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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/44 20060101AFI20220405BHJP
   B01D 53/06 20060101ALI20220405BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B01D53/44 110
B01D53/44 ZAB
B01D53/06 100
B01D53/04 230
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021178469
(22)【出願日】2021-11-01
【審査請求日】2021-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390020215
【氏名又は名称】株式会社西部技研
(72)【発明者】
【氏名】島田 隆寛
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-188918(JP,A)
【文献】特開2003-010626(JP,A)
【文献】特開2021-169097(JP,A)
【文献】特開2021-169091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/18
B01D 53/26
B01D 53/34-53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01J 20/18
A61L 9/00- 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムロータを備え、前記ハニカムロータを少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割し、処理対象ガスを前記処理ゾーンに通し、前記処理ゾーンを通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、前記処理対象ガスの一部及び/又は外気を加熱手段へ通し、前記加熱手段を通過したガスを前記再生ゾーンに通し、前記再生ゾーンを通過したガスを後段の装置、或いは大気放出するようにしたガス処理装置において、前記再生ゾーンを通過したガスの温度が60~120℃であることを特徴とするVOC濃縮装置。
【請求項2】
前記処理ゾーンと前記再生ゾーンの間に、さらに冷却ゾーンを設けたことを特徴とする請求項1に記載のVOC濃縮装置。
【請求項3】
前記処理対象ガスの一部、外気、前記処理ゾーンを通過したガスのうち少なくとも一つから成るガスを前記冷却ゾーンに通し、前記冷却ゾーンを通過したガスを前記加熱手段に通すようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のVOC濃縮装置。
【請求項4】
前記ハニカムロータの回転数を調整することにより、前記再生ゾーンを通過したガスの温度を調整するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のVOC濃縮装置。
【請求項5】
前記加熱手段を通過したガスの一部をバイパスし、前記再生ゾーンの出口側に通すことにより、前記再生ゾーンを通過したガスの温度を調整するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のVOC濃縮装置。
【請求項6】
前記再生ゾーンの出口側を区画するVゾーンに加熱装置を埋設することにより、前記再生ゾーンを通過したガスの温度を調整するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のVOC濃縮装置。
【請求項7】
前記再生ゾーンの出口側において発生した液状物が前記ハニカムロータへ流出するのを防ぐ防止手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のVOC濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス処理装置の再生出口側に液状物が発生することを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模で大気汚染が問題となっているが、トルエン等のVOC(揮発性有機化合物、Volatile Organic Compounds、以下 「VOC」という。)もその一つであり、塗装工程や印刷工場等から多く発生する。
