(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】鋸刃切削装置および切削方法
(51)【国際特許分類】
B23D 53/04 20060101AFI20220405BHJP
B23D 55/08 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B23D53/04
B23D55/08 J
(21)【出願番号】P 2019172690
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2021-11-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514030849
【氏名又は名称】株式会社ソーテック浜松
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 仁
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3152124(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0333536(US,A1)
【文献】特開2002-321121(JP,A)
【文献】特開2003-159701(JP,A)
【文献】特開昭61-025718(JP,A)
【文献】特開昭57-184622(JP,A)
【文献】実開昭61-022966(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第2789437(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 53/04
B23D 55/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切削物が載置される載置台を備えたベース盤と、
前記載置台に載置された被切削物を把持する把持部と、
前記ベース盤に設けられた揺動支点を中心に揺動可能な上部フレームと、
前記上部フレームに設けられて前記被切削物を切削する鋸刃部材と、
前記揺動支点を介して前記上部フレームを揺動させる揺動機構と、
前記上部フレームが前記揺動支点を介して揺動端部で揺動するときに前記鋸刃部材を上昇させる上下移動機構と、
を備え
、
前記上下移動機構は、
前記上部フレームに設けられたカムロッドと、
前記カムロッドの端部に設けられたカムフォロアと、
前記カムフォロアと接触して前記カムロッドを上下方向に移動させる本体上下カム部材と、
前記本体上下カム部材と連結されたカムシャフトを回転駆動させる駆動ベルトを備えた駆動機構と、で構成されてなることを特徴とする鋸刃切削装置。
【請求項2】
前記上下移動機構は、前記鋸刃部材の前記被切削物に対する離間量を調整する離間量調
整機構をさらに備えてなる、請求項
1に記載の鋸刃切削装置。
【請求項3】
前記離間量調整機構は、
前記カムロッドに設けられたリンク部と、
前記カムロッドに接触して支持可能な移動支点と、
前記移動支点がスライド移動可能なリニアガイドと、
で構成されてなる、請求項
1又は2に記載の鋸刃切削装置。
【請求項4】
前記鋸刃部材は、
帯鋸と、
前記上部フレームに搭載されて、前記帯鋸をベルト掛けして循環させるための駆動ホイ
ールと、
前記駆動ホイールを駆動させる電動モータと、
で構成されてなる、請求項1~
3のいずれか一項に記載の鋸刃切削装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の鋸刃切削装置を用いて被切削物を鋸刃部材で切削する切削方法であって、
前記被切削物を載置台に載置する工程と、
前記鋸刃部材が設けられた上部フレームを、前記載置台を有するベース盤の揺動支点を中心に揺動させながら前記被切削物を切削する工程と、を有し、
前記上部フレームが前記揺動支点を介して揺動端部で揺動するときに前記鋸刃部材を
上下移動機構によって上昇させるとともに、前記揺動端部以外の位置で揺動するときは前記鋸刃部材を前記揺動端部のときよりも下降させ
、
前記上下移動機構は、
前記上部フレームに設けられたカムロッドと、
前記カムロッドの端部に設けられたカムフォロアと、
