(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/30 20060101AFI20220405BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B60N2/30
B60N2/22
(21)【出願番号】P 2020194340
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村藤 寿志
(72)【発明者】
【氏名】能登 祐二
(72)【発明者】
【氏名】松井 亮太
(72)【発明者】
【氏名】田山 晃介
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0366886(US,A1)
【文献】特開2005-161981(JP,A)
【文献】特開2001-026230(JP,A)
【文献】特開平07-237478(JP,A)
【文献】国際公開第03/078201(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/30
B60N 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フロアに支持されるベース部材と、
前記ベース部材に車両幅方向に延在する第1回転軸まわりに回転可能に接続され、シートバックの骨格部材であるバックフレームと、
前記バックフレームの前記ベース部材に対する相対回転を許容するアンロック状態と相対回転を規制するロック状態とに切り替わる回転ロック機構と、
前記バックフレームに前記第1回転軸と平行な第2回転軸まわりに回転可能に接続され、長手方向が車両前後方向に沿う長孔が形成された、シートクッションの骨格部材であるクッションフレームと、
前記ベース部材に前記第1回転軸と平行な第3回転軸まわりに回転可能に接続されたリンク部材と、
前記リンク部材に固定され、前記長孔に前記長手方向に相対移動可能且つ前記第1回転軸と平行な自身の軸線まわりに回転可能に挿入され、前記シートバック及び前記シートクッションが使用状態にあるときに前記長孔の前記長手方向の一端部に位置し、前記シートバック及び前記シートクッションが格納状態にあるときに前記長孔の前記一端部より前記長手方向の他端部側に位置する第4回転軸と、
前記長孔の内面と前記第4回転軸とに設けられ、前記回転ロック機構が前記ロック状態にあり且つ前記シートバックが前記使用状態にあるときに、前記第4回転軸が前記一端部から前記他端部側に移動するのを規制する移動規制部と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記シートバック及び前記シートクッションが所定の回転領域に位置するときに、前記シートバック及び前記シートクッションが前記使用状態になる請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記移動規制部が、
前記長孔の内面の前記一端部より前記他端部側に位置する部位に設けられた抜止突起と、
前記シートバックが前記使用状態にあるときは、前記抜止突起と前記長手方向に対向して前記第4回転軸が前記抜止突起より前記他端部側へ移動するのを規制し、且つ、前記第4回転軸が前記一端部に位置する状態で前記シートバックが前記使用状態から前記格納状態へ移行するときは、前記抜止突起と前記長手方向に対向せずに前記第4回転軸が前記抜止突起より前記他端部側へ移動するのを許容する、前記第4回転軸の外周面である係脱面と、
を有する請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記係脱面が、
前記第4回転軸に直交する平面で切断した断面形状が円弧であり、前記シートバックが前記使用状態にあるときに、前記抜止突起と前記長手方向に対向して前記第4回転軸が前記抜止突起より前記他端部側へ移動するのを規制する規制面と、
前記第4回転軸を中心とする周方向の両端部が前記規制面に接続し、前記第4回転軸が前記一端部に位置する状態で前記シートバックが前記使用状態から前記格納状態へ移行するとき、前記抜止突起と前記長孔の幅方向に対向しながら前記第4回転軸が前記抜止突起より前記他端部側へ移動するのを許容する許容面と、
を有する請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記長孔の内面の前記一端部側の端面が円弧状の第1端面であり、
前記第4回転軸が前記一端部に位置するときに、前記規制面が前記第1端面と対向する請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記長孔の内面の前記他端部側の端面が円弧状の第2端面であり、
前記第4回転軸が前記他端部に位置するときに、前記規制面が前記第2端面と対向する請求項4又は請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記使用状態にある前記シートクッションが前下方側へ移動することにより、前記シートクッションが前記格納状態となり、
前記クッションフレームを前記車両幅方向に見たときの前記長孔の形状が、下方側に凸の円弧形状である請求項1~請求項6の何れか1項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には車両用シートが開示されている。この車両用シートは、シートクッションと、シートバックと、シートバックとシートクッションの相対回転を許容及び規制可能なリクライニング機構(回動機構)と、を備える。車両フロアに設けられたチルト機構がシートクッションを回転可能に支持する。チルト機構は、車両フロアに固定された床面取付構体と、下端部が床面取付構体に回転可能に接続されたチルト部材と、を備える。シートクッションはブラケットを有する。このブラケットに設けられた前後方向に延在する長孔(スリット)に、チルト部材の上端部に固定された摺動軸が挿入されている。チルト機構は、チルト部材を床面取付構体に対して前方側に回転付勢するコイルばねを有する。
【0003】
