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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】装飾装置
(51)【国際特許分類】
   B44F 1/06 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
B44F1/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021192174
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2021-11-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】321012225
【氏名又は名称】菅原 光徳
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】菅原 光徳
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-173246(JP,A)
【文献】特許第3131771(JP,B2)
【文献】特開2008-173891(JP,A)
【文献】特開2005-242244(JP,A)
【文献】特開2006-43920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44F 1/00 - 99/00
B44B 1/00 - 11/04
B44C 1/00 - 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光部の輪郭線で区画された複数の透光部を有した3以上のパターン層を間隔を隔てて順に重ねて配置し、最も外側にあるパターン層を外側から見たときモアレ像を視認させる装飾装置であって、
外側の1つの視点から視認され1つの塊として特定されるモアレ像を特定モアレ像としたとき、該特定モアレ像を、互いに隣り合うパターン層の組で分担して形成したことを特徴とする装飾装置。
【請求項2】
3つのパターン層を積層して構成したことを特徴とする請求項1記載の装飾装置。
【請求項3】
上記パターン層の面方向に沿い原点Oを通るX軸と、該パターン層の面方向に沿うとともにX軸に直交し原点Oを通るY軸と、上記パターン層の面方向に直交するとともに上記パターン層の積層方向であって間隔を規定し原点Oを通るZ軸とを設定し、
各パターン層に、1つの透光部で構成され若しくはY軸方向に列設された複数の透光部で構成され中心線のある所定形体の単位透光部パターンの集合からなり上記特定モアレ像を形成するパターン集合部を設け、
上記各パターン層のパターン集合部を、上記単位透光部パターンをX軸方向に沿って所定のピッチで規則的に列設して構成し、該各パターン層のパターン集合部毎に、上記単位透光部パターンの形体及びそのピッチを異ならせたことを特徴とする請求項1または2記載の装飾装置。
【請求項4】
上記各パターン層のパターン集合部において、上記単位透光部パターンの配列は、上記特定モアレ像がX軸方向に沿って所定の周期で複数形成されうる配列であることを特徴とする請求項3記載の装飾装置。
【請求項5】
3つのパターン層を積層して構成し、見る側から順に、第1パターン層,第2パターン層,第3パターン層とし、第1パターン層に設けられるパターン集合部を第1パターン集合部(PA1)とし、第2パターン層に設けられるパターン集合部を第2パターン集合部(PA2)とし、第3パターン層に設けられるパターン集合部を第3パターン集合部(PA3)とし、第1パターン集合部(PA1)及び第2パターン集合部(PA2)で上記特定モアレ像の分担に係る一方側モアレ像(MA)を形成し、第2パターン集合部(PA2)及び第3パターン集合部(PA3)で上記特定モアレ像の分担に係る他方側モアレ像(MB)を形成することを特徴とする請求項4記載の装飾装置。
【請求項6】
上記第2パターン集合部(PA2)の単位透光部パターンを、その中心線の一部若しくは全部が上記第1パターン集合部(PA1)及び第3パターン集合部(PA3)の単位透光部パターンの中心線に対して交差するように形成したことを特徴とする請求項5記載の装飾装置。
【請求項7】
Y軸に直交する平面で切断された任意の平断面上、上記第1パターン集合部(PA1)において、透光部の幅をS1,遮光部の幅をB1,透光部(遮光部)の中心線のピッチをP1とし、上記第2パターン集合部(PA2)において、透光部の幅をS2,遮光部の幅をB2,透光部(遮光部)の中心線のピッチをP2とし、上記第3パターン集合部(PA3)において、透光部の幅をS3,遮光部の幅をB3,透光部(遮光部)の中心線のピッチをP3としたとき、
モアレ像を上記第3パターン層より奥に視認させる場合、
0.6S2<B1<0.8S3,0.6S2<B3<0.8S1,P1>P2>P3
になる関係に設定し、
モアレ像を上記第1パターン層より手前に視認させる場合、
0.6S2<B1<0.8S3,0.6S2<B3<0.8S1,P1<P2<P3
になる関係に設定したことを特徴とする請求項6記載の装飾装置。
【請求項8】
上記特定モアレ像を、X軸-Y軸平面に配置し、一方側モアレ像(MA)及び他方側モアレ像(MB)を規定し、
Y軸方向の任意の位置における上記一方側モアレ像(MA)のX座標をM1、他方側モアレ像(MB)のX座標をM2とし、一方側モアレ像MAの周期をλ1、他方側モアレ像MBの周期をλ2とし、
第1パターン集合部PA1と第2パターン集合部PA2との間隔をd1、第2パターン集合部PA2と第3パターン集合部PA3との間隔をd2とし、
上記Y軸方向の任意の位置のZ軸-X軸平面におけるZ軸上であって第1パターン層の外側に視点Aを設け、該視点Aから第1パターン集合部(PA1)までのZ軸方向の距離をF、第1パターン集合部(PA1)から一方側モアレ像(MA)までのZ軸方向の距離をL、一方側モアレ像(MA)と他方側モアレ像(MB)とのZ軸方向の間隔(深さ)をDとし、
上記Y軸方向の任意の位置における上記一方側モアレ像(MA)のX座標M1及び他方側モアレ像(MB)のX座標M2に対応し、第1パターン集合部(PA1)における単位透光部パターンの中心軸の上記X軸方向の変位をX1、第2パターン集合部(PA2)における単位透光部パターンの中心軸の上記X軸方向の変位をX2、第3パターン集合部(PA3)における単位透光部パターンの中心軸の上記X軸方向の変位をX3とし、
周期λ1と周期λ2との比をnとし、d1>0,d2>0としたとき、
(1)モアレ像が上記第3パターン層より奥に見える場合の、
0.6S2<B1<0.8S3,0.6S2<B3<0.8S1,P1>P2>P3とした条件下においては、
以下の(式1)~(式9)の関係式を満たし、
(2)モアレ像が上記第3パターン層より前に見える場合の、
0.6S2<B1<0.8S3,0.6S2<B3<0.8S1,P1<P2<P3とした条件下においては、
以下の(式10)~(式18)の関係式を満たすことを特徴とする請求項7記載の装飾装置。
(但し、D≠0の場合、他方側モアレ像(MB)が一方側モアレ像(MA)より奥の場合のDは正、他方側モアレ像(MB)が一方側モアレ像(MA)より前の場合のDは負の値として計算する。)
(1)モアレ像が上記第3パターン層より奥に見える場合
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
(2)モアレ像が上記第3パターン層より前に見える場合
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【請求項9】
X軸-Y軸平面上、Y軸方向の任意の位置において、上記一方側モアレ像(MA)のX軸方向の幅をMv1とし、上記他方側モアレ像(MB)の幅をMv2としたとき、以下の(式19)及び(式20)の関係式を満たすことを特徴とする請求項8記載の装飾装置。
【数19】
【数20】
【請求項10】
上記各パターン層に、複数のパターン集合部を設けたことを特徴とする請求項3乃至9何れかに記載の装飾装置。
【請求項11】
上記各パターン層に、異なる形体の特定モアレ像を形成する複数種のパターン集合部を設けたことを特徴とする請求項3乃至10何れかに記載の装飾装置。
【請求項12】
上記遮光部を、紐で形成したことを特徴とする請求項1乃至11何れかに記載の装飾装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパターン層の重ね合わせによりモアレ像を形成する装飾装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装飾装置としては、例えば、特許3131771号公報(特許文献1)に掲載されたものが知られている。これは、透明性シートの一面に形成され所定のピッチで繰り返された複数の透光部からなる模様を有した第1パターン層と、この透明性シートの他面に形成され第1パターン層の模様と相似形状の模様を有した第2パターン層とを備え、これらのパターン層によって、所定の周期で上下に複数形成される矩形形状のモアレ像を形成している。また、第1パターン層と第2パターン層との間に、鳥等の図柄を形成した第3パターン層を介装し、第1パターン層と第2パターン層とで形成されるモアレ像に、図柄が表出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許3131771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の装飾装置にあっては、モアレ像を第1パターン層と第2パターン層とで形成するようにしているが、2つの層でモアレ像を形成しているので、一層当たりの透光部(遮光部)の形状が複雑になり、設計や加工が煩雑になっているという問題があった。従来においては、第3パターン層を設けているが、これは、図柄が表出するだけであり、透光部(遮光部)によるモアレ像の形成作用はないことから、モアレ像自体の設計には寄与していない。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、パターン層の一層当たりの透光部(遮光部)をできるだけ単純化できるようにし、設計や加工を容易に行うことができるようにした装飾装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の装飾装置は、遮光部の輪郭線で区画された複数の透光部を有した3以上のパターン層を間隔を隔てて順に重ねて配置し、最も外側にあるパターン層を外側から見たときモアレ像を視認させる装飾装置であって、
外側の1つの視点から視認され1つの塊として特定されるモアレ像を特定モアレ像としたとき、該特定モアレ像を、互いに隣り合うパターン層の組で分担して形成した構成としている。
【0007】
