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特許7053087移動体挙動情報取得方法、移動体挙動情報取得装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】移動体挙動情報取得方法、移動体挙動情報取得装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/00 20060101AFI20220405BHJP
   G01P 15/16 20130101ALI20220405BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20220405BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20220405BHJP
   B60W 40/12 20120101ALI20220405BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G01P15/00 A
G01P15/16
G01P15/18
B60W40/06
B60W40/12
G08G1/00 D
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022507368
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2021034796
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2020183038
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021142298
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514235341
【氏名又は名称】株式会社スマートドライブ
(72)【発明者】
【氏名】元垣内 広毅
(72)【発明者】
【氏名】神田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小畑 良樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 良
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/075825(WO,A1)
【文献】特開2019-121225(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108357498(CN,A)
【文献】特表2017-523382(JP,A)
【文献】特開2016-85105(JP,A)
【文献】国際公開第2015/162873(WO,A1)
【文献】特開2000-346661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-21/02
B60W30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPSに基づいて、移動体の位置情報を取得することと、
前記取得された位置情報に基づいて、前記移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得することと、
前記取得した速度の観測値を対応する第1の時間情報と紐づけて記憶することと、
速度の状態値の単位時間あたりの変位が進行方向における加速度の値であり、
前記速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であり、
前記進行方向における加速度の値の単位時間あたりの変位は、第2の分布に従う、
とする第1状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記第1の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の進行方向における加速度の値を取得することと、
を含む、移動体挙動情報取得方法。
【請求項2】
前記第1の分布の平均値及び前記第2の分布の平均値の少なくとも1つは、0である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の分布及び前記第2の分布の少なくとも1つは、ガウス分布である、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記位置情報を取得することは、当該位置情報の精度値を取得することを含み、
前記速度の観測値を取得することは、対応する前記位置情報の精度値が所定の条件を満たす場合に行われる、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記位置情報の取得は、20Hz以上または2Hz以下の周波数に基づいて行われる、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記移動体の性能、道路状況、及び、前記移動体における積載量の少なくとも1つを取得することと、
前記取得した移動体の性能、道路状況、及び、前記移動体における積載量の少なくとも1つに基づいて、前記位置情報の取得の間隔を変更することと、
を更に含む、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記進行方向における加速度の値を取得することは、前記速度の状態値を取得することを含む、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
GPSに基づいて、移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記取得された位置情報に基づいて、移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得する速度観測値取得部と、
前記取得した速度の観測値を対応する第1の時間情報と紐づけて記憶する記憶部と、
速度の状態値の単位時間あたりの変位が進行方向における加速度の値であり、
前記速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であり、
前記進行方向における加速度の値の単位時間あたりの変位は、第2の分布に従う、
とする第1状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記第1の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の進行方向における加速度の値を取得する、進行方向加速度取得部と、
を備える、移動体挙動情報取得装置。
【請求項9】
コンピュータに、
GPSに基づいて、移動体の位置情報を取得することと、
前記取得された位置情報に基づいて、移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得することと、
前記取得した速度の観測値を対応する第1の時間情報と紐づけて記憶することと、
速度の状態値の単位時間あたりの変位が進行方向における加速度の値であり、
前記速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であり、
前記進行方向における加速度の値の単位時間あたりの変位は、第2の分布に従う、
とする第1状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記第1の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の進行方向における加速度の値を取得することと、
を実行させる、プログラム。
【請求項10】
GPSに基づいて、移動体の位置情報を取得することと、
前記取得された位置情報に基づいて、前記移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得することと、
前記取得した速度の観測値を対応する第1の時間情報と紐づけて記憶することと、
第1層は、速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であるとする関係を示す方程式であって、
第2層は、第1層における前記速度の状態値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
第k+1層は、第k層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
nは3以上の所定の自然数であり、
kは2以上前記n未満の自然数であり、
第n+1層は、第n層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位が第5の分布に従うことを示す方程式である、
とする第2状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記第1の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の進行方向における加速度の値を取得することと、
を含む、移動体挙動情報取得方法。
【請求項11】
GPSに基づいて、移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記取得された位置情報に基づいて、移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得する速度観測値取得部と、
前記取得した速度の観測値を対応する第1時間情報と紐づけて記憶する記憶部と、
第1層は、速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であるとする関係を示す方程式であって、