【0003】
VOCを含有する排ガスの処理設備(燃焼設備や回収設備)は、処理風量が大きくなると設備が非常に大規模となるばかりでなく、膨大なランニングコストも必要になるという問題がある。これに対して排ガス処理設備の前段機器としてのVOC濃縮装置は、低濃度・大風量のVOC排出ガスを高濃度・小風量に濃縮回収できるので、処理設備全体の設備費およびランニングコストを大幅に削減でき、効率のよいVOC処理を実現することができる。
【0004】
VOC濃縮装置の一つとして、排ガス中のVOCを選択的に吸着し、濃縮するハニカムロータ式VOC濃縮装置がある。通常、VOC吸着ハニカムロータは疎水性ゼオライトが担持されており、摂氏200℃(以下、温度は「摂氏」とする。)前後の加熱ガスにより再生するため、吸着と再生を繰り返して使用することが可能である。しかし、処理対象ガスからVOCを除去するVOC処理モード(低濃度・大風量の処理対象ガスをハニカムロータの処理ゾーンに通過させ、含有するVOCをハニカムに吸着させて清浄ガスとし、再生ゾーンでは、200℃前後の加熱ガスを通過させ、ハニカムからVOCを離脱させ、高濃度・小風量の濃縮ガスに変換する)において、加熱ガスの温度以上(例えば200℃以上)の高沸点のVOCは、再生ゾーンでハニカムロータから離脱されないため、VOC濃縮装置の稼働に伴い、ハニカムロータに蓄積され、ハニカムロータの能力を低下させる。そこで、特許文献1には、ハニカムロータに蓄積した沸点の高いVOCをハニカムロータから離脱させる高温再生モード(VOC処理モードでの再生温度よりも高い温度(例えば300℃)で加熱ガスを再生ゾーンに通過させ、ハニカムロータに蓄積した沸点の高いVOCをハニカムロータから離脱させる)での賦活処理を行うVOCの除去技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3219762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、処理対象ガスが高湿度である場合や再生循環により再生ガスが高湿度となる場合等、再生出口ガスが高湿度となる条件では、再生出口温度が低いと再生出口側のケーシング内で高湿度の水分が結露して凝縮することがある。これは、VOC濃縮装置に限らず、デシカント除湿機やその他のガス処理装置においても生じ得ることである。VOC濃縮装置の場合、水溶性の高沸点のVOCが処理対象ガスに含まれると、再生出口側で生じた凝縮水に、再生出口側で濃縮脱着された水溶性の高沸点のVOCが溶解し、再生出口ガスの温度変化に応じて乾燥と凝縮を繰り返し、高沸点のVOCが濃縮され、茶褐色から黒色のタール状の液状物が生じることがある。また、水分によらずとも、凝縮しやすいVOCが処理対象ガスに含まれている場合には、再生出口側で濃縮脱着された凝縮しやすいVOCが凝縮し、タール状の液状物になることも考えられる。
【0007】
タール状の液状物の発生によって、再生出口側のケーシングが汚染され、液状物が流れ出すことにより、ハニカムロータや周辺部材も汚染されると、見た目が悪く、装置を清掃する手間やコストがかかり、装置の腐食にもつながり、ハニカムロータや部材の交換が必要となる。また、タール状の液状物がハニカムロータに流れ込むと、性能の低下、圧力損失の上昇につながる。さらに、タール状の液状物の蓄積が進行すれば、VOC濃縮装置からの発火・焼損にもつながる虞がある。
【0008】
特許文献1に記載の高温再生モードによる賦活処理でハニカムロータに蓄積された高沸点のVOCを除去できるのであるが、通常のVOC濃縮装置の運転形態は処理対象ガスからVOCを吸着除去するVOC処理モードである。つまり、定期的に高温再生モードによって蓄積した高沸点のVOCをハニカムロータから離脱させていたとしても、液状物が発生する条件が揃えば、再生出口側に液状物が発生することは免れない。なお、VOC処理モードの再生温度が200℃前後であるのに対し、高温再生モードでは通常300℃程度で再生するため、この高温に耐え得る耐熱性のシールやケーシング等ハニカムロータ周辺部材のコストが高くなる。
【0009】