シートバックが所定の起立位置にあるとき、シートクッションは乗員が着座可能な着座可能位置に位置する。このときコイルばねの回転付勢力により、摺動軸がブラケットの長孔の前端部に位置する状態が維持される。そのため、摺動軸の長孔内での前方側への移動が規制される。従って、リクライニング機構がロック状態にあるときに乗員がシートクッションに着座しても、シートクッションは着座可能位置に維持される。
【0004】
この状態でリクライニング機構のロックを解除してシートバックを起立位置から前方側に回転させると、シートバックの回転に連動して、摺動軸がブラケットの長孔を前端部から後端部へ移動する。そのため、チルト部材が下端部を中心に回転し、シートクッションが前下方側へ移動する。即ち、シートクッションがチルトダウンする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記車両用シートでは、シートクッションが着座可能位置に位置するときに、摺動軸がブラケットの長孔の前端部に位置する状態がコイルばねによって維持される。即ち、上記車両用シートは、着座可能位置にあるシートクッションの位置が変動しないようにするためのコイルばねを必要とする。そのため、上記車両用シートは、部品点数が多く、構造が複雑である。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、部品点数が少なく且つ構造が簡単でありながら、回転ロック機構がロック状態にあり且つシートクッションに乗員が着座したときに、シートクッションの位置が変動しないようにすることが可能な車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、車両フロアに支持されるベース部材と、前記ベース部材に車両幅方向に延在する第1回転軸まわりに回転可能に接続され、シートバックの骨格部材であるバックフレームと、前記バックフレームの前記ベース部材に対する相対回転を許容するアンロック状態と相対回転を規制するロック状態とに切り替わる回転ロック機構と、前記バックフレームに前記第1回転軸と平行な第2回転軸まわりに回転可能に接続され、長手方向が車両前後方向に沿う長孔が形成された、シートクッションの骨格部材であるクッションフレームと、前記ベース部材に前記第1回転軸と平行な第3回転軸まわりに回転可能に接続されたリンク部材と、前記リンク部材に固定され、前記長孔に前記長手方向に相対移動可能且つ前記第1回転軸と平行な自身の軸線まわりに回転可能に挿入され、前記シートバック及び前記シートクッションが使用状態にあるときに前記長孔の前記長手方向の一端部に位置し、前記シートバック及び前記シートクッションが格納状態にあるときに前記長孔の前記一端部より前記長手方向の他端部側に位置する第4回転軸と、前記長孔の内面と前記第4回転軸とに設けられ、前記回転ロック機構が前記ロック状態にあり且つ前記シートバックが前記使用状態にあるときに、前記第4回転軸が前記一端部から前記他端部側に移動するのを規制する移動規制部と、を備える。
【0009】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において「車両前後方向に沿う」とは、車両前後方向と完全に平行であること又は車両前後方向と完全に平行な方向に対して僅かに傾斜すること、を意味する。
【0010】
請求項1に記載の車両用シートによれば、ベース部材に第1回転軸まわりに回転可能に接続されたバックフレームに、シートクッションが第2回転軸まわりに回転可能に接続される。さらに、ベース部材に、リンク部材が第3回転軸まわりに回転可能に接続される。さらに、クッションフレームに形成された長孔に、リンク部材に固定された第4回転軸が、長孔の長手方向に相対移動可能且つ自身の軸線まわりに回転可能に挿入される。そのため、シートバック(バックフレーム)の回転に連動してシートクッション(クッションフレーム)が回転する。
【0011】
そして、回転ロック機構がロック状態にあり且つシートバックが使用状態にあるときに、第4回転軸が長孔の一端部から他端部側に移動することが、移動規制部によって規制される。即ち、回転ロック機構がロック状態にあり且つシートバックが使用状態にあるときは、シートクッション及びシートバックの回転動作が、移動規制部によって規制される。従って、回転ロック機構がロック状態にある場合は、使用状態にあるシートクッションに乗員が着座してもシートクッションの位置は変動しない。
【0012】
さらに、移動規制部が、長孔の内面と第4回転軸とに設けられている。そのため、車両用シートの部品点数を少なくし、車両用シートの構造を簡単にできる。
【0013】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記シートバック及び前記シートクッションが所定の回転領域に位置するときに、前記シートバック及び前記シートクッションが前記使用状態になる。
【0014】
請求項2に記載の車両用シートによれば、回転ロック機構がロック状態にあるときは、シートバック及びシートクッションが所定の回転領域中のいずれの回転位置に位置していても、シートクッションに乗員が着座したときにシートクッションの位置が変動しない。
【0015】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記移動規制部が、前記長孔の内面の前記一端部より前記他端部側に位置する部位に設けられた抜止突起と、前記シートバックが前記使用状態にあるときは、前記抜止突起と前記長手方向に対向して前記第4回転軸が前記抜止突起より前記他端部側へ移動するのを規制し、且つ、前記第4回転軸が前記一端部に位置する状態で前記シートバックが前記使用状態から前記格納状態へ移行するときは、前記抜止突起と前記長手方向に対向せずに前記第4回転軸が前記抜止突起より前記他端部側へ移動するのを許容する、前記第4回転軸の外周面である係脱面と、を有する。
【0016】
請求項3に記載の車両用シートによれば、移動規制部が、長孔の内面に設けられた抜止突起と、第4回転軸の外周面である係脱面と、を有する。そのため、クッションフレーム及び第4回転軸とは別体として製造された部材をクッションフレーム及び第4回転軸の少なくとも一方に取り付けることにより移動規制部を構成する場合と比べて、移動規制部の構造をより簡単にすることが可能になる。
