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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】アルデヒド用ポリマー吸着剤
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20220405BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220405BHJP
   C08F 236/20 20060101ALI20220405BHJP
   C08F 8/32 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B01J20/22 A
A61L9/00 Z
A61L9/01 K
C08F236/20
C08F8/32
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019569218
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 IB2018054312
(87)【国際公開番号】W WO2018229677
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】62/520,792
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ウェンドランド,マイケル エス.
(72)【発明者】
【氏名】コーベ,マイケル ダブリュ.
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-500408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0311996(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0144421(US,A1)
【文献】国際公開第2014/188908(WO,A1)
【文献】特開平01-094994(JP,A)
【文献】特開平04-290547(JP,A)
【文献】特表2004-536167(JP,A)
【文献】特開昭63-154766(JP,A)
【文献】特開2003-299719(JP,A)
【文献】特開2001-327589(JP,A)
【文献】特開2002-000710(JP,A)
【文献】LISA M. CROLL; ET AL,FORMATION OF TECTOCAPSULES BY ASSEMBLY AND CROSS-LINKING OF POLY(DIVINYLBENZENE-ALT-MALEIC ANHYDRIDE) SPHERES AT THE OIL-WATER INTERFACE,LANGMUIR,米国,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2003年05月08日,VOL. 19, NO. 14,PAGES: 5918 - 5922,https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/la026485h
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
A61L 9/00-9/22
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00,301/00
B01D 53/02-53/12
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー吸着剤にアルデヒドを吸着させる方法であって、
a)カルボン酸基を有する、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料と、
b)式-NHRのアミノ基を少なくとも2つ有する窒素含有化合物[式中、Rは、水素又はアルキルである]と、
の反応生成物を含み、前記窒素含有化合物は、イオン結合により前記加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料に付着しているポリマー吸着剤を用意することと、
前記ポリマー吸着剤に前記アルデヒドを吸着させることと、
を含み、
前記アルデヒドは、式(I)
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである]のものであり、前記式(I)のアルデヒドの分子量は200g/モル以下である、方法。
【請求項2】
前記ポリマー吸着剤が酸塩基染料を含み、前記酸塩基染料は、前記ポリマー吸着剤の前記アルデヒド吸着容量が限度に達するか又は限度に近い場合に変色する、請求項に記載の方法。
【請求項3】
(a)ポリマー吸着剤であって、
カルボン酸基を有する、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料と、
式-NHRのアミノ基を少なくとも2つ有する窒素含有化合物[式中、Rは、水素又はアルキルである]と、
の反応生成物を含み、前記窒素含有化合物は、イオン結合により前記加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料に付着しているポリマー吸着剤と、
(b)前記ポリマー吸着剤に吸着された、式(I)
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである]のアルデヒドと、
を含み、前記式(I)のアルデヒドの分子量は200g/mol以下である、組成物。
【請求項4】
前記加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料が、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体材料の加水分解生成物であり、前記ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体材料は、
1)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて8~65重量%の無水マレイン酸と、
2)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて30~85重量%のジビニルベンゼンと、
3)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせである、スチレン型モノマーと、
を含む重合性組成物から形成される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記窒素含有化合物が、式(V)
NHR
(V)
[式中、
は、水素又はアルキルであり、
は、式-R -NHR 、又は-(C=NH)-NH の基であり、
は、アルキレン、(ヘテロ)アリーレン、(ヘテロ)アラルキレン、1つ以上のオキシ(-O-)基を有するヘテロアルキレン、又は1つ以上の-NH-基を有するヘテロアルキレンであり、前記(ヘテロ)アリーレン及び(ヘテロ)アラルキレンは、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基で任意に置換されており、
は、水素、アルキル、又は-(C=NH)-NH である]
のものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記窒素含有化合物が、式(VI)
-(NHR
(VI)
[式中、
は、水素又はアルキルであり、
は、アルカンのz価基又はヘテロアルカンのz価基であり、
zは、3~10の範囲の整数である]
のものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記窒素含有化合物が、2000ダルトン以下の分子量を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
酸塩基染料を更に含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
複合顆粒にアルデヒドを吸着させる方法であって、
(a)ポリマー吸着剤であって、
カルボン酸基を有する、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料と、
式-NHRのアミノ基を少なくとも2つ有する窒素含有化合物[式中、Rは、水素又はアルキルである]と、
の反応生成物を含み、前記窒素含有化合物は、イオン結合により前記加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料に付着しているポリマー吸着剤と、
(b)バインダーと、
を含む複合顆粒を提供することと、
前記ポリマー吸着剤に前記アルデヒドを吸着させることと、
を含み、
前記アルデヒドは、式(I)
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである]のものであり、前記式(I)のアルデヒドの分子量は200g/mol以下である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年6月16日に出願された米国特許仮出願第62/520792号の優先権を主張するものであり、その開示の全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
アルデヒド用ポリマー吸着剤、ポリマー吸着剤にアルデヒドを吸着させる方法、ポリマー吸着剤を含む複合顆粒、及びポリマー吸着剤へのアルデヒドの吸着から生じる組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
ホルムアルデヒドは、既知の発癌性物質であり、アレルゲンである。このため、米国労働安全衛生局(Occupational Safety and Health Administration、OSHA)は、ホルムアルデヒド蒸気に関して、8時間の曝露制限を0.75ppm、15分の曝露制限を2ppmに設定している。その毒性にもかかわらず、ホルムアルデヒドは、大量生産されている工業的化合物である。ホルムアルデヒドは、例えば、発泡断熱材、パーティクルボード、カーペット、塗料及びワニスを含む、種々の建築材料における広範な使用が認められるポリマー材料を調製するために使用される。これらの建築材料からの残留ホルムアルデヒドのアウトガスにより、ホルムアルデヒドは、最も主要な室内空気汚染物質の1つになっている。ホルムアルデヒドはまた、有機材料の燃焼の副生成物でもある。したがって、ホルムアルデヒドは、自動車排ガス、メタン燃焼、森林火災及びタバコの煙から生じる一般的な外気汚染物質でもある。
【0004】
北米では、ホルムアルデヒドの厳しいアウトガス制限が建築材料に課されているが、世界の全ての地域でそうであるわけではない。例えば、アジアの一部の国々では、建築材料に対する制限はほとんどない。家庭用暖房及び自動車走行へのバイオ燃料の使用増加と重なり、危険レベルのホルムアルデヒド蒸気が室内空気と外気の両方で発生する可能性がある。このため、室内空気と外気の両方の汚染物質であるホルムアルデヒド蒸気に対するヒト曝露を減じるための解決策が直ちに必要である。
【0005】
ホルムアルデヒドは揮発性が高い(室温で気体である)ため、物理吸着の機構のみで捕捉することは極めて難しい。しかしながら、ホルムアルデヒドは反応性であることから、化学吸着によって、より容易に捕捉することができる。化学吸着の場合、ホルムアルデヒド蒸気は、吸着剤自体又は吸着剤に含浸させた化学物質との化学的反応により捕捉される。したがって、ホルムアルデヒド用高容量吸着剤を作製するのに重要な点は、ホルムアルデヒドに対する反応部位を多く有する吸着剤を用意することである。
【0006】
ホルムアルデヒドの捕捉に使用されている典型的な吸着剤材料の1つは、活性炭スキャフォールド(scaffold)によるものである。しかし、活性炭のスキャフォールドは、比較的不活性であり、この不活性により、活性炭スキャフォールド自体に高密度の反応性基を組み込むことは難しい。このため、ホルムアルデヒド用吸着剤の製造に対する努力のほとんどは、ホルムアルデヒドと反応できる含浸化学物質を見出すことに焦点が当てられてきた。そのため、活性炭スキャフォールドには、典型的に、ホルムアルデヒドと反応する種々の化学物質が含浸される。ホルムアルデヒドの捕捉に使用される最も一般的な2つの含浸化学物質は、スルファミン酸のナトリウム塩及びリン酸と共含浸させたエチレン尿素である。様々な他の金属塩も使用されている。
【0007】
含浸は、一般に、吸着剤の作製にいくつかの欠点を有する。まず、含浸化学物質は、移動する場合があり、これは、特に、他の吸着剤が同じ製品中に使用されている場合、問題となる。含浸の別の欠点は、揮発性有機化合物(VOC)を吸着する活性炭の能力が排除されてしまうことである。含浸化学物質が活性炭の孔を占有するため、物理吸着によってのみ捕捉される非反応性蒸気の捕捉に利用できる表面積が減少する。
【発明の概要】
【0008】
ホルムアルデヒドを含むアルデヒド用ポリマー吸着剤を提供する。より具体的には、ポリマー吸着剤は、イオン結合窒素含有基を有するイオン性ポリマー材料である。ポリマー吸着剤は、アルデヒドと反応し得る一級及び/又は二級アミノ基を有する。更に、ポリマー吸着剤を含有する顆粒複合物、ポリマー吸着剤にアルデヒド(即ち、使用条件下で揮発性であるアルデヒド)を吸着させる方法、及びポリマー吸着剤上でのアルデヒドの吸着から生じる組成物を提供する。
【0009】
第1の態様では、ポリマー吸着剤を提供する。ポリマー吸着剤は、a)カルボン酸基を有する、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料と、b)式-NHRのアミノ基を少なくとも2つ有する窒素含有化合物[式中、Rは、水素又はアルキルである]と、の反応生成物を含み、窒素含有化合物は、イオン結合により加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料に付着している。
【0010】
第2の態様では、ポリマー吸着剤にアルデヒドを吸着させる方法を提供する。方法は、上述のようなポリマー吸着剤を用意することと、次いで、ポリマー吸着剤にアルデヒドを吸着させることと、を含む。アルデヒドは、式(I)
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。]のものである。式(I)のアルデヒドの分子量は、典型的には、200g/モル以下である。
【0011】
第3の態様では、(a)上述のようなポリマー吸着剤と、(b)ポリマー吸着剤上で吸着したアルデヒドと、を含む組成物を提供する。アルデヒドは、式(I)
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。]のものである。式(I)のアルデヒドの分子量は、典型的には、200g/モル以下である。
【0012】
第4の態様では、ポリマー吸着剤の調製方法を提供する。本方法は、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料を用意することを含む。方法は、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料を加水分解して、カルボン酸基(-COOH基)を有する加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料を形成することを更に含む。方法は、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料を、式-NHR[式中、Rは、水素又はアルキルである]のアミノ基を少なくとも2つ有する窒素含有化合物と反応させることを更に含む。この反応は、イオン結合により付着した窒素含有基を有するポリマー吸着剤の形成をもたらす。
【0013】
第5の態様では、(a)上記のポリマー吸着剤と、(b)バインダーと、を含む、複合顆粒が提供される。
【0014】
第6の態様では、上記のポリマー吸着剤を調製することを含む、複合顆粒の製造方法が提供される。方法は、ポリマー吸着剤をバインダーと配合して配合材料を形成することと、この配合材料から複合顆粒を調製することを更に含む。
【0015】
第7の態様では、複合顆粒にアルデヒドを吸着させる(すなわち、捕捉する)方法が提供される。方法は、ポリマー吸着剤及びバインダーを含有する、上記の複合顆粒を提供することを含む。本方法は、複合顆粒をアルデヒドに曝露することと、アルデヒドをポリマー吸着剤上に吸着させることと、を更に含む。アルデヒドは、式(I)のアルデヒド:
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。]のものである。式(I)のアルデヒドの分子量は、200g/mol以下である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ポリマー吸着剤を提供する。加えて、ポリマー吸着剤の製造方法、ポリマー吸着剤にアルデヒドを吸着させる方法、ポリマー吸着剤へのアルデヒドの吸着から生じる組成物、ポリマー吸着剤を含有する複合顆粒、複合顆粒を製造する方法、及び複合顆粒上にアルデヒドを吸着させる方法を提供する。ポリマー吸着剤は、典型的には、多孔質であり、細穴は多くの場合、メソ細孔及び/又はミクロ細孔の寸法範囲にある。
【0017】
より具体的には、ポリマー吸着剤は、カルボン酸基(-COOH基)を有する、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料と、2つの一級及び/又は二級アミノ基を有する窒素含有化合物との反応生成物である。窒素含有化合物は、ポリマー吸着剤中の加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料にイオン結合により付着した第1の一級及び/又は二級アミノ基を有する。更に、窒素含有化合物は、アルデヒドと反応し得る少なくとも1つの第2の一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有する。
【0018】
ポリマー吸着剤は、室温又は使用条件下で揮発性であるアルデヒドを吸着させるのに使用することができる。好適なアルデヒドは、典型的には、式(I)