ここで、特定モアレ像とは、1つの塊として視認できる図形、文字、記号等の所定の形体を有する像(干渉縞)を言う。対称形、非対称形のいずれであっても良い。ここで、パターン層を間隔を隔てて重ねての意味は、パターン層の厚さtをt=0としたときには間隔が必要であることを意味する。パターン層の厚さtがt>0のとき、例えば、パターン層を所定の厚さのシートに透光部を開設して作成する場合、あるいは、透明なシートに遮光部を印刷して作成するような場合には、このパターン層を密接させて積層しても、シートの厚さ分は間隔があるものとする。間隔が大きいほど、モアレ像の立体感が増す。
【0008】
また、この場合、互いに隣り合うパターン層の組以外のパターン層の組合せによっては、特定モアレ像を形成しないようにし、あるいは、互いに隣り合うパターン層の組以外のパターン層の組合せによっては、特定モアレ像以外のモアレ像が可能な限り形成されないようにして、視認できないようにする。このため、3つのパターン層を積層して構成したことが有効である。
【0009】
これにより、特定モアレ像を、互いに隣り合うパターン層の組で分担して形成するので、それだけ、パターン層の一層当たりの透光部(遮光部)を単純化できるようになり、設計や加工を容易に行うことができるようになる。また、互いに隣り合うパターン層の1つの組においては、この互いに隣り合うパターン層同士により形成される分担に係るモアレ像はこれら同士の位置関係を変えても一義的になるが、組同士の位置関係を相対的に変えると、特定モアレ像の形状を可変にすることができる。即ち、隣り合うパターン層の組同士の位置関係を相対的に変えることにより、外側の1つの視点から視認されるモアレ像が特定モアレ像とは形状の異なるモアレ像として表出可能になる。言い方を変えれば、外側の視点が変わると、特定モアレ像とは形状の異なるモアレ像が視認され、あるいは、再び特定モアレ像が視認されることになる。そのため、多様性が増し、設計の自由度の向上を図ることができる。
【0010】
そして、必要に応じ、上記パターン層の面方向に沿うX軸と、該パターン層の面方向に沿うとともにX軸に直交するY軸と、上記パターン層の面方向に直交し上記パターン層の積層方向であって間隔を規定するZ軸を設定し、
各パターン層に、1つの透光部で構成され若しくはY軸方向に列設された複数の透光部で構成され中心線のある所定形体の単位透光部パターンの集合からなり上記特定モアレ像を形成するパターン集合部を設け、
上記各パターン層のパターン集合部を、上記単位透光部パターンをX軸方向に沿って所定のピッチで規則的に列設して構成し、該各パターン層のパターン集合部毎に、上記単位透光部パターンの形体及びそのピッチを異ならせた構成としている。
ここで、形体が異なるとは、同一形状であっても、大きさが異なれば、形体を異ならせることになる。
【0011】
また、後述もするが、図7(a)(c)(e)(g)(i)(k)(m)(o)には、単位透光部パターンを、1つの透光部で構成した例を示す。図7(b)(d)(f)(h)(j)(l)(n)(p)には、単位透光部パターンを、Y軸方向に列設された複数の透光部で構成した例を示す。
これにより、特定モアレ像を形成することができる。この場合、単位透光部パターンを、複数の透光部をY軸方向に列設して構成した場合には、単位透光部パターンにおいて、透光部と透光部との間に遮光部が介在するので、パターン層を、例えば、薄いシートに透光部を開設して構成する場合には、遮光部により強度を増すことができる。
尚、図5に示すように、単位透光部パターンを、Y軸方向に列設された複数の透光部で構成した場合、Y軸方向において、透光部の長さS4及び遮光部の長さB4は、適宜に定めてよい。
【0012】
また、必要に応じ、上記各パターン層のパターン集合部において、上記単位透光部パターンの配列は、上記特定モアレ像がX軸方向に沿って所定の周期で複数形成されうる配列である構成としている。例えば、各パターン層のパターン集合部において、同じ形体の単位透光部パターンを同じピッチで列設する。特定モアレ像を1つ形成するようにしても良く、また、同じ形体の特定モアレ像を周期的に複数形成するようにしても良い。設計をやり易くすることができる。
【0013】
そして、必要に応じ、3つのパターン層を積層して構成し、見る側から順に、第1パターン層,第2パターン層,第3パターン層とし、第1パターン層に設けられるパターン集合部を第1パターン集合部(PA1)とし、第2パターン層に設けられるパターン集合部を第2パターン集合部(PA2)とし、第3パターン層に設けられるパターン集合部を第3パターン集合部(PA3)とし、第1パターン集合部(PA1)及び第2パターン集合部(PA2)で上記特定モアレ像の分担に係る一方側モアレ像(MA)を形成し、第2パターン集合部(PA2)及び第3パターン集合部(PA3)で上記特定モアレ像の分担に係る他方側モアレ像(MB)を形成する構成としている。
【0014】
この構成においては、X軸-Y軸平面において、特定モアレ像は、外形線(輪郭線)が直線及び/または曲線で囲繞された二次元図形である。この場合、一方側モアレ像MAと他方側モアレ像MBとが互いに鏡面対称であっても良く、あるいは、互いに鏡面非対称であっても良く、適宜に定めて良い。分かりやすい図形としては、任意のX軸方向の線上の外形線の座標が一対ある図形であり、一方側モアレ像(MA)及び他方側モアレ像(MB)を、これらの外形線の座標が、任意のX軸方向の線上に1つあるように形成する。尚、表出されるモアレ像には、分担にかかわらない図形(モアレ像)を含んでよい。
【0015】
また、必要に応じ、上記第2パターン集合部(PA2)の単位透光部パターンを、その中心線の一部若しくは全部が上記第1パターン集合部(PA1)及び第3パターン集合部(PA3)の単位透光部パターンの中心線に対して交差するように形成した構成としている。
【0016】
そして、この構成においては、Y軸に直交する平面で切断された任意の平断面上、上記第1パターン集合部(PA1)において、透光部の幅をS1,遮光部の幅をB1,透光部(遮光部)の中心線のピッチをP1とし、上記第2パターン集合部(PA2)において、透光部の幅をS2,遮光部の幅をB2,透光部(遮光部)の中心線のピッチをP2とし、上記第3パターン集合部(PA3)において、透光部の幅をS3,遮光部の幅をB3,透光部(遮光部)の中心線のピッチをP3としたとき、
モアレ像を上記第3パターン層より奥に視認させる場合、
0.6S2<B1<0.8S3,0.6S2<B3<0.8S1,P1>P2>P3
になる関係に設定し、
モアレ像を上記第1パターン層より手前に視認させる場合、
0.6S2<B1<0.8S3,0.6S2<B3<0.8S1,P1<P2<P3
になる関係に設定したことが有効である。
【0017】
そしてまた、この構成においては、上記特定モアレ像を、X軸-Y軸平面に配置し、一方側モアレ像(MA)及び他方側モアレ像(MB)を規定し、
Y軸方向の任意の位置における上記一方側モアレ像(MA)のX座標をM1、他方側モアレ像(MB)のX座標をM2とし、一方側モアレ像MAの周期をλ1、他方側モアレ像MBの周期をλ2とし、
第1パターン集合部PA1と第2パターン集合部PA2との間隔をd1、第2パターン集合部PA2と第3パターン集合部PA3との間隔をd2とし、
上記Y軸方向の任意の位置のZ軸-X軸平面におけるZ軸上であって第1パターン層の外側に視点Aを設け、該視点Aから第1パターン集合部(PA1)までのZ軸方向の距離をF、第1パターン集合部(PA1)から一方側モアレ像(MA)までのZ軸方向の距離をL、一方側モアレ像(MA)と他方側モアレ像(MB)とのZ軸方向の間隔(深さ)をDとし、
上記Y軸方向の任意の位置における上記一方側モアレ像(MA)のX座標M1及び他方側モアレ像(MB)のX座標M2に対応し、第1パターン集合部(PA1)における単位透光部パターンの中心軸の上記X軸方向の変位をX1、第2パターン集合部(PA2)における単位透光部パターンの中心軸の上記X軸方向の変位をX2、第3パターン集合部(PA3)における単位透光部パターンの中心軸の上記X軸方向の変位をX3とし、
周期λ1と周期λ2との比をnとし、d1>0,d2>0としたとき、
(1)モアレ像が上記第3パターン層より奥に見える場合の、
0.6S2<B1<0.8S3,0.6S2<B3<0.8S1,P1>P2>P3とした条件下においては、
以下の(式1)~(式9)の関係式を満たし、
(2)モアレ像が上記第3パターン層より前に見える場合の、
0.6S2<B1<0.8S3,0.6S2<B3<0.8S1,P1<P2<P3とした条件下においては、
以下の(式10)~(式18)の関係式を満たすことが有効である。
(但し、D≠0の場合、他方側モアレ像(MB)が一方側モアレ像(MA)より奥の場合のDは正、他方側モアレ像(MB)が一方側モアレ像(MA)より前の場合のDは負の値として計算する。)
【0018】
(1)モアレ像が上記第3パターン層より奥に見える場合
【0019】
【数1】
【0020】
【数2】
【0021】
【数3】
【0022】
【数4】
【0023】
【数5】
【0024】
【数6】
【0025】
【数7】
【0026】
【数8】
【0027】
【数9】
【0028】
(2)モアレ像が上記第3パターン層より前に見える場合
【0029】
【数10】
【0030】
【数11】
【0031】
【数12】
【0032】
【数13】
【0033】
【数14】
【0034】
【数15】
【0035】
【数16】
【0036】
【数17】
【0037】
【数18】
【0038】
この場合、X軸-Y軸平面上、Y軸方向の任意の位置において、上記一方側モアレ像(MA)のX軸方向の幅をMv1とし、上記他方側モアレ像(MB)の幅をMv2としたとき、以下の(式19)及び(式20)の関係式を満たすことが有効である。
【0039】
【数19】
【0040】
【数20】
【0041】
また、本発明においては、必要に応じ、上記各パターン層に、複数のパターン集合部を設けた構成とすることができる。特定モアレ像を、多段に形成することができるなど、モアレ像の集合模様の設計の幅を大きくすることができる。
【0042】
更に、本発明においては、必要に応じ、上記各パターン層に、異なる形体の特定モアレ像を形成する複数種のパターン集合部を設けた構成とすることができる。異なる形体の特定モアレ像が混在したモアレ像の集合模様を形成することができる。モアレ像の集合模様の設計の幅を大きくすることができる。
【0043】
