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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】シートを用いた斜面施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
E02D17/20 103B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018230489
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2020094325
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310011011
【氏名又は名称】クリアーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161285
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 廣義
(72)【発明者】
【氏名】中村 考宏
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-023344(JP,U)
【文献】特開平10-317352(JP,A)
【文献】特開昭62-029610(JP,A)
【文献】特開2011-084905(JP,A)
【文献】特開2008-208604(JP,A)
【文献】特開2018-066159(JP,A)
【文献】特開2003-313865(JP,A)
【文献】実開昭50-022907(JP,U)
【文献】特開2004-131967(JP,A)
【文献】特開2001-254330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1段目導水シートを斜面に敷設し、
前記1段目導水シートの上に重ね合わせて1段目保護シートを敷設し、
前記1段目導水シートと前記1段目保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に排水具の一部が前記1段目保護シートの上に重なるようにして1段目排水具を土中に打ち込み、
前記1段目保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せて2段目導水シートを前記1段目保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に敷設し、
その後前記2段目導水シートの上に重ね合わせて2段目保護シートを敷設し
前記2段目導水シートと前記2段目保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に排水具の一部が前記2段目保護シートの上に重なるようにして2段目排水具を土中に打ち込み、
少なくとも前記2段目保護シート、前記2段目導水シート、前記1段目保護シート及び前記1段目導水シートの重なり部分と、前記1段目保護シート及び前記1段目導水シートの下辺近傍を留め具で斜面に固定し、
前記2段目保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せて3段目導水シートを前記2段目保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に敷設し、
その後前記3段目導水シートの上に重ね合わせて3段目保護シートを敷設し、
前記3段目導水シートと前記3段目保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に排水具の一部が前記3段目保護シートの上に重なるようにして3段目排水具を土中に打ち込み、
少なくとも前記3段目保護シート、前記3段目導水シート、前記2段目保護シート及び前記2段目導水シートの重なり部分を留め具で斜面に固定し、
前記2段目保護シートと前記2段目導水シートへの前記3段目保護シートと前記3段目導水シートの敷設の手順、前記3段目排水具の打ち込みの手順、及び前記3段目保護シート、前記3段目導水シート、前記2段目保護シート及び前記2段目導水シートの重なり部分の留め具についての固定の手順を上方に向かってn-1段目まで繰り返し、
前記n-1段目保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せてn段目導水シートを前記n-1段目保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に敷設し、
前記n段目導水シートの上に重ね合わせてn段目保護シートを敷設し、
少なくとも前記n段目保護シート、前記n段目導水シート、前記n-1段目保護シート及び前記n-1段目導水シートの重なり部分と、前記n段目保護シート及び前記n段目導水シートの上辺近傍を留め具で斜面に固定することからなる
シートを用いた斜面施工方法。
【請求項2】
保護シートの裏面側に重ね合わせて導水シートが接着または溶着されている導水シート付きの保護シートで、
前記導水シート付きの保護シートの導水シート側を斜面に接するようにして1段目導水シート付きの保護シートを斜面に敷設し、
前記1段目導水シート付きの保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に排水具の一部が前記1段目導水シート付きの保護シートの上に重なるようにして1段目排水具を土中に打ち込み、
前記1段目導水シート付きの保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せて2段目導水シート付きの保護シートを前記1段目導水シート付きの保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に導水シート側を斜面に接するようにして敷設し、
