(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/77 20110101AFI20220405BHJP
【FI】
H01R12/77
(21)【出願番号】P 2018027860
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591236301
【氏名又は名称】住鉱テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】浅川 和重
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-007376(JP,A)
【文献】実開昭63-091184(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0292900(US,A1)
【文献】特開2017-004858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ピッチで並ぶ複数の導体を有するフレキシブル導電部材の端縁に取り付けられる第1ハウジング部と、
前記第1ハウジング部と嵌合する第2ハウジング部と、を備え、
前記フレキシブル導電部材の端縁近傍には、端子面が形成されており、
前記第1ハウジング部には、前記フレキシブル導電部材の端縁が挿入されて取り付けられる係合溝が形成されており、
前記係合溝には、対向配置されて前記係合溝を構成する両壁面のうちの一方が形成されておらず、前記一方の壁面があるはずの箇所に開口部が形成されており、
前記第1ハウジング部は、前記係合溝に前記フレキシブル導電部材の端縁が取り付けられた状態で、前記端子面が前記開口部を通じて露出するように構成されており、
前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部との嵌合状態で、
前記第2ハウジング部の内部に形成されているリセ端子は、前記開口部において、前記端子面と接触するようになっており、
前記第1ハウジング部には、前記複数の導体のピッチ方向に沿って並ぶように前記フレキシブル導電部材に形成された複数の開孔部のそれぞれと係合する複数の係合突起部が
、前記開口部の形成箇所に設けられており、
前記複数の係合突起部の少なくとも一つは、前記ピッチ方向の央部領域に配されている
コネクタ。
【請求項2】
前記フレキシブル導電部材は、フィルム状の支持体を有しており、
前記支持体の一方の面上における端縁近傍には、前記端子面が形成されており、
前記端子面とは反対側の前記支持体の面上には、前記支持体を補強する補強板が形成されている
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記複数の係合突起部は、前記ピッチ方向に沿って一列に並ぶように配されている
請求項1
または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記複数の係合突起部は、前記ピッチ方向に沿って等間隔で並ぶように配されている
請求項1
から3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記複数の係合突起部は、前記複数の導体が並ぶピッチの1つ置きに配されている
請求項
4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記複数の係合突起部は、高い保持力が必要な領域では、前記ピッチ方向に沿って密に並べられ、保持力が低くても構わない領域では、前記ピッチ方向に沿って疎に並べられている
請求項1
から3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記複数の係合突起部は、前記ピッチ方向の央部を挟んで非対称に配されて構成された逆挿し防止構造を有している
請求項1
から3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記係合突起部は、円状に形成された開孔部と係合する形状を有している
請求項1から
7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記係合突起部は、前記フレキシブル導電部材の挿入側に面して形成された傾斜面を有している