また、必要に応じ、上記遮光部を、紐で形成した構成としている。板等に透光部を開設しなくても良いことから製造が容易になる。また、モアレ像をデザイナーの趣向や用途に合わせて変更する事ができ、設計の自由度が増す。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、特定モアレ像を、互いに隣り合うパターン層の組で分担して形成するので、それだけ、パターン層の一層当たりの透光部(遮光部)を単純化できるようになり、設計や加工を容易に行うことができるようになる。また、隣り合うパターン層の組同士の位置関係を相対的に変えることにより、外側の1つの視点から視認されるモアレ像が特定モアレ像とは形状の異なるモアレ像として表出可能になる。言い方を変えれば、外側の視点が変わると、特定モアレ像とは形状の異なるモアレ像が視認され、あるいは、再び特定モアレ像が視認されることになる。そのため、多様性が増し、設計の自由度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の実施の形態に係る装飾装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る装飾装置を示す縦断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る装飾装置においてパターン層の要部を示し、(a)は第1パターン層を示す正面図、(b)は第2パターン層を示す正面図、(c)は第3パターン層を示す正面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る装飾装置においてパターン層の要部を示し、(a)は第1パターン層と第2パターン層とを重ねた状態を示す正面図、(b)は第2パターン層と第3パターン層と重ねた状態を示す正面図、(c)は第1パターン層,第2パターン層及び第3パターン層をX軸方向位置を調整して重ねた状態を示す正面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る装飾装置のパターン層の部分を示し、(a)は第1パターン層を示す正面図、(b)は第2パターン層を示す正面図、(c)は第3パターン層を示す正面図、(d)は第1パターン層,第2パターン層及び第3パターン層をX軸方向位置を調整して重ねた際に形成される特定モアレ像の一例を示す正面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る装飾装置において、第1パターン層,第2パターン層及び第3パターン層をX軸方向位置を調整して重ねた際に形成される特定モアレ像の例を示す正面図(a)(b)(c)(d)(e)である。
図7】本発明の装飾装置において、単位透光部パターンの構成例を示す図(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)(h)(i)(j)(k)(l)(m)(n)(o)(p)である。
図8】本発明に係る装飾装置において、モアレ像を第3パターン層より奥に視認させる場合、その見え方及び条件を示す図である。
図9】本発明に係る装飾装置において、モアレ像を第1パターン層より手前に視認させる場合、その見え方及び条件を示す図である。
図10】本発明に係る装飾装置において、遮光部の幅(B1),透光部の幅(S2)及びモアレ像の幅(Mv1)の関係を示すグラフ図である。
図11】本発明に係る装飾装置のモアレ像の幅(Mv1)の違いを示すために作成した第1パターン層を示し、(a)はB1=1mmの第1パターン層を示す正面図、(b)はB1=2mmの第1パターン層を示す正面図、(c)はB1=3mmの第1パターン層を示す正面図である。
図12】本発明に係る装飾装置のモアレ像の幅(Mv1)の違いを示すために作成した第2パターン層を示し、S2=0.3mm,S2=0.6mm,S2=0.9mm,S2=1.2mm,S2=1.5mmの透光部列を段階的に形成した第2パターン層示す正面図である。
図13】本発明に係る装飾装置のモアレ像の幅(Mv1)の違いを示すために作成したパターン層を示し、(a)は第1パターン層(図11(a))と第2パターン層(図12)とを重ねた状態を示す正面図、(b)は第1パターン層(図11(b))と第2パターン層(図12)とを重ねた状態を示す正面図、(c)は第1パターン層(図11(a))と第2パターン層(図12)とを重ねた状態を示す正面図である。
図14】本発明の実施の形態に係る装飾装置において、特定モアレ像の見え方の原理を示す図である。
図15】本発明の実施の形態に係る装飾装置において、深さ(D)を設定したときの特定モアレ像の見え方を示す図である。
図16】本発明の実施の形態に係る装飾装置において、深さ(D)を設定したときの特定モアレ像の見え方を示す別の図である。
図17】本発明の別の実施の形態に係る装飾装置を示す斜視図である。
図18】本発明の別の実施の形態に係る装飾装置のパターン層の部分を示し、(a)は第1パターン層を示す正面図、(b)は第2パターン層を示す正面図、(c)は第3パターン層を示す正面図、(d)は第1パターン層,第2パターン層及び第3パターン層をX軸方向位置を調整して重ねた際に形成される特定モアレ像の一例を示す正面図である。
図19】本発明の別の実施の形態に係る装飾装置のパターン層において、Y軸方向の任意の位置における一方側モアレ像のY軸からのX座標(M1,M1´,M1´´)と、第2パターン集合部における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位(X2,X2´,X2´´)との関係を示す図である。
図20】本発明の実施の形態に係る装飾装置において、パターン集合部を形成する素材の別の例を示した図(a)(b)(c)である。
図21】実施例1~実施例3に係る特定モアレ像M,一方側モアレ像(MA)及び他方側モアレ像(MB)を示す図である。
図22】実施例1~実施例3に係るパターン層を示し、(a)はX1=0としたときの実施例1に係るパターン層を示す図、(b)はX2=0としたときの実施例2に係るパターン層を示す図、(c)はY軸方向の所定の位置(下端)でX1=0、所定の位置(左右の頂角位置)でX1=2mmとしたときのパターン層を示す図である。
図23】実施例1に係るパターン層に関連し、座標の設定を変えた場合の特定モアレ像M,一方側モアレ像(MA)及び他方側モアレ像(MB)を示す図である。
図24】座標の設定を変えた場合の特定モアレ像M,一方側モアレ像(MA)及び他方側モアレ像(MB)に係り、X1=0としたときのパターン層を示す図である。
図25】実施例4に係るパターン層を示す図3相当図である。
図26】実施例4に係るパターン層を示す図4相当図である。
図27】実施例5に係るパターン層を示す図3相当図である。
図28】実施例5に係るパターン層を示す図4相当図である。
図29】実施例6に係るパターン層を示す図3相当図である。
図30】実施例6に係るパターン層を示す図4相当図である。
図31】実施例7に係るパターン層を示す図3相当図である。
図32】実施例7に係るパターン層を示す図4相当図である。
図33】実施例8に係るパターン層を示す図3相当図である。
図34】実施例8に係るパターン層を示す図4相当図である。
図35】実施例9~実施例11に係る特定モアレ像M,一方側モアレ像(MA)及び他方側モアレ像(MB)を示す図である。
図36】実施例9~実施例11に係るパターン層を示し、(a)はX1=0としたときの実施例9に係るパターン層を示す図、(b)はX2=0としたときの実施例10に係るパターン層を示す図、(c)はY軸方向の所定の位置(下端)でX1=0、所定の位置(a,b位置)でX1=-1.5mm、所定の位置(c,d位置)でX1=-3mm、としたときのパターン層を示す図である。
図37】実施例9に係るパターン層を示す図3相当図である。
図38】実施例9に係るパターン層を示す図4相当図である。
図39】実施例12に係るパターン層の作成原理を示す図である。
図40】実施例12に係るパターン層を示す図3相当図である。
図41】実施例12に係るパターン層を示す図4相当図である。
図42】実施例13に係るパターン層を示す図3相当図である。
図43】実施例13に係るパターン層を示す図4相当図である。
図44】実施例14に係るパターン層の作成原理を示す図である。
図45】実施例14に係るパターン層を示す図3相当図である。
図46】実施例14に係るパターン層を示す図4相当図である。
図47】実施例15に係るパターン層を示す図3相当図である。
図48】実施例15に係るパターン層を示す図4相当図である。
図49】実施例16に係るパターン層の作成原理を示す図である。
図50】実施例16に係るパターン層を示す図3相当図である。
図51】実施例16に係るパターン層を示す図4相当図である。
図52】実施例17に係るパターン層の作成原理を示す図である。
図53】実施例17に係るパターン層を示す図3相当図である。
図54】実施例17に係るパターン層を示す図4相当図である。
図55】実施例18に係る特定モアレ像M,一方側モアレ像(MA)及び他方側モアレ像(MB)を示す図である。
図56】実施例18に係るパターン層を示し、X1=0としたときのパターン層を示す図である。
図57】実施例18に係るパターン層を示す横断面図である。
図58】実施例18に係るパターン層を示す図3相当図である。
図59】実施例18に係るパターン層を示す図4相当図である。
図60】実施例19に係るパターン層を示す図3相当図である。
図61】実施例19に係るパターン層を示す図4相当図である。
図62】実施例20に係るパターン層を示す図3相当図である。
図63】実施例20に係るパターン層を示す図4相当図である。
図64】実施例21に係るパターン層を示す図3相当図である。
図65】実施例21に係るパターン層を示す図4相当図である。
図66】実施例22に係るパターン層を示す図3相当図である。
図67】実施例22に係るパターン層を示す図4相当図である。
図68】実施例23に係るパターン層を示す図3相当図である。
図69】実施例23に係るパターン層を示す図4相当図である。
図70】実施例24に係るパターン層を示す図3相当図である。
図71】実施例24に係るパターン層を示す図4相当図である。
図72】本発明の試験例に係る試験体を示し、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
図73】本発明の試験例に係る試験体1~8の作成条件を示す表図である。
図74】本発明の試験例に係る試験体1~8が形成した特定モアレ像の状態を示す図である。
図75】本発明が形成可能な特定モアレ像の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る装飾装置について詳細に説明する。
図1乃至図5に示すように、実施の形態に係る装飾装置Tは、衝立であり、矩形枠状の本体1と、本体1に設けられ本体1を起立させて支持する脚部2とを備えて構成されている。本体1には、遮光部3の輪郭線で区画された複数の透光部4を有した3以上のパターン層を間隔を隔てて順に重ねて配置し、この3以上のパターン層によって最も外側にあるパターン層を外側から見たときモアレ像を視認させる。そして、外側の1つの視点A(図8図9図15)から視認され1つの塊として特定されるモアレ像を特定モアレ像Mとしたとき、この特定モアレ像Mを、互いに隣り合うパターン層の組で分担して形成した構成としている。
【0047】
実施の形態では、装飾装置Tは、3つのパターン層を積層して構成され、即ち、順に、第1パターン層W1,第2パターン層W2,第3パターン層W3を積層して構成され、これらは、本体1に間隔を隔てて嵌め込まれている。各パターン層W1,W2,W3は、例えば、樹脂板,金属板,木板,紙等の板材やシート材で形成されている。透光部4は、例えば、レーザー加工機等で板材やシート材に孔を開けて形成される。尚、図1において、第1パターン層W1及び第3パターン層W2の透光部4は、実線で表した遮光部3により囲繞された白抜き部分であり、第2パターン層W2の透光部4は、実線で描いた部分である。