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。]のものである。式(I)のアルデヒドの分子量は、典型的には、200g/モル以下である。いくつかの実施形態において、アルデヒドはホルムアルデヒド(Rが水素である。)又はアセトアルデヒド(Rがメチルである。)である。
【0019】
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と区別なく使用され、記載される要素のうちの1つ以上を意味する。
【0020】
用語「及び/又は(and/or)」は、いずれか一方又は両方を意味する。例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、Bのみ、又はAとBとの両方を意味する。
【0021】
用語「アルキル」とは、飽和炭化水素であるアルカンの一価の基を指す。アルキルは、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、又は少なくとも3個の炭素原子を有する場合があり、最大20個の炭素原子、最大18個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、最大6個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有する場合がある。
【0022】
用語「(ヘテロ)アルキレン」は、ヘテロアルキレン及び/又はアルキレンを指す。
【0023】
用語「アルキレン」は、アルカンの二価の基を指す。アルキレンは、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、又は少なくとも3個の炭素原子を有する場合があり、最大20個の炭素原子、最大18個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、最大6個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有する場合がある。
【0024】
用語「ヘテロアルキレン」は、ヘテロアルカンの二価の基を指す。ヘテロアルキレンは、式-R-O-R-又は-R-NH-R-[式中、Rは、上記に定義したアルキレンである。]の1つ以上の基を有する。各Rは、多くの場合、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、1~3個の炭素原子、又は1~2個の炭素原子を有する。
【0025】
用語「(ヘテロ)アリール」は、ヘテロアリール及び/又はアリールを指す。
【0026】
用語「アリール」とは、炭素環式芳香環化合物の一価の基を指す。アリールは、少なくとも5個の炭素原子又は少なくとも6個の炭素原子を有する場合があり、最大20個の炭素原子、最大18個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、又は最大10個の炭素原子を有する場合がある。アリールは、1つを超える又はそれ以上の炭素環式芳香環を有し得る。複数の炭素環式芳香環は、単結合によって結合されていてもよく、又は一緒に縮合されていてもよい。
【0027】
用語「ヘテロアリール」とは、複素環式芳香環化合物の一価の基を指す。ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1つ以上のヘテロ原子を含有する。ヘテロアリールは、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、又は少なくとも5個の炭素原子を有する場合があり、少なくとも1個のヘテロ原子、少なくとも2個のヘテロ原子、又は少なくとも3個のヘテロ原子を有する場合がある。ヘテロアリールは、多くの場合、2~10個の炭素原子及び1~5個のへテロ原子、2~6個の炭素原子及び1~3個のへテロ原子、又は2~4個の炭素原子及び1~3個のへテロ原子を有する。ヘテロアリールは、1つ以上の複素芳香環を有する場合がある。1つ以上の複素芳香環が、単結合により、炭素環式又は複素環式である別の芳香環と縮合又は結合し得る。
【0028】
用語「(ヘテロ)アリーレン」は、ヘテロアリーレン及び/又はアリーレンを指す。
【0029】
用語「アリーレン」とは、炭素環式芳香環化合物の二価の基を指す。アリーレンは、少なくとも5個の炭素原子又は少なくとも6個の炭素原子を有する場合があり、最大20個の炭素原子、最大18個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、又は最大10個の炭素原子を有する場合がある。炭素環式アリーレンは、1つ以上の炭素環式芳香環を有し得る。複数の炭素環式芳香環は、単結合によって結合されていてもよく、又は一緒に縮合されていてもよい。
【0030】
用語「ヘテロアリーレン」とは、芳香環化合物の二価の基を指す。ヘテロアリーレンは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1つ以上のヘテロ原子を含有する。ヘテロアリーレンは、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、又は少なくとも5個の炭素原子を有する場合があり、少なくとも1個のヘテロ原子、少なくとも2個のヘテロ原子、又は少なくとも3個のヘテロ原子を有する場合がある。ヘテロアリーレンは、多くの場合、2~10個の炭素原子及び1~5個のへテロ原子、2~6個の炭素原子及び1~3個のへテロ原子、又は2~4個の炭素原子及び1~3個のへテロ原子を有する。ヘテロアリーレンは、1つ以上の複素芳香環を有し得る。1つ以上の複素芳香環が、単結合により、炭素環式又は複素環式である別の芳香環と縮合又は結合し得る。
【0031】
用語「(ヘテロ)アラルキレン」は、ヘテロアラルキレン及び/又はアラルキレンを指す。
【0032】
用語「アラルキレン」は、アリール基で置換されたアルキレン、アルキル基で置換されたアリーレン、又はアルキレン基に結合したアリーレンである、二価の基を指す。アリール、アリーレン、及びアルキル基は、上記で定義したものと同じである。
【0033】
用語「ヘテロアラルキレン」は、ヘテロアリールで置換されたアルキレン、アルキル基で置換されたヘテロアリーレン、又はアルキレン基に結合したヘテロアリーレンである、二価の基を指す。ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、及びアルキル基は、上記で定義したものと同じである。
【0034】
用語「ビニル」は、式CHR=CR-[式中、各Rは、独立して、水素又はアルキル(例えば、メチル)である。]の基を指す。
【0035】
用語「一級アミノ基」は、式-NHR[式中、Rは水素に等しい。]の基を指し、用語「二級アミノ基」は、式-NHR[式中、Rはアルキルに等しい。]の基を指す。
【0036】
用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」は、区別なく使用され、1つ以上のモノマーを反応させることによって形成された材料を指す。これらの用語は、ホモポリマー、コポリマー又はターポリマーなどを含む。同様に、用語「重合する」及び「重合すること」は、ホモポリマー、コポリマー、又はターポリマーなどであり得るポリマー材料を製造するプロセスを指す。
【0037】
ポリマー材料を指すとき、用語「多孔質」は、ポリマー材料が細孔を有し、例えばアルデヒドなどのガス状物質を吸着することができることを意味する。ほとんどの実施形態において、ポリマー吸着剤は多孔質である。ポリマー吸着剤などの多孔質材料は、それらの細孔の径に基づいて特徴付けることができる。用語「ミクロ細孔」は、2ナノメートル未満の直径を有する細孔を指す。用語「メソ細孔」は、2~50ナノメートルの範囲内の直径を有する細孔を指す。用語「マクロ細孔」は、50ナノメートル超の直径を有する細孔を指す。ポリマー材料の多孔度は、極低温条件(例えば、77Kの液体窒素)下でのポリマー材料による窒素又はアルゴンなどの不活性ガスの吸着等温線から特徴付けることができる。吸着等温線は、典型的に、約10-6~約0.98±0.01の範囲の複数の相対圧力(p/p°)におけるポリマー材料による、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスの吸着率を測定することによって得られる。次いで、比表面積を計算するためのブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller、BET)法、並びに多孔度及び孔径分布を特性評価するための密度汎関数理論(Density Functional Theory、DFT)などの、様々な方法を用いて、等温線を分析する。
【0038】
「吸着している」という用語、並びに「吸着する」、「吸着した」、及び「吸着」などの類似の単語は、吸着、吸収、又はその両方により、第1の物質(例えば、アルデヒドなどのガス)を、第2の物質(例えば、ポリマー吸着剤などのポリマー材料)に付加することを指す。同様に、「吸着剤」という用語は、吸着、吸収又はその両方により、第1の物質を吸着する第2の物質を指す。
【0039】
用語「表面積」は、到達可能な細孔の内表面を含む、材料の表面の総面積を指す。表面積は、典型的には、ある範囲の相対圧力にわたって極低温条件下(例えば、77Kの液体窒素)で材料の表面に吸着する、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスの量を測定することによって得られる吸着等温線から計算される。用語「BET比表面積」は、BET法を用い、相対圧力範囲0.05~0.30にわたる不活性ガスの吸着等温線データから通常算出される、材料1g当たりの表面積(典型的には、m/g)である。
【0040】
用語「重合性組成物」は、ポリマー材料を形成するために使用される、反応混合物に含まれる全ての材料を含む。重合性組成物には、例えば、モノマー混合物、有機溶媒、開始剤、及び他の任意選択の成分が含まれる。有機溶媒などの重合性組成物中の成分の一部は、化学反応は起こさないものの、化学反応及び得られるポリマー材料に影響を与え得る。
【0041】
用語「モノマー混合物」は、重合性組成物の、モノマーを含む部分を指す。より具体的には、本明細書で使用する場合、モノマー混合物は、少なくともジビニルベンゼン及び無水マレイン酸を含む。
【0042】
用語「ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料」及び「ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料」並びに「前駆体ポリマー材料」及び「前駆体ポリマー」は、互換的に用いられ、ジビニルベンゼン、無水マレイン酸、及び任意でスチレン型モノマーから調製されるポリマー材料を指す。このポリマー材料は、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料の前駆体である。
【0043】
用語「加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料」及び「加水分解ポリマー材料」及び「加水分解ポリマー」は、互換的に使用され、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料がカルボン酸基(-COOH)を有するように、加水分解剤及び任意に酸によりジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料を処理することにより形成される、ポリマー材料を指す。カルボン酸基は、一級及び/又は二級アミノ基を有する窒素含有化合物とイオン結合を形成することができる。
【0044】
「スチレン型モノマー」という用語は、スチレン、アルキル置換スチレン(例えばエチルスチレン)、又はそれらの混合物を指す。これらのモノマーは、ジビニルベンゼン中に不純物としてしばしば存在する。
【0045】
用語「室温」は、20℃~30℃の範囲、20℃~25℃の範囲、25℃に近くかつ25℃を含む範囲、又は25℃の温度を指す。
【0046】
一態様では、ポリマー吸着剤を提供する。別の態様では、ポリマー吸着剤の調製方法を提供する。ポリマー吸着剤は、カルボン酸基を有する、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料と、式-NHR[式中、Rは、水素又はアルキルである。]のアミノ基を少なくとも2つ有する窒素含有化合物とを反応させることによって形成される。少なくとも2つのアミノ基のうちの1つは、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料中のカルボン酸基とイオン結合を形成する。即ち、窒素含有化合物は、ポリマー吸着剤の一部になる。
【0047】
加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料は、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料から形成される。前駆体ポリマー材料の合成に用いられる条件は、典型的に、この材料が少なくとも100m/g相当のBET比表面積を有するように選択される。
【0048】
前駆体ポリマー材料(すなわち、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料)は、典型的に、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、及び任意のスチレン型モノマーを含有するモノマー混合物を含む重合性組成物から合成される。前駆体ポリマー材料は通常、1)8~65重量%の無水マレイン酸、2)30~85重量%のジビニルベンゼン、及び3)0~40重量%のスチレン型モノマー(スチレン型モノマーは、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせである。)を含有するモノマー混合物から生成される。量は、重合性組成物中のモノマーの総重量に等しい、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づく。前駆体ポリマー材料を使用して、アルデヒドの吸着に特に効果的なポリマー吸着剤を形成する場合、モノマー混合物は、多くの場合、1)15~65重量%の無水マレイン酸、2)30~85重量%のジビニルベンゼン、及び3)0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせであるスチレン型モノマー、を含有する。
【0049】
モノマー混合物に含まれる無水マレイン酸により、前駆体ポリマー材料内に式(II)の無水マレイン酸モノマー単位が形成される。
【化1】
この式及び本明細書に含まれる他の式中のアステリスクは、モノマー単位の別のモノマー単位への、又は、末端基への結合位置を示す。
【0050】
前駆体ポリマー材料の生成に用いられる無水マレイン酸の量は、前駆体ポリマー材料と反応してポリマー吸着剤を生成することができる窒素含有化合物の量に影響を及ぼす。窒素含有化合物は、無水物基と反応して、ポリマー吸着剤であるポリマー材料にイオン結合により付着するようになる。
【0051】
いくつかの実施形態において、モノマー混合物に含まれる無水マレイン酸の量は、少なくとも8重量%、少なくとも10重量%、少なくとも12重量%、少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%である。無水マレイン酸の量は、最大65重量%、最大60重量%、最大55重量%、最大50重量%、最大45重量%、最大40重量%、最大35重量%、最大30重量%、又は最大25重量%とすることができる。例えば、無水マレイン酸は、8~65重量%、15~65重量%、15~60重量%、15~50重量%、15~40重量%、20~65重量%、20~60重量%、20~50重量%、20~40重量%、30~65重量%、30~60重量%、30~50重量%、40~65重量%、又は40~60重量%の範囲で存在してもよい。量は、前駆体ポリマー材料の生成に用いられる重合性組成物に含有されるモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づく。
【0052】
換言すれば、前駆体ポリマー材料は、式(II)のモノマー単位を、8~65重量%、15~65重量%、15~60重量%、15~50重量%、15~40重量%、20~65重量%、20~60重量%、20~50重量%、20~40重量%、30~65重量%、30~60重量%、30~50重量%、40~65重量%、又は40~60重量%の範囲で含有する。これらの量は、前駆体ポリマー材料中のモノマー単位の総重量に基づく。
【0053】
モノマー混合物に含まれるジビニルベンゼンにより、前駆体ポリマー材料内に式(III)のジビニルベンゼンモノマー単位が形成される。
【化2】
ベンゼン環に結合した2つの基は、互いにオルト位、メタ位、又はパラ位であり得る。式(III)のモノマー単位は、高い架橋密度並びにミクロ細孔及び/又はメソ細孔を有する硬質ポリマー材料の生成に寄与する。
【0054】
前駆体ポリマー材料の生成に用いられるジビニルベンゼンの量は、前駆体ポリマー材料及びポリマー吸着剤の両方のBET比表面積に強い影響を有し得る。BET比表面積は、前駆体ポリマー材料の生成に用いられるモノマー混合物中のジビニルベンゼンの量の増加と共に、また、その結果得られる、ポリマー吸着剤中の式(III)のモノマー単位の量と共に増加する傾向がある。ジビニルベンゼンの量が30重量%未満である場合、ポリマー吸着剤が、十分に高いBET比表面積を有さない場合がある。一方、ジビニルベンゼンの量が85重量%超である場合、ポリマー吸着剤中の窒素含有基がより少ないため、吸着したアルデヒドの量が損なわれる場合がある。いくつかの実施形態において、モノマー混合物に含まれるジビニルベンゼンの量は、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも45重量%である。ジビニルベンゼンの量は、最大85重量%、最大80重量%、最大75重量%、最大70重量%、最大65重量%、最大60重量%、又は最大50重量%とすることができる。例えば、量は、30~85重量%、30~80重量%、30~75重量%、30~70重量%、30~65重量%、30~60重量%、30~55重量%、30~50重量%、35~80重量%、35~70重量%、35~60重量%、40~85重量%、40~80重量%、40~70重量%、又は40~60重量%の範囲とすることができる。量は、前駆体ポリマー材料の生成に用いられる重合性組成物に含有されるモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づく。