請求項1から
8のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器、民生用(家庭用)電化製品、自動車用電装品等の幅広い用途で、可撓性を有するフレキシブル導電部材が用いられている。フレキシブル導電部材は、FPC(Flexible Printed Circuits)またはFFC(Flexible Flat Cable)として知られているもので、所定ピッチで並ぶ複数の導体を有する薄いシート状のものである。このようなフレキシブル導電部材は、FPC/FFCコネクタと呼ばれるコネクタを利用して、そのコネクタが装着される配線基板の配線と電気的に接続されることが一般的である。FPC/FFCコネクタとしては、例えば、フレキシブル導電部材の両サイド部に形成された凹部等の被位置決め部に係合する位置決め部を有し、これらの係合によりフレキシブル導電部材とコネクタハウジング部との装着状態を保持するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フレキシブル導電部材の両サイド部における係合を利用した保持構造では、当該フレキシブル導電部材の央部領域が支持されないので、必要十分な保持力が得られるとは限らない。例えば、フレキシブル導電部材に外力が加わった場合には、当該フレキシブル導電部材の可撓性により央部領域に撓みが生じてしまい、そのために保持状態が維持されなくなるおそれがある。このことは、導体の数(芯数)が多く(例えば36芯)幅広に構成されたフレキシブル導電部材ほど、顕著に生じ得る。
【0005】
その一方で、必要十分な保持力を得るために保持構造の複雑化を招いてしまうことは、フレキシブル導電部材またはコネクタハウジング部の汎用化への対応が困難になり得ることから好ましくなく、またコスト面および作業性の点でも好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、フレキシブル導電部材について簡素な構成で必要十分な保持力を得ることを可能にするコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
所定ピッチで並ぶ複数の導体を有するフレキシブル導電部材の端縁に取り付けられる第1ハウジング部と、
前記第1ハウジング部と嵌合する第2ハウジング部と、を備え、
前記第1ハウジング部には、前記複数の導体のピッチ方向に沿って並ぶように前記フレキシブル導電部材に形成された複数の開孔部のそれぞれと係合する複数の係合突起部が設けられており、
前記複数の係合突起部の少なくとも一つは、前記ピッチ方向の央部領域に配されている
コネクタが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フレキシブル導電部材について簡素な構成で必要十分な保持力を得ることが可能なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタの概略構成の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコネクタの第1ハウジング部が取り付けられるフレキシブル導電部材の一例であるFPCの概略構成を示す側断面図である。
【
図3】
図2に示すFPCの要部構成を示す説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るコネクタの第1ハウジング部の一例の要部構成を示す説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るコネクタによる接続確立の手順の一例を示す説明図(その1)である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るコネクタによる接続確立の手順の一例を示す説明図(その2)である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るコネクタによる接続確立の手順の一例を示す説明図(その3)である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るコネクタによる接続確立の手順の一例を示す説明図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るコネクタについて、図面を参照しながら説明する。
