(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】アクリル樹脂及び粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/30 20060101AFI20220405BHJP
C09J 133/10 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C08F220/30
C09J133/10
(21)【出願番号】P 2019056763
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390028048
【氏名又は名称】根上工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】北原 聖也
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-081288(JP,A)
【文献】特開2016-020442(JP,A)
【文献】特開2016-020477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/30
C09J 133/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(3-フェノキシフェニル)メチルアクリレートに基づく構成単位と、(3-フェノキシフェニル)メチルアクリレートと共重合可能な他のモノマーに基づく構成単位とを有し、
前記他のモノマーが下記式(1)で表されるモノマーを含み、
CH
2
=CR
1
-COO-Q-R
2
・・・(1)
[式(1)中、R
1
は、水素原子又はメチル基であり、Qは、炭素数1又は2のアルキレンであり、R
2
は、ビフェニルオキシ基である。]
全構成単位に対する前記(3-フェノキシフェニル)メチルアクリレートに基づく構成単位の割合が50質量%以上
80質量%以下であり、
重量平均分子量が50,000~1,000,000であり、
ガラス転移温度が-50~0℃である、
アクリル樹脂であって、
前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンを用いて検量線を作成して測定したポリスチレン換算分子量であり、
前記ガラス転移温度は、JIS K 7121-1987に準じ、示差走査熱量測定法で測定した中間点ガラス転移温度であり、
乾燥後又は硬化後の屈折率が1.55~1.62である、アクリル樹脂。
【請求項2】
請求項1
に記載のアクリル樹脂を含む粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル樹脂及び粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、PDA端末等の液晶表示装置の表示パネルでは、ガラス基板等の光学用部材に反射防止フィルムや導電性フィルム等の光学フィルムが粘着剤で貼り合わされる。粘着剤には、充分な粘着力を有することに加え、光を有効に利用するために、光学フィルムや光学用部材との界面での全反射を抑制することが求められる。具体的には、光学フィルムや光学用部材に用いられる材料(ガラス、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等)の屈折率は1.51~1.59程度であり、粘着剤にも同程度の屈折率が求められる。
【0003】
光学フィルムを光学用部材に貼り合わせる粘着剤としては、アクリル樹脂を含む粘着剤組成物が知られている。特許文献1には、芳香族環を有するモノマーに基づく構成単位を有するアクリル樹脂を主成分とし、乾燥後又は硬化後の屈折率が1.49~1.60である粘着剤組成物が開示されている。特許文献2には、芳香族環を有しないアクリル酸系アルキルエステルと、芳香族環を有するモノマーとを共重合したアクリル樹脂を含み、屈折率が1.50~1.55である粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-173656号公報
【文献】特開2003-13029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2のような従来の粘着剤組成物では、高い屈折率と高い粘着力とを両立させることが難しい。
【0006】
本発明は、光学フィルムや光学部材への粘着力が高く、かつ屈折率が高く、光を有効利用できるアクリル樹脂及び粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
[1](3-フェノキシフェニル)メチルアクリレートに基づく構成単位と、(3-フェノキシフェニル)メチルアクリレートと共重合可能な他のモノマーに基づく構成単位とを有し、
全構成単位に対する前記(3-フェノキシフェニル)メチルアクリレートに基づく構成単位の割合が50質量%以上であり、
重量平均分子量が50,000~1,000,000であり、
ガラス転移温度が-50~0℃である、アクリル樹脂。
[2]乾燥後又は硬化後の屈折率が1.55~1.62である、[1]に記載のアクリル樹脂。
[3][1]又は[2]に記載のアクリル樹脂を含む粘着剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学フィルムや光学部材への粘着力が高く、かつ屈折率が高く、光を有効利用できるアクリル樹脂及び粘着剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語は以下の意味を示す。
「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの総称である。