【0055】
換言すれば、前駆体ポリマー材料は、式(III)のモノマー単位を、30~85重量%、30~80重量%、30~75重量%、30~70重量%、30~65重量%、30~60重量%、30~55重量%、30~50重量%、35~80重量%、35~70重量%、35~60重量%、40~85重量%、40~80重量%、40~70重量%、又は40~60重量%の範囲で含有する。これらの量は、前駆体ポリマー材料中のモノマー単位の総重量に基づく。
【0056】
ジビニルベンゼンは、純粋な形態で得ることが困難な場合がある。例えば、ジビニルベンゼンは、55重量%程度の低い純度で市販されていることが多い。ジビニルベンゼンを約80重量%超の純度で得るのは、困難かつ/又は高コストであり得る。ジビニルベンゼンに付随する不純物は、典型的には、スチレン、アルキル置換スチレン(例えばエチルスチレン)又はこれらの混合物などのスチレン型モノマーである。したがって、スチレン型モノマーは、多くの場合、前駆体ポリマー材料の生成に用いられる重合性組成物に含有されるモノマー混合物中のジビニルベンゼン及び無水マレイン酸と共に存在する。モノマー混合物は、典型的には、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%のスチレン型モノマーを含有する。スチレン型モノマーの含量が40重量%超である場合、少なくとも100m/g相当のBET比表面積を有するジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料を実現するには、架橋密度が低過ぎる場合があり、かつ/又は架橋間距離が大き過ぎる場合がある。架橋密度が低下するのに従い、ポリマー吸着剤は剛性が低下し、多孔性が低下する傾向がある。典型的には、55重量%の純度を有するジビニルベンゼンは、スチレン型モノマー不純物の含量が高過ぎるため、前駆体ポリマー材料の生成に用いられるモノマー混合物中での使用には好適でない。モノマー混合物が過度に多くのスチレン型モノマーを含有する場合、ジビニルベンゼンの量は不所望に低いことがある。純度が約80重量%未満のジビニルベンゼンを用いると、BET比表面積が望ましくなく低い前駆体ポリマー材料及び/又はポリマー吸着剤が生成される場合がある。
【0057】
モノマー混合物に含まれるスチレン型モノマーにより、前駆体ポリマー材料内に式(IV)のスチレン型モノマー単位の存在がもたらされる。
【化3】
基Rは水素又はアルキル(例えば、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)である。
【0058】
いくつかの実施形態において、前駆体ポリマー材料の生成に用いられるスチレン型モノマーの量は、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、又は少なくとも5重量%である。スチレン型モノマーの量は、最大40重量%、最大30重量%、最大20重量%、又は最大10重量%とすることができる。例えば、量は、0~40重量%、1~40重量%、5~40重量%、10~40重量%、0~30重量%、1~30重量%、5~30重量%、10~30重量%、0~20重量%、1~20重量%、5~20重量%、又は10~20重量%の範囲とすることができる。量は、前駆体ポリマー材料の生成に用いられる重合性組成物に含有されるモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づく。
【0059】
換言すれば、前駆体ポリマー材料は、式(IV)のモノマー単位を、0~40重量%、1~40重量%、5~40重量%、10~40重量%、0~30重量%、1~30重量%、5~30重量%、10~30重量%、0~20重量%、1~20重量%、5~20重量%、又は10~20重量%の範囲で含有する。これらの量は、前駆体ポリマー材料中のモノマー単位の総重量に基づく。
【0060】
全体として、前駆体ポリマー材料は、8~65重量%の無水マレイン酸、30~85重量%のジビニルベンゼン、及び0~40重量%のスチレン型モノマーを含む、モノマー混合物を含有する重合性組成物から生成される。いくつかの実施形態において、モノマー混合物は、15~65重量%の無水マレイン酸、30~85重量%のジビニルベンゼン、及び0~40重量%(又は5~40重量%)のスチレン型モノマーを含有する。いくつかの実施形態は、25~65重量%の無水マレイン酸、30~75重量%のジビニルベンゼン、及び1~20重量%(又は5~20重量%)のスチレン型モノマーを含有する。いくつかの実施形態は、25~60重量%の無水マレイン酸、30~75重量%のジビニルベンゼン、及び1~30重量%(又は5~30重量%若しくは10~30重量%)のスチレン型モノマーを含有する。更に他の実施形態において、モノマー混合物は、30~65重量%の無水マレイン酸、30~70重量%のジビニルベンゼン、及び1~20重量%(又は5~20重量%若しくは10~20重量%)のスチレン型モノマーを含有する。更に他の実施形態において、モノマー混合物は、30~60重量%の無水マレイン酸、30~65重量%のジビニルベンゼン、及び1~20重量%(又は5~20重量%若しくは10~20重量%)のスチレン型モノマーを含有する。更なる実施形態において、モノマー混合物は、40~60重量%の無水マレイン酸、30~55重量%のジビニルベンゼン、及び1~20重量%(又は5~20重量%若しくは10~20重量%)のスチレン型モノマーを含有する。また、更なる実施形態において、モノマー混合物は、20~40重量%の無水マレイン酸、50~70重量%のジビニルベンゼン、及び1~20重量%(又は5~20重量%若しくは10~20重量%)のスチレン型モノマーを含有する。重量%値は、前駆体ポリマー材料の生成に用いられるモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づく。
【0061】
前駆体ポリマー材料の生成に用いられる重合性組成物に含まれるモノマー混合物は、典型的には、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、及びスチレン型モノマーから選択される少なくとも95重量%のモノマーを含有する。例えば、モノマー混合物中のモノマーの少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.9重量%、又は100重量%は、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、及びスチレン型モノマーから選択される。高純度のジビニルベンゼンが用いられるいくつかの実施形態において、モノマー混合物は、ジビニルベンゼン及び無水マレイン酸のみを含有する。すなわち、ジビニルベンゼン及び無水マレイン酸の量の合計は100重量%である。
【0062】
モノマー混合物に加え、前駆体ポリマー材料の生成に用いられる重合性組成物は、有機溶媒を含む。重合性組成物は、重合前には単一相である。換言すれば、重合前には、重合性組成物は懸濁液ではない。有機溶媒は、モノマー混合物に含まれるモノマーを溶解し、かつ前駆体ポリマー材料が生成し始める際にこれを可溶化するように選択される。有機溶媒としては、典型的には、ケトン、エステル、アセトニトリル、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0063】
有機溶媒は、前駆体ポリマー材料の生成中にポロゲンとして機能することができる。有機溶媒の選択は、BET比表面積、及び前駆体ポリマー材料中に形成される細孔のサイズに強く影響を及ぼし得る。モノマー及び生成するポリマーのいずれとも混和性である有機溶媒を用いることにより、前駆体ポリマー材料内でミクロ細孔及びメソ細孔が形成されやすくなる。モノマー及び形成するポリマーに好適な溶媒は、前駆体ポリマー材料の多孔のより多くの部分をミクロ細孔及びメソ細孔の形態にしやすい。
【0064】
ミクロ細孔及びメソ細孔を有する前駆体ポリマー材料の製造に特に好適な有機溶媒としては、ケトン、エステル、アセトニトリル、及びこれらの混合物が挙げられる。有機溶媒は、前駆体ポリマー材料のBET比表面積に影響を及ぼし得る。典型的に、前駆体ポリマー材料は、少なくとも100m/g相当のBET表面積を有することが望ましい。得られる前駆体ポリマー材料が少なくとも100m/g相当のBET比表面積を有している場合には、上記に挙げた有機溶媒の1種以上と共に、他の有機溶媒を添加することができる。好適なケトンの例としては、これらに限定されないが、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンなどのアルキルケトンが挙げられる。好適なエステルの例としては、これらに限定されないが、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、及び酢酸tert-ブチルなどの酢酸エステルが挙げられる。
【0065】
有機溶媒は、任意の所望の量で用いることができる。重合性組成物は、多くの場合、1~75重量%の範囲の固形分%を有する(すなわち、重合性組成物は、25~99重量%の有機溶媒を含有する。)。固形分%が低すぎると、重合時間が不所望に長くなる場合がある。固形分%は、多くの場合、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%である。しかしながら、固形分重量%が高過ぎると、モノマーは有機溶媒との単一相を形成しない。更に、固形分%を増加させると、BET比表面積がより低い前駆体ポリマー材料が生成されやすくなる。固形分%は、通常、最大75重量%、最大70重量%、最大60重量%、最大50重量%、最大40重量%、最大30重量%、又は最大25重量%とすることができる。例えば、固形分%は、5~75重量%、5~70重量%、5~60重量%、5~50重量%、5~40重量%、5~30重量%、又は5~25重量%の範囲とすることができる。
【0066】
モノマー混合物及び有機溶媒に加え、前駆体ポリマー材料の生成に用いられる重合性組成物は、典型的には、フリーラジカル重合反応用の開始剤を含む。任意の好適なフリーラジカル開始剤を用いることができる。好適なフリーラジカル開始剤は、典型的には、重合性組成物に含まれるモノマーと混和性であるように選択される。いくつかの実施形態において、フリーラジカル開始剤は、室温よりも高い温度で活性化され得る熱開始剤である。他の実施形態において、フリーラジカル開始剤はレドックス開始剤である。重合反応はフリーラジカル反応であるため、重合性組成物中の酸素の量を最小限に抑えることが望ましい。
【0067】
開始剤の種類及び量はいずれも重合速度に影響し得る。概して、開始剤の量を増やすとBET比表面積が小さくなる傾向があるが、開始剤の量が少なすぎるとモノマーからポリマー材料への高い変換率を得ることが困難になる場合がある。フリーラジカル開始剤は、典型的には、0.05~10重量%、0.05~8重量%、0.05~5重量%、0.1~10重量%、0.1~8重量%、0.1~5重量%、0.5~10重量%、0.5~8重量%、0.5~5重量%、1~10重量%、1~8重量%、又は1~5重量%の範囲の量で存在する。重量%は、重合性組成物中のモノマーの総重量に基づく。
【0068】
好適な熱開始剤としては、有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。アゾ化合物の例としては、これらに限定されるものではないが、商標名VAZOでE.I.du Pont de Nemours Co.(Wilmington,DE)より市販されているもの、例えば、VAZO 64(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル))(AIBNと呼ばれることが多い)及びVAZO 52(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル))などが挙げられる。他のアゾ化合物は、Wako Chemicals USA,Inc.(Richmond,VA)より市販されており、例えば、V-601(ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))、V-65(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))、及びV-59(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル))などである。有機過酸化物としては、これらに限定されないが、過酸化ベンゾイル(BPO)などのビス(1-オキソアリール)ペルオキシド、過酸化ラウロイルなどのビス(1-オキソアルキル)ペルオキシド、及び過酸化ジクミル又は過酸化ジ-tert-ブチルなどのジアルキルペルオキシド、並びにこれらの混合物が挙げられる。熱開始剤の活性化に必要な温度は、多くの場合、25℃~160℃の範囲、30℃~150℃の範囲、40℃~150℃の範囲、50℃~150℃の範囲、50℃~120℃の範囲、又は50℃~110℃の範囲である。
【0069】
好適なレドックス開始剤としては、アリールスルフィン酸塩、トリアリールスルホニウム塩、又は酸化状態の金属、過酸化物、若しくは過硫酸塩と組み合わせたN,N-ジアルキルアニリン(例えば、N,N-ジメチルアニリン)が挙げられる。具体的なアリールスルフィン酸塩としては、テトラブチルアンモニウム4-エトキシカルボニルベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム4-トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、及びテトラブチルアンモニウム3-トリフルオロメチルベンゼンスルフィネートなどのテトラアルキルアンモニウムアリールスルフィネートが挙げられる。具体的なトリアリールスルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムカチオンを有するもの、並びにPF 、AsF 、及びSbF から選択されるアニオンを有するものが挙げられる。好適な金属イオンとしては、例えば、第3族の金属、遷移金属、及びランタニド金属のイオンが挙げられる。具体的な金属イオンとしては、これらに限定されないが、Fe(III)、Co(III)、Ag(I)、Ag(II)、Cu(II)、Ce(III)、Al(III)、Mo(VI)、及びZn(II)が挙げられる。好適な過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどが挙げられる。好適な過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸テトラアルキルアンモニウム(例えば、過硫酸テトラブチルアンモニウム)などが挙げられる。
【0070】
重合性組成物は、典型的には、界面活性剤を含まない、又は、実質的に含まない。本明細書で用いる場合、界面活性剤に関して「実質的に含まない」という用語は、界面活性剤が重合性組成物に意図的に加えられておらず、存在し得る任意の界面活性剤は、重合性組成物の構成成分の1つに存在する不純物(例えば、有機溶媒中又はモノマーの1つに存在する不純物)によるものであるという意味である。重合性組成物は、典型的には、重合性組成物の総重量に基づいて0.5重量%未満、0.3重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は0.01重量%未満の界面活性剤を含有する。界面活性剤は、前駆体ポリマー材料中のミクロ細孔及びメソ細孔への到達を制限する傾向があり、場合によってはこれらの細孔を塞ぐ傾向があるため、これらの材料を含まないことが有利である。
【0071】
重合性組成物がフリーラジカル開始剤の存在下で加熱されると、モノマー混合物中のモノマーの重合が起こる。モノマー混合物中の各モノマーの量のバランスをとることによって、かつ、全モノマー及び成長中のポリマー材料をその初期の生成段階中に可溶化できる有機溶媒を選択することによって、少なくとも100m/g相当のBET比表面積を有する前駆体ポリマー材料を調製することができる。前駆体ポリマー材料のBET比表面積は、少なくとも150m/g、少なくとも200m/g、又は少なくとも300m/gとすることができる。BET比表面積は、例えば、最大1000m/g若しくはそれ以上、最大900m/g、最大800m/g、最大750m/g、又は最大700m/gとすることができる。
【0072】
ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料の構造は、多孔質ポリマー吸着剤用の前駆体ポリマー材料としての使用に特に非常に好適である。スチレン型モノマーからの式(IV)のモノマー単位の含有量が低いのであれば、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料は、ジビニルベンゼン及び無水マレイン酸からの交互モノマー単位を有する。この構造は高い架橋をもたらし、多孔質ポリマー材料、特にミクロ細孔及び/又はメソ細孔の含量が高い多孔質ポリマー材料の生成に寄与する。
【0073】
前駆体ポリマー材料は、重合性組成物の反応生成物である。前駆体ポリマー材料は、通常、
(a)8~65重量%の式(II)
【化4】
の第1のモノマー単位、
(b)30~85重量%の式(III)
【化5】
の第2のモノマー単位、
(c)0~40重量%の式(IV)
[式中、Rは、水素又はアルキル(例えば、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)である。]
【化6】
の第3のモノマー単位、
を含有する重合性組成物から生成される。
【0074】
多くの実施形態において、アルデヒド用ポリマー吸着剤として特に効果的であるように、前駆体ポリマー材料は、(a)15~65重量%の式(II)の第1のモノマー単位、(b)30~85重量%の式(III)の第2のモノマー単位、及び(c)0~40重量%(又は5~40重量%)の式(IV)の第3のモノマー単位を含有する。各重量%値は、前駆体ポリマー材料中のモノマー単位の総重量に基づく。
【0075】
