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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】グリピカンエピトープおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220405BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220405BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220405BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/30
C07K14/705
G01N33/574 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020093553
(22)【出願日】2020-05-28
(62)【分割の表示】P 2017537906の分割
【原出願日】2015-01-16
(65)【公開番号】P2020141702
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】520068032
【氏名又は名称】グリピー ホールディングス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティニアノ フエンマヨール,イレネ
(72)【発明者】
【氏名】ノコン,アライン
(72)【発明者】
【氏名】スーン,ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】トルオング,コーク
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ,ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】ウィスムエラー,サンドラ
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-504812(JP,A)
【文献】国際公開第99/037764(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列KVNPQGPGPEEK(配列番号1)によって定められるGPC-1可動性ループの一部分の中に位置するグリピカン1(GPC-1)のエピトープに、特異的に結合する抗体であって、
前記エピトープまたはエピトープセグメントが:
(i)KVNPQGPGPEEK(配列番号1);
(ii)VNPQGPGPEEK(配列番号2)、VNPQGPGPEE(配列番号3)、NPQGPGPEE(配列番号4)、KVNPQGPGPE(配列番号5)またはKVNPQGPGP(配列番号6)からなる、KVNPQGPGPEEK(配列番号1)のフラグメント;
(iii)VNPQGPGPEE(配列番号3)の変異体であって、
V(val)が他の任意のアミノ酸で置換されている1位;
N(asn)が他の任意のアミノ酸で置換されている2位;
P(pro)が他の任意のアミノ酸で置換されている3位;
Q(gln)がY(tyr)、A(ala)、E(glu)、V(val)、M(met)、F(phe)、L(leu)、I(ile)、T(thr)またはR(arg)のいずれか1つで置換されている4位;
G(gly)がA(ala)、S(ser)、T(thr)、H(his)、W(trp)、Y(tyr)、F(phe)またはM(met)で置換されている5位;
P(pro)が他の任意のアミノ酸で置換されている8位;または
E(glu)がQ(gln)、D(asp)、F(phe)、H(his)またはM(met)で置換されている10位
のうちのいずれか1つの位置に置換を含む、前記VNPQGPGPEE(配列番号3)の変異体;
(iv)NPQGPGPEE(配列番号4)の変異体であって、
N(asn)がH(his)で置換されている1位;
P(pro)が他の任意のアミノ酸で置換されている2位;
Q(gln)がN(asn)、M(met)、T(thr)、S(ser)またはR(arg)のいずれか1つで置換されている3位;
P(pro)がA(ala)で置換されている5位;
P(pro)がA(ala)、D(asp)、C(cys)、E(glu)、Z(glx)、G(gly)、H(his)、K(lys)、M(met)、F(phe)、P(pro)、S(ser)、T(thr)、W(trp)またはY(tyr)のいずれか1つで置換されている7位;または
E(glu)が他の任意のアミノ酸で置換されている9位
のうちのいずれか1つの位置に置換を含む、前記NPQGPGPEE(配列番号4)の変異体;または
(v)KVNPQGPGPE(配列番号5)またはKVNPQGPGP(配列番号6)の変異体であって、
K(lys)がW(trp)、R(arg)、L(lys)、Y(tyr)またはF(phe)のいずれか1つで置換されている1位;
N(asn)がH(his)、P(pro)またはD(asp)のいずれか1つで置換されている3位;
P(pro)がR(arg)、K(lys)、W(trp)、S(ser)、H(his)またはN(asn)のいずれか1つで置換されている4位;
G(gly)がD(asp)、E(glu)、N(asn)、Q(gln)、K(lys)、R(arg)またはA(ala)のいずれか1つで置換されている8位;または
P(pro)がM(met)、A(ala)、I(ile)、K(lys)、R(arg)、Q(gln)、S(ser)、T(thr)またはY(tyr)のいずれか1つで置換されている9位
のうちのいずれか1つの位置にのみ置換を含む、前記KVNPQGPGPE(配列番号5)またはKVNPQGPGP(配列番号6)の変異体
からなるものである、前記抗体。
【請求項2】
前記抗体が単離された抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項5】
前記エピトープまたはエピトープセグメントが、KVNPQGPGPEEK(配列番号1)からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
前記エピトープまたはエピトープセグメントが、VNPQGPGPEEK(配列番号2)、VNPQGPGPEE(配列番号3)、NPQGPGPEE(配列番号4)、KVNPQGPGPE(配列番号5)またはKVNPQGPGP(配列番号6)からなる、KVNPQGPGPEEK(配列番号1)のフラグメントからなる、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
前記エピトープまたはエピトープセグメントが:
(i)VNPQGPGPEE(配列番号3)の変異体であって、
V(val)が他の任意のアミノ酸で置換されている1位;
N(asn)が他の任意のアミノ酸で置換されている2位;
P(pro)が他の任意のアミノ酸で置換されている3位;
Q(gln)がY(tyr)、A(ala)、E(glu)、V(val)、M(met)、F(phe)、L(leu)、I(ile)、T(thr)またはR(arg)のいずれか1つで置換されている4位;
G(gly)がA(ala)、S(ser)、T(thr)、H(his)、W(trp)、Y(tyr)、F(phe)またはM(met)で置換されている5位;
P(pro)が他の任意のアミノ酸で置換されている8位;または
E(glu)がQ(gln)、D(asp)、F(phe)、H(his)またはM(met)で置換されている10位
のうちのいずれか1つの位置に置換を含む、前記VNPQGPGPEE(配列番号3)の変異体;
(ii)NPQGPGPEE(配列番号4)の変異体であって、
N(asn)がH(his)で置換されている1位;
P(pro)が他の任意のアミノ酸で置換されている2位;
Q(gln)がN(asn)、M(met)、T(thr)、S(ser)またはR(arg)のいずれか1つで置換されている3位;
P(pro)がA(ala)で置換されている5位;
P(pro)がA(ala)、D(asp)、C(cys)、E(glu)、Z(glx)、G(gly)、H(his)、K(lys)、M(met)、F(phe)、P(pro)、S(ser)、T(thr)、W(trp)またはY(tyr)のいずれか1つで置換されている7位;または
E(glu)が他の任意のアミノ酸で置換されている9位
のうちのいずれか1つの位置に置換を含む、前記NPQGPGPEE(配列番号4)の変異体;または
(iii)KVNPQGPGPE(配列番号5)またはKVNPQGPGP(配列番号6)の変異体であって、
K(lys)がW(trp)、R(arg)、L(lys)、Y(tyr)またはF(phe)のいずれか1つで置換されている1位;
N(asn)がH(his)、P(pro)またはD(asp)のいずれか1つで置換されている3位;
P(pro)がR(arg)、K(lys)、W(trp)、S(ser)、H(his)またはN(asn)のいずれか1つで置換されている4位;
G(gly)がD(asp)、E(glu)、N(asn)、Q(gln)、K(lys)、R(arg)またはA(ala)のいずれか1つで置換されている8位;または
P(pro)がM(met)、A(ala)、I(ile)、K(lys)、R(arg)、Q(gln)、S(ser)、T(thr)またはY(tyr)のいずれか1つで置換されている9位
のうちのいずれか1つの位置にのみ置換を含む、前記KVNPQGPGPE(配列番号5)またはKVNPQGPGP(配列番号6)の変異体
からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体をコードする、核酸。
【請求項9】
対象の前立腺癌を検出する方法であって、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体を使用して、前記対象から採取された生体試料中のグリピカン1(GPC-1)のエピトープを検出することと、前記試料中に検出された前記エピトープの量に基づいて、前記対象に前立腺癌があるか、前立腺癌が発症する可能性が高いことを判定することとを含み、
前記対象から採取された生体試料中のエピトープの量が対照試料中のエピトープの量よりも多いことが検出された場合、それは対象に前立腺癌があること、または対象に前立腺癌が発症する可能性が高いことを示す、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には免疫学および医学の分野に関する。より具体的には、本発明はグリピカン-1(GPC-1)のエピトープおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は、人種を問わず男性で最も頻発する癌であり、白人、黒人、アメリカインディアン/アラスカ先住民およびヒスパニック系の男性では、死亡率が肺癌に次いで第2位を占めている。米国では、2011年に前立腺癌と診断された男性は209,292人であり、そのうち27,970人が前立腺癌で死亡している(U.S.Cancer Statistics Working Group,「United States Cancer Statistics:1999-2011 Incidence and Mortality Web-based Report」,Atlanta(GA):米国保健社会福祉省、米国疾病対策予防センターおよび米国国立癌研究所;2014)。
【0003】
前立腺癌の診断が早期であれば、多くの患者で外科手術および/または放射線療法による治療が奏効する。しかし、多くの進行癌の患者のほか前立腺癌患者全体の相当な割合の患者は、局所治療を実施しても、いずれは転移癌に進展する。
【0004】
このため、前立腺癌を特にその初期段階で診断する簡便で信頼性も精度も高い検査方法が必要とされている。
【0005】
グリピカン-1(GPC-1)は、細胞表面ヘパラン硫酸プロテオグリカンの1つであり、グリコシルホスファチジルイノシトールを介して細胞膜に結合したコアタンパク質を有する。GPC-1は大きなグリピカンファミリーのメンバーである。GPC-1は一部の形態の癌(例えば、膵癌、乳癌)で過剰発現することが報告されているが、発現にはほかの癌と有意な差はみられない。本発明者らは最近、GPC-1が前立腺癌細胞によって過剰に発現され、前立腺癌を診断する手段として用いることが可能であることを明らかにした(Walshら,「Cell Surface Prostate Cancer Antigen for Diagnosis」と題する米国特許仮出願第61/928/776号(未公開);Walshら,国際出願PCT/AU2014/000999号,「Monoclonal 抗GPC-1 Antibodies and uses thereof」(未公開))。
【0006】
本発明者らが明らかにしたGPC-1レベルと前立腺癌との間の関係を考えれば、診断アッセイおよび/または予後検査を受けている患者のGPC-1レベルを検出し定量化するのに有利なGPC-1内のエピトープを同定することが必要とされる。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、GPC-1タンパク質内の一連のエピトープが、特に限定されないが抗体を含めた結合実体によって標的化するのに好ましいことを明らかにした。
【0008】
したがって、本発明は、少なくとも以下に挙げる実施形態に関する:
【0009】
実施形態1:
アミノ酸配列KVNPQGPGPEEK(配列番号1)によって定められるGPC-1可動性ループの一部分の中に位置する、抗グリピカン1(GPC-1)抗体のエピトープ。
【0010】
実施形態2:
(i)VNPQGPGPEEK(配列番号2);あるいは
(ii)VNPQGPGPEEK(配列番号2)の変異体であって、
2位、3位、7位、8位、9位、10位および/もしくは11位のうちのいずれか1つもしくは複数の位置;または
1位、2位、3位、4位、6位、8位、10位および/もしくは11位のうちのいずれか1つもしくは複数の位置;または
1位、2位、3位、4位、5位、8位、10位および/もしくは11位のうちのいずれか1つもしくは複数の位置
にのみ置換アミノ酸残基を含む変異体
から選択されるアミノ酸配列を含む第一のセグメントを含む、実施形態1に記載のエピトープ。
【0011】
実施形態3:
(i)KVNPQGPGP(配列番号6);または
(ii)KVNPQGPGP(配列番号6)の1位、3位、4位、8位および9位のうちのいずれか1つもしくは複数の位置にのみ置換アミノ酸残基を含む、配列番号6の変異体
から選択されるアミノ酸配列を含む第一のセグメントを含む、実施形態1に記載のエピトープ。
【0012】
実施形態4:
配列番号6の8位および9位のうちのいずれか1つまたは複数の位置にのみ置換アミノ酸残基を含む、実施形態3に記載の変異体。
【0013】
実施形態5:
(i)KVNPQGPGPE(配列番号5);または
(ii)KVNPQGPGPE(配列番号5)の1位、3位、4位、8位、9位および10位のうちのいずれか1つもしくは複数の位置にのみ置換アミノ酸残基を含む、配列番号5の変異体
から選択されるアミノ酸配列を含む第一のセグメントを含む、実施形態1に記載のエピトープ。
【0014】
実施形態6:
配列番号6の8位、9位および10位のうちのいずれか1つまたは複数の位置にのみ置換アミノ酸残基を含む、実施形態5に記載の変異体。
【0015】
実施形態7:
10位のE(glu)が他の任意のアミノ酸で置換されている、実施形態5または実施形態6に記載の変異体。
【0016】
実施形態8:
K(lys)がW(trp)、R(arg)、L(lys)、Y(tyr)またはF(phe)のいずれか1つで置換されている1位;
N(asn)がH(his)、P(pro)またはD(asp)のいずれか1つで置換されている3位;
P(pro)がR(arg)、K(lys)、W(trp)、S(ser)、H(his)またはN(asn)のいずれか1つで置換されている4位;
G(gly)がD(asp)、E(glu)、N(asn)、Q(gln)、K(lys)、R(arg)またはA(ala)のいずれか1つで置換されている8位;
P(pro)がM(met)、A(ala)、I(ile)、K(lys)、R(arg)、Q(gln)、S(ser)、T(thr)またはY(tyr)のいずれか1つで置換されている9位
のうちのいずれか1つまたは複数の位置にのみ置換を含む、実施形態3~7のいずれか1つに記載の変異体。
【0017】
実施形態9:
アミノ酸配列TQNARA(配列番号8)を含む第二のセグメントを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載のエピトープ。
【0018】
実施形態10:
アミノ酸配列TQNARAFRD(配列番号7)を含む第二のセグメントを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載のエピトープ。
【0019】
実施形態11:
(i)NPQGPGPEE(配列番号4);または