【0017】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記係脱面が、前記第4回転軸に直交する平面で切断した断面形状が円弧であり、前記シートバックが前記使用状態にあるときに、前記抜止突起と前記長手方向に対向して前記第4回転軸が前記抜止突起より前記他端部側へ移動するのを規制する規制面と、前記第4回転軸を中心とする周方向の両端部が前記規制面に接続し、前記第4回転軸が前記一端部に位置する状態で前記シートバックが前記使用状態から前記格納状態へ移行するとき、前記抜止突起と前記長孔の幅方向に対向しながら前記第4回転軸が前記抜止突起より前記他端部側へ移動するのを許容する許容面と、を有する。
【0018】
請求項4に記載の車両用シートでは、係脱面が、規制面と許容面とを有する。規制面は、第4回転軸に直交する平面で切断した断面形状が円弧であり、シートバックが使用状態にあるときに、抜止突起と長手方向に対向して第4回転軸が抜止突起より長孔の他端部側へ移動するのを規制する。許容面は、第4回転軸が一端部に位置する状態でシートバックが使用状態から格納状態へ移行するとき、抜止突起と長孔の幅方向に対向しながら第4回転軸が抜止突起より長孔の他端部側へ移動するのを許容する。この許容面は、第4回転軸を中心とする周方向の両端部が規制面に接続する面である。このように移動規制部の構成要素である第4回転軸の外周面(係脱面)の形状が、円弧面と円弧面の両端部を接続する面からなる簡単な形状である。そのため、第4回転軸の構造が簡単である。従って、移動規制部の構造をより簡単にすることが可能になる。
【0019】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、請求項4に記載の車両用シートにおいて、前記長孔の内面の前記一端部側の端面が円弧状の第1端面であり、前記第4回転軸が前記一端部に位置するときに、前記規制面が前記第1端面と対向する。
【0020】
請求項5に記載の車両用シートでは、第4回転軸が長孔の一端部に位置するときに、第4回転軸の円弧状の規制面が、長孔の内面の一端部側の端面である円弧状の第1端面と対向する。そのため第4回転軸が長孔の一端部に位置する状態でシートバックが回転するときに、第4回転軸の外周面と長孔の内面との間の摩擦力が小さくなる。そのため、第4回転軸が長孔の一端部に位置するときに、シートバックが円滑に回転できる。さらに第4回転軸の外周面及び長孔の第1端面が摩耗し難くなる。
【0021】
請求項6に記載の発明に係る車両用シートは、請求項4又は請求項5に記載の車両用シートにおいて、前記長孔の内面の前記他端部側の端面が円弧状の第2端面であり、前記第4回転軸が前記他端部に位置するときに、前記規制面が前記第2端面と対向する。
【0022】
請求項6に記載の車両用シートによれば、第4回転軸が長孔の他端部に位置するときに、第4回転軸の円弧状の規制面が、長孔の内面の他端部側の端面である円弧状の第2端面と対向する。そのため第4回転軸が長孔の他端部に位置する状態でシートバックが回転したときに、第4回転軸の外周面と長孔の内面との間の摩擦力が小さくなる。そのため、第4回転軸が長孔の他端部に位置するときに、シートバックが円滑に回転できる。さらに第4回転軸の外周面及び長孔の第2端面が摩耗し難くなる。
【0023】
請求項7に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記使用状態にある前記シートクッションが前下方側へ移動することにより、前記シートクッションが前記格納状態となり、前記クッションフレームを前記車両幅方向に見たときの前記長孔の形状が、下方側に凸の円弧形状である。
【0024】
請求項7に記載の車両用シートによれば、使用状態にあるシートクッションが格納状態となる方向へ回転するときのシートクッションの下方への移動量が小さくなる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートによれば、部品点数が少なく且つ構造が簡単でありながら、回転ロック機構がロック状態にあり且つシートクッションに乗員が着座したときに、シートクッションの位置が変動しないようにすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートのシートバックが基準使用位置に位置するときの左側面図である。
【
図2】
図1に示される車両用シートのクッションフレームのサイドフレームに形成された長孔とリンク部材に固定された第4回転軸の位置関係を示すための左側面図である。
【
図3】
図1に示される車両用シートのシートバックが後端位置に位置するときの左側面図である。
【
図4】
図3に示される車両用シートの長孔と第4回転軸の位置関係を示すための左側面図である。
【
図5】
図1に示される車両用シートのシートバックが折畳開始位置に位置するときの左側面図である。
【
図6】
図5に示される車両用シートの長孔と第4回転軸の位置関係を示すための左側面図である。
【
図7】
図1に示される車両用シートのシートバックが折畳開始位置から前方へ回転したときの左側面図である。
【
図8】
図7に示される車両用シートの長孔と第4回転軸の位置関係を示すための左側面図である。
【
図9】
図1に示される車両用シートのシートバックが
図7の位置から前方へ回転したときの左側面図である。
【
図10】
図9に示される車両用シートの長孔と第4回転軸の位置関係を示すための左側面図である。
【
図11】
図1に示される車両用シートのシートバックが前端位置に位置するときの左側面図である。
【
図12】
図11に示される車両用シートの長孔と第4回転軸の位置関係を示すための左側面図である。
【
図13】本発明の比較例の長孔と第4回転軸の位置関係を示すためのサイドフレーム及び第4回転軸の模式的な左側面図である
【
図14】本発明の変形例に係る車両用シートのクッションフレームのサイドフレームの前部及び第4回転軸の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、
図1~