前記2段目導水シート付きの保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に排水具の一部が前記2段目導水シート付きの保護シートの上に重なるようにして2段目排水具を土中に打ち込み、
少なくとも前記2段目導水シート付きの保護シート及び前記1段目導水シート付きの保護シートの重なり部分と、前記1段目導水シート付きの保護シートの下辺近傍を留め具で斜面に固定し、
前記2段目導水シート付きの保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せて3段目導水シート付きの保護シートを前記2段目導水シート付きの保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に導水シート側を斜面に接するようにして敷設し、
前記3段目導水シート付きの保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に排水具の一部が前記3段目導水シート付きの保護シートの上に重なるようにして3段目排水具を土中に打ち込み、
少なくとも前記3段目導水シート付きの保護シート及び前記2段目導水シート付きの保護シートの重なり部分を留め具で斜面に固定し、
前記前記2段目導水シート付きの保護シートへの前記3段目導水シート付きの保護シートの敷設の手順、前記3段目排水具の打ち込み手順、前記3段目導水シート付きの保護シート及び前記2段目導水シート付きの保護シートの重なり部分の留め具についての固定の手順を上方に向かってn-1段目まで繰り返し、
前記n-1段目導水シート付きの保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せてn段目導水シート付きの保護シートを前記n-1段目導水シート付きの保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に導水シート側を斜面に接するようにして敷設し、
少なくとも前記n段目導水シート付きの保護シート及び前記n-1段目導水シート付きの保護シートの重なり部分と、前記n段目導水シート付きの保護シートの上辺近傍を留め具で斜面に固定することからなる
シートを用いた斜面施工方法。
【請求項3】
前記1段目排水具から前記n-1段目排水具で、下側にある前記1~n-1段目保護シート及び前記1~n-1段目導水シート、または前記1~n-1段目導水シート付きの保護シートを仮止めする請求項1または請求項2記載のシートを用いた斜面施工方法。
【請求項4】
前記1~n段目保護シートは、内部空間を有しており、前記空間に鉱物を粉砕または鉱物を焼成・粉砕した原材料を主成分とする粉粒材を充填させている請求項1から請求項3の何れか一項記載のシートを用いた斜面施工方法。
【請求項5】
前記~n段目保護シートの表面で受け止められた雨水は、前記~n段目保護シートの表面を流下し、斜面上流側からの土壌水は、略水平方向に連続して又は所定の間隔で土中に打ち込まれた1~n-1段目排水具で、対応する前記1~n-1段目保護シート表面に誘導排水される請求項1から請求項3の何れか一項記載のシートを用いた斜面施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然または人工物により形成されている斜面が崩壊した場合の応急処置として行われるシートを用いた斜面施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の異常気象による台風やゲリラ豪雨の多発による山間部の斜面崩落や、道路盛土体、鉄道盛土体や河川堤防の決壊氾濫等、社会インフラの豪雨被災が相次いでいる。社会資本は一国の活力基盤であり、活発な経済活動や豊かで安全な生活がそのうえに築かれるものであるから、その充実と安全・維持管理は極めて重要である。豪雨被災ではブルーシート等のシートでの法面表層保護の保護を行う応急処置(応急工事)が行われ、重宝されている。しかしながら、あくまで、応急処置としての復旧であり、長く保護できるものではなかった。
【0003】
山の斜面(人工的な斜面の場合は法面とも呼ばれる。)、造成地の斜面、道路の斜面、河川堤防の斜面、護岸の斜面等の土砂崩れや、地滑り等の斜面の崩壊に対する応急処置は、いかに早く安く有効に応急処置や仮復旧するかにあった。その後、本格的なコンクリート護岸工事をする本復旧予算を申請し、事業が決定すると恒久処置(恒久工事)として斜面の恒久的な補強工事を行うのが一般的であった。
【0004】
また、応急処置から恒久処置まで必要な期間も、広範囲な地域で発生する場合や、同じまたは近傍の地域で連続して発生する場合もあり、作業者や資材の手配が難しいので簡単に対応できない場合や、恒久処置を行う費用がすぐには用意できない場合もあり、応急処置といっても、できるだけ長い期間、斜面を保護できる工法が必要となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭61-023344号公報
【文献】特開2018-066159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの背景技術においても、特許文献1の考案の名称「築堤の法面防護構造」や、特許文献2の発明の名称「法面の施工方法とそれに用いるシート」については、応急処置としては、多くの作業の時間や、多くの資材が必要になる内容であるため、応急処置には適さない内容が提案されていた。
【0007】