(ii)NPQGPGPEE(配列番号4)の1位、2位、3位、5位、7位および9位のうちのいずれか1つもしくは複数の位置にのみ置換アミノ酸残基を含む、配列番号4の変異体
から選択されるアミノ酸配列を含む第一のセグメントを含む、実施形態1または実施形態2に記載のエピトープ。
【0020】
実施形態12:
配列番号4の2位、7位および9位のうちのいずれか1つまたは複数の位置にのみ置換アミノ酸残基を含む、実施形態11に記載の変異体。
【0021】
実施形態13:
N(asn)がH(his)で置換されている1位;
P(pro)が他の任意のアミノ酸で置換されている2位;
Q(gln)がN(asn)、M(met)、T(thr)、S(ser)またはR(arg)のいずれか1つで置換されている3位;
P(pro)がA(ala)で置換されている5位;
P(pro)がA(ala)、D(asp)、C(cys)、E(glu)、Z(glx)、G(gly)、H(his)、K(lys)、M(met)、F(phe)、P(pro)、S(ser)、T(thr)、W(trp)またはY(tyr)のいずれか1つで置換されている7位;
E(glu)が他の任意のアミノ酸で置換されている9位
のうちのいずれか1つまたは複数の位置に置換を含む、実施形態11または実施形態12に記載の変異体。
【0022】
実施形態14:
アミノ酸配列ALSTASDDR(配列番号9)を含む第二のセグメントを含む、実施形態11~13のいずれか1つに記載のエピトープ。
【0023】
実施形態15:
(i)VNPQGPGPEE(配列番号3);または
(ii)VNPQGPGPEE(配列番号3)の1位、2位、3位、4位、5位、8位および10のうちのいずれか1つもしくは複数の位置にのみ置換アミノ酸残基を含む、配列番号3の変異体
から選択されるアミノ酸配列を含む第一のセグメントを含む、実施形態1または実施形
態2に記載のエピトープ。
【0024】
実施形態16:
配列番号3の1位、2位、3位および8位のうちのいずれか1つまたは複数の位置にのみ置換アミノ酸残基を含む、実施形態15に記載の変異体。
【0025】
実施形態17:
V(val)が他の任意のアミノ酸で置換されている1位;
N(asn)が他の任意のアミノ酸で置換されている2位;
P(pro)が他の任意のアミノ酸で置換されている3位;
Q(gln)がY(tyr)、A(ala)、E(glu)、V(val)、M(met)、F(phe)、L(leu)、I(ile)、T(thr)またはR(arg)のいずれか1つで置換されている4位;
G(gly)がA(ala)、S(ser)、T(thr)、H(his)、W(trp)、Y(tyr)、F(phe)またはM(met)のいずれか1つで置換されている5位;
P(pro)が他の任意のアミノ酸で置換されている8位;
E(glu)がQ(gln)、D(asp)、F(phe)、H(his)またはM(met)で置換されている10位
のうちのいずれか1つまたは複数の位置に置換を含む、実施形態15または実施形態16に記載の変異体。
【0026】
実施形態18:
アミノ酸配列PRERPP(配列番号10)または
アミノ酸配列QDASDDGSGS(配列番号11)
を含む第二のセグメントを含む、実施形態15~17のいずれか1つに記載のエピトープ。
【0027】
実施形態19:
アミノ酸配列PRERPP(配列番号10)を含む第二のセグメントと、アミノ酸配列QDASDDGSGS(配列番号11)を含む第三のセグメントとを含む、実施形態15~17のいずれか1つに記載のエピトープ。
【0028】
実施形態20:
アミノ酸配列CGELYTQNARAFRDLCGNPKVNPQGPGPEEKRRRGC(配列番号12)を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載のエピトープ。
【0029】
実施形態21:
直鎖状エピトープである、実施形態1~20のいずれか1つに記載のエピトープ。
【0030】
実施形態22:
エピトープの第二のセグメントと第三のセグメントが不連続である、実施形態19に記載のエピトープ。
【0031】
実施形態23:
エピトープの第一のセグメントと第二のセグメントが不連続である、実施形態9、10、14、18または22のいずれか1つに記載のエピトープ。
【0032】
実施形態24:
TQNARA(配列番号8)、ALSTASDDR(配列番号9)、PRERPP(配
列番号10)、QDASDDGSGS(配列番号11)、LGPECSRAVMK(配列番号13)およびTQNARAFRD(配列番号7)のいずれか1つまたは複数から選択されるアミノ酸配列を含む、抗グリピカン1(GPC-1)抗体のエピトープ。
【0033】
実施形態25:
単離ポリペプチドまたは合成ポリペプチドである、実施形態1~24のいずれか1つに記載のエピトープ。
【0034】
実施形態26:
2つ以上の異なるエピトープの組合せを含み、
前記異なるエピトープがそれぞれ、実施形態1~25のいずれか1つに記載のエピトープであるか;
前記エピトープがそれぞれ、表1に記載のエピトープであるか;
前記エピトープの組合せが、表3に記載されるいずれか1つまたは複数の組合せである、
エピトープの取合せ。
【0035】
実施形態27:
2つ以上の異なるエピトープの組合せを含み、
実施形態1~10のいずれか1つに記載の第一のエピトープと、
実施形態11~14のいずれか1つに記載の第二のエピトープと
を含む、
エピトープの取合せ。
【0036】
実施形態28:
2つ以上の異なるエピトープの組合せを含み、
実施形態1~10のいずれか1つに記載の第一のエピトープと、
実施形態15~19のいずれか1つに記載の第二のエピトープと
を含む、
エピトープの取合せ。
【0037】
実施形態29:
実施形態1~25のいずれか1つに記載のエピトープまたは実施形態26~28のいずれか1つに記載のエピトープの取合せと、薬学的に許容される担体または補形剤とを含む、組成物。
【0038】
実施形態30:
1つまたは複数の可溶性支持体または不溶性支持体に結合した実施形態1~25のいずれか1つに記載のエピトープまたは実施形態26~28のいずれか1つに記載のエピトープの取合せを含む、集成体。
【0039】
実施形態31:
酵素結合免疫測定法(ELISA)の構成要素である、実施形態30に記載の集成体。
【0040】
実施形態32:
実施形態1~25のいずれか1つに記載のエピトープをコードする核酸。
【0041】
実施形態33:
実施形態32に記載の核酸を含むベクター。
【0042】
実施形態34:
実施形態33に記載のベクターを含む宿主細胞。
【0043】
実施形態35:
実施形態1~25のいずれか1つに記載のエピトープと特異的に結合することが可能な単離された結合実体であって、抗体ではない結合実体。
【0044】
実施形態36:
実施形態1~25のいずれか1つに記載のエピトープと特異的に結合することが可能な単離された結合実体であって、抗体であり、ただし、抗体がMIL38抗体(CBA20140026)、ウサギ抗GPC-1ポリクローナル抗体(ab137604、abcam社)、マウス抗グリピカンモノクローナル抗体2600クローン4D1(Millipore社)またはヤギ抗グリピカン1抗体(AA24-530)ではない、結合実体。
【0045】
実施形態37:
対象の前立腺癌を検出する方法であって、対象から生体試料を採取することと、試料中に実施形態1~25のいずれか1つに記載のエピトープの存在を検出することと、試料中に検出されたエピトープの量に基づいて、対象に前立腺癌があるか、前立腺癌が発症する可能性が高いことを判定することとを含む、方法。
生体試料は体液試料であり得る。
生体試料は組織試料であり得る。
【0046】
実施形態38:
試料中にエピトープの存在を検出することが、試料と、実施形態1~25のいずれか1つに記載のエピトープと特異的に結合することが可能な結合実体とを接触させることを含む、実施形態37に記載の方法。
【0047】
実施形態39:
結合実体が抗体の集団である、実施形態38に記載の方法。
【0048】
実施形態40:
抗体の集団が、MIL38抗体(CBA20140026)、ウサギ抗GPC-1ポリクローナル抗体(ab137604、abcam社)、マウス抗グリピカンモノクローナル抗体2600クローン4D1(Millipore社)またはヤギ抗グリピカン1抗体(AA24-530)のいずれか1つまたは複数のものを含む、実施形態39に記載の方法。
【0049】
実施形態41:
抗体の集団が、MIL38抗体(CBA20140026)、ウサギ抗GPC-1ポリクローナル抗体(ab137604、abcam社)、マウス抗グリピカンモノクローナル抗体2600クローン4D1(Millipore社)またはヤギ抗グリピカン1抗体(AA24-530)のいずれも含まない、実施形態39に記載の方法。
【0050】
実施形態42:
生体試料中に存在するエピトープの量と対照試料中に存在するエピトープの量とを比較することを含み、体液試料中のエピトープの量が対照試料の同じ測定値よりも多いことが検出された場合、それは対象に前立腺癌があること、または対象に前立腺癌が発症する可能性が高いことを示す、実施形態37~41のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
実施形態43:
試料中に検出されたエピトープの量が、対照試料中に検出されたエピトープの量よりも50%超多い、実施形態42に記載の方法。
【0052】
実施形態44:
エピトープの存在を検出することが、試料と、Cellbank Australiaにアクセッション番号CBA20140026で寄託されているMIL38抗体の集団とを接触させることを含む、実施形態37~43のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
実施形態45:
エピトープの存在を検出することが、試料と、配列番号20の48位~58位によって定められるアミノ酸配列を含むかこれよりなる相補性決定領域1(CDR1);配列番号20の74位~80位によって定められるアミノ酸配列を含むかこれよりなる相補性決定領域2(CDR2);および/または配列番号20の113位~121によって定められるアミノ酸配列を含むかこれよりなる相補性決定領域3(CDR3)を含む軽鎖可変領域を含む抗体を含まない抗体の集団とを接触させることを含む、実施形態37~43のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
実施形態46:
生体試料中の前立腺特異抗原(PSA)のレベルを求めることと、検出されたレベルと対照試料のものとを比較することとをさらに含む、実施形態37~45のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
実施形態47:
生体試料が体液試料である、実施形態37~46のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
実施形態48:
生体試料が組織試料である、実施形態37~46のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
実施形態49:
実施形態1~25のいずれか1つに記載のエピトープを含む、融合タンパク質。
【0058】
実施形態50:
GPC-1の検出方法の陽性対照要素としての実施形態1~25のいずれか1つに記載のエピトープ、実施形態26~28のいずれか1つに記載のエピトープの取合せまたは実施形態48に記載の融合タンパク質の使用。
【0059】
実施形態51:
方法が、実施形態37~48のいずれか1つに記載の前立腺癌の検出方法である、実施形態50に記載の使用。
【0060】
検出方法または検出アッセイに使用する陽性対照要素は、直接的または間接的に陽性/肯定的シグナルを発生し、それにより、その方法またはアッセイが正しく機能し得ることが少なくとも部分的にまたは全面的に確認され得る。
【0061】
これより、単なる例として添付の図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】Protein Data Bank識別番号(PBD ID)4AD7(http://www.ebi.ac.uk/pdbsum/4AD7)として存在する鎖Bのレンダリング画像である。
図2】MIL38-AM4抗体スクリーニングの未処理データの箱ひげ図のグラフである。箱の下端および上端は、データの第一四分位数および第三四分位数である。箱の中央付近のバンドは第二四分位数(中央値)である。ひげは四分位範囲の1.5倍の位置にあり、データセット内の統計的外れ値を示す(Mcgillら,The American Statistician,32:12-16,1978)。
図3】全5つのアレイ(実施例1のセット1~5)を1μg/ml(上のトレース)または10μg/ml(下のトレース)のMIL38-AM4とインキュベートして記録した強度に対するペプチド番号のプロットである。
図4】配列TQNARAFRDLYS(配列番号21)を濃色の球で表し、残基K347、V348、G362およびK363を淡色の球で表したProtein Data Bank識別番号(PBD ID)4AD7(http://www.ebi.ac.uk/pdbsum/4AD7)の鎖Bのレンダリング画像である。X線回折ではV348とG362とを接続するループは解像されない。
図5】ポリクローナルおよびモノクローナルの抗GPC-1抗体ならびにMIL38-AM3抗体のスクリーニングの未処理データの箱ひげ図のグラフである。箱の下端および上端は、データの第一四分位数および第三四分位数である。箱の中央付近のバンドは第二四分位数(中央値)である。ひげは四分位範囲の1.5倍の位置にあり、データセット内の統計的外れ値を示す(Mcgillら,The American Statistician,32:12-16,1978)。
図6】MIL38-AM4のマッピングに使用したアレイで3種類の市販の抗グリピカン1調製物を試験して記録した強度に対するペプチド番号のプロットを比較のために示したものである。
図7】Protein Data Bank識別番号(PBD ID)4AD7(http://www.ebi.ac.uk/pdbsum/4AD7)の鎖Bのレンダリング画像である。図7Aは、配列PRERPP(配列番号10)を淡色の球で表し、残基K347、V348、G362およびK363を濃色の球で表した鎖Bのレンダリング画像である。X線回折ではV348とG362とを接続するループは解像されない。これらのエピトープはウサギ抗GPC-1によって認識される。追加のエピトープQDASDDGSGS(配列番号11)は座標ファイルでは解像されない。図7Bは、配列LGPECSRAVMK(配列番号13)を陰影のある球で表した鎖Bのレンダリング画像である。このエピトープはマウス抗GPC-1によって認識される。
図8】抗体スクリーニングの未処理データの箱ひげ図のグラフである。箱の下端および上端は、データの第一四分位数および第三四分位数である。箱の中央付近のバンドは第二四分位数(中央値)である。ひげは四分位範囲の1.5倍の位置にあり、データセット内の統計的外れ値を示す(Mcgillら,The American Statistician,32:12-16,1978)。
図9】セット3の置換解析でプローブしたウサギポリクローナルAb137604をレタープロットで表した図である。中央の水平方向のバーは、ベース配列で記録した平均強度を表す。変異の位置に対応するカラムに個々の変異が示されており、記録した強度に対応する高さに記号がプロットされている。
図10】セット2(実施例3)の置換解析でプローブしたヤギポリクローナル抗GPC-1をレタープロットで表した図である。
図11】セット3(実施例3)の置換解析でプローブしたMIL38-AM4をレタープロットで表した図である。
