(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】キャップ付き容器及びキャップ付き容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/00 20060101AFI20220405BHJP
B65D 41/28 20060101ALI20220405BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B65D1/00 110
B65D41/28
B65D1/02 210
(21)【出願番号】P 2016249581
(22)【出願日】2016-12-22
【審査請求日】2019-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】517169285
【氏名又は名称】プレミアムウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100188156
【氏名又は名称】望月 義時
(72)【発明者】
【氏名】中沢 毅
(72)【発明者】
【氏名】権正 岳洋
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-503760(JP,A)
【文献】特開2002-347731(JP,A)
【文献】特表2001-503356(JP,A)
【文献】特開平06-144453(JP,A)
【文献】特開2015-131666(JP,A)
【文献】米国特許第04397397(US,A)
【文献】特表2016-501787(JP,A)
【文献】特開2014-069828(JP,A)
【文献】特表2006-521091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00
B65D 41/28
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱膨張率の材料により形成されたキャップと、
前記第1熱膨張率よりも小さな第2熱膨張率の材料により形成され、前記キャップが打栓されることによって密封される口部を有する容器本体と、
を有し、
前記口部は、
前記キャップに形成されている外筒の内周面と接する凸部を有する外周面と、
前記キャップに形成されている内筒の外周面と接し、かつ、先端に面取り部を有する内周面と、
を有し、
前記内筒の外周面は、前記キャップが前記口部に装着された状態において、前記口部の前記内周面における前記面取り部の下端を起点とする円筒状の領域で前記口部の内周面に接触する接触面を有し、
前記キャップは、前記接触面の上端から前記外筒の内周面の上端にかけて設けられた曲線状に傾斜した曲面であって、前記接触面の上端を起点として前記外筒に近づくほど下方に向かい前記口部から離れる向きに向かって窪んだ凹状の前記曲面を有し、
前記キャップが前記口部に装着された状態において前記曲面が前記口部の外周面の上端に接することを特徴とするキャップ付き容器。
【請求項2】
前記面取り部は、前記内周面と所定の角度で傾斜して、前記口部の上面と前記内周面とを接続する傾斜面を有することを特徴とする、
請求項1に記載のキャップ付き容器。
【請求項3】
前記面取り部は、前記口部の上面と直交する縦面と、前記縦面の下端と前記内周面とを接続する傾斜面とを有することを特徴とする、
請求項1に記載のキャップ付き容器。
【請求項4】
前記面取り部は、湾曲面を有することを特徴とする、
請求項1に記載のキャップ付き容器。
【請求項5】
前記第1熱膨張率の材料は、ポリエチレンであり、前記第2熱膨張率の材料は、ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載のキャップ付き容器。
【請求項6】
第1熱膨張率の材料により形成されたキャップを準備する工程と、
前記第1熱膨張率よりも小さな第2熱膨張率の材料により形成され、前記キャップに形成されている外筒の内周面と接する凸部を有する外周面と、前記キャップに形成されている内筒の外周面と接し、かつ、先端に面取り部を有する内周面と、を有する口部を備えるプリフォームを製造する工程と、
前記プリフォームをブロー成形することにより容器本体を形成する工程と、
前記容器本体に液体を注入する工程と、
前記液体を注入した後に、前記容器本体に前記キャップを打栓する工程と、
を有し、