【0011】
(1)コネクタの概略構成
先ず、本実施形態に係るコネクタの概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るコネクタの概略構成の一例を模式的に示す斜視図である。
【0012】
(全体構成)
本実施形態で説明するコネクタ1は、FPC/FFCコネクタと呼ばれるもので、FPCまたはFFCといったフレキシブル導電部材2における導体を、配線基板3における配線と電気的に接続するために用いられる。
【0013】
そのために、コネクタ1は、フレキシブル導電部材2の端縁に取り付けられる第1ハウジング部10と、配線基板3に装着された第2ハウジング部20と、を備えており、第1ハウジング部10と第2ハウジング部20とが嵌合し得るように構成されている。
【0014】
(フレキシブル導電部材)
フレキシブル導電部材2は、上述したように、FPCまたはFFCとして知られているもので、所定ピッチで並ぶ複数の導体を有する薄いシート状のものである。なお、フレキシブル導電部材2の具体的な構成については、詳細を後述する。
【0015】
(第1ハウジング部)
第1ハウジング部10は、フレキシブル導電部材2の端縁に取り付けられて用いられるもので、絶縁性を有する樹脂材料(例えば、ポリブチレンテレフタレート:PBT)の一体成型加工によって形成されたものである。また、第1ハウジング部10は、フレキシブル導電部材2の端縁に取り付けられた状態で、そのフレキシブル導電部材2の端縁近傍に形成された端子面(接触面)が露出する形状に形成されている。このように形成されていることから、第1ハウジング部10については、「雄ハウジング」または「M(male)ハウジング」と称されることもある。
【0016】
また、第1ハウジング部10には、第2ハウジング部20との嵌合状態を維持しつつ確実な抜け止めを実現するための第1ロック機構部11が設けられている。第1ロック機構部11は、例えば、第2ハウジング部20におけるラッチ部(係止孔または係止溝等)と係合するフックを有するアーム部によって構成されている。つまり、第1ロック機構部11は、ロックする際には操作を必要としないが、ロックを解除する際にはオペレータの手指等によって操作する必要がある、いわゆるポジティブロック構造を構成するものとなっている。ただし、必ずしもこれに限定されることはなく、ラッチ部とアーム部が逆であってもよい。また、ラッチ部とアーム部とからなるポジティブロック構造ではなく、他の公知技術を利用して構成されたものであってもよい。
【0017】
なお、第1ハウジング部10の具体的な構成については、詳細を後述する。
【0018】
(第2ハウジング部)
第2ハウジング部20は、配線基板3に装着されて用いられるもので、ガラス繊維(GF)を含有する高耐熱樹脂材料(例えば、ポリアミド:PA、液晶ポリマー:LCP等)の一体成型加工によって形成されたものである。また、第2ハウジング部20は、第1ハウジング部10と嵌合するための嵌合凹部21を備えており、その嵌合凹部21の内部に導電性を有する金属材料(例えば、銅合金)によって形成されたリセ(receptacle)端子(ただし不図示)が配されている。リセ端子は、フレキシブル導電部材2が有する端子面(接触面)に対応するように配されており、第1ハウジング部10と第2ハウジング部20との嵌合状態で当該端子面と接触するようになっている。このように形成されていることから、第2ハウジング部20については、「雌ハウジング」または「F(female)ハウジング」と称されることもある。
【0019】
また、第2ハウジング部20には、第1ハウジング部10との嵌合状態を維持しつつ確実な抜け止めを実現するための第2ロック機構部22が設けられている。第2ロック機構部22は、例えば、第1ハウジング部10におけるアーム部のフックと係合する係止孔または係止溝等を有するラッチ部によって構成されている。つまり、第2ロック機構部22は、第1ロック機構部11とともにポジティブロック構造を構成するものとなっている。ただし、必ずしもこれに限定されることはなく、ラッチ部とアーム部が逆であってもよい。また、ラッチ部とアーム部とからなるポジティブロック構造ではなく、他の公知技術を利用して構成されたものであってもよい。
【0020】
(配線基板)
