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  • 特許-エアフィルタ 図1
  • 特許-エアフィルタ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】エアフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/52 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
B01D46/52 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017068436
(22)【出願日】2017-03-30
(65)【公開番号】P2018167222
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】茅嶋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】関 和也
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-052386(JP,A)
【文献】国際公開第2013/122144(WO,A1)
【文献】特開2002-095923(JP,A)
【文献】特開2014-226570(JP,A)
【文献】特開2016-023211(JP,A)
【文献】特開2015-194203(JP,A)
【文献】接着剤-はく離接着強さ試験方法-第1部:90度はく離,JIS K6854-1:1999,1990年
【文献】山崎美稀ほか,樹脂と金属の界面における接着強度評価,表面技術,Vol.63, No.12,2012年,p.31-37
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中の微粒子を捕集する濾材と、
前記濾材を取り囲む枠体と、
前記枠体と対向する前記濾材の端部に設けられ、前記濾材と前記枠体との間の気体の通過を防止するシール層と、
前記シール層と前記枠体との間に配置され、前記シール層及び前記枠体のそれぞれと接着された介在層と、を備え、
前記介在層は、前記濾材と対向する前記枠体の壁面に塗布されたウレタン系樹脂を主成分として含む塗料からなる塗布膜であり、
前記介在層と前記枠体との間で剥離が生じるよう、前記介在層の前記枠体に対する接着強さは、前記介在層の前記シール層に対する接着強さより小さ、ことを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
前記枠体は、少なくとも前記介在層と接着される壁面が、アルミニウム、ステンレス、又は亜鉛を含む金属材料からなる、請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記介在層と接着される前記枠体の壁面の算術平均粗さRaは0~0.3μmである、請求項1又は2に記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記シール層は、ウレタン系樹脂を主成分として含む接着剤からなる、請求項1から3のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体中の微粒子を捕集する濾材を備えるエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル、工場等の建物には、気体中に浮遊する塵埃を除去し、清浄化した空気を生成するために、エアフィルタが設置されている場合がある。エアフィルタは、一般に、気体中の微粒子を捕集する濾材と、濾材を取り囲む枠体と、を備えている。この種のエアフィルタでは、通常、濾材はシール剤を介して枠体に接着され、空気が濾材を通過せずに下流側に漏れることが防止されている。
【0003】
従来より、廃棄物の減量化等の観点から、使用済みのエアフィルタは、濾材と枠体とに分別され、回収される場合がある。しかし、上述のエアフィルタでは、濾材はシール剤を介して枠体に固着しているため、濾材を枠体から分離しようとした場合に、濾材の一部が枠体に残ってしまう場合がある。この場合、枠体を再利用するために、枠体に残った濾材を除去する作業が必要になる。従来より、エアフィルタを容易に解体し、分別することが可能なエアフィルタが知られている。