図12】セット1のペプチド(実施例3)でMIL38-AM4をプローブして得たデータをヒートマップで表した図である。シグナル強度は黒色(ベースライン)から白色(平均)を経て灰色(最大)に至る;「X」=x軸であり;x軸のカラムX1~X33に示されるペプチド配列は以下の通りである:X-1ペプチドは配列番号1の残基344~353であり;X-2ペプチドは配列番号1の残基348~357であり;X-3ペプチドは配列番号1の残基352~361であり;X-4ペプチドは配列番号1の残基356~365であり;X-5ペプチドは配列番号1の残基344~354であり;X-6ペプチドは配列番号1の残基348~358であり;X-7ペプチドは配列番号1の残基352~362であり;X-8ペプチドは配列番号1の残基356~366であり;X-9ペプチドは配列番号1の残基344~355であり;X-10ペプチドは配列番号1の残基348~359であり;X-11ペプチドは配列番号1の残基352~363であり;X-12ペプチドは配列番号1の残基344~356であり;X-13ペプチドは配列番号1の残基348~360であり;X-14ペプチドは配列番号1の残基352~364であり;X-15ペプチドは配列番号1の残基344~357であり;X-16ペプチドは配列番号1の残基348~361であり;X-17ペプチドは配列番号1の残基352~365であり;X-18ペプチドは配列番号1の残基344~358であり;X-19ペプチドは配列番号1の残基348~362であり;X-20ペプチドは配列番号1の残基352~366であり;X-21ペプチドは配列番号1の残基344~359であり;X-22ペプチドは配列番号1の残基348~363であり;X-23ペプチドは配列番号1の残基344~360であり;X-24ペプチドは配列番号1の残基348~364であり;X-25ペプチドは配列番号1の残基344~361であり;X-26ペプチドは配列番号1の残基348~365であり;X-27ペプチドは配列番号1の残基344~362であり;X-28ペプチドは配列番号1の残基348~366であり;X-29ペプチドは配列番号1の残基344~363であり;X-30ペプチドは配列番号1の残基344~364であり;X-31ペプチドは配列番号1の残基344~365であり;X-32ペプチドは配列番号1の残基344~366であり;X-33ペプチドはスクランブル/ランダム配列である;「Y」=y軸であり;y軸のカラムY1~Y19に示されるペプチド配列は以下の通りである:Y-1ペプチドは配列番号1の残基131~140であり;Y-2ペプチドは配列番号1の残基135~144であり;Y-3ペプチドは配列番号1の残基139~148であり;Y-4ペプチドは配列番号1の残基131~141であり;Y-5ペプチドは配列番号1の残基135~145であり;Y-6ペプチドは配列番号1の残基139~149であり;Y-7ペプチドは配列番号1の残基131~142であり;Y-8ペプチドは配列番号1の残基135~146であり;Y-9ペプチドは配列番号1の残基131~143であり;Y-10ペプチドは配列番号1の残基135~147であり;Y-11ペプチドは配列番号1の残基131~144であり;Y-12ペプチドは配列番号1の残基135~148であり;Y-13ペプチドは配列番号1の残基131~145であり;Y-14ペプチドは配列番号1の残基135~149であり;Y-15ペプチドは配列番号1の残基131~146であり;Y-16ペプチドは配列番号1の残基131~147であり;Y-17ペプチドは配列番号1の残基131~148であり;Y-18ペプチドは配列番号1の残基131~149であり;Y-19ペプチドはスクランブル/ランダム配列である。
図13】セット1のペプチドで得られた全結果の散布図マトリックスである。
図14】MIL38抗体と抗GPC-1抗体には二次元ゲルウエスタンブロットでの反応性に重複が見られることを示す二次元電気泳動およびウエスタンブロット法の結果である。
図15】DU-145前立腺癌またはC3(MIL38陰性)の細胞膜タンパク質抽出物にMIL38抗体または抗GPC-1抗体を用いて実施した免疫沈降のウエスタンブロットを示す図である。
図16】MIL38抗体が前立腺癌患者の血漿(図16A)および前立腺癌の抽出物(図16B)にグリピカン-1を検出することができることを示す免疫沈降のウエスタンブロットを示す図である。図16Aの各レーンは、046IP NT-前立腺癌血漿のIP;046IP HepI-ヘパリナーゼで処理した前立腺癌血漿のIP;042IP NT-正常対照の血漿のIP;042IP HepI-ヘパリナーゼで処理した正常対照の血漿のIP;Magic Mark-分子量標準である市販のタンパク質マーカーである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
定義
本願で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別の意味を表す場合を除き、複数の指示対象を包含する。例えば、「an antibody(抗体)」は複数の抗体も包含する。
【0064】
本明細書で使用される「comprising(含む)」は「including(含む)」を意味する。単語「comprising」の変化形、例えば「comprise」および「comprises」などは、それに対応して様々な意味を有する。したがって、例えば、抗体Aを「含む(comprising)」試料は、抗体Aのみからなるものであっても、1つまたは複数の追加の成分(例えば、抗体B)を含むものであってもよい。
【0065】
本明細書で使用される「複数(multipleおよびplurality)」という用語は、2以上であることを意味する。ある特定の態様または実施形態では、複数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51またはそれ以上のほか、そこで導き出され得る任意の整数およびそこで導き出され得る任意の範囲を意味し得る。
【0066】
本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、1つまたは複数の結合実体、例えばタンパク質、リガンド、抗体、抗体フラグメントまたは抗体誘導体などと相互作用する(例えば、結合する)抗原の特定の部分(1つまたは複数)を指す。
【0067】
本明細書で使用される「抗体(1つまたは複数)」という用語は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)、IgA(IgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgMおよびIgY、一本鎖全抗体を含めた全抗体ならびにその抗原結合フラグメントを包含する。抗原結合抗体フラグメントとしては、特に限定されないが、Fv、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合したFv(sdFv)およびVLドメインまたはVHドメインのいずれかを含むフラグメントが挙げられる。抗体は、任意の動物起源またはしかるべき産生宿主に由来するものであり得る。一本鎖抗体を含めた抗原結合抗体フラグメントは、可変領域(1つまたは複数)を単独で、またはヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインのうちの全部もしくは一部のものとともに含み得る。このほか、可変領域(1つまたは複数)とヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインとの任意の組合せが含まれる。抗体は、生体分子と特異的に結合するモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、ヒト化抗体およびヒトモノクローナル抗体およびヒトポリクローナル抗体であり得る。抗体は、二特異性抗体、avibody、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ、ナノボディ、単一ドメイン抗体、VHHドメイン、ヒト抗体、完全ヒト化抗体、部分ヒト化抗体、アンチカリン、アドネクチンまたはaffibodyであり得る。
【0068】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一の抗原性エピトープを認識する抗体であって、同じ抗原性エピトープと特異的に結合し、少量存在し得る天然の変異(1つまたは複数)を除いて同一である実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。
【0069】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体および非ヒト抗体(例え
ば、マウス抗体)に由来する配列を含む諸形態の抗体を指す。例えば、ヒト化抗体は、すべてまたは実質的にすべての超可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、すべてまたは実質的にすべてのFR領域がヒト免疫グロブリン配列に由来するものである少なくとも1つ、通常2つの可変ドメインを実質的にすべて含み得る。任意選択で、ヒト化抗体はほかにも、通常はヒト免疫グロブリンのものであり得る免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分を含み得る。
【0070】
本明細書で使用される「キメラ抗体」という用語は、所望の生物活性を示す抗体であって、軽鎖および/または重鎖の一部分が、所与の種または特定の種に由来する抗体の対応する配列と同一または相同であり、残りの鎖(1つまたは複数)が、別の種に由来する抗体の対応する配列と同一または相同である抗体を指す。例えば、キメラ抗体は、第一の種に由来する可変領域を含み、第二の種に由来する定常領域を含み得る。キメラ抗体は、例えば、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから遺伝子工学によって構築することができる。
【0071】
本明細書で使用される「ハイブリドーマ」という用語は、不死細胞(例えば、多発性骨髄腫細胞)と抗体産生細胞(例えば、Bリンパ球)との融合によって作製され、単一の結合特異性を有するモノクローナル抗体を産生することが可能な細胞を指す。
【0072】
本明細書で抗体、抗体変異体、抗体誘導体、抗原結合フラグメントなどに関して使用される「特異的に結合する」という用語は、それが他の非標的分子よりも優先的に所与の標的分子と結合することが可能であることを指す。例えば、抗体、抗体変異体、抗体誘導体または抗原結合フラグメント(「分子A」)が所与の標的分子(「分子B」)と特異的に結合することが可能である場合、分子Aは、分子Bと他のいくつかの潜在的な別の結合パートナーとを区別する能力を有する。したがって、分子Aを潜在的な結合パートナーとして接触する可能性が等しい様々な分子に曝露すると、分子Aは分子Bと選択的に結合し、他の別の潜在的結合パートナーは実質的に分子Aと未結合のままとなる。一般に、分子Aは他の潜在的結合パートナーの少なくとも10倍、好ましくは50倍、より好ましくは100倍、最も好ましくは100倍超の頻度で分子Bと優先的に結合する。分子Aは、分子B以外の分子とも微弱であるが検出可能なレベルで結合することが可能であり得る。これはバックグランド結合として一般に知られているものであり、例えば、しかるべき対照を用いることによって、分子Bに特異的な結合と容易に区別することができる。
【0073】
本明細書で使用される「対象」という用語は、ウシ,ウマ,ヒツジ,霊長類,鳥類およびげっ歯類を含めた経済、社会または研究に重要な任意の動物を包含する。したがって、「対象」は哺乳動物、例えばヒトまたは非ヒト哺乳動物などであり得る。
【0074】
本明細書で生体分子(例えば、抗体)に関して使用される「単離」という用語は、天然状態で付随する成分の少なくとも一部を含まない生体分子のことである。
【0075】
本明細書で使用される「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語はそれぞれ、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸からなるポリマーを指し、互換的に使用される。本発明の目的には、「ポリペプチド」は完全長タンパク質を構成するものであっても、完全長タンパク質の一部分を構成するものであってもよく、「ペプチド」と「ポリペプチド」の意味に意図的な差はない。
【0076】
本明細書で使用される「保存的」アミノ酸置換は、あるアミノ酸配列の所与のアミノ酸残基を大きさおよび/または化学的特性がこれとほぼ同じ別の異なるアミノ酸残基に置き換えることを指す。保存的アミノ酸置換の非限定的な例としては、A(Ala)からS(Ser)への置換;R(arg)からK(lys)への置換;N(asn)からQ(gl
n)またはH(his)への置換;D(asp)からE(glu)への置換;Q(gln)からN(asn)への置換;C(cys)からS(ser)への置換;E(glu)からD(asp)への置換;G(gly)からP(pro)への置換が挙げられる。
【0077】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド塩基、リボヌクレオチド塩基、既知の類似体もしくは天然のヌクレオチドまたはその混合物の一本鎖ポリマーまたは二本鎖ポリマーを指す。
【0078】
本明細書で使用される「結合実体」という用語は、本明細書に記載されるGPC-1エピトープまたはその模倣体と特異的に結合することが可能な任意の分子を包含する。結合実体の非限定的な例としては、例えば抗体などのポリペプチドが挙げられる。
【0079】
本明細書で使用される「キット」という用語は、材料を送達するための任意の送達システムを指す。このような送達システムとしては、反応試薬(例えば、しかるべき容器に入った標識、参照試料、補助物質など)および/または補助材料(例えば、緩衝液、アッセイを実施する際の取扱説明書など)を保管したり、ある場所から別の場所に輸送または送達したりすることを可能にするシステムが挙げられる。例えば、キットは、関連する反応試薬および/または補助材料の入った箱などの収容器を1つまたは複数含み得る。
【0080】
本明細書で検出方法または検出アッセイと関連して使用される「陽性対照要素」という用語は、その方法またはアッセイに用いると、直接的または間接的に陽性/肯定的シグナルを発生し、それにより、その方法またはアッセイが正しく機能し得ることが少なくとも部分的にまたは全面的に確認され得る要素を指す。
【0081】
本明細書である範囲の数値に関して「~の間」という用語を使用する場合、その範囲の両端の数値が含まれることが理解されよう。例えば、長さ10残基~20残基の間のポリペプチドには、長さ10残基のポリペプチドおよび長さ20残基のポリペプチドが含まれる。
【0082】
本明細書に先行技術に関する資料またはその資料から導かれるかそれに基づく記述が記載されていても、その資料またはそこから導かれる記述が関連技術分野の一般的な知識の一部であることを認めるものではない。本明細書で参照する資料はいずれも、特に明記されない限り、説明を目的としてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
(詳細な説明)
本発明者らは、抗体などの結合実体を用いてGPC-1レベルを検出および定量化するのに有利なグリピカン-1(GPC-1)内の特異的エピトープを同定した。これらのエピトープおよびその組合せは多く目的に有用であるが、前立腺癌の診断アッセイでGPC-1レベルを定量化するための標的となり得る。
【0084】
したがって、本発明は、GPC-1エピトープおよびその構成要素;前記エピトープおよび/またはエピトープ構成要素の組合せ;エピトープ、構成要素および/または組合せを特異的に標的とすることが可能な結合実体;エピトープ、構成要素および/または組合せを含む組成物、キットをはじめとする実体;エピトープ、構成要素および/または組合せを特異的に標的とすることが可能な結合実体を作製する方法;ならびにエピトープ、構成要素および/または組合せの検出を必要とする前立腺癌の診断方法に関する。
【0085】
グリピカン-1(GPC-1)
本発明は、特異的結合実体(例えば、抗体)の標的となるグリピカン-1ヘパラン硫酸プロテオグリカン(GPC-1)内の一連のエピトープから生じる。
【0086】
エピトープは、哺乳動物、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、霊長類またはげっ歯類などのGPC-1タンパク質中に存在するものであり得る。したがって、エピトープは、哺乳動物、例えばヒトまたは非ヒト哺乳動物などのGPC-1タンパク質(例えば、イヌのGPC-1タンパク質)中に存在するものであり得る。
【0087】
上記のものに加えて、またはこれに代えて、エピトープは、非哺乳動物のGPC-1タンパク質、例えば鳥類のGPC-1タンパク質などの中に存在するものであり得る。
【0088】
エピトープは、ヒトGPC-1タンパク質(例えば、NCBI参照配列アクセッション番号NP_002072.2、GenBankアクセッション番号AAH51279.1、GenBankアクセッション番号AAA98132.1、GenBankアクセッション番号EAW71184.1、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号P35052.2および/または配列番号14のいずれか1つに記載の配列によって定められるもの)中に存在するものであり得る。
【0089】
エピトープはほかにも、GPC-1変異体(例えば、GPC-1のアイソフォーム、スプライスバリアントまたはアロタイプ)中に存在するものであり得ることが理解されよう。エピトープは、細胞表面結合型および/または分泌型のGPC-1中に存在するものであり得る。
【0090】
エピトープ
-グリピカン-1エピトープ
本発明は、GPC-1エピトープおよびその構成要素を提供するほか、前記エピトープおよび/またはエピトープ構成要素の組合せも含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明によるGPC-1エピトープは、下の表1に記載するエピトープのうちのいずれか1つまたは複数のものを含むかこれよりなるものであり得る。
【0092】
【表1】