前記カムフォロアと接触して前記カムロッドを上下方向に移動させる本体上下カム部材と、
前記本体上下カム部材と連結されたカムシャフトを回転駆動させる駆動ベルトを備えた駆動機構と、で構成されてなることを特徴とする切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材を切断する鋸刃切削装置に関し、より詳細には切削時に目詰まりせず均質な切削が可能な鋸刃切削装置および切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば帯鋸を用いて所望の径の鋼材を切断する帯鋸盤が知られている。かような帯鋸盤は、大径鋼材や硬質の鋼材などの切断に特に有用であり、従来から切削加工において重宝されている。なお加工工具としての帯鋸刃は、一例としてフープ状の帯鋼に多数の刃を環状に設けられるものが使用されている。
【0003】
例えば断面が円形の鋼材を被切削物として切断する場合、その切断加工中には被切削物の断面形状に応じて切削長が時々刻々変わり、それに対応して切込み深さも増減する。これに対応するため、従来から切削長を制御する揺動式、シーソー式またはオシレーション式と呼ばれる切込み方式が帯鋸盤において用いられている。
【0004】
例えば特許文献1に開示されるにエンドレス帯鋸刃を用いる帯鋸盤では、帯鋸盤のベッド下部に揺動支点を設け、その揺動支点に対し帯鋸ヘッドとその送りスライドガイド機構を一体的に揺動させる揺動機構が提案されており、ワークの断面形状に左右されることなく、適正切削長を維持して切込み送りが与えられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した文献に限らず現在の技術では、市場のニーズを適切に満たしているとは言えず、以下に述べるごとき課題が存在する。
【0007】
すなわち、上記した特許文献1によれば被切削物の断面形状に左右されることなく切削加工が行い得るが、帯鋸を揺動させて被切削物を加工するとき中央と両端ではその切削長がどうしても異なってしまう。特に帯鋸が揺動されて被切削物の両端に位置する時は、中央に比して切り込み量が多くなるため切屑が相対的に大型化してしまう。
【0008】
このように被切削物の切削面における中央と両端とで切り込み量が異なる結果、帯鋸の刃間に切屑が滞留してしまい、最悪の場合には帯鋸の破損にもつながりかねない。また、帯鋸の刃間に切屑が滞留することで切削性能も低下してしまい、被切削物の切断加工に多くの時間を必要としてしまう。
本発明は、上記した課題を一例に鑑みてなされたものであり、被切削物の切削面における中央と両端とで適切な切り込み量を実現し、帯鋸の刃間に切屑を滞留させないで被切削物を迅速に切断可能な鋸刃切削装置および切削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態における鋸刃切削装置は、(1)被切削物が載置される載置台を備えたベース盤と、前記載置台に載置された被切削物を把持する把持部と、前記ベース盤に設けられた揺動支点を中心に揺動可能な上部フレームと、前記上部フレームに設けられて前記被切削物を切削する鋸刃部材と、前記揺動支点を介して前記上部フレームを揺動させる揺動機構と、前記上部フレームが前記揺動支点を介して揺動端部で揺動するときに前記鋸刃部材を上昇させる上下移動機構と、を備え、前記上下移動機構は、前記上部フレームに設けられたカムロッドと、前記カムロッドの端部に設けられたカムフォロアと、前記カムフォロアと接触して前記カムロッドを上下方向に移動させる本体上下カム部材と、前記本体上下カム部材と連結されたカムシャフトを回転駆動させる駆動ベルトを備えた駆動機構と、で構成されてなることを特徴とする。
【0011】
また上記した(1)に記載の鋸刃切削装置においては、(2)前記上下移動機構は、前記鋸刃部材の前記被切削物に対する離間量を調整する離間量調整機構をさらに備えてなることが好ましい。
【0012】
また上記した(1)又は(2)に記載の鋸刃切削装置においては、(3)前記離間量調整機構は、前記カムロッドに設けられたリンク部と、前記カムロッドに接触して支持可能な移動支点と、前記移動支点がスライド移動可能なリニアガイドと、で構成されてなることが好ましい。
【0013】