第2層は、第1層における前記速度の状態値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
第k+1層は、第k層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
nは3以上の所定の自然数であり、
kは2以上前記n未満の自然数であり、
第n+1層は、第n層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位が第5の分布に従うことを示す方程式である、
とする第2状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記第1の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の進行方向における加速度の値を取得する、進行方向加速度取得部と、
を備える、移動体挙動情報取得装置。
【請求項12】
コンピュータに、
GPSに基づいて、移動体の位置情報を取得することと、
前記取得された位置情報に基づいて、移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得することと、
前記取得した速度の観測値を対応する第1の時間情報と紐づけて記憶することと、
第1層は、速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であるとする関係を示す方程式であって、
第2層は、第1層における前記速度の状態値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
第k+1層は、第k層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
nは3以上の所定の自然数であり、
kは2以上前記n未満の自然数であり、
第n+1層は、第n層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位が第5の分布に従うことを示す方程式である、
とする第2状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記第1の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の進行方向における加速度の値を取得することと、
を実行させる、プログラム。
【請求項13】
移動体の速度値を取得することと、
前記移動体の方位角の観測値を第3の間隔に基づいて取得することと、
前記取得した方位角の観測値を対応する第2の時間情報と紐づけて記憶することと、
方位角の状態値の単位時間あたりの変位が角速度の値であり、
前記方位角の状態値に、第3の分布に従い発生する値を加えたものが前記方位角の観測値であり、
前記角速度の値の単位時間あたりの変位は、第4の分布に従う、
とする第3状態空間モデルに対して、前記方位角の観測値を対応する前記第2の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の角速度の値を取得することと、
前記取得した速度値を、前記取得した角速度の値に基づいて垂直方向に射影することで、または、前記取得した速度値と、前記取得した角速度の値との積によって、前記移動体の前記垂直方向における加速度の値を取得することと、
を含む、移動体挙動情報取得方法。
【請求項14】
移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得することと、
前記取得した速度の観測値を対応する第1の時間情報と紐づけて記憶することと、
速度の状態値の単位時間あたりの変位が進行方向における加速度の値であり、
前記速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であり、
前記進行方向における加速度の値の単位時間あたりの変位は、第2の分布に従う、
とする第1状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記第1の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の速度の状態値を取得することと、
前記移動体の角速度の値を取得することと、
前記取得した速度の状態値を、前記取得した角速度の値に基づいて垂直方向に射影することで、または、前記取得した速度の状態値と、前記取得した角速度の値との積によって、前記移動体の前記垂直方向における加速度の値を取得することと、
を含む、移動体挙動情報取得方法。
【請求項15】
移動体の速度値を取得する速度値取得部と、
前記移動体の方位角の観測値を第3の間隔に基づいて取得する方位角観測値取得部と、
前記取得した方位角の観測値を対応する第2の時間情報と紐づけて記憶する記憶部と、
方位角の状態値の単位時間あたりの変位が角速度の値であり、
前記方位角の状態値に、第3の分布に従い発生する値を加えたものが前記方位角の観測値であり、
前記角速度の値の単位時間あたりの変位は、第4の分布に従う、
とする第3状態空間モデルに対して、前記方位角の観測値を対応する前記第2の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の角速度の値を取得する移動体角速度取得部と、
前記取得した速度値を、前記取得した角速度の値に基づいて垂直方向に射影することで、または、前記取得した速度値と、前記取得した角速度の値との積によって、前記移動体の前記垂直方向における加速度の値を取得する垂直方向加速度取得部と、
を備える、移動体挙動情報取得装置。
【請求項16】
移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得する速度観測値取得部と、
前記取得した速度の観測値を対応する第1の時間情報と紐づけて記憶する記憶部と、
速度の状態値の単位時間あたりの変位が進行方向における加速度の値であり、
前記速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であり、
前記進行方向における加速度の値の単位時間あたりの変位は、第2の分布に従う、
とする第1状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記第1の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の速度の状態値を取得する速度状態値取得部と、
前記移動体の角速度の値を取得する角速度取得部と、
前記取得した速度の状態値を、前記取得した角速度の値に基づいて垂直方向に射影することで、または、前記取得した速度の状態値と、前記取得した角速度の値との積によって、前記移動体の前記垂直方向における加速度の値を取得する垂直方向加速度取得部と、
を備える、移動体挙動情報取得装置。
【請求項17】
コンピュータに、
移動体の速度値を取得することと、
前記移動体の方位角の観測値を第3の間隔に基づいて取得することと、
前記取得した方位角の観測値を対応する第2の時間情報と紐づけて記憶することと、
方位角の状態値の単位時間あたりの変位が角速度の値であり、
前記方位角の状態値に、第3の分布に従い発生する値を加えたものが前記方位角の観測値であり、
前記角速度の値の単位時間あたりの変位は、第4の分布に従う、
とする第3状態空間モデルに対して、前記方位角の観測値を対応する前記第2の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の角速度の値を取得することと、
前記取得した速度値を、前記取得した角速度の値に基づいて垂直方向に射影することで、または、前記取得した速度値と、前記取得した角速度の値との積によって、前記移動体の前記垂直方向における加速度の値を取得することと、
を実行させる、プログラム。
【請求項18】
コンピュータに、
移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得することと、
前記取得した速度の観測値を対応する第1の時間情報と紐づけて記憶することと、
速度の状態値の単位時間あたりの変位が進行方向における加速度の値であり、
前記速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であり、
前記進行方向における加速度の値の単位時間あたりの変位は、第2の分布に従う、
とする第1状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記第1の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の速度の状態値を取得することと、
前記移動体の角速度の値を取得することと、
前記取得した速度の状態値を、前記取得した角速度の値に基づいて垂直方向に射影することで、または、前記取得した速度の状態値と、前記取得した角速度の値との積によって、前記移動体の前記垂直方向における加速度の値を取得することと、
を実行させる、プログラム。
【請求項19】
移動体の速度値を取得することと、
前記移動体の方位角の観測値を第3の間隔に基づいて取得することと、
前記取得した方位角の観測値を対応する第2の時間情報と紐づけて記憶することと、
第1層は、方位角の状態値に、第3の分布に従い発生する値を加えたものが前記方位角の観測値であるとする関係を示す方程式であって、
第2層は、第1層における前記方位角の状態値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
第l+1層は、第l層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
mは3以上の所定の自然数であり、