配線基板3は、各種電子機器、民生用(家庭用)電化製品、自動車用電装品等に搭載されて用いられるもので、絶縁性のある樹脂含浸基板上または当該基板内に銅箔等の導電体で配線(回路)パターンが形成されたものである。配線基板3に第2ハウジング部20が装着されると、第2ハウジング部20のリセ端子が配線基板3上の配線パターンと電気的に接続されることになる。なお、配線基板3上は、絶縁、防湿、防水等のために、ウレタン樹脂等の樹脂材料で封止するポッティング処理が施されていてもよい。
【0021】
(2)フレキシブル導電部材の構成
次に、コネクタ1の第1ハウジング部10が取り付けられるフレキシブル導電部材2について、具体的な構成を説明する。ここでは、フレキシブル導電部材2がFPCである場合を例に挙げる。ただし、これに限定されることはなく、FFCであってもよいことはいうまでもない。
【0022】
図2は、本実施形態におけるフレキシブル導電部材の一例であるFPCの概略構成を示す側断面図である。また、
図3は、
図2に示すFPCの要部構成を示す説明図であり、当該FPCの平面視構成を示す図である。
【0023】
フレキシブル導電部材の一例であるFPC2は、柔軟に曲がる可撓性を有した薄いシート状(例えば0.3mm厚程度)のもので、
図2に示すように、ポリイミドフィルムまたはポリエステルフィルム等によって形成された支持体2aを有している。支持体2aの一方の面上には、銅箔等によって形成された導体2bが配されている。導体2bは、FPC2の端縁近傍領域を除き、ポリイミドフィルムまたはポリエステルフィルム等の絶縁カバー2cによって覆われている。絶縁カバー2cによって覆われていない端縁近傍領域では、導体2bが露出するとともに、その露出箇所に錫メッキ等の表面処理が施されることで、端子面(接触面)2dが形成されている。なお、端子面2dが形成される端縁近傍領域は、導体2bとは反対側の支持体2aの面上に配されたガラスエポキシ樹脂板またはポリエステル樹脂板等の補強板2eによって補強されている。
【0024】
また、FPC2は、
図3に示すように、短冊状(例えば0.75mm幅程度)に形成された複数(例えば6~36芯程度)の導体2bが所定ピッチ(例えば1.5mmピッチ程度)で並ぶように配されている。これに伴い、端子面2dも、各導体2bに個別に対応するように、複数(例えば6~36芯程度)が所定ピッチ(例えば1.5mmピッチ程度)で並ぶように配されることになる。さらに、FPC2には、導体2bおよび端子面2dが所定ピッチで並ぶ方向(以下「ピッチ方向」という。)に沿って、複数の開孔部2fが形成されている。
【0025】
各開孔部2fは、いずれも、FPC2の一方の面から他方の面に貫通するように、平面視した形状が円状に形成されている。ここでいう「円状」は、円のような形状のことであり、隅部または角部を有さない形状のことである。具体的には、代表的なものとして丸穴形状が挙げられるが、丸穴形状の他に、長円形状、楕円形状、長方形の角を丸くしてコーナRを設けた四角形状等についても、ここでいう「円状」に含むものとする。開孔部2fが円状に形成されていれば、例えば隅部または角部のように応力集中が発生する箇所が存在しないので、薄厚のFPC2に応力集中による破損等が生じてしまうのを抑制し得るようになる。
【0026】
また、各開孔部2fは、ピッチ方向に沿って、一列に、かつ、等間隔で並ぶように配されている。具体的には、各開孔部2fは、複数の導体2bおよび端子面2dが並ぶピッチの1つ置きに配されている。これにより、開孔部2fは、ピッチ方向の央部近傍領域を含む複数箇所に配されることになる。央部近傍領域を含む複数箇所に配されていれば、ピッチ方向の端部近傍領域(例えば、最端の端子面2dとその隣の端子面2dとの間)には、開孔部2fが配されていなくてもよい。
【0027】
なお、ここでは、各開孔部2fが一列に、かつ、等間隔で並ぶ場合を例に挙げているが、これに限定されることはない。例えば、各開孔部2fが並ぶ列は、湾曲していてもよいし、千鳥状に配されていてもよい。また、各開孔部2fが並ぶ間隔は、疎密を有した間隔であってもよいし、ピッチ方向の央部を挟んで非対称に配されていてもよい。
【0028】
(3)第1ハウジング部の構成
次に、FPC2に取り付けられるコネクタ1の第1ハウジング部10について、具体的な構成を説明する。
【0029】