また上記した(1)~(3)のいずれかに記載の鋸刃切削装置においては、(5)前記鋸刃部材は、帯鋸と、前記上部フレームに搭載されて、前記帯鋸をベルト掛けして循環させるための駆動ホイールと、前記駆動ホイールを駆動させる電動モータと、で構成されてなることが好ましい。
【0014】
さらに上記課題を解決するため、本発明の一実施形態における切削方法は、(5)上記した(1)~(4)のいずれかに記載の鋸刃切削装置を用いて被切削物を鋸刃部材で切削する切削方法であって、前記被切削物を載置台に載置する工程と、前記鋸刃部材が設けられた上部フレームを、前記載置台を有するベース盤の揺動支点を中心に揺動させながら前記被切削物を切削する工程と、を有し、前記上部フレームが前記揺動支点を介して揺動端部で揺動するときに前記鋸刃部材を上下移動機構によって上昇させるとともに、前記揺動端部以外の位置で揺動するときは前記鋸刃部材を前記揺動端部のときよりも下降させ、前記上下移動機構は、前記上部フレームに設けられたカムロッドと、前記カムロッドの端部に設けられたカムフォロアと、前記カムフォロアと接触して前記カムロッドを上下方向に移動させる本体上下カム部材と、前記本体上下カム部材と連結されたカムシャフトを回転駆動させる駆動ベルトを備えた駆動機構と、で構成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被切削物の切削面における中央と両端とで適切な切り込み量を実現でき、帯鋸の刃間に切屑を滞留させないで被切削物を迅速に切断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態における鋸刃切削装置の全体構成を模式的に示す外観模式図である。
【
図2】実施形態における鋸刃切削装置の側面を模式的に示す側面図である。
【
図3】鋸刃切削装置における把持部の構造を説明するための模式図その1である。
【
図4】鋸刃切削装置における把持部の構造を説明するための模式図その2である。
【
図5】鋸刃切削装置における把持部の構造を説明するための模式図その3である。
【
図6】鋸刃切削装置における揺動機構と上下移動機構の構造を説明するための模式図その1である。
【
図7】鋸刃切削装置における揺動機構と上下移動機構の構造を説明するための模式図その2である。
【
図8】鋸刃切削装置における上下移動機構に搭載された離間量調整機構の構造を説明するための模式図である。
【
図9】実施形態における切削方法のフローチャートである。
【
図10】実施形態における鋸刃切削装置で切削した際における揺動端部とそれ以外における切削長を説明する模式図である。
【
図11】実施形態における鋸刃切削装置で切削した際における切屑の状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明を実施するための実施形態について説明する。
以下では鋸刃切削装置100の高さ方向をZ方向、被切削物Wの挿入(送り)方向をY方向、および鋸刃部材40に対する被切削物Wの切削方向をX方向とそれぞれ定義して説明する。しかしながらこれらの方向付けは一例であって、本発明の技術思想を何ら減縮する意図ではない。
【0018】
[鋸刃切削装置100]
図1~8を参照しつつ、本実施形態における鋸刃切削装置100について説明する。
まず
図1及び
図2に示されるとおり、鋸刃切削装置100は、いわゆるワークと称される被切削物Wを切断する機能を有しており、ベース盤10、把持部20、上部フレーム30、鋸刃部材40、揺動機構50、および上下移動機構60を含んで構成されている。
なお以下で詳述する構成以外の装置構造については、例えば上記した実用新案登録第3152124号公報を含む公知の揺動式切削機構(帯鋸盤など)を参照することができる。
【0019】
ここで本実施形態の「被切削物W」とは、例えば磁性体または非磁性体の金属鋼材や樹脂製の棒材などが例示できる。このうち、特に断面が円形の小径または大径の鋼材が被切削物Wとしては好適である。また、本実施形態の被切削物Wとしては、断面が円形であることが好ましいが、例えば断面が楕円状や多角形状であっても適用することができる。
【0020】
ベース盤10は、上記した被切削物Wが載置される載置台11を備えている。かような本実施形態のベース盤10としては、後述する把持部20で被切削物Wを把持可能な限り、例えば公知の帯鋸盤に適用されている構造を適用してもよい。