【0048】
また、実施の形態では、特定モアレ像Mが複数視認できるようにしている。この特定モアレ像Mは、互いに隣り合うパターン層の組で分担して形成されている。詳しくは、パターン層W1,W2,W3の面方向に沿うX軸と、パターン層W1,W2,W3の面方向に沿うとともにX軸に直交するY軸と、パターン層W1,W2,W3の面方向に直交しパターン層W1,W2,W3の積層方向であって間隔を規定するZ軸を設定し、各パターン層W1,W2,W3には、1つの透光部4で構成され若しくはY軸方向に列設された複数の透光部4で構成され中心線Qのある所定形体の単位透光部パターン10の集合からなり特定のモアレ像M(実施の形態では「菱形」)を形成するパターン集合部が設けられている。
【0049】
第1パターン層W1に設けられるパターン集合部を第1パターン集合部PA1とし、第2パターン層W2に設けられるパターン集合部を第2パターン集合部PA2とし、第3パターン層W3に設けられるパターン集合部を第3パターン集合部PA3としている。そして、第1パターン集合部PA1及び第2パターン集合部PA2で特定モアレ像Mの分担に係る一方側モアレ像MAを形成し、第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3で特定モアレ像Mの分担に係る他方側モアレ像MBを形成している。
【0050】
この構成においては、X軸-Y軸平面において、特定モアレ像Mは、外形線(輪郭線)が直線及び/または曲線で囲繞された二次元図形である。この場合、一方側モアレ像MAと他方側モアレ像MBとが互いに鏡面対称であっても良く、あるいは、互いに鏡面非対称であっても良く、適宜に定めて良い。分かりやすい図形としては、任意のX軸方向の線上の外形線の座標が一対ある図形であり、一方側モアレ像(MA)及び他方側モアレ像(MB)を、これらの外形線の座標が、任意のX軸方向の線上に1つあるように形成する。尚、表出されるモアレ像には、分担にかかわらない図形(モアレ像)を含んでよい。実施の形態では、左右対称で所定幅の輪郭線で描かれた「菱形」としている。即ち、外形線が菱形であり、内部に刳り貫かれた菱形が形成される。この場合、一方側モアレ像MAと他方側モアレ像MBとが互いに鏡面対称になる。
【0051】
また、各パターン層W1,W2,W3のパターン集合部PA1,PA2,PA3は、単位透光部パターン10をX軸方向に沿って所定のピッチで規則的に列設して構成され、各パターン層W1,W2,W3のパターン集合部PA1,PA2,PA3毎に、単位透光部パターン10の形体及びそのピッチを異ならせてある。ここで、形体が異なるとは、同一形状であっても、大きさが異なれば、形体を異ならせることになる。
【0052】
更に、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターン10は、その中心線の一部若しくは全部が第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターン10の中心線に対して交差するように形成されている。
【0053】
また、各パターン層W1,W2,W3のパターン集合部PA1,PA2,PA3において、単位透光部パターン10の配列は、特定モアレ像がX軸方向に沿って所定の周期で複数形成される配列にしている。また、各パターン層W1,W2,W3に、複数(実施の形態では上下に2つ)のパターン集合部PA1,PA2,PA3を設けている。同じ形体(「菱形」)の特定モアレ像Mの列が、上下2段に現れる。第1パターン層W1に設けられる上下2つの第1パターン集合部PA1,PA1は同じ形状をし、第3パターン層W3に設けられる上下2つの第3パターン集合部PA3,PA3は同じ形状をしている。一方、第2パターン層W2に設けられる上下2種の第2パターン集合部PA2,PA2は、同じ形状であるが、X軸方向に位相がずれている。尚、図3及び図4に示すパターン集合部PA1,PA2,PA3は、X軸方向に沿って特定モアレ像Mが1列並ぶ単位透光部パターン10の列を表示しており、特定モアレ像MがY軸方向に並ぶ単位透光部パターン10の列は省略している。
【0054】
より詳しくは、図8及び図9に示すように、Y軸に直交する平面で切断された任意の平断面上、第1パターン集合部PA1において、透光部の幅をS1,遮光部の幅をB1,透光部(遮光部)の中心線のピッチをP1とし、第2パターン集合部PA2において、透光部の幅をS2,遮光部の幅をB2,透光部(遮光部)の中心線のピッチをP2とし、第3パターン集合部PA3において、透光部の幅をS3,遮光部の幅をB3,透光部(遮光部)の中心線のピッチをP3としたとき、
モアレ像を上記第3パターン層より奥に視認させる場合(図8)、
0.6S2<B1<0.8S3,0.6S2<B3<0.8S1,P1>P2>P3
になる関係に設定し、
モアレ像を上記第1パターン層より手前に視認させる場合(図9)、
0.6S2<B1<0.8S3,0.6S2<B3<0.8S1,P1<P2<P3
になる関係に設定している。
【0055】
そして、図8及び図9に示すように、特定モアレ像Mを、X-Y平面に配置し、一方側モアレ像MA及び他方側モアレ像MBを規定し、Y軸方向の任意の位置における一方側モアレ像MAのY軸からのX座標をM1、他方側モアレ像MBのX座標をM2とし、一方側モアレ像MAの周期をλ1、視点Aから見たときの他方側モアレ像MBの周期をλ2とし、
第1パターン集合部PA1と第2パターン集合部PA2との間隔をd1、第2パターン集合部PA2と第3パターン集合部PA3との間隔をd2とし、
Y軸方向の任意の位置のZ-X平面におけるZ軸上に第1パターン層の外側にある視点Aを設け、この視点Aから第1パターン集合部PA1までのZ軸方向の距離をF、第1パターン集合部PA1から一方側モアレ像MAまでのZ軸方向の距離をL、一方側モアレ像MAと他方側モアレ像MBとのZ軸方向の間隔(深さ)をDとし、
Y軸方向の任意の位置における一方側モアレ像MAのY軸からのX座標M1及び他方側モアレ像MBのX座標M2に対応し、第1パターン集合部PA1における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位をX1、第2パターン集合部PA2における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位をX2、第3パターン集合部PA3における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位をX3としたとき、以下に示す関係式を満たすように、各パターン層を形成している。
【0056】
(1)モアレ像が上記第3パターン層より奥に見える場合(図8
周期λ1と周期λ2との比をnとし、d1>0,d2>0としたとき、
0.6S2<B1<0.8S3,0.6S2<B3<0.8S1,P1>P2>P3とした条件下においては、
以下の(式1)~(式9)の関係式を満たす。
但し、D≠0の場合、他方側モアレ像(MB)が一方側モアレ像(MA)より奥の場合のDは正、他方側モアレ像(MB)が一方側モアレ像(MA)より前の場合のDは負の値として計算する。
【0057】
【数21】
【0058】
【数22】
【0059】
【数23】
【0060】
【数24】
【0061】
【数25】
【0062】
【数26】
【0063】
【数27】
【0064】
【数28】
【0065】
【数29】
【0066】
(2)モアレ像が上記第3パターン層より前に見える場合(図9
周期λ1と周期λ2との比をnとし、d1>0,d2>0としたとき、
0.6S2<B1<0.8S3,0.6S2<B3<0.8S1,P1<P2<P3とした条件下においては、
以下の(式10)~(式18)の関係式を満たす。
但し、D≠0の場合、他方側モアレ像(MB)が一方側モアレ像(MA)より奥の場合のDは正、他方側モアレ像(MB)が一方側モアレ像(MA)より前の場合のDは負の値として計算する。
【0067】
【数30】
【0068】
【数31】
【0069】
【数32】
【0070】
【数33】
【0071】
【数34】
【0072】
【数35】
【0073】
【数36】
【0074】
【数37】
【0075】
【数38】
【0076】
単位透光部パターン10の形体は、上記の関係式を満たすことを条件に、適宜に定められるが、例えば、予め、周期λ1,周期λ2,距離F、距離L、深さD,X座標M1,X座標M2を定め、ピッチP1、変位(X1,X2,X3)の何れかを定めれば、一義的に定めることができる。例えば、図21及び図22(a)に示すように、第1パターン集合部PA1の単位透光部パターン10の中心線をY軸に平行な直線(X1=0)とすれば、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターン10の中心線を「くの字」の折れ線に形成することができる。この場合、第3パターン集合部PA3の単位透光部パターン10の中心線もY軸に平行な直線(X3=0)になる。
【0077】
図21及び図22(b)に示すように、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターン10の中心線をY軸に平行な直線(X2=0)とすれば、第1パターン集合部PA1の単位透光部パターン10の中心線及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターン10の中心線を「くの字」の折れ線に形成することができる。
【0078】
あるいは、図21及び図22(c)に示すように、第1パターン集合部PA1の単位透光部パターン10の中心線を「くの字」の折れ線(X1を可変)に形成すれば、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターン10の中心線及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターン10の中心線全てを「くの字」の折れ線に形成することができる。
【0079】
即ち、変位(X1,X2,X3)の何れかを定めれば、他の変位を一義的に定めることができる。そのため、例えば、各パターン層のパターン集合部のうちいずれかのパターン集合部の単位透光部パターン10の形体を、例えば、図7に示す種々の形体の例のように、適宜に定めれば、他の2つのパターン集合部の単位透光部パターン10の形体が一義的に決定される。
【0080】
また、図5に示すように、X軸-Y軸平面上、Y軸方向の任意の位置において、一方側モアレ像MAのX軸方向の幅を、Mv1とし、他方側モアレ像MBの幅を、Mv2としたとき、以下の(式19)及び(式20)の関係式を満たすようにしている。
【0081】
【数39】
【0082】
【数40】
【0083】