lは2以上前記m未満の自然数であり、
第m+1層は、第m層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位が第6の分布に従うことを示す方程式である、
とする第4状態空間モデルに対し、前記方位角の観測値を対応する前記第2の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の角速度の値を取得することと、
前記取得した速度値を、前記取得した角速度の値に基づいて垂直方向に射影することで、または、前記取得した速度値と、前記取得した角速度の値との積によって、前記移動体の前記垂直方向における加速度の値を取得することと、
を含む、移動体挙動情報取得方法。
【請求項20】
移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得することと、
前記取得した速度の観測値を対応する第1の時間情報と紐づけて記憶することと、
第1層は、速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であるとする関係を示す方程式であって、
第2層は、第1層における前記速度の状態値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
第k+1層は、第k層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
nは3以上の所定の自然数であり、
kは2以上前記n未満の自然数であり、
第n+1層は、第n層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位が第5の分布に従うことを示す方程式である、
とする第2状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記第1の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の速度の状態値を取得することと、
前記移動体の角速度の値を取得することと、
前記取得した速度の状態値を、前記取得した角速度の値に基づいて垂直方向に射影することで、または、前記取得した速度の状態値と、前記取得した角速度の値との積によって、前記移動体の前記垂直方向における加速度の値を取得することと、
を含む、移動体挙動情報取得方法。
【請求項21】
移動体の速度値を取得する速度値取得部と、
前記移動体の方位角の観測値を第3の間隔に基づいて取得する方位角観測値取得部と、
前記取得した方位角の観測値を対応する第2の時間情報と紐づけて記憶する方位角観測値記憶部と、
第1層は、方位角の状態値に、第3の分布に従い発生する値を加えたものが前記方位角の観測値であるとする関係を示す方程式であって、
第2層は、第1層における前記方位角の状態値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
第l+1層は、第l層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
mは3以上の所定の自然数であり、
lは2以上前記m未満の自然数であり、
第m+1層は、第m層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位が第6の分布に従うことを示す方程式である、
とする第4状態空間モデルに対し、前記方位角の観測値を対応する前記第2の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の角速度の値を取得する、角速度取得部と、
前記取得した速度値を、前記取得した角速度の値に基づいて垂直方向に射影することで、または、前記取得した速度値と、前記取得した角速度の値との積によって、前記移動体の前記垂直方向における加速度の値を取得する垂直方向加速度取得部と、
を備える、移動体挙動情報取得装置。
【請求項22】
移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得する速度観測値取得部と、
前記取得した速度の観測値を対応する第1の時間情報と紐づけて記憶する記憶部と、
第1層は、速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であるとする関係を示す方程式であって、
第2層は、第1層における前記速度の状態値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
第k+1層は、第k層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
nは3以上の所定の自然数であり、
kは2以上前記n未満の自然数であり、
第n+1層は、第n層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位が第5の分布に従うことを示す方程式である、
とする第2状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記第1の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の速度の状態値を取得する速度状態値取得部と、
前記移動体の角速度の値を取得する角速度取得部と、
前記取得した速度の状態値を、前記取得した角速度の値に基づいて垂直方向に射影することで、または、前記取得した速度の状態値と、前記取得した角速度の値との積によって、前記移動体の前記垂直方向における加速度の値を取得する垂直方向加速度取得部と、
を備える、移動体挙動情報取得装置。
【請求項23】
コンピュータに、
移動体の速度値を取得することと、
前記移動体の方位角の観測値を第3の間隔に基づいて取得することと、
前記取得した方位角の観測値を対応する第2の時間情報と紐づけて記憶することと、
第1層は、方位角の状態値に、第3の分布に従い発生する値を加えたものが前記方位角の観測値であるとする関係を示す方程式であって、
第2層は、第1層における前記方位角の状態値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
第l+1層は、第l層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
mは3以上の所定の自然数であり、
lは2以上前記m未満の自然数であり、
第m+1層は、第m層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位が第6の分布に従うことを示す方程式である、
とする第4状態空間モデルに対し、前記方位角の観測値を対応する前記第2の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の角速度の値を取得することと、
前記取得した速度値を、前記取得した角速度の値に基づいて垂直方向に射影することで、または、前記取得した速度値と、前記取得した角速度の値との積によって、前記移動体の前記垂直方向における加速度の値を取得することと、
を実行させる、プログラム。
【請求項24】
コンピュータに、
移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得することと、
前記取得した速度の観測値を対応する第1の時間情報と紐づけて記憶することと、
第1層は、速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であるとする関係を示す方程式であって、
第2層は、第1層における前記速度の状態値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
第k+1層は、第k層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位の関係を示す方程式であって、
nは3以上の所定の自然数であり、
kは2以上前記n未満の自然数であり、
第n+1層は、第n層における前記単位時間あたりの変位の値の単位時間あたりの変位が第5の分布に従うことを示す方程式である、
とする第2状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記第1の時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の速度の状態値を取得することと、
前記移動体の角速度の値を取得することと、
前記取得した速度の状態値を、前記取得した角速度の値に基づいて垂直方向に射影することで、または、前記取得した速度の状態値と、前記取得した角速度の値との積によって、前記移動体の前記垂直方向における加速度の値を取得することと、
を実行させる、プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の挙動に関する情報を取得する情報処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが利用する移動体(例えば、自動車、自転車、船舶等の機器のほか、概念としては徒歩も含みうる)についての情報、例えば、加速度、速度、角速度等を取得したい、また、これらの情報を何らかの分析に用いたいという需要がある。例えば、これら情報に基づいて運転評価をしたいという社会的需要があり、特許文献1には、車両に設置された各種センサ類からカーナビゲーション装置を介して収集された車両の挙動データとして、加速度に関する時系列情報を元に統計情報を生成する運転診断システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-243856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動体に設置された加速度センサから移動体の挙動に関するデータを取得しようとする場合、いくつかの問題がある。一つは、移動体の進行方向を常に正しく認識することが困難であることが挙げられる。進行方向認識のための一手法として、加速度値が実質0である静止状態から加速度値が一定値以上となる動作状態に遷移したことを契機に、その加速度が発生した方向を探知し、進行方向とする方法が挙げられる。しかしながら、この場合、バックで始動したり、ハンドルを切りつつ始動したりといったケースが発生しうるため、進行方向を常に正しく認識することができるとは限らないという問題があった。