特許文献1のエアフィルタは、空気中の微粒子を捕集するフィルタ濾材とこれを取り囲む外枠材との間に中間材が介在し、前記中間材とフィルタ濾材とは接着剤により固定され、外枠材に対して中間材は粘着性と共に解体時の離型性を併有するようにしたエアフィルタである。特許文献1のエアフィルタによれば、中間材が外枠材に対して粘着性と共に外枠材に対する解体時の離型性も併有しているので、従来よりも容易に解体・分別することが可能、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-172306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のエアフィルタでは、中間材が貼り付けられる外枠材の部分の大きさや形状に合わせて、シート状の原料部材から中間材を切り出す作業が必要である。また、中間材として用いられる原料部材は粘着性を有している。このため、外枠材に貼り付けるときに、原料部材の一部同士が張り付いてしわが生じたり、中間材と外枠材との間に隙間ができたりしないよう外枠材に対して慎重に貼り付ける必要があり、手間のかかる作業を要する。
また、特許文献1のエアフィルタは、一例によれば、中間材の一部をなす感温性粘着剤が外枠材から剥がれるように、解体時に枠体を加熱する必要がある。また、別の一例によれば、中間材の一部をなす粘着シートが、解体後も外枠材に残るため、外枠材を再利用するためには、外枠材から粘着シートを除去する作業が必要になる。
【0006】
本発明は、解体が容易で、構成部材の再利用がしやすいエアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、エアフィルタであり、
気体中の微粒子を捕集する濾材と、
前記濾材を取り囲む枠体と、
前記枠体と対向する前記濾材の端部に設けられ、前記濾材と前記枠体との間の気体の通過を防止するシール層と、
前記シール層と前記枠体との間に配置され、前記シール層及び前記枠体のそれぞれと接着された介在層と、を備え、
前記介在層は、前記濾材と対向する前記枠体の壁面に塗布されたウレタン系樹脂を主成分として含む塗料からなる塗布膜であり、
前記介在層と前記枠体との間で剥離が生じるよう、前記介在層の前記枠体に対する接着強さは、前記介在層の前記シール層に対する接着強さより小さ、ことを特徴とする。
【0009】
前記枠体は、少なくとも前記介在層と接着される壁面が、アルミニウム、ステンレス、又は亜鉛を含む金属材料からなることが好ましい。
【0010】
前記介在層と接着される前記枠体の壁面の算術平均粗さRaは0~0.3μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエアフィルタによれば、解体が容易で、枠体の再利用がしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態のエアフィルタを示す外観斜視図である。
図2】エアフィルタの組み立て方を説明する図である。
図3図1のエアフィルタの濾材と枠体との間の層構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態のエアフィルタについて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態のエアフィルタ1を示す外観斜視図である。
エアフィルタ1は、濾材2と、枠体4と、シール層6と、介在層8と、を備えている。
【0016】
濾材2は、気体中の微粒子を捕集する部材である。
濾材2は、例えば、ガラス繊維、有機繊維、あるいはこれらの混合繊維からなる繊維体であり、例えば、不織布、ペーパ、マット、あるいはフェルトの形態を有している。有機繊維の材質としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。濾材2の具体例としては、ガラス繊維からなるガラス不織布、有機繊維からなる、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布等が挙げられる。濾材2は、種類の異なる不織布等を重ね合わせたものであってもよい。
図1に示す例において、濾材2は、プリーツ加工され、山折りと谷折りが交互に繰り返されたジグザグ形状を有している。濾材2のプリーツは、気流方向Xと直交する方向に並ぶよう配置されている。気流方向Xは、気体がエアフィルタ1を通過する方向である。
【0017】
図1に示す例のエアフィルタ1は、複数のセパレータ3を備えたセパレータ型のエアフィルタである。セパレータ3は、濾材2の山折り、谷折りされた部分の内側のスペースに挿入され、濾材2のプリーツ同士の間隔を保持する機能を有する。セパレータ3は、アルミニウム、ステンレス等の金属、ポリプロピレン、あるいは紙を材質とする薄板状の部材を、プリーツの折り目が延びる方向に沿って波形状をなすようコルゲート加工されてなる。