「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の総称である。
「ポリマーのガラス転移温度(以下、「Tg」と記す。)」は、JIS K 7121-1987(対応国際規格ISO 3146)に準じ、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した中間点ガラス転移温度である。
「重合体の重量平均分子量(以下、「Mw」と記す。)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、分子量既知のポリスチレンを用いて検量線を作成して測定したポリスチレン換算分子量である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
[アクリル樹脂]
本発明のアクリル樹脂は、(3-フェノキシフェニル)メチルアクリレート(以下、「POB-A」とも記す。)に基づく構成単位と、POB-Aと共重合可能な他のモノマーに基づく構成単位とを有するアクリル系コポリマーである。また、本発明のアクリル樹脂は、全構成単位に対するPOB-Aに基づく構成単位の割合が50質量%以上であり、Mwが50,000~1,000,000であり、Tgが-50~0℃である。
【0011】
POB-Aは、ホモポリマーの屈折率が1.57、Tgが-35℃であり、他のアクリル系モノマーに比べて、ホモポリマーの屈折率が高く、Tgが低いモノマーである。POB-Aに基づく構成単位を全構成単位に対して50質量%以上有することで、Tgが低く、光学フィルムや光学部材への粘着力が高く、かつ屈折率が高いアクリル樹脂となる。
【0012】
POB-Aと共重合可能な他のモノマーとしては、POB-A以外の芳香族環を有するモノマー、芳香族環を有しないモノマーを例示できる。
POB-A以外の芳香族環を有するモノマーとしては、POB-A以外の芳香族環を有する(メタ)アクリレート、スチレン系モノマーを例示できる。
【0013】
POB-A以外の芳香族環を有する(メタ)アクリレートとしては、下記式(1)で表されるモノマーを例示できる。
CH2=CR1-COO-Q-R2 ・・・(1)
ただし、前記式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基である。Qは、アルキレン基、又は-Q1-(OQ2)n-(ただし、Q1及びQ2はそれぞれ独立してアルキレン基である。nは正の整数である。)である。R2は、アリール基又はアリールオキシ基である。
【0014】
Qのアルキレン基の炭素数は、1~18が好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。Qの具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基を例示でき、メチレン基、エチレン基が好ましい。
【0015】
Q1及びQ2のアルキレン基の炭素数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。Q1及びQ2としては、メチレン基、エチレン基が好ましい。
nは、例えば、1~10の整数であり、1~6の整数が好ましい。
【0016】
R2のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、ビフェニル基を例示できる。アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラニルオキシ基、フェナントリルオキシ基、ビフェニルオキシ基を例示できる。R2のアリール基、アリールオキシ基には、1個以上の置換基が含まれていてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、スルホ基を例示できる。
【0017】
式(1)で表されるモノマーとしては、炭素数1~18のアルキレン基を有するアリールアルキル(メタ)アクリレート、炭素数1~18のアルキレン基を有するアリールオキシアルキル(メタ)アクリレート、炭素数1~6のオキシアルキレン基を有するアリールオキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを例示できる。より具体的には、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性クレゾール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートを例示できる。
【0018】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンを例示できる。
POB-A以外の芳香族環を有するモノマーとしては、屈折率及び共重合性の点から、POB-A以外の芳香族環を有する(メタ)アクリレートが好ましく、式(1)で表されるモノマーがより好ましく、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0019】
芳香族環を有しないモノマーとしては、例えば、芳香族環を有しない、炭素数1~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートを例示できる。
芳香族環を有しないモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニルエステル類(酢酸ビニル等)、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等を用いてもよい。
【0020】
芳香族環を有しないモノマーとしては、Tg及び共重合性の点から、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0021】