図4は、本実施形態における第1ハウジング部の一例の要部構成を示す説明図であり、当該第1ハウジング部の平面視構成を示す図である。
【0030】
図4に示すように、第1ハウジング部10には、FPC2の端縁が挿入されて取り付けられる係合溝12が形成されている。また、第1ハウジング部10は、第2ハウジング部20の嵌合凹部21と嵌合するための嵌合凸部13を備えている。そして、嵌合凸部13に係合溝12が内装されるように、それぞれが配されている。ただし、係合溝12および嵌合凸部13は、対向配置されて当該係合溝12を構成する両壁面のうちの一方が形成されておらず、当該一方の壁面があるはずの箇所に開口部14が形成されている。これにより、第1ハウジング部10は、係合溝12にFPC2の端縁に取り付けられた状態で、そのFPC2の端子面2dが開口部14を通じて露出するように構成されている。また、第1ハウジング部10には、係合溝12を構成する他方の壁面に、開口部14を通じて露出するように、複数の係合突起部15が設けられている。
【0031】
各係合突起部15は、FPC2に形成された複数の開孔部2fのそれぞれと係合するものである。そのため、各係合突起部15は、円状に形成された開孔部2fと係合する形状を有している。具体的には、各係合突起部15は、開孔部2fに対応するように、平面視した形状が円状(丸穴形状、長円形状、楕円形状、コーナRを設けた四角形状等)に形成されている。
【0032】
また、各係合突起部15は、FPC2の挿入側(図中矢印参照)に面して形成された傾斜面15aを有している。傾斜面15aは、係合突起部15の頂部の角を切り落とすように配されている。これにより、傾斜面15aは、詳細を後述するように、FPC2が係合突起部15を乗り越えるように、そのFPC2を案内することになる。
【0033】
さらに、各係合突起部15は、FPC2における開孔部2fと係合するものであることから、各開孔部2fに対応するように、ピッチ方向に沿って、一列に、かつ、等間隔で並ぶように配されている。具体的には、各係合突起部15は、FPC2における複数の導体2bおよび端子面2dが並ぶピッチの1つ置きに配されている。これにより、各係合突起部15は、ピッチ方向の央部近傍領域を含む複数箇所に配されることになる。央部近傍領域を含む複数箇所に配されていれば、各開孔部2fと同様に、ピッチ方向の端部近傍領域には、係合突起部15が配されていなくてもよい。
【0034】
なお、ここでは、各係合突起部15が一列に、かつ、等間隔で並ぶ場合を例に挙げているが、各開孔部2fに対応するものであれば、これに限定されることはない。例えば、各係合突起部15が並ぶ列は、湾曲していてもよいし、千鳥状に配されていてもよい。また、各係合突起部15が並ぶ間隔は、疎密を有した間隔であってもよいし、ピッチ方向の央部を挟んで非対称に配されていてもよい。
【0035】
(4)コネクタの使用方法
次に、上述した構成のコネクタ1を使用して、FPC2と配線基板3との間の接続を確立する場合の具体的な手順について説明する。
【0036】
図5~8は、本実施形態に係るコネクタによる接続確立の手順の一例を示す説明図である。
【0037】
(第1ハウジング部の取り付け)
FPC2と配線基板3との接続確立にあたっては、先ず、FPC2への第1ハウジング部10の取り付けを行う。
【0038】
第1ハウジング部10を取り付けるためには、
図5に示すように、端子面2dおよび開孔部2fが形成されている側のFPC2の端縁を先端として、そのFPC2における端子面2dが第1ハウジング部10における開口部14の形成側を向く状態で、そのFPC2の端縁を第1ハウジング部10における係合溝12の溝内に挿入する(図中矢印参照)。そして、
図6に示すように、FPC2の端縁が第1ハウジング部10における係合突起部15に突き当たるまで、そのFPC2の係合溝12の溝内への挿入を行う。
【0039】
このとき、係合溝12の溝内に挿入されるFPC2は、柔軟に曲がる可撓性を有している。また、係合突起部15には、FPC2の挿入側に面して傾斜面15aが形成されている。しかも、係合突起部15は、開口部14の形成箇所に設けられている。つまり、係合突起部15における傾斜面15aの頂部側には、係合溝12を構成する壁面が存在しない。
【0040】
したがって、FPC2の端縁が第1ハウジング部10における係合突起部15に突き当たった後、さらにFPC2を係合溝12の溝内に挿入すると、