即ち、X軸-Y軸平面上、Y軸方向の任意の位置において、予め、幅Mv1及び幅Mv2を定めれば、そのY軸方向の任意の位置においてY軸に直交する平面で切断された平断面上、第1パターン集合部PA1において、透光部の幅S1,遮光部の幅B1、第2パターン集合部PA2において、透光部の幅S2,遮光部の幅B2、第3パターン集合部PA3において、透光部の幅S3,遮光部の幅B3を、上記の関係式に基づいて定めることができる。
【0084】
図10は、幅Mv1(Mv2),遮光部の幅B1(B3)及び透光部の幅S2の関係例を示すグラフ図である。図11に示すように、第1パターン層として、遮光部の幅B1を1mm(a)、2mm(b)及び3mm(c)にしたものを用意し、図12に示すように、第2パターン層として、透光部の幅S2を、0.3mm,0.6mm,0.9mm,1.2mm,1.5mmと、5段階のスリット群を形成したものを用意し、図13に示すように、図12に示す第2パターン層に、図11に示す各第1パターン層を夫々重ねた。これにより、視認される一方側モアレ像MA(他方側モアレ像MB)の幅Mv1(Mv2)の違いが分かる。
【0085】
実施の形態では、上記の条件を満たすように、第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を作成した。詳しくは、図1図4(c),図5(d)及び図6(a)に示すように、特定モアレ像Mを、上下及び左右に頂角を有した左右対称形状に形成され、Y軸方向に沿う中心軸Rを中心とした菱形で構成した。分担に係るモアレ像Mは、「く」の字型の一方側モアレ像MAと、逆「く」の字型の他方側モアレ像MBとから構成した。一方側モアレ像MAと他方側モアレ像MBとは、互いに鏡面対称に形成される。
【0086】
そして、図4(a)に示すように、第1パターン集合部PA1及び第2パターン集合部PA2で特定モアレ像Mの分担に係る一方側モアレ像MAを形成し、図4(b)に示すように、第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3で特定モアレ像Mの分担に係る他方側モアレ像MBを形成している。各パターン集合部PA1,PA2,PA3は、1つの透光部4で構成され若しくはY軸方向に列設された複数の透光部4で構成された所定形体の単位透光部パターン10を備えている。実施の形態では、図7(b)(d)に示すように、単位透光部パターン10は、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成した。そして、単位透光部パターン10を、X軸方向に沿って所定のピッチで規則的に列設し、各パターン集合部PA1,PA2,PA3毎に、単位透光部パターン10の形体及びそのピッチP1,P2,P3を異ならせた。
【0087】
即ち、図1図3及び図5に示すように、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターン10を、その中心線Qの一部若しくは全部が第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターン10の中心線Qに対して交差するように形成した。各単位透光部パターン10は、中心線Qのある規則的な形態で構成し、第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターン10を、図7(b)に示すように、その中心線QがY軸方向に平行になるように形成し、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターン10を、図7(d)に示すように、その中心線Qの一部若しくは全部(実施の形態では全部)がY軸方向に対して中央から折れ曲がった「くの字」になって交差するように形成した。この場合、X1=0,X3=0において、D=0では、M1,M2の大きさが同じで正負が逆になる。D>0では、M1,M2の大きさは異なるが、視点Aからは、正負が逆になり、M1,M2の大きさが同じに見えるようにすることができる。
【0088】
そして、図6に示すように、第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2,第3パターン集合部PA3を重ね、これらをX軸方向に適宜に移動させ、図6(a)に示すように、菱形を出現させるようにし、これを選択した。
【0089】
図14は、原理をわかりやすくするために、正方形の点を連設した菱形を示す(図25及び図26も参照)。この場合、菱形の下側頂点をY軸とX軸の交点に位置させた場合、Y軸方向の位置(図14中y1~y6)においては、X軸方向上に現れるモアレのM1,M2の大きさが同じで正負が逆になる。
【0090】
尚、D>0では、M1,M2の大きさは異なるが、視点Aからは、正負が逆になり、見かけ上M1,M2の大きさが同じに見える。図15に示すように、D>0の場合、視点AからZ軸方向原線GZに沿って第1パターン集合部PA1の1つの遮光部3の中心,第2パターン集合部PA2の1つの透光部4の中心,第3パターン集合部PA3の1つの遮光部3の中心を位置させると、この状態において、視点AからX軸方向の左右の位置B,Cにおいては、モアレがずれて見える。図16に示すように、図14に示す条件で作成した第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2,第3パターン集合部PA3であって、一方側モアレ像MAと他方側モアレ像MBとが互いに鏡面対称の「くの字」,「逆くの字」の場合、視点Aでは菱形に見えるが、B,Cでは、これらが互いに交差し、あるいは、離間した形状になる。
【0091】
このことは、D=0,X1=0,X3=0とし、第2パターン集合部PA2のみを適宜の位置に移動させる(X2を変える)ことと同様であることを意味する。即ち、図6に示すように、一方側モアレ像MAと他方側モアレ像MBとが互いに鏡面対称の「くの字」,「逆くの字」の場合、第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3を固定し、第2パターン集合部PA2をX軸方向にずらすと、菱形(a)をはじめ、これらが互いに交差した形状(b)(c)、X軸形状(d)、やや離間した形状(e)などの種々の形状を取る。実施の形態では、特定モアレ像Mとして、菱形(a)を選択した。
【0092】
従って、特定モアレ像Mを、互いに隣り合うパターン層の組(第1パターン集合部PA1及び第2パターン集合部PA2の組と、第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3の組)で分担して形成するので、それだけ、パターン層の一層当たりの透光部(遮光部)を単純化できるようになり、設計や加工を容易に行うことができるようになる。また、互いに隣り合うパターン層の1つの組においては、この互いに隣り合うパターン層同士により形成される分担に係るモアレ像Mがこれら同士の位置関係を変えても一義的(「くの字」若しくは「逆くの字」)になるとしても、隣り合う組同士(第1パターン集合部PA1及び第2パターン集合部PA2の組と、第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3の組)の位置関係を相対的に変えることにより、外側の1つの視点から視認されるモアレ像が特定モアレ像Mとは形状の異なるモアレ像として表出可能になる。図6に示すように、隣り合う組同士の位置関係を変えると、種々の形状のモアレ像Mを形成できるが、それらから、特定モアレ像Mとして、「菱形」を選択することができる。そして、この装飾装置Tによれば、図1図4(c)及び図5(d)に示すように、「菱形」の特定モアレ像Mを形成することができる。この結果、外側の視点が変わると、特定モアレ像Mとは形状の異なるモアレ像が視認され、あるいは、再び特定モアレ像Mが視認されることになる。そのため、多様性が増し、設計の自由度の向上を図ることができる。
【0093】
図17及び図18には本発明の別の実施の形態に係る装飾装置Tを示している。これは、遮光部3の輪郭線で区画された複数の透光部4を有した3以上のパターン層を間隔を隔てて順に重ねて配置し、この3以上のパターン層によって最も外側にあるパターン層を外側から見たとき視認される特定モアレ像Mを形成する。そして、特定モアレ像Mを、互いに隣り合うパターン層の組で分担して形成している。
【0094】
実施の形態では、パターン層は、順に、第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2,第3パターン集合部PA3の3つ設けられ、各パターン集合部PA1,PA2,PA3は天井などに設けられる支持体20に設けられている。第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3は、遮光部3を形成する紐21を支持体20に吊下して形成されている。紐21の下端には錘22が設けられている。第2パターン集合部PA2は、支持体20に、例えば、樹脂板,金属板,木板などの板材やシート材を設けたもので、板材やシート材には、例えば、レーザー加工機等で透光部4が形成されている。
【0095】
そして、第1パターン集合部PA1及び第2パターン集合部PA2で特定モアレ像Mの分担に係る一方側モアレ像MAを形成し、第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3で特定モアレ像Mの分担に係る他方側モアレ像MBを形成している。第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3は、図7(a)に示すように、1つの透光部4で構成され所定形体の単位透光部パターン10が備えられている。第2パターン集合部PA2は、図7(h)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成された所定形状の単位透光部パターン10が備えられている。各パターン集合部PA1,PA2,PA3において、単位透光部パターンは、X軸方向に沿って所定のピッチで規則的に列設され、各パターン集合部PA1,PA2,PA3毎に、単位透光部パターン10の形体及びそのピッチP1,P2,P3を異ならせている。
【0096】
また、特定モアレ像Mは、図17及び図18(d)に示すように、Y軸方向に沿う中心軸Rを中心とした線対称の円形で構成されるように、各パターン集合部PA1,PA2,PA3を配置した。ここでは、分担に係るモアレ像は、「半円」の一方側モアレ像MAと、逆「半円」の他方側モアレ像MBとから構成される。一方側モアレ像MAと他方側モアレ像MBとは、互いに鏡面対称に形成される。
【0097】
図19に示すように、特定モアレ像Mとしての円形の下側頂点をY軸とX軸の交点に位置させた場合、Y軸方向の位置を適宜設定し(図中a,a´,a´´)、この位置での、X軸方向上に現れるモアレのM1,M1´,M1´´と、これらと同じ大きさで正負が逆のM2,M2´,M2´´から、上記と同様に、これらの単位透光部パターンの変位(図19では、X2,X2´,X2´´を表記)を求めることができ、各パターン集合部PA1,PA2,PA3の単位透光部パターンの形体を定めることができる。尚、Y軸方向の位置をできるだけ多く設定すれば、それだけ、単位透光部パターンの形体の精度を上げることができる。図形によって、Y軸方向の位置は、適宜数定めてよい。
