(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20220405BHJP
H03H 9/215 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
H03H9/19 J
H03H9/215
(21)【出願番号】P 2018033718
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 元規
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0006411(US,A1)
【文献】特開2015-154290(JP,A)
【文献】特開2012-039226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料製の圧電振動片であって、
基部と、
前記基部から第一の方向に延出される一対の振動腕部と、
前記一対の振動腕部の並び方向の両外側で前記基部から
前記並び方向に延びる第一延出部と、前記第一延出部から前記第一の方向に延出される
第二延出部と、を備え、前記第二延出部において前記圧電振動片が収容されるパッケージに対して固定される一対の支持腕部と、
前記一対の振動腕部と前記一対の支持腕部との前記並び方向の間のそれぞれで
前記第一延出部から前記第一の方向及び反対方向の少なくとも一方に延出され
、かつ前記パッケージに対しては固定されない一対の中間腕部と、
を有
する圧電振動片。
【請求項2】
前記第一の方向において前記中間腕部の延出先端の位置が、前記一対の前記支持腕部の延出先端の位置と同じである請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記第一の方向又は前記反対方向において前記中間腕部の延出先端の位置が、前記一対の前記支持腕部の延出先端の位置と異なっている請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の圧電振動片と、
前記圧電振動片を気密状態で収容する収容部を備える
前記パッケージと、
前記支持腕部を前記収容部の底面に接着する導電性接着剤と、
を有する圧電振動子。
【請求項5】
請求項
4に記載の圧電振動子を備え、前記圧電振動子は発振子として集積回路に電気的に接続されている発振器。
【請求項6】
請求項
4に記載の圧電振動子を備え、前記圧電振動子は計時部に電気的に接続されている電子機器。
【請求項7】
請求項
4に記載の圧電振動子を備え、前記圧電振動子はフィルタ部に電気的に接続されている電波時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動片として、圧電材料により形成された基部と、基部から所定方向に伸びる一対の振動腕と、振動腕の外側で基部より所定方向に伸びる一対の支持腕とを備えた構造の圧電振動片がある(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電振動片の一対の振動腕部が振動すると、この振動によって、支持腕部も振動する。このような、振動腕部から支持腕部への振動漏れ(「音響リーク」と称されることがある)が生じると、圧電振動片の振動特定に影響を与えることがある。
【0005】
本願は、振動腕部から支持腕部への振動漏れを抑制することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の態様では、基部と、前記基部から第一の方向に延出される一対の振動腕部と、前記一対の振動腕部の並び方向の両外側で前記基部から前記第一の方向に延出される一対の支持腕部と、前記一対の振動腕部と前記一対の支持腕部との間のそれぞれで前記基部から前記第一の方向及び反対方向の少なくとも一方に延出される一対の中間腕部と、を有する。
【0007】
この圧電材料製の圧電振動片に対する電圧印加により、基部から延出された一対の振動腕部が所定の振動数で振動する。圧電振動片は、一対の支持腕部を有しており、この支持腕部によって、たとえばパッケージの支持部に支持される。
【0008】
さらに、この圧電振動片は、一対の中間腕部を有している。一対の中間腕部のそれぞれは、一対の振動腕部のそれぞれと一対の支持腕部のそれぞれとの間で、基部から、第一の方向、及びその反対方向の少なくとも一方に延出されている。振動腕部の振動は、基部を経て支持腕部に伝わろうとするとが、振動伝達経路の途中から中間腕部が延出されていることになる。振動腕部の振動の一部が、中間腕部の振動として吸収されるので、振動腕部から支持腕部への振動漏れを抑制できる。これにより、圧電振動片の振動特性を良好にできる。
【0009】
第二の態様では、第一の態様において、前記第一の方向において前記中間腕部の延出先端の位置が、前記一対の前記支持腕部の延出先端の位置と同じである。
【0010】
第三の態様では、第一の態様において、前記第一の方向又は前記反対方向において前記中間腕部の延出先端の位置が、前記一対の前記支持腕部の延出先端の位置と異なっている。
【0011】