前駆体ポリマー材料のいくつかの実施形態は、25~65重量%の、式(II)の第1モノマー単位、30~75重量%の、式(III)の第2モノマー単位、及び1~20重量%(又は5~20重量%)の、式(IV)の第3モノマー単位、を含有する。いくつかの実施形態は、25~60重量%の、式(II)の第1モノマー単位、30~75重量%の、式(III)の第2モノマー単位、及び1~30重量%(又は5~30重量%、若しくは10~30重量%)の、式(IV)の第3モノマー単位、を含有する。更にその他の実施形態では、モノマー混合物は、30~65重量%の、式(II)の第1モノマー単位、30~70重量%の、式(III)の第2モノマー単位、及び1~20重量%(又は5~20重量%、若しくは10~20重量%)の、式(IV)の第3モノマー単位、を含有する。更にその他の実施形態において、モノマー混合物は、30~60重量%の、式(II)の第1のモノマー単位、30~65重量%の、式(III)の第2のモノマー単位、及び1~20重量%(又は5~20重量%、若しくは10~20重量%)の、式(IV)の第3のモノマー単位、を含有する。更なる実施形態では、モノマー混合物は、40~60重量%の、式(II)の第1モノマー単位、30~55重量%の、式(III)の第2モノマー単位、及び1~20重量%(又は5~20重量%、若しくは10~20重量%)の、式(IV)の第3モノマー単位、を含有する。更に他の実施形態では、モノマー混合物は、20~40重量%の、式(II)の第1モノマー単位、50~70重量%の、式(III)の第2モノマー単位、及び1~20重量%(又は5~20重量%、若しくは10~20重量%)の、式(IV)の第3モノマー単位、を含有する。重量%値は、前駆体ポリマー材料に用いられるモノマー単位の総重量に基づく。
【0076】
前駆体ポリマー材料は、加水分解され、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料を形成する。加水分解により、前駆体ポリマー材料中の式(II)の基の開環が生じる。すなわち、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料は、pH条件及び選択される特定の加水分解剤に応じて、以下の種類の基(VII-A、VII-B、及びVII-C)のうちの1つ以上を含む。
【化7】
【化8】
【化9】
式(VII-A)の基は、2つのカルボン酸基を有する。式(VII-B)の基は、カルボン酸基及びカルボキシレートアニオンの両方を有する。式(VII-C)の基は、2つのカルボキシレートアニオンを有する。式(VII-B)及び(VII-C)の基において、Mは任意の好適なカチオンであり得るが、多くの場合、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属カチオンである。加水分解反応は、典型的に、少なくとも70mol%、少なくとも75mol%、少なくとも80mol%、少なくとも85mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも97mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は100mol%の無水物基をカルボン酸及び/又はカルボキシレート基に変換する。
【0077】
加水分解反応は、多くの場合、前駆体ポリマー材料を、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、又はこれらの組み合わせの溶液と混合することによって、室温又は室温付近で行われる。具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。溶液は、典型的に、水系、アルコール系、又はその両方である。
【0078】
あるいは、加水分解反応は、単に前駆体ポリマーを水中で高温(例えば、25~120℃)にて加熱することによって生じ得る。
【0079】
加水分解後、加水分解生成物を、通常、希釈酸で処理して、全てのカルボキシレート基をカルボン酸基に変換する。すなわち、式(VII-B)及び/又は(VII-C)の基は、通常、窒素含有化合物による処理前に式(VII-A)の基に変換される。すなわち、窒素含有化合物と反応する加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料は、カルボン酸基を有する。
【0080】
加水分解(例えば、完全加水分解)ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料は典型的には、少なくとも50m/g又は少なくとも100m/gに相当するBET比表面積を有する。いくつかの実施形態では、BET比表面積は、少なくとも150m/g、少なくとも175m/g、少なくとも200m/g、少なくとも225m/g、少なくとも250m/g、又は少なくとも300m/gである。BET比表面積は、最大600m/g若しくはそれ以上、最大500m/g、又は最大400m/gとすることができる。いくつかの実施形態では、BET比表面積は、50~600m/gの範囲、75~600m/gの範囲、100~600m/gの範囲、又は200~600m/gの範囲である。
【0081】
ポリマー吸着剤は、カルボン酸基を有する加水分解ポリマー材料を窒素含有化合物と反応させてイオン結合を形成することによって、形成される。通常、塩基性である窒素含有化合物は、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料中のカルボン酸基と反応する第1の一級及び/又は二級アミノ基を含有する。すなわち、窒素含有化合物内の第1のアミノ一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基は、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料中の式(VII-A)のモノマー単位中のカルボン酸基と反応する。この反応の結果、窒素含有化合物をポリマー吸着剤中のポリマー材料に連結させるイオン結合が形成される。イオン結合した窒素含有化合物は、アルデヒドと反応し得る少なくとも1つの第2の一級及び/又は二級アミノ基を有する。
【0082】
窒素含有化合物は、式-NHR[式中、Rは、水素又はアルキルである。]の2つ以上の基を有する。この化合物は、2つ以上の一級アミノ基(Rは水素に相当する。)を有する場合があり、2つ以上の二級アミノ基(Rはアルキルに相当する。)を有する場合があり、又は、少なくとも1つの一級アミノ基及び少なくとも1つの二級アミノ基を有する場合がある。好適なアルキルR基は、多くの場合、1~20個の炭素原子を有する。例えば、アルキルは、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有する場合があり、最大20個の炭素原子、最大18個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大10個の炭素原子、最大6個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有する場合がある。いくつかの実施形態において、アルキルは、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する。
【0083】
多くの好適な窒素含有化合物は、式(V)のものである。
NHR
(V)
式(V)において、基Rは水素又はアルキルである。基Rは、式-R-NHR若しくは-(C=NH)-NHの基である。基Rは、アルキレン、(ヘテロ)アリーレン、(ヘテロ)アラルキレン、1つ以上のオキシ(-O-)基を有するヘテロアルキレン、又は1つ以上の-NH-基を有するヘテロアルキレンである。(ヘテロ)アリーレン及び(ヘテロ)アラルキレンR基は、任意に、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基で置換されていてもよい。基Rは、水素、アルキル、又は-(C=NH)-NHである。
【0084】
式(V)のRに好適なアルキル基は、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有する場合があり、最大20個の炭素原子、最大18個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有する場合がある。いくつかの実施形態において、アルキルは、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する。
【0085】
いくつかの実施形態において、式(V)のRは式-R-NHRの基であり、窒素含有化合物は式(V-1)のものである。
HN-R-NHR
(V-1)
このような化合物は、式-NHRのアミノ基を少なくとも2つ有する。式(V-1)のRに好適なアルキル基は、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有する場合があり、最大20個の炭素原子、最大18個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有する場合がある。いくつかの実施形態において、アルキルは、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する。基Rは共有結合、アルキレン、(ヘテロ)アリーレン、(ヘテロ)アラルキレン、1つ以上のオキシ(-O-)基を有するヘテロアルキレン、又は1つ以上の-NH-基を有するヘテロアルキレンであり得る。(ヘテロ)アリーレン及び(ヘテロ)アラルキレンR基は、任意に、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基で置換されていてもよい。
【0086】
式(V-1)の好適なアルキレンR基は、通常、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有し、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有する場合がある。いくつかの窒素含有化合物は、Rが水素であり、Rがアルキレンであり、Rが水素である、式(V-1)の化合物である。このような窒素含有化合物の例は、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミンなどのアルキレンジアミンである。両方がアルキルに相当するR及びRを有する式(V-1)の窒素含有化合物としては、N,N’-ジメチルエチレンジアミンが挙げられる。
【0087】
式(V-1)の化合物の他の実施例において、基Rは、少なくとも1つのカテナリー-O-基又は-NH-基を有するヘテロアルキレンである(すなわち、ヘテロアルキレンは、カテナリーヘテロ原子を有するアルカンである、ヘテロアルカンの二価の基である)。換言すれば、ヘテロアルキレンR基は、式-R-[O-R-又は-R-[NH-R-[式中、各R及び各Rは独立してアルキレンであり、nは1~50、1~40、1~30、1~20、1~10、1~6、又は1~4の範囲の整数である。]のうちの1つ以上の基を有する。好適なR及びRアルキレン基は、多くの場合、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、又は1~3個の炭素原子を有する。ヘテロアルキレンは、多くの場合、最大30個の炭素原子及び最大16個のヘテロ原子、最大20個の炭素原子及び最大11個のヘテロ原子、又は最大10個の炭素原子及び最大6個のヘテロ原子を有する。このような窒素含有化合物は、式(V-2)及び(V-3)によって表すことができる。
HN-R-[O-R-NHR
(V-2)
HN-R-[NH-R-NHR
(V-3)
いくつかの窒素含有化合物は、Rが水素であり、Rが-O-基を有するヘテロアルキレンであり、Rが水素である、式(V-2)のものである。このような窒素含有化合物の例は、ポリエチレングリコールジアミン及びポリプロピレングリコールジアミンなどのポリ(アルキレンオキシド)ジアミンである。更なる窒素含有化合物は、Rが水素であり、Rが-NH-基を有するヘテロアルキレンであり、Rが水素である、式(V-3)のものである。このような窒素含有化合物は、例えば、式HN-[(CHNH]-(CHNH[式中、xは1~4の範囲の整数であり、yは1~10の範囲である。]の化合物であり得る。例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びテトラエチレンペンタミンが挙げられる。
【0088】
式(V-1)のR基はまた、(ヘテロ)アリーレン基又は(ヘテロ)アラルキレン基でもあり得る。(ヘテロ)アリーレン又は(ヘテロ)アラルキレンは、任意に、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基で置換されていてもよい。好適なアリーレンR基は、多くの場合、6~12個の炭素原子を有し、多くの場合、フェニレン又はジフェニレンである。好適なヘテロアリーレンR基は、多くの場合、2~10個の炭素原子、並びに窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~5個のヘテロ原子を有する。Rに適した(ヘテロ)アラルキレン基は、多くの場合、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキレン又はアルキル部分を有する。アリール又はアラルキレンのアリーレン部分は、多くの場合、6~12個の炭素原子を有し、多くの場合、フェニル又はフェニレンのいずれかである。ヘテロアラルキレンのヘテロアリール又はヘテロアリーレン部分は、多くの場合、2~10個の炭素原子と、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~5個のヘテロ原子とを有する。多くの実施形態において、ヘテロ原子は窒素である。
【0089】
及びRの両方が水素であり、Rがアリーレンである式(V-1)の窒素含有化合物の例としては、これに限定されるものではないが、フェニレンジアミンが挙げられる。R及びRの両方が水素であり、Rがヘテロアリーレンである式(V-1)の窒素含有化合物の例は、メラミンである(すなわち、メラミンは、3個の窒素ヘテロ原子を有するヘテロアリーレンであり、ヘテロアリーレンは一級アミノ基で置換されている)。
【0090】
更に他の窒素含有化合物は、Rが式(V-4)に示すような-(C=NH)-NHである式(V-1)の化合物である。
NH-(C=NH)-HN-R-NHR
(V-4)
このような化合物は、式-NHRのアミノ基を少なくとも2つ有する。式(V-4)のいくつかの化合物において、Rは水素であり、Rはアルキレンである。このような化合物の1つは、アグマチンである。アグマチンは他の共鳴構造によっても表すことができるが、式(V-1)及び(V-4)の両方の範囲内にあるものと考えられる。
【0091】
式(V)の他の実施形態において、Rは基-(C=NH)-NHである。得られる化合物は、式(V-5)のものである。
N-(C=NH)-NHR
(V-5)
このような化合物は、式-NHRのアミノ基を少なくとも2つ有する。式(V-5)の化合物は、Rが水素であるグアニジンである。
【0092】
他の好適な窒素含有化合物は、式-NHR[式中、Rは水素又はアルキルである。]のうちの少なくとも3つの基を有するポリアミンである。このような化合物は、式(VI)のものであり得る。
-(NHR
(VI)
式(VI)では、Rは上記に定義したとおりであり、変数zは少なくとも3に相当し、最大10、最大8、最大6、又は最大4であることができる。R基は、多くの場合、アルカンのz価基、又はヘテロアルカンのz価基である。アルカンの好適なz価基は、多くの場合、4つの隣接基のうちの少なくとも3つが-CH-である分枝炭素原子を有する。ヘテロアルカンの好適なz価基は、多くの場合、3つの隣接炭素原子(例えば、アルキレン基又はアルキル基である3つの隣接基)を有する分枝窒素原子を有する、又は、4つの隣接原子のうちの少なくとも3つが炭素(例えば、アルキレン基又はアルキル基である3つの隣接基)である分枝炭素原子を有する。ヘテロアルカンのこれらのz価基は、多くの場合、式-R-[NH-R-[式中、各R及び各Rは独立してアルキレンであり、pは1~50、1~40、1~30、1~20、1~10、1~6、又は1~4の範囲の整数である。]の1つ以上の基を含む。好適なR及びRアルキレン基は、多くの場合、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、又は1~3個の炭素原子を有する。アルカンのz価基は、多くの場合、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、又は少なくとも5個の炭素原子を有し、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、又は最大8個の炭素原子を有する。ヘテロアルカンのz価基は、多くの場合、最大30個の炭素原子及び最大16個のヘテロ原子、最大20個の炭素原子及び最大11個のヘテロ原子、又は最大10個の炭素原子及び最大6個のヘテロ原子を有する。
【0093】
式R-(NHRの具体的なポリアミンとしては、様々なポリイミンが挙げられる。いくつかのポリイミンとしては、各窒素分枝原子が式-R-[NH-R-の3つの基に結合した1つ以上の分枝窒素原子が挙げられる。各分枝状セグメントの末端基は、多くの場合、-NHなどの式-NHR基である。例としては、様々な分枝ポリエチレンイミンが挙げられる。別の具体的なポリアミンは、Rがアルカンの三価の基(すなわち、炭素分枝原子が3つの隣接アルキレン基及び1つの隣接メチル基を有する4つの炭素原子に結合している。)であり、各Rが水素であり、zが3に相当する、2-(アミノメチル)-2-メチル-1,3-プロパンジアミンである。
【0094】
多くの実施形態において、式(V)(式V-1~V-5を含む。)及び式(VI)のものなどの窒素含有化合物は、2000ダルトン(Da)以下の分子量(又は重量平均分子量)を有する。例えば、分子量(又は重量平均分子量)は、1500Da以下、1000Da以下、750Da以下、500Da以下、又は250Da以下である。
【0095】