図7に示すように、FPC2の端縁は、傾斜面15aによって案内されて係合突起部15を乗り越えることになる。
【0041】
その後、さらに、FPC2を係合溝12の溝内に挿入すると、
図8に示すように、FPC2は、開孔部2fに係合突起部15が嵌るようにそれぞれが係合した状態となる。これにより、FPC2には、第1ハウジング部10が取り付けられるとともに、開孔部2fが係合突起部15との係合によって、その取り付け状態が保持されることになる。
【0042】
ところで、FPC2は、複数の導体2bが所定ピッチで並ぶように配されている。そのため、例えば36芯の導体2bが1.5mmピッチで配されている場合、FPC2は、両側端の余白領域も含めて、70mm程度の幅広に形成されることになる。
その一方で、FPC2は、例えば0.3mm厚程度の薄厚に形成されており、柔軟に曲がる可撓性を有している。
したがって、FPC2への第1ハウジング部10の取り付け状態の保持にあたり、従来のようにFPC2の両サイド部における係合を利用した保持構造(例えば、特許文献1参照)では、必要十分な保持力が得られるとは限らない。例えば、幅広に形成されたFPC2に外力が加わった場合には、当該FPC2の可撓性により央部領域に撓みが生じてしまい、そのために保持状態が維持されなくなるおそれがある。つまり、両サイド部における部分的な係合では、FPC2の幅方向(ピッチ方向)で均一な保持力を得ることが困難であり、結果として必要十分な保持力が得られないおそれがある。
また、両サイド部における部分的な係合によって必要十分な保持力を得ようとすると、例えば、別部品(ハウジング、リテーナ等)の追加、FPC2の異形状化、配線パターンの特殊化等が必要となり、FPC2等の汎用化への対応が困難になってしまうおそれもある。これらのことは、電線対基板コネクタからの置き換え(コストダウン、作業性改善等)が難しい理由ともなり得る。つまり、汎用化への対応が困難になり得ることは好ましくなく、コスト面および作業性の点でも好ましくない。
【0043】
このような問題に対して、本実施形態で説明した保持構造では、FPC2における開孔部2fと第1ハウジング部10における係合突起部15との係合によって、当該FPC2への当該第1ハウジング部10の取り付け状態が保持されるようになっている。そして、開孔部2fおよび係合突起部15は、FPC2の幅方向(ピッチ方向)の央部近傍領域を含む複数箇所に配されている。つまり、開孔部2fおよび係合突起部15の少なくとも一つは、ピッチ方向の央部領域に配されている。
【0044】
したがって、本実施形態で説明した保持構造によれば、ピッチ方向の央部領域を含む複数箇所における係合を利用することになるので、ピッチ方向で均一な保持力を得ることが可能であり、その結果として必要十分な保持力が得られるようになる。具体的には、例えばFPC2に外力が加わった場合であっても、央部領域を含む複数箇所における係合を利用することで、その央部領域にてFPC2の撓みが生じてしまうのを抑制でき、FPC2と第1ハウジング部10との間の保持状態を適切に維持することができる。
【0045】
しかも、本実施形態で説明した保持構造では、第1ハウジング部10の係合溝12へのFPC2の挿入のみで、FPC2における開孔部2fと第1ハウジング部10における係合突起部15とを容易に係合させることができる。つまり、別部品(ハウジング、リテーナ等)の追加、FPC2の異形状化、配線パターンの特殊化等を必要とすることなく、簡素な構成で容易に必要十分な保持力が得られる。そのため、FPC2等の汎用化への対応が困難になってしまうことがなく、部品点数の削減による顧客サイドでのハーネス作業性の向上やコストダウン等に貢献でき、コスト面および作業性の点でも好ましいものとなる。
【0046】
また、本実施形態で説明した保持構造では、開孔部2fおよび係合突起部15が、FPC2の幅方向(ピッチ方向)に沿って、一列に、かつ、等間隔で並ぶように配されている。開孔部2fおよび係合突起部15が一列に並んでいれば、FPC2の挿抜方向における係合突起部15の形成領域を最小限に止めることが可能となり、第1ハウジング部10の小型化を図る上で好適なものとなる。開孔部2fおよび係合突起部15が等間隔で並んでいれば、ピッチ方向で均一な保持力を得る上で非常に好適なものとなる。