このように、中間腕部の延出先端の位置は、支持腕部の延出先端の位置と同じであってもよく、異なっていてもよい。中間腕部の延出先端の位置を調整することで、中間腕部を含む圧電振動片の全体での重心位置を所望の位置にできる。
【0012】
第四の態様では、第一~第三のいずれか1つの態様の圧電振動片と、前記圧電振動片を気密状態で収容する収容部を備えるパッケージと、前記支持腕部を前記収容部の底面に接着する導電性接着剤と、を有する。
【0013】
圧電振動片が、パッケージの収容部に気密状態で収容されている。この圧電振動子は、一対の中間腕部を有しているので、振動腕部から基部を経て支持腕部に伝わろうとする振動の一部が、中間腕部の振動として吸収される。振動腕部から支持腕部への振動漏れが抑制され、圧電振動子として、良好な振動特性を得られる。
【0014】
第五の態様では、第四の態様において、前記中間腕部が前記パッケージに対し非接触である。
【0015】
中間腕部がパッケージに対し非接触であるので、中間腕部の振動がパッケージに伝わらす、圧電振動子の振動特性をさらに良好にできる。
【0016】
第六の態様では、第四又は第五の態様の圧電振動子を備え、前記圧電振動子は発振子として集積回路に電気的に接続されている。
【0017】
発振子として集積回路に電気的に接続された圧電振動子は、一対の中間腕部を有している。振動腕部から基部を経て支持腕部に伝わろうとする振動の一部が、中間腕部の振動として吸収されるので、振動腕部から支持腕部への振動漏れが抑制され、発振器として、良好な発振特性を得られる。
【0018】
第七の態様では、第四又は第五の態様の圧電振動子を備え、前記圧電振動子は計時部に電気的に接続されている。
【0019】
計時部に電気的に接続された圧電振動子は、一対の中間腕部を有している。振動腕部から基部を経て支持腕部に伝わろうとする振動の一部が、中間腕部の振動として吸収されるので、振動腕部から支持腕部への振動漏れが抑制され、電子機器として、良好な計時特性を得られる。
【0020】
第八の態様では、第四又は第五の態様の圧電振動子を備え、前記圧電振動子はフィルタ部に電気的に接続されている。
【0021】
フィルタ部に電気的に接続された圧電振動子は、一対の中間腕部を有している。振動腕部から基部を経て支持腕部に伝わろうとする振動の一部が、中間腕部の振動として吸収されるので、振動腕部から支持腕部への振動漏れが抑制され、電波時計として、良好な特性を得られる。
【発明の効果】
【0022】
本願では、振動腕部から支持腕部への振動漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は第一実施形態の圧電振動片を示す側面図である。
【
図2】
図2は第一実施形態の圧電振動片を示す平面図である。
【
図3】
図3は第一実施形態の圧電振動片を示す側面図である。
【
図4】
図4は第一実施形態の圧電振動子を示す斜視図である。
【
図5】
図5は第一実施形態の圧電振動子を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は第一実施形態の圧電振動子の内部構造を示す平面図である。
【
図7】
図7は第一実施形態の圧電振動子を示す
図4の7-7線断面図である。
【
図8】
図8は第一実施形態の圧電振動片を製造する工程を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は第一実施形態の圧電振動片を製造する工程を(A)から(E)へと順に示す説明図である。
【
図10】
図10は第一実施形態において圧電振動片を圧電振動子のキャビティに接着する工程を(A)から(C)へと順に示す説明図である。
【
図12】
図12は第二実施形態の圧電振動片を示す平面図である。
【
図13】
図13は第三実施形態の圧電振動片を示す平面図である。
【
図14】
図14は第四実施形態の圧電振動片を示す平面図である。
【
図15】
図15は第五実施形態の圧電振動片を示す平面図である。
【
図16】
図16は本願実施形態の圧電振動子を用いた発振器を示す構成図である。
【
図17】
図17は本願実施形態の圧電振動子を用いた電子機器を示す構成図である。
【
図18】
図18は本願実施形態の圧電振動子を用いた電波時計を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第一実施形態の圧電振動片22及び圧電振動子42について、図面を参照して詳細に説明する。図面において、圧電振動片22の幅方向、長手方向及び厚み方向をそれずれ、矢印W、矢印L及び矢印Tで示す。さらに、図面において、互いに直交するX、Y、Zの3つの矢印を示す。
図1~
図3において、矢印X及びその反対の-X方向が幅方向に、矢印Y及びその反対の-Y方向が長手方向に、矢印Z及びその反対の-Z方向が厚み方向に対応する。
【0025】
圧電振動片22は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料によって形成されており、所定の電圧を印加することで振動する部材である。後述するように、圧電振動片22の形状、特に一対の振動腕部26を有する形状は、音叉型と称されることがある。
【0026】
図1及び