【0093】
ある特定の実施形態では、本発明のエピトープは複数のセグメントを含むかこれよりなるものである。これらのエピトープは、直鎖状であっても不連続であってもよい。複数のセグメントを含むエピトープの非限定的な例を下の表2に記載する。
【0094】
【表2】


【表2-1】

【表2-2】

【0095】
他の実施形態では、本発明は、複数の別個のエピトープを含むかこれよりなる異なるエピトープの組合せを提供する。これらの別個のエピトープは、直鎖状であっても不連続であってもよい。複数の異なるエピトープを含むエピトープの組合せの非限定的な例を下の表3に記載する。
【0096】
【表3】


【表3-1】


【表3-2】

【0097】
本発明によるエピトープの組合せは、ガンマ-セミノプロテインまたはカリクレイン-3(KLK3)としても知られる前立腺特異抗原(PSA)を含み得る。したがって、本発明によるエピトープの組合せは、表1または表2に記載されるエピトープのうちのいずれか1つをPSAと組み合わせて含むか、表3に記載されるエピトープの組合せのうちのいずれか1つをさらにPSAと組み合わせて含み得る。
【0098】
-変異体
本発明は、本明細書に記載されるGPC-1エピトープの変異体を提供する。
【0099】
変異体は、当業者に公知の保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換(1つまたは複数)を含み得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明のエピトープの変異体は、特定の領域にわたって、または明記されない場合は配列全体にわたって、特定のパーセントのアミノ酸残基が同じで
ある(「配列同一性」のパーセント)。したがって、本明細書に開示されるGPC-1エピトープの「変異体」は、本明細書に記載されるGPC-1エピトープの配列と少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、83%、85%、88%、90%、93%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し得る。
【0101】
変異体は、その変異体の起源であるGPC-1エピトープ配列と比較して同じ生物活性、実質的に同じ生物活性または変化した生物活性を保持し得る。
【0102】
変異体は、異なる科、属または種に由来し、その変異体の起源であるGPC-1エピトープ配列と同じまたは実質的に同じ生物学的機能または生物活性を有する相同なGPC-1エピトープ(例えば、ほかの種の哺乳動物に由来するもの)であり得る。
【0103】
配列同一性の差は、アミノ酸置換(例えば、保存的置換および/または非保存的置換)、挿入および/または欠失によって生じ得る。保存的アミノ酸置換は、当業者に周知のように、ポリペプチド鎖内のあるアミノ酸を特性がほぼ同じ別のアミノ酸に置換する、または置き換えることを指す。例えば、電荷を持つアミノ酸であるグルタミン酸(Glu)を同じく電荷を持つアミノ酸であるアスパラギン酸(Asp)で置換することは、保存的アミノ酸置換であるといえる。
【0104】
2配列間の配列同一性のパーセントは、当業者に公知の方法を用いて容易に求め得る。例えば、最適に整列させた2つの配列を比較ウィンドウにわたって比較することによって2配列間の配列同一性のパーセントを求め得る。配列の比較ウィンドウ内の部分は、例えば、2つの配列を最適に整列させるため欠失も付加も含まない参照配列(例えば、本明細書に記載されるGPC-1エピトープ配列)と比較したとき、欠失または付加(すなわち、ギャップ)を含み得る。次いで、両配列で核酸塩基またはアミノ酸残基が一致する位置の数を求めてマッチする位置を算出し、そのマッチする位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除し、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセントを求めることによって、配列同一性のパーセントを算出し得る。
【0105】
配列同一性のレベルは、配列解析ソフトウェア(例えば、53705、ウィスコンシン州、マディソン、ユニバーシティアベニュー1710、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター、遺伝学コンピュータグループのSequence Analysis Software Package)を用いて測定し得る。このソフトウェアは、様々な置換、欠失をはじめとする改変に相同性の程度を割り当てることによって、類似した配列をマッチさせるものである。2配列間の配列同一性の程度を測定するのに適したコンピュータソフトウェアの例としてはほかにも、特に限定されないが、PC/Geneプログラム(カリフォルニア州、マウンテンビューのIntelligenetics社から入手可能)のCLUSTAL;ALIGNプログラム(バージョン2.0)のほか、GCG Wisconsin Genetics Software Package、バージョン10(米国、カリフォルニア州、サンディエゴ、スクラントンロード9685のAccelrys社から入手可能)のGAP、BESTFIT、BLAST、FASTAおよびTFASTAが挙げられる。
【0106】
上の表1~3に記載したものを含めた上記の実施形態に関連して、言及される変異体の適切で非限定的な例を下の表4に記載する。
【0107】
【表4】


【表4-1】


【表4-2】


【表4-3】


【表4-4】

【0108】
したがって、KNPQGPGPEEK(配列番号1)の変異体は、2位にV(val)、5位にQ(gln)、6位にG(gly)および7位にP(pro)を含み得る。この変異体は、1位にK(lys)、3位にN(asn)および/または4位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、8位にG(gly)、9位にP(pro)および/または10位にE(glu)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号1の1位、3位、4位、8位、9位、10位、11位および/または12位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0109】
あるいは、KVNPQEK(配列番号1)の変異体は、6位にG(gly)、8位にG(gly)および10位にE(glu)を含み得る。この変異体は、3位にN(asn)、5位にQ(gln)および/または7位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個または9個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号1の1位、2位、3位、4位、5位、7位、9位、11位および/または12位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0110】
あるいは、KVNPQGPGEK(配列番号1)の変異体は、7位にP(pro)、8位にG(gly)および10位にE(glu)を含み得る。この変異体は、5位にQ(gln)、6位にG(gly)および/または11位にE(glu)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個または9個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号1の1位、2位、3位、4位、5位、6位、9位、11位および/または12位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0111】
NPQGPGPEEK(配列番号2)の変異体は、1位にV(val)、4位にQ(gln)、5位にG(gly)および6位にP(pro)を含み得る。この変異体は、2位にN(asn)および/または3位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加
えて、またはこれに代えて、この変異体は、7位にG(gly)、8位にP(pro)および/または9位にE(glu)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号2の2位、3位、7位、8位、9位、10位および/または11位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0112】
あるいは、VNPQEK(配列番号2)の変異体は、5位にG(gly)、7位にG(gly)および9位にE(glu)を含み得る。この変異体は、2位にN(asn)、4位にQ(gln)および/または6位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号2の1位、2位、3位、4位、6位、8位、10位および/または11位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0113】
あるいは、VNPQGPGEK(配列番号2)の変異体は、6位にP(pro)、7位にG(gly)および9位にE(glu)を含み得る。この変異体は、4位にQ(gln)、5位にG(gly)および/または10位にE(glu)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号2の1位、2位、3位、4位、5位、8位、10位および/または11位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0114】
NPQGPGPEE(配列番号3)の変異体は、1位にV(val)、4位にQ(gln)、5位にG(gly)および6位にP(pro)を含み得る。この変異体は、2位にN(asn)および/または3位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、7位にG(gly)、8位にP(pro)および/または9位にE(glu)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個または6個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号3の2位、3位、7位、8位、9位および/または10位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0115】
あるいは、VNPQE(配列番号3)の変異体は、5位にG(gly)、7位にG(gly)および9位にE(glu)を含み得る。この変異体は、2位にN(asn)、4位にQ(gln)および/または6位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号3の1位、2位、3位、4位、6位、8位および/または10位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0116】
あるいは、VNPQGPGE(配列番号3)の変異体は、6位にP(pro)、7位にG(gly)および9位にE(glu)を含み得る。この変異体は、4位にQ(gln)、5位にG(gly)および/または10位にE(glu)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号3の1位、2位、3位、4位、5位、8位および/または10位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0117】
NPQGPGPEE(配列番号4)の変異体は、3位にQ(gln)、4位にG(gly)および5位にP(pro)を含み得る。変異体は、1位にN(asn)および/また
は2位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、6位にG(gly)、7位にP(pro)および/または8位にE(glu)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個または6個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号4の1位、2位、6位、7位、8位および/または9位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0118】
あるいは、NPQE(配列番号4)の変異体は、4位にG(gly)、6位にG(gly)および8位にE(glu)を含み得る。この変異体は、1位にN(asn)、3位にQ(gln)および/または5位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個または6個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号4の1位、2位、3位、5位、7位および/または9位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0119】
あるいは、NPQGPGE(配列番号4)の変異体は、5位にP(pro)、6位にG(gly)および8位にE(glu)を含み得る。この変異体は、3位にQ(gln)、4位にG(gly)および/または9位にE(glu)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個または6個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号4の1位、2位、3位、4位、7位および/または9位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0120】
NPQGPGPE(配列番号5)の変異体は、2位にV(val)、5位にQ(gln)、6位にG(gly)および7位にP(pro)を含み得る。この変異体は、1位にK(lys)、3位にN(asn)および/または4位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、8位にG(gly)、9位にP(pro)および/または10位にE(glu)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個または6個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号5の1位、3位、4位、8位、9位および/または10位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0121】
あるいは、KVNPQ(配列番号5)の変異体は、6位にG(gly)、8位にG(gly)および10位にE(glu)を含み得る。この変異体は、3位にN(asn)、5位にQ(gln)および/または7位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号5の1位、2位、3位、4位、5位、7位および/または9位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0122】
あるいは、KVNPQGPG(配列番号5)の変異体は、7位にP(pro)、8位にG(gly)および10位にE(glu)を含み得る。この変異体は、5位にQ(gln)および/または6位にG(gly)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号5の1位、2位、3位、4位、5位、6位および/または9位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0123】
NPQGPGP(配列番号6)の変異体は、2位にV(val)、5位にQ(gl
n)、6位にG(gly)および7位にP(pro)を含み得る。この変異体は、1位にK(lys)、3位にN(asn)および/または4位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、8位にG(gly)および/または9位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個または5個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号6の1位、3位、4位、8位および/または9位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0124】
KVNPQP(配列番号6)の変異体は、6位にG(gly)および8位にG(gly)を含み得る。この変異体は、3位にN(asn)、5位にQ(gln)および/または7位にP(pro)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号6の1位、2位、3位、4位、5位、7位および/または9位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。
【0125】
KVNPQGPGP(配列番号6)の変異体は、7位にP(pro)および8位にG(gly)を含み得る。この変異体は、5位にQ(gln)および/または6位にG(gly)をさらに含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、この変異体は、置換残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個含み得る。置換アミノ酸残基(1つまたは複数)は、配列番号6の1位、2位、3位、4位、5位、6位および/または9位のうちのいずれか1つまたは複数の位置に存在し得る。配列番号7~13で表される本発明のエピトープのうちのいずれか1つの変異体は、そのエピトープ配列の1つまたは複数の任意の位置にアミノ酸置換を含み得る。アミノ酸置換は、当業者に公知の保存的アミノ酸置換であっても非保存的アミノ酸置換であってもよい。変異体は、保存的置換(1つまたは複数)のみ、非保存的置換(1つまたは複数)のみまたは保存的置換(1つまたは複数)と非保存的置換(1つまたは複数)の組み合わせを含み得る。
【0126】
-フラグメント
本発明は、本明細書に記載されるGPC-1エピトープおよび変異体のフラグメントを提供する。
【0127】
いくつかの実施形態では、本発明のエピトープのフラグメントは、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個のアミノ酸を含むかこれよりなるものであり得る。したがって、本発明によるエピトープのフラグメントは、例えば、長さ5~10アミノ酸、5~15アミノ酸、5~20アミノ酸、10~20アミノ酸、10~15アミノ酸、7~15アミノ酸、7~13アミノ酸、8~12アミノ酸、8~10アミノ酸、11~19アミノ酸、12~18アミノ酸または13~17アミノ酸を含むか、これよりなるものであり得る。本明細書に開示される完全長GPC-1エピトープのフラグメントは一般に、完全長GPC-1エピトープと同等であるか、場合によってはこれより改善された免疫学的特性を有し得る。
【0128】
上の表1~4に記載されるものを含めた上記の実施形態に関連して、言及されるフラグメントの適切で非限定的な例を表5に記載する。
【0129】
【表5】