前記内筒の外周面は、前記キャップが前記口部に装着された状態において、前記口部の前記内周面における前記面取り部の下端を起点とする円筒状の領域で前記口部の内周面に接触する接触面を有し、
前記キャップは、前記接触面の上端から前記外筒の内周面の上端にかけて設けられた曲線状に傾斜した曲面であって、前記接触面の上端を起点として前記外筒に近づくほど下方に向かい前記口部から離れる向きに向かって窪んだ凹状の前記曲面を有し、
前記キャップが前記口部に装着された状態において前記曲面が前記口部の外周面の上端に接することを特徴とするキャップ付き容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容するためのキャップ付き容器、及びキャップ付き容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャップ付き容器が用いられている。特許文献1には、キャップを打栓により装着してなる容器が開示されている。特許文献1では、キャップに形成されているインナーリング部の外側面は、口部の内側面と接触している構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、従来のキャップ付き容器のキャップと口部の形状が温度によって変化する状態を示す図である。
図7(a)は、口部92にキャップ8が打栓されている状態を示す図である。キャップ8と容器の口部92の材質が異なる場合、キャップ8と容器の口部92の熱膨張率が異なる。熱膨張率は、温度が上昇する際における体積が膨張する程度を示す。キャップ8の熱膨張率が容器の口部92の熱膨張率よりも大きい場合、
図7(b)に示されるように、キャップ8が口部92に装着された状態でキャップ付き容器の温度が上昇すると、容器の口部92がキャップ8の熱膨張によって押圧されて押し広げられる。
【0005】
その後、キャップ付き容器の温度が低下して常温になると、
図7(c)に示されるように、キャップ8及び口部92は収縮して、
図7(a)に示される元の形状に戻ろうとする。しかし、容器の口部92は、元の口部92の形状には戻らずに、元の口部92の形状よりも大きな内径を有する形状となってしまうことが生じる。一方、キャップ8は、口部92よりも収縮率が大きく、温度が上昇する前の初期状態よりも小さくなってしまうことが生じる。この結果、キャップ8の内筒82の外周面821と容器の口部92の内周面923との間に微小な隙間が生じてしまい、容器の内部に封入されている液体が漏れてしまう場合があるという問題が生じていた。
【0006】
例えば、夏季に車内に長時間保管されたり、高温状態のトラックで家庭や事務所に搬送されたりしたPETボトル等の容器が涼しい場所に持ち込まれて温度が低下すると、液体が漏れてしまう。容器のサイズが大きくなればなるほど、大きな容量の液体が口部に与える圧力も大きくなり、液体漏れが生じやすくなる。現在、350ミリリットルから2リットルのPETボトルが普及し、中には18リットルに及ぶ大型PETボトルも急速に事務所向け、家庭向けに普及している。容器の大型化が進む中、上記の問題への対策の重要性が増している。
【0007】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、封入されている液体の漏れが発生しづらい口部を有する容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様においては、第1熱膨張率の材料により形成されたキャップと、前記第1熱膨張率よりも小さな第2熱膨張率の材料により形成され、前記キャップが打栓されることによって密封される口部を有する容器本体と、を有し、前記口部は、前記キャップに形成されている外筒の内周面と接する凸部を有する外周面と、前記キャップに形成されている内筒の外周面と接し、かつ、先端に面取り部を有する内周面と、を有することを特徴とするキャップ付き容器を提供する。
【0009】