濾材2のプリーツ間隔を保持する手段は、セパレータ3に制限されず、プリーツの折り目と直交して延びるよう濾材2に設けられたスペーサ、あるいは、エンボス加工により濾材2に設けられた突起であってもよい。スペーサは、例えばホットメルト接着剤を濾材2に線状に塗布してなる。突起は、濾材2のジグザグ形状をなす複数の傾斜面に、隣り合う2つの傾斜面を向かい合わせたときに互いに当接してプリーツ間隔を保持するように設けられる。
【0018】
枠体4は、濾材2を取り囲む部材である。枠体4は、図1に示す例において、矩形状の外形形状を有しており、天井部41、底部43、左右両側の側部45、47を有している。天井部41及び底部43は、その長手方向の両端部において、側部45、47と対向している。このうち、天井部41及び底部43に、介在層8が接着される。天井部41、底部43の濾材2と向かい合う壁面の形状は、平面状であってもよく、凹凸を有する形状であってもよい。凹凸を有する形状として、例えば、エアフィルタ1の組立時に、図2に示すように、粘度の低いシール剤6aを溜める空間を形成する壁部43a(底部43の壁部43aのみ図示)を有する形状が挙げられる。図2は、後で参照する、エアフィルタ1の組み立て方を説明する図である。壁部43aは、濾材2の側を向く天井部41及び底部43の表面の縁から鉛直方向に延びるよう突出し、上記空間を囲むよう形成されている。
【0019】
枠体4は、例えば、複数の板材を組み合わせて作製される。枠体4の材質は、アルミニウム、アルミニウム合金、あるいはステンレスであることが好ましい。ステンレスは、亜鉛又はアルミニウムでめっきされたものであってもよい。枠体4は、少なくとも介在層8と接着される壁面が、アルミニウム、ステンレス、又は亜鉛を含む金属材料からなることが好ましい。これにより、後述する、介在層8の枠体4に対する接着強さを小さくする効果が向上する。金属材料は、アルマイト処理、クロメート処理等されてなる皮膜を含むものであってもよい。一実施形態によれば、枠体4の材質は、金属以外に、PET、PVC、ABS、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフタルアミド等の樹脂であってもよい。
【0020】
シール層6は、枠体4の天井部41及び底部43と対向する濾材2の端部(上端部、下端部)に設けられ、濾材2と枠体4との間の気体の通過を防止する機能を有する。シール層6は、液状又はペースト状のシール剤を、濾材2に付着させ、乾燥、固化させることで形成される。シール層6は、ウレタン系樹脂を主成分として含む接着剤からなることが好ましい。このような材質のシール層6を用いることにより、後述する、介在層8のシール層6に対する接着強さを大きくする効果が向上する。
【0021】
介在層8は、図3に示されるように、シール層6と枠体4との間に配置され、シール層6及び枠体4のそれぞれと接着された層である。図3に、エアフィルタ1の濾材2と枠体4との間の層構成を模式的に示す。具体的に、介在層8は、濾材2と対向する枠体4の天井部41、底部43の壁面4aに塗布された塗布膜である。介在層8が塗布膜であることにより、シート状の原料部材から切り出して作製する場合と比べ、介在層8を容易に作製することができる。シート状の原料部材から切り出す場合は、介在層が接着される枠体の部分の大きさや形状に合わせて切り出す必要がある。また、原料部材が粘着性を有していることによって、枠体に貼り付ける際に、切り出した原料部材の一部同士が張り付いてしわが生じたり、切り出した原料部材と枠体との間に隙間が生じたりしないよう枠体に対して慎重に貼り付ける必要があり、手間のかかる作業を要する。原料部材にしわが生じたり上記隙間ができたりすると、枠体に貼り付けた原料部材の上に、シール剤を流し込んだときに、シール剤が、枠体に直接接着されやすくなる。このため、エアフィルタ1の解体時に、濾材を枠体から剥がそうとしたときに、濾材の一部が枠体に張り付いて残りやすい。本実施形態では、介在層8は、塗布膜であるため、枠体4の壁面4aに簡単に設けることができ、また、介在層8と枠体4の間に隙間が生じないため、シール剤が枠体4と直接接することを防ぐことができる。塗布の方法は、特に制限されず、例えば、刷毛、スプレー等を用いて塗布することができる。
【0022】
介在層8の枠体4に対する接着強さは、介在層8のシール層6に対する接着強さより小さい。これにより、エアフィルタ1の解体時に、濾材2を枠体4から剥がそうとする力が加わったときに、介在層8と枠体4との間で剥離しやすく、シール層6及び濾材2が枠体4に残ることを抑えることができる。したがって、本実施形態のエアフィルタ1によれば、枠体4及びシール層6と、濾材2とを分別し、枠体4を再利用することが容易である。
【0023】