【表5-1】

【0130】
-融合ポリペプチド
本発明の特定の実施形態は、融合ポリペプチド形態のGPC-1エピトープを提供する。例えば、表1から選択される2つ以上の完全長エピトープ、表2から選択される2つ以上のエピトープセグメント、表3から選択される2つ以上の完全長エピトープの組合せまたは表1の完全長エピトープと表2から選択されるいずれか1つもしくは複数のエピトープとの組合せを連結して融合ポリペプチドを形成し得る。
【0131】
融合ポリペプチドは、例えば化学的コンジュゲーションを含めた当業者に公知の標準的な技術を用いて調製することができる。このほか、融合ポリペプチドを発現系で組換えポリペプチドとして発現させてもよい。例えば、融合ポリペプチドのポリペプチド構成要素をコードするDNA配列を別個に組み立て、しかるべき発現ベクター内にライゲートし得る。あるポリペプチド構成要素をコードするDNA配列の3’末端を、配列のリーディングフレームがインフレームになるように、ペプチドリンカーを用いてまたは用いずに、第二のポリペプチド構成要素をコードするDNA配列の5’末端にライゲートすることができる。これにより、両ポリペプチド構成要素の生物活性を保持する単一の融合ポリペプチドへの翻訳が可能になる。
【0132】
リンカー配列を用いて、融合タンパク質の第一のポリペプチド構成要素と第二のポリペ
プチド構成要素を、各ポリペプチド構成要素が確実にしかるべき二次構造および/または三次構造にフォールドされるのに十分な距離を空けて分離させ得る。適切なリンカーの非限定的な例としては、当業者に公知のペプチド/ポリペプチド、アルキル鎖をはじめとする便利なスペーサー分子が挙げられる。柔軟な伸長立体配座をとることが可能であること、融合ポリペプチドのポリペプチド構成要素(1つまたは複数)内の機能的エピトープ(1つまたは複数)と相互作用し得る二次構造をとることが不可能であること、ならびに/あるいは融合ポリペプチドのポリペプチド構成要素(1つまたは複数)内の機能的エピトープ(1つまたは複数)と反応し得る疎水性残基および/または荷電残基がないことを含めた諸因子に応じて、適切なペプチドリンカー配列を選択し得る。
【0133】
単なる非限定的な例を挙げれば、ペプチドリンカー配列は、Gly残基、Asn残基および/またはSer残基を含み得る。上記のものに加えて、またはこれに代えてほかにも、ThrおよびAlaなどの他の中性付近のアミノ酸をペプチドリンカー配列に用いてもよい。リンカーとして有用に使用し得るアミノ酸配列のさらなる例としては、米国特許第4,935,233号;米国特許第4,751,180号;Murphyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258-8262,1986;およびMarateaら,Gene 40:39-46,1985に開示されているものが挙げられる。リンカー配列は一般に、長さが1~約50アミノ酸のものであり得る。したがって、リンカー配列は、長さが5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、30アミノ酸、40アミノ酸、10~50アミノ酸、10~40アミノ酸、10~30アミノ酸、20~30アミノ酸、1~5アミノ酸または5~10アミノ酸であり得る。本発明による融合ポリペプチドは、融合ポリペプチドの第一のポリペプチド構成要素と第二のポリペプチド構成要素が、機能ドメインを分離し立体障害を防ぐのに使用し得る必須ではないN末端アミノ酸領域を有する場合、リンカー配列を必要としないこともある。
【0134】
-ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
本発明はほかにも、本発明のGPC-1エピトープ(1つまたは複数)、GPC-1エピトープのセグメントならびにGPC-1エピトープおよび/またはそのセグメントを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0135】
このポリヌクレオチドをベクターにクローン化し得る。ベクターは、例えば、GPC-1エピトープ、GPC-1エピトープセグメント(1つまたは複数)および/または融合タンパク質をコードするDNA、RNAまたは相補的DNA(cDNA)配列を含み得る。ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクターまたは外来配列の挿入、外来配列の細胞内への導入および導入配列の発現に適合した他の任意の適切な媒体であり得る。通常、ベクターは発現ベクターであり、発現制御配列およびプロセシング配列、例えばプロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナルおよび転写終止配列を含み得る。
【0136】
本発明はこのほか、上記のベクターによって形質転換させた宿主細胞を企図する。例えば、本発明のポリヌクレオチドをベクターにクローン化し、それを細菌宿主細胞、例えば大腸菌(E.coli)内に形質転換し得る。
【0137】
ベクターの構築および宿主細胞内へのベクターの形質転換の方法は一般に、当該技術分野で公知であり、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New YorkおよびAusubel F.M.ら(編),Current Protocols in Molecular Biology(2007),John Wiley and Sons,Inc.に記載されている。
【0138】
-作製
本発明のGPC-1エピトープ、GPC-1エピトープのセグメントならびにGPC-1エピトープおよび/またはそのセグメントを含む融合タンパク質は、当業者に周知の標準的な方法論に従って製造することができる。
【0139】
エピトープ、セグメントおよび融合タンパク質は、様々なよく知られた合成技術および/または組換え技術のいずれかを用いも調製し得る。ポリペプチドは、例えば、当業者に周知の方法論を用いる合成手段によって作製し得る。1つの非限定的な例では、アミノ酸を順次付加してアミノ酸鎖を伸長させる市販の固相技術(例えば、Merrifieldの固相合成法)を用い得る(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149-2146,1963)。本明細書に開示されるエピトープ、セグメントおよび融合タンパク質を自動的に合成する装置が市販されており(例えば、Perkin Elmer社/Applied BioSystems部門(フォスターシティ、カリフォルニア州)、製造業者の取扱説明書に従って使用し得る。
【0140】
上記のものに加えて、またはこれに代えて、当業者が利用可能な他の任意の方法によってエピトープ、セグメントおよび融合タンパク質を作製してもよい。例えば組換え手段を用いてもよく、このような手段では、選択したエピトープ(1つまたは複数)、セグメント(1つまたは複数)および/または融合タンパク質(1つまたは複数)をコードする核酸を、当該技術分野で公知の様々な方法のいずれかを用いて発現ベクターに挿入し得る(例えば、Sambrookら,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;SambrookおよびRussell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版(Jan.15,2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,ISBN:0879695765;Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,NY(1989))。選択したエピトープ(1つまたは複数)、セグメント(1つまたは複数)および/または融合タンパク質(1つまたは複数)をコードする核酸を含む適切な発現ベクターの構築では、当業者に公知の標準的なライゲーション技術を用いる。
【0141】
ライゲートした核酸配列は、エピトープ(1つまたは複数)、セグメント(1つまたは複数)および/または 融合タンパク質(1つまたは複数)の発現を促進する適切な転写調節エレメントまたは翻訳調節エレメントと作動可能に連結することができる。タンパク質の発現に関与する調節エレメントは、ポリペプチドのコード領域の5’側に位置し得る。翻訳を終了させる停止コドンおよび転写終止シグナルは、エピトープ(1つまたは複数)、セグメント(1つまたは複数)および/または融合タンパク質(1つまたは複数)をコードする核酸配列の3’側に存在し得る。目的とするポリペプチド(1つまたは複数)を作動可能に連結された調節エレメントとともにコードする核酸を構築した後、得られた発現カセットを宿主細胞内に導入し、コードされているポリペプチド(1つまたは複数)を発現させることができる。
【0142】
本発明では、GPC-1エピトープ、GPC-1エピトープのセグメントならびにGPC-1エピトープおよび/またはそのセグメントを含む融合タンパク質は「単離」されたものであり得る。「単離」ポリペプチドとは、その元の環境から取り出されたポリペプチドのことである。例えば、本明細書で言及される天然のタンパク質またはポリペプチドは、それが天然の系で共存する物質の一部または全部から分離されていれば、単離されたも
のであると見なす。本明細書で言及される単離ポリペプチドは、精製されたものであってもよい。例えば、単離ポリペプチドは、純度が少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%であり得る。
【0143】
本発明によるポリヌクレオチドおよび核酸は一般に、当該技術分野で公知のものであり、例えば、Ausubel F.M.ら(編),Current Protocols in Molecular Biology(2007),John Wiley and Sons,Inc;Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York;およびManiatisら,Molecular Cloning(1982),280-281記載されている。ポリヌクレオチドは、例えば化学合成技術、例えばホスホジエステル法およびホスホトリエステル方法(例えば、Narang S.A.ら(1979)Meth.Enzymol.68:90;Brown,E.L.(1979)ら,Meth.Enzymol.68:109;および米国特許第4356270号を参照されたい)、ジエチルホスホロアミダイト法(Beaucage S.Lら(1981)Tetrahedron Letters,22:1859-1862を参照されたい)によって調製し得る。修飾した固相支持体上でオリゴヌクレオチドを合成する方法が米国特許第4458066号に記載されている。
【0144】
-支持体
本発明によるエピトープおよび融合ポリペプチドを支持体に付着させてもよい。支持体は、例えば、エピトープを保持し、反応混合物の大部分においてそれを自由に移動させない不溶性材料または基質であり得る。エピトープおよび融合ポリペプチドを固定化または局在化させるのに適した支持体は当業者に周知である。支持体は、マイクロアッセイに使用するのに好都合なビーズ、個別のウェルを有するプラスチック製およびガラス製のプレートをはじめとする反応条件に適合性のある材料を含めた様々な形態の多種多様な基質、ポリマーなどから選択することができる。特定の好ましい実施形態では、支持体は、プラスチック製材料、プラスチック製のビーズもしくはウエハなど、または特定のアッセイ(例えば、ELISA)を実施するプラスチック製のウェルもしくはチューブであり得る。
【0145】
結合実体
本発明は、本明細書に記載されるGPC-1エピトープと特異的に結合することが可能な結合実体を提供する。
【0146】
結合実体は、本明細書に記載されるGPC-1エピトープと特異的に結合することが可能な任意の分子であり得る。結合実体の非限定的な例としては、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、分子インプリント、レクチンおよび捕捉化合物が挙げられる。結合実体は、本発明のGPC-1エピトープまたはGPC-1の別の異なる領域と結合することができるほか、エピトープと別の異なる結合実体、例えば本明細書に開示される抗体などとの間の結合相互作用を修飾することもできる薬剤であり得る。
【0147】
本発明のGPC-1エピトープと特異的に結合することが可能な抗体などの結合実体は、所与の標的エピトープ、エピトープセグメントの組合せまたはエピトープの組合せと他の非標的分子よりも優先的に結合することができる。例えば、結合実体(「分子A」)が、所与の標的GPC-1エピトープ(「分子B」)と特異的に結合することが可能である場合、分子Aは、分子Bと他のいくつかの潜在的な別の結合パートナーとを区別する能力を有する。したがって、分子Aを潜在的な結合パートナーとして接触する可能性が等しい様々な分子に曝露すると、分子Aは分子Bと選択的に結合し、他の別の潜在的結合パートナーは実質的に分子Aと未結合のままとなる。一般に、分子Aは他の潜在的結合パートナ
ーの少なくとも10倍、好ましくは50倍、より好ましくは100倍、最も好ましくは100倍超の頻度で分子Bと優先的に結合する。分子Aは、分子B以外の分子とも微弱であるが検出可能なレベルで結合することが可能であり得る。これはバックグランド結合として一般に知られているものであり、例えば、しかるべき対照を用いることによって、分子Bに特異的な結合と容易に区別することができる。
【0148】
本明細書に提供される特異的GPC-1エピトープがわかれば、当業者は発明のための努力をせずに結合実体を作製することができる。例えば、公知の技術を用いて、本発明のGPC-1エピトープ(1つまたは複数)と特異的に結合するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製物を調製することができる。
【0149】
標的GPC-1エピトープに対するモノクローナル抗体の調製には、培養連続細胞株に抗体分子を産生させる任意の技術を用い得る。一般的な方法論については、HarlowおよびLane(編),(1988),「Antibodies-A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.に記載されている。具体的な方法論としては、最初にKohler(1975)が開発したハイブリドーマ技術(「Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity」,Nature,256:495-497)のほか、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら,(1983),「The Production of Monoclonal Antibodies From Human Lymphocytes」,Immunology Today,4:72-79)およびヒトモノクローナル抗体を作製するEBVハイブリドーマ技術(Coleら,(1985),「Monoclonal Antibodies and
Cancer Therapy」,pp.77-96,Alan R.Liss,Inc.)が挙げられる。融合以外の技術、例えば発癌性DNAによるBリンパ球の直接形質転換またはエプスタイン・バーウイルスによるトランスフェクションによって、不死性の抗体産生細胞系を作製することができる(例えば、M.Schreierら,(1980),「Hybridoma Techniques」,Cold Spring Harbor Laboratory;Hammerlingら,(1981),「Monoclonal Antibodies and T-cell Hybridomas」,Elsevier/North-Holland Biochemical Press,Amsterdam;Kennettら(1980),「Monoclonal Antibodies」,Plenum Pressを参照されたい)。
【0150】
簡潔に述べれば、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製する手段では、骨髄腫をはじめとする自己永続化細胞系と、その認識因子結合部分、認識因子またはその複製開始点特異的DNA結合部分で過免疫化した哺乳動物の脾臓から採取したリンパ球とを融合することができる。本発明のGPC-1エピトープと特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、提示されたエピトープ(1つまたは複数)に対して免疫反応を示す能力によって特定される。
【0151】
本発明の実施に有用なモノクローナル抗体は、しかるべき抗原特異性の抗体分子を分泌するハイブリドーマを含有する栄養培地を含む、モノクローナルハイブリドーマの培養を開始することによって作製することができる。この培養物をハイブリドーマが培地中に抗体分子を分泌するのに十分な条件下で、そのような分泌に十分な期間にわたって維持する。次いで、抗体含有培地を収集する。次いで、よく知られた技術によって抗体分子をさらに単離することができる。
【0152】
同じように、ポリクローナル抗体の作製に用い得る当該技術分野で公知の様々な方法が