また、前記面取り部は、前記内周面と所定の角度で傾斜して、前記口部の上面と前記内周面とを接続する傾斜面を有していてもよい。また、前記面取り部は、前記口部の上面と直交する縦面と、前記縦面の下端と前記内周面とを接続する傾斜面とを有していてもよい。また、前記面取り部は、湾曲面を有していてもよい。また、前記第1熱膨張率の材料は、ポリエチレンであり、前記第2熱膨張率の材料は、ポリエチレンテレフタレートであってもよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、第1熱膨張率の材料により形成されたキャップを準備する工程と、前記第1熱膨張率よりも小さな第2熱膨張率の材料により形成され、前記キャップに形成されている外筒の内周面と接する凸部を有する外周面と、前記キャップに形成されている内筒の外周面と接し、かつ、先端に面取り部を有する内周面と、を有する口部を備えるプリフォームを製造する工程と、前記プリフォームをブロー成形することにより容器本体を形成する工程と、前記容器本体に液体を注入する工程と、前記液体を注入した後に、前記容器本体に前記キャップを打栓する工程と、を有することを特徴とするキャップ付き容器の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容器の口部において、封入されている液体の漏れを発生しづらくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係るキャップ付き容器の構成を示す。
【
図2】第1の実施形態に係るキャップ付き容器の口部からキャップを取外した状態におけるキャップ及び口部の構成を示す。
【
図3】第1の実施形態に係るキャップ付き容器の口部にキャップを装着した状態におけるキャップ及び口部の構成を示す。
【
図4】第1の実施形態に係るキャップ付き容器のキャップ及び口部の形状が温度によって変化する状態を示す。
【
図5】第2の実施形態に係るキャップ付き容器の面取り部の構成を示す。
【
図6】第3の実施形態に係るキャップ付き容器の面取り部の構成を示す。
【
図7】従来のキャップ付き容器のキャップと口部の形状が温度によって変化する状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るキャップ付き容器Sの構成を示す図である。
図2は、第1の実施形態に係るキャップ付き容器Sの口部22からキャップ1を取外した状態におけるキャップ1及び口部22の構成を示す図である。
キャップ付き容器Sは、キャップ1と容器2とを有する。キャップ1は、打栓式のキャップである。キャップ1は、第1熱膨張率の材料により形成されている。キャップ1の材料は、例えばポリエチレンである。キャップ1の材料は、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。キャップ1は、外筒11、内筒12、及び上面部13を有する。
【0014】
外筒11は、キャップ1の外周面を形成する部分である。外筒11は、円環状である。外筒11は、内周面111と凸部112とを有する。内周面111は、外筒11の内側の面である。凸部112は、外筒11の内周面111に形成されている突起部である。凸部112は、例えば丸みを帯びた凸形状である。
【0015】
内筒12は、外筒11の内側に形成されている円環状の部分である。内筒12は、外周面121を有する。外周面121は、内筒12の外側の面である。外周面121は、接触面1211と傾斜面1212とを有する。接触面1211は、口部22の内周面223と接触する面である。接触面1211は、外筒11の内周面111と平行である。
【0016】
上面部13は、外筒11及び内筒12の上端に、外筒11及び内筒12と直交して設けられている。上面部13は、円板形状を有する。傾斜面1212は、接触面1211の下端から接触面1211と所定の角度で傾斜して下向きに延伸している面である。
【0017】
容器2は、容器本体21と口部22とを有する。容器2は、第1熱膨張率よりも小さな第2熱膨張率の材料により形成されている。容器2の材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレートである。容器2は、例えばプリフォームを金型に収容した状態でブロー成形することにより製造される。容器本体21は、液体が封入される空間を有する部分である。容器本体21は、例えば、直方体形状または円筒形状である。
【0018】
口部22は、キャップ1が取り付けられる部分である。口部22は、キャップ1が打栓されることによって密封される。口部22は、円環状であり、例えば、容器本体21の上部に形成されている。
【0019】
口部22は、外周面221、凸部222、内周面223、上面224、及び面取り部225を有する。外周面221は、口部22の外側の面である。凸部222は、口部22の外周面221に設けられている突起部であり、例えば、丸みを帯びた凸形状をしている。内周面223は、口部22の内側の面であり、キャップ1の内筒12の外周面121と接する。上面224は、口部22の上端の面であり、外周面221及び内周面223と直交する。