把持部20は、前記した載置台11に載置された被切削物Wを把持する機能を有している。より具体的に本実施形態の把持部20は、
図3などに示すように、被切削物Wを挟持可能なバイス21、このバイス21を被切削物Wの幅方向(X方向)に対して近接または離間させるバイス駆動部22を含んで構成されている。なお本実施形態では、バイス駆動部22の一例として油圧シリンダーが適用されているが、これに限らず空圧シリンダーあるいはラック&ピニオン式歯車機構など公知の駆動機構を採用してもよい。
【0021】
上部フレーム30は、後述するベース盤10に設けられた揺動支点12を中心に揺動可能なように構成されている。なお揺動機構のより詳細な仕組みについては、例えば実用新案登録第3152124号公報に記載の揺動メカニズムを参照できる。
図1などに示すように、本実施形態の上部フレーム30は、昇降部本体45が昇降可能に取付けられる側方支柱31と、この側方支柱31の上端部に設けられて昇降用駆動モータ48が搭載される上部支柱32と、この側方支柱31の下端部に設けられて後述する揺動支点12としての揺動軸が挿入される開口34を備えた下部支柱33と、を有している。
【0022】
鋸刃部材40は、前記した上部フレーム30に設けられて被切削物Wを切削する機能を有している。より具体的に、本実施形態の鋸刃部材40は、帯鋸41、上部フレーム30に搭載されて帯鋸41をベルト掛けして循環させるための駆動ホイール42、そして駆動ホイール42を駆動させる電動モータ(不図示)で構成されてなる。
なお帯鋸41における刃の材質としては特に制限はなく、例えばダイヤモンドコーティングなどの表面処理が施された公知の材質が適用できる。また、本実施形態では、鋸刃部材40の刃物として帯鋸を適用したが、この形態に限られず例えばチップソーなど他の公知の鋸刃を用いてもよい。
【0023】
また本実施形態では、
図2に示すおとおり、鋸刃部材40は側方支柱31に対して傾斜して設置されているため、被切削物Wの切削面に対して帯鋸41を垂直に立てる機構が必要となる。したがって本実施形態の鋸刃切削装置100は、帯鋸41を上記した垂直に立てる刃姿勢調整部43と、この刃姿勢調整部43を吊り下げ支持する支持部44と、この支持部44の上端部を支持する昇降部本体45と、この昇降部本体45に設けられて刃姿勢調整部43を幅方向(Y方向)に移動可能な刃長調整機構46(例えば本例のようにモーターとラック&ピニオンの組が例示できる)と、この昇降部本体45と接続されたボール螺子47と、このボール螺子47を駆動させる昇降用駆動モータ48を含んで構成されている。これにより、鋸刃部材40(少なくとも帯鋸41)を鉛直方向に移動させることが可能となっている。
【0024】
揺動機構50は、前記した揺動支点12を介して上部フレーム30を揺動させる機能を有している。より具体的に本実施形態の揺動機構50は、
図6及び
図7に示すとおり、前記した上部フレーム30(下部支柱33の端部)に設けられた揺動ロッド51と、この揺動ロッド51の端部に設けられた第1カムフォロア52と、この第1カムフォロア52と接触して揺動ロッド51を上下方向に移動させる揺動カム部材53と、この揺動カム部材53と連結されたカムシャフト61を回転駆動させる駆動ベルト65を備えた駆動機構66と、で構成されている。
【0025】
上下移動機構60は、上部フレーム30が揺動支点12を介して揺動端部(揺動することで最も左右に傾斜した部位)で揺動するときに鋸刃部材40を上昇させる機能を有している。
図1からからも理解されるとおり、揺動支点12としての揺動軸は開口34に対して所定の隙間を有して挿入されている。したがって上下移動機構60により上部フレーム30が上昇しても上記した揺動軸と意図せず干渉を起こしてしまうことが抑制されている。
これにより、被切削物Wを鋸刃部材40で切削加工する際に、上記した揺動端部において帯鋸41が被切削物Wに対して上昇することで切り込み深さが過大となることが抑制され、被切削物Wの切削面における中央と両端とで適切な切り込み量を実現できる。
【0026】
図6および
図7から明らかなとおり、本実施形態の上下移動機構60は、上部フレーム30(下部支柱33の端部)に設けられたカムロッド62と、このカムロッド62の端部に設けられた第2カムフォロア63と、この第2カムフォロア63と接触してカムロッド62を上下方向に移動させる本体上下カム部材64と、この本体上下カム部材64と連結されたカムシャフト61を回転駆動させる駆動ベルト65を備えた駆動機構66と、で構成されている。