存在する。所与のGPC-1エピトープの組合せに対するポリクローナル抗体の作製には、エピトープの注射によって、特に限定されないが、ウサギ、ニワトリ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどを含めた様々な宿主動物を感作させることができる。さらに、標的分子と免疫原性担体(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH))とをコンジュゲートすることができる。このほか、特に限定されないが、フロイント(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどの無機質ゲル、リゾレシチン(rysolecithin)などの界面活性剤、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールならびにBCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などのヒトに有用であると考えられるアジュバントを含めた様々なアジュバントを用いて免疫応答を増大させ得る。
【0153】
所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野で公知の様々な技術によって実施することができる。抗体の免疫特異的結合を調べるのに適したアッセイとしては、特に限定されないが、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫測定法)、サンドイッチイムノアッセイ、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、免疫電気泳動アッセイなどが挙げられる(例えば、Ausubelら,(1994),「Current Protocols in
Molecular Biology」,第1巻,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkを参照されたい)。抗体結合は、一次抗体上の検出可能な標識によって検出し得る。あるいは、適宜標識した二次抗体または試薬との結合によって抗体を検出してもよい。イムノアッセイで結合を検出する様々な方法が当該技術分野で公知であり、本発明の範囲内に含まれる。
【0154】
目的とする特異的GPC-1エピトープ(1つまたは複数)に対する抗体(またはそのフラグメント)は、そのエピトープ(1つまたは複数)に対して結合親和性を示す。好ましくは、抗体(またはそのフラグメント)の結合親和性または結合活性は約10-1超、より好ましくは約10-1超、さらにより好ましくは約10-1超、最も好ましくは約10-1超である。
【0155】
適切な量の本発明による抗体を得るという観点から言えば、無血清培地によるバッチ発酵を用いて抗体(1つまたは複数)を製造し得る。発酵後、クロマトグラフィーおよびウイルス不活性化/除去の段階を組み込んだ多段階からなる方法により抗体を精製し得る。例えば、最初にプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより抗体を分離し、次いで、溶媒/界面活性剤で処理して、脂質エンベロープ型ウイルスを不活性化し得る。さらなる精製、通常は陰イオンおよび陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、残ったタンパク質、溶媒/界面活性剤および核酸を除去し得る。精製した抗体をゲルろ過カラムを用いてさらに精製し、0.9%生理食塩水で製剤化する。次いで、製剤化したバルク調製物を滅菌およびウイルスろ過し、小分けし得る。
【0156】
本発明の1つまたは複数のGPC-1エピトープと結合することが可能な抗体の非限定的な例としては、
(i)2014年8月22日、ブダペスト条約の条項に従ってCellbank Australia(ホークスベリーロード214、ウェストミード、NSW2145、オーストラリア)にアクセッション番号CBA20140026で寄託されたMIL38抗体;
(ii)抗グリピカン1/GPC1抗体(ab137604):ヒトGPC-1に特異的なウサギポリクローナル抗体(IgG)であり、abcam(登録商標)社から市販さ
れている(http://www.abcam.com/glypican-1-gpc1-antibody-ab137604.htmlを参照されたい);
(iii)MAB2600|抗グリピカン-1抗体、クローン4D1:ヒトおよびラットのGPC-1に特異的なマウスモノクローナル抗体(IgG)であり、Millipore社から市販されている(http://www.emdmillipore.com/AU/en/product/,MM_NF-MAB2600?cid=BI-XX-BRC-A-BIOC-抗B033-1308を参照されたい);
(iv)ヤギ抗グリピカン1抗体(AA24-530):ヒトGPC-1に特異的なヤギポリクローナル抗体であり、LifeSpan BioSciences社から市販されている(https://www.lsbio.com/antibodies/抗gpc1-antibody-glypican-antibody-aa24-530-icc-wb-western-flow-ls-c330760/341104を参照されたい)。
【0157】
組成物およびキット
本発明による組成物およびキットは以下のものを含み得る:
-本明細書(例えば、表1)に記載される1つまたは複数のGPC-1エピトープ、その変異体またはフラグメント;
-本明細書(例えば、表2)に記載される1つまたは複数のGPC-1エピトープセグメント、その変異体またはフラグメント;
-本明細書(例えば、表3)に記載される1つまたは複数のGPC-1エピトープの組合せ;
-本明細書に記載されるGPC-1エピトープ(1つまたは複数)、GPC-1エピトープのセグメント(1つまたは複数)および/またはその変異体もしくはフラグメントを含む1つまたは複数の融合タンパク質(上記の「融合ポリペプチド」と題するサブセクションを参照されたい);ならびに/あるいは
-本明細書に記載される1つまたは複数の結合実体(上記の「結合実体」と題するサブセクションを参照されたい)。
【0158】
組成物は、許容される担体、補助剤および/または希釈剤をさらに含み得る。担体、希釈剤および補助剤は、組成物の他の成分と適合性がある観点から「許容される」ものであり得、かつ/または一般に、その任意の被投与者に無害である点で「薬学的に許容される」ものであり得る。適切な担体、希釈剤および補助剤は当業者に周知である(例えば、Gilmanら(編),Goodman and Gilman’s:the pharmacological basis of therapeutics,第8版,Pergamon Press(1990);Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.:Easton,Pa.,第17版(1985)を参照されたい)。いくつかの実施形態では、組成物を診断目的または研究目的で使用し得る。
【0159】
キットは、小分けにしたキットでもひとまとめにしたキットでもよい。「小分けにしたキット」は、2つ以上の別個の容器を含み、各容器にキットの構成要素全体のサブ部分が収納された送達システムを指す。2つ以上の別個の容器を含み、各容器にキットの構成要素全体のサブ部分が収納された送達システムはいずれも、小分けにしたキットという用語の意味の範囲内に含まれる。「ひとまとめにしたキット」は、キットの全構成要素が単一の容器(例えば、所望の各構成要素が収められている単一の箱)に収納されている送達システムを指す。いくつかの実施形態では、キットを診断目的または研究目的で使用し得る。
【0160】
診断方法
本発明のGPC-1エピトープ、GPC-1エピトープのセグメントならびにGPC-1エピトープおよび/またはそのセグメントを含む融合タンパク質は、診断方法に用いることができる。具体的には、本発明者らは、グリピカン-1が新規な前立腺癌のマーカーとなることを発見した(Walshらの「Cell Surface Prostate
Cancer Antigen for Diagnosis」と題する米国特許仮出願第61/928/776号(未公開))。
【0161】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるGPC-1エピトープ(1つまたは複数)、GPC-1エピトープセグメントならびに/あるいはエピトープ/エピトープセグメントの変異体およびフラグメントの検出に基づいて、対象の前立腺癌を診断する、予後を予測する、あるいは対象に前立腺癌が発症する可能性を予測する方法を提供する。上記のものに加えて、またはこれに代えて、GPC-1エピトープの変異体およびフラグメントならびに/あるいはGPC-1エピトープフラグメントを診断方法で検出し得る。
【0162】
上記の方法は一般に、被験対象由来の生体試料中のGPC-1エピトープ(1つまたは複数)および/またはGPC-1エピトープセグメントのレベルを求めることを含む。この方法を実施する際に、上記のものに加えて、またはこれに代えて、GPC-1エピトープの変異体(1つまたは複数)およびフラグメントならびに/あるいはそのセグメントのレベルを求めてもよい。GPC-1エピトープ、GPC-1エピトープセグメントならびに変異体およびフラグメントの非限定的な例としては、「エピトープ」と題するセクションで言及されるもの(特に、表1~3ならびにそれに関連する変異体およびフラグメントの説明を参照されたい)が挙げられる。
【0163】
この方法は、生体試料中のガンマ-セミノプロテインまたはカリクレイン-3(KLK3)としても知られる前立腺特異抗原(PSA)のレベルを求めることのほか、任意選択で、検出されたPSAのレベルを対照のものと比較することをさらに含み得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、対象の生体試料中に検出されたGPC-1エピトープ(1つまたは複数)、GPC-1エピトープセグメントならびに/あるいはエピトープ/エピトープセグメントの変異体およびフラグメントのレベルと、対照試料中に存在することが明らかになったレベルとを比較し得る。対照試料中のレベルは、対象の生体試料中に存在するレベルを求める前、求めるとき、または求めた後に求め得る。非限定的な例を挙げれば、ある個体由来の同等の生体試料中に存在するレベルまたは個体集団由来の生体試料中に存在する平均レベルに基づいて、対照試料中に存在するレベルを求め得る。個体(1つまたは複数)は、癌ではないことが既にわかっている個体および/または前立腺癌ではないことが既にわかっている個体であり得る。一般に、対象の生体試料中のレベルが対照のものよりも高いことが検出されれば、その対象は前立腺癌を有するか、前立腺癌を発症する可能性が高いことを示すものと考えられる。例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%または少なくとも60%高いことが、対象が前立腺癌を有するか、前立腺癌を発症する可能性が高いことの指標となり得る。あるいは、対象の生体試料中のレベルが対照のものと同等かそれ以下のレベルであることが検出されれば、その対象は前立腺癌を有さないか、前立腺癌を発症する可能性が高くないことを示すものと考えられる。
【0165】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるGPC-1エピトープ(1つまたは複数)、GPC-1エピトープセグメントならびに/あるいはエピトープ/エピトープセグメントの変異体およびフラグメントを本発明の診断方法に陽性対照として使用する。例えば、これらを所与のアッセイに使用して、実施したそのアッセイでGPC-1エピトープ(1つまたは複数)、GPC-1エピトープセグメントならびに/あるいは変異体およびフラグメントを検出することが可能であることを確認する。
【0166】
いくつかの実施形態では、本発明の診断方法に本発明の融合タンパク質(1つまたは複数)を用いる。「融合タンパク質」と題するサブセクションには、適切な融合タンパク質の非限定的な例が記載されている。融合タンパク質(1つまたは複数)は、検出方法に陽性対照として使用し得る。
【0167】
生体試料は組織試料(例えば、前立腺組織の生検試料)または体液試料であり得る。
【0168】
体液試料は、血液、血清、血漿または尿試料であり得る。
【0169】
本発明で検出され得る前立腺癌の非限定的な例としては、前立腺上皮内新生物、腺癌、平滑筋肉腫および横紋筋肉腫が挙げられる。
【0170】
特定の検出方法に限定されるわけではないが、単なる非限定的な例を挙げれば、GPC-1エピトープ、GPC-1エピトープセグメントならびに変異体およびフラグメントの検出は、特に限定されないが、ウエスタンブロット解析、酵素結合免疫測定法(ELISA)、蛍光標示式細胞分取(FACS)、バイオフィルム試験またはaffinity ring test(例えば、米国特許出願公開第2013/016,736号を参照されたい)を含めた当業者に公知の標準的なアッセイによるものであり得る。これらのアッセイに本発明による結合実体を使用し得る。
【0171】
いくつかの実施形態では、結合実体は抗体である。他の実施形態では、待つ実体は抗体ではない。
【0172】
いくつかの実施形態では、抗体は以下のうちのいずれか1つまたは複数のものから選択される:
(i)2014年8月22日、ブダペスト条約の条項に従ってCellbank Australia(ホークスベリーロード214、ウェストミード、NSW 2145、オーストラリア)にアクセッション番号CBA20140026で寄託されたMIL38抗体;
(ii)抗グリピカン1/GPC1抗体(ab137604):ヒトGPC-1に特異的なウサギポリクローナル抗体(IgG)であり、abcam(登録商標)社から市販されている(http://www.abcam.com/glypican-1-gpc1-antibody-ab137604.htmlを参照されたい);
(iii)MAB2600抗グリピカン-1抗体、クローン4D1:ヒトおよびラットのGPC-1に特異的なマウスモノクローナル抗体(IgG)であり、Millipore社から市販されている(http://www.emdmillipore.com/AU/en/product/,MM_NF-MAB2600?cid=BI-XX-BRC-A-BIOC-抗B033-1308を参照されたい);
(iv)ヤギ抗グリピカン1抗体(AA24-530):ヒトGPC-1に特異的なヤギポリクローナル抗体であり、LifeSpan BioSciences社から市販されている(https://www.lsbio.com/antibodies/抗gpc1-antibody-glypican-antibody-aa24-530-icc-wb-western-flow-ls-c330760/341104を参照されたい)。
【0173】
いくつかの実施形態では、抗体は以下のうちのいずれか1つまたは複数のものからは選択されない:
(i)2014年8月22日、ブダペスト条約の条項に従ってCellbank Australia(ホークスベリーロード214、ウェストミード、NSW2145、オー
ストラリア)にアクセッション番号CBA20140026で寄託されたMIL38抗体;
(ii)抗グリピカン1/GPC1抗体(ab137604):ヒトGPC-1に特異的なウサギポリクローナル抗体(IgG)であり、abcam(登録商標)社から市販されている(http://www.abcam.com/glypican-1-gpc1-antibody-ab137604.htmlを参照されたい);
(iii)MAB2600抗グリピカン-1抗体、クローン4D1:ヒトおよびラットのGPC-1に特異的なマウスモノクローナル抗体(IgG)であり、Millipore社から市販されている(http://www.emdmillipore.com/AU/en/product/,MM_NF-MAB2600?cid=BI-XX-BRC-A-BIOC-抗B033-1308を参照されたい);
(iv)ヤギ抗グリピカン1抗体(AA24-530):ヒトGPC-1に特異的なヤギポリクローナル抗体であり、LifeSpan BioSciences社から市販されている(https://www.lsbio.com/antibodies/抗gpc1-antibody-glypican-antibody-aa24-530-icc-wb-western-flow-ls-c330760/341104を参照されたい)。
【0174】
いくつかの実施形態では、結合実体は、MIL38抗体(CBA20140026)を含み、TQNARA(配列番号8)、ALSTASDDR(配列番号9)、PRERPP(配列番号10)、QDASDDGSGS(配列番号11)、LGPECSRAVMK(配列番号13)およびTQNARAFRD(配列番号7)のうちのいずれか1つまたは複数のものから選択されるアミノ酸配列を含むエピトープと結合することが可能な抗グリピカン1(GPC-1)抗体を含まない抗体集団である。
【0175】
当業者には、広く記載される本発明の趣旨も範囲も逸脱することなく、具体的な実施形態の形で開示される本発明に多数の変形および/または修正を施し得ることが理解されよう。したがって、本発明の諸実施形態は、あらゆる点で例示的なものであって、限定的なものではないと見なされるべきである。
【実施例
【0176】
これより、具体的な実施例を参照しながら本発明を説明するが、これらは決して限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0177】
実施例1:マウス抗ヒトグリピカン1(MIL38-AM4)が結合するグリピカン-1エピトープの同定および特徴付け
1.1.材料および方法
様々な立体配座拘束を有する参照配列をカバーした実験的セットを作製し、ペプチドアレイで抗体をプローブした。
【0178】
-抗体
下の表6に記載する通りにマウス抗ヒトグリピカン1モノクローナル抗体MIL38-AM4を準備した。
【0179】
【表6】