【0098】
この別の実施の形態に係る装飾装置Tによれば、第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3において、遮光部3を紐21で形成したので、板等に透光部4を開設しなくても良いことから製造が容易になる。また、紐21のピッチを変えるだけでモアレ像Mをデザイナーの趣向や用途に合わせて変更する事ができ、設計の自由度が増す。また、装置全体としても、斬新な装置となる。他の作用,効果は上記と同様である。
【0099】
図20には、パターン集合部を形成する素材の別の例を示している。これは、紐,あるいは、剛性の有る金属,プラスチック,竹材などの線材を、網状に編みこんで形成してある。線材の材質や太さなどは適宜に定めて良い。
【0100】
次に、特定モアレ像Mを形成するパターン層の実施例1~24を示す。
<実施例1>
図21に示すように、菱形の特定モアレ像Mを表出する例である(図3及び図4も参照)。この菱形の特定モアレ像Mは、上下及び左右に頂角を有した左右対称形状であり、図21に示すように、その外輪の下側頂角が原点Oを通り、Y軸の左右に跨るようにX軸-Y軸平面に配置し、このY軸を境にして、一方側モアレ像MA及び他方側モアレ像MBを規定した。そして、λ1=λ2=120mm、D=0、L=100mm、左右の頂角におけるY軸からのX座標M1,X座標M2において、M1=-50mm,M2=50mmとした。左右の頂角(a,b)の高さ寸法(Y軸の座標)を30mmとした。また、第1パターン集合部PA1の単位透光部パターン10のピッチP1を、P1=8mmとした。更に、B1=1.2mm、S2=0.5mm、B3=1.2mmとし、(式19)及び(式20)から、一方側モアレ像MAの幅Mv1を、Mv1=10.1mm、他方側モアレ像MBの幅Mv2を、Mv2=12.5mmとした。そして、Y軸方向の左右の頂角位置で、第1パターン集合部PA1における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位をX1、第2パターン集合部PA2における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位をX2、第3パターン集合部PA3における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位をX3とし、第1パターン集合部PA1の単位透光部パターン10の形体を、Y軸に平行な直線(X1=0)とした。
【0101】
先ず、(式2),(式3)により、P2=7.5mm、P3=7.06mmが求められる。次に、(式8),(式9)により、X2=-3.125mm、X3=0が求められる。菱形は直線で形成されているので、図22(a)に示すように、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターン10の形体が定まり、第3パターン集合部PA3の単位透光部パターン10の形体が定まった。また、(式6),(式7)により、d1=6.25mm、d2=5.5mmが求められる。
【0102】
図23及び図24は、実施例1に係るパターン層に関連し、座標の設定を変えた場合の特定モアレ像M,一方側モアレ像(MA)及び他方側モアレ像(MB)を示す図である。一方側モアレ像(MA)及び他方側モアレ像(MB)を左右逆にして作成した。
【0103】
<実施例2>
実施例2は、図21に示すように、実施例1と同様の菱形の特定モアレ像Mを表出する例である。設定は実施例1とほぼ同様であるが、実施例1とは、各パターン集合部の単位透光部パターン10の形体が異なっている。この実施例2においては、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターン10の形体を、Y軸に平行な直線(X2=0)とした。(式8),(式9)により、X1=3.33mm、X3=2.94mmが求められる。菱形は直線で形成されているので、図22(b)に示すように、第1パターン集合部PA1の単位透光部パターン10及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターン10の形体が定まった。
【0104】
<実施例3>
実施例3は、図21に示すように、実施例1と同様の菱形の特定モアレ像Mを表出する例である。設定は実施例1とほぼ同様であるが、実施例1とは、各パターン集合部の単位透光部パターン10の形体が異なっている。この実施例3においては、第1パターン集合部PA1の単位透光部パターン10の形体を、「くの字」形状とし、X1=-2mmとした。(式8),(式9)により、X2=-5mm、X3=-1.765mmが求められる。菱形は直線で形成されているので、図22(c)に示すように、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターン10及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターン10の形体も、同様に「くの字」形状に定まった。
【0105】
<実施例4>
図25及び図26に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、正方形の点を連設した菱形の特定モアレ像M(図26(c))を示すように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。上記実施例1と同様に、X1=0として各単位透光部パターン10の形体を定めた(詳細数値は省略する)。第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンにおいては、図7(b)に示すように、中心線Qは、Y軸方向に沿う直線で構成され、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターンにおいては、図7(f)に示すように、中心線Qは、階段状に折れ曲がっている。
【0106】
<実施例5>
図27及び図28に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、線が連続する菱形の特定モアレ像Mを示す(図3及び図4の特定モアレ像Mと同様であって、図28(c)に示す)ように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンにおいては、図7(n)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成されるが、この透光部4の幅は一定ではない。しかし、パターン層の面方向に直交する直交面においては、上述した条件を満足している。第2パターン集合部PA2の単位透光部パターンにおいては、図7(d)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線Qは、くの字状に折れ曲がっている。
【0107】
<実施例6>
図29及び図30に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、全面黒で塗りつぶされた菱形の特定モアレ像M(図30(c))を示すように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンにおいては、図7(l)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成されるが、この透光部4の幅は一定ではない。しかし、パターン層の面方向に直交する直交面においては、上述した条件を満足している。第2パターン集合部PA2の単位透光部パターンにおいては、図7(b)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線Qは、Y軸に沿う直線になっている。
【0108】
<実施例7>
図31及び図32に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、線が連続する略円形の特定モアレ像M(図32(c))を示すように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。図17乃至図19に示す例も円形であるが、これと異なって、第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンにおいては、図7(b)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成されている。第2パターン集合部PA2の単位透光部パターンにおいては、図7(h)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線Qは湾曲している。
【0109】
<実施例8>
図33及び図34に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、線が連続する略8の字形の特定モアレ像M(図34(c))を示すように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンにおいては、図7(p)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線QはS字状に湾曲している。第2パターン集合部PA2の単位透光部パターンにおいては、図7(b)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線QはY軸方向に沿う直線である。
【0110】
<実施例9>
図35図36(a),図37及び図38に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、線が連続する不等辺三角形の特定モアレ像M(図38(c))を示すように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。この例において、第1パターン集合部PA1の単位透光部パターンにおいては、図7(b)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線Qは直線である。第2パターン集合部PA2の単位透光部パターンにおいては、図7(d)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線QはY軸方向に対してくの字に傾斜した直線である。第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンにおいては、図7(j)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線Qは、下側がY軸方向に沿う直線であり、上側がY軸方向に対して傾斜した直線である。
【0111】
