(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】洗浄して使用されるベローズを用いた密閉式往復動撹拌装置
(51)【国際特許分類】
F16J 3/04 20060101AFI20220405BHJP
B01F 33/25 20220101ALI20220405BHJP
B01F 35/00 20220101ALI20220405BHJP
【FI】
F16J3/04 B
B01F11/00 A
B01F15/00 A
B01F15/00 Z
(21)【出願番号】P 2016035587
(22)【出願日】2016-02-26
【審査請求日】2019-02-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹マルチミクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500325104
【氏名又は名称】株式会社エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 明
(72)【発明者】
【氏名】金森 久幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】丹生 徳行
(72)【発明者】
【氏名】山内 勇
【合議体】
【審判長】平田 信勝
【審判官】間中 耕治
【審判官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特公昭46-34556(JP,B1)
【文献】実開平6-30560(JP,U)
【文献】特開2011-196420(JP,A)
【文献】特開2004-243161(JP,A)
【文献】実開昭60-115532(JP,U)
【文献】特開平2-19253(JP,A)
【文献】特開平8-74999(JP,A)
【文献】実開平2-74656(JP,U)
【文献】特開平9-183487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 3/00 - 3/06
B01F 11/00
B01F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌槽と、
該撹拌槽の天井板を貫通して設けた、上下往復動する駆動軸と、
該駆動軸に設けた撹拌翼と、
前記撹拌槽の天井板の下面と前記駆動軸とを密閉に固定したベローズとよりなり、
該ベローズは、蛇腹状に形成された筒状体からなり、
該筒状体は、薄板状又は膜状の環よりなる上側板体部と下側板体部とが外縁で密閉に連結されて形成された蛇腹素子の複数が、上下方向に配置されると共に、互いに隣接する蛇腹素子において、上方の蛇腹素子の下側板体部の内縁と下方の蛇腹素子の上側板体部の内縁とが密閉に連結されて構成され、
該連結された、前記筒状体の外側の谷折り部は弧状であり、
前記外縁で連結された前記上側板体部と下側板体部とよりなる蛇腹素子は、板状又は膜状の環体と、該環体の内周面から外周面の近傍まで半径方向に設けられた、該環体の切り込みにより形成された環状の切り込み部とより構成されることを特徴とする洗浄
して使用されるベローズを用いた密閉式往復動撹拌装置。
【請求項2】
前記上側板体部及び前記下側板体部は、薄板状又は膜状の円環よりなることを特徴とする請求項
1に記載の洗浄
して使用されるベローズを用いた密閉式往復動撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、撹拌翼を上下往復動させることによって密閉式撹拌槽内の内容物(被撹拌物)を撹拌する撹拌装置に用いられるベローズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬や食品、ファインケミカル用途において、撹拌槽内を外部から完全に分離して、外部からのコンタミネーション(汚染)を防止すると共に、該撹拌槽内の内容物を、撹拌翼を上下往復動させて撹拌させる密閉式撹拌装置がある(特許文献1)。
【0003】
前記撹拌装置の往復動を行う駆動軸をシールするものとして、例えば、
図5~
図7に示すように、伸縮するベローズaがある。
【0004】
かかるベローズaとしては、例えば、テフロン(登録商標)などの樹脂材料からなる蛇腹状に形成された筒状体があり、該蛇腹状に形成された筒状体は、例えば、
図5に示すように、円筒体bに、該筒状体bの外周面b1及び内周面b2から上下方向において交互に所望の間隔離間して、それぞれ半径方向(水平方向)に円環状の複数の切り込み部cを入れて形成され、製造容易で作成コストが抑えられている。
【0005】
また、前記ベローズaは、上下往復動する駆動軸に従って、
図5に示す前記ベローズaが縮小された状態と、
図6に示す前記ベローズaが伸長した状態とが交互に繰り返されるようになり、往復駆動する駆動軸をシールするものとしては、最適なものとして使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記ベローズaは、
図7に示すように、伸び縮み運動による繰り返し荷重によって、鋭角に形成された切込み部dに亀裂が入り、そして破断に至り、寿命が短い(耐久性が低い)。
【0008】
また、撹拌槽内の内容物に触れるベローズaの外表面a1は洗浄が必要であるが、該ベローズaの切込み部dは、極めて微小な隙間を有する構造であり、また、鋭角な切込み部dは、繰り返し使用により微細な亀裂が生じ、極めて狭い隙間を形成するため、洗浄が困難で汚染リスクが高い。
【0009】