また、特許文献1の考案や特許文献2の発明では、斜面が崩壊する原因ともなっている斜面に含まれている地表面の下にある水(土壌水と呼ばれている。以下「土壌水」と呼ぶ。)、を排水できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
第1発明のシートを用いた斜面施工方法は、1段目導水シートを斜面に敷設し、前記1段目導水シートの上に重ね合わせて1段目保護シートを敷設し、前記1段目導水シートと前記1段目保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に排水具の一部が前記1段目保護シートの上に重なるようにして1段目排水具を土中に打ち込み、前記1段目保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せて2段目導水シートを前記1段目保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に敷設し、その後前記2段目導水シートの上に重ね合わせて2段目保護シートを敷設し、前記2段目導水シートと前記2段目保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に排水具の一部が前記2段目保護シートの上に重なるようにして2段目排水具を土中に打ち込み、少なくとも前記2段目保護シート、前記2段目導水シート、前記1段目保護シート及び前記1段目導水シートの重なり部分と、前記1段目保護シート及び前記1段目導水シートの下辺近傍を留め具で斜面に固定し、前記2段目保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せて3段目導水シートを前記2段目保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に敷設し、その後前記3段目導水シートの上に重ね合わせて3段目保護シートを敷設し、前記3段目導水シートと前記3段目保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に排水具の一部が前記3段目保護シートの上に重なるようにして3段目排水具を土中に打ち込み、少なくとも前記3段目保護シート、前記3段目導水シート、前記2段目保護シート及び前記2段目導水シートの重なり部分を留め具で斜面に固定し、前記2段目保護シートと前記2段目導水シートへの前記3段目保護シートと前記3段目導水シートの敷設の手順、前記3段目排水具の打ち込みの手順、及び前記3段目保護シート、前記3段目導水シート、前記2段目保護シート及び前記2段目導水シートの重なり部分の留め具についての固定の手順を上方に向かってn-1段目まで繰り返し、前記n-1段目保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せてn段目導水シートを前記n-1段目保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に敷設し、前記n段目導水シートの上に重ね合わせてn段目保護シートを敷設し、少なくとも前記n段目保護シート、前記n段目導水シート、前記n-1段目保護シート及び前記n-1段目導水シートの重なり部分と、前記n段目保護シート及び前記n段目導水シートの上辺近傍を留め具で斜面に固定することからなっている。
第2発明のシートを用いた斜面施工方法は、保護シートの裏面側に重ね合わせて導水シートが接着または溶着されている導水シート付きの保護シートで、前記導水シート付きの保護シートの導水シート側を斜面に接するようにして1段目導水シート付きの保護シートを斜面に敷設し、前記1段目導水シート付きの保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に排水具の一部が前記1段目導水シート付きの保護シートの上に重なるようにして1段目排水具を土中に打ち込み、前記1段目導水シート付きの保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せて2段目導水シート付きの保護シートを前記1段目導水シート付きの保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に導水シート側を斜面に接するようにして敷設し、前記2段目導水シート付きの保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に排水具の一部が前記2段目導水シート付きの保護シートの上に重なるようにして2段目排水具を土中に打ち込み、少なくとも前記2段目導水シート付きの保護シート及び前記1段目導水シート付きの保護シートの重なり部分と、前記1段目導水シート付きの保護シートの下辺近傍を留め具で斜面に固定し、前記2段目導水シート付きの保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せて3段目導水シート付きの保護シートを前記2段目導水シート付きの保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に導水シート側を斜面に接するようにして敷設し、前記3段目導水シート付きの保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に排水具の一部が前記3段目導水シート付きの保護シートの上に重なるようにして3段目排水具を土中に打ち込み、少なくとも前記3段目導水シート付きの保護シート及び前記2段目導水シート付きの保護シートの重なり部分を留め具で斜面に固定し、前記前記2段目導水シート付きの保護シートへの前記3段目導水シート付きの保護シートの敷設の手順、前記3段目排水具の打ち込み手順、前記3段目導水シート付きの保護シート及び前記2段目導水シート付きの保護シートの重なり部分の留め具についての固定の手順を上方に向かってn-1段目まで繰り返し、前記n-1段目導水シート付きの保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せてn段目導水シート付きの保護シートを前記n-1段目導水シート付きの保護シートが敷設されている斜面よりも上方の斜面に導水シート側を斜面に接するようにして敷設し、少なくとも前記n段目導水シート付きの保護シート及び前記n-1段目導水シート付きの保護シートの重なり部分と、前記n段目導水シート付きの保護シートの上辺近傍を留め具で斜面に固定することからなっている。