図2(a)に示すようにキャップ1を口部22から取り外した状態では、内筒12の接触面1211の外径R1は、口部22の内径R2よりも大きい。
【0020】
面取り部225は、口部22の内周面223の先端に形成されている凹部である。面取り部225は、傾斜面226を有する。傾斜面226は、内周面223と所定の角度で傾斜して、口部22の上面224と内周面223とを接続する面である。
図2(b)に例示するように、傾斜面226は、上面224における、口部22の内周面223から0.35mmの位置を起点として、内周面223における上面224から1.0mmの位置を終点とする面である。
【0021】
図3は、キャップ1が口部22に装着されている状態を示す図である。
キャップ1は、口部22に打栓されることによって、容器2の上方から押し込まれることにより、口部22に装着されている。キャップ1が口部22に装着された状態では、内筒12は、内筒12の接触面1211の外径が、口部22の内径と同じ大きさになるように口部22によって内側に押圧された状態となっている。
【0022】
凸部222は、外筒11の内周面111と接している。また、キャップ1の外筒11の凸部112が、口部22の外周面221の凸部222の下方に位置していることで、キャップ1は、口部22から上方に抜けない。このようにして、外周面121の接触面1211が口部22の内周面223と接触しているので、容器2内の液体は外部に漏れない。
【0023】
図4は、第1の実施形態に係るキャップ1と口部22の形状が温度によって変化する様子を示す図である。
図4(a)は、キャップ付き容器Sの周囲が常温の状態における口部22にキャップ1が装着されている状態を示す図である。
図4(b)は、キャップ付き容器Sの周囲の温度を上昇させたときの、キャップ1と口部22の状態を示す図である。
図4(c)は、キャップ付き容器Sの周囲の温度を上昇させた後に温度を常温に戻したときの、キャップ1と口部22の状態を示す図である。
【0024】
図4(a)では、外周面121の接触面1211が口部22の内周面223に接触している。温度が上昇すると、
図4(b)に示されるように、キャップ1と口部22は、膨張する。この際に、キャップ1の熱膨張率が口部22の熱膨張率よりも大きいと、口部22は、キャップ1の膨張によって外側に押圧される。しかし、口部22が面取り部225を有するので、キャップ1が膨張する際に、内筒12が口部22を押し広げる量(
図4(b)におけるL1)が、口部22が面取り部225を有しない場合における内筒12が口部22を押し広げる量(
図7(b)におけるL2)と比べて、小さい。
【0025】
この結果、その後、キャップ付き容器Sの周囲が常温に戻ると、
図4(c)に示されるように、キャップ1と口部22は、収縮して
図4(a)で示される元の形状と同じ形状に戻るので、内筒12の接触面1211と口部22の内周面223との間に隙間は生じない。したがって、
図7に示した従来のキャップ付き容器と異なり、キャップ付き容器Sの内部の液体は漏れにくい。
【0026】
[キャップ付き容器2の製造方法]
続いて、キャップ付き容器2の製造方法について説明する。まず、第1熱膨張率の材料により形成されたキャップ1を準備する工程を実行する。キャップ1を射出成形してもよく、キャップ1を外部から調達してもよい。
【0027】
続いて、プリフォームを製造する工程を実行する。この工程においては、第1熱膨張率よりも小さな第2熱膨張率の材料により形成され、口部22を備えるプリフォームを製造する。具体的には、プリフォームの金型に、加熱・溶融させた樹脂を充填した後に冷却することにより、プリフォームを成形する。
【0028】
続いて、加熱したプリフォームを金型に挿入した後に、棒状の部材でプリフォームを長手方向に引き伸ばしながら空気を吹き込むブロー成形を実行することにより、容器本体を形成する。その後、容器本体に液体を注入し、液体を注入した後に、容器本体に前記キャップを打栓する。以上の工程により、液体が入った状態のキャップ付き容器2を製造することができる。
【0029】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係るキャップ付き容器Sの面取り部225aを示す図である。