詳しくは、図35に示すように、不等辺三角形の特定モアレ像Mにおいて、その外輪の下側頂角が原点Oを通り、Y軸の左右に跨るようにX軸-Y軸平面に配置し、一方側モアレ像MAを右側の逆くの字の連続する2辺とし、他方側モアレ像MBを左側の一辺とした。そして、λ1=λ2=120mm、D=0、L=100mm、右の頂角(a)におけるY軸からのX座標をM1,これに対応した左側の位置(b)のX座標をM2とし、M1=30mm、M2=-30mmとした。また、上の頂角の位置(c)のX座標M1´,M2´を、夫々、M1´=M2´=-60mmとした。上の頂角の位置(c)の高さ寸法(Y軸の座標)を60mmとした。また、第1パターン集合部PA1の単位透光部パターン10のピッチP1を、P1=8mmとした。更に、B1=1.2mm、S2=0.5mm、B3=1.2mmとし、(式19)及び(式20)から、一方側モアレ像MAの幅Mv1を、Mv1=10.1mm、他方側モアレ像MBの幅Mv2を、Mv2=12.5mmとした。そして、(a,b)位置で、第1パターン集合部PA1における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位をX1、第2パターン集合部PA2における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位をX2、第3パターン集合部PA3における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位をX3とし、(c)位置で、第1パターン集合部PA1における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位をX1´、第2パターン集合部PA2における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位をX2´、第3パターン集合部PA3における単位透光部パターンの中心軸のX軸方向の変位をX3´とし、第1パターン集合部PA1の単位透光部パターン10の形体を、Y軸に平行な直線(X1=X1´=0)とした。
【0112】
先ず、(式2),(式3)により、P2=7.5mm、P3=7.06mmが求められる。次に、(式8),(式9)により、X2=1.88mm、X3=0、X2´=-3.75mm、X3´=-7.06mmが求められる。不等辺三角形は直線で形成されているので、図36(a)に示すように、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターン10の形体が定まり、第3パターン集合部PA3の単位透光部パターン10の形体が定まった。また、(式6),(式7)により、d1=6.25mm、d2=5.5mmが求められる。
【0113】
<実施例10>
実施例10は、図35に示すように、実施例9と同様の不等辺三角形の特定モアレ像Mを表出する例である。設定は実施例9とほぼ同様であるが、実施例9とは、各パターン集合部の単位透光部パターン10の形体が異なっている。この実施例10においては、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターン10の形体を、Y軸に平行な直線(X2=X2´=0)とした。(式8),(式9)により、X1=-2mm、X1´=4mm、X3´=-3.53mmが求められる。図36(b)に示すように、第1パターン集合部PA1の単位透光部パターン10及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターン10の形体が定まった。
【0114】
<実施例11>
実施例11は、図35に示すように、実施例9と同様の不等辺三角形の特定モアレ像Mを表出する例である。設定は実施例9とほぼ同様であるが、実施例9とは、各パターン集合部の単位透光部パターン10の形体が異なっている。この実施例11においては、第1パターン集合部PA1の単位透光部パターン10の形体を、傾斜直線とし、X1=-1.5mm、X1´=-3mmとした。(式8),(式9)により、X2=0.46mm、X3=-1.32mm、X2´=-6.56mm、X3´=-9.7mmが求められる。不等辺三角形は直線で形成されているので、図36(c)に示すように、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターン10及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターン10の形体が定まった。
【0115】
<実施例12>
図39図40及び図41に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、全面黒で塗りつぶされた四角形の特定モアレ像Mを示すように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。この例において、第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3の各単位透光部パターンにおいては、図7(p)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線Qは、S字の曲線になっているが、一方側モアレ像MAと他方側モアレ像MBとが、夫々四角形に形成されて互いに重畳して表出されるようにしたものである。
【0116】
<実施例13>
図42及び図43に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、実施例12と同様に、全面黒で塗りつぶされた四角形の特定モアレ像Mを示すように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。この例において、第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3の各単位透光部パターンにおいては、図7(f)に示すように、中心線Qは、階段状に折れ曲がって構成されているが、一方側モアレ像MAと他方側モアレ像MBとが、夫々四角形に形成されて互いに重畳して表出されるようにしたものである。
【0117】
ここで、第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3(格子)の形状の多彩化の考え方について述べる。
Y軸のいかなる値にも対応するX1、X2、X3の値が次の関係が成り立つ場合、どのような形状であっても(式17),(式18)からY軸のどの値もM1=0、M2=0となる。
【0118】
【数41】
【0119】
この状態での、PA1、PA2、PA3のX軸の変位をそれぞれX1i、X2i、X3iとし、それとは別のモアレ像である(図22),(図24)などのPA1、PA2、PA3のX軸の変位をX1j、X2j、X3jとして、それぞれのXの変位の和をX1k、X2k、X3kとすると次の(式22)となる。
【0120】
【数42】
【0121】
(式22)の意味は、PA1、PA2、PA3のX軸の変位がX1i、X2i、X3iであるときのモアレ像はY軸のどの値でもM1=0,M2=0であるので、PA1、PA2、PA3のX軸変位がX1j、X2j、X3jであるモアレ像と、X軸変位がX1k、X2k、X3kのモアレ像の中心線は同一になるということを意味している。
【0122】
このように、一見規則性があまり感じられなくても(式21)を満たすX軸変位の形状の格子と、モアレと模様を表すためのより簡略な形状の格子のX軸変位の和と考えてモアレ模様を製作することができる。
【0123】
<実施例14>
図44図45及び図46に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、実施例4と同様に、正方形の点を連設した菱形の特定モアレ像M(図46(c))を示すように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンにおいては、図7(f)に示すように、中心線Qは、階段状に折れ曲がって構成されている。
【0124】
<実施例15>
図47及び図48に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、線が連続する菱形の特定モアレ像Mを示す(図3及び図4の特定モアレ像Mと同様であって、図48(c)に示す)ように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンにおいては、図7(f)に示すように、中心線Qは、階段状に折れ曲がって構成されている。第2パターン集合部PA2の単位透光部パターンにおいては、図7(d)に示すように、中心線Qは、「くの字」形状に折れ曲がって構成されている。
【0125】
<実施例16>
図49図50及び図51に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、線が連続する菱形の特定モアレ像Mを示す(図3及び図4の特定モアレ像Mと同様であって、図51(c)に示す)ように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンにおいては、図7(p)に示すように、中心線Qは、S字状に折れ曲がって構成されている。
【0126】
<実施例17>
図52図53及び図54に示すように、上記の実施例9乃至11と同様に、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、線が連続する不等辺三角形の特定モアレ像M(図54(c))を示すように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。上記と異なって、この例において、第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3の各単位透光部パターンにおいては、図7(p)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線Qは、S字の曲線になっている。
【0127】
<実施例18>
図55乃至図57図58及び図59に示すように、実施の形態(図3及び図4)の変形例であり、第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3のピッチを小さくするとともに、特定モアレ像Mとして、図6(c)に示すように、くの字が交差したモアレ像を選択したものである。そのため、菱形が多数交差して表出される。
【0128】
<実施例19>
図60及び図61に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、線が連続する略円形の特定モアレ像M(a)とこの略円形を囲繞する菱形の特定モアレ像M(b)を示す(図61(c))ように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。即ち、この例は、各パターン層に、異なる形体の特定モアレ像を形成する複数種(本例では2種)のパターン集合部を設けた例である。即ち、第1パターン集合部PA1(a),第2パターン集合部PA2(a)及び第3パターン集合部PA3(a)を設けるとともに、第1パターン集合部PA1(b),第2パターン集合部PA2(b)及び第3パターン集合部PA3(b)を設けている。第2パターン集合部PA2(a)の単位透光部パターンと第2パターン集合部PA2(b)の単位透光部パターンは共用されている。