【0027】
このように本実施形態では、揺動機構50と上下移動機構60は、共通のカムシャフト61に設けられており、さらに共通の駆動ベルト65を有する駆動機構66によって駆動されるように構成されていることが好ましい。これにより装置スペースを効率化して装置規模が肥大化することが抑制できる。
【0028】
なお
図7に示すとおり揺動機構50と上下移動機構60は共通のカムシャフト61に設けられているが、揺動機構50と上下移動機構60とは調整ギア67を介して速度比が1:2に調整されている。これにより、例えばカムシャフト61が1回転したとき、揺動機構50が1回揺動するのに対して上下移動機構60は2回上下移動を行い得るように構成できる。換言すれば、例えば
図10に示すように、1回の揺動に対して2つの揺動端部(両端)においてそれぞれ鋸刃部材40(帯鋸41)を上昇させることが可能となる。
【0029】
また、
図5及び
図8などに示すように、本実施形態の上下移動機構60は、鋸刃部材40の被切削物Wに対する離間量(上記した上昇の度合い)を調整する離間量調整機構70をさらに備えてなることが好ましい。これにより、例えば被切削物Wの径に応じて適切な離間量(上記した上昇の度合い)を設定することが可能となる。
【0030】
これらの図からも明らかなとおり、本実施形態の離間量調整機構70は、カムロッド62に設けられたリンク部71と、カムロッド62に接触して支持可能な移動支点72と、この移動支点72がスライド移動可能なリニアガイド73と、で構成されている。なお図示は省略したが、この移動支点72は、サーボモーターやシリンダー機構など公知の駆動機構によってリニアガイド73上を移動可能に構成されている。
【0031】
リンク部71は、このリンク部71をジョイント箇所としてカムロッド62が折れ曲がることを許容している。したがって
図8に示すように、カムロッド62に接触する移動支点72の接触場所に応じて上部フレーム30(下部支柱33)の上昇の度合いを調整することが可能となっている。
【0032】
より具体的には、例えば移動支点72がリニアガイド73上における右端72R(リンク部71の直下)に位置するときは、このリンク部71よりも左側におけるカムロッド62が本体上下カム部材64の回転によって上下したとしても、この上下動に対してリンク部71の右側におけるカムロッド62はほとんど上下移動しない。
【0033】
一方で、例えば移動支点72がリニアガイド73上における左端72L(カムロッド62の端部により近い側)に位置するときは、このリンク部71よりも左側におけるカムロッド62が本体上下カム部材64の回転によって上下動すると、この上下動に追従してリンク部71の右側におけるカムロッド62も上下移動を行うことになる。換言すれば、この移動支点72は、左端72Lと右端72Rの間のどこに配置されるかによって、カムロッド62による上昇の度合い(ひいては鋸刃部材40の被切削物Wに対する離間量)を調整することが可能となっている。
【0034】
これにより、例えば被切削物Wが断面円形で小径の鋼材である場合には、例えば移動支点72を右端72Rに近い側に配置することで、上記した揺動端部で揺動するときに帯鋸41の上昇度合い(離間量)を相対的に小さくしてもよい。あるいは、例えば被切削物Wが硬度の高い材質である鋼材の場合には、例えば移動支点72を左端72Lに近い側に配置することで、上記した揺動端部で揺動するときに帯鋸41の上昇度合い(離間量)を相対的に大きくしてもよい。
なお上記した揺動機構50や上下移動機構60は、不図示の制御装置を介して制御される。かような制御装置としては、メモリやCPUを備えた公知のコンピューターが例示できる。
【0035】
以上説明した本実施形態における鋸刃切削装置100によれば、
図11に一例を示すように、被切削物Wの切削面における中央(揺動端部でない位置での切削)と両端(揺動端部における切削)とで適切な切り込み量を実現することができる。また、同図においては、揺動端部において適切な切り込み深さgによる切り込み量が実現可能なため、これにより切屑が意図せず肥大化することが抑制されている。このように適切な切り込み量を実現できることから、帯鋸41の刃間に切屑を滞留させないで被切削物Wを迅速に切断することが可能となる。