加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料中に存在するカルボン酸1モル当たり、窒素含有化合物の最大1モルを、添加することができる。すなわち、カルボン酸の総モルに基づいて、最大100mol%の窒素含有化合物が、加水分解ポリマー材料と反応し得る。多くの実施形態では、添加される窒素含有化合物の量は、カルボン酸の総モルに基づいて、最大95mol%、最大90mol%、最大85mol%、最大80mol%、最大70mol%、最大60mol%、又は最大50mol%の量で存在する。窒素含有化合物の量は、前駆体ポリマー材料中の式(II)のモノマー単位の総モルに基づいて、少なくとも1mol%、少なくとも2mol%、少なくとも5mol%、少なくとも10mol%、少なくとも20mol%、少なくとも30mol%、少なくとも40mol%、少なくとも50mol%、少なくとも60mol%、又は少なくとも80mol%であり得る。いくつかの実施形態において、窒素含有化合物の量は、カルボン酸の総モルに基づいて、1~100mol%の範囲、10~100mol%の範囲、20~100mol%の範囲、30~100mol%の範囲、40~100mol%の範囲、50~100mol%の範囲、60~100mol%の範囲、又は80~100mol%の範囲である。
【0096】
窒素含有化合物を加水分解ポリマー材料と反応させてイオン結合を形成するため、多くの場合、窒素含有化合物を水及び/又は好適な有機溶媒に溶解させる。好適な有機溶媒は、窒素含有化合物を溶解するが、窒素含有化合物とは反応しない溶媒である。例示的な有機溶媒としては、これらに限定されるものではないが、アルコール、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテルなどのエーテル、並びに塩化メチレン及びクロロホルムなどの様々な塩素化溶媒が挙げられる。水及び/又は有機溶媒中の窒素含有化合物の濃度は、窒素含有化合物の溶解度に応じて任意の好適な量とすることができる。いくつかの実施形態において、水及び/又は有機溶媒中の窒素含有化合物の濃度は、1~40重量%の範囲、1~30重量%の範囲、1~20重量%の範囲、又は1~10重量%の範囲である。
【0097】
窒素含有化合物の溶液は、加水分解ポリマー材料と混合される。反応は、室温で起こり得るか、又は混合物を室温より高い温度に加熱することにより、起こり得る。例えば、混合物は、30℃~120℃の範囲の温度で、数時間~数日間加熱することができる。いくつかの実施形態において、30~100℃、40~90℃、50~90℃、又は60~80℃で、12~24時間、懸濁液を加熱する。
【0098】
ポリマー吸着剤は、典型的には、前駆体ポリマー材料よりも小さいBET比表面積を有する。加水分解ポリマー材料を形成するための無水物基の開環は、主鎖の立体配座の自由度を十分に増加させ、多孔性の減少をもたらし得る。更に、ポリマー吸着剤中の窒素含有基間の水素結合は、細孔への到達を制限又は阻害する可能性がある。このような低下のため、多くの場合、最も高い可能性のBET比表面積を有するが、窒素含有化合物と反応するのに充分な無水物基を有する前駆体ポリマー材料を調製することが望ましい。ポリマー吸着剤のBET比表面積は、典型的に、少なくとも25m/gである。
【0099】
いくつかの実施形態において、ポリマー吸着剤は、酸塩基指示薬を更に含む。酸塩基呈色指示薬(すなわち、酸性型である状態から塩基性型である状態への変化を受ける際に変色する染料(典型的には有機染料))は、窒素含有化合物と同時に、又は窒素含有化合物の添加後に加えることができる。酸塩基呈色指示薬は、典型的には、窒素含有化合物のpKよりも低いpKを有するように選択される。すなわち、酸塩基呈色指示薬は、ポリマー吸着剤上の利用可能な窒素含有基の全て又はかなりの部分がアルデヒドと反応した場合に、第1の色から第2の色に変化するように選択される。色の変化は、アルデヒドを吸着するポリマー吸着剤の容量が、限度に達するか又は限度に近いことを示す。本明細書で用いる場合、用語「限度に近い」とは、容量の少なくとも60%以上に達した(すなわち、利用可能な吸着部位の少なくとも60%以上がアルデヒドの吸着に用いられた。)という意味である。例えば、吸着部位の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が、アルデヒドの吸着に用いられている。
【0100】
窒素含有化合物のpKを知ることにより、当業者は、より低いpK値を有する酸塩基呈色指示薬を容易に選択することができる。いくつかの用途において、窒素含有化合物のpK値と酸塩基呈色指示薬のpKとの差は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4である。酸塩基呈色指示薬のpKは、多くの場合、3~10の範囲である。
【0101】
酸塩基呈色指示薬の例としては、これらに限定されないが、メチルレッド、ブロモキシレノールブルー、パラロザニリン、クリソイジン、チモールブルー、メチルイエロー、ブロモフェニルブルー、コンゴーレッド、メチルオレンジ、ブロモクレゾールグリーン、アゾリトミン、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、ニュートラルレッド、ナフトールフタレイン、クレゾールレッド、フェノールフタレイン、及びチモールフタレインが挙げられる。
【0102】
酸塩基呈色指示薬は、任意の好適な方法を用いてポリマー吸着剤に加えることができる。いくつかの実施形態において、ポリマー吸着剤を、酸塩基呈色指示薬の溶液に少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、又は少なくとも8時間浸漬する。酸塩基呈色指示薬の溶液は、多くの場合、5~10mg/mLの濃度範囲である。多くの場合、ポリマー吸着剤約0.5gを、溶液約10mLに浸漬する。
【0103】
別の態様では、バインダーと、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類を捕捉するためのポリマー吸着剤材料とを含有する複合顆粒が提供される。ポリマー吸着剤材料は、上述のものと同じである。
【0104】
複合顆粒に含まれるポリマー吸着剤及び/又はポリマー吸着剤の前駆体は、ポリマー材料の単一ブロックとして加圧反応器中で調製されることが多い。このポリマー材料のブロックは、次いで回転ハンマーミルを用いて微細粒子に分解かつ粉砕される。典型的なミルはスクリーンを含み、全ての粉砕粒子がスクリーンの孔のサイズよりも小さく維持されることにより粒径を制御するのを助ける。ポリマー材料の粉砕及びミリング加工の間、濾過用途のようないくつかの用途で使用するには小さすぎる可能性のある微細粒子が、大量に生成される。例えば、粉砕されてミリング加工されるポリマー材料の3分の1程の量は、ある特定の濾過用途で使用するために小さくなりすぎることがある。小さくなりすぎると考えられるものは、特定の用途及び許容される圧力降下に応じて変化し得る。
【0105】
ポリマー材料の微細粒子は、バインダーと組み合わせることで大きな粒子(すなわち複合顆粒)に形成することができる。複合顆粒は、通常、濾過用途で使用するために好適であるサイズを有する。このように、複合顆粒を形成することにより、反応器内に形成されるポリマー材料の全てを十分に使用することができ、これによって、ポリマー吸着剤の全体的な製造コストを低減することができる。
【0106】
更に、ポリマー吸着剤を含有する物品(例えば、濾過用品)を製造するためのいくつかのプロセスは、追加の微細粒子の形成をもたらし得る。例えば、ポリマー吸着剤添着ウェブの作製、呼吸器カートリッジの装填、並びに呼吸器及び呼吸器カートリッジの超音波溶着は、ポリマー吸着剤材料の微粉化をもたらし、微細粒子の形成をもたらし得る。ポリマー吸着剤を微粉化を低減する形態で提供することは、加工の観点から有益であり得る。ポリマー吸着剤をバインダーと組み合わせることが、バインダーを含まないポリマー吸着剤と比べて、改善された靭性(例えば、粉々に砕ける可能性が低い)を有する複合顆粒の形成をもたらし得ることが判明している。加えて、本開示の複合顆粒は、アルデヒド化合物を吸着するためのポリマー吸着剤の能力に、複合顆粒が吸着剤として有用でない程度にまで悪影響を及ぼすことなく、製造することができる。
【0107】
複合顆粒に含まれるバインダーは、有機材料(ポリマー材料など)、無機材料(例えば、金属ケイ酸塩など)、又はそれらの組み合わせ(無機部分と有機部分とを有する化合物、例えば、金属カルボン酸塩)であってよい。多くの実施形態において、バインダーは、例えばセルロース樹脂などの塩又はポリマー材料である。
【0108】
ある特定の実施形態では、バインダーは、高分子電解質材料を含む。有機又は無機の対イオンを含むものを含めて、任意の好適な高分子電解質材料を使用することができる。いくつかの好適な高分子電解質材料は、天然ポリマー又は変性天然ポリマーから誘導される。例示的な高分子電解質としては、ポリアミン、ポリアミド、ポリアルコール、多糖類(polysacharides)、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、フミン酸、タンパク質、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウムなどのポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリアミン-塩化ポリジアリルジメチルアンモニウムのブレンド、ポリ四級アミン、無機物-ポリアミンのブレンド、並びに無機物-塩化ポリジアリルジメチルアンモニウムのブレンド、カチオン性デンプン、カチオン性ポリメチルメタクリレート、ビニルイミダゾリウムメトクロライドとビニルピロリドンとのコポリマー、四級化ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ポリエチレンイミン、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。ある特定の実施形態では、高分子電解質材料は、カチオン性デンプンを含む。
【0109】
ある特定の実施形態では、バインダーは、金属水酸化物、金属酸化物、金属塩、有機金属化合物又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの好適な金属酸化物、金属水酸化物及び金属塩バインダーは、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム又は鉄(ポリ硫酸アルミニウム及びポリ塩化アルミニウムを含む)から誘導される。他の例示的なバインダーは、ポリオルガノジルコネート、ポリオルガノアルミネート、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリシラザン、ポリカルボシラン、ポリボロシラン、ジルコニウムジメタクリレート、ジルコニウムテトラメタクリレート、ジルコニウム2-エチルヘキサノエート、アルミニウムブトキシド、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、テトラメチルジシロキサン、トリストリメチルシリルホスフェート、トリストリメチルシロキシボロン及びそれらの組み合わせである。いくつかの例示的な金属塩は、金属カルボン酸塩、例えば10~20個の炭素原子を有する金属カルボン酸塩(例えばステアリン酸マグネシウム)である。他の例示的な無機バインダーは、ケイ酸塩(例えば、金属ケイ酸塩)である。例示的な金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(例えば、メタケイ酸ナトリウム)、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム及びそれらの組み合わせが挙げられる。ある特定の実施形態では、ケイ酸塩は、メタケイ酸ナトリウムである。
【0110】
他の例示的なバインダーとしては、熱可塑性ポリマーが挙げられる。熱可塑性ポリマーは、例えば、ポリアミド(ナイロンなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン(例えば、LDPE、LLDPE、HDPE)、他のポリオレフィンとのポリエチレンコポリマー、及びポリプロピレンなど)、ポリ塩化ビニル(可塑化及び非可塑化の両方)、フルオロカーボン樹脂(ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリスチレン、アクリル系樹脂(ポリアクリレート及びポリメタクリレートなど)、スチレンコポリマー(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン及びアクリロニトリル-スチレンなど)、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリオキシメチレン、ポリホルムアルデヒド、ポリアセタール、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリエーテルエーテルケトン、及びフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(レゾール及びノボラックなど)、並びにそれらの組み合わせから選択することができる。
【0111】
更に他の例示的なバインダーとしては、熱硬化性ポリマーが挙げられる。熱硬化性ポリマーは、例えば、ポリウレタン、シリコーン、フルオロシリコーン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂及び尿素ホルムアルデヒド樹脂から選択される。
【0112】
更に他の例示的なバインダーとしては、エラストマーが挙げられる。ある特定の実施形態では、エラストマーは、天然ゴム、合成ゴム(例えば、スチレン-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン(ネオプレン)、ニトリルゴム及びブチルゴム)、シリコーン、ポリウレタン、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン、ポリオレフィン、クロロスルホン化ポリエチレン、ペルフルオロエラストマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、塩素化ポリエチレン、フルオロエラストマー及びそれらの混合物から選択される。
【0113】
ある特定の実施形態では、バインダーには、天然由来ポリマーが含まれる。例示的な天然由来ポリマーは、セルロース、コラーゲン、有機酸及びそれらの組み合わせから選択することができる。例えば、天然由来ポリマーは、生分解性ポリマーであってもよい。好適な生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、セルロース系樹脂(例えば、セルロースアセテートブチレート、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル)、アルギン酸、海藻から単離されたカラギーナン、多糖類、ペクチン、キサンタン、デンプン、ポリラクチドグリコライドのコポリマー並びにそれらの組み合わせから選択することができる。いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリラクチドグリコライドのコポリマー及びそれらの混合物から選択される。
【0114】
ある特定の実施形態では、バインダーには、導電性ポリマーが含まれる。例示的な導電性ポリマーは、ドープされたポリアニリン及びポリチオフェンから選択することができる。
【0115】
ある特定の実施形態では、バインダーには、ゲル化材料、吸収性材料、又はこれらの組み合わせが含まれる。例示的な吸収性バインダー材料は、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアルコール、ポリアミン、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース、キチン、ゼラチン、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、アルギン酸、海藻から単離されたカラギーナン、多糖類、ペクチン、キサンタン、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム、ポリビニルピリジン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸及びそれらの組み合わせなどの超吸収性材料とすることができる。
【0116】
複合顆粒は、多くの場合、複合顆粒の総重量に基づいて、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%の量のバインダーを含有する。ある特定の実施形態では、バインダーは、複合顆粒の総重量に基づいて、最大30重量%、最大25重量%、又は最大20重量%の量で複合顆粒中に存在する。
【0117】
複合顆粒は、多くの場合、複合顆粒の総重量に基づいて、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%の量でポリマー吸着剤を含有する。ある特定の実施形態では、ポリマー吸着剤は、複合顆粒の総重量に基づいて、最大90重量%、最大95重量%、最大98重量%又は最大99重量%の量で複合顆粒中に存在する。
【0118】
いくつかの実施形態では、複合顆粒は、複合顆粒の総重量に基づいて、1~30重量%のバインダーと、70~99重量%のポリマー吸着剤とを含有する。例えば、複合顆粒は、5~30重量%のバインダーと70~95重量%のポリマー吸着剤、10~30重量%のバインダーと70~90重量%のポリマー吸着剤、1~25重量%のバインダーと75~99重量%のポリマー吸着剤、5~25重量%のバインダーと75~95重量%のポリマー吸着剤、10~25重量%のバインダーと75~90重量%のポリマー吸着剤、1~20重量%のバインダーと80~99重量%のポリマー吸着剤、5~20重量%のバインダーと80~95重量%のポリマー吸着剤、又は10~20重量%のバインダーと80~90重量%のポリマー吸着剤を含有することができる。
【0119】
ポリマー吸着剤及びバインダーは、水又は有機溶媒などのいかなる液体も使用することなく、一緒に配合されることが多い。次いで、配合材料は、ペレット又はディスクに圧縮され、これは続いて粉砕又はミリング加工され、その後に篩分けされて、所望のサイズの複合顆粒を得ることができる(例えば、所望のサイズの複合顆粒は、篩上に保持される)。篩を通過するいかなる材料も、追加のペレット又はディスクに圧縮することによって回収し再利用することができる。
【0120】