図2に示すように、圧電振動片22は、板状の基部24を有している。本実施形態では、基部24は、厚み方向(矢印T1方向)に視て、矢印W方向を長辺24Lとする長方形状である。すなわち、基部24の長辺24Lの方向は圧電振動片22の幅方向と一致している。
【0027】
基部24からは、一対(2本)の振動腕部26が、矢印Y方向(第一の方向)に延出されている。2本の振動腕部26は平行であり、平面視で矢印W方向に並んでいる。本実施形態では、振動腕部26はいずれも、基部24と一体成形されており、基部24の長辺24Lの一方から延出されている。
【0028】
基部24からは、さらに、一対(2本)の支持腕部28が延出されている。支持腕部28のそれぞれは、平面視で、振動腕部26の並び方向(矢印W方向)の両方の外側に位置している。
【0029】
本実施形態では、支持腕部28は、基部24の短辺24Sのそれぞれから幅方向外側に延出された第一延出部30Aと、この第一延出部30Aの延出端部から矢印Y方向に延出された第二延出部30Bを有する形状である。そして、支持腕部28における第二延出部30Bが、振動腕部26の並び方向(矢印W方向)の両方の外側で、振動腕部26と平行に位置している。支持腕部28の延出先端28Tは、振動腕部26の延出先端26Tよりも基部24に近い位置である。
【0030】
基部24からは、さらに、一対(2本)の中間腕部32が延出されている。中間腕部32のそれぞれは、平面視で、振動腕部26と支持腕部28の間のそれぞれに位置している。本実施形態では、中間腕部32は、支持腕部28の第一延出部30Aにおける延出方向の中間位置から矢印Y方向に延出されている。すなわち、中間腕部32は、支持腕部28の第一延出部30Aを介して基部24から延出される形状である。
【0031】
本実施形態では、矢印Y方向で、中間腕部32の延出先端32Tの位置は、支持腕部28の延出先端28Tの位置と同じである。換言すれば、
図3に示すように、矢印Y方向では、中間腕部32の延出先端32Tと支持腕部28の延出先端28Tとは重なる。
【0032】
図2に示すように、圧電振動片22は、基部24における幅方向の中心線CL-1に対し線対称の形状である。
【0033】
圧電振動片22の表面には、図示しない励振電極が設けられており、励振電極への電圧印加により、圧電振動片22が所定の振動数で振動する。
図3に示すように、本実施形態の圧電振動片22では、振動腕部26の厚み方向における両面(上面26A及び下面26B)に、第一の方向に沿って凹部26Hが形成されて表面積が広くされており、励振電極を広い範囲に設けることができる形状である。
【0034】
図4~
図7に示すように、圧電振動子42は、パッケージ44を有する。パッケージ44は、本実施形態では、直方体の箱状の部材であり、内部が収容部46である。収容部46には、圧電振動片22が気密状態で収容される。
【0035】
パッケージ44は、一方の面(
図5及び
図7では上側の面)が開放されたパッケージ本体48と、このパッケージ本体48の開放部分を閉塞する平板状の閉塞板50と、を有している。
【0036】
パッケージ本体48は、平板状のパッケージ板52と、枠状のパッケージ枠54と、環状のシール枠56と、を有している。本実施形態では、パッケージ板52とパッケージ枠54はいずれもセラミック製であり、たとえば、セラミックグリーンシートを重ね合わせて一体で焼結することが形成されている。また、シール枠56は、パッケージ枠54に重ね合わせた状態で接合されている。
【0037】
本実施形態では、平面視(矢印D1方向視)において、パッケージ板52の外側、パッケージ枠54の外側及びシール枠56の外側は、同一の形状を有している。本実施形態では、パッケージ板52、パッケージ枠54及びシール枠56の外側形状は同一の長方形状である。そして、パッケージ本体48の4つの角部には、中心角90度の円弧状の切欠48Kが厚み方向に渡って設けられている。
【0038】
また、
図5~
図7に示すように、平面視においてパッケージ枠54の内側とシール枠56の内側とは、同一の形状を有している。本実施形態では、パッケージ枠54の内側とシール枠56の内側とはいずれも、角部が円弧状の長方形である。
【0039】
パッケージ枠54の長辺54L(
図5参照)のそれぞれからは、平面視でパッケージ枠54の内側に突出する支持部58が形成されている。支持部58は、パッケージ44の底面44Bにおいて、圧電振動片22を支持する部位である。
【0040】
図6に示すように、平面視における支持部58の位置は、圧電振動片22において支持腕部28の一部には重なるが、支持腕部28以外の部位には重ならない位置である。したがって、中間腕部32は、パッケージ44に対し非接触である。
【0041】
図5~
図7に示すように、支持部58の上面には、圧電振動片22と電気的に接続される電極パッド60が設けられている。そして、電極パッド60上の導電性接着剤62によって支持腕部28が電極パッド60に接着されている。すなわち、パッケージ44の底面44Bの支持部58に対し、導電性接着剤62によって、支持腕部28が電気的に接続されて接着されることで、圧電振動片22がパッケージ44に取り付けられる構造である。
【0042】