図13を用いて本発明の実施形態に係る車両用シート10(以下、シート10)について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0028】
本実施形態に係るシート10は、例えばミニバン等の車両(図示省略)の2列目又は3列目の1人掛け用のシートである。シート10は、その前後左右上下の方向が車両の前後左右上下の方向と一致する姿勢で、車両フロア12のシート設置面12Aに取り付けられている。
図1及び
図3等に示すように、車両フロア12にはシート設置面12Aの直前に位置する凹部12Bが設けられている。
【0029】
シート設置面12Aにはスライドレール装置14が設けられている。スライドレール装置14は、シート設置面12Aに固定され且つ前後方向に延在する左右一対のロアレール16と、各ロアレール16にスライド可能に支持された左右一対のアッパレール18と、アッパレール18の前後方向位置を任意の位置で固定可能なスライドロック機構(図示省略)と、を備える。
【0030】
左右のアッパレール18には、共に金属製の第1ベース部材20(ベース部材)及び第2ベース部材21(ベース部材)がそれぞれ固定されている。即ち、第1ベース部材20及び第2ベース部材21が、スライドレール装置14を介して車両フロア12に支持されている。
【0031】
シート10は、シートバック22及びシートクッション32を有する。シートバック22の内部には、シートバック22の骨格部材である金属製のバックフレーム24が設けられている。バックフレーム24は、左右一対のサイドフレーム26と、左右のサイドフレーム26の上端部同士を接続するアッパフレーム(図示省略)と、左右のサイドフレーム26の下部同士を接続するロアフレーム(図示省略)と、を有する。シートバック22の上端部には、ヘッドレスト27が支持されている(
図1参照)。
【0032】
左右の第1ベース部材20には、左右のサイドフレーム26の下端部が、周知のリクライニング機構28(
図1等を参照)を介して接続されている。即ち、バックフレーム24(サイドフレーム26)は第1ベース部材20に対してリクライニング機構28(回転ロック機構)の回転中心軸であり且つ左右方向に延在する第1回転軸30まわりに回転可能である。左右のリクライニング機構28は互いに同軸である。左右のリクライニング機構28は、シート10に回転可能に設けられた操作レバー(図示省略)に、連係機構(図示省略)を介して接続されている。操作レバーが初期位置に位置するとき、各リクライニング機構28はロック状態になり、バックフレーム24の第1ベース部材20に対する回転方向位置がリクライニング機構28によって固定される。操作レバーを初期位置から操作位置まで回転させると、各リクライニング機構28がアンロック状態になる。そのため、バックフレーム24は、第1ベース部材20に対して時計方向及び反時計方向に相対回転可能になる。なお、本明細書で「時計方向に回転する」及び「反時計方向に回転する」という説明を行うときの「時計方向」及び「反時計方向」は、左側からシート10を見たときの方向である。
【0033】
シートクッション32の内部には、シートクッション32の骨格部材である金属製のクッションフレーム34が設けられている。クッションフレーム34は、左右一対のサイドフレーム36と、左右のサイドフレーム36の前端部同士を接続するフロントフレーム(図示省略)と、左右のサイドフレーム36の後部同士を接続するリアフレーム(図示省略)と、を有する。
【0034】
左右のサイドフレーム36の後端部の間に、左右のサイドフレーム26の一部が位置する。左右のサイドフレーム36が左右のサイドフレーム26に、左右方向に延在する第2回転軸38を介して回転可能に接続されている。
図2及び
図4等に示されるように、左右のサイドフレーム36には長孔40が貫通孔として形成されている。サイドフレーム36を左右方向に見たときの長孔40の側面形状は、下方側に凸の円弧形状である。この円弧形状は、正確な円弧形状であってもよいし、略円弧形状であってもよい。この略円弧形状も、特許請求の範囲の「円弧形状」に含まれる。長孔40の長手方向ed(
図2の矢印参照)は、前後方向に沿う方向である。シート10が
図1及び
図2に示す状態にあるときに、長孔40の長手方向edの中央部は両端部より下方側に位置する。長孔40の前端面は側面形状が円弧形状の第1端面42であり、長孔40の後端面は側面形状が円弧形状の第2端面44である。第1端面42と第2端面44の曲率は同一である。長孔40の内面の底部の第1端面42から後方に僅かに離れた位置には、上向きの抜止突起46が一体的に設けられている。即ち、例えばプレス成形によってサイドフレーム36を製造する場合は、抜止突起46がサイドフレーム36と同時に製造される。長孔40の幅w(長手方向edに直交する短手方向の寸法。
図2の矢印参照)は略一定である。但し、長孔40の抜止突起46が設けられた部位の幅w1(
図8参照)は、抜止突起46が設けられた部位以外の部位の幅w2(
図8参照)より狭い。
【0035】
左右の第2ベース部材21には、左右一対の金属製のリンク部材50が接続されている。左右のリンク部材50の長手方向の一端部が、左右方向に延在する第3回転軸52を介して、左右の第2ベース部材21に回転可能に接続されている。
【0036】
左右のリンク部材50の他端部には、左右方向に延在する金属製の第4回転軸54が固定されている。
図2及び
図4等に示されるように、第4回転軸54の外周面である係脱面56は規制面58及び許容面60を有する。規制面58は、第4回転軸54の左右方向に延在する軸線54Aを中心とする円筒面の一部である。即ち、軸線54Aに直交する平面で切断したときの規制面58の断面形状は円弧である。この円弧(円筒面)の軸線54Aを中心とする中心角は180°より大きい。さらに規制面58の軸線54Aを中心とする曲率半径をrとすると、幅w1<2r<幅w2である。許容面60は軸線54Aと平行な平面である。但し、許容面60は平面でなくてもよい。許容面60の軸線54Aを中心とする周方向の両端部が、規制面58の周方向の両端部にそれぞれ接続されている。長孔40の抜止突起46及び第4回転軸54の係脱面56は、移動規制部62の構成要素である。