【0005】
別の課題として、二輪車などの移動体においては、信号待ちなどの停止時において、運転者の片足を接地する必要があり、自然、車体が傾いた状態となってしまう。したがって、移動体に設けられたセンサ(加速度センサ等)における停止時の垂直方向と運転時の垂直方向とが対応せず、正確な垂直方向の判定が困難であり、対応して水平方向における加速度等の測定が困難であった。
【0006】
さらに別の課題として、移動体において各情報を取得するにあたっては、ノイズなどの影響を受けることにより、正確な値を取得することが困難であった。したがって、取得した値をそのまま分析に用いると、分析結果を適切に得ることができない恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、移動体挙動情報取得方法は、移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得することと、前記取得した速度の観測値を対応する時間情報と紐づけて記憶することと、速度の状態値の単位時間あたりの変位が進行方向における加速度の値であり、前記速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であり、前記進行方向における加速度の値の単位時間あたりの変位は、第2の分布に従う、とする状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の進行方向における加速度の値を取得することと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る方法によれば、移動体の挙動に関する情報を適切に取得できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一の実施形態における移動体挙動情報取得システムのシステム構成図である。
図2】第一の実施形態における情報処理装置100の概略構成を説明するブロック図である。
図3】第一の実施形態におけるサーバ200の概略構成を説明するブロック図である。
図4】第一の実施形態における速度及び方位角の観測値の取得、並びにそれら観測値の格納の手順例を示すフローチャートである。
図5】第一の実施形態における時刻tにおける移動体1の進行方向における加速度の値、角速度の値、及び、垂直方向における加速度の値を取得する処理の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態の一例について図面を参照して説明する。
なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
また、これらの実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらに限定する趣旨のものではない。
【0011】
また、本発明に係る以下説明において、「状態値」「観測値」という語句を用いるが、これらは以下を意味する。
「状態値」…移動体の挙動に関する各情報(例えば、速度)における、何らかの状態に対応する真の値である。通常、ノイズなどの影響により外部からは正しい値を取得することが困難な性質を持つ。
「観測値」…前記何らかの状態を外部から取得しようとして得られる値である。さらに、ノイズなどの影響を考慮せずに、これら観測値に基づいて算出された何らかの値(例えば、位置情報の観測値に基づいて、ノイズ等を考慮せずに算出した速度の値)である。
【0012】
[第一の実施形態]
以下、本発明の情報処理技術を実現するための第一の実施形態について説明する。
第一の実施形態に記載の内容は、他の各実施形態や各実施例、他の各変形例のいずれにも適用可能である。
【0013】
図1は、第一の実施形態の一態様に係る移動体挙動情報取得システムのシステム構成図である。本システムでは、移動体1の乗車者が携帯する情報処理装置100が備える位置情報取得部110によって、移動体1の位置情報の観測値が収集され、サーバ200に送信される。サーバ200においては、送信された位置情報の観測値に基づいて移動体1の挙動に関する情報、例えば、速度の状態値、進行方向における加速度の値、角速度の値、及び垂直方向における加速度の値が取得される。
【0014】
図2は、図1の情報処理装置100の機能構成を示すブロック図である。情報処理装置100は、例として、スマートフォンやタブレット等の携帯端末であることを前提として説明するが、これら携帯可能なものに限定されない。例えば、移動体1に乗車する運転者や非運転者が携帯するものではなく、カーナビゲーション装置やドライブレコーダ装置等の移動体に据え付けられた装置であってもよい。情報処理装置100は、図2に示すように、例えば、位置情報取得部110と、通信部120と、表示部130と、及び記憶部140とを備えるものであり、これらは、例えば、情報処理装置100が備える不図示の処理部(処理装置)や制御部(制御装置)が有する機能部(機能ブロック)であり、CPU等のプロセッサーやASIC等の集積回路を有して構成される。
【0015】
位置情報取得部110は、例えば、GNSS衛星(例えばGPS衛星)から到来する電波に基づいて情報処理装置100の位置情報(例えば、緯度経度情報)の観測値を時系列的に取得する。この位置情報の観測値の取得は、所定時間間隔(例えば、1秒ごと)で行われることが好ましい。すなわち、情報処理装置100を携帯する人物の位置情報の観測値を取得することができる。転じて、情報処理装置100の携帯者が移動体1を利用することで、実質的に移動体1の位置情報の観測値を取得することができる。取得された位置情報の観測値は、当該位置情報を取得した時刻(現在時刻)と紐付けられて、記憶部140に格納される。
ここで、位置情報取得部110は、GPSによる位置情報の観測値を取得すると共に、その位置情報の精度を示す精度値(例えば、5m、10m、100mといった位置精度、DOP値等)を取得することとしてもよい。この場合、取得された位置情報の観測値及び精度値が現在時刻と紐付けられて、記憶部140に格納される。
【0016】
なお、位置情報取得部110による位置情報の観測値の取得方式は、上記のものに限られず、任意の位置情報取得方式を適用してよい。例えば、道路脇に設置された路側機により発せられる当該路側機に固有の位置情報を含んだ電波を、情報処理装置100を搭載した移動体1が近接した際に位置情報取得部110が受信することで、情報処理装置100の位置情報の観測値を取得することとしてもよい。
【0017】
通信部120は、インターネット等のネットワークNWと通信可能に構成される。通信方式としては、イーサネットやUSB(Universal Serial Bus)等所定の通信規格に準拠したケーブルを介して有線接続する形式や、Wi-Fi(登録商標)や5G(第5世代移動通信システム)等所定の通信規格に準拠した無線通信技術を用いて無線接続する形式、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を利用して接続する形式等、種々の方式を適用可能である。
また、通信部120による通信は上記のものに特に限られない。例えば、通信部120が道路脇に設置された路側機に対して情報の送受信を行い、その路側機がネットワークNWを通じて外部に情報の送受信を行うことで、間接的にサーバ200等と通信を行うこととしてもよい。
【0018】
通信部120は、外部から受信したデータを記憶部140に記憶するとともに、記憶部140に記憶された位置情報の観測値等のデータをネットワークNW経由で外部(例えばサーバ200)に送信する。
【0019】
表示部130は、LCD(Liquid Crystal Display)やOELD(Organic Electro-Luminescence Display)等を有して構成される表示装置であり、記憶部140に記憶された情報等にしたがって、不図示の制御部から出力される表示信号に基づいた各種の表示を行う。
なお、表示部130と一体的に構成された不図示のタッチパネルを有し、このタッチパネルは、ユーザと情報処理装置100との間の入力インターフェースとして機能するようにしてもよい。
【0020】
記憶部140は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含み、情報処理装置100が処理する各種データ、制御プログラム等を記憶するほか、位置情報取得部110及び時計部150によって出力された時間情報に紐づけられた位置情報の観測値や、その他の機能部により出力された情報を記憶し蓄積する。なお、記憶部140は、情報処理装置100に内蔵されるものに限らず、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置でもよい。
【0021】
時計部150は、情報処理装置100の内蔵時計であり、例えば、水晶発振器を利用したクロックに基づいて取得した時間情報(計時情報)を出力する。なお、時計部150は、NITZ(Network Identity and Time Zone)規格等に準じて、通信部120とネットワークNWとを介して時刻情報を取得するようにしてもよい。
【0022】