任意の好適な圧力が、ペレット又はディスクを形成するために使用され得る。配合材料は、ペレット又はディスクを形成する過程で任意に加熱することができる。いくつかの実施形態では、配合材料は、バインダーの融点近く(しかしながら、時にはそれ以下)の温度まで加熱することができる。圧力及び温度は、破壊されるときに粉々に崩れない(若しくは最小限で粉々に崩れる)ペレット又はディスクを提供するように選択される。ペレット又はディスクは、例えば、0.5~3センチメートル、1~3センチメートル、又は2~3センチメートルなどの任意の好適なサイズを有することができる。
【0121】
ペレット又はディスクを形成するために選択される圧力は、典型的には、6,000ポンド毎平方インチ(psi)~60,000psi又は更にそれ以上の範囲にある。例えば、圧力は、多くの場合、少なくとも6,000psi、少なくとも6,400psi、少なくとも6,500psi、少なくとも10,000psi、少なくとも20,000psi又は少なくとも25,000psiであり、最大60,000psi、最大50,000psi、最大40,000psi又は最大30,000psiとすることができる。放置時間(dwell time)(力がかかる時間)は、数秒から数分で変化することができる。例えば、放置時間は、1秒~10分の範囲とすることができる。
【0122】
ポリマー吸着剤は、捕集剤の含浸に基づく吸着剤よりも、明確な利点をもたらす。捕集剤は、典型的には、例えば、活性炭のように、マトリックス材料上に単に吸着されている。すなわち、捕集剤は、通常、マトリックス材料にイオン結合により付着しておらず、移動することができる。対照的に、本明細書に記載のポリマー吸着剤は、アルデヒドと相互作用しかつ移動しない、イオン結合により付着した窒素含有基を有する。
【0123】
別の態様では、ポリマー吸着剤にアルデヒドを吸着させる方法を提供する。方法は、ポリマー吸着剤を用意することと、次いで、ポリマー吸着剤にアルデヒドを吸着させることと、を含む。ポリマー吸着剤は、(a)カルボン酸基を有する、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料と、(b)式-NHR[式中、Rは、水素又はアルキルである]のアミノ基を少なくとも2つ有する窒素含有化合物と、の反応生成物である。上記のポリマー吸着剤のいずれかを使用することができる。所望であれば、ポリマー吸着剤は、複合顆粒の一部であってもよい。
【0124】
ポリマー吸着剤は、アルデヒドを吸着する。好適なアルデヒドは、式(I)
-(CO)-H
(I)
式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、アリール、又はアルキルで置換されたアリールである。好適なアルキル基は、典型的には、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、1~3個の炭素原子、又は1個の炭素原子を有する。アリール基は、最大12個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有し得る。アリール基は、多くの場合、フェニルである。アリール基は、1~4個の炭素原子又は1~3個の炭素原子を有するアルキル基などのアルキル基で置換されている場合がある。
【0125】
アルデヒドは、蒸気の形態である場合、ポリマー吸着剤により吸着する。したがって、アルデヒドの分子量は、典型的には、200g/モル以下、150g/モル以下、100g/モル以下、75g/モル以下、又は50g/モル以下である。好適なアルデヒドとしては、これらに限定されるものではないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール(バレルアルデヒド)、イソバレルアルデヒド、ヘキサナール、ベンズアルデヒド、2,5-ジメチルベンズアルデヒド、2,4-ジメチルベンズアルデヒド、2,3-ジメチルベンズアルデヒド、トルアルデヒド(オルト-トルアルデヒド、メタ-トルアルデヒド、パラ-トルアルデヒド、及びこれらの混合物)、アクロレイン、並びにクロトンアルデヒドが挙げられる。
【0126】
アルデヒドは、室温において、又は-30℃~150℃、-30℃~100℃の範囲、若しくは-20℃~50℃の範囲などの任意の所望の温度において、吸着させることができる。
【0127】
別の態様では、ポリマー吸着剤及びポリマー吸着剤に吸着したアルデヒドを含む組成物を提供する。ポリマー吸着剤及びアルデヒドは、上記と同じである。アルデヒドは、ポリマー吸着剤上に存在する任意の一級アミノ基又は二級アミノ基と反応することができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、ポリマー吸着剤は、窒素含有化合物として式(V)の化合物を使用して形成される。
NHR
(V)
得られたポリマー吸着剤は、式-COO(NHのイオン基を有する。アニオン(-COO-)は、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料及びカチオン((NH)は窒素含有化合物に由来する。基R及びRは上記と同じである。
【0129】
いくつかの実施形態において、ポリマー吸着剤は、窒素含有化合物として式(V-1)の化合物を使用して形成される。
HN-R-NHR
(V-1)
得られたポリマー吸着剤は、式-COO(NH-R-NHR、-COO(NH-R-NHR、又はその両方のイオン基を有することができる。式-COO(NH-R-NHRの基の末端Rが水素である場合、アルデヒドR-(CO)-Hへの曝露後のポリマー吸着剤は、式-COO(NH-R-NH-CHR-OH)、-COO(NH-R-N(CHR-OH)、-COO(NH-R-N=CRH)の基、又はこれらの混合物を有し得る。同様に、式-COO(NH-R-NHRの基の末端Rが水素である場合、アルデヒドR-(CO)-Hへの曝露後のポリマー吸着剤は、式-COO(NH-R-NH-CHR-OH)、-COO(NH-R-N(CHR-OH)、-COO(NH-R-N=CRH)の基、又はこれらの混合物を有し得る。式-COO(NH-R-NHRの基の末端Rがアルキルである場合、アルデヒドR-(CO)-Hへの曝露後のポリマー吸着剤は、式-COO(NH-R-NR-CHR-OH)の基を有し得る。同様に、式-COO(NH-R-NHRの基の末端Rがアルキルである場合、アルデヒドR-(CO)-Hへの曝露後のポリマー吸着剤は、式-COO(NH-R-NR-CHR-OH)の基を有し得る。更なる量のアルデヒドが、任意の残存する一級アミノ基又は二級アミノ基と反応することができる。
【0130】
更に他の実施形態では、ポリマー吸着剤は、窒素含有化合物として式(V-4)の化合物を使用して形成される。
NH-(C=NH)-HN-R-NHR
(V-4)
得られるポリマー吸着剤は、式
-COO(NH-(C=NH)-NH-R-NHR、-COO(NH-R-NH-(C=NH)-NH、又はその両方の窒素含有基を有し得る。式-COO(NH-(C=NH)-NH-R-NHRの基の末端Rが水素である場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-COO(NH-(C=NH)-NH-R-NH-CHR-OH)、-COO(NH-(C=NH)-NH-R-N(CHR-OH)、-COO(NH-(C=NH)-NH-R-N=CRH)の基、又はこれらの混合物を有し得る。式-COO(NH-(C=NH)-NH-R-NHRの基の末端Rがアルキルである場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-COO(NH-(C=NH)-NH-R-NR-CHR-OH)の基を有し得る。ポリマー吸着剤が式-COO(NH-R-NH-(C=NH)-NHの基を有する場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-COO(NH-R-NH-(C=NH)-NH-CHR-OH)、-COO(NH-R-NH-(C=NH)-N(CHR-OH)、-COO(NH-R-NH-(C=NH)-N=CRH)の基、又はこれらの混合物を有し得る。更なる量のアルデヒドが、任意の残存する一級アミノ基又は二級アミノ基と反応することができる。
【0131】
更に他の実施形態では、ポリマー吸着剤は、窒素含有化合物として式
(V-5)
N-(C=NH)-NHR
(V-5)
の化合物を使用して形成される。得られるポリマー吸着剤は、式-COO(NH-(C=NH)-NHR、-COO(NH-(C=NH)-NH又はその両方の窒素含有基を有し得る。式-COO(NH-(C=NH)-NHRの基の末端Rが水素である場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-COO(NH-(C=NH)-NH-CHR-OH)、-COO(NH-(C=NH)-N(CHR-OH)、-COO(NH-(C=NH)-N=CRH)の基、又はこれらの混合物を有し得る。式-COO(NH-(C=NH)-NHRの基の末端Rがアルキルである場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-COO(NH-(C=NH)-NR-CHR-OH)の基を有し得る。ポリマー吸着剤が式-COO(NH-(C=NH)-NHの基を有する場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-COO(NH-(C=NH)-NH-CHR-OH)、-COO(NH-(C=NH)-N(CHR-OH)、-COO(NH-(C=NH)-N=CRH)の基、又はそれらの混合物を有することができる。更なる量のアルデヒドが、任意の残存する一級アミノ基又は二級アミノ基と反応することができる。
【0132】
更に他の実施形態では、ポリマー吸着剤は、窒素含有化合物として式(VI)の化合物を使用して形成される。
-(NHR
(VI)
得られるポリマー吸着剤は、式-COO(NH-R-(NHRz-1の窒素含有基を有し得る。式-COO(NH-R-(NHRz-1の基の末端Rのうちの1つが水素である場合、アルデヒドR-(CO)-Hへの曝露後のポリマー吸着剤は、式-COO(NH-R-(NHRz-2(NH-CHROH))、-COO(NH-R-(NHRz-2(N(CHROH)))、-COO(NH-R-(NHRz-2(N=CRH))の基、又はこれらの混合物の基を有し得る。式-COO(NH-R-(NHRz-1の基の末端Rのうちの1つがアルキルである場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-COO(NH-R-(NHRz-2(NR-CHROH))の基を有し得る。これらの実施形態のいくつかでは、2つ以上の末端-NHR基がアルデヒドと反応することができる。末端基に加えて、アルデヒドは、ポリマー吸着剤上の任意のその他の一級及び/又は二級アミノ基と反応することができる。
【0133】
室温(例えば25℃)及び標準圧力にてポリマー吸着剤により吸着されたアルデヒドの量は、多くの場合、少なくとも0.5mmol/g(即ち、ポリマー吸着剤1g当たり少なくとも0.5mmolのアルデヒド)である。例えば、吸着されたアルデヒドの量は、少なくとも1mmol/g、少なくとも1.5mmol/g、少なくとも2mmol/g、少なくとも2.5mmol/g、少なくとも3mmol/g、少なくとも3.5mmol/g、少なくとも4mmol/g、少なくとも4.5mmol/g、又は少なくとも5mmol/gであることができる。吸着される量は、最大15mmol/g、最大12mmol/g又は更にそれ以上、最大10mmol/g、最大9mmol/g、最大8mmol/g、又は最大7mmol/gであり得る。吸着された量は、多くの場合、0.5~12mmol/gの範囲、1~12mmol/gの範囲、2~12mmol/gの範囲、1~10mmol/gの範囲、2~10mmol/gの範囲、3~12mmol/gの範囲、3~10mmol/gの範囲、又は3~8mmol/gの範囲である。
【0134】
ポリマー吸着剤、ポリマー吸着剤の調製方法、ポリマー吸着剤にアルデヒドを吸着させる方法、ポリマー吸着剤及びポリマー吸着剤に吸着されたアルデヒドを含む組成物、又はポリマー吸着剤を含有する複合顆粒である、様々な実施形態を提供する。
【0135】
実施形態1Aは、a)カルボン酸基を有する、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料と、b)式-NHRのアミノ基を少なくとも2つ有する窒素含有化合物[式中、Rは、水素又はアルキルである]と、の反応生成物を含み、窒素含有化合物は、イオン結合により加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料に付着している、ポリマー吸着剤である。
【0136】
実施形態2Aは、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料が、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体材料の加水分解生成物であり、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体材料が、1)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて8~65重量%の無水マレイン酸と、2)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて30~85重量%のジビニルベンゼンと、3)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせである、スチレン型モノマーと、を含む重合性組成物から形成される、実施形態1Aのポリマー吸着剤である。
【0137】
実施形態3Aは、重合性組成物が、重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて、15~65重量%の無水マレイン酸と、30~85重量%のジビニルベンゼンと、0~40重量%のスチレン型モノマーとを含む、実施形態1A又は2Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0138】
実施形態4Aは、重合性組成物が、重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて、25~65重量%の無水マレイン酸と、30~75重量%のジビニルベンゼンと、1~20重量%のスチレン型モノマーと、を含む、実施形態1A~3Aのいずれか1つに記載のポリマー吸着剤である。
【0139】
実施形態5Aは、重合性組成物が、重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて、30~65重量%の無水マレイン酸と、30~70重量%のジビニルベンゼンと、1~20重量%のスチレン型モノマーと、を含む、実施形態1A~4Aのいずれか1つに記載のポリマー吸着剤である。
【0140】
実施形態6Aは、窒素含有化合物が、式(V)
NHR
(V)
[式中、Rは、水素又はアルキルである。Rは、式-R-NHR、又は-(C=NH)-NHの基である。Rは、アルキレン、(ヘテロ)アリーレン、(ヘテロ)アラルキレン、1つ以上のオキシ(-O-)基を有するヘテロアルキレン、又は1つ以上の-NH-基を有するヘテロアルキレンである。Rは、水素、アルキル、又は-(C=NH)-NHである。]
のものである、実施形態1A~5Aのいずれか1つに記載のポリマー吸着剤である。
【0141】
実施形態7Aは、ポリマー吸着剤が、式-COO(NHのイオン基を有する、実施形態6Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0142】
実施形態8Aは、窒素含有化合物が、式(V-1)のものである、実施形態6Aに記載のポリマー吸着剤である。
HN-R-NHR
(V-1)
式(V-1)中、Rは、水素又はアルキルであり、Rは、アルキレン、(ヘテロ)アリーレン、(ヘテロ)アラルキレン、1つ以上のオキシ(-O-)基を有するヘテロアルキレン、又は1つ以上の-NH-基を有するヘテロアルキレンであり、ここで、(ヘテロ)アリーレン及び(ヘテロ)アラルキレンは、任意に、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基で置換され、Rは、水素、アルキル、又は-(C=NH)-NHである。
【0143】
実施形態9Aは、ポリマー吸着剤が、式-COO(NH-R-NHR、-COO(NH-R-NHR又はその両方のイオン基を有する、実施形態8Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0144】
実施形態10Aは、Rがアルキレンであり、窒素含有化合物がアルキレンジアミンである、実施形態8A又は9Aに記載のポリマー吸着剤である。例示的なアルキレンジアミンとしては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、及びN,N’-ジメチルエチレンジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
実施形態11Aは、Rが、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基で任意に置換された(ヘテロ)アリーレンである、実施形態8A又は9Aに記載のポリマー吸着剤である。窒素含有化合物の例は、フェニレンジアミン及びメラミンである。
【0146】
実施形態12Aは、Rがヘテロアルキレンであり、窒素含有化合物が式(V-2)又は式(V-3)の化合物である、実施形態8A又は9Aに記載のポリマー吸着剤である。
HN-R-[O-R-NHR
(V-2)
HN-R-[NH-R-NHR
(V-3)
これらの式では、Rはアルキレンであり、Rはアルキレンであり、nは1~50の範囲の整数である。
【0147】
実施形態13Aは、窒素含有化合物が、式(V-2)のものであり、ポリエチレングリコールジアミン又はポリプロピレングリコールジアミンである、実施形態12Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0148】
実施形態14Aは、窒素含有化合物が、式(V-3)のものであり、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又はテトラエチレンペンタミンである、実施形態12Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0149】