介在層8の枠体4に対する接着強さは50~100kPaであることが好ましい。本明細書において、接着強さとは、JIS K6854-1:1999に規定される90度はく離試験によって測定された接着強さをいう。接着強さが100kPa以下であることで、エアフィルタ1の解体時に、介在層8と枠体4との間で剥離させやすい。一方、接着強さが50kPa以上であることで、エアフィルタ1の使用中に、濾材2が風圧を受け続けることで、介在層8と枠体4との間で剥離が生じ、隙間があくことを抑制することができる。このため、気体が濾材2を通過せずに下流側にリークすることを防止できる。
【0024】
介在層8が接着される枠体4の壁面4aの算術平均粗さRaは0~0.3μmであることが好ましい。本明細書において、算術平均粗さRaとは、接触式表面粗さ測定機を用いて、JIS B0601:2001に準拠して測定される算術平均粗さRaをいう。算術平均粗さRaが上記範囲にあることで、エアフィルタ1の解体時に、介在層8と枠体4の間で剥離させやすく、エアフィルタ1の使用中に、介在層8と枠体4との間に隙間があくことを抑制する効果が向上する。
【0025】
介在層8は、ウレタン系樹脂を主成分として含む塗料からなる塗布膜(塗膜)であることが好ましい。このような塗料を用いることで、介在層8の枠体4に対する接着強さが、介在層8のシール層6に対する接着強さよりも小さい塗布膜が得られやすい。ウレタン系樹脂は、例えば、ポリウレタン、又はウレタン系共重合体である。上記塗料は、水性溶媒を有するものであってもよく、有機溶剤を有するものであってもよいが、揮発性有機化合物の含有量が少ない点で、水性溶媒を有するものであることが好ましい。上記塗料の粘度は、シール層6となるシール剤よりも小さく、常温で5000~7000mPa・sである。上記塗料は、ウレタン系樹脂を、水性溶媒又は有機溶剤に分散させることで作製することができる。また、上記塗料は、平泉洋行社製「ハイ-メックス」6500シリーズの「6501」、「6502」、「6503」として入手することができる。
【0026】
介在層8の厚さは、5~1000μmであることが好ましい。介在層8の厚さがこの範囲にあることで、介在層8の枠体4に対する接着強さを、介在層8のシール層6に対する接着強さよりも小さくする効果が向上する。
【0027】
なお、枠体4の側部45、47と向かい合う濾材2の部分は、鉛直方向に線状に延びるよう設けたシール剤によって、側部45,47との間でシールされることが好ましい。この場合、枠体4の側部45、47と濾材2とは、接触面積が小さいため、エアフィルタ1の解体時に、濾材2が枠体4に残り難い。一実施形態によれば、エアフィルタ1が、例えば後述する中性能フィルタである場合に、枠体4の側部45、47と濾材2とは接着されていなくてもよい。
【0028】
エアフィルタ1は、例えば、中性能フィルタあるいはHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタの性能を有している。中性能フィルタは、主として粒径が5μmより小さい粒子に対して中程度の粒子捕集率をもつエアフィルタであって、光散乱光量積算方式(比色法)で50~95%の捕集効率、あるいは計数法(粒径0.4μm、0.7μm)で5~90%の捕集効率を有するエアフィルである。HEPAフィルタは、定格風量で粒径0.3μmの粒子に対して99.97%以上の捕集効率を有し、かつ初期の圧力損失が245Pa以下であるフィルタである。
【0029】
以下、図2を参照して、エアフィルタ1の組み立て方の一例を説明する。
エアフィルタ1を組み立てる前に、濾材2にプリーツ加工を施し、濾材2の山折り、谷折りされた部分の内側にセパレータ3を挿入することで、フィルタパックを作製する。作製したフィルタパックの左右の側部をなす濾材2と、枠体4の側部45、47とをシール剤を用いて接着し、フィルタパック組立体10を作製する。
次いで、枠体4の底部43の壁面4a(壁部43aで囲まれた空間の底面)に、介在層8となる塗料を塗布し、これを乾燥、固化させ、塗布膜を形成する。塗布膜が形成された後、フィルタパック組立体10を、底部43の気流方向Xの一方の端(気流方向Xと直交する方向に延びる底部43の縁)に仮固定する。仮固定された状態では、フィルタパック組立体10は、底部43に対し、気流方向Xと直交する方向に位置決めされるとともに、底部43の気流方向Xの一方の端を回動中心として、回動可能である。このような仮固定は、例えば、フィルタパック組立体10と底部43とを仮組することにより、あるいは、側部45、57と底部43とが互いに向き合う部分に設けられた嵌合構造によって行うことができる。上記嵌合構造の具体例として、特開平11-290632号公報に記載された、ガイド溝5b、及びガイド溝5bと嵌め合わされるガイド板8が挙げられる。