サーバ200は、情報処理装置100から送信された位置情報の観測値等に基づいて様々な処理を行う。サーバ200により行われる処理として、例えば、位置情報の観測値に基づいて速度の観測値を取得する処理、位置情報の観測値に基づいて方位角の観測値を取得する処理、速度の観測値から進行方向における加速度の値を取得する処理、速度の観測値から速度の状態値を取得する処理、方位角の観測値から角速度の値を取得する処理、速度の状態値と角速度の値から垂直方向における加速度の値を取得する処理、などが挙げられる。これらの処理の詳細については後述する。
【0023】
図3は、サーバ200の機能構成を示すブロック図である。サーバ200は、例えば単一のサーバとして、あるいは機能ごとに別々のサーバから構成される分散サーバとして構成される。クラウドサーバと呼ばれるクラウド環境に作られた分散型の仮想サーバとしてサーバ200を構成することもできる。
サーバ200は、図3に示すように、例えば、速度取得部220と、方位角取得部230と、記憶部240と、速度および進行方向加速度取得部250と、角速度取得部260と、垂直方向加速度取得部270と、運転評価部280等を備えて構成される。これらは、例えば、サーバ200が備える不図示の処理部(処理装置)や制御部(制御装置)が有する機能部(機能ブロック)であり、CPU等のプロセッサーやASIC等の集積回路を有して構成される。
【0024】
速度取得部220は、記憶部240に格納されている、情報処理装置100の位置情報取得部110によって取得され送信されてきた位置情報の観測値について、ある時刻(以降、時刻tとする)における位置情報の観測値と、時刻tから加速度情報を取得する周期(以下、「加速度情報取得周期」という。なお、説明の便宜上、時刻tから加速度情報取得周期を1サイクル回した時刻をt+1とし、以降、t+2、t+3、…とする)において所定数のサイクル(例えば、1サイクル)前の時刻に取得した過去の位置情報の観測値の2つの位置情報の観測値を取得し、その2点間における移動体1の時刻tにおける速度の観測値を取得する。取得された速度の観測値は、時刻tと紐づけられて記憶部240に記憶される。
【0025】
なお、本実施形態における「速度」とは、移動体1の進行方向における速度の大きさであり、その垂直方向は考慮不要であることから、二次元情報としては保持しないものとする。後述する方位角情報と合わせることにより、速度の大きさ及び方向が把握可能となる。
【0026】
ここで、移動体1の速度の観測値の取得にあたっては、サーバ200ではなく、情報処理装置100において行われてもよい。その場合、情報処理装置100において取得された速度の観測値がサーバ200に送信され、時刻tと紐づけられて記憶部240に記憶される。
【0027】
方位角算出部230は、速度算出部220における処理と同様に、記憶部240に記憶されている、時刻tにおける位置情報の観測値と、時刻tから加速度情報取得周期において所定数のサイクル(例えば、1サイクル)前の時刻に取得した過去の位置情報の観測値の2つを取得し、その2点が構築するベクトルに基づいて、方位角の観測値を取得する。ここでいう方位角とは、例えば、真北を基準として右回りに当該方向を測った水平角の大きさを意味する。無論、方位角の定義はこれに限られず、任意の方向(例えば、真南)を基準としてもよいし、左回りに方向を測った水平角の大きさとしてもよい。方位角の観測値は、時刻tと紐づけられて記憶部240に記憶される。
【0028】
記憶部240は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含み、サーバ200が処理する各種データ、制御プログラム等を記憶するほか、速度取得部220及び方位角取得部230によって出力された各時刻における速度及び方位角の観測値や、その他の機能部により出力された情報を記憶し蓄積する。なお、記憶部240は、サーバ200に内蔵されるものに限らず、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置でもよい。
【0029】
速度および進行方向加速度取得部250は、速度取得部220によって出力され蓄積された各時刻の速度の観測値に基づいて、移動体1の進行方向における加速度の値、及び、速度の状態値を取得し、時刻情報と紐づけて記憶部240に記憶する。進行方向における加速度の値及び速度の状態値を取得する処理の詳細については後述する。
【0030】
角速度取得部260は、速度および進行方向加速度取得部250における処理と類似して、方位角取得部230によって出力され蓄積された各時刻の方位角の観測値に基づいて、移動体1の角速度の値を取得し、時刻情報と紐づけて記憶部240に記憶する。角速度取得部260による本処理の詳細については後述する。
【0031】
垂直方向加速度取得部270は、速度および進行方向加速度取得部250によって取得された速度の値、及び、角速度取得部260によって取得された角速度の値に基づいて、移動体1の進行方向に対する垂直方向における加速度の値を取得し、時刻情報と紐づけて記憶部240に記憶する。垂直方向加速度取得部270による本処理の詳細については後述する。
【0032】
運転評価部280は、進行方向における加速度の値や、垂直方向における加速度の値等、移動体1の挙動に関する情報に基づいて、移動体1の運転評価を行う。具体的には、例えば加速度においては、所定時間単位毎に取得された加速度情報について、そのスカラー値が所定の閾値を超えているかどうか、所定の閾値を所定数連続して超えているかどうか、一定時間内にそれら閾値を超えた回数が所定回数を超えているかどうか、といった観点によりその運転が安全であったかそうでなかったかを判断し出力する、または、安全度・危険度をスコアに変換して出力する。この際、加速度ベクトルの方向(前後方向や左右方向)に応じてこれら閾値の大きさを変化させてもよい。例えば、後方に関する閾値よりも前方に関する閾値の方を低くまたは高く設定してもよいし、前後方向(急発進や急ブレーキ)に関する閾値よりも左右方向(急ハンドル)に関する閾値の方を低くまたは高く設定してもよいし、同一としてももちろんよい。
【0033】
[情報処理の手順]
図4は、第一の実施形態における速度及び方位角の観測値の取得、並びにそれら値の格納の手順例を示すフローチャートである。
図4のフローチャートにおける処理は、例えばサーバ200の処理部が、記憶部240に格納された情報処理プログラムのコードを不図示のRAMに読み出して実行することにより実現される。
【0034】
図4のフローチャートにおける各記号Sは、ステップを意味する。
また、以下説明するフローチャートは、あくまでも第一の実施形態における情報処理の手順の一例を示すものに過ぎず、他のステップを追加したり、一部のステップを削除したりしてもよい。
【0035】
前提として、ユーザが情報処理装置100を保持して移動体1に乗車(運転者として、または同乗者としてのどちらでもよく、その形態は特に限定されない)している状態とし、情報処理装置100の位置情報取得部110は、第一の実施形態では所定の周期で、位置情報としての緯度経度情報を、その緯度経度情報の精度を示す精度値とともにGNSS衛星から取得し、取得されたこれらの情報は、情報処理装置100の記憶部140に取得した時刻に関する時間情報と紐づけて格納される。その後、これら格納された位置情報の観測値、位置情報の精度値及び時間情報の組はサーバ200に送信される。そして、サーバ200は、情報処理装置100から送信された位置情報の観測値等を記憶部240に格納する(S1001)。
【0036】
次に、時刻tにおける位置情報の精度値が所定の条件を満たすかどうかを判断する(S1003)。具体的には、精度値が示すのは、時刻tにおける位置情報がどれだけの精度によって取得されたかについてであり、その精度が低いものであれば、後述する速度および進行方向加速度を取得する処理、並びに、角速度を取得する処理に用いる値として不適切であるとして、これら処理から精度値が低い位置情報を排除することを意図する。ここで、精度値が所定の条件を満たしている(限定でなく例として、DOP値が所定閾値(例えば、5m)以下である)ならば(S1003;Y)、速度や方位角の観測値の取得処理に進むこととし、所定の条件を満たしていないならば(S1003;N)、時刻tにおける位置情報の精度が十分でないとして、これら位置情報の観測値を破棄し以降の算出処理は行わず、ステップS1011へ進む。
【0037】
S1005において、速度取得部220は、時刻tにおける位置情報の観測値と、時刻tから加速度情報取得周期において1サイクル前(または精度値が条件を満たす直前の時刻)に取得した過去の位置情報の観測値を記憶部240から取得し、これら情報に基づいて、時刻tにおける速度の観測値を取得する(S1005)。
【0038】
同様に、S1007において、方位角取得部230は、時刻tにおける位置情報の観測値と、加速度情報取得周期において1サイクル前(または精度値が条件を満たす直前の時刻)に取得した過去の位置情報の観測値に基づいて、時刻tにおける方位角の観測値を取得する(S1007)。
【0039】
これら取得された速度及び方位角の観測値は、それぞれ、時刻tと紐付けられて、記憶部240に格納される(S1009)。
【0040】
ステップS1009が完了すると、取得すべき位置情報の観測値が残っているか、すなわち、対象となる位置情報の観測値が記憶部240に格納されているかを判断する。残っている場合は(S1009;Y)、時刻tをt+1に更新してS1001からの処理を繰り返す。残っていない場合(S1009;N)は、この速度の観測値の取得、及び、方位角の観測値の取得のための処理を終了する。
【0041】
なお、S1005における速度の観測値の取得処理と、S1007の方位角の観測値の取得処理の順番は問わない。また、S1005とS1007を並列に処理してもよい。
【0042】
図5は、第一の実施形態における、時刻tにおける移動体1の進行方向における加速度の値及び垂直方向における加速度の値を取得する処理の手順例を示すフローチャートである。