第2の実施形態に係るキャップ付き容器Sは、第1の実施形態に係るキャップ付き容器Sと比べて、面取り部225aの形状が面取り部225の形状と異なる。面取り部225aは、縦面227aと傾斜面228aとを有する。縦面227aは、口部22の上面224と直交する面であり、例えば0.35mmの長さである。傾斜面228aは、縦面227aの下端と内周面223とを接続する面であり、縦面227aにおける上面224と反対側を起点として、内周面223における上面224から1.0mmの位置を終点とする面である。
【0030】
<第3の実施形態>
図6は、第3の実施形態に係るキャップ付き容器Sの面取り部225bを示す図である。
第3の実施形態に係るキャップ付き容器Sは、第1の実施形態に係るキャップ付き容器Sと比べて、面取り部225bの形状が面取り部225と異なる。面取り部225bは、湾曲面229bを有する。面取り部225は、例えば、
図6(b)に示すように、平面状の縦面と湾曲面229bとを有してもよい。
【0031】
(実験1)
従来の容器、第1の実施形態の容器S、第2の実施形態の容器S及び第3の実施形態の容器Sを用いて、水漏れの有無を確認する実験を行った。
【0032】
[使用した容器の仕様]
・キャップインナーリング(内筒12)の外径R1:48.5mm
・口部2の内径R2:47.6mm
・キャップインナーリングの形成材料:低密度ポリエチレン
・口部2の形成材料:ポリエチレンテレフタレート(PET)
【0033】
[実験方法]
キャップをした状態の10本のプリフォームを60℃の恒温槽に収容し、プリフォームの温度が安定するまで保管した。その後、キャップをしたプリフォームを恒温槽から取り出して外気に晒し、プリフォームの温度が25℃になるまで待機した。プリフォームの温度が25℃になった後に、プリフォームをブロー成形して容器を製造した。製造した容器に水を入れてキャップをした状態で横に倒して、水漏れが発生するか否かの確認を行った。
【0034】
[実験結果]
【表1】
表1に示すように、従来品では10本中4本において水漏れが発生したが、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態のいずれのプリフォームにおいても、水漏れが発生しなかった。このことから、本発明による効果を確認することができた。
【0035】
(実験2)
実験例1と同じ容器を用いて、変形率を測定した。
[実験方法]
キャップをした状態のプリフォームを50℃の恒温槽に保管し、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後のそれぞれのタイミングで恒温槽からプリフォームを取り出して、常温になるまで待機した。プリフォームが常温になった時点で、プリフォームからキャップを取り外して、キャップインナーリングの外径外径R1、及びプリフォームの口部の内径R2を測定した。測定結果に基づいて、キャップの中心位置からキャップインナーリング外壁までの距離の変化率、及びプリフォームの口部の中心位置からプリフォーム内壁までの距離の変化率を算出した。
【0036】
以下の実験結果においては、キャップの中心位置からキャップインナーリング外壁までの距離の変化率(収縮率)を「キャップ変形率」と称し、プリフォームの口部の中心位置からプリフォーム内壁までの距離の変化率(膨張率)を「プリフォーム変形率」と称する。
【0037】
[実験結果]
以下の表2から表4に実験結果を示す。表2は、従来の容器を用いた場合の変形率を示す。表3は、第1の実施形態の容器の変形率を示す。表4は、第2の実施形態の容器の変形率を示す。表5は、第3の実施形態の容器の変形率を示す。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0038】
[考察]
表2と表3,4,5とを比較すると、キャップ変形率には有意差がないが、プリフォーム変形率には有意差があり、本発明の実施形態に係る容器におけるプリフォーム変形率が、従来の容器のプリフォーム容器のプリフォーム変形率よりも小さいことが確認できた。第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態の間では、大きな差異は見られないが、第2の実施形態に係る容器Sのように、面取部が縦面と傾斜面とを有する形状である場合のプリフォーム変形率が最も小さい傾向があることが確認できた。
【0039】
(実験3)
プリフォームの運搬時に生じる傷による水漏れの発生の有無を確認する実験を行った。
(実験3-1)