さらに、本実施形態で説明した保持構造では、開孔部2fおよび係合突起部15が、導体2bおよび端子面2dが並ぶピッチの1つ置きに配されている。したがって、例えば各端子面2dの間の全てに開孔部2fを設けた場合に比べると、FPC2の端部近傍領域の強度を十分に確保し得るようになる。また、ピッチの1つ置き配置により、FPC2の強度不足を抑制しつつ、保持力向上が図れるようになる。
【0047】
(第1ハウジング部と第2ハウジング部との嵌合)
FPC2への第1ハウジング部10の取り付けを行った後は、続いて、第1ハウジング部10と第2ハウジング部20とを嵌合させる。
【0048】
第1ハウジング部10と第2ハウジング部20とを嵌合させるためには、
図1に示すように、第2ハウジング部20の嵌合凹部21に第1ハウジング部10の嵌合凸部13を挿入する(図中矢印参照)。そして、第1ハウジング部10の第1ロック機構部11と第2ハウジング部20の第2ロック機構部22とが互いに係合するまで、嵌合凹部21への嵌合凸部13の挿入を行う。第1ロック機構部11と第2ロック機構部22とが係合すると、第1ハウジング部10と第2ハウジング部20とが嵌合状態になる。
【0049】
第1ハウジング部10と第2ハウジング部20とが嵌合すると、第1ハウジング部10に取り付けられたFPC2における各端子面2dは、第2ハウジング部20が備える各リセ端子のそれぞれに接触する。そして、各端子面2dと各リセ端子との接触を通じて、FPC2と配線基板3との間の電気的な接続が確立されることになる。
【0050】
(5)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果が得られる。
【0051】
(a)本実施形態のコネクタ1は、第1ハウジング部10の係合突起部15をFPC2の開孔部2fに係合させることによって、当該FPC2への当該第1ハウジング部10の取り付け状態を保持するように構成されている。そして、第1ハウジング部10の係合突起部15は、FPC2の幅方向(ピッチ方向)の央部近傍領域を含む複数箇所に配されている。つまり、開孔部2fおよび係合突起部15の少なくとも一つは、ピッチ方向の央部領域に配されている。
したがって、本実施形態によれば、ピッチ方向の央部領域を含む複数箇所における係合を利用することになるので、ピッチ方向で均一な保持力を得ることが可能であり、その結果として必要十分な保持力が得られるようになる。具体的には、例えばFPC2に外力が加わった場合であっても、央部領域を含む複数箇所における係合を利用することで、その央部領域にてFPC2の撓みが生じてしまうのを抑制でき、FPC2と第1ハウジング部10との間の保持状態を適切に維持することができる。
しかも、本実施形態によれば、第1ハウジング部10の係合溝12へのFPC2の挿入のみで、FPC2における開孔部2fと第1ハウジング部10における係合突起部15とを容易に係合させることができる。つまり、別部品(ハウジング、リテーナ等)の追加、FPC2の異形状化、配線パターンの特殊化等を必要とすることなく、簡素な構成で容易に必要十分な保持力が得られる。そのため、FPC2等の汎用化への対応が困難になってしまうことがなく、部品点数の削減による顧客サイドでのハーネス作業性の向上やコストダウン等に貢献でき、コスト面および作業性の点でも好ましいものとなる。
つまり、本実施形態のコネクタ1によれば、FPC2について簡素な構成で必要十分な保持力を得ることが可能になる。
【0052】
(b)本実施形態のコネクタ1によれば、第1ハウジング部10における係合突起部15が、FPC2の幅方向(ピッチ方向)に沿って一列に並ぶように配されている。したがって、FPC2の挿抜方向における係合突起部15の形成領域を最小限に止めることが可能となり、第1ハウジング部10の小型化を図る上で好適なものとなる。
【0053】
(c)本実施形態のコネクタ1によれば、第1ハウジング部10における係合突起部15が、FPC2の幅方向(ピッチ方向)に沿って等間隔で並ぶように配されている。したがって、ピッチ方向で均一な保持力を得る上で非常に好適なものとなる。
【0054】
(d)本実施形態のコネクタ1によれば、第1ハウジング部10における係合突起部15が、FPC2において複数の導体2bが並ぶピッチの1つ置きに配されている。したがって、例えば各端子面2dの間の全てに開孔部2fを設けた場合に比べると、FPC2の端部近傍領域の強度を十分に確保し得るようになる。また、ピッチの1つ置き配置により、FPC2の強度不足を抑制しつつ、保持力向上が図れるようになる。