支持部58には、貫通電極64が支持部58を貫通して設けられており、この貫通電極64及び導電性接着剤62を通じて、圧電振動子42の外部(後述する外部電極66)から、圧電振動片22に所定の電圧を印加することができる。
【0043】
パッケージ板52の下面、すなわち、パッケージ44の外側の面には、一対の外部電極66がパッケージ板52の長手方向に間隔をあけて設けられている。
図7に示すように、パッケージ板52には、パッケージ板52を厚み方向に貫通する貫通電極65が設けられ、貫通電極65と貫通電極64とが電極67により電気的に接続されている。すなわち、電極パッド60と外部電極66とが、貫通電極65、電極67及び貫通電極64を介して、電気的に接続されている。
【0044】
図4、
図5および
図7に示すように、閉塞板50は、導電性の材料によって平板状に形成された部材である。平面視において、閉塞板50の外側の形状は、シール枠56の外側よりも小さい形状である。閉塞板50がシール枠56に接合されることで、パッケージ本体48と閉塞板50の間が、圧電振動片22を収容する収容部46となる。
【0045】
パッケージ板52及びパッケージ枠54は、たとえば、上記したようにセラミックス製とされる。より具体的には、例えばアルミナ製のHTCC(High Temperature Co-Fired Ceramic)や、ガラスセラミック製のLTCC(Low Temperature Co-Fired Ceramic)等が挙げられる。
【0046】
また、シール枠56の材料としては、導電性を有する材料、例えばニッケル基合金等が挙げられる。より、具体的にはコバール、エリンバー、インバー、42-アロイ等から選択すれば良い。特に、シール枠56の材料としては、セラミック製とされているパッケージ板52パッケージ枠54に対して熱膨張係数が近いものを選択することが好ましい。例えば、パッケージ板52パッケージ枠54として、熱膨張係数6.8×10-6/℃のアルミナを用いる場合には、シール枠56としては、熱膨張係数5.2×10-6/℃のコバールや、熱膨張係数4.5~6.5×10-6/℃の42-アロイを用いることが好ましい。
【0047】
パッケージ本体48に対する閉塞板50の取付方法は、たとえば、銀ロウ等のロウ材や半田材等による焼付け、シーム溶接、レーザ溶接、超音波溶接等を挙げることができる。
【0048】
次に、圧電振動片22の製造方法について説明する。
【0049】
先ず、水晶のランバート原石をスライスして一定の厚みのウエハSを得る。このウエハSをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、この後、ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行なって、所定の厚み(たとえば80μm)ウエハSを準備する(
図8のステップS1)。
【0050】
次に、
図9(A)に示すように、ウエハSの両面にエッチング保護膜70と外形フォトレジスト膜73をそれぞれ成膜する(
図8に示すステップS2)。エッチング保護膜70は、例えばクロム(Cr)を数10nm成膜したエッチング保護膜71と、金(Au)を数10nm成膜したエッチング保護膜72とが、順次積層された積層膜である。
【0051】
このステップS2においては、先ず、ウエハSの両面に、順次、エッチング保護膜71とエッチング保護膜72とを、それぞれスパッタリング法や蒸着法などにより成膜する。
【0052】
次いで、エッチング保護膜70上に、スピンコート法などによりレジスト材料を塗布して、外形フォトレジスト膜73を形成する。
【0053】
なお、本実施形態で用いるレジスト材料としては、環化ゴム(例えば、環化イソプレン)を主体にしたゴム系ネガレジストを好適に用いることができる。ゴム系ネガレジストは、環化ゴムを有機溶剤に溶解し、さらにビスアジド感光剤を加えて、ろ過し、不純物を除去することで精製されたレジストである。
【0054】
次に、エッチング保護膜70及び外形フォトレジスト膜73が成膜されたウエハSの両面を、外形パターンが描画されたフォトマスクを用いて一括で露光し、現像する。これにより、
図9(B)に示すように、外形フォトレジスト膜73に外形パターン73Aを形成する(
図8のステップS3)。外形パターン73Aは、目的とする圧電振動片22の外形に沿った形状を有する。
【0055】
次に、外形パターン73Aが形成された外形フォトレジスト膜73をマスクとしてエッチング加工を行ない、マスクされていないエッチング保護膜70のエッチング保護膜72のみを選択的に除去する(
図8のステップS4)。
【0056】
次に、エッチング加工後に、外形パターン73Aが形成された外形フォトレジスト膜73を剥離する(
図8のステップS5)。これにより、エッチング保護膜72に外形パターン72A(
図9(C)参照)を形成する。
【0057】
エッチング加工には、エッチング保護膜70と外形フォトレジスト膜73が形成されたウエハSを薬液に浸漬して行うウエットエッチング方式を用いることができる。具体的には、例えば、金(Au)が成膜されたエッチング保護膜72は薬液としてヨウ素を用いてエッチングすることができる。
【0058】