【0129】
<実施例20>
図62及び図63に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、線が連続するハート形の特定モアレ像Mを示す(図63(c))ように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。即ち、この例も、実施例19と同様に、各パターン層に、異なる形体の特定モアレ像を形成する複数種(本例では2種)のパターン集合部を設けた例である。即ち、第1パターン集合部PA1(a),第2パターン集合部PA2(a)及び第3パターン集合部PA3(a)を設けるとともに、第1パターン集合部PA1(b),第2パターン集合部PA2(b)及び第3パターン集合部PA3(b)を設けている。第2パターン集合部PA2(a)の単位透光部パターンと第2パターン集合部PA2(b)の単位透光部パターンは共用されている。詳しくは、この例において、第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンにおいては、図7(b)に示すY軸に平行な中心軸Qを有して列設された複数の透光部4と、図7(d)の上側部分に示すY軸に傾斜した中心軸Qを有して列設された複数の透光部4との2種の単位透光部パターンで構成されている。第2パターン集合部PA2の単位透光部パターンにおいては、図7(h)に示すように、Y軸方向に弓型形状の中心軸Qを有して列設された複数の透光部4で構成されている。
【0130】
このように、PA2を共通として、2組のモアレ模様の製作が可能である。
その場合、以下の条件が必要である。
格子の遮光部、透光部の幅に関する条件
0.6S2<B1a<0.8S3a,0.8S3b
コンマ( , )はかつという意味とした。
0.6S2<B1b<0.8S3a,0.8S3b
0.6S2<B3a<0.8S1a,0.8S1b
0.6S2<B3b<0.8S1a,0.8S1b
【0131】
座標計算
PA1にX1a、X1bと2つの変位、PA2にX2、PA3にX3a、X3bの2つの変位とし、生じるモアレをMA(a)、MA(b)、MB(a)、MB(b)としてその座標をM1(a)、M1(b)、M2(a)、M2(b)とする。
【0132】
変位X1a、X2、X3aによりモアレMA(a)、MB(a)が生じ、座標をM1(a)、M2(a)、変位X1b、X2、X3bによりモアレMA(b)、MB(b)が生じ、座標をM1(b)、M2(b)、両方とも(式17),(式18)のX1、X2、X3、M1、M2から置き換えて計算する。
【0133】
<実施例21>
図64及び図65に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、4葉のクローバ形の特定モアレ像Mを示す(図65(c))ように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。即ち、この例において、第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンにおいては、図7(b)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線Qは直線のものにし、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターンにおいては、図7(d)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線Qをくの字形状にしたもので、更に、第2パターン集合部PA3の単位透光部パターンに変形を加えたものである。この例においては、(式19)及び(式20)により、モアレ幅Mv1、Mv2はS2、B1、B3の値の互いの関係により増減したり視認できなくするようにしたもので、ここでは、B1,B2の値を一定とし、Y値に対応するS2の値を葉の末端や根本に接近するにしたがい徐々に拡げてMv1、Mv2の値を徐々に小さくし、葉の最末端に相当するS2の値をB1,B3の3倍にとりモアレを視認できなくするようにして作成している。
【0134】
<実施例22>
図66及び図67に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、魚形の特定モアレ像Mを示す(図67(c))ように第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成している。即ち、この例において、第1パターン集合部PA1及び第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンにおいては、図7(b)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線Qは直線のものにし、第2パターン集合部PA2の単位透光部パターンにおいては、図7(h)に示すように、Y軸方向に列設された複数の透光部4で構成され、中心線Qを弓形状にしたもので、更に、第3パターン集合部PA3の単位透光部パターンに変形を加えたものである。即ち、魚形の尾の部分については、第3パターン層W3に、図7(d)に示す中心線Qをくの字形状にした単位透光部パターンを加えている。
【0135】
<実施例23>
図68及び図69に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、下側の海藻とその上を泳ぐ魚の特定モアレ像Mを示す(図69(c))ように形成されている。本例においては、第1パターン層W1及び第3パターン層W3は、透明シートに遮光部を印刷して構成されている。また、第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3は、複数種類設けられている。原理は上記と同様である。
【0136】
<実施例24>
図70及び図71に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2及び第3パターン層W3は、上側の波型模様とその下を走る犬の特定モアレ像Mを示す(図71(c))ように形成されている。本例においては、実施例23と同様に、第1パターン層W1及び第3パターン層W3は、透明シートに遮光部を印刷して構成されている。また、第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3は、複数種類設けられている。原理は上記と同様である。
【0137】
<試験例>
次に試験例を示す。この試験例は、図3及び図4に示す菱形の特定モアレ像Mを形成するパターン層W1,W2,W3と同様であり、図72に示すように、第1パターン層W1,第2パターン層W2,第3パターン層W3を、夫々、厚さ0.15mmの黒色の紙で構成し、これらに、レーザー加工機により、透光部4を形成して、第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3を形成した。そして、厚さ5mmのアクリル板を2枚用意し、一方のアクリル板の表面に第1パターン層W1を貼付し、他方のアクリル板の裏面に第3パターン層W3を貼付し、一方のアクリル板の裏面と他方のアクリル板の表面との間に第2パターン層W2を挾持した試験体を作成した。
【0138】
この試験体においては、図72及び図73に示すように、B1<S3,B3<S1,P1>P2>P3の条件化で、第1パターン集合部PA1において、B1=1.0mm、S1=7.34mmとした第1パターン層W2を作成し、第3パターン集合部PA3において、B3=1.0mm、S3=6.61mmとした第3パターン層W3を作成した。そして、第2パターン集合部PA2において、S2=1.96mm,1.76mm,1.56mm,1.36mm,1.16mm,0.96mm,0.76mm,0.56mmの第2パターン層W2を作成し、これらと、上記の第1パターン層W2と第3パターン層W3とを組合せた試験体1~8を作成した。これらの試験体1~8について、菱形の特定モアレ像Mの形成状態をみた。結果を図74に示す。この結果から、S2<B1,S2<B3の試験体6,7,8が、明瞭な特定モアレ像Mを形成することが分かった。よって、条件は、S2<B1<S3,S2<B3<S1,P1>P2>P3にすることが望ましい。
【0139】
尚、上記実施の形態においては、特定モアレ像Mの形状は上述したものに限定されるものではなく、例えば、星形、ハート形、花形、雲形、楕円形、三角形、多角形等の適宜の形状に形成して良い。図75には、他の特定モアレ像Mのいくつかの例を挙げる。図75(a)は、上述した図60及び図61のモアレ像と同様の作成に係り、線が連続する菱形の特定モアレ像M(a)とこの菱形を囲繞する線が中央で非連続の菱形の特定モアレ像M(b)との2種の特定モアレ像を形成する例である。図75(b)は、線が連続する円形の特定モアレ像M(a)と線が連続する菱形の特定モアレ像M(b)との2種の特定モアレ像を並設して形成する例である。
【0140】
図75(c)は、中実の楕円を左右線対称にした特定モアレ像Mを形成する例である。図75(d)は、左右線非対称の矩形の特定モアレ像M形成する例である。要するに、本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0141】
T 装飾装置
1 本体
2 脚部
3 遮光部
4 透光部
W1 第1パターン層
W2 第2パターン層
W3 第3パターン層
M 特定モアレ像
MA 一方側モアレ像
MB 他方側モアレ像
10 単位透光部パターン
PA1 第1パターン集合部
PA2 第2パターン集合部
PA3 第3パターン集合部
S1,S2,S3 透光部4の幅
B1,B2,B3 遮光部3の幅
Q 中心線
R 中心軸
20 支持体
21 紐
22 錘
【要約】
【課題】 パターン層の一層当たりの透光部(遮光部)をできるだけ単純化できるようにし、設計や加工を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】 遮光部3の輪郭線で区画された複数の透光部4を有した第1パターン集合部PA1,第2パターン集合部PA2,第3パターン集合部PA3を間隔を隔てて順に重ねて配置し、最も外側にあるパターン層を外側から見たとき視認される1つの塊として特定されるモアレ像を特定モアレ像Mとし、この特定モアレ像Mを互いに隣り合うパターン層の組で分担して形成する。第1パターン集合部PA1及び第2パターン集合部PA2で特定モアレ像Mの分担に係る一方側モアレ像MAを形成し、第2パターン集合部PA2及び第3パターン集合部PA3で特定モアレ像Mの分担に係る他方側モアレ像MBを形成する。
【選択図】図1
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