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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】作業車輌
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20220405BHJP
   B60K 20/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B60K20/02 Z
B60K20/02 D
B60K20/00 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017120465
(22)【出願日】2017-06-20
(65)【公開番号】P2019006135
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢藤 博隆
(72)【発明者】
【氏名】内田 恵三
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-171386(JP,A)
【文献】特開平10-234218(JP,A)
【文献】特開2013-49328(JP,A)
【文献】特開平11-332331(JP,A)
【文献】特開2003-291677(JP,A)
【文献】特開2004-224121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
B60K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの動力を無段階に変速して出力する無段変速機構と、前記無段変速機構を操作する主変速レバーと、前記無段変速機構を前進側に出力状態とする前進範囲位置、後進側に出力状態とする後進範囲位置及び非出力状態とする中立位置に前記主変速レバーを案内するガイド溝が設けられたレバーガイドと、を備えた作業車輌において、
前記主変速レバーが前記中立位置に位置することを検出する中立検出スイッチと、
前記主変速レバーが前記後進範囲位置に位置することを検出する後進検出スイッチと、
前記主変速レバーを付勢する付勢部と、
前記後進検出スイッチと前記主変速レバーの間に介在し、前記主変速レバーの移動に応じて移動可能なスイッチ操作部材と、を備え、
前記主変速レバーは、前記レバーガイドの下方に位置する回動軸を中心に揺動可能に構成されており、
前記付勢部は、前記主変速レバーが前記中立位置に位置する際に、前記回動軸を中心に揺動可能な前記主変速レバーを前記中立検出スイッチに向けて付勢方向に付勢し、
前記中立検出スイッチは、前記レバーガイドの上面側に配置されると共に前記中立位置に位置する前記主変速レバーに対して前記付勢方向における下流に配置され
前記後進検出スイッチは、前記レバーガイドの下面側に配置され、
前記スイッチ操作部材は、前記レバーガイドの下面側に配置されると共に前記中立位置に位置する前記主変速レバーに対して前記付勢方向における下流に配置され、前記主変速レバーが前記中立位置から前記後進範囲位置に移動する際に、前記後進検出スイッチをオン操作するように移動し、かつ前記主変速レバーが前記後進範囲位置から前記中立位置に移動する際に、前記後進検出スイッチをオフ操作するように移動してなる、
ことを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記主変速レバーに固定され、前記中立検出スイッチ及び前記スイッチ操作部材に当接可能なブラケットを備え、
前記ブラケットは、前記レバーガイドの前記ガイド溝に形成された複数のノッチに係合して前記主変速レバーを位置決め可能な凹部を有してなる、
請求項に記載の作業車輌。
【請求項3】
前記エンジンは、前記中立検出スイッチがオン状態において、始動が許容されると共に、稼働状態を維持可能である、
請求項1又は2に記載の作業車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車輌に係り、詳しくは、無段変速機構を操作する主変速レバー及び主変速レバーを案内するレバーガイドを備えた作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラクタ等の作業車輌は、主変速装置及び副変速装置を有しており、主変速装置としては、減速比を段階的に切換える多段変速装置や減速比を無段階に切換える無段変速装置がある。トラクタにおいては、多段変速装置として複数のギヤを有するギヤ変速装置が知られており、無段変速装置として油圧ポンプ及び油圧モータを有する静油圧式無段変速装置(以下、HSTとする)が知られている。