【0037】
左右の第4回転軸54は、左右のサイドフレーム36の長孔40にそれぞれ挿入されている。第4回転軸54は、長手方向edに相対移動可能且つ軸線54Aまわりに回転可能に長孔40に挿入されている。
【0038】
上述のように、サイドフレーム26が第1ベース部材20に第1回転軸30まわりに回転可能に接続され、サイドフレーム36がサイドフレーム26に第2回転軸38まわりに回転可能に接続され、リンク部材50がサイドフレーム36(長孔40)に第4回転軸54まわりに回転可能に接続され、且つリンク部材50が第2ベース部材21に第3回転軸52まわりに回転可能に接続されている。そのため、リクライニング機構28がアンロック状態にある場合は、サイドフレーム26の回転に連動して、サイドフレーム36及びリンク部材50が回転する。
【0039】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
サイドフレーム26(シートバック22)が
図1に示される基準使用位置に位置するとき、サイドフレーム36(シートクッション32)は
図1に示される基準着座位置に位置し、リンク部材50は
図1に示される位置に位置する。このとき
図2に示されるように、第4回転軸54は長孔40の長手方向edの一端部である前端部40fに位置し、規制面58の一部が長孔40の第1端面42と接触又は微小隙間を形成しながら対向する。さらに規制面58の別の一部が、長孔40の抜止突起46と長手方向edに接触又は微小隙間を形成しながら対向する。そのため、リクライニング機構28がロック状態にあり且つシート10が
図1の状態にあるとき、第4回転軸54が抜止突起46を乗り越えて長孔40の内部を後方側へ移動することが、抜止突起46と規制面58によって規制される。
【0041】
リクライニング機構28がアンロック状態にあるときに、サイドフレーム26が基準使用位置から
図3に示される後端位置まで後方側へ回転すると、サイドフレーム36及びリンク部材50は
図3に示される位置まで回転する。サイドフレーム26が基準使用位置から後端位置へ回転すると、
図4に示されるように第4回転軸54が長孔40の前端部40fにおいて軸線54Aまわりに時計方向に回転する。
図4に示されるように、このとき規制面58の一部が抜止突起46と長手方向edに接触又は微小隙間を形成しながら対向する。さらに、規制面58の別の一部が第1端面42と接触又は微小隙間を形成しながら対向する。そのため、シート10が
図3の状態にあるとき、第4回転軸54が長孔40に対して前方へ相対移動することが第1端面42と規制面58によって規制される。従って、サイドフレーム26の後端位置から後方側への回転が、第1端面42及び規制面58によって規制される。シートバック22(サイドフレーム26)が基準使用位置と後端位置との間の回転領域を回転するときに、シートバック22及びシートクッション32が使用状態となる。
【0042】
サイドフレーム26が基準使用位置から
図5に示される折畳開始位置まで前方側へ回転すると、サイドフレーム36及びリンク部材50は
図5に示される位置まで回転する。サイドフレーム26が基準使用位置から折畳開始位置へ回転すると、
図6に示されるように第4回転軸54が前端部40fにおいて軸線54Aまわりに反時計方向に回転する。このとき、規制面58が抜止突起46より上方側に位置する。即ち、規制面58は抜止突起46と長手方向edに対向しない。そのため、シート10が
図5の状態にあるとき、第4回転軸54は、抜止突起46の上方側の空間(長孔40の内部)を後方側へ移動可能である。
【0043】
後端位置(
図3)と折畳開始位置(
図5)との間を回転するときのシートバック22(バックフレーム24)の回転範囲を「第1回転領域」と称する。また、
図3の位置と
図5の位置との間を回転するときのシートクッション32(クッションフレーム34)の回転範囲を「第2回転領域」と称する。上述のように、リクライニング機構28がアンロック状態にあり且つ第4回転軸54が長孔40の前端部40fに位置するとき、シートバック22(バックフレーム24)は第1回転領域を回転可能であり且つシートクッション32(クッションフレーム34)は第2回転領域を回転可能である。
【0044】
リクライニング機構28がロック状態にあり且つ第4回転軸54が長孔40の前端部40fに位置するときは、サイドフレーム26の第1回転軸30まわりの回転がリクライニング機構28によって規制される。この状態でシートクッション32に第2回転軸38まわりの外力を付与すると、サイドフレーム36(長孔40)とリンク部材50(第4回転軸54)が互いに相対回転しようとする。しかし、第4回転軸54の長孔40に対する前方側への相対移動は規制面58と第1端面42とによって規制され、且つ、第4回転軸54の長孔40に対する後方側への相対移動は規制面58と抜止突起46とによって規制されている。そのため、シートクッション32に第2回転軸38まわりの外力を付与しても、シートクッション32のシートバック22に対する角度は変化しない。即ち、リクライニング機構28がロック状態にあり且つ第4回転軸54が前端部40fに位置するときは、サイドフレーム26、サイドフレーム36及びリンク部材50の回転が規制される。従って、第2回転領域における任意の回転位置に位置するシートクッション32に乗員(図示省略)が着座しても、シートクッション32及びシートバック22の回転位置は変動しない。例えば
図1に示される基準着座位置に位置するシートクッション32に乗員(図示省略)が着座しても、シートクッション32は基準着座位置に維持され且つシートバック22は基準使用位置に維持される。
【0045】
リクライニング機構28がアンロック状態にあるときにサイドフレーム26が折畳開始位置から
図7に示される位置まで前方側へ回転すると、サイドフレーム36及びリンク部材50は
図7に示される位置まで回転する。サイドフレーム26が折畳開始位置から
図7に示される位置へ回転すると、第4回転軸54は軸線54Aまわりの回転方向の位置を殆ど変えずに長孔40を後方側へ移動する。即ち、許容面60が抜止突起46と幅w方向に対向する状態で抜止突起46の上方の空間を後方側へ通過する。そのため、