次に、エッチング保護膜72をマスクとしてエッチング加工を行ない、マスクされていないエッチング保護膜70のエッチング保護膜71を選択的に除去する。これにより、
図9(C)に示すように、エッチング保護膜71に外形パターン71Aを形成する。なお、エッチング加工には、エッチング保護膜71が形成されたウエハSを薬液に浸漬して行うウエットエッチング方式を用いることができる。具体的には、例えば、クロム(Cr)が成膜されたエッチング保護膜71は薬液としてフェリシアン化カリウムを用いてエッチングすることができる。
【0059】
次に、
図9(D)に示すように、外形パターン70Aをマスクとしてエッチング加工を行ない、マスクされていないウエハSを選択的に除去する(
図8に示すステップS6、エッチング工程)。このエッチング加工は、外形パターン70Aが形成されたウエハSを薬液に浸漬して行うウエットエッチング方式を用いることができる。例えば、水晶からなるウエハは薬液としてフッ酸を用いてエッチングすることができる。この場合、エッチング時間は10時間程度とすることが可能である。
【0060】
次に、エッチング加工後に、外形パターン70Aが形成されたエッチング保護膜70を剥離する(
図8に示すステップS7、マスク除去工程)。これによって、
図9(E)に示すように、圧電振動片22が得られる。
【0061】
このようにして得られた圧電振動片22は、
図10に順に示す工程により、パッケージ44に取り付けられる。
【0062】
まず、
図10(A)に示すように、パッケージ枠54に設けられた支持部58の電極パッド60の上面に未硬化の導電性接着剤62を塗布する。本実施形態では、導電性及び熱硬化性を有する接着剤を用いている。
【0063】
次に、
図10(B)に示すように、圧電振動片22の支持腕部28の一部を支持部58における未硬化の導電性接着剤62に当接させる。
【0064】
次に、未硬化の導電性接着剤62を加熱して硬化させる。これにより、硬化した導電性接着剤62によって、圧電振動片22の支持腕部28がパッケージ44の支持部58に支持された状態で接着される。そして、圧電振動片22は、
図10(C)に示すように、パッケージ枠54の下面に対して平行な状態で支持されると共に、一対の支持腕部28が電極パッド60にそれぞれ導電性接着剤62を介して電気的に接続された状態で実装される。
【0065】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0066】
本実施形態では、外部電極66から、貫通電極64及び導電性接着剤62を通じて、圧電振動片22に所定の電圧を印加することで、圧電振動片22において、一対の振動腕部26が振動する。そして、この振動が電気信号に変換され、圧電振動子42の外部に取り出される。
【0067】
本実施形態では、一対の中間腕部32を有している。一対の中間腕部32のそれぞれは、一対の振動腕部26のそれぞれと、一対の支持腕部28のそれぞれとの間で、基部24から、第一の方向に延出されている。振動腕部26が振動すると、この振動の一部は、支持腕部28にも伝わろうとする。
【0068】
しかし、振動腕部26から基部24を経て支持腕部28に至る振動伝達経路の途中から、中間腕部32が延出されている。したがって、振動腕部26から支持腕部28に伝わろうとした振動の一部が、中間腕部32の振動として吸収される。
【0069】
ここで、
図11には、比較例の圧電振動片92が示されている。この圧電振動片92は、第一実施形態の圧電振動片22と比較して、中間腕部32を有さない構造である。比較例の圧電振動片92では、中間腕部32を有さないので、振動腕部26の振動が支持腕部28に伝わりやすい。
【0070】
比較例の圧電振動片92において、振動腕部26から支持腕部28への振動伝達を抑制するためには、たとえば、第一延出部30Aを細くしたり、基部24を厚くしたりすることも考えられる。しかし、第一延出部30Aを細くすると、耐久性が低下する。また、基部24を厚くすると、圧電振動片92の長手方向(矢印L1方向)での重心位置が基部24側に偏る。
【0071】
これに対し、本実施形態では、比較例の圧電振動片92のような中間腕部32がない構造と比較して、振動腕部26から支持腕部28に伝わる振動は小さくなる。このように、振動腕部26から支持腕部28への振動漏れを抑制することで、圧電振動片22及び圧電振動子42の振動特性が良好になる。
【0072】
しかも、本実施形態では、振動腕部26から支持腕部28への振動伝達を抑制するために、第一延出部30Aを細くしたり、基部24を厚くしたりする必要がない。第一延出部30Aを細くしないので、耐久性が低下しない。また、基部24を厚くしないので、圧電振動片92の重心位置が基部24側に偏ることもない。
【0073】
圧電振動子42としては、圧電振動片22の中間腕部32がパッケージ44に接触しない構造である。中間腕部32が振動しても、この振動がパッケージ44に伝わらないので、中間腕部32がパッケージ44に接触する構造の圧電振動子と比較して、本実施形態の圧電振動子42では振動特性が良好である。
【0074】