デシカント除湿機やその他のガス処理装置においても、再生出口側で高湿度の水分が凝縮し、この凝縮水に酸やアルカリ成分が溶解することにより、VOC濃縮装置と同様に、装置の腐食やハニカムロータの性能低下が生じる可能性がある。
【0010】
上記の実情に鑑み、発明者はVOC濃縮装置やデシカント除湿機等のガス処理装置において、再生出口側に発生した液状物の分析を行い、その根本的な発生原因を追究し、鋭意検討を行った。その結果、液状物の発生の原因となる凝縮水の発生を抑制すれば、液状物の発生もなくなるということを突き止め、本発明に至った。本発明は簡単な方法で、再生出口側における液状物の発生を防止することのできるガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のガス処理装置は、ハニカムロータを備え、このハニカムロータを少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割し、処理対象ガスを処理ゾーンに通し、処理ゾーンを通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、処理対象ガスの一部及び/又は外気を加熱手段へ通し、加熱手段を通過したガスを再生ゾーンに通し、再生ゾーンを通過したガスを後段の装置、或いは大気放出するようにしたガス処理装置において、再生ゾーンを通過したガスの温度が60~120℃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス処理装置は上記の如く構成したので、液状物の発生を簡単な方法で、かつコストをかけずに防ぐことができる。これにより、ハニカムロータの性能を長期に渡り安定的に維持することができ、ガス処理装置の部材やハニカムロータの交換頻度が減り、コスト低減につながる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1はVOC濃縮回収フローの一例である。
図2図2は再生出口温度50℃で運転していたVOC濃縮装置において発生したタール状の液状物を示す図である。
図3図3図2のVOC濃縮装置と同じ現場、同じ排気処理を別のVOC濃縮装置で実施し、再生出口温度100℃で運転していた再生出口側の状態を示す図である。
図4図4はVOC濃縮装置において、4種のVOC(キシレン、エチルベンゼン、トルエン、ブチルベンゼン)で通常再生運転、再生出口温度上昇運転を行い、VOC除去率を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はVOC濃縮回収フローの一例である。ハニカムロータ1はセパレータ9によって少なくとも処理ゾーン2、再生ゾーン3に区分される。セパレータ9は一対のV字状をなす直状セパレータと弧状セパレータにより再生ゾーン3が囲まれている(以下、「Vゾーン」という。)。さらに各ゾーンのガスが各送気管を通して送られるようケーシング(図示せず)で覆われている。ハニカムロータ1は、無機繊維紙をハニカム状に成形し、これに疎水性ゼオライト等の吸着剤を担持したものであり、ハニカムロータ1がギヤドモータ等(図示せず)で回転することで、VOCを連続的に吸着除去・濃縮脱着できる。
【0015】
プレフィルター5を通過した処理対象ガス中のVOCはハニカムロータ1の処理ゾーン2を通過する際に、吸着除去される。処理ゾーンを通過したガスは、処理ファン6によって供給先に送られるか、又は大気放出される。VOCを吸着したハニカムが再生ゾーン3へ回転移行すると、吸着されたVOCは、処理風量の1/5~1/15の風量の200℃前後の加熱手段7により加熱された再生ガスで5~15倍に濃縮脱着され、再生ファン8によって燃焼処理装置等の後段の装置(図示せず)に送られるか、又は大気放出される。再生ゾーン3を通過したハニカムは冷却ゾーン4に移動し、冷却され、再び処理ゾーン2へ移行する。処理対象ガスの一部、外気、処理ゾーン2を通過したガスのうち少なくとも一つから成るガスを冷却ゾーン4に送る。冷却ゾーン4を通過したガスは、加熱手段7(再生ヒータ等)で加熱されて再生ガスとして再生ゾーン3に送られる。
【0016】
なお、処理ゾーン2と再生ゾーン3と冷却ゾーン4を備えるVOC濃縮装置としたが、冷却ゾーンを設けず、処理ゾーンと再生ゾーンのみを設けるようにしてもよく、さらに他のゾーンを設けるようにしてもよい。また、再生ガスとして再生ゾーン3に送られるガスは、処理対象ガスの一部及び/又は外気としてもよい。