【0180】
-ペプチド
構造化ペプチドのライブラリーを作製する土台として以下のヒトグリピカン-1(GPC-1)配列を用いた。
【表7】

【0181】
Protein Data Bank識別番号(PBD ID)4AD7(http://www.ebi.ac.uk/pdbsum/4AD7)として存在する鎖Bのレンダリング画像を図1Aに示す。
【0182】
-ペプチドを足場に化学結合させる(Chemically Linked Peptides on Scaffolds)(CLIPS)技術
用いたCLIPS技術の一般的原理を以下に説明する。
【0183】
CLIPS技術は、ペプチドの構造を定められた三次元構造に固定化するものである。これにより、最も複雑な結合部位の機能でさえ模倣することができる。CLIPS技術は現在、ペプチドライブラリーを単一、二重または三重のループ構造ならびにシート様およびヘリックス様のフォールドにするのに日常的に用いられている。
【0184】
CLIPS足場のブロモ基とシステインのチオール側鎖との間でCLIPS反応が起こる。この反応は、穏やかな条件下では速度が速く特異的なものである。この化学反応を用いて、天然のタンパク質配列を単一のT2ループ、T3二重ループ、T2ループとT3ループのコンジュゲート、安定化したベータシートおよび安定化したアルファヘリックスを
含めた様々な構造を有するCLIPS構築物に変換する(Timmermanら,J.Mol.Recognit.2007;20:283-29)。
【0185】
CLIPSライブラリースクリーニングは、コンビナトリアルな基質設計を用いて標的タンパク質を最大10,000の重複ペプチド構築物からなるライブラリーに変換することから始まる。固体担体上で直鎖状ペプチドの基質が合成され、次いで、これが空間的に定められるCLIPS構築物の形になる。不連続エピトープの両方の部分が正しい立体配座になっている構築物は高い親和性で抗体と結合して、検出および定量化される。エピトープが不完全な構築物はこれより低い親和性で抗体と結合するのに対し、エピトープが含まれていない構築物は全く結合しない。親和性に関する情報を反復スクリーニングに用いて、エピトープの配列および立体配座の詳細を明らかにする。
【0186】
不連続な立体構造エピトープが含まれている標的タンパク質を基質ライブラリーに変換する。特許製品のminicard上でコンビナトリアルペプチドを合成し、空間的に定義されたCLIPS構築物に化学的に変換する。抗体の結合を定量化する。
【0187】
-ペプチド合成
標的分子の不連続エピトープを再構築するため、構造化ペプチドのライブラリーを合成した。この合成はペプチドを足場に化学結合させる(Chemically Linked Peptides on Scaffolds)(CLIPS)技術を用いて実施した。CLIPS技術によって、単一のループ、二重ループ、三重ループ、シート様フォールド、ヘリックス様フォールドおよびその組合せの構造化ペプチドを作製することができた。CLIPS鋳型をシステイン残基と結合させた。ペプチド内の複数のシステインの側鎖を1つまたは2つのCLIPS鋳型と結合させた。例えば、T2のCLIPS鋳型1,3-ビス(ブロモメチル)ベンゼンの0.5mM溶液を炭酸水素アンモニウム(20mM、pH7.9)/アセトニトリル(1:1(v/v))に溶かした。この溶液をペプチドアレイ上に加えた。CLIPS鋳型は、ペプチドアレイ(4553μlウェルを備えたウェルプレート)の固相結合ペプチドに存在する2つのシステインの側鎖と結合した。ペプチドアレイを溶液で完全に覆って、溶液中で30~60分間、穏やかに振盪した。最後に、ペプチドアレイを過剰のHOで十分に洗浄し、PBS(pH7.2)中1パーセントのSDS/0.1パーセントのベータ-メルカプトエタノールを含有する破壊緩衝液中、70℃で30分間超音波処理した後、HO中でさらに45分間超音波処理した。システインが3つであること以外は同じ方法で、ペプチドを担持するT3のCLIPSを作製した。
【0188】
以下の設計に従って直鎖状ペプチドおよびCLIPSペプチドを化学合成した:
【表8】


【表8-1】

【0189】
-ELISAスクリーニング
抗体と各合成ペプチドとの結合をPEPSCANベースのELISAで試験した。ペプチドアレイを一次抗体溶液とインキュベートした(4℃で一晩)。洗浄後、ペプチドアレイを1/1000希釈の抗体ペルオキシダーゼコンジュゲート(SBA社、カタログ番号2010-05)と25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンゾチアゾリンスルホナート(ABTS)および2μl/mlの3パーセントHを加えた。1時間後、発色を測定した。電荷結合素子(CCD)カメラおよび画像処理システムで発色を定量化した。
【0190】
-データ処理
CCDカメラで得られた値は、標準的な96ウェルプレートELISAリーダーとほぼ同じ0~3000mAUの範囲であった。この結果を定量化し、Peplabデータベースに保管した。時折、気泡が含まれ偽陽性の値を示すウェルがみられた。カードを手作業で調べ、気泡による値はいずれもスコアを0とした。
【0191】
-合成の品質管理
合成ペプチドの品質を確認するため、陽性対照ペプチドと陰性対照ペプチドの組を別個に並行して合成した。これを抗体57.9でスクリーニングした(Posthumusら,J.Virology,1990,64:3304-3309を参照されたい)。
【0192】
-スクリーニングの詳細
表7に抗体結合条件をまとめる。Pepscan緩衝液および前準備(SQ)については、数値は競合タンパク質(ウマ血清とオボアルブミンの組合せ)の相対量を表す。
【0193】
【表9】

【0194】
1.2.結果
-主な実験結果およびシグナル/ノイズ比の決定
スクリーニングによって得られた未処理のELISAの結果のデータセット全体の概要を図2にグラフで示す。この図では、箱ひげ図が各データセットを示し、各データセット内での平均ELISAシグナル、分布および外れ値を表す。実験条件(抗体量、ブロッキング強度など)に応じて様々なELISAデータの分布が得られた。このデータからエピトープを同定することができた。
【0195】
アレイを通常のストリンジェンシー条件下、1μg/mlおよび10μg/mlの希釈のMIL38-AM4とインキュベートした。濃度依存性の反応が観察された(図3Aおよび3B)。10μg/mlでは飽和は観察されず、いずれのペプチドも完全なエピトープではないことがわかった。一次構造内で隣接していない2つの反応のクラスターを同定した。2つの共通の核は135TQNARAFRD143(配列番号7)および348VNPQGPGPEEK358(配列番号2)であり、後者の区間の方が前者のものよりも明らかに優勢であることがわかった。
【0196】
区間348VNPQGPGPEEK358(配列番号2)は、Protein Data Bank識別番号(PBD ID)4AD7(http://www.ebi.ac.uk/pdbsum/4AD7)から得られた三次元(3D)モデル(図4)でも公開されている別のpdb座標ファイル(4ACR、4BWE)でも解像されず、この区間が可動性のものであると考えられた。3Dモデルで解像されるV348およびG362の位置から明らかなように、区間135TQNARAFRD143(配列番号7)はこの欠けているループに隣接している。
【0197】
このアレイで観察されるMIL38-AM4とペプチドとの結合と同じように、抗体が求める条件を部分的に満たす不完全な模倣体と結合するのはよくみられることである。本発明者らは、可動性ループ348VNPQGPGPEEK358(配列番号2)が寄与する主要部分と、ヘリックス135TQNARAFRD143(配列番号7)(の残基)が寄与する副次的部分とからなる不連続エピトープなるものを仮定する。
【0198】
1.3.まとめおよび考察
この試験は、マウス抗ヒトグリピカン1(MIL38-AM4)のエピトープをマッピングすることを目的としたものである。様々な立体配座拘束を有する参照配列をカバーした実験的セットを作製し、ペプチドアレイで抗体をプローブした。有意な結合から、可動性ループ348VNPQGPGPEEK358(配列番号2)が寄与する主要部分と、ヘリックス135TQNARAFRD143(配列番号7)(の残基)が寄与する副次的部分とからなる不連続エピトープの存在がうかがえた。
【0199】
実施例2:その他の抗グリピカン-1抗体が結合した別のグリピカン-1エピトープの同定および特徴付け
2.1.材料および方法
下の表8に、この試験に使用した抗体に関する情報を記載する。記載する抗体のうち最初の3つは市販のものである。
【0200】
【表10】

【0201】
-ペプチド
配列番号14によって定められるヒトグリピカン-1(GPC-1)配列を土台に用いて構造化ペプチドのライブラリーを作製した。
【0202】
Protein Data Bank識別番号(PBD ID)4AD7(http://www.ebi.ac.uk/pdbsum/4AD7)として存在する鎖Bのレンダリング画像を図1Aに示す。
【0203】
-ペプチドを足場に化学結合させる(Chemically Linked Peptides on Scaffolds)(CLIPS)技術
この実験に用いたCLIPS技術の一般的原理については上の実施例1に記載されている。
【0204】
-ペプチド合成
実施例1で言及した方法を用いてペプチド合成を実施した。実施例1に示した設計(セット1~5)に従って化学合成直鎖状ペプチドおよびCLIPSペプチドを合成した。
【0205】
-ELISAスクリーニング
抗体と各合成ペプチドとの結合を、実施例1に記載した通りにPEPSCANベースのELISAで試験した。
【0206】
-データ処理および合成の品質管理
データ処理および合成の品質管理を実施例1の通りに実施した。
【0207】
-スクリーニングの詳細
表9に抗体結合条件をまとめる。Pepscan緩衝液および前準備(SQ)については、数値は競合タンパク質(ウマ血清とオボアルブミンの組合せ)の相対量を表す。このほか、結合のストリンジェンシーを低下させるのにP/Tw(PBS-Tween)を用いた。
【0208】
【表11】

【0209】
2.2結果
-主な実験結果およびシグナル/ノイズ比の決定
スクリーニングによって得られた未処理のELISAの結果のデータセット全体の概要を図5にグラフで示す。この図では、箱ひげ図が各データセットを示し、各データセット内での平均ELISAシグナル、分布および外れ値を表す。実験条件(抗体量、ブロッキング強度など)に応じて様々なELISAデータの分布が得られる。このデータから、モノクローナル血清およびポリクローナル血清のエピトープは同定することができたが、MIL38-AM3のものは同定することができなかった。
【0210】
-MIL38-AM3
高濃度(10μg/ml)かつ低ストリンジェンシー(PBS-Tween)で試験しても、MIL38-AM3を検出することはできなかった。同試料には異なる二次抗体(ヒツジ抗マウスIgG HRP;GE Healthcare社、NXA931)も試みたが、同じく結果は得られなかった。
【0211】
確認のため、MIL38-AM3をプレート上にコートする直接ELISAを試みた。ウサギ抗マウスIgG-HRP(Southern Biotech社)を用いても抗体を検出することはできなかった。
【0212】
-ウサギ抗グリピカン1/GPC1抗体ab137604
図6の対応するパネルからわかるように、ウサギ抗GPC1では主要なシグナルが3つ見られる。これらのシグナルは、区間348VNPQGPGPEEK358(配列番号2)、366PRERPP371(配列番号10)および478QDASDDGSGS487(配列番号11)に対応する。
【0213】
-マウスmAb2600(Millipore社)
マウス抗体2600は、共通の核242LGPECSRAVMK252(配列番号13)を有する全ペプチドの1つの明確なピークを認識する。このことは、図6の対応するパネルからわかる。
【0214】
-ヤギ抗GPC-1(GPC1)
図6の対応するパネルからわかるように、ヤギ抗GPC-1では主要なシグナルが2つ見られる。これらのシグナルは、区間348VNPQGPGPEEK358(配列番号2)および408ALSTASDDR414(配列番号9)に対応する。
【0215】
2.3まとめおよび考察
この試験は、同じアレイで市販の抗グリピカン1抗体3種類および追加のmAb(MIL38-AM3)の特性を明らかにすることを目的としたものである。実施例1に記載した通りに既存のペプチドアレイで抗体をプローブした。市販の抗GPC-1抗体はいずれも、上記のアレイを用いてマッピングすることができた。抗体MIL38-AM3は、エピトープの不連続な性状または試料の劣化により、いずれのアレイでもシグナルを生じなかったことから、マッピングが無効であることがわかった。
【0216】
ウサギ抗GPC-1は、グリピカン1の少なくとも3つの区間、すなわち348VNPQGPGPEEK358(配列番号2)、366PRERPP371(配列番号10)および478QDASDDGSGS487(配列番号11)を認識する。そのうち2つの区間は、図7Aに図示されるように、座標ファイル4AD7.pbdで解像される。これはポリクローナル抗体の調製物であるため、このエピトープが直鎖状であるのか、複雑なエピトープの一部であるのかを評価することはできない。
【0217】
マウス抗グリピカンmab2600は、アレイの全ペプチドセットの区間242LGPECSRAVMK252(配列番号13)を認識する。座標ファイル4AD7.pdbでのエピトープの位置を図7Bに示す。
【0218】
ヤギ抗グリピカン1は、グリピカン1の少なくとも2つの区間、すなわち348VNPQGPGPEEK358(配列番号2)および408ALSTASDDR414(配列番号9)を認識する。これはポリクローナル抗体の調製物であるため、このエピトープが直鎖状であるのか、複雑なエピトープの一部であるのかを評価することはできない。いずれの区間も、入手可能な座標ファイルでは解像されない。
【0219】
ウサギおよびヤギのポリクローナル調製物はともにグリピカン1の区間348VNPQGPGPEEK358(配列番号2)を認識し、この区間はMab MIL38-AM4の(不連続であると思われる)結合部位の一部を形成するものでもある。両ポリクローナル調製物はグリピカン1のほかのエピトープも認識するが、これらのエピトープが1つの
不連続エピトープを形成するのか、試料のポリクローナル性が現れたものであるのかを評価することはできない。いずれのpAbも、MIL38-AM4結合に寄与すると考えられる区間135TQNARA140は認識しない。
【0220】
マウスMab2600は、これまでに試験した他の抗GPC-1抗体のいずれも共通しないエピトープを認識する。
【0221】
実施例3:その他の抗グリピカン-1抗体が結合した別のグリピカン-1エピトープの同定および特徴付け
3.1.材料および方法
下の表10に、この試験に使用した抗体に関する情報を記載する。上の実施例1および/または実施例2に記載した前の実験にそれぞれ使用した3種類の抗グリピカン1抗体を用いた。
【0222】
【表12】