次に、第二~第五実施形態について説明する。第二~第五実施形態の圧電振動片において、第一実施形態の圧電振動片22と同様の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第二~第五実施形態において、圧電振動子の全体的な構造は第一実施形態の圧電振動子42と同様であるので、図示を省略する。
【0075】
図12に示す第二実施形態の圧電振動片222では、一対の中間腕部224が、基部24から第一の方向へ延出されているが、中間腕部224のそれぞれの延出先端224Tの位置は、振動腕部26の延出先端26Tの位置と同じである。
【0076】
図13に示す第三実施形態の圧電振動片232では、一対の中間腕部234が、基部24から第一の方向へ延出されているが、中間腕部234のそれぞれの延出先端234Tの位置は、支持腕部28の延出先端28Tよりも、基部24に近い位置である。
【0077】
図14に示す第四実施形態の圧電振動片242では、一対の中間腕部244として、基部24から第一の方向へ延出される中間腕部246と、この第一の方向の反対方向へ延出される中間腕部248とを有している。中間腕部246の延出先端246Tの位置は、
図14に示す例では、支持腕部28の延出先端28Tよりも、基部24に近い位置である。第一延出部30Aからの中間腕部248の延出長は、
図14に示す例では、中間腕部246における第一延出部30Aからの延出長と同程度である。
【0078】
図15に示す第五実施形態の圧電振動片252では、一対の中間腕部254が、第一の方向の反対方向へ延出されている。第一延出部30Aからの中間腕部254の延出長は、
図15に示す例では、第四実施形態の中間腕部246の延出長と同程度である。
【0079】
これら第二~第五実施形態のように、中間腕部の延出方向及び延出先端の位置は、特に限定されない。中間腕部の延出方向及び延出先端の位置を調整することで、圧電振動片の長手方向(矢印L方向)での重心位置を調整することができる。すなわち、圧電振動片として良好な振動特性が得られる重心位置となるように、中間腕部の延出方向及び延出先端の位置を調整すればよい。
【0080】
また、このように重心位置が調整された圧電振動片では、パッケージ44への収容時に圧電振動片の姿勢が安定する。たとえば、圧電振動片と、パッケージ44の底面44Bとを平行に維持して、圧電振動片をパッケージ44に収容し搭載できる。
【0081】
上記各実施形態の圧電振動片22、222、232、242、252は、各種の機器に搭載することが可能である。
【0082】
たとえば、
図16には、発振器100が示されている。この発振器100は、圧電振動子42を、集積回路101に電気的に接続された発振子として用いている。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子42が実装されている。これら電子部品102、集積回路101および圧電振動子42は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、同じく図示しない樹脂によりモールドされている。
【0083】
このように構成された発振器100において、圧電振動子42に電圧を印加すると、この圧電振動子42内の圧電振動片22が振動する。この振動は、圧電振動片22が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子42が発振子として機能する。
【0084】
また、集積回路101の構成を、たとえば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0085】
このような発振器100では、各実施形態のいずれかの圧電振動子を備えているので、振動特性が良好であり、信頼性に優れた発振器100とすることができる。
【0086】
次に、
図17には、電子機器の一例として、携帯情報機器110が示されている。この携帯情報機器110は、たとえば、携帯電話であり、所定の情報を表示する表示部(ディスプレイ)115を備えている。また、外部の基地局や通信親機と通信することが可能である。さらに、スピーカやマイクロフォンによって、使用者に対する音声の伝達や入力が可能である。
【0087】
携帯情報機器110は、圧電振動子42と、電力を供給するための電源部111と、を備えている。電源部111は、たとえば、リチウム二次電池を含む。電源部111には、機能部として、制御部112、計時部113、通信部114、表示部115、電圧検出部116が接続されている。
【0088】
制御部112は、携帯情報機器110における各種制御を行う。計時部113は、時刻等のカウントを行う。通信部114は、携帯情報機器110の外部との通信を行う。表示部115は、携帯情報機器110における各種情報を表示する。電圧検出部116は、携帯情報機器110におけるそれぞれの機能部の電圧を検出するそして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0089】