【0017】
ここで、処理入口温度は例えば20~30℃であり、再生出口温度は通常処理入口温度に対して+20~30℃(一般的には40~60℃)となるように運転する(以下、「通常再生運転」という。)。しかし、この再生出口温度では、前述のように再生出口側に水分が凝縮し液状物が発生してしまうことがある。そこで、本発明では液状物の発生を防ぐために、再生出口温度をさらに上昇させて、60~120℃、より好ましくは70~120℃となるように運転する(以下、「再生出口温度上昇運転」という。)。なお、再生入口温度や風量、処理対象ガスの成分等の条件に関わらず、この再生出口温度域(60~120℃)となるように運転する。
【0018】
特許文献1では、「高温再生モード」運転において、再生入口温度に対し、再生出口温度が50~150℃低くなるように運転するが、本発明では通常のVOC処理モードで再生出口温度を高くするように運転する点で異なる。当業者であれば、本発明のように再生出口温度が60~120℃、より好ましくは70~120℃と高くなるように運転すると、ハニカムロータの性能が悪くなるため、通常処理入口温度に対して+20~30℃の範囲で運転し、本発明のように敢えて再生出口温度を高くしようとする発想には至らない。また、回転数を調整することにより、再生出口温度を高くする方法があるが、除去性能が最も高い回転数である最適回転数から外れると、ハニカムロータの性能が悪くなる方向に働くため、わざわざずらすようなことを当業者は行わない。
【0019】
本発明は、発明者が再生出口側にて生じるタール状の液状物の発生原因を追究・鋭意検討した結果、再生出口温度が40~60℃と低い場合に、水分の凝縮が生じ、これがタール状の液状物の発生の原因となることを突き止め、凝縮水の発生しない温度域である60~120℃、より好ましくは70~120℃まで敢えて再生温度を上げると液状物の発生が低減するという実証に基づき、発明に至ったものである。
【0020】
相対湿度100%RHでの空気中の絶対湿度は、温度上昇とともに指数関数的に上昇する。例えば、40℃では49g/kg(DA)であるが、60℃では152g/kg(DA)と40℃のおよそ3倍に、70℃では277g/kg(DA)と40℃のおよそ6倍に上昇する。大風量を処理するガス処理装置においては、再生出口側のVゾーンのハニカムロータ内周部に近い部分やケーシングの外周部壁部分では偏流が生じたり、装置周囲の外気条件の影響を受け、温度が低下し、液状物が発生・付着しやすい。そこで、本発明の再生出口温度上昇運転では、少なくとも再生出口温度を60℃以上、より好ましくは70℃以上に上昇させる。一方、再生出口温度が高くなりすぎるとハニカムロータの性能が悪化するので、120℃を限度とする。
【0021】
図2は、再生出口温度50℃で運転(通常再生運転)していたVOC濃縮装置の再生出口側のケーシング内に発生したタール状の液状物である。楕円で囲んだ部分は、再生ゾーンから冷却ゾーンへ移行する直前の最も再生出口温度の高いガスが吹き付けられる部分であったため、タール状の液状物は付着していない。このことからも、再生出口温度を上昇させることにより、タール状の液状物の発生を防止できる効果が見て取れる。
【0022】
一方、図3図2に示した、VOC濃縮装置と同じ現場、同じ排気処理を別のVOC濃縮装置で実施し、再生出口温度100℃で運転(再生出口温度上昇運転)していた再生出口側のケーシング内の状態である。同じ現場で同じ排気処理をしていたにも関わらず、再生出口温度を上昇させたことによって、タール状の液状物の発生が全くなかったことが分かる。なお、図3でケーシングに若干付着しているように見えるものは錆や塵埃等であり、タール状の液状物ではない。
【0023】
本発明の再生出口温度上昇運転を行う方法として以下の方法が挙げられる。最も簡単な方法として、回転数による調整が挙げられる。回転数を通常再生運転における最適回転数より落としてゆっくり回転させると、再生熱がロータ全体に伝わり、再生出口温度が上昇する。
【0024】
次に、加熱手段7を通過した再生入口ガスの一部を再生出口側へバイパスすることで、温度の高い加熱ガスを再生出口ガスと混合させ、再生出口温度を上昇させることができる。当業者であれば、このようにすると、濃縮されたVOC濃度が低下して除去性能の低下につながり、バイパスするコストもかかるので、このような発想には至らない。
【0025】
