列を成す突条部6a1,6a2;6b1,6b2のそれぞれは、2本の突条によって構成されるが、本発明に他の実施形態において、パテ材の塗布用具による塗布時に移動方向Bに塗り付けられるパテ材が、該突条を乗り越えない程度に高さHおよび幅L12があれば、1本だけで構成されてもよい。また、パテ材の塗布用具による塗布時に移動方向Bに塗り付けられるパテ材が、該突条を乗り越えない程度の高さHおよび幅L12を得られない場合には、3本の突条によって構成されてもよい。このような突条の本数は、パテ材の種類、下地材1のサイズなどに応じて適切に選ばれる。
【0023】
各突条部6a1,6a2;6b1,6b2の各突条の長手方向に垂直な断面形状が三角形である場合を一例として述べると、高さHは、H=0.05~0.2mmであり、好ましくは0.1mmである。また幅L12は、L12=0.1~0.8mmである。本実施形態において、各突条の高さHは、H=0.125mmであり、幅L12は、L12=0.5mmである。この場合、各突条の頂角θは、θ=120°である。本発明に係る実施形態において、頂角とは、三角形の頂点を挟む2辺の成す角であり、各突条の頂点を含む頂部は、面取りRによって円弧状の断面を成してもよい。
【0024】
各突条の断面形状が三角形である場合の頂角θは、120°に限るものではなく、頂角θは120°未満であってもよく、30°≦θ≦120°の角度範囲が可能である。頂角θが30°未満であると、突条が強度不足となり、コテ、ヘラなどの塗布用具によるパテ材の押付け力によって突条が変形または欠損してしまう。また、頂角θが120°を超えると、塗布用具によって移動方向Bにパテ材を塗り付けた際に、下流側の突条によってパテ材を堰き止めることができずに、パテ材が突条を乗り越えてしまい、移動方向Bに移動するパテ材のほとんどが突条の上を通過して、パテ材を各透孔4a,4bへ十分に供給することができない。したがって、各突条の頂角θは、30°以上120°以下が好ましい。
【0025】
パテ材は、下地材の凹凸、段差を補修し、平滑化するために使用される。壁装施工では、石膏ボードなどの下地継ぎ目の凹凸・段差補修、ビス頭部の凹部の平滑化のためにパテ処理が行なわれる。壁装施工用のパテ材の主成分は、石膏、合成樹脂または無機充填剤などであり、硬化時間を要する石膏系パテ材が多用される。下塗りパテ材と上塗りパテ材とは、粉体パテを水で混練後、パテと水が水和反応して、一定時間で硬化するパテ。主に石膏系パテである型粉末パテと、粉末合成樹脂が配合され、粉体パテ材を水で混練した後、乾燥に伴い強度を発現する乾燥型粉末パテ材とがある。乾燥型練りパテ材は、合成樹脂エマルジョンを配合したペーストタイプのパテ材であり、乾燥に伴い強度を発現する。
【0026】
各帯状部2a,2bを形成する材料として用いられる合成樹脂は、たとえば硬質ポリ塩化ビニルが用いられる。硬質ポリ塩化ビニルを押出成形機によって押出成形した基材を、プレス加工することによって、複数の透孔4a,4bが形成される。本発明の他の実施形態では、硬質ポリ塩化ビニルに代えて、ABS樹脂、ポリスチレン(略称PS)、ポリエチレンテレフタレート(略称PET)などが用いられてもよい。
【0027】
連結部3の材料としては、各帯状部2a,2bよりも柔軟かつ高靱性で塑性変形可能な熱可塑性樹脂である、たとえばポリ塩化ビニル系エラストマを使用することができる。
【0028】
以上のように本実施形態では、下地材1は、各帯状部2a,2bの各一側部が連結部3によって連結される。一方の帯状部2aには、各突条部6a1,6a2間に複数の透孔4aが形成される。他方の帯状部2bには、各突条部6b1,6b2間に複数の透孔4bが形成される。
【0029】
説明の便宜上、パテ材の塗布作業によるパテ材の移動方向を一方向と仮定して参照符Bで示すと、作業者がコテまたはヘラなどの塗布用具によってパテ材を塗布したときに、そのパテ材の塗布作業による移動方向Bの下流側にある一方の突条部6a1,6b1によって、一部のパテ材が移動方向Bとは逆方向に反転した流れB1を生じ、透孔4a,4b内へそれぞれ導くことができる。このようなパテ材の移動方向Bとは逆方向B1の流れによって、パテ材の移動方向Bの流れだけではパテ材が充填されずに生じた空隙にも、パテ材が流れ込み、パテ材の硬化後に各透孔内に段差が生じることが防がれる。これによって、パテ材を均一かつ平坦に塗布することができるようにして、壁紙の付着性および美観を向上することができる。
【0030】
また、突条部6a1,6a2,…;6b1,6b2,…をそれぞれを構成する各突条の長手方向に垂直な断面形状が三角形であるので、塗布されたパテ材の表面からの突条部6a1,6a2,…;6b1,6b2,…の各突条の露出量を少なくし、いわば線状として、壁紙の付着性および美観を向上することができる。
【0031】
図7は本発明の他の実施形態の壁コーナ用下地材1aを示す断面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の下地材1aは、その長手方向に垂直な断面が略L字状に形成される。このような下地材1aにおいても、前述の実施形態の下地材1と同様に、一対の帯状部2a,2bの各一側部が連結部3によって連結され、各帯状部2a,2bに複数の透孔4a,4bが形成され、各透孔4a,4b列の両側に突条部6a,6bが設けられる。
【0032】