実施形態15Aは、式(V-1)の窒素含有化合物が、式(V-4)のものである、実施形態8Aに記載のポリマー吸着剤である。
NH-(C=NH)-HN-R-NHR
(V-4)
【0150】
実施形態16Aは、式-COO(NH-(C=NH)-NH-R-NHR、-COO(NH-R-NH-(C=NH)-NH、又はその両方のイオン基を有する、実施形態15Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0151】
実施形態17Aは、Rがアルキレンである、実施形態15A又は16Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0152】
実施形態18Aは、窒素含有化合物が、アグマチンである、実施形態15A~17Aのいずれか1つに記載のポリマー吸着剤である。
【0153】
実施形態19Aは、式(V-1)の窒素含有化合物が、式(V-5)のものである、実施形態8Aに記載のポリマー吸着剤である。
N-(C=NH)-NHR
(V-5)
【0154】
実施形態20Aは、ポリマー吸着剤が、式-COO(NH-(C=NH)-NHR、-COO(NH-(C=NH)-NH、又はその両方のイオン基を有する、実施形態19Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0155】
実施形態21Aは、窒素含有化合物が、グアニジンである、実施形態19A又は20Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0156】
実施形態22Aは、窒素含有化合物が、式(VI)のものである、実施形態1A~5Aのいずれか1つに記載のポリマー吸着剤である。
-(NHR
(VI)
基Rは、アルカンのz価基又はヘテロアルカンのz価基である。基R1は、水素又はアルキルである。変数zは3~10の範囲の整数である。
【0157】
実施形態23Aは、ポリマー吸着剤が、式-COO(NH-R-(NHRz-1のイオン基を有する、実施形態22Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0158】
実施形態24Aは、窒素含有化合物が、2000ダルトン以下の分子量を有する、実施形態1A~23Aのいずれか1つに記載のポリマー吸着剤である。
【0159】
実施形態25Aは、酸塩基染料を更に含む、実施形態1A~24Aのいずれか1つに記載のポリマー吸着剤である。
【0160】
実施形態26Aは、酸塩基染料が、窒素含有化合物よりも低いpKを有する、実施形態25Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0161】
実施形態27Aは、窒素含有化合物のpKと、酸塩基染料のpKとの間の差が、少なくとも2に相当する、実施形態25A又は26Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0162】
実施形態28Aは、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料が、少なくとも50m/gのBET比表面積を有する、実施形態1A~27Aのいずれか1つに記載のポリマー吸着剤である。
【0163】
実施形態1Bは、ポリマー吸着剤にアルデヒドを吸着させる方法である。方法は、実施形態1A~28Aのいずれか1つに記載のポリマー吸着剤を用意することと、ポリマー吸着剤にアルデヒドを吸着させることと、を含む。アルデヒドは、式(I)
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。]のものである。式(I)のアルデヒドの分子量は、200g/mol以下である。
【0164】
実施形態2Bは、Rが、水素(アルデヒドはホルムアルデヒドである)、又はメチル(アルデヒドがアセトアルデヒドである)である、実施形態1Bに記載の方法である。
【0165】
実施形態3Bは、ポリマー吸着剤が、ポリマー吸着剤の重量に基づいて、1g当たり0.5~15ミリモルの範囲のアルデヒド量を吸着する、実施形態1B又は2Bに記載の方法である。
【0166】
実施形態4Bは、ポリマー吸着剤が酸塩基染料を含み、酸塩基染料は、ポリマー吸着剤のアルデヒド吸着容量が限度に達するか又は限度に近い場合に変色する、実施形態1B~3Bのいずれか1つに記載の方法である。
【0167】
実施形態1Cは、(a)実施形態1A~28Aのいずれか1つに記載のポリマー吸着剤と、(b)ポリマー吸着剤に吸着したアルデヒドと、を含む組成物である。アルデヒドは、式(I)のものである。
-(CO)-H
(I)
式(I)では、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。式(I)のアルデヒドの分子量は、200g/mol以下である。
【0168】
実施形態2Cは、Rが、水素(アルデヒドはホルムアルデヒドである)、又はメチル(アルデヒドがアセトアルデヒドである)である、実施形態1Cに記載の組成物である。
【0169】
実施形態3Cは、ポリマー吸着剤が、ポリマー吸着剤の重量に基づいて、1g当たり0.5~15ミリモルの範囲のアルデヒド量を吸着する、実施形態1C又は2Cに記載の組成物である。
【0170】
実施形態4Cは、ポリマー吸着剤が酸塩基染料を含み、酸塩基染料は、ポリマー吸着剤のアルデヒド吸着容量が限度に達するか又は限度に近い場合に変色する、実施形態1C~3Cのいずれか1つに記載の組成物である。
【0171】
実施形態1Dは、ポリマー吸着剤の調製方法である。方法は、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料を用意することと、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料を加水分解して、カルボン酸基を有する加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料を形成することと、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料を、式-NHR[式中、Rは、水素又はアルキルである。]のアミノ基を少なくとも2つ有する窒素含有化合物と反応させてポリマー吸着剤を形成することと、を含み、ポリマー吸着剤はイオン結合により付着した窒素含有基を有する。
【0172】
実施形態2Dは、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体材料が、
1)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて8~65重量%の無水マレイン酸と、
2)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて30~85重量%のジビニルベンゼンと、
3)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせであるスチレン型モノマーと、
を含む重合性組成物から形成された重合生成物である、実施形態1Dに記載の方法である。
【0173】
実施形態3Dは、重合性組成物が、重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて、15~65重量%の無水マレイン酸と、30~85重量%のジビニルベンゼンと、0~40重量%のスチレン型モノマーとを含む、実施形態1D又は2Dに記載の方法である。
【0174】
実施形態4Dは、重合性組成物が、重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて、25~65重量%の無水マレイン酸と、30~75重量%のジビニルベンゼンと、1~20重量%のスチレン型モノマーと、を含む、実施形態1D~3Dのいずれか1つに記載の方法である。
【0175】
実施形態5Dは、重合性組成物が、重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて、30~65重量%の無水マレイン酸と、30~70重量%のジビニルベンゼンと、1~20重量%のスチレン型モノマーと、を含む、実施形態1D~4Dのいずれか1つに記載の方法である。
【0176】
実施形態6Dは、窒素含有化合物が、2000ダルトン以下の分子量を有する、実施形態1D~5Dのいずれか1つに記載の方法である。
【0177】
実施形態7Dは、窒素含有化合物が、式(V)のものである、実施形態1D~6Dのいずれか1つに記載の方法である。
NHR
(V)
基Rは、水素又はアルキルである。Rは、式-R-NHR、又は-(C=NH)-NHの基である。Rは、アルキレン、(ヘテロ)アリーレン、(ヘテロ)アラルキレン、1つ以上のオキシ(-O-)基を有するヘテロアルキレン、又は1つ以上の-NH-基を有するヘテロアルキレンであり、(ヘテロ)アリーレン及び(ヘテロ)アラルキレンは、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基で任意に置換される。Rは、水素、アルキル、又は-(C=NH)-NHである。
【0178】
実施形態8Dは、ポリマー吸着剤が、式-COO(NHのイオン基を有する、実施形態7Dに記載の方法である。
【0179】
実施形態9Dは、窒素含有化合物が、式(V-1)のものである、実施形態7Dに記載の方法である。
HN-R-NHR
(V-1)
式(V-1)中、Rは、水素又はアルキルであり、Rは、アルキレン、(ヘテロ)アリーレン、(ヘテロ)アラルキレン、1つ以上のオキシ(-O-)基を有するヘテロアルキレン、又は1つ以上の-NH-基を有するヘテロアルキレンであり、ここで、(ヘテロ)アリーレン及び(ヘテロ)アラルキレンは、任意に、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基で置換され、Rは、水素、アルキル、又は-(C=NH)-NHである。
【0180】
実施形態10Dは、ポリマー吸着剤が、式-COO(NH-R-NHR、-COO(NH-R-NHR、又はその両方のイオン基を有する、実施形態9Dに記載の方法である。
【0181】
実施形態11Dは、Rがアルキレンであり、窒素含有化合物がアルキレンジアミンである、実施形態9D又は10Dに記載の方法である。例示的なアルキレンジアミンとしては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、及びN,N’-ジメチルエチレンジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0182】
実施形態12Dは、Rが、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基で任意に置換された(ヘテロ)アリーレンである、実施形態9D又は10Dに記載の方法である。窒素含有化合物の例は、フェニレンジアミン及びメラミンである。
【0183】
実施形態13Dは、Rがヘテロアルキレンであり、窒素含有化合物が式(V-2)又は式(V-3)のものである、実施形態9D又は10Dに記載の方法である。
HN-R-[O-R-NHR
(V-2)
HN-R-[NH-R-NHR
(V-3)
これらの式では、Rはアルキレンであり、Rはアルキレンであり、nは1~50の範囲の整数である。
【0184】
実施形態14Dは、窒素含有化合物が、式(V-2)のものであり、ポリエチレングリコールジアミン又はポリプロピレングリコールジアミンである、実施形態13Dに記載の方法である。
【0185】
実施形態15Dは、窒素含有化合物が、式(V-3)のものであり、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又はテトラエチレンペンタミンである、実施形態14Dに記載の方法である。
【0186】
実施形態16Dは、式(V-1)の窒素含有化合物が、式(V-4)のものである、実施形態9Dに記載の方法である。
NH-(C=NH)-HN-R-NHR
(V-4)
【0187】
実施形態17Dは、ポリマー吸着剤が、式-COO(NH-(C=NH)-NH-R-NHR、-COO(NH-R-NH-(C=NH)-NH、又はその両方のイオン基を有する、実施形態16Dに記載の方法である。
【0188】
実施形態18Dは、Rが、アルキレンである、実施形態16D又は17Dに記載の方法である。
【0189】
実施形態19Dは、窒素含有化合物が、アグマチンである、実施形態16D~18Dのいずれか1つに記載の方法である。
【0190】
実施形態20Dは、式(V-1)の窒素含有化合物が、式(V-5)のものである、実施形態9Dに記載の方法である。
N-(C=NH)-NHR
(V-5)
【0191】
実施形態21Dは、ポリマー吸着剤が、式-COO(NH-(C=NH)-NHR、-COO(NH-(C=NH)-NH、又はその両方のイオン基を有する、実施形態20Dに記載の方法である。
【0192】
実施形態22Dは、窒素含有化合物が、グアニジンである、実施形態20D又は21Dに記載の方法である。
【0193】
実施形態23Dは、窒素含有化合物が、式(VI)のものである、実施形態1D~6Dのいずれか1つに記載の方法である。
-(NHR
(VI)
基Rは、アルカンのz価基又はヘテロアルカンのz価基である。Rは、水素又はアルキルである。変数zは3~10の範囲の整数である。
【0194】
実施形態24Dは、ポリマー吸着剤が、式-COO(NH-R-(NHRz-1のイオン基を有する、実施形態23Dに記載の方法である。
【0195】
実施形態25Dは、窒素含有化合物が、2000ダルトン以下の分子量を有する、実施形態1D~24Dのいずれか1つに記載の方法である。
【0196】
実施形態26Dは、ポリマー吸着剤が、酸塩基染料を更に含む、実施形態1D~25Dのいずれか1つに記載の方法である。
【0197】
実施形態27Dは、酸塩基染料が、窒素含有化合物よりも低いpKを有する、実施形態26Dに記載の方法である。
【0198】
実施形態28Dは、窒素含有化合物のpKと、酸塩基染料のpKとの間の差が、少なくとも2に相当する、実施形態26D又は27Dに記載の方法である。
【0199】
実施形態29Dは、加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料が、少なくとも50m/g相当のBET比表面積を有する、実施形態1D~28Dのいずれか1つに記載の方法である。
【0200】
実施形態1Eは、(a)実施形態1A~28Aのいずれか1つに記載のポリマー吸着剤と、(b)バインダーと、を含む、複合顆粒である。
【0201】
実施形態2Eは、複合顆粒が、複合顆粒の総重量に基づいて、1~30重量%のバインダーと、70~99重量%のポリマー吸着剤とを含む、実施形態1Eに記載の複合顆粒である。
【0202】
実施形態3Eは、複合顆粒が、複合顆粒の総重量に基づいて、1~25重量%のバインダーと、75~99重量%のポリマー吸着剤と、を含む、実施形態1E又は2Eに記載の複合顆粒である。
【0203】
実施形態4Eは、複合顆粒が、複合顆粒の総重量に基づいて、1~20重量%のバインダーと、80~99重量%のポリマー吸着剤と、を含む、実施形態1E~3Eのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0204】
実施形態5Eは、バインダーが、金属水酸化物、金属酸化物又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1E~4Eのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0205】
実施形態6Eは、バインダーが、塩(例えば、金属塩)又はポリマーを含む、実施形態1E~4Eのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0206】
実施形態7Eは、バインダーが、ケイ酸塩(例えば、金属ケイ酸塩)を含む、実施形態1Eに記載の複合顆粒である。
【0207】
実施形態8Eは、ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸ナトリウム又はそれらの混合物を含む、実施形態7Eに記載の複合顆粒である。
【0208】
実施形態9Eは、ケイ酸塩が、メタケイ酸ナトリウムを含む、実施形態8Eに記載の複合顆粒である。
【0209】
実施形態10Eは、バインダーが、ポリオルガノジルコネート、ポリオルガノアルミネート、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリシラザン、ポリカルボシラン、ポリボロシラン、ジルコニウムジメタクリレート、ジルコニウムテトラメタクリレート、ジルコニウム2-エチルヘキサノエート、アルミニウムブトキシド、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、テトラメチルジシロキサン、トリストリメチルシリルホスフェート、トリストリメチルシロキシボロン又はこれらの混合物を含む、実施形態1E~4Eのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0210】
実施形態11Eは、バインダーが、カルボン酸塩を含む、実施形態1E~4Eのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0211】
実施形態12Eは、カルボン酸アニオンが、少なくとも10個の炭素原子を有する、実施形態11Eに記載の複合顆粒である。
【0212】
実施形態13Eは、カルボン酸塩が、ステアリン酸マグネシウムを含む、実施形態11E又は12Eに記載の複合顆粒である。
【0213】
実施形態14Eは、バインダーが、熱可塑性ポリマーを含む、実施形態1E~4Eのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0214】
実施形態15Eは、バインダーが、熱硬化性ポリマーを含む、実施形態1E~4Eのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0215】
実施形態16Eは、バインダーが、エラストマーを含む、実施形態1E~4Eのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0216】
実施形態17Eは、バインダーが、天然由来ポリマーを含む、実施形態1E~4Eのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0217】