図5のフローチャートにおける処理は、図4に示す処理と同様に、例えばサーバ200の処理部が、記憶部240に格納された情報処理プログラムのコードを不図示のRAMに読み出して実行することにより実現される。
【0043】
まず、速度および進行方向加速度取得部250及び角速度取得部260は、記憶部240に格納された速度の観測値及び方位角の観測値を、時刻tから所定数または所定期間分、過去に遡って取得する(S1101)。
【0044】
次に、速度および進行方向加速度取得部250は、時刻tにおける移動体1の進行方向における加速度の値及び速度の状態値を取得する処理を行う(S1103)。
【0045】
第一の実施形態においては、移動体1の進行方向における加速度の値の取得及び速度の状態値の取得を、速度の状態値の単位時間当たりの変位が進行方向における加速度の値であるとする状態空間モデルを設定し、それを解くことにより行う。この状態空間モデルを解くにあたり、線形的なモデルを設定しカルマンフィルタを適用する例を以下に説明するが、解く方法はこれに限られない。ここで、適用するフィルタはカルマンフィルタに限られず、例えば粒子フィルタを適用してもよいし、設定するモデルは線形的なものに限られず、非線形的なモデルとしてもよいのはもちろんである。
【0046】
速度の状態値及び進行方向における加速度の値の取得にあたり、まずは以下のように状態空間モデルを設定する。
【数1】
【0047】
このモデル式に速度の観測値を入力し、またそれぞれの加法項は平均0のガウス分布に従うと仮定し適用することで、進行方向xにおける加速度の値及び速度の状態値が求まる。
【0048】
すなわち、第一の実施形態におけるカルマンフィルタを用いた、進行方向における加速度の値及び速度の状態値を取得する処理を説明すると、速度の状態値の単位時間当たりの変位が進行方向における加速度の値であるとする状態空間モデルを設定し、速度の観測値には速度の状態値に平均0のガウス分布に従う加法項(例えば、ノイズなどの影響を考慮した値)が含まれたものであると想定し、また単位時間における進行方向における加速度の値の変異は平均0のガウス分布に従うと想定して、取得した速度の観測値を状態空間モデルに順次入力していくことによって、逐次的に進行方向における加速度の値及び速度の状態値を取得するものである。
【0049】
また、角速度取得部260は、S1101において記憶部240から取得した方位角の観測値に基づいて、時刻tにおける移動体1の角速度の値を取得する処理を行う(S1105)。
【0050】
前述した進行方向における加速度の値等を取得する処理と同様に、本発明においては、移動体1の角速度の値の取得にあたり、方位角の状態値の単位時間当たりの変位が角速度の値であるとする状態空間モデルを設定し、かかる状態空間モデルを解くことにより行う。この状態空間モデルを解くにあたり、上記の進行方向における加速度の値及び速度の状態値を取得する処理と同様に、第一の実施形態では、線形的なモデルを設定しカルマンフィルタを適用する場合を以下に説明するが、解く方法はこれに限られない。適用するフィルタはカルマンフィルタに限られず、例えば粒子フィルタを適用してもよいし、設定するモデルは線形的なものに限られず、非線形的なモデルとしてもよいのはもちろんである。
【0051】
方位角の状態値及び角速度の値の取得にあたり、まずは以下のように状態空間モデルを設定する。
【数2】
【0052】
このモデル式に観測された方位角の観測値を入力し、またそれぞれの加法項の分布が平均0のガウス分布に従うと推定することで、角速度の値が求まる。ここで、方位角の状態値も求めることとしてもよい。
【0053】
すなわち、第一の実施形態におけるカルマンフィルタを用いた角速度の値を取得する処理を説明すると、方位角の状態値の単位時間当たりの変位が角速度の値であるとする状態空間モデルを設定し、方位角の観測値には方位角の状態値に平均0のガウス分布に従う加法項が含まれたものであると想定し、また単位時間における角速度の値の変異は平均0のガウス分布に従うと想定して、取得した方位角の観測値を状態空間モデルに順次入力していくことによって、逐次的に角速度の値等を取得するものである。
【0054】
なお、S1103における進行方向における加速度の値を取得する処理と、S1105の角速度の値を取得する処理の順番は問わない。また、S1103とS1105を並列に処理してもよい。
【0055】
次に、垂直方向加速度取得部270は、移動体1の進行方向に対しての垂直方向における加速度の値を求める(S1107)。ここで、垂直方向における加速度の値は、取得された進行方向における加速度の値から、例えば三角関数を用いて算出してもよい。しかしながら、三角関数を用いて算出する場合、数値計算上の丸め誤差が最終的な算出結果に悪影響を及ぼしてしまう恐れがある。
【0056】
ここで、例えば数ミリ秒から数秒といった短時間単位での加速度の値を得られればよい前提であれば、移動体による運動が幾何学的に求められると仮定しても、その影響は大きくないと想定される。そこで、例えば、速度の状態値を単位時間あたりの角速度の値に基づいて垂直方向に射影する数3の式を用いることで、垂直方向における加速度の値を求めることができる。
【0057】
【数3】
【0058】
以上の処理を、各時刻t、t+1、t+2、…について、処理対象とする所定数または所定期間のサンプルである速度の観測値及び方位角の観測値を繰り返し状態空間モデルに入力し解いていくことで、対応する進行方向における加速度の値、速度の状態値、角速度の値、及び、垂直方向における加速度の値を求めていくことができる。
【0059】
ここで、短時間の移動体による運動には円運動を仮定しても影響は大きくないと想定される。求められた速度の状態値及び角速度の値を以下の数4の第2式に入力することによって、移動体1の曲率半径rを求めることができる。この曲率半径rは、他の移動体に関する情報と同様に、移動体に関する何らかの分析、例えば、情報処理装置100を保持するユーザが運転手として乗車しているかどうかの判断、安全運転の度合い、ユーザがその観測時点においてどのような移動体(例えば、セダン、ミニバン、バス、小型・中型・大型トラックなどの車種)を利用しているかを判断する処理等を行う場合などに有用である。
【0060】
【数4】
【0061】
曲率半径rを用いて、情報処理装置100を保持するユーザが運転手として乗車しているかどうかの判断に関する処理について説明する。
前提として、ユーザが運転する移動体は右ハンドルであるとする。
移動体がカーブを通過するときの曲率半径は、移動体の中心部を基準とした数値となるが、情報処理装置100を保有するユーザが運転席にいる場合、または助手席にいる場合においては、情報処理装置100の位置を基準とした数値となるため、移動体の中心部を基準とした数値とはズレが発生することが想定される。即ち、右カーブにおいて、ユーザが運転席にいる場合は、中心部を基準とした曲率半径の値よりも小さい曲率半径の値が取得されることが想定される。逆に、助手席にいる場合は、中心部を基準とした曲率半径の値よりも大きい曲率半径の値が取得されることが想定される。
【0062】
この想定を考慮してユーザが運転手としているかどうかを判断する。例えば、具体的には以下のような処理を行う。
ユーザが運転手として運転する移動体があるカーブに進入し通過すると、対応して曲率半径の値が取得される。このカーブに関する情報(例えば、位置情報)、進入方向、取得された曲率半径の値、及び運転手であることを紐づけて記憶しておく。再度このカーブに同一の進入方向で進入して、新たな曲率半径の値を取得する。この新たに取得した曲率半径の値と、先に取得した曲率半径の値とを比較し、値が略同一であれば、再度進入した際もユーザは運転手であったと判定し、値が略同一とはいえないほど異なる場合は、ユーザは非運転手であったと判定する。
なお、このカーブが右方向へのカーブである場合は、ユーザが運転手の際に取得される曲率半径の値は、ユーザが非運転手の際に取得される曲率半径の値より小さくなる。逆に、このカーブが左方向へのカーブである場合は、ユーザが運転手の際に取得される曲率半径の値は、ユーザが非運転手の際に取得される曲率半径の値より大きくなる。
【0063】
ここで、判定されたユーザが運転手かどうかの内容は、この判定に係る再度進入した時間を含む、移動体のエンジンが始動してから停止するまでの期間において有効とすることが好ましい。エンジンが一度停止して再度始動した場合においては、運転手または非運転手であることが維持されていない可能性があるため、判定された内容はリセットし、再度の判定をすることが好ましい。
【0064】
取得されたこれらの情報、すなわち、速度の状態値、進行方向における加速度の値、角速度の値、及び、垂直方向における加速度の値は、記憶部240に記憶される。ここで、他にも取得可能である方位角の状態値、曲率半径等も記憶部240に蓄積されることとしても良い。
蓄積されたこれらの情報は様々な用途に用いられ、例えば、運転評価部280による運転評価処理に用いられる。
【0065】
[第二の実施形態]
次に、本発明の情報処理技術を実現するための第二の実施形態について説明する。
第二の実施形態に記載の内容は、第一の実施形態の記載と同様に、他の各実施形態や各実施例、他の各変形例のいずれにも適用可能である。
【0066】
第一の実施形態と第二の実施形態との差異は、第一の実施形態においては速度及び加速度、並びに、方位角及び角速度を用いて状態空間モデルを構築している一方で、第二の実施形態においては、速度、加速度及び加加速度を用いた状態空間モデル、並びに、方位角、角速度及び角加速度を用いた状態空間モデルを構築しているところにある。すなわち、第二の実施形態では、第一の実施形態と比較して1つ層を増加させた状態空間モデルを用いる。
従って、システム構成及び各装置が備える構成要素は同一であるため、以下の第二の実施形態の説明においては、用いられる状態空間モデル及びその周辺である情報処理の手順についてのみ触れることとする。