第3発明のシートを用いた斜面施工方法は、請求項1または請求項2記載の発明において、前記1段目排水具から前記n-1段目排水具で、下側にある前記1~n-1段目保護シート及び前記1~n-1段目導水シート、または前記1~n-1段目導水シート付きの保護シートを仮止めしている。
第4発明のシートを用いた斜面施工方法は、請求項1から請求項3の何れか一項記載の発明において、前記1~n段目保護シートは、内部空間を有しており、前記空間に鉱物を粉砕または鉱物を焼成・粉砕した原材料を主成分とする粉粒材を充填させている。
第5発明のシートを用いた斜面施工方法は、請求項1から請求項3の何れか一項記載の発明において、前記~n段目保護シートの表面で受け止められた雨水は、前記~n段目保護シートの表面を流下し、斜面上流側からの土壌水は、略水平方向に連続して又は所定の間隔で土中に打ち込まれた1~n-1段目排水具で、対応する前記1~n-1段目保護シート表面に誘導排水されている。
【発明の効果】
【0010】
以上のような、技術的手段を有することにより、以下の効果を有する。
【0011】
応急処置と変わらない工事であっても、比較的長い期間保護することができる。さらに、斜面の崩壊に関わる土壌水を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る第1の実施形態の施工完了後の説明図である。
図2】本発明に係る第1の実施形態の排水具の外観図である。
図3】本発明に係る第1の実施形態の第1段階と第2段階の施工方法の説明図である。
図4】本発明に係る第1の実施形態の第3段階の施工方法の説明図である。
図5】本発明に係る第1の実施形態の第3段階の施工方法の説明図である。
図6】本発明に係る第1の実施形態の第4段階の施工方法の説明図である。
図7】本発明に係る第1の実施形態の第5段階の施工方法の説明図である。
図8】本発明に係る第1の実施形態の第5段階の施工方法の説明図である。
図9】本発明に係る第1の実施形態の断面図である。
図10】本発明に係る第1の実施形態の第6段階の施工方法の説明図である。
図11】本発明に係る第1の実施形態の第7段階の施工方法の説明図である。
図12】本発明に係る第1の実施形態の第7段階の施工方法の説明図である。
図13】本発明に係る第1の実施形態の第8段階以降の施工方法の説明図である。
図14】本発明に係る第2の実施形態の斜面の説明図である。
図15】本発明に係る第2の実施形態の施工完了後の説明図である。
図16】本発明に係る第3の実施形態の排水具の外観図である。
図17】本発明に係る第4の実施形態の排水具の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るシートを用いた斜面施工方法の実施の形態について図1乃至図17に基づき説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について、図1乃至13図に基づき説明する。まず、図1の説明図を用いて本発明のシートを用いた斜面施工方法が行われた斜面についての概要を説明する。
【0015】
図1は、斜面1に本願発明のシートを用いた斜面施工方法を実施した形態の一例を図示している。斜面1は、施工方法の説明を容易にするために、角度約45度で、斜面の面が整地されているものとして図示しているが、この様な斜面に限定されるものではない。また、斜面1の状態を分かり易くするために、水平面5も図示している。
【0016】
図1において、斜面1には、1段目保護シート11、2段目保護シート12、3段目保護シート13及び4段目保護シート14の4枚の保護シートが、複数の留め具41で固定されている。また、図1においては、1段目保護シート11、2段目保護シート12、3段目保護シート13及び4段目保護シート14で隠れているため、図1には図示されてないが、1段目保護シート11、2段目保護シート12、3段目保護シート13及び4段目保護シート14と斜面1の間には、1段目導水シート21、2段目導水シート22、3段目導水シート23及び4段目導水シート24や、1段目排水具31、2段目排水具32及び3段目排水具33が設けられている。なお、詳細については図2乃至図13で説明する。
【0017】
ここで、施工方法の段階を説明する便宜上、1段目~4段目の保護シート、導水シート及び排水具は、夫々別の名称及び符号を附して説明している。そのため、保護シート、導水シート及び排水具は同一形態のものを使用しても実施可能である。また、1段目~4段目の保護シートを総称して、1~n段目保護シート10と呼び、1段目~4段目の導水シートを総称して、1~n段目導水シート20と呼び、1段目~3段目の排水具を総称して、1~n段目排水具30と呼び、説明する。
【0018】
1~n段目保護シート10は、厚みが0.2~10mmの適度な強度及び耐久性を有すると同時に、柔軟性を有したシートである。なお、この1~n段目保護シート10の厚みや材質については、施工主から提示される恒久処置が開始されるまでの期間を考慮して、適切な厚みや材質選択する。
【0019】