さらに、再生出口側を区画するVゾーン(ケーシングを含む)の壁面等に板状ヒータ等の加熱装置を埋設することによって、再生出口ガスを間接的に加熱し、再生出口温度を上昇させることもできる。当業者であれば、コストのかかる板状ヒータ等を設置し、性能を悪化させる再生出口温度の上昇を行うという発想には至らない。他にも、再生出口ガスを燃焼後の排ガスを熱源として熱交換するようにしてもよい。
【0026】
いずれにしても前述のように、再生出口温度を上昇させることは、冷却ゾーンでのハニカム冷却効果が低減し、ハニカムロータの性能が低下することを意味するので、当業者であれば通常そのような運転は行わない。
【0027】
図4はVOC濃縮装置において、4種のVOC(キシレン、エチルベンゼン、トルエン、ブチルベンゼン)で通常再生運転、再生出口温度上昇運転を行い、VOC除去率を比較したグラフである。横軸は処理入口VOC濃度、縦軸はVOC除去率である。通常再生運転に比べ、再生出口温度上昇運転では、全体的に除去率が0.5~1ポイント低下した。通常、タール状の液状物に含まれる高沸点のVOCはこれら4種のVOCよりも極性も分子構造も大きいVOCが含まれることが多いので、実際の性能の下がり幅はこれら4種のVOCに比べると小さいと予想される。
【0028】
ここで、再生出口温度が120℃となるように再生出口温度上昇運転を行うと、VOC除去率はVOCの種類にもよるが、2~5ポイントも低下するので、再生出口温度上昇運転の上限を120℃とする。また、再生出口温度が高すぎると、再生ファン8の耐熱温度を超えることがあることからも、上限を120℃とすることが望ましい。
【0029】
再生出口温度を上昇させると性能は若干低下するが、大きく性能が損なわれることはない。長期的に見れば、VOC濃縮装置であれば、ハニカムロータに高沸点のVOCが蓄積していき、やがて徐々に性能が低下していく。これに加えて、通常再生運転ではタール状の液状物が発生し、装置やハニカムロータが汚染され、性能が低下し、ひいては装置の腐食、清掃や交換等のコストが高くなるし、発火・焼損の虞もある。一方、再生出口温度上昇運転を行うことにより、初期の性能は若干悪くなるが、タール状の液状物が発生することなく、清掃・交換の頻度も低減し、通常再生運転に比べてコストは安くなる。よって、長期的には再生出口温度上昇運転の方が性能を安定的に維持することができ、コストメリットもある。
【0030】
特に回転数を調整することにより再生出口温度を上昇させる方法では、新たに機器を設置する必要もなく、既存の装置のみで簡単に調整することができる。他の方法においても、大幅なコストアップとはならない。なお、上記の再生出口温度を上昇させる方法(回転数の調整、加熱ガスのバイパス、再生出口側での加熱装置の埋設)を単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0031】
通常再生運転で液状物が発生した場合に備えて、液状物がハニカムロータ内に流出するのを防ぐ防止手段(堰等)を設けたり、再生出口側にドレン抜きを設けたり、ハニカムロータを格納するケーシングに傾斜をつけて、再生入口側が再生出口側より高くなるようにしてもよい。さらに、再生出口ガスが高湿度とならないように、処理対象ガス及び/又は再生ガスを除湿する等、湿度を低くするような処理を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のガス処理装置によれば、簡単な方法で再生出口の液状物の発生を防ぐことができるので、VOC、除湿等ガスの種類を問わず、再生出口ガスが凝縮して液状物の発生する虞のある全ての物件に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ハニカムロータ
2 処理ゾーン
3 再生ゾーン
4 冷却ゾーン
5 プレフィルター
6 処理ファン
7 加熱手段
8 再生ファン
9 セパレータ
【要約】
【課題】簡単な方法で、再生出口側における液状物の発生を防止することのできるガス処理装置を提供する。
【解決手段】本発明のガス処理装置において、回転数の調整、加熱ガスのバイパス、再生出口側での加熱装置の埋設等により、再生出口温度60~120℃、より好ましくは70~120℃に上昇させた再生温度上昇運転を行うことで、再生出口における液状物の発生を防ぐことができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4