より具体的には、制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信および受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたRead Only Memory(ROM)と、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCentral Pricesing Unit(CPU)と、このCPUのワークエリアとして使用されるRandom Access Memory(RAM)等とを備えている。
【0090】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路およびインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子42とを備えている。圧電振動子42に電圧を印加すると圧電振動片22が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0091】
通信部114は、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123および呼制御メモリ部124を備えている。無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化および複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等を備えており、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0092】
着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。なお、呼制御メモリ部124には、通信の発着呼制御に係るプログラムが格納されている。また、電話番号入力部122は、たとえば、0から9の番号キーおよびその他のキーを備えており、使用者は、これらキー等を押下することにより、通話先の電話番号等を入力できる。
【0093】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、たとえば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119および着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0094】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしてもよい。なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0095】
携帯情報機器110は、第一~第五実施形態のいずれかの圧電振動子を備えているので、この圧電振動子の優れた振動特性により、信頼性に優れた携帯情報機器110とすることができる。
【0096】
次に、
図18には、電波時計130が示されている。電波時計130は、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子42を備えている。そして、時計情報を含む標準の電波を受信して、時刻を自動修正して表示する機能を備えている。
【0097】
電波時計130は、フィルタ部131、アンテナ132、アンプ133、検波整流回路134、波形整形回路135、CPU136、Real Time Clock(RCT)137、水晶振動子部138、139を備えている。
【0098】
アンテナ132は、標準電波、たとえば日本国内であれば40kHz若しくは60kHzの長波の電波を受信する。受信された標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子42を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。電波時計130に用いる圧電振動子42は40kHz若しくは60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0099】
濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、当該時点での年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
【0100】
電波時計130においても、第一~第五実施形態のいずれかの圧電振動子を備えているので、この圧電振動子の優れた振動特性により、信頼性に優れた電波時計130とすることができる。
【符号の説明】
【0101】
22 圧電振動片
24 基部
26 振動腕部
26T 振動腕部の延出先端
28 支持腕部
28T 支持腕部の延出先端
32 中間腕部
32T 中間腕部の延出先端
42 圧電振動子
44 パッケージ
44B 底面
46 収容部
48 パッケージ本体
62 導電性接着剤
100 発振器
110 携帯情報機器(電子機器の一例)
113 計時部
130 電波時計
131 フィルタ部
222 圧電振動片
224 中間腕部
224T 中間腕部の延出先端
232 圧電振動片
234 中間腕部
234T 中間腕部の延出先端
242 圧電振動片
244 中間腕部
246 中間腕部
246T 中間腕部の延出先端
248 中間腕部
252 圧電振動片
254 中間腕部