1~n段目保護シート10の具体的な材質としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル(PEs)、塩化ビニル(PVC)等をシート状に加工したものや、アルミフィルム等の軟性金属をシート状に加工した不通水性(遮水性)を有したシートである。よって、雨水については、斜面1の内部に浸み込むことはない。なお、本出願書類において「シート」として呼ぶものは、英語の「sheet」のことであり、フィルムよりは厚いが、柔軟性を備えている平板の材料のことである。
【0020】
また1~n段目保護シート10の広さについては、幅が0.5m~10m(好ましくは1~2m)で、長さについては斜面に合わせて適宜な長さを選択している。本実施形態においては、幅2メートル長さ5メートルとしている。なお、原材料の供給や製造が可能であれば、これより広いものとしても良く、また施工場所に合わせて適当の大きさに分割して施工しても良い。1~n段目保護シート10を設けることにより、豪雨時も土壌水の浸透による斜面1の土壌の含水率を多くすることなく脱水乾燥硬化を促進することができる。
【0021】
1~n段目保護シート10については、本願の出願人の出願した出願番号「特願2018-204814号」で説明している発明「複合シート」を用いても良い。複合シートの場合は、その性質状厚みが、2~20mm程度になり、全体として不通水性を有している。
【0022】
なお、複合シートとは、内包させる材料に対する遮蔽性及び柔軟性を備えた第2シートと、平面状の網を加工して前記平面状の網から分割された複数の点・線・面の集合体からなる所定の間隔を保持できる二つの面が形成されている所定の目開きの変形させた網と、前記第2シートに、前記変形させた網に形成された一方の面を接合させて前記第2シートの一面に前記変形させた網で所定の空間を形成し、前記空間に鉱物を粉砕または鉱物を焼成・粉砕した原材料料を主成分とする粉粒材を充填させた後に、前記変形させた網に形成された他方の面に、内包させる材料に対する遮蔽性及び柔軟性を備えた第1シートを接合させ、変形させた網の側面を塞ぎ、前記粉粒材を内包させているシートのことである。
【0023】
1~n段目導水シート20については、水分を吸収すると同時に、重力によって水分を通水又は導水することができる。そのため、1~n段目導水シート20の大きさについては、斜面を覆うことができる様に1~n段目保護シート10と同様の広さではあり、厚みについては、1~n段目保護シート10よりも厚く、5~20mm程度になる。
【0024】
1~n段目導水シート20の例としては、繊維や繊維状のもの等の糸状絡まりあって、ひとまとまりの状態になっているもので、言い換えるならば綿状の塊となっているものや、繊維や繊維状の塊でない場合にはスポンジの様な多孔質のものである。1~n段目導水シート20を設けて斜面1にフィツトすることにより、斜面1の水分を吸収すると共に、水は通すが土の微粒子は通さないフィルターとしての機能で、斜面1が浸食され空洞化されるのを防ぐ。
【0025】
さらに、前記1~n段目導水シートの材質の例としては、合成樹脂の場合は、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、アセテート、トリアセテート、プロミックス、などの繊維や、スポンジ状に加工したものである。また、天然の繊維や繊維状の材質としては、ヤシの実繊維、麻(ジュート・ケナフ)、綿、や動物繊維等であり、無機物の場合は、グラスファイバーやロックウール等でも良い。
【0026】
図2において、1~n段目排水具30の詳細について説明する。1~n段目排水具30は、金属、合成樹脂等を適切な形状に加工したものである。1~n段目排水具30の大きさの幅については、5~20cm程度であり、土壌水の状況により適切に選定する。また、1~n段目排水具30の厚みや長さについては、打ち込まれる斜面1の硬質や軟質等の土壌の状態により適切に選定する。
【0027】
1~n段目排水具30は平板の先端30aを土中に打ち込み易い様に、尖らせている。また、末端30bは、1~n段目排水具30を土中に打ち込む場合に、ハンマーで叩きやすくするためと、1~n段目保護シート10a、図3図4の場合は1段目保護シート11aの上辺を押さえて仮止めが可能な、下向きに折り曲げられた折り返しが設けられている。
【0028】
留め具41は、金属、合成樹脂等の土木用鋲や土木用釘である。留め具41の長さや太さについては、打ち込まれる斜面1の硬質や軟質等の土壌の状態により適切に選定する。1~n段目保護シート20や1~n段目導水シート10の外周や要所に貫通して、斜面の土や岩等に打ち込まれることによって1~n段目保護シート20や1~n段目導水シート10を斜面に固定する。なお、留め具41の1~n段目保護シート20や1~n段目導水シート10に対する押さえる効果を増すために、留め具41の頭部(ハンマーなどで叩く部分で、他の部分に比較して大きくしている部分。)、を大きくしても良いが、本実施形態においては、合成樹脂や金属等の円板を押さえ板として組み合わせたものとしている。
【0029】
図3乃至図13を用いて、図1の実施形態になるまでの施工方法について説明する。
【0030】
シートを用いた斜面施工方法の第1段階(第1ステップ)は、図3で図示する様にまず1段目導水シート21を斜面1敷設する。斜面1における1段目導水シート21の敷設する箇所は、斜面1が崩壊することを防ぎたい箇所の斜面1の最下部(平面5が斜面1に変化する箇所)に、1段目導水シート21の下側の辺を合わせて敷設する。なお、1~n段目導水シート20については、図中において、交線を附して図示している。また、用語としての敷設は、鉄道や水道等を設置する場合に一般的に用いられているが、シート状のものを敷いて設置するという意味を説明する用語として用いている。