【0003】
従来、チェンジレバーを操作することで主変速装置としてのギヤ変速装置を操作するトラクタが提案されている(特許文献1参照)。チェンジレバーは、略H字状に形成されたガイド溝を有するレバーガイドによって案内され、チェンジレバーが後進域に操作されると後進検出スイッチがオンとなる。後進検出スイッチがオンとなると、作業機が自動的に上昇するように制御装置が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3070069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、部品をモジュール化することによって装置をコストダウンする要望が高まっている。上記特許文献1に記載のトラクタは、ギヤ変速装置を有し、チェンジレバーの後進域を後進検出スイッチによって検出している。一方で、主変速装置として例えばHSTを用いた場合には、HSTのトラニオン軸には主変速レバーが接続され、主変速レバーによってHSTを前進状態、後進状態及び中立状態のいずれかに操作する。そして、主変速レバーの角度をポテンショメータによって検出することで、主変速レバーが前進域、後進域及び中立域のいずれかに位置するかを検出する。
【0006】
すなわち、主変速装置としてギヤ変速装置を採用するかHSTを採用するかによって、レバーを検出するセンサがスイッチとなるかポテンショメータとなるかが変わってしまい、制御装置のプログラム自体もそれぞれ別に設計する必要がある。このため、主変速装置の構成に応じてトラクタの制御装置やセンサを別途用意しなくてはならなくなり、コストアップの要因となってしまっていた。
【0007】
そこで、本発明は、無段変速機構を操作する主変速レバーの後進範囲位置及び中立位置をスイッチによって検出可能に構成し、もって上述した課題を解決した作業車輌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エンジン(E)からの動力を無段階に変速して出力する無段変速機構(13)と、前記無段変速機構(13)を操作する主変速レバー(20)と、前記無段変速機構(13)を前進側に出力状態とする前進範囲位置、後進側に出力状態とする後進範囲位置及び非出力状態とする中立位置に前記主変速レバー(20)を案内するガイド溝(16)が設けられたレバーガイド(17)と、を備えた作業車輌(1)において、
前記主変速レバー(20)が前記中立位置に位置することを検出する中立検出スイッチ(49)と、
前記主変速レバー(20)が前記後進範囲位置に位置することを検出する後進検出スイッチ(51)と、
前記主変速レバー(20)を付勢する付勢部(33)と、
前記後進検出スイッチ(51)と前記主変速レバー(20)の間に介在し、前記主変速レバー(20)の移動に応じて移動可能なスイッチ操作部材(52)と、を備え、
前記主変速レバー(20)は、前記レバーガイド(17)の下方に位置する回動軸(31)を中心に揺動可能に構成されており、
前記付勢部(33)は、前記主変速レバー(20)が前記中立位置に位置する際に、前記回動軸(31)を中心に揺動可能な前記主変速レバー(20)を前記中立検出スイッチ(49)に向けて付勢方向に付勢し、
前記中立検出スイッチ(49)は、前記レバーガイド(17)の上面側に配置されると共に前記中立位置に位置する前記主変速レバー(20)に対して前記付勢方向における下流に配置され
前記後進検出スイッチ(51)は、前記レバーガイド(17)の下面側に配置され、
前記スイッチ操作部材(52)は、前記レバーガイド(17)の下面側に配置されると共に前記中立位置に位置する前記主変速レバー(20)に対して前記付勢方向における下流に配置され、前記主変速レバー(20)が前記中立位置から前記後進範囲位置に移動する際に、前記後進検出スイッチ(51)をオン操作するように移動し、かつ前記主変速レバー(20)が前記後進範囲位置から前記中立位置に移動する際に、前記後進検出スイッチ(51)をオフ操作するように移動してなる、
ことを特徴とする。
【0011】
例えば図6及び図7を参照して、前記主変速レバー(20)に固定され、前記中立検出スイッチ(49)及び前記スイッチ操作部材(52)に当接可能なブラケット(60)を備え、