図8に示されるように、第4回転軸54は長孔40の長手方向edの中央部近傍まで移動する。そのため、
図7に示されるように、サイドフレーム36が
図5の位置より下方側へ回転し且つリンク部材50が第3回転軸52を中心に
図5の位置から反時計方向に回転する。
【0046】
さらに、リクライニング機構28がアンロック状態にあるときにサイドフレーム26が
図7に示される位置から
図9に示される位置まで前方側へ回転すると、サイドフレーム36及びリンク部材50は
図9に示される位置まで回転する。サイドフレーム26が
図9に示される位置へ回転すると、
図10に示されるように、第4回転軸54は軸線54Aまわりの回転方向の位置を殆ど変えずに長孔40を後方側へ移動する。そのため、
図9に示されるように、サイドフレーム36が
図7の位置より下方側へ回転し且つリンク部材50が第3回転軸52を中心に
図7の位置から反時計方向に回転する。
【0047】
リクライニング機構28がアンロック状態にあるときにサイドフレーム26が
図9に示される位置から
図11に示される前端位置まで前方側へ回転すると、サイドフレーム36及びリンク部材50は
図11に示される位置まで回転する。サイドフレーム26が
図11に示される位置へ回転すると、
図12に示されるように、第4回転軸54は軸線54Aまわりの回転方向の位置を殆ど変えずに長孔40の他端部である後端部40rまで移動する。このとき、
図11に示されるように、サイドフレーム36は
図9の位置より僅かに上方側へ回転し且つリンク部材50が第3回転軸52を中心に
図9の位置から僅かに時計方向に回転する。シートバック22及びシートクッション32が
図11に示される位置に位置するときに、シートバック22及びシートクッション32が格納状態となる。
【0048】
このとき
図12に示されるように、第4回転軸54の規制面58が長孔40の第2端面44と接触又は微小隙間を形成しながら対向する。そのため、第4回転軸54は、長孔40の内部を後方側へ移動できない。従って、サイドフレーム26の前端位置から前方側への回転は、長孔40の第2端面44及び第4回転軸54の規制面58によって規制される。そしてこの状態でリクライニング機構28がロック状態に戻ると、サイドフレーム26、サイドフレーム36及びリンク部材50の回転が規制される。
【0049】
このようにシートバック22(サイドフレーム26)が
図5に示される折畳開始位置から
図11に示される位置まで前方側へ回転すると、
図5、
図7、
図9及び
図11に示されるように、シートクッション32(サイドフレーム36)は
図5に示される位置から前下方側へ移動して凹部12Bに収納される。さらに
図11に示されるようにシートバック22(サイドフレーム26)及びシートクッション32(サイドフレーム36)が略水平になる。
【0050】
シート10が
図11及び
図12の状態にあるときに、リクライニング機構28をアンロック状態にした状態でシートバック22(サイドフレーム26)を所定角度だけ後方側へ回転させると、シート10は
図1及び
図2に示された状態に復帰する。そして、この状態でリクライニング機構28をロック状態に切り替えると、シートバック22(サイドフレーム26)が基準使用位置に維持され且つシートクッション32(サイドフレーム36)が基準着座位置に維持される。
【0051】
以上説明した本実施形態のシート10は、リクライニング機構28がロック状態にあり且つシートバック22が第1回転領域に位置するときに、長孔40の前端部40fに位置する第4回転軸54が後端部40r側に移動することが、移動規制部62(第4回転軸54の係脱面56及び長孔40の抜止突起46)によって規制される。従って、リクライニング機構28がロック状態にある場合は、第2回転領域における任意の回転位置に位置するシートクッション32に乗員が着座しても、シートクッション32及びシートバック22の回転位置は変動しない。
【0052】
さらに、移動規制部62の構成要素である抜止突起46が長孔40の内面に設けられ、且つ、移動規制部62の構成要素である係脱面56が第4回転軸に設けられている。そのため、シート10の部品点数が少なく、シート10の構造が簡単である。
【0053】
さらに移動規制部62が、長孔40の内面に設けられた抜止突起46と、第4回転軸54の外周面である係脱面56と、を有する。そのため、サイドフレーム36及び第4回転軸54とは別体として製造された部材をサイドフレーム36及び第4回転軸54の少なくとも一方に取り付けることにより移動規制部62を構成する場合と比べて、移動規制部62の構造がより簡単である。
【0054】
さらに移動規制部62の構成要素である第4回転軸54の外周面(係脱面56)の形状が、円弧面と円弧面の両端部を接続する面からなる簡単な形状である。そのため、第4回転軸54及び移動規制部62の構造が簡単である。
【0055】
さらに、第4回転軸54が長孔40の前端部40fに位置する状態でシートバック22が第1回転領域を回転するときに、断面形状が円弧である規制面58が円弧状の第1端面42と対向(接触)する。そのため第4回転軸54が前端部40fに位置する状態でシートバック22が第1回転領域を回転するときに、第4回転軸54の係脱面56と長孔40の内面との間の摩擦力が小さくなる。そのため、第4回転軸54が前端部40fに位置するときに、シートバック22が第1回転領域を円滑に回転でき且つシートクッション32が第2回転領域を円滑に回転できる。さらに第4回転軸54の係脱面56及び長孔40の第1端面42が摩耗し難くなる。
【0056】
さらに、第4回転軸54が長孔40の後端部40rに位置するときに、第4回転軸54の円弧状の規制面58が、長孔40の第2端面44と対向(接触)する。そのため、第4回転軸54が後端部40rに位置する状態でシートバック22が第1回転領域側へ回転したときに、第4回転軸54の係脱面56と長孔40の内面との間の摩擦力が小さくなる。そのため、第4回転軸54が後端部40rに位置する状態でシートバック22が第1回転領域側へ回転するときに、シートバック22が第1回転領域側へ円滑に回転でき且つシートクッション32が第2回転領域側へ円滑に回転できる。さらに第4回転軸54の係脱面56及び長孔40の第2端面44が摩耗し難くなる。