【0031】
第2段階は、1段目導水シート21を敷設した後に、1段目導水シート21とほぼ同じ広さの1段目保護シート11を1段目導水シート21に重ね合せて敷設する。
【0032】
斜面1に1段目導水シート21に合わせて1段目保護シート11を敷設した状態が図4である。図中において、1~n段目導水シート20に1~n段目保護シート10が重ね合されているかどうかを明確にできる様にするために、1~n段目導水シート20に重ね合された状態の1~n段目保護シート10を、1~n段目保護シート10a、図4の場合は、1段目保護シート11aとし、符号を変えて図示して説明する。
【0033】
第3段階は、図4に示している様に、1段目導水シート21が重ね合された1段目保護シート11aの上側の辺の近傍の3箇所に、3個の1段目排水具31を斜面1の土中に打ち込む。ここで、1段目排水具31を斜面1に打ち込む角度は、平面5に対して、上向きになる様にする。詳しくは、図8の断面図である図9に図示している。また、本実施形態においては、1段目排水具31を3個として、均等に配置しているが、1段目保護シート11aの大きさや、斜面1の土壌水の条件により、1~n段目排水具30の数を1段目保護シート11aの幅に合わせて連続して打ち込んでも、減らしても良い。また。1段目排水具31の打ち込む間隔については、土壌水の状況で不均等に打ち込んでも良い。
【0034】
後述する図9で説明するが、1~n段目排水具30が設けられていることにより、斜面が崩壊する原因ともなっている斜面1に含まれている地表面の下にある土壌水を十分に誘導排水することができる。
【0035】
図5は、1段目保護シート11aの上側の辺の近傍の3箇所に、3個の1段目排水具31を斜面1の土中に打ち込まれ、1段目保護シート11aの上側で3個の1段目排水具31により、斜面1に仮止めされた状態となっている。
【0036】
第4段階は、図6で図示する様に1段目導水シート21が重ね合された1段目保護シート11aの上側で、1段目保護シート11aと所定の重ね代(図6において、1段目保護シート11aの上辺と2点鎖線で示す箇所までの間)を設けて、2段目導水シート22を斜面1敷設する。所定の重ね代としては、5~20cm程度である。
【0037】
なお、本実施形態において重ね代は、10cmとしている。重ね代の部分で留め具41を1段目保護シート11aと2段目保護シート12aを貫通させて斜面1に打ち込むため、1段目保護シート11aと2段目保護シート12aが破れない様に、余裕を持たせるためである。
【0038】
第5段階は、図7に図示する様に、2段目導水シート22を敷設した後に、2段目導水シート22とほぼ同じ広さの2段目保護シート12を2段目導水シート22に重ね合せて敷設する。2段目導水シート22に重ね合された、2段目保護シート12aが敷設された後の状態を図8に示す。図8におけるA-A断面図を図9に図示する。
【0039】
図9において、斜面1の断面を多数の点で、1段目導水シート21と2段目導水シート22の断面を交線で、1段目保護シート11と2段目保護シート12を左上がりの斜線で、1段目排水具31を右上がりの斜線で、図示している。図9において、1段目排水具31は1段目保護シート11aの上部を押さえている。1段目排水具31は斜面1に対して、水平面5の角度よりも上向き(左上がり)に埋め込まれている。
【0040】
このため、土壌水が斜面1の内部で流れたとしても、1段目排水具31により斜面1の外部、さらには1段目保護シート11aの表面側に誘導排水することができる。この場合に1段目排水具31の表側は、2段目導水シート22で覆われているので、2段目導水シート22のフィルター機能により、水は通すが土の微粒子を通さないことになり、斜面1の崩壊を防ぐことができる。
【0041】
また、1段目排水具31は、2段目導水シート22の下側にあるので、2段目導水シート22を伝わって落下する水についても、1段目保護シート11aの表面側に誘導排水することができる。
【0042】
第6段階は、図10に示している様に、2段目導水シート22が重ね合された2段目保護シート12aの上側の辺の近傍の3箇所に、3個の2段目排水具32を斜面1の土中に打ち込む。ここで、2段目排水具32を斜面1に打ち込む角度は、前述の1段目排水具31と同様の角度に打ち込む。また、2段目排水具32の数や打ち込む位置についても1段目排水具31と同様にしても良いし、変更しても良い。打ち込まれた状態が図11となる。これにより2段目保護シート12aは2段目排水具32によって、仮止めされている。
【0043】
第7段階は、図11に示している様に、2段目排水具32を斜面1に打ち込んだ後に、留め具41を1段目保護シート11aの下辺近傍と、1段目保護シート11aと2段目保護シート12aとの重ね代に均等間隔で打ち込む。本実施形態においては、1段目保護シート11aについて、上下4本ずつ留め具41を打ち込む状態を図示しているが、斜面1の状態や、1段目保護シート11aの大きさにより、増減しても良い。また、1段目保護シート11aの左右辺の近傍に留め具41を打ち込んでも良い。そして留め具41が打ち込まれた状態が図12となる。
【0044】
第8段階以降については、4段階から7段階までの繰り返しを実施することになる。詳細は繰り返しであるので省略するが、4段階から7段階の、1段目導水シート21、1段目保護シート11、11a、1段目排水具31を、2段目導水シート22、2段目保護シート12、12a、2段目排水具32と読み替え、2段目導水シート22、2段目保護シート12、12a、2段目排水具32を3段目導水シート23、3段目保護シート13、13a、3段目排水具33と読み替えることにより実施できる。なお、4段階から7段階を、前記の読み替えを行って実施した図が、図13となる。