【0067】
[情報処理の手順]
第二の実施形態における速度及び方位角の観測値の取得、並びにそれら値の格納の手順は、第一の実施形態における図4を参照した説明と同様であるので、その説明を省略する。
【0068】
第一の実施形態と第二の実施形態の差異点である、進行方向における加速度の値及び速度の状態値、並びに、角速度の値の取得処理等につき、以下説明する。
また、第二の実施形態における、時刻tにおける移動体1の進行方向における加速度の値及び速度の状態値、並びに、角速度の値を取得する処理は、第一の実施形態と類似するため、同じく図5のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
まず、速度および進行方向加速度取得部250及び角速度取得部260は、記憶部240に格納された速度の観測値及び方位角の観測値を、時刻tから所定数または所定期間分、過去に遡って取得する(S1101)。
【0070】
次に、速度および進行方向加速度取得部250は、時刻tにおける移動体1の進行方向における加速度の値及び速度の状態値を取得する処理を行う(S1103)。
【0071】
第二の実施形態においては、移動体1の速度の状態値及び進行方向における加速度の値の取得を、速度の状態値の単位時間当たりの変位が進行方向における加速度の値であり、及び、進行方向における加速度の値の単位時間当たりの変異が進行方向における加加速度の値であるとする状態空間モデルを設定し、それを解くことにより行う。この状態空間モデルを解くにあたり、第一の実施形態と同様に、線形的なモデルを設定しカルマンフィルタを適用する例を以下に説明するが、解く方法はこれに限られない。適用するフィルタはカルマンフィルタに限られず、例えば粒子フィルタを適用してもよいし、設定するモデルは線形的なものに限られず、非線形的なモデルとしてもよいのはもちろんである。
【0072】
速度の状態値及び進行方向における加速度の値の取得にあたり、まずは以下のように状態空間モデルを設定する。
【数5】
【0073】
このモデル式に速度の観測値を入力し、またそれぞれの加法項は平均0のガウス分布に従うと仮定し適用することで、進行方向xにおける加速度の値及び速度の状態値が求まる。ここで、進行方向における加加速度の値も求めることとしてもよい。
【0074】
すなわち、第二の実施形態におけるカルマンフィルタを用いた進行方向における加速度の値及び速度の状態値を取得する処理を説明すると、速度の状態値の単位時間当たりの変位が進行方向における加速度の値であり、及び、進行方向における加速度の値の単位時間当たりの変異が進行方向における加加速度の値であるとする状態空間モデルを設定し、速度の観測値には速度の状態値に平均0のガウス分布に従う加法項が含まれたものであると想定し、また単位時間における進行方向における加加速度の値の変異は平均0のガウス分布に従うと想定して、取得した速度の観測値を状態空間モデルに順次入力していくことによって、逐次的に進行方向における加速度の値等を取得するものである。
【0075】
一方で、角速度取得部260は、S1101にて記憶部340から取得した情報から、時刻tにおける移動体1の角速度の値を取得する処理を行う(S1105)。
【0076】
前述した進行方向における加速度の値を取得する処理と同様に、第二の実施形態においては、移動体1の角速度の値の取得にあたり、方位角の状態値の単位時間当たりの変位が角速度の値であり、及び、角速度の値の単位時間当たりの変異が角加速度の値であるとする状態空間モデルを設定し、それを解くことにより行う。この状態空間モデルを解くにあたり、上記の速度の状態値及び進行方向における加速度の値を取得する処理と同様に、線形的なモデルを設定しカルマンフィルタを適用する場合を以下に説明するが、解く方法はこれに限られない。適用するフィルタはカルマンフィルタに限られず、例えば粒子フィルタを適用してもよいし、設定するモデルは線形的なものに限られず、非線形的なモデルとしてもよいのはもちろんである。
【0077】
方位角の状態値及び角速度の値の取得にあたり、まずは以下のように状態空間モデルを設定する。
【数6】
【0078】
このモデル式に観測された方位角の観測値を入力し、またそれぞれの加法項の分布が平均0のガウス分布に従うと推定することで、角速度の値が求まる。また同時に、方位角の状態値や角加速度の値を求めることとしてもよい。
【0079】
すなわち、第二の実施形態におけるカルマンフィルタを用いた角速度の値を取得する処理を説明すると、方位角の状態値の単位時間当たりの変位が角速度の値であり、及び、角速度の値の単位時間当たりの変異が角加速度の値であるとする状態空間モデルを設定し、方位角の観測値には方位角の状態値に平均0のガウス分布に従う加法項が含まれたものであると想定し、また単位時間における角加速度の値の変異は平均0のガウス分布に従うと想定して、取得した速度の観測値を状態空間モデルに順次入力していくことによって、逐次的に進行方向における角速度の値等を取得するものである。
【0080】
なお、S1103における進行方向における加速度の値を取得する処理と、S1105の角速度の値を取得する処理の順番は問わない。また、S1103とS1105を並列に処理してもよい。
【0081】
次に、垂直方向加速度取得部370は、移動体1の進行方向に対しての垂直方向における加速度の値を求める(S1107)。垂直方向における加速度の値の取得方法は、第一の実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0082】
また、求められた速度の状態値及び角速度の値に基づいて、移動体1の曲率半径rを求めることができる。曲率半径rの算出方法は、第一の実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0083】
取得されたこれらの情報、すなわち、速度の状態値、進行方向における加速度の値、及び、垂直方向における加速度の値は、記憶部240に記憶される。ここで、他にも取得可能である進行方向における加加速度の値、方位角の状態値、角加速度の値、及び、曲率半径も記憶部240に蓄積されることとしても良い。
蓄積されたこれらの情報は様々な用途に用いられ、例えば、運転評価部280による運転評価処理に用いられる。
【0084】
[本発明の作用・効果]
本発明によれば、移動体の挙動に関する情報、例えば、進行方向における加速度の値、垂直方向における加速度の値、速度の状態値、方位角の状態値、角速度の値、進行方向における加加速度の値、角加速度の値、及び曲率半径のうち少なくとも一部を適切に取得することができる。
【0085】
[変形例]
上述の説明においては、位置情報取得部210が位置情報の観測値とともに精度値を取得し、時刻情報と紐づけて記憶部240に格納した後、速度取得部220または方位角取得部230が位置情報の観測値を記憶部240から抽出しようとしたときに、精度値が所定条件を満たしているか否かによって、当該位置情報の観測値を速度取得部220及び方位角取得部230による処理に使用するかどうかを判断することとしているが、この内容に限られない。
例えば、位置情報取得部110が位置情報の観測値を取得した時点で、対応する精度値が所定条件を満たしていないならば、当該位置情報の観測値をサーバ200に送信しないこととしてもよい。または、サーバ200に送信された後、記憶部240に格納しないこととしてもよい。さらには、速度取得部220による速度の算出、及び方位角取得部230による方位角の算出は、対応する位置情報の精度値が所定条件を満たしているか否かにかかわらず当該位置情報の観測値を用いて行い、速度および進行方向加速度取得部250及び角速度取得部260が、記憶部240から所定数または所定期間の速度及び方位角の観測値を取得する際(S1101)において、対応する時刻に紐付けられて格納された精度値が所定の条件を満たしていなければ、これら情報を取得せず、速度および進行方向加速度取得部250及び角速度取得部260による処理に使用しないこととしてもよい。すなわち、精度値が所定の条件を満たしているかどうかの判断結果は、対応する位置情報の観測値または速度及び方位角の観測値を使用するかどうかについて全体の処理中のどこかで反映されれば良く、そのタイミングは特に限定されない。
【0086】
第一の実施形態における状態空間モデル、及び、第二の実施形態における状態空間モデルにおいて、それぞれの加法項は平均0のガウス分布に従うこととしているが、この形態に限られない。例えば、それぞれの加法項の少なくとも一方が、0ではない平均を持つガウス分布に従うこととしてもよく、また、ガウス分布ではない、任意の分布(例えば、コーシー分布)に従うこととしてもよく、平均値の値、及び分布の種類は特に限定されない。
【0087】
第一の実施形態においては、速度-加速度、及び、方位角-角速度の2層による状態空間モデルによって移動体1の挙動に関する情報を取得することとしており、また、第二の実施形態においては、速度-加速度-加加速度、及び、方位角-角速度-角加速度の3層による状態空間モデルによって移動体1の挙動に関する情報を取得することとしているが、状態空間モデルにおける層の数はこれに限られない。すなわち、第n層(nは2以上の自然数)で構成される状態空間モデルによって移動体1の挙動に関する情報を取得することが可能である。
すなわち、第1層要素は速度の状態であり、第k+1層要素は、第k層の要素を微分した結果に相当し、第k層要素の値の単位時間あたりの変位が第k+1層要素の値であり、nは2以上の所定の自然数であり、kは1以上n未満の自然数であり、速度の状態値にある分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であり、前記第n+1層要素の値の単位時間あたりの変位はある分布に従う、とする状態空間モデルにおいて、速度の観測値を対応する時間情報に基づいて入力することで、移動体1の進行方向における加速度の値や速度の状態値を取得することができる。