【0057】
ところで、
図13に示す比較例のサイドフレーム36には、前後方向に直線的に延在する長孔40Aが形成され、この長孔40Aに第4回転軸54が移動自在に挿入されている。
図13に仮想線で示す長孔40は上記実施形態の長孔である。便宜上、
図13では抜止突起46の図示が省略され且つ第4回転軸54の断面形状が円形である。シート10が
図7の位置と
図9の位置の間を回転するとき、長孔40Aに挿入された第4回転軸54及び長孔40に挿入された第4回転軸54は、共に
図13の位置に位置する。
図13中のLU1は長孔40に挿入された第4回転軸54の軸線54Aからサイドフレーム36の上縁部までの直線距離であり、LD1は長孔40に挿入された第4回転軸54の軸線54Aからサイドフレーム36の下縁部までの直線距離である。
図13中のLU2は長孔40Aに挿入された第4回転軸54の軸線54Aからサイドフレーム36の上縁部までの直線距離であり、LD2は長孔40Aに挿入された第4回転軸54の軸線54Aからサイドフレーム36の下縁部までの直線距離である。
【0058】
長孔40Aに挿入された第4回転軸54が固定されたリンク部材50の回転軌跡と、長孔40に挿入された第4回転軸54が固定されたリンク部材50の回転軌跡は同じである。そのため、実際には、シートバック22が第1回転領域より前方側の回転領域(以下、前方回転領域)を回転するとき、長孔40Aに挿入された第4回転軸54の上下方向位置と、長孔40に挿入された第4回転軸54の上下方向位置と、は互いに一致する。さらに、図示されるように、LU1>LU2且つLD1<LD2である。そのため、シートバック22が前方回転領域を回転するとき、長孔40Aが形成されたサイドフレーム36の上縁部は、長孔40が形成されたサイドフレーム36の上縁部より下方側に位置する。さらに、シートバック22が前方回転領域を回転するとき、長孔40Aが形成されたサイドフレーム36の下縁部は、長孔40が形成されたサイドフレーム36の下縁部より下方側に位置する。即ち、シートバック22が前方回転領域を回転するとき、長孔40Aが形成されたサイドフレーム36は、長孔40が形成されたサイドフレーム36と比べて下方側に位置する。換言すると、長孔40が形成されたサイドフレーム36は、長孔40Aが形成されたサイドフレーム36と比べて、シートバック22が第1回転領域から前方側へ回転するときの下方への移動量が小さい。
【0059】
そのため、シート10が
図9及び
図10に示される位置まで回転したときに、長孔40が形成されたサイドフレーム36(シートクッション32)は、長孔40Aが形成されたサイドフレーム36(シートクッション32)より上方側へ位置する。そのため、サイドフレーム36に長孔40を形成した場合は、サイドフレーム36に長孔40Aを形成した場合と比べて、凹部12Bの深さを小さくできる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0061】
例えばシート10を
図14に示す変形例の態様で実施してもよい。この変形例のサイドフレーム36には長孔64が形成されている。サイドフレーム36を左右方向に見たときの長孔64の側面形状は、下方側に凸の円弧形状である。この円弧形状は、正確な円弧形状であってもよいし、略円弧形状であってもよい。この略円弧形状も、特許請求の範囲の「円弧形状」に含まれる。長孔64の長手方向edの一端部である前端部64fの側面形状は略円形である。長孔64の前端面は側面形状が円弧形状の第1端面65である。図示は省略されているが、長孔64の長手方向edの他端部である後端部の端面には、円弧形状の第2端面が形成されている。前端部64fの幅w方向の寸法である幅w3は、長孔64の前端部64f以外の部位の幅w方向の寸法である幅w4より大きい。長孔64の前端部64f以外の部位の幅w4は一定ではない。即ち、幅w4は前方側から後方側に向かうにつれて徐々に大きくなる。長孔64の前端部64f以外の部位の底面64bと、前端部64fの下部の内面である下部内面64f1と、の接続部は角部64cである。下部内面64f1は角部64cより下方側に位置する。
【0062】
本変形例の第4回転軸66の係脱面68は規制面70及び許容面72を有する。第4回転軸66の軸線66Aに直交する平面で切断したときの規制面70の断面形状は円弧である。この円弧(円筒面)の軸線66Aを中心とする中心角は180°より大きい。さらに規制面70の軸線66Aを中心とする曲率半径をRとすると、幅w4<2R<幅w3である。許容面72は軸線66Aと平行な平面である。但し、許容面72は平面でなくてもよい。長孔64の下部内面64f1及び第4回転軸66の係脱面68は、移動規制部74の構成要素である。
【0063】
シートバック22(サイドフレーム26)が第1回転領域を回転するとき、
図14に示されるように、第4回転軸66は前端部64fに位置し且つ規制面70の一部が長孔64の第1端面65と接触又は微小隙間を形成しながら対向する。さらに規制面70の別の一部が下部内面64f1と長孔64の長手方向edに接触又は微小隙間を形成しながら対向する。なお、
図14に実線で示された第4回転軸66は、シートバック22(サイドフレーム26)が基準使用位置に位置し且つシートクッション32(サイドフレーム36)が基準着座位置に位置するときの第4回転軸66である。また、
図14に仮想線で示された第4回転軸66は、シートバック22(サイドフレーム26)が折畳開始位置に位置するときの第4回転軸66である。
【0064】
従って、リクライニング機構28がロック状態にあり且つ第4回転軸66が前端部64fに位置するときは、サイドフレーム26、サイドフレーム36及びリンク部材50の回転が規制される。そのため例えば
図1に示される基準着座位置に位置するシートクッション32に乗員が着座しても、本変形例のシートクッション32は基準着座位置に維持され且つシートバック22は基準使用位置に維持される。
【0065】
リクライニング機構28がアンロック状態にある状態でシートバック22(サイドフレーム26)が折畳開始位置から
図7に示される位置まで前方側へ回転すると、シートクッション32(サイドフレーム36)及びリンク部材50は