実施形態18Eは、天然由来ポリマーが、セルロース系樹脂である、実施形態17Eに記載の複合顆粒である。
【0218】
実施形態19Eは、バインダーが、導電性ポリマーを含む、実施形態1E~4Eのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0219】
実施形態20Eは、バインダーが、ゲル化材、吸収性材料、又はこれらの混合物を含む、実施形態1E~4Eのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0220】
実施形態21Eは、バインダーが、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアルコール、ポリアミン、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース、キチン、ゼラチン、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、アルギン酸、海藻から単離されたカラギーナン、多糖類、ペクチン、キサンタン、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム、ポリビニルピリジン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸又はこれらの混合物を含む超吸収性材料を含む、実施形態20Eに記載の複合顆粒である。
【0221】
実施形態1Fは、複合顆粒の製造方法である。方法は、実施形態1D~29Dのいずれか1つに記載のポリマー吸着剤を調製することを含む。方法は、ポリマー吸着剤をバインダーと配合して、配合材料を形成することと、この配合材料から複合顆粒を調製することを、更にまた含む。
【0222】
実施形態2Fは、配合材料から複合顆粒を調製することが、配合材料からペレット又はディスクを形成することと、ペレット又はディスクを粉砕して粉砕生成物を形成することと、粉砕生成物を篩分けして、篩分けされた生成物を回収することと、を含む、実施形態1Fに記載の方法である。
【0223】
実施形態1Gは、アルデヒドを吸着させる(すなわち、捕捉する)方法である。方法は、実施形態1E~21Eのいずれか1つに記載の複合顆粒を提供することを含む。本方法は、複合顆粒をアルデヒドに曝露することと、アルデヒドをポリマー吸着剤上に吸着させることと、を更に含む。アルデヒドは、式(I)のアルデヒド:
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。]のものである。式(I)のアルデヒドの分子量は、200g/mol以下である。
【実施例
【0224】
材料:
材料及びそれらの供給元は、表1に列挙されたとおりであった。別段の指示がない限り、全ての材料は民間の供給元から購入し、そのままで使用した。
【表1】
【0225】
ガス吸着分析:
Micromeritics Instrument Corporation(Norcross,GA)製のAccelerated Surface Area and Porosimetry(高効率比表面積/細孔分布測定)(ASAP)2020システムを使用して、多孔度及びガス吸着実験を行った。吸着質は、超高純度のものであった。以下は、例示されている材料内部の多孔度を特徴付けるために使用した典型的な方法である。Micromeriticsの直径1/2インチ(1.3cm)の試料管内で、ASAP2020の分析ポート上で超高真空下(3~7マイクロメートルHg)で加熱することによって50~250ミリグラム(mg)の材料を脱気して、残留溶媒及び他の吸着質を除去した。前駆体ポリマー材料についての脱気手順は、150℃にて3時間であった。
【0226】
0.1未満の相対圧力(p/p°)での低圧用量(5cm/g)、及び0.1~0.98の範囲でp/p°から直線的に間隔を空けた圧力点の圧力テーブルを使用して、前駆体ポリマー材料についての77Kでの窒素吸着等温線を得た。全ての等温線に関する方法において、以下の平衡化時間間隔:10-5未満のp/p°で90秒、10-5~0.1の範囲内のp/p°で40秒、及び0.1を超えるp/p°で20秒を用いた。窒素吸着分析後、周囲温度及び77Kの両方にてヘリウムを使用して、自由空間を決定した。複数点ブルナウアー-エメット-テラー(BET)分析により、窒素吸着データから、BET比表面積(SABET)を算出した。77K DFTモデルで標準的な窒素を使用して、密度汎関数理論(DFT)解析による窒素吸着データから見かけのミクロ細孔分布を計算した。約0.98相当のp/p°において吸着した窒素の総量から総細孔容積を算出した。BET、DFT及び総細孔容積分析は、Micromeritics MicroActive Version 4.04ソフトウェアを使用して実施した。
【0227】
ホルムアルデヒド容量試験:
単純な特注の貫流送達系を使用して、既知の濃度のホルムアルデヒドを測定用試料に送達した。送達系全体にプラスチック管を使用したが、ホルムアルデヒドが生成される箇所より下流部分にはフルオロポリマー管を使用した。パラホルムアルデヒド4.86重量%の溶液を2.5ミリリットル(mL)GASTIGHT注射器(製品番号81420、Hamilton Company,Reno,NV)を用いて水中に送達することにより、ホルムアルデヒドを生成した。このシリンジは、シリンジポンプ、モデル780200-V(KD Scientific,Holliston,MA)によって特定の速度で操作した。溶液中のパラホルムアルデヒド濃度及びシリンジの断面積がわかっていることにより、正確な速度でパラホルムアルデヒド溶液を送達できた。この溶液を、パラホルムアルデヒドを分解し、生じたホルムアルデヒドを蒸発させるためのフラスコ中の一片の熱した金箔上に送達した。このフラスコを介して、250mL/分の窒素ガスを通過させ、アナログマスフローコントローラ、モデルGFC17(Aalborg,Orangeburg,NY)により、0~500mL/分の範囲で制御した。コントローラの出力において20~6000mLの較正セルを有するモデル800286 GILIBRATOR平衡石鹸泡流量計(Sensidyne,St.Petersburg,FL)を配置することにより、このコントローラを較正した。GILIBRATOR流量計を使用して、検量線を作成するために使用した各フローコントローラからの一定範囲のフローを測定した。ホルムアルデヒドの蒸発により、窒素中に250百万分率(ppm)の濃度のホルムアルデヒドが生成した。水もまた窒素中に蒸発させ、これにより、気流を約50%相対湿度まで加湿した。これらの検量線を使用して、所望のホルムアルデヒド濃度(250ppmのホルムアルデヒド)及び湿度(50%相対湿度)を所望のガス流量(250mL/分)で送達するように、マスフローコントローラを設定した。
【0228】
試験管内の床深さが突き固め後に1.0cmになるまで、計風袋引きした試験管に試験材料を添加することによって、試験材料のホルムアルデヒド除去能力を決定した。試験管の内径は、1.0cmであった。次いで、試験管中の試験材料の重量を量ることによって、試験材料の質量を測定した。次いで、試験管をシステムと直列につなぎ、250ppmのホルムアルデヒド気流が試験材料を通って流れるようにした。試験管の下流側に、ガスクロマトグラフ計器(SRI 8610C、SRI Instruments(Torrance,CA))まで続く管材を接続した。ホルムアルデヒドガス流が試験試料を通過しはじめたときに試験が開始されたものとみなし、タイマーをスタートさせた。次いで、ガスクロマトグラフにより、定期的にガス流をサンプリングし、0.53ミリメートルの内径を有する長さ15メートルのRT-U-BONDカラム(Restek Corporation,Bellefonte,PA)を通過させた。更に、ガスクロマトグラフソフトウェアにより、得られた各データポイントのタイムスタンプを記録した。
【0229】
次いで、このカラムからの流出物を、水素炎イオン化検出器(FID)を装備したメタナイザに通した。メタナイザは、ホルムアルデヒドをメタンに変換し、次いで、メタンがイオン化され、FIDにより検出された。その後、このシグナルは、装置付属のデータ収集ソフトウェアに報告され、記録された。ガスクロマトグラフがガス流を6秒間サンプリングし、試料をカラムに144秒かけて通過させ、その後、ガスクロマトグラフが次の分析試料を引き込む前に、60秒かけて試料を流し出すと、ホルムアルデヒド蒸気が良好に検出されることが観察された。
【0230】
試験の前に、ガスクロマトグラフのソフトウェアを較正するために、窒素ガス流中に異なる速度のホルムアルデヒドを送達させた。このようにして、シグナル-濃度曲線を作成することができ、ガスクロマトグラフ上の任意の強度のシグナルについてホルムアルデヒド濃度との相関をとることができた。
【0231】
試験材料の床を通過したホルムアルデヒド溶出物が、1ppmに相当する信号を超える信号をFID検出器において生成したときに相当する時点を、ホルムアルデヒド容量試験の終点と定義した。各試験材料の性能は、前述の試験を行いながら1ppmのブレークスルーが観察されるまでの時間(分単位)として報告した。加えて、1ppmブレークスルーまでのブレークスループロットの曲線下面積を、この一定容積試験において使用された試験材料の既知の質量と共に使用して、最小二乗式の和を用いて各試験材料についてミリモル/グラム(mmol/g)の容量を算出した。
【0232】
調製実施1:前駆体ポリマー材料の調製
2リットル(L)のParrステンレス鋼圧力容器内で、177.11グラム(g)(1.09モル)のジビニルベンゼン(DVB、80重量%、工業用グレード)、240.05g(2.45モル)の無水マレイン酸(MA)、及び4.17g(16.8ミリモル)の2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-ペンタンニトリル)(VAZO 52)を、625.92gの酢酸エチル(EtOAc)に溶解させた。重合性組成物は、EtOAc中に40.0重量%の固形分を含んでおり、モノマー混合物(34.0重量%のDVB、57.5重量%のMA、及び8.5重量%のスチレン型モノマー)及び1重量%のVAZO 52を含有していた(モノマーの総重量を基準とする)。この重合性組成物を窒素で15分間バブリングした。次いで、圧力容器を密閉し、60℃の水浴内に入れた。重合性組成物を、この上昇した温度で18時間加熱した。生成した白色の沈殿物を真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。固体を4LのErylenmeyerフラスコに入れ、このフラスコに2.0LのEtOAcを加えた。固体をEtOAc中、室温で1時間静置した。真空濾過法により固体を再び単離し、EtOAcで洗浄した。固体を4LのErylenmeyerフラスコに入れ、このフラスコに2.0LのEtOAcを加えた。固体をEtOAc中で一晩静置した。真空濾過法により固体を再び単離し、EtOAcで洗浄した。次いで、固形分をバッチ式オーブン内で100℃にて18時間乾燥させた。窒素吸着によって決定したこの前駆体ポリマー材料のSABETは343.3m/gであり、総細孔容積は0.593cm/g(p/p°=0.979)であった。
【0233】
調製例2:加水分解前駆体ポリマー材料の調製
調製例1に記載の前駆体ポリマー材料を加水分解剤(水酸化ナトリウム(NaOH))で処理した。より詳細には、58.8g(1.47モル)のNaOHを、1L広口瓶中で490mLの脱イオン水に溶解させた。この溶液に、50.0gの前駆体ポリマー材料(米国標準試験用の40番及び80番ワイヤメッシュ篩(ASTM E-11標準;Hogentogler and Co.,Inc.,Columbia,MD)を使用して単離することにより、40×80メッシュの粒度範囲まで粉砕して篩分けし、Meinzer II篩振盪器(CSC Scientific Company,Inc.,Fairfax,VA)を使用し、15分間動作させた後、分離材料を回収した)を添加した。
【0234】
次いで広口瓶に蓋をし、広口瓶回転装置にセットした。この懸濁液を室温で18時間回転させた。固体を真空濾過により単離し、脱イオン水で洗浄した。固形分を1L広口瓶に戻し、広口瓶に、515mLの2.1モル(M)塩酸水溶液(HCl)(435mLの脱イオン水に添加した80mLの濃縮HCl)を加えた。広口瓶に蓋をし、広口瓶回転装置にセットし直し、室温で一晩回転させた。固体を再び真空濾過法により単離し、脱イオン水で洗浄した。次に、固形分を高真空下で95℃にて8時間乾燥させた。
【0235】
実施例1~7:
以下の実施例は、調製例2の加水分解前駆体ポリマー材料を、エタノール(EtOH)中に2つ以上のアミノ基を含有する窒素含有化合物(例えばアミン化合物)と反応させることによって調製した。アミン化合物の同一性、加水分解前駆体ポリマー材料と反応したアミン化合物の量、1MA当たりのアミン化合物の当量、及び反応に使用されるアミン/EtOH溶液中のアミン化合物の濃度を表2にまとめる。より具体的には、アミン化合物を十分なEtOHに溶解させて、表2に列挙した濃度で各アミン溶液を調製した。これらの溶液のそれぞれに、調製例2の加水分解前駆体ポリマー材料3.0g(上記のように得られた40×80メッシュ)を添加した。加水分解前駆体ポリマー材料を、各アミン溶液中に室温で18時間浸漬させた。真空濾過により固形分をそれぞれ単離し、EtOHで洗浄した。次いで、それぞれの固形分を、200mLのEtOHを含有する8オンス(oz.)広口瓶に戻した。固形分をEtOH中に18時間浸した。真空濾過により固形分を単離し、EtOHで洗浄した。次いで、固形分材料を、オーブン内で高真空下で90℃にて18時間乾燥させた。得られたアミン塩官能性ポリマー吸着剤(上記のように得られた40×80メッシュ)を使用して、上記のようにホルムアルデヒド容量試験を実施して、それぞれのアミン塩官能性ポリマー吸着剤のホルムアルデヒド容量を決定した。試験に使用した試料の質量、各試験の継続時間(分)、及び算出したmmol/g容量(ポリマー吸着剤1g当たりのホルムアルデヒドのミリモル)を表3に示す。
【表2】
【0236】
比較例1:
比較例1の材料は活性炭(米国標準試験用の32番及び60番ワイヤメッシュ篩(ASTM E-11標準;Hogentogler and Co.,Inc.,Columbia,MD)を利用して単離することによって、32×60メッシュの粒径範囲に篩分けし、Meinzer II篩振盪器(CSC Scientific Company,Inc.,Fairfax,VA)を15分間動作させた後、分離材料を回収した。)であり、これを市販の3M GAS AND VAPOUR FILTERS 6000 SERIESカートリッジ(3M,Maplewood,MN)で使用して、ホルムアルデヒド及び有機蒸気について評価した。この炭素のホルムアルデヒド容量は、スルファミン酸の半中和水溶液を含浸することから生じる。含浸炭素を使用して、上記のようにホルムアルデヒド容量試験を実施し、この含浸炭素のホルムアルデヒド容量を決定した。試験に使用した試料の質量、試験の継続時間(分)、及び算出したmmol/g容量(比較吸着剤1g当たりのホルムアルデヒドのミリモル)を表3に示す。
【0237】
比較例2:
比較例2の材料は、調製例2に記載の加水分解前駆体ポリマー材料をイソニコチン酸ヒドラジド(IAH)と反応させることによって調製した比較吸着剤を含有していた。より具体的には、2.42g(17.6mmol)のIAHを、4オンス広口瓶内で36mLのEtOHに溶解させながら、砂浴中で80℃に加熱した。これに、3.0gの加水分解前駆体ポリマー材料を添加した。加水分解前駆体ポリマー材料を、80℃で18時間加熱しながら反応させた。次いで、真空濾過によって固形分を単離し、EtOHで洗浄した。固形分を4オンス広口瓶に入れ、広口瓶に50mLのEtOHを添加した。広口瓶を砂浴に戻し、固形分を80℃にてEtOH中で一晩静置した。固形分を真空濾過により再び単離し、EtOHで洗浄した。次いで、固形分を、オーブン内で高真空下で90℃にて8時間乾燥させた。得られた比較吸着剤(米国標準試験用の40番及び80番のワイヤメッシュ篩(ASTM E-11標準;Hogentogler and Co.,Inc.,Columbia,MD)を利用して単離することによって、40×80メッシュの粒径範囲に篩分けし、Meinzer II篩振盪器(CSC Scientific Company,Inc.,Fairfax,VA)を15分間作動させ、その後、分離された材料を回収した。)を使用して、上記のようにホルムアルデヒド容量試験を実施し、この比較吸着剤のホルムアルデヒド容量を決定した。試験に使用した試料の質量、試験の継続時間(分)、及び算出したmmol/g容量(比較吸着剤1g当たりのホルムアルデヒドのミリモル)を表3に示す。
【0238】
比較例3:
比較例3の材料は、調製例2に記載の加水分解前駆体ポリマー材料をイソニコチン酸ヒドラジド(IAH)と反応させることによって調製された比較吸着剤を含有していた。より具体的には、4.83g(35.2mmol)のIAHを、8オンス広口瓶内で72mLのEtOHに溶解させながら、砂浴中で80℃に加熱した。これに、3.0gの加水分解前駆体ポリマー材料を添加した。加水分解前駆体ポリマー材料を、80℃で18時間加熱しながら反応させた。次いで、真空濾過によって固形分を単離し、EtOHで洗浄した。固形分を8オンス広口瓶に入れ、この広口瓶に50mLのEtOHを添加した。広口瓶を砂浴に戻し、固形分を80℃にてEtOH中で一晩静置した。固形分を真空濾過により再び単離し、EtOHで洗浄した。次いで、固形分を、オーブン内で高真空下で90℃にて8時間乾燥させた。得られた比較吸着剤(米国標準試験用の40番及び80番のワイヤメッシュ篩(ASTM E-11標準;Hogentogler and Co.,Inc.,Columbia,MD)を利用して単離することによって、40×80メッシュの粒径範囲に篩分けし、Meinzer II篩振盪器(CSC Scientific Company,Inc.,Fairfax,VA)を15分間作動させ、その後、分離された材料を回収した。)を使用して、上記のようにホルムアルデヒド容量試験を実施し、この比較吸着剤のホルムアルデヒド容量を決定した。試験に使用した試料の質量、試験の継続時間(分)、及び算出したmmol/g容量(比較吸着剤1g当たりのホルムアルデヒドのミリモル)を表3に示す。
【表3】