【0045】
さらに、本実施形態の図1で示した、1段目保護シート11a~4段目保護シート14aを敷設した場合について説明する。この場合については、4段階から7段階の、1段目導水シート21、1段目保護シート11、11a、1段目排水具31を、3段目導水シート23、3段目保護シート13、13a、3段目排水具33と読み替え、2段目導水シート22、2段目保護シート12、12a、2段目排水具32を、4段目導水シート24、4段目保護シート14、14a、4段目排水具34と読み替えることにより実施できる。
【0046】
ただし、4段目排水具34については、斜面1の上部にあり土壌水が発生するおそれがないことや、4段目排水具34の上面に密着する5段目導水シート25は設けられないことにより、1~n段目導水シート20によるフィルター機能がないことから、本実施形態においては設けられてない。そして、4段目保護シート14aよりも上にシートの敷設は行わないことから、4段目保護シート14aの上辺近傍に、留め具41を4本打ち込んでいる。以上の読み替え等を行って実施した図が、図1となる。
【0047】
1~n段目保護シート10、1~n段目導水シート20、1~n段目排水具30を増やして実施する場合には、前記の敷設を繰り返すことによって実施できる。また、本実施形態においては、1~n段目保護シート10と1~n段目導水シート20を分離して施工する方法として説明しているが、最初から1~n段目導水シート20に1~n段目保護シート10を重ねあわせて接着や溶着して製造されたものを用いて施工しても良い。その場合には、前記の施工の段階において、1~n段目導水シート20を敷設する工程は省略され、1~n段目導水シート20が接着または溶着された1~n段目保護シート10aを敷設することになる。
【0048】
本出願書類において接合する方法として、「接着、溶着」と説明するものは、素材を変性劣化がし難い、熱溶着、超音波溶着、接着剤、溶射、ホットメルトや、接着シートを用いる方法等のことである。
【0049】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、図14図15を用いて説明する。図14は第1の実施形態の斜面1の中央部が崩壊して中央部に窪み6が生じた斜面2である。この斜面2に本発明のシートを用いた斜面施工方法が行われた場合を図15に示す。
【0050】
図15において、崩壊が生じた中央部の窪み6については、第1の実施形態と同様に、1段目導水シート21が重ね合された1段目保護シート11aと、2段目導水シート22が重ね合された2段目保護シート12aと、3段目導水シート23が重ね合された3段目保護シート13aと、4段目導水シート24が重ね合された4段目保護シート14aが敷設されている。
【0051】
また、1段目保護シート11aの上側の辺の近傍に、3個の1段目排水具31が、2段目保護シート12aの上側の辺の近傍に、3個の2段目排水具32が、3段目保護シート13aの上側の辺の近傍に、3個の3段目排水具33が、斜面2の土中に打ち込まれている。
【0052】
次に、1段目保護シート11a、2段目保護シート12a、3段目保護シート13a、4段目保護シート14aの右側には、5段目導水シート25が重ね合された5段目保護シート15aと、6段目導水シート26が重ね合された6段目保護シート16aが敷設されている。
【0053】
5段目保護シート15aと6段目保護シート16aについては、横長に敷設するのではなく、縦長に敷設されている。また、5段目保護シート15aと6段目保護シート16aが敷設されている斜面2の部分には、1~n段目排水具30は設けられてない。
【0054】
これは、斜面2では、中央部が崩壊して窪みができていることから、窪みのある中央部付近に土壌水が集中していると考えて、1段目保護シート11a、2段目保護シート12a、3段目保護シート13a、4段目保護シート14aが敷設した斜面2だけ、排水具を設け、5段目保護シート15aと6段目保護シート16aを敷設した斜面2には、排水具が必要ないと判断して実施したからである。また、土壌水を外部に誘導排水する必要がないことから、シートを敷設し易い縦長にして、5段目保護シート15aと6段目保護シート16aを敷設している。
【0055】
なお、5段目保護シート15aと6段目保護シート16aを横長に敷設して、斜面2に排水具を打ち込んでも良い。また、図15においては省略しているが、必要な場合には、1段目保護シート11a、2段目保護シート12a、3段目保護シート13a、4段目保護シート14aの左側に、7段目保護シート17aと8段目保護シート18aを敷設しても良い。
【0056】
1~n段目導水シート20、1~n段目保護シート10、1~n段目排水具30の材質や形状等については、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。また、斜面2に対する施工方法については、1段目保護シート11a、2段目保護シート12a、3段目保護シート13a、4段目保護シート14aについては、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。そして、4段目保護シート14aを敷設した後に、5段目保護シート15a、6段目保護シート16aの順で敷設する。
【0057】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について、図16を用いて説明する。図16は第3の実施形態に用いる排水具51の斜視図であり、排水具51が変更されているだけであるので、1~n段目導水シート20、1~n段目保護シート10、留め具41の材質や形状等については、第1の実施形態と同様として説明を省略する。また、斜面1や斜面2に対する施工方法については、第1の実施形態や第2の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0058】