本発明のアクリル樹脂が有するPOB-Aと共重合可能な他のモノマーに基づく構成単位は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0022】
本発明のアクリル樹脂中のPOB-Aに基づく構成単位の割合は、全構成単位に対して、50質量%以上であり、55~90質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましい。POB-Aに基づく構成単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、Tgが低く、光学フィルムや光学用部材に対する粘着力が高くなり、また屈折率が高くなる。POB-Aに基づく構成単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、POB-Aと共重合可能な他のモノマーに基づく構成単位の割合が相対的に高くなり、光学フィルムや光学用部材に対する粘着力を高くしやすい。
【0023】
本発明のアクリル樹脂のMwは、50,000~1,000,000であり、100,000~900,000が好ましく、150,000~700,000がより好ましい。アクリル樹脂のMwが前記範囲内であれば、光学フィルムや光学用部材に対する粘着力が高くなる。
【0024】
本発明のアクリル樹脂のTgは、-50~0℃であり、-40~-20℃が好ましい。アクリル樹脂のTgが前記範囲内であれば、光学フィルムや光学用部材に対する粘着力が高くなる。
【0025】
本発明のアクリル樹脂の乾燥後又は硬化後の屈折率は、1.55~1.62が好ましく、1.56~1.61がより好ましい。屈折率が前記範囲内であれば、光学フィルムや光学用部材との屈折率の差が小さいため、光学フィルムや光学用部材と粘着剤層の界面での全反射が充分に抑制されやすく、光を有効に利用できる。
【0026】
本発明のアクリル樹脂は、POB-Aと、POB-Aと共重合可能な他のモノマーを含むモノマー成分を重合することで得られる。
重合方法としては、特に限定されず、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合を例示できる。
【0027】
重合溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール等)、芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、エチルベンゼン、キシレン等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等)、エステル系溶媒(酢酸ブチル等)を例示できる。重合溶媒は、1種でもよく、2種以上でもよい。
重合溶媒の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、50~300質量部が好ましく、80~150質量部がより好ましい。
【0028】
本発明のアクリル樹脂の製造には、ラジカル重合法を採用することが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルマレエート等の過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物を例示できる。ラジカル重合開始剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.5~2質量部がより好ましい。
【0029】
重合には、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、tert-ドデシルメルカプタン、n-ラウリルメルカプタン、tert-ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、2-メルカプトエタノールを例示できる。連鎖移動剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
連鎖移動剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、0~5質量部が好ましく、0~2質量部がより好ましい。
【0030】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着剤組成物は、本発明のアクリル樹脂を含む。
本発明の粘着剤組成物は、必要に応じて、本発明のアクリル樹脂に加えて、各種添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤を例示できる。本発明の粘着剤組成物は、そのまま乾燥させて用いてもよく、架橋剤を配合して硬化させてもよい。
【0031】
架橋剤としては、例えば、多官能性メラミン化合物(メチル化トリメチロールメラミン、ブチル化ヘキサメチロールメラミン等)、多官能性エポキシ化合物(ジグリシジルアニリン、グリセリンジグリシジルエーテル等)、多官能性イソシアネート化合物(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)を例示できる。配合する架橋剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0032】
架橋剤として多官能性メラミン化合物、多官能性エポキシ化合物を使用する場合、架橋剤の使用量は、アクリル樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましく、0.01~5質量部がより好ましい。
架橋剤として多官能性イソシアネート化合物を使用する場合、架橋剤の使用量は、アクリル樹脂100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、0.05~15質量部がより好ましい。