前記ブラケット(60)は、前記レバーガイド(17)の前記ガイド溝(16)に形成された複数のノッチ(35)に係合して前記主変速レバー(20)を位置決め可能な凹部(65)を有してなる。
前記エンジン(E)は、前記中立検出スイッチ(49)がオン状態において、始動が許容されると共に、稼働状態を維持可能である。
【0012】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明は、無段変速装置を備えつつ主変速レバーの後進範囲位置及び中立位置の検出をポテンショメータではなくオン/オフ操作されるスイッチで構成したので、例えば主変速装置としてギヤ変速機構を用いた作業車輌に対して中立検出スイッチ、後進検出スイッチ及び制御部をモジュール化することができ、コストダウンすることができる。また、中立検出スイッチ及び後進検出スイッチをレバーガイドの上面側及び下面側のいずれか一方及びいずれか他方に振り分けて配置したので、レバーガイド周りの主変速レバーの検出構成をコンパクトに構成できる。
【0014】
また、中立検出スイッチをレバーガイドの上面側に配置したので、主変速レバー20の回動量が大きい部分で中立検出スイッチ49をオン/オフ操作することができ、中立検出スイッチ49の検出精度を向上することができる。
【0015】
また、後進検出スイッチのオン/オフ操作を、主変速レバーの移動に応じて移動可能なスイッチ操作部材によって行うので、主変速レバーが後進範囲位置のどこに位置したとしても後進検出スイッチをオンのまま維持することができる。
【0016】
請求項に係る本発明は、主変速レバーに固定されたブラケットが、中立検出スイッチのオン/オフ操作、スイッチ操作部材の移動、及び主変速レバーの位置決めの3つの機能を有しているので、部品点数を少なくかつコンパクトに構成することができると共に、操作誤差を少なく構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係るトラクタを示す斜視図。
図2】主変速レバー、レバーガイド及びガイドカバーを示す斜視図。
図3】主変速レバー、レバーガイド及び連繋機構を示す側面図。
図4】その上方側からの斜視図。
図5】その下方側からの斜視図。
図6】主変速レバー及びブラケットを示す斜視図。
図7】レバーガイドの形状を示す平面図。
図8】主変速レバーが中立位置に位置する状態を示す底面図。
図9】主変速レバーが中立位置から前進範囲位置に操作された状態を示す平面図。
図10】主変速レバーが中立位置から前進範囲位置に操作された状態を示す底面図。
図11】主変速レバーが中立位置から後進範囲位置に操作された状態を示す平面図。
図12】主変速レバーが中立位置から後進範囲位置に操作された状態を示す底面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係るトラクタ1(作業車輌)は、図1に示すように、前輪2及び後輪3により支持される走行機体5と、該走行機体5の後部に昇降自在に連結されたロータリ耕耘装置等の作業機(不図示)と、を備え、走行機体5を前進走行させながら、作業機によって耕耘作業等の各種作業を行なう。
【0019】
走行機体5は、前後方向に延びる金属製の車台6を備えており、該車台6の前部には、ディーゼルエンジンからなるエンジンEが載置されている。エンジンEを内装するエンジンルームは、ボンネット7によって覆われており、ボンネット7の後方には、運転操作部9が配設されている。上記運転操作部9には、操向用の操向ハンドル10と、後輪3を覆う左右のフェンダーフレーム11,11の間に配設された座席12と、が設けられており、座席12の後方には、安全フレーム14が取り付けられている。また、運転操作部9の下方には、エンジンEからの動力を変速して後輪3のみ若しくは前輪2及び後輪3に向けて伝達する変速装置Tが配置されている。なお、以下では、座席12に着座した作業者の視点から視て、前後方向、左右方向及び上下方向を規定している。
【0020】
変速装置Tは、エンジンEの出力回転を変速する主変速装置であるHST(静油圧式無段変速装置、無段変速機構)13(図3参照)と、HST13の出力回転を変速する不図示の副変速装置と、を有している。HST13は、エンジンEの出力回転を、図2に示すように、HST13に設けられたトラニオン軸15の回動位置に応じて無段変速し、変速した回転を副変速装置に伝達する。