排水具51は、金属、合成樹脂等を適切な形状に加工したものである。排水具51の先端51aは、1~n段目排水具30の先端30aと同様に、土中に打ち込み易い様に、尖らせている。また、末端51bは、排水具51を土中に打ち込む場合に、ハンマーで叩きやすくするためと、1~n段目保護シート10aの上辺を押さえて仮止めが可能な、下向きに折り曲げられた折り返しが設けられている。そして、折り返した部分については、1~n段目保護シート10aを押さえつけ易くするために、複数の四角形の切欠きが設けている。なお、切り欠きについては、1~n段目保護シート10aの厚みや材質により個数を増減させることや、形状を三角形や半円形等にしても良い。
【0059】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について、図17を用いて説明する。図17は第4の実施形態に用いる排水具52の斜視図であり、排水具52が変更されているだけであるので、1~n段目導水シート20、1~n段目保護シート10、留め具41の材質や形状等については、第1の実施形態と同様として説明を省略する。また、斜面1や斜面2に対する施工方法については、第1の実施形態や第2の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0060】
排水具52は、金属、合成樹脂等を適切な形状に加工したものである。排水具52の末端52bについては、1~n段目排水具30の先端30bと同様に、土中に打ち込む場合に、ハンマーで叩きやすくするためと、1~n段目保護シート10aの上辺を押さえて仮止めが可能な、下向きに折り曲げられた折り返しが設けられている。また、先端52aについては、中央部に窪みを設けて、断面「逆への字」状に加工されている。土壌水を受け易くするためである。なお、排水具52が1~n段目導水シート20で覆われる部分については平面になっているので、1~n段目導水シート20のフィルター機能を損なわない。
【0061】
以上、本発明について、第1~第4の実施形態に基づき説明してきたが、本発明は何らこれらの実施形態の構成に限定するものではない。例えば、第1~第4の実施形態の組み合わせについては適宜組合せを変えて実施可能である。
【0062】
さらには、この発明は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本件出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
[1]付記1は、1段目導水シートを斜面に敷設し、
前記1段目導水シートの上に1段目保護シート敷設し、
前記1段目導水シートと前記1段目保護シートの上側近傍の所定の箇所に1段目排水具を土中に打ち込み、
前記1段目保護シートの上辺に所定の幅で重ね合せて2段目導水シートを前記1段目保護シートの上方に敷設し、
その後前記2段目導水シートの上に2段目保護シート敷設し、
前記2段目導水シートと前記2段目保護シートの上側近傍の所定の箇所に2段目排水具を土中に打ち込み、
その後少なくとも前記2段目保護シート、前記2段目導水シート、前記1段目保護シート及び前記1段目導水シートの重なり部分と、前記1段目保護シート及び前記1段目導水シートの下辺近傍を留め具で斜面に固定し、
前記敷設、打ち込みや固定等の手順を上方に向かってn段目まで繰り返すことからなるシートを用いた斜面施工方法である。
[2]付記2は、前記1~n段目保護シートの裏面側に予め対応する前記第1~n段目導水シートが接着または溶着されている、請求項1記載のシートを用いた斜面施工方法である。
[3]付記3は、前記留め具で、下側にある前記1~n段目保護シート及び前記第1~n段目導水シートを仮止めする、請求項1または請求項2記載のシートを用いた斜面施工方法である。
[4]付記4は、前記1~n段目保護シートは、内部空間を有しており、前記空間に鉱物を粉砕または鉱物を焼成・粉砕した原材料料を主成分とする粉粒材を充填させている請求項1乃至請求項3記載のシートを用いた斜面施工方法である。
[5]付記5は、前記1~n段目保護シートの表面で受け止められた雨水は、前記1~n段目保護シートの表面を流下し、斜面上流側からの土壌水は、略水平方向に連続して又は所定の間隔で土中に打ち込まれた1~n段目排水具で、対応する前記1~n段目保護シート表面に誘導排水される請求項1乃至請求項4記載のシートを用いた斜面施工方法である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
重要な社会インフラである山の斜面、造成地の斜面、道路の斜面、河川堤防の斜面、護岸の斜面等の土砂崩れや、地滑り等の斜面の崩壊に対する応急処置を行う場合に、恒久処置までの期間が延長する場合についても対応できる。
【符号の説明】
【0064】
1、2:斜面
5:水平面
6:窪み
10、10a:1~n段目保護シート
11、11a:1段目保護シート
12、12a:2段目保護シート
13、13a:3段目保護シート
14、14a:4段目保護シート
15a:5段目保護シート
16a:6段目保護シート
20:1~n段目導水シート
21:1段目導水シート
22:2段目導水シート
23:3段目導水シート
24:4段目導水シート
30:1~n段目排水具
30a、51a、52a:先端
30b、51b、52b:末端
31:1段目排水具
32:2段目排水具
33:3段目排水具
41:留め具
51、52:排水具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17