1つのダンボールに、ブロー成形前の20本のプリフォームを入れた状態で120回上下に動かして、プリフォーム同士で衝突させた。その後、プリフォームをブロー成形して製造した容器に水を入れてキャップをした後に容器を横倒しにして、水漏れの有無を確認した。その結果、従来のプリフォームを成形した容器では20本中2本において水漏れが発生した。これに対して、第1の実施形態の面取部を設けたプリフォームを成形した容器では1本も水漏れが発生しなかった。
(実験3-2)
1つのダンボールに、ブロー成形前の従来のプリフォームを6本、第1の実施形態の面取部を設けたプリフォームを4本入れた状態で、ランダムな方向に10分間振動を加えてプリフォーム同士を衝突させた。その後、プリフォームをブロー成形して製造した容器に水を入れてキャップをした後に容器を横倒しにして、水漏れの有無を確認した。その結果、従来のプリフォームを成形した容器では6本中2本において水漏れが発生した。これに対して、第1の実施形態の面取部を設けたプリフォームを成形した容器では1本も水漏れが発生しなかった。
[考察]
従来のプリフォーム同士が衝突した場合、他のプリフォームの口部のエッジにより傷が生じてしまうために、水漏れが発生しやすいと考えられる。プリフォームに面取部を設けることにより、プリフォーム同士が衝突した時に傷がつきにくく、水漏れの発生を防ぐことができたと考えられる。
【0040】
(実験4)
プリフォームの口部の内周面に面取部を形成したことによる打栓強度の変化を確認する実験を行った。キャップをプリフォームの口部に載置した状態で、30mm/分の速度でキャップに荷重を加えて、プロフォームの口部にキャップが挿入される際に必要な荷重のピーク値(単位:N)を測定した。
【0041】
【0042】
表6から明らかなように、プリフォームの口部の内周面に面取部を形成したことにより、キャップがプリフォームに入りやすくなり、打栓強度が小さくなる。その結果、容器の製造効率が向上するという効果も生じることが確認できた。
【0043】
[本実施形態に係るキャップ付き容器Sによる効果]
本実施形態に係るキャップ付き容器Sは、第1熱膨張率の材料により形成されたキャップ1と、第1熱膨張率よりも小さな第2熱膨張率の材料により形成され、キャップ1が打栓されることによって密封される口部22とを有する。そして、口部22は、キャップ1に形成されている外筒11の内周面111と接する凸部222を有する外周面と、キャップ1に形成されている内筒12の外周面121と接し、かつ、先端に面取り部225を有する内周面223と、を有する。
【0044】
このように、本実施形態に係るキャップ付き容器Sは、口部22が先端に面取り部225を有するので、キャップ1の熱膨張によって外側に押し広げられた容器2の口部22とキャップ1との間に隙間が生じない。この結果、本実施形態に係るキャップ付き容器Sは、キャップ1と口部22との隙間から、キャップ付き容器S内の液体が漏れないようにすることができる。
【0045】
また、容器2の口部22の内周面223に傾斜面226を形成したことにより、容器2を製造する間に容器2の口部22の内周面223が他の容器2に衝突する際に、他の容器2に損傷を加えにくくなる。その結果、製造中に容器2に生じた傷によって液漏れが生じにくくなるという効果も生じる。このような効果があることから、容器2を搬送する際に、容器2の衝突を防ぐ措置を簡易にすることができるので、搬送コストを削減することも可能になる。
【0046】
さらに、容器2の口部22の内周面223に傾斜面226を形成したことにより、キャップ8が容器2の口部22に入りやすくなり、キャップ8を口部22に打栓する際に必要な強度が小さくなる。その結果、容器Sの製造効率が向上するという効果も生じる。
【0047】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0048】
S・・・キャップ付き容器
1・・・キャップ
11・・・外筒
111・・・内周面
112・・・凸部
12・・・内筒
121・・・外周面
1211・・・接触面
1212・・・傾斜面
13・・・上面部
2・・・容器
21・・・容器本体
22・・・口部
221・・・外周面
222・・・凸部
223・・・内周面
224・・・上面
225、225a、225b・・・面取り部
226・・・傾斜面
227a・・・縦面
228a・・・傾斜面
229b・・・湾曲面
8・・・キャップ
81・・・外筒
811・・・内周面
82・・・内筒
821・・・外周面
92・・・口部
921・・・外周面
923・・・内周面