【0055】
(e)本実施形態のコネクタ1によれば、第1ハウジング部10における係合突起部15について、平面視した形状が円状(丸穴形状、長円形状、楕円形状、コーナRを設けた四角形状等)に形成されている。つまり、係合突起部15は、円状に形成された開孔部2fと係合する形状を有している。したがって、係合相手である開孔部2fについても円状に形成されることになるので、例えば隅部または角部のように応力集中が発生する箇所が存在せず、薄厚のFPC2に応力集中による破損等が生じてしまうのを抑制することができる。なお、円状が丸穴形状であれば、係合突起部15と開孔部2fとの係合の容易化を図る上で好適なものとなる。また、円状が長円形状、楕円形状、コーナRを設けた四角形状等であれば、丸穴形状の場合よりも、係合突起部15の強度を高める上で好適なものとなる。
【0056】
(f)本実施形態のコネクタ1によれば、第1ハウジング部10における係合突起部15が、FPC2の挿入側に面して形成された傾斜面を有している。したがって、FPC2の端縁が傾斜面15aによって案内されて係合突起部15を乗り越えることになり、第1ハウジング部10の係合溝12へのFPC2の挿入のみで、FPC2における開孔部2fと第1ハウジング部10における係合突起部15とを容易に係合させることができる。つまり、簡素な構成で容易に必要十分な保持力が得られるようになり、コスト面および作業性の点で非常に好ましいものとなる。
【0057】
(6)変形例等
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0058】
上述の実施形態では、主として、フレキシブル導電部材2がFPCである場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはなく、フレキシブル導電部材2がFFCである場合でも全く同様に適用することが可能である。つまり、所定ピッチで並ぶ複数の導体を有するフレキシブル導電部材に用いるコネクタであれば、本発明を適用することが可能である。
【0059】
また、上述の実施形態では、係合突起部15がピッチ方向に沿って一列に並ぶように配されている場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、係合突起部15が並ぶ列は、湾曲していてもよいし、千鳥状に配されていてもよい。このようにすれば、FPC2が係合突起部15を乗り越える際に必要とする当該FPC2の挿入力を、係合突起部15が一列に並ぶ場合に比べて軽減し得るようになる。つまり、係合突起部15が並ぶ列は、様々なフレキシブル導電部材2や配線基板3等に適切に対応し得るように、適宜設定されたものであればよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、係合突起部15がピッチ方向に沿って等間隔で並ぶように配されている場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。
例えば、係合突起部15は、ピッチ方向に沿って疎密を有した間隔で並ぶように配されていてもよい。このように、係合突起部15が疎密を有した間隔で並んでいれば、その粗密に応じて保持力を調整し得るようになる。具体的には、高い保持力が必要な領域については係合突起部15を密に並べ、保持力が低くても構わない領域については係合突起部15を疎に並べる、といったことが実現可能となる。
さらに、例えば、係合突起部15は、ピッチ方向の央部を挟んで非対称に配されていてもよい。このように、係合突起部15が非対称な間隔で並んでいれば、フレキシブル導電部材2の逆挿しを未然に防止することが実現可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1…コネクタ、2…フレキシブル導電部材(FPC、FFC)、2a…支持体、2b…導体、2c…絶縁カバー、2d…端子面、2e…補強板、2f…開孔部、3…配線基板、10…第1ハウジング部、11…第1ロック機構部、12…係合溝、13…嵌合凸部、14…開口部、15…係合突起部、15a…傾斜面、20…第2ハウジング部、21…嵌合凹部、22…第2ロック機構部