【0033】
本発明の粘着剤組成物の用途は、特に限定されず、光学用部材に光学フィルムを貼り合わせるための粘着剤として好適に使用できる。
例えば、光学フィルムの一方の面に本発明の粘着剤組成物を塗布して乾燥し、必要に応じて硬化させて粘着剤層を形成し、前記粘着剤層を介して光学フィルムを光学用部材に貼り合わせる。
【0034】
光学フィルムとしては、例えば、反射防止フィルム、導電性フィルムを例示できる。
光学用部材としては、例えば、液晶パネル等の表示パネルのガラス基板、偏光板、位相差板等を例示できる。
【0035】
粘着剤組成物の塗布方法は、特に限定されず、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等を用いる方法を例示できる。
【0036】
粘着剤層の厚みは、1~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましい。粘着剤層の厚みが前記範囲の下限値以上であれば、十分な粘着力を確保できる。粘着剤層の厚みが前記範囲の上限値以下であれば、表示パネルを薄くできるとともに、経済的である。
【0037】
以上説明したように、本発明では、全構成単位に対してPOB-Aに基づく構成単位を50質量%以上有し、Mw及びTgが特定の範囲に制御されたアクリル樹脂を用いる。これにより、光学フィルムや光学部材への粘着力が高く、かつ屈折率が高く、光を有効利用できる粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を得ることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、以下の記載において、「部」は「質量部」を意味する。
【0039】
[ガラス転移温度(Tg)]
アクリル樹脂のTgは、JIS K 7121-1987(対応国際規格ISO 3146)に準じ、示差走査熱量測定(DSC)法によって測定した。
【0040】
[重量平均分子量(Mw)]
アクリル樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、分子量既知のポリスチレンを用いた検量線からポリスチレン換算分子量として測定した。
【0041】
[屈折率]
アッベ屈折率計にて、25℃雰囲気下、ナトリウムD線を粘着剤層付きフィルムの粘着剤層に照射し、粘着剤層の屈折率を測定した。
【0042】
[粘着力]
積層品における粘着剤層を有するフィルムと、ポリカーボネート製の樹脂板との粘着力は、株式会社島津製作所製オートグラフAGS-Jによって測定した。
【0043】
[合成例1]
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、酢酸ブチル1000部、(3-フェノキシフェニル)メチルアクリレート790部、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート200部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10部、アゾイソブチロニトリル50部、及びtert-ドデシルメルカプタン10部を仕込み、溶液重合法により、常圧、窒素ガス気流下、80℃、8時間の条件で重合反応を行い、アクリル樹脂Aの酢酸ブチル溶液を得た。
【0044】
[合成例2~10]
原料モノマーの組成を表1に示すように変更した以外は、合成例1と同様にしてアクリル樹脂B~Jの酢酸ブチル溶液を得た。
【0045】
各合成例における原料モノマー、重合開始剤及び連鎖移動剤の組成、得られたアクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量を表1に示す。
【0046】
【0047】
ただし、表1における略号は以下の意味を示す。
POB-A:(3-フェノキシフェニル)メチルアクリレート。
2-EHA:2-エチルヘキシルアクリレート。
BA:ブチルアクリレート。
MMA:メチルメタクリレート。
A-LEN-10:エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「A-LEN-10」)。
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート。
AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル。
TDM:tert-ドデシルメルカプタン。
【0048】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート製の厚み100μmのフィルムの一方の面に、粘着剤組成物としてアクリル樹脂Aの酢酸ブチル溶液100部とコロネートL(東ソー株式会社製)0.3部の混合物を塗布し、乾燥して厚み30μmの粘着剤層を形成した。次いで、粘着剤層付きフィルムを、粘着剤層を介してポリカーボネート製の樹脂板(厚み3mm)に貼り合わせて積層品を得た。
【0049】
[実施例2~6、比較例1~4]
アクリル樹脂Aの酢酸ブチル溶液の代わりに表2に示すアクリル樹脂の酢酸ブチル溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして積層品を得た。
【0050】
各例の評価結果を表2に示す。なお、実施例2,3,6は比較例である。
【0051】
【0052】
表2に示すように、POB-Aに基づく構成単位を50質量%以上有し、Mwが特定の範囲内のアクリル樹脂を用いる実施例1~6では、屈折率が高く、ポリカーボネート製の樹脂板との粘着力も高い粘着剤層が形成された。
一方、POB-Aに基づく構成単位の割合及びMwのいずれか一方又は両方を満たさない比較例1~4では、屈折率と粘着力が両立できなかった。