フィルタパック組立体10を底部43に仮固定した後、塗布膜の上面に、壁部43aで囲まれた空間内にシール層6となるシール剤を流し込み、フィルタパック組立体10を回動させて、濾材2及びセパレータ3の下端部をシール剤に浸漬させる。この状態で、シール剤を乾燥、固化させることで、シール層6が形成されるとともに、フィルタパック組立体10が枠体4の底部43に固定される。
次いで、底部43に塗布膜を形成したのと同じ要領で、天井部41に塗布膜を形成するとともに、底部43に固定されたフィルタパック組立体10を上下逆にして、天井部41に仮固定する。そして、上記要領で、シール剤を流し込み、濾材2及びセパレータ3をシール剤に浸漬し、シール剤を乾燥、固化させることで、シール層6を形成するとともに、フィルタパック組立体10を天井部41に固定する。その後、必要に応じて、側部45、47と、天井部41、底部43とをビス留め等により固定し、エアフィルタ1を完成させる。
【0030】
エアフィルタ1は、ガスタービンの給気側のスペースや、ビル、工場等の建物の中に設けられたダクト又は空調室、に設けられた取付枠等に取り付けられ、通風することで使用される。エアフィルタ1は、使用に伴って、濾材2に捕集された塵埃が堆積することにより、圧力損失が上昇する。圧力損失が所定の上限値に達したエアフィルタ1は、新たな濾材2と交換するために、取り外され、解体される。解体は、例えば、取付枠から取り外したエアフィルタ1の濾材2を掴んで枠体4から引き剥がすようにして行うことができる。このとき、介在層8の枠体4に対する接着強さは、シール層6に対する接着強さよりも小さいため、介在層8と枠体4との間で剥離が起きやすく、濾材2及びシール層6が枠体4に接着し、残ってしまうことを抑制できる。このように、本実施形態のエアフィルタ1は、濾材2と枠体4とを分別することが容易であるとともに、介在層8が枠体4に残らないため、枠体4の再利用が容易である。
【0031】
(実施例)
ガラス繊維からなる不織布にプリーツ加工を施し、山折り、谷折りされた部分の内側にアルミニウム製のセパレータを配置し、フィルタパックを作製した。そして、フィルタパックの両側部をなす濾材2の部分と、溶融亜鉛めっき鋼板からなる枠体4の側部45、47とを、線状に塗布したウレタン系接着剤によって接着し、フィルタパック組立体10を作製した。一方、枠体4の底部43の壁面4aに、水性のウレタン系塗料(平泉洋行社製「ハイ-メックス6501」)を刷毛塗りによって塗布し、乾燥、固化させ、厚さ約30μmの介在層8を形成した。乾燥は、常温で2時間、静置することにより行った。次いで、底部43に、フィルタパック組立体10を仮固定し、壁部43aで囲まれた空間内に介在層8の上に、ウレタン系シール剤(H&K社製「ハイアド2203」)を流し込み、濾材2及びセパレータ3の下端部を浸漬し、乾燥、固化させた。枠体4の天井部41に対しても同様に、底部43が固定されたフィルタパック組立体10を固定し、エアフィルタ1を作製した。エアフィルタ1のサイズは、縦594mm×横594mm×奥行き(気流方向Xの長さ)292mmであった。枠体4の天井部41、底部43の壁面の算術表面粗さRaは0~0.3μmの範囲内であった。
また、介在層8の枠体4に対する接着強さは90kPaであり、介在層8のシール層6に対する接着強さは100kPaを超えていた。
【0032】
作製したエアフィルタ1を、試験用のダクトに設けられた取付枠に取り付け、風量56m3/分で外気を180日間、通風させた後、枠体4と介在層8との剥離の有無を調べたが、枠体4と介在層8の間に剥離は見られなかった。
次に、エアフィルタ1を、濾材2及びセパレータ3を手で掴んで枠体4から引き剥がすように解体し、枠体4に残ったシール層6及び濾材2の有無を調べた。その結果、枠体4の天井部41及び底部43の壁面4aに、シール層6、濾材2及びセパレータ3は残っていなかった。
【0033】
(比較例)
枠体4の天井部41、底部43に介在層8を形成せず、直接シール層6を形成した点を除いて、実施例と同じ要領でエアフィルタを作製した。作製したエアフィルタを、実施例と同じ条件で通風させ、枠体4と介在層8との剥離の有無を調べたところ、剥離は見られなかった。一方、実施例と同じ要領でエアフィルタを解体した場合に、枠体4の天井部41及び底部43の壁面4aの全ての領域に、シール層6、濾材2及びセパレータ3が残っていた。
【0034】
以上、本発明のエアフィルタについて詳細に説明したが、本発明のエアフィルタは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0035】
1 エアフィルタ
2 濾材
3 セパレータ
4 枠体
4a 壁面
5 通気路
6 シール層
6a シール剤
8 接着層
10 フィルタパック組立体
41 枠体の天井部
43 枠体の底部
43a 底部の壁部
45、47 枠体の側部
図1
図2
図3