【0223】
-ペプチド
この試験で土台としたヒトグリピカン-1(GPC-1)配列は配列番号14で定められるものである。以下の残基の配列を用いた:
GPC1_残基番号344-366 GNPKVNPQGPGPEEKRRRGKLAP(配列番号15)
GPC1_残基番号131-149 GELYTQNARAFRDLYSELR(配列番号16)
【0224】
-ペプチド合成
実施例1で言及した方法を用いてペプチド合成を実施した。以下に示す設計に従って化学合成直鎖状ペプチドおよびCLIPSペプチドを合成した:
【0225】
【表13】

【0226】
-ELISAスクリーニング
抗体と各合成ペプチドとの結合を、実施例1に記載した通りにPEPSCANベースのELISAで試験した。
【0227】
-データ処理および合成の品質管理
データ処理および合成の品質管理を実施例1の通りに実施した。
【0228】
-ヒートマップ解析
用いたヒートマップ方法論に関する簡潔な概要を以下に記載する。
【0229】
ヒートマップとは、二次元マップ内で変数がとる数値を色で表したデータのグラフ表示の1つである。二次元ループCLIPSペプチドでは、第一のループおよび第二のループの独立した配列から、そのような二次元マップを導くことができる。例えば、所与の一連の16個のCLIPSペプチドの配列は、ループ1内の4つの固有のサブ配列とループ2内の4つの固有のサブ配列を効率的に並べ替えたものである。したがって、ELISAで
観察されたデータを4×4のマトリックスにプロットすることができ、この場合、X座標はそれぞれ第一のループの配列に対応し、Y座標はそれぞれ第二のループの配列に対応する。
【0230】
さらに可視化しやすくするため、ELISAの数値を連続的な陰影勾配に置き換えることができる。この場合、極めて低い数値は明るい色で表され、極めて高い値は濃い色で表され、平均値は黒色で表される。この勾配マップをデータマトリックスに適用すると、陰影の付いたヒートマップが得られる。
【0231】
-スクリーニングの詳細
表11に抗体結合条件をまとめる。Pepscan緩衝液および前準備(SQ)については、数値は競合タンパク質(ウマ血清とオボアルブミンの組合せ)の相対量を表す。
【0232】
【表14】

【0233】
3.2.結果
-主な実験結果およびシグナル/ノイズ比の決定
スクリーニングによって得られた未処理のELISAの結果のデータセット全体の概要を図8にグラフで示す。この図では、箱ひげ図が各データセットを示し、各データセット内での平均ELISAシグナル、分布および外れ値を表す。実験条件(抗体量、ブロッキング強度など)に応じて様々なELISAデータの分布が得られる。
【0234】
-ウサギポリクローナルAb137604
実施例2では、ウサギポリクローナルAb137604由来の一部のIgGと結合するのに区間348VNPQGPGPEEK358(配列番号2)があれば十分であることがわかった。この試験では、348VNPQGPGPEE357(配列番号3)が含まれる構築物のいずれも同じように、この試料由来の1/2500希釈のIgGと結合した。セット1のマトリックスでは、特定の構築物にシグナルの増強は見られない。
【0235】
図9の置換解析から、残基P353、G354およびE356が不可欠であることがわかる。Q351、G352およびE357の位置で可能な置換は限られている。
【0236】
-ヤギポリクローナル抗GPC-1
実施例2ではほかにも、ヤギポリクローナル抗GPC-1由来の一部のIgGと結合するのに区間348VNPQGPGPEEK358(配列番号2)があれば十分であった。この抗体は、ウサギポリクローナル抗体と同じループを認識するが、認識するときの微細な特異性がわずかに異なる。図10の文字プロットでは、最も重要な残基がG352、G
354およびE356であるとともに、N349、Q351およびP353の位置で可能な置換は限られていることがわかる。セット1のマトリックスではシグナルの増強が見られる。この抗体の主要なマッピングに残基140~149付近の区間は示されなかったが、この区間を含む別の構築物は、このポリクローンの一部のIgGを結合させるのに優れたベイトとなる。
【0237】
-抗体MIL38-AM4
実施例1および2では、MIL38-AM4がグリピカンの区間348VNPQGPGPEEK358(配列番号2)のほか区間135TQNARA140(配列番号8)とも結合することが確認され、このことは不連続エピトープの存在を示すものと考えられた。
【0238】
この主要な区間を含むループ状の構築物により、結合に最も重要な残基が正確に特定される。図10から、残基V348、Q351、G352およびP353は置換が許容されず、K347、N349およびP350は必要度が相当高く、G354、P355およびE356はその程度が低いことがわかる。
【0239】
セット1の主要なループマトリックスに135~143の範囲の残基を付加することによる、MIL38-AM4による模倣物の認識の最適化。
【0240】
これらのシリーズでも同じく、V348およびその付近の残基が必要であること明らかになった。マトリックスセットにはほかにも結合がみられ、最終的にT3拘束CGELYTQNARAFRDLCGNPKVNPQGPGPEEKRRRGC(配列番号12)に最適なシグナルとなった(図12)。
【0241】
-類似性および非類似性
図13の散布図からわかるように、抗体には、類似した構築物に結合するものとそうでないものとがある。しかし、多くの構築物は、もっぱら調製物のうちの1つに認識される(軸に沿った点または右下端および左上端)。
【0242】
-結論
実施例1および2を補足する形で、抗体MIL38-AM4の立体構造エピトープの特性を明らかにした。ポリクローナル抗体であるAB137604(ウサギ)および抗GPC-1 24-530(ヤギ)が類似したエピトープを認識することがわかった。この2つを同じアレイで比較対照した。
【0243】
実施例1で得られMIL38-AM4に対する不連続エピトープを示す2つのリードを用いて、ループの長さが異なるマトリックスアレイを作製した。さらに、個々のリード配列について全置換解析を実施した。いずれのアレイも上記の3種類の抗体でプローブした。
【0244】
グリピカン1の認識に関しては、この試験で検討した抗体はいずれも、残基347~358の可動性ループのみからなるか、主としてこのループからなるエピトープと結合する。しかし、微細な特異性は異なっており、このことがその機能的特性に影響を及ぼし、ひいてはin vivoの選択性または識別試験での適用性にも影響を及ぼし得る。
【0245】
ウサギポリクローナルAb137604(にみられる一部のIgG種)のエピトープは直鎖状の区間348VNPQGPGPEE357(配列番号3)である。立体構造エピトープを認識する抗体の存在を示すものはない。
【0246】
ヤギポリクローナル抗GPC-1(にみられる一部のIgG種)も同じ可動性ループを
認識する。構造化模倣物に対してある程度の選好性はあるが、大きなものではない。この調製物中の抗体がすべて同じようにして可動性ループを認識するわけではないとも考えられる。モノクローナル抗体MIL38-AM4は主としてグリピカン1の残基347~355のループと結合するが、そのペプチドに135~143の範囲の残基を付加することがこの抗体に有効であるのは明らかである。作製した模倣物は未だ最適なものであるとはいえず、このことは、ウサギAb137604で記録されるものと同程度のシグナル強度を得るのに1000倍の濃度の抗体が必要であるという事実に反映されており、さらには、結合基質に必要なことがほかにもあることを示している。
【0247】
このことは、定量的方法(例えば、Biacore)によって明らかにすることができる標的タンパク質に対する親和性に影響を及ぼすことはない。実際、鋭敏な選択性が、副作用を引き起こさずにin vivoで使用可能な抗体の品質を保証するわけではない。
【0248】
【表15】

【0249】
上に記載した結果に基づき、解析したエピトープ配列で許容される置換のまとめを下の表13に示す。
【0250】
【表16】

【0251】
実施例4.MIL38抗体と抗グリピカン-1(抗GPC-1)抗体には二次元ウエスタンブロットでの反応性に重複が見られる。
ウサギ抗GPC-1抗体ab137604は、分子量約60kDa(MIL38によって検出された分子量と同じ)でグリピカン-1のコアタンパク質との反応性を示した。MIL38がグリピカン-1を認識することを裏付けるため、前立腺癌DU-145のMPEK抽出物を2次元電気泳動およびウエスタンブロット法に供した。
【0252】
DU-145前立腺癌細胞の膜タンパク質抽出物(MPEK)を二次元ゲル(pI勾配が水平方向、分子質量が垂直方向)上で分離した。MIL38抗体および市販のrGPC-1ウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットには、60Kdのタンパク質を示す反応性の重複が見られる(図14の丸で囲った部分)。レーンD(図14)は、対照であるDU-145抽出物の一次元分離である。レーンM(図14)は、対照である分子サイズマーカーの一次元分離レーンである。
【0253】
図14からわかるように、MIL38抗体と抗GPC-1抗体は、分子量が60kDaで等電点の範囲が5~7のタンパク質を検出する反応性に重複が見られた。
【0254】
実施例5.抗GPC-1の免疫沈降物にMIL38が検出され、その逆も同様である。
MIL38抗体またはウサギ抗GPC-1抗体を用いて、DU-145またはC3(MIL38陰性)のMPEK抽出物由来のそれぞれの抗原を免疫沈降させた。免疫沈降物(IP)をMIL38抗体または抗GPC-1抗体とウエスタンブロットに供した(図15)。
【0255】
抗GPC-1とブロットしたMIL38のIPに60kDaのGPC-1反応性のバンドが検出され、MIL38とブロットした抗GPC-1のIPに60kDaのMIL38反応性のバンドが検出された。二次抗体のみの対照では反応性が検出されなかった。さらに、MIL38抗体との免疫沈降によってMIL38抗原および抗GPC-1抗原ともにほぼ完全に枯渇し、MIL38抗原がグリピカン-1であることが強く示唆された。
【0256】
MIL38抗体およびウサギ抗GPC-1抗体を用いて、DU-145前立腺癌またはC3(MIL38陰性)の細胞膜タンパク質抽出物由来のそれぞれの抗原を免疫沈降させた。MIL38抗体または抗GPC-1抗体で検出された免疫沈降のウエスタンブロットを示す。図15Aは、MIL38免疫沈降物(左)のGPC1検出およびGPC1免疫沈降物(右)のMIL38検出を示している。図15Bは、対照であるMIL38免疫沈降物のMIL38検出を示している。各レーンは、対照のMagic Mark-市販のタンパク質マーカー;DU145 MPEK-前立腺癌膜タンパク質抽出物(免疫沈降しなかった);DU145 FT-免疫沈降で得られた前立腺癌のフロースルー;DU145
IP-抗体を用いた免疫沈降物;C3 MPEK-(MIL38陰性)対照膜タンパク質抽出物(免疫沈降しなかった);C3 FT-免疫沈降で得られたフロースルー;C3
IP溶出物-抗体を用いた(MIL38陰性)免疫沈降物である。MIL38は、rGPC1抗体による免疫沈降物を検出することができ、その逆も同様である。MIL38はほかにも、DU145 MPEKを含めた全対照およびMIL38によって得られたIPと結合することができる。
【0257】
実施例6.前立腺癌患者の前立腺癌血漿試料および膜抽出物に含まれるMIL38によってGPC-1を検出することができる。
正常患者1例(042)および前立腺癌患者1例(046)の血漿試料をMIL38抗体と免疫沈降させ、IP試料をMIL38抗体および抗GPC-1抗体とウエスタンブロットに供した(図16A)。
【0258】
両抗体とも、両血漿試料の約70kDaの特異的バンドを検出した。MIL38抗体、抗GPC-1抗体ともに、正常患者の血漿よりも前立腺癌患者の血漿の方がシグナルが著明に高く(バンドが濃く)、前立腺癌患者ではこの可溶型のグリピカン-1が増大する可能性が示唆された。
【0259】
正常な前立腺および前立腺癌の膜タンパク質抽出物にMIL38抗原を検出することが
できるかどうかを明らかにするため、Novus Bio社から試料をそれぞれ1例入手した。MIL38抗体を用いて等量のタンパク質にウエスタンブロットを実施した(図16B)。正常な前立腺の試料よりも前立腺癌抽出物の方がMIL38抗原の発現がはるかに高いことがわかった。
【0260】
実施例7.患者尿中のMIL38抗原の検出。
MIL38は前立腺癌患者の尿中の細胞を検出することができる。この検出方法の感度および特異性を試験するため、年齢の一致した尿試料125例を入手した。尿から細胞を沈降させ、MIL38を用いた直接免疫蛍光アッセイにより分析した。健常対照計47例、良性前立腺肥大(BPH)計37および生検で確定された前立腺癌計41例を分析した。
【0261】
MIL38を用いた免疫蛍光アッセイ(IFA)による試験では、コホート内での前立腺癌識別の感度が71%、特異性が73%であることがわかった。この試験では、BPH患者に対する前立腺癌識別の感度が71%、特異性が76%であることがわかった(表14)。
【0262】
【表17】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
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