【0021】
操向ハンドル10の左方には、図1及び図2に示すように、略クランク形状のガイド溝16が形成されたレバーガイド17と、レバーガイド17を上方から覆うと共にガイド溝16に沿った孔19aが形成されたガイドカバー19と、ガイド溝16及び孔19aに貫通して下方から上方に延びる主変速レバー20と、が設けられている。
【0022】
主変速レバー20は、後述するように、レバーガイド17のガイド溝16によって、前進範囲位置、中立位置及び後進範囲位置に案内されるが、レバーガイド17は、主変速レバー20の前進側への移動を規制可能な規制レバー21を前後方向に移動可能に支持している。規制レバー21には、ノブ21aが一体に設けられており、作業者がノブ21aを前後方向に移動させることで、規制レバー21によって規制する主変速レバー20の前進側の上限位置を調整することができる。作業者が例えば低速での前進走行が好ましい作業を行う際には、規制レバー21によって主変速レバー20の前進側の上限位置を制限することで、不意に高速域に主変速レバー20が移動することが無く、安全性及び作業性を向上することができる。
【0023】
主変速レバー20は、図2乃至図5に示すように、連繋機構22を介してHST13のトラニオン軸15に接続されており、主変速レバー20を前後方向に回動させることでトラニオン軸15が回動し、HST13がエンジンEの出力回転をトラニオン軸15の回動位置に応じて無段変速するようになっている。連繋機構22は、主変速レバー20が固定される第1リンク部23と、第1回動軸25を介して第1リンク部23に接続される第2リンク部26と、第2回動軸27を介して一端が第2リンク部26に接続されると共に他端がトラニオン軸15に接続される第3リンク部29と、を有している。
【0024】
第2リンク部26は、第1回動軸25及び第2回動軸27との間を連繋する3節リンクとなっており、第3リンク部29は、第2回動軸27とトラニオン軸15との間を連繋する4節リンクとなっている。第1リンク部23は、第1回動軸25に回動可能に支持されるベース部材30と、第1回動軸25の軸方向に対して直交する方向に延びる第3回動軸31を中心にベース部材30に回動可能に支持されるアーム部材32と、を有しており、アーム部材32には、主変速レバー20が固定されている。なお、第1回動軸25、第2回動軸27及びトラニオン軸15は、左右方向に延びている。
【0025】
図3及び図5に示すように、ベース部材30及びアーム部材32には、第1バネ取付けプレート30a及び第2バネ取付けプレート32aがそれぞれ固定されており、これら第1バネ取付けプレート30a及び第2バネ取付けプレート32aには、引っ張りバネ33が張設されている。これにより、アーム部材32及びアーム部材32に固定された主変速レバー20は、第3回動軸31を中心に左方向(矢印L方向)に付勢されている。すなわち、主変速レバー20は、レバーガイド17のガイド溝16に形成される複数のノッチ35側に付勢されている。
【0026】
よって、主変速レバー20は、自然状態でレバーガイド17の複数のノッチ35に向けて左方(矢印L方向)に付勢されていると共に、作業者によって前後方向に操作されることで、連繋機構22を構成する第1リンク部23、第2リンク部26及び第3リンク部29を介してトラニオン軸15を回動させるように構成されている。
【0027】
レバーガイド17は、図3及び図4に示すように、前後方向に長い略矩形状に形成されており、左側のフェンダーフレーム11(図1参照)に取り付けられている。また、レバーガイド17は、フェンダーフレーム11に取り付けるための取付け面41,42が前端及び後端に設けられており、これら取付け面41,42の間には、前進案内面43(第2平面)と、センサ取付け面45(第1平面)と、後進案内面46(第3平面)と、が形成されている。そして、これら取付け面41,42、前進案内面43、センサ取付け面45及び後進案内面46は、それぞれの境界部分で曲げ加工されて1枚の鉄板から形成されており、容易に加工することができる。
【0028】
より具体的には、前進案内面43は、センサ取付け面45の前側に接続されてセンサ取付け面45に対して折曲されており、後進案内面46は、センサ取付け面45の後側に接続されてセンサ取付け面45に対して折曲されている。また、レバーガイド17は、ガイドカバー19(図1及び図2参照)の湾曲形状に沿って曲げ加工されており、コンパクトにガイドカバー19内に収