図7に示される位置まで回転する。そのため、第4回転軸66は軸線66Aまわりの回転方向の位置を
図14の仮想線で示された位置から殆ど変えずに長孔64を後方側へ移動する。即ち、許容面72が下部内面64f1及び角部64cと幅w方向に対向する状態で下部内面64f1及び角部64cの上方の空間を後方側へ通過する。そのため、
図14に仮想線で示されたように、第4回転軸66は長孔64の長手方向edの中央部側へ移動する。そのため、シートクッション32(サイドフレーム36)が
図5の位置より下方側へ回転し且つリンク部材50が第3回転軸52を中心に
図5の位置から反時計方向に回転する。
【0066】
リクライニング機構28がアンロック状態にある状態でシートバック22(サイドフレーム26)が前端位置まで回転すると、シートクッション32(サイドフレーム36)及びリンク部材50は
図11に示される位置まで回転する。このとき、第4回転軸66は長孔64の後端部(図示省略)に位置し且つ規制面70の一部が第2端面と接触又は微小隙間を形成しながら対向する。
【0067】
また、上記実施形態の長孔40の長手方向edの内面の底部の第2端面44から前方に僅かに離れた位置に抜止突起46が一体的に設けられ、且つ、長孔40の内面の前端近傍に設けられた抜止突起46が省略されてもよい。この場合はシートバック22(バックフレーム24)が第1回転領域を回転するときに、第4回転軸54が長孔40の一端部である後端部40rに位置する。また、シートバック22(バックフレーム24)が前端位置に位置するときに、第4回転軸54が長孔40の他端部である前端部40fに位置する。
【0068】
同様に、
図14に示す変形例の長孔64の後端部を
図14に開示された前端部64fと同じ形状にし、長孔64の前端部を
図14に示された変形例の後端部と同じ形状にしてもよい。この場合はシートバック22(バックフレーム24)が第1回転領域を回転するときに、第4回転軸66が長孔64の一端部である後端部に位置する。また、シートバック22(バックフレーム24)が前端位置に位置するときに、第4回転軸66が長孔64の他端部である前端部に位置する。
【0069】
長孔40及び長孔64の側面形状が、車両前後方向に沿う直線形状であってもよい。
【0070】
抜止突起46とサイドフレーム36を別々に製造した後に、抜止突起46を長孔40の内面に溶接等により固定してもよい。
【0071】
リンク部材50と第4回転軸54を、両者が互いに固定された状態で一体成形してもよい。例えば、リンク部材50と第4回転軸54を鋳造により一体成形してもよい。
【0072】
左右のサイドフレーム26の一方のみを、リクライニング機構28を介して第1ベース部材20に接続してもよい。
【0073】
単一のベース部材に、サイドフレーム26及びリンク部材50を回転可能に接続してもよい。
【0074】
ベース部材が、車両フロア12に固定されてもよい。
【0075】
シート10は、複数人が車両幅方向に並んだ着座可能な車両幅方向寸法を有するシートであってもよい。
【0076】
シート10からロック機能を有するリクライニング機構28を省略し、且つ、サイドフレーム26(バックフレーム24)と第1ベース部材20(ベース部材)とを左右方向に延在する第1回転軸30まわりに回転可能に接続してもよい。但し、この場合は、サイドフレーム26の第1ベース部材20に対する相対回転を許容するアンロック状態と相対回転を規制するロック状態とに切り替わる回転ロック機構(図示省略)をシート10に設ける。このような回転ロック機構は、例えば、車体に設けられたストライカと、シートバック22に設けられたラッチと、ラッチを操作するラッチ操作部材と、を有する。ラッチ操作部材を操作すると、ラッチは、ストライカと係合可能なロック状態(ラッチ状態)と、ストライカと係合不能なアンロック状態(アンラッチ状態)と、に切り替わる。シートバック22が使用状態となった場合に、ロック状態のラッチがストライカと係合すると、シートバック22の回転方向位置が所定位置に保持される。ラッチがアンロック状態になると、シートバック22は第1ベース部材20に対して相対回転可能になる。
【0077】
軸線54Aに直交する平面で切断したときの規制面58の軸線54Aを中心とする中心角は180°以下であってもよい。同様に、軸線66Aに直交する平面で切断したときの規制面70の軸線66Aを中心とする中心角は180°以下であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 車両用シート(シート)
12 車両フロア
20 第1ベース部材(ベース部材)
21 第2ベース部材(ベース部材)
22 シートバック
24 バックフレーム
28 リクライニング機構(回転ロック機構)
30 第1回転軸
32 シートクッション
34 クッションフレーム
38 第2回転軸
40 長孔
40f 前端部(一端部)(他端部)
40r 後端部(他端部)(一端部)
42 第1端面
44 第2端面
46 抜止突起
50 リンク部材
52 第3回転軸
54 第4回転軸
56 係脱面
58 規制面
60 許容面
62 移動規制部
64 長孔
64f 前端部(一端部)(他端部)
65 第1端面
66 第4回転軸
68 係脱面
70 規制面
72 許容面
74 移動規制部
ed 長手方向
w 幅
【要約】
【課題】部品点数が少なく且つ構造が簡単でありながら、回転ロック機構がロック状態にあり且つシートクッションに乗員が着座したときに、シートクッションの位置が変動しないようにする。
【解決手段】ベース部材に第1回転軸まわりに回転可能に接続されたバックフレームと、回転ロック機構と、バックフレームに第2回転軸まわりに回転可能に接続され、長孔40が形成されたクッションフレームと、ベース部材に第3回転軸まわりに回転可能に接続されたリンク部材と、リンク部材に固定され、長孔に相対移動可能且つ回転可能に挿入された第4回転軸54と、長孔の内面と第4回転軸とに設けられた、回転ロック機構がロック状態にあり且つシートバックが使用状態にあるときに、第4回転軸が長孔の一端部から他端部側に移動するのを規制する移動規制部62と、を備える。
【選択図】
図2