【0036】
[鋸刃切削装置100による切削方法]
次に
図9もさらに参照しつつ、本実施形態における鋸刃切削装置100による切削方法について説明する。
まず同図のステップ1では、被切削物Wを載置台11に設置する。かような被切削物Wのセッティングは、例えば公知のロボットハンドラーを用いてもよく、あるいは重量物の場合にはクレーンなどの公知の搬送機構を適用してもよい。
【0037】
次いでステップ2では、上記した制御装置に被切削物Wの径を入力する。例えば本実施形態では、一例として、被切削物Wの外径を入力する。
するとステップ3では、上記した制御装置は、入力された被切削物Wの径に応じて離間量調整機構70によって上昇の度合い(離間量)を調整する。
【0038】
例えば揺動機構50によって上部フレーム30が±3°傾斜する設計仕様の場合、揺動端部において(すなわち上部フレームが水平から3°傾いた状態において)5mm上昇するように移動支点72のリニアガイド73上での位置を規定する。また、このとき例えば上部フレームが1.5°傾いた状態においては2.5mm上昇するようにリニアガイド73上での移動支点72の位置が規定される。
【0039】
続くステップ4では、上記した制御装置は、駆動ホイール42を回転させて鋸刃部材40の駆動を開始するとともに、鋸刃部材40が設けられた上部フレーム30を揺動させながら被切削物Wを切削する。上述のとおり、このとき上部フレーム30は、上記載置台11を有するベース盤10の揺動支点12を中心に揺動する。
【0040】
このとき、ステップ4では、上部フレーム30が揺動支点12を介して揺動端部で揺動するときに鋸刃部材40を上昇させるとともに、揺動端部以外の位置(上記した被切削物Wの切削面における中央)で揺動するときは鋸刃部材40を揺動端部のときよりも下降させる制御が行われる。これにより被切削物Wの切削面における中央と両端とで適切な切り込み量を実現できる。
【0041】
そしてステップ5では、被切削物Wの切削が完了したか否かが判定され、未だ切削中の場合はステップ4に戻って切削加工が継続され、切削が完了したら被切削物Wの切断が完了したとして加工が終了する。
【0042】
なお被切削物Wが軸方向(
図1のY方向)に長い部材である場合には、例えばサーボモータ23aを用いた送り機構23(
図5参照)によって被切削物Wが載置台11上でスライドして新たな切断面を切削加工するように構成してもよい。また、載置台11の周囲には鋸刃部材40によって被切削物Wの切屑が生じるが、公知の吸引機構(不図示)などによって当該切屑を回収するように構成してもよい。
【0043】
以上説明した実施形態は本発明を実施する上で好適な形態であって、これらに限定されるものではなく適宜変形することができる。
例えば鋸刃部材40における帯鋸41は単一の帯鋸を例示したが、複数の帯鋸41を搭載するようにしてもよい。また、被切削物Wの軸方向(Y方向)における長さに応じて、鋸刃切削装置100を複数台並置してそれぞれで同一の被切削物Wに対して切削加工を施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明の鋸刃切削装置およびその切削方法は、適切な切り込み量を実現しつつ帯鋸の刃間に切屑を滞留させないで被切削物を迅速に切断する加工装置に資することができる。
【符号の説明】
【0045】
100 鋸刃切削装置
10 ベース盤
11 載置台
12 揺動支点
20 把持部
21 バイス
22 バイス駆動部
23 送り機構
23a サーボモーター
30 上部フレーム
31 側方支柱
32 上部支柱
33 下部支柱
34 開口
40 鋸刃部材
41 帯鋸
42 駆動ホイール
43 刃姿勢調整部
44 支持部
45 昇降部本体
46 刃長調整機構
47 ボール螺子
48 昇降用駆動モータ
50 揺動機構
51 揺動ロッド
52 第1カムフォロア
53 揺動カム部材
60 上下移動機構
61 カムシャフト
62 カムロッド
63 第2カムフォロア
64 本体上下カム部材
65 駆動ベルト
66 駆動機構
70 離間量調整機構
71 リンク部
72 移動支点
73 リニアガイド
72R 右端
72L 左端
g 切り込み深さ
W 被切削物