これによって、各帯状部2a,2bの突条部6a,6bと突条部6a,6bとの間に複数の透孔4a,4bが配設された状態となり、作業者がコテまたはヘラなどの塗布用具によってパテ材を下地材1に塗布したときに、そのパテ材の塗布作業による移動方向Bの下流側にある一方の突条部6a1によって、一部のパテ材が移動方向Bとは逆方向に反転した流れB1を生じ、透孔4a,4b内へ導くことができる。このようなパテ材の移動方向Bとは逆方向の流れB1によって、パテ材の移動方向Bの流れだけではパテ材が充填されずに生じた空隙にも、パテ材が流れ込み、パテ材の硬化後に各透孔4a,4b内に段差が生じることが防がれる。これによって、パテ材を均一かつ平坦に塗布することができるようにして、壁紙の付着性および美観を向上することができる。
【0033】
図8は本発明のさらに他の実施形態の壁コーナ用下地材1bの一部の拡大断面図であり、図9は壁コーナ用下地材1bの一部の正面図である。なお、各帯状部2a,2bは連結部3に関して対称に構成されるため、他方の帯状部2bは省略し、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の下地材1bにおいて、各帯状部2a,2bは、突条部6a,6bに加えて、長手方向に隣接する各透孔4a,4b間に、長手方向に延びる複数の第3突条である突条部8a,8bを有する。図8および図9においては、一方の突条部8aだけが示されている。これらの突条部6a,6bおよび各突条部8a,8bは、長手方向に垂直な断面形状が三角形である。
【0034】
各帯状部2a,2bには、長手方向に隣接する各透孔4a,4b間に突条部8a,8bが設けられるので、移動方向Bの下流側の突条部6a,6bによってはね返された流れB1に加えて、突条部8a,8bによってもパテ材の一部の移動方向Bが変化し、この移動方向Bの流れが途中で変化した一部の流れB2によっても、パテ材が透孔4a,4bへ導かれ、透孔4a,4bにパテ材が確実に充填される。これによって、各透孔4a,4b内のパテ材に段差が発生することを防ぎ、均一かつ平坦にパテ材が塗布され、壁紙の付着性および美観を、より一層向上することができる。
【0035】
図10は本発明のさらに他の実施形態の壁コーナ用下地材1cの一部を示す拡大正面図である。なお、各帯状部2a,2bは連結部3に関して対称に構成されるため、他方の帯状部2bは省略し、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の下地材1cは、各透孔4a,4bが正面視において長手方向に長い楕円とされる。このような構成においても、前述の実施形態と同様に、パテ材の移動方向Bとは逆方向の流れB1によって、各透孔4a,4b内のパテ材の移動方向Bの流れだけではパテ材が充填されずに生じた空隙にも、パテ材が流れ込み、パテ材の硬化後に各透孔4a,4b内に段差が生じることが防がれ、均一かつ平坦にパテ材が塗布され、壁紙の付着性および美観を向上することができる。
【0036】
図11は本発明のさらに他の実施形態の壁コーナ用下地材1Dの一部を示す拡大正面図である。なお、各帯状部2a,2bは連結部3に関して対称に構成されるため、他方の帯状部2bは省略し、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の下地材1cは、各透孔4a,4bが正面視において十字状とされる。このような構成においても、前述の実施形態と同様に、パテ材の移動方向Bとは逆方向の流れB1によって、各透孔4a,4b内のパテ材の移動方向Bの流れだけではパテ材が充填されずに生じた空隙にも、パテ材が流れ込み、パテ材の硬化後に各透孔4a,4b内に段差が生じることが防がれ、均一かつ平坦にパテ材が塗布され、壁紙の付着性および美観を向上することができる。
【0037】
図12は本発明のさらに他の実施形態の壁コーナ用下地材1Eを示す拡大断面図である。なお、各帯状部2a,2bは連結部3に関して対称に構成されるため、他方の帯状部2bは省略し、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の下地材1cは、各透孔4a,4bが正面視において、幅方向(図12の左右方向)の一方側に凸に湾曲した長孔とされる。このような構成においても、前述の実施形態と同様に、パテ材の移動方向Bとは逆方向の流れB1によって、各透孔4a,4b内のパテ材の移動方向Bの流れだけではパテ材が充填されずに生じた空隙にも、パテ材が流れ込み、パテ材の硬化後に各透孔4a,4b内に段差が生じることが防がれ、均一かつ平坦にパテ材が塗布され、壁紙の付着性および美観を向上することができる。
【0038】
図13は本発明のさらに他の実施形態の壁コーナ用下地材1fを示す拡大正面図である。なお、各帯状部2a,2bは連結部3に関して対称に構成されるため、他方の帯状部2bは省略し、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の下地材1fは、各透孔4a,4bが正面視において四角形とされる。このような構成においても、前述の実施形態と同様に、パテ材の移動方向Bとは逆方向の流れB1によって、各透孔4a,4b内のパテ材の移動方向Bの流れだけではパテ材が充填されずに生じた空隙にも、パテ材が流れ込み、パテ材の硬化後に各透孔4a,4b内に段差が生じることが防がれ、均一かつ平坦にパテ材が塗布され、壁紙の付着性および美観を向上することができる。
【符号の説明】
【0039】
1,1a~1f 壁コーナ用下地材
W 壁
W1 壁コーナ部
W2,W3 壁面
W4 交差線
2a,2b 帯状部
3 連結部
4a,4b 透孔
6a,6b 突条部
8a,8b 突条部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14