同様に、第1層要素は方位角の状態であり、第k+1層要素は、第k層の要素を微分した結果に相当し、第k層要素の値の単位時間あたりの変位が第k+1層要素の値であり、nは2以上の所定の自然数であり、kは1以上n未満の自然数であり、方位角の状態値にある分布に従い発生する値を加えたものが前記方位角の観測値であり、前記第n+1層要素の値の単位時間あたりの変位はある分布に従う、とする状態空間モデルにおいて、方位角の観測値を対応する時間情報に基づいて入力することで、角速度の値を取得することができる。
【0088】
上述の説明によれば、位置情報の観測値の取得は情報処理装置100にて行い、以降の進行方向における加速度の値等の取得までの処理をサーバ200にて行う例を説明したが、これに限られず、例えば、これらの処理の一部または全ての処理をサーバ200以外の装置(例えば、移動体1に設置されたドライブレコーダー等の装置)にて行うこととしてもよい。
例えば、情報処理装置100が速度取得部220、方位角取得部230、記憶部240、速度および進行方向加速度取得部250、角速度取得部260、及び垂直方向加速度取得部270に相当する機能部を備え、これらの協働により各処理を行うこととしてもよく、各機能部の位置は特に限定されない。
【0089】
また、運転評価スコアの算出処理を完了した後、その算出結果を情報処理装置100に送信し表示部130に出力することで、情報処理装置100の使用者に算出結果を提示することとしてもよい。
【0090】
更に、上述の説明によれば、取得された進行方向における加速度の値や垂直方向における加速度の値を用いて運転評価部280において運転評価が行われることとしているが、用いられる情報は加速度に関する情報に限定されない。例えば、速度の状態値、方位角の状態値、角速度の値、進行方向における加加速度の値、角加速度の値、曲率半径等が出力され、さらには別の装置から別の種類の情報(限定でなく例として、温度情報、湿度情報、天気情報、高度情報、運転者の疲労度情報、などが挙げられる)を取得し、これらの情報も含めて運転評価を行うこととしてもよい。
【0091】
更に、上述の説明によれば、移動体1の挙動に関する情報に基づいて運転評価を行うこととしているが、移動体1の挙動に関する情報の活用方法はこれに限られない。例えば、移動体1の挙動に関する情報に基づき、移動体1が何であるか(乗用車、自転車、バス、船舶、徒歩)を判別する移動手段判別、さらには運転者または非運転者かを判別するといったことを行ってもよい。この場合、サーバ200が対応する移動手段判別や運転者非運転者判別のための機能部を有して処理を行ってもよいし、サーバ200以外の装置にこれら情報を送信し、当該装置における対応する機能部において処理を行ってもよく、その形態は特に限定されない。
【0092】
なお、位置情報として用いるものは上記によるものに限らず、移動体外から受信可能である位置を特定できる情報であれば特に限定されない。例えば、位置情報を含んだビーコンなどを受信し、それを単独で、又は、GPS情報と合わせて処理することで位置情報として用いてもよい。
【0093】
更に、上述の説明によれば、速度取得部220によって速度を取得することとしているが、これに限られない。例えば、移動体1は不図示の車速パルス取得部及び通信部を備え、当該車速パルス取得部によって取得された車速パルス情報に基づいて移動体1の速度を取得してもよく、または、取得された車速パルス情報を情報処理装置100やサーバ200に送信し、位置情報の観測値と合わせて移動体1の速度を算出することとしてもよく、速度取得の形態は特に限定されない。
【0094】
なお、位置情報取得の周期は特に制限はないが、激しい振動が発生しうる状況、例えば、エンジンによる振動、悪路走行による振動(輸送振動周波数)が、移動体の挙動に関する情報の取得において悪影響を及ぼすことがわかっている。従って、これら輸送振動周波数の影響を極力受けないようにすべく、位置情報取得の周期をこれら周波数と共振しない範囲とすることが好ましい。この点、移動手段である陸送、空輸、鉄道などにおいて、もっとも振動による影響が大きいのがトラックの輸送であり、その輸送振動周波数は2Hzから20Hzの範囲での発生が多いことがわかっている。そこで、前記輸送振動周波数の影響を避けるべく、位置情報取得の周波数を20Hz以上または2Hz以下にすることが好ましい。こうすることによって、輸送振動周波数の影響を受けにくいという効果を奏する。また、2Hz以下とする場合、位置情報取得の頻度が小さくなり、対応して発生する処理の頻度も小さくなるので、電力消費を抑えられるという効果も奏する。
【0095】
なお、前述の通り、輸送振動周波数が加速度測定において悪影響を及ぼすことに鑑み、移動体の性能(サスペンション性能、タイヤ性能などを含むがこれらに限らない。また、これら機器の使用期間に応じた摩耗・性能劣化なども考慮することが好ましい)、道路状況、積載量などに応じて、位置情報取得の周期を変更可能としてもよい。例えば、移動体1または情報処理装置100は不図示の取得部を備え、当該取得部によって移動体の性能、道路状況、移動体における積載量などの情報を取得し、その取得した情報に応じて位置情報取得の周期を変化させることとしてもよい。こうすることによって、状況に応じてノイズの少ない位置情報取得をすることができるという効果を奏する。
【0096】
更に、上述の説明によれば、位置情報の観測値を取得する周期が加速度情報取得周期と同一であるとして説明したが、この2つの周期の関係は特に限定されない。例えば、位置情報の観測値を取得する周期が、加速度情報取得周期以下であることが好ましい。すなわち、加速度情報取得に対応する2つの連続する位置情報の観測値が異なる時刻において取得されていることが好ましい。さらには、加速度情報取得周期を、位置情報の観測値を取得する周期の自然数倍であることが好ましい。また、これら2つの周期が同一でない場合、S1001においては取得した位置情報の観測値を記憶部240に格納しておき、S1005またはS1007では、加速度情報取得周期に基づき対応する位置情報の観測値を記憶部240から取得し、処理することとしてもよい。
【0097】
更に、上述の説明によれば、移動体による運動が幾何学的に求められると仮定して、進行方向に係る情報に基づいて垂直方向における加速度の値を求めることとしているが、垂直方向における加速度の値の算出方法はこれに限られない。例えば、移動体による運動が等速円運動であると仮定して、進行方向に係る情報に基づいて垂直方向における加速度の値を求めることとしてもよい。この場合、数7により垂直方向における加速度の値を求めることができる。
【0098】
【数7】
【0099】
このように、移動体による運動を何らかの定式化できる運動として仮定してよく、移動体による運動の性質を逸脱しない範囲であれば、その仮定の方法は特に限定されない。
【0100】
更に、上述の説明によれば、進行方向における加速度の値及び速度の状態値の両方を求めることとしているが、用途等に応じて、任意の一方のみを求めることとしてもよい。すなわち、進行方向における加速度の値、垂直方向における加速度の値、速度の状態値、方位角の状態値、角速度の値、進行方向における加加速度の値、角加速度の値、及び曲率半径のうち、任意の情報のみを求めることとしてもよい。
【0101】
更に、上述の説明によれば、速度の観測値の取得における周期(以降、速度観測値取得周期という)と、方位角の観測値の取得における周期(以降、方位角観測値取得周期という)が同一であり、かつ同じタイミングで取得することとしている(すなわち、時刻t、t+1、…において両方の値を取得している)が、これに限られない。これら2つの周期は同一でなくともよく、また同じタイミングで取得しなくともよい。
ここで、例えば、速度観測値取得周期が方位角観測値取得周期以上であることが好ましい。このようにすることで、数3又は数7に基づいて垂直方向における加速度の値を取得する際、複数の連続する速度の状態値に対して掛け合わせる角速度の値又は角速度の値の正弦の値が同一となってしまうことを回避することができる。
更に例えば、速度観測値取得周期が方位角観測値取得周期と同期していることが好ましい。ここで、同期しているとは、一方の周期が他方の周期の自然数倍であることを意味する。このようにすることで、数3又は数7に基づいて垂直方向における加速度の値を取得する際、連続する所定数の速度の状態値と1つの角速度の値が対応する、又は、1つの速度の状態値と連続する所定数の角速度の値が対応することとなり、時系列的に違和感の小さい垂直方向における加速度の値を取得することができる。
【0102】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態及び変形例に限定されない。また、上記の実施形態及び変形例は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 移動体
100 情報処理装置
110 位置情報取得部
200 サーバ
220 速度取得部
230 方位角取得部
240 記憶部
250 速度および進行方向加速度取得部
260 角速度取得部
270 垂直方向加速度取得部
280 運転評価部
【要約】
移動体挙動情報取得方法は、移動体の速度の観測値を第1の間隔に基づいて取得することと、前記取得した速度の観測値を対応する時間情報と紐づけて記憶することと、速度の状態値の単位時間あたりの変位が進行方向における加速度の値であり、前記速度の状態値に、第1の分布に従い発生する値を加えたものが前記速度の観測値であり、前記進行方向における加速度の値の単位時間あたりの変位は、第2の分布に従う、とする状態空間モデルに対して、前記速度の観測値を対応する前記時間情報に基づいて入力することで、前記移動体の進行方向における加速度の値を取得することと、を含む。



図1
図2
図3
図4
図5