従って、医薬等の分野においては、前記ベローズaは、密閉式往復動撹拌装置のベローズとしては用いられていないのが現状である。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ライフサイクルが長く、洗浄性に優れると共に、経済性に優れるベローズを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の洗浄して使用されるベローズを用いた密閉式往復動撹拌装置は、撹拌槽と、該撹拌槽の天井板を貫通して設けた、上下往復動する駆動軸と、該駆動軸に設けた撹拌翼と、前記撹拌槽の天井板の下面と前記駆動軸とを密閉に固定したベローズとよりなり、該ベローズは、蛇腹状に形成された筒状体からなり、該筒状体は、薄板状又は膜状の環よりなる上側板体部と下側板体部とが外縁で密閉に連結されて形成された蛇腹素子の複数が、上下方向に配置されると共に、互いに隣接する蛇腹素子において、上方の蛇腹素子の下側板体部の内縁と下方の蛇腹素子の上側板体部の内縁とが密閉に連結されて構成され、該連結された、前記筒状体の外側の谷折り部は弧状であり、前記外縁で連結された前記上側板体部と下側板体部とよりなる蛇腹素子は、板状又は膜状の環体と、該環体の内周面から外周面の近傍まで半径方向に設けられた、該環体の切り込みにより形成された環状の切り込み部とより構成されることを特徴とする。
【0013】
また、前記各蛇腹素子の上側板体部の上面が、内縁から外縁に向かうに従って徐々に下方に傾斜して形成されることを特徴とする。
【0015】
また、前記上側板体部及び前記下側板体部は、薄板状又は膜状の円環よりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、ライフサイクルが長く、洗浄性に優れると共に、経済性に優れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のベローズを用いた撹拌装置の縦断正面図である。実施例1の曝気撹拌装置の縦断側面図である。
【
図2】本発明のベローズの一部の拡大縦断正面図である。
【
図3】本発明のベローズの伸長状態を示す縦断正面図である。
【
図4】
図3のベローズの一部拡大縦断正面図である。
【
図6】従来のベローズの伸長状態の縦断正面図である。
【
図7】
図6のベローズの一部拡大縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0020】
以下、図面によって本発明の実施例を説明する。
【0021】
図1は、本発明のベローズを用いた密閉式往復動撹拌装置1の縦断正面図である。
【0022】
2は、撹拌槽を示し、該撹拌槽2は、円筒状の胴部からなり、天井板2aの中央部に撹拌軸貫通用の開口部2bが形成されている。
【0023】
3は、駆動軸を示し、該駆動軸3は、その上部において図示しない上下動装置、例えば往復駆動式モータに垂設されており、該駆動軸3の中間部で前記開口部2bを貫通して設けられている。
【0024】
4は、撹拌翼を示し、該撹拌翼4は、例えば、楕円の板状体からなり、前記駆動軸3の中間部又は下端部に直交するように連結固定されている。
【0025】
5は、ベローズを示し、該ベローズ5は、蛇腹状に形成された筒状体6からなり、該筒状体6の上端開口部6aが前記天井板2aの下面の前記開口部2bの縁部に気密又は液密に固定され、また、下端開口部6bが前記駆動軸3の側面に気密又は液密に固定され、これにより、前記ベローズ5が前記撹拌槽2の内外を密閉して覆うと共に、前記駆動軸3の上下動に従って、前記筒状体6が
図2及び
図4に示すように、上下方向に伸縮するように形成されている。
【0026】
また、前記ベローズ5の蛇腹状の筒状体6は、
図2に示すように、上下に複数、密閉して連結された蛇腹素子7よりなり、該蛇腹素子7は、薄板状又は膜状の円環よりなる上側板体部7aと下側板体部7bとが、該上側板体部7aの外縁8aと該下側板体部7bの外縁8bとで気密又は液密に連結されて形成され、また、上下に互いに隣接する蛇腹素子7、7は、上方の蛇腹素子7の下側板体部7bの内縁9bと、下方の蛇腹素子7の上側板体部7aの内縁9aとが気密又は液密に連結されて形成されると共に、該連結部の前記筒状体6の外側の谷折り部10は円弧又は楕円等の弧状に形成されている。
【0027】
また、前記各蛇腹素子7の上側板体部7aの上面7cは、例えば、円錐台状に、内縁9aから外縁8aに向かうに従って徐々に下方に傾斜して形成される。
【0028】
なお、前記各蛇腹素子7を、一枚の上面が内縁から外縁に向かって徐々に下方に傾斜した板状又は膜状の円錐台状の円環体と、該円環体の内縁内周面から外縁外周面の近傍まで半径方向(水平方向)に設けた円環状の切り込みとにより形成することにより、製造容易で作成コストを抑えることができる。
【0029】
次に本実施例のベローズを用いた密閉式往復動撹拌装置1の作動及びその効果について説明する。
【0030】
図2に示すように、前記ベローズ5は、前記駆動軸3の上死点において、上下方向に力が加わっていない縮小状態となり、また、
図3に示すように、前記駆動軸3の下死点において、前記ベローズ5は伸長状態となり、前記駆動軸3の上下動に従って、前記ベローズ5は、伸縮するようになる。
【0031】
この際、
図4に示すように、前記筒状体6の外側の谷折り部10が弧状に形成されているので、例えば、100万回繰り返し運転しても破損がなく、従って、前記筒状体6の外表面の洗浄が容易となる。
【0032】
なお、前記筒状体6内側の谷折り部11は、鋭角状に形成されているが、洗浄とは関係なく、また、繰り返し使用により、該谷折り部11に多少亀裂が入ったとしても、洗浄に関係がないので、問題はない。
【0033】
また、前記各蛇腹素子7の上面7cを、内縁から外縁に向かうに従って下へ勾配を設けたため、洗浄液が下に流れるようになり、洗浄効果が高めることができるようになる。
【0034】
本願発明によれば、作成コストを抑えると共に、ライフサイクルが長く、しかも洗浄性に優れるベローズを優れるベローズ及びこのベローズを用いた密閉式往復動撹拌装置を提供することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、主として、医薬や食品、ファインケミカルの分野の撹拌に利用される。
【符号の説明】
【0036】
1 密閉式往復動撹拌装置
2 撹拌槽
2a 天井板
2b 開口部
3 駆動軸
4 撹拌翼
5 ベローズ
6 筒状体
6a 上端開口部
6a 下端開口部
7 蛇腹素子
7a 上側板体部
7b 下側板体部
7c 上面
8a 外縁
8b 外縁
9a 内縁
9a 内縁
10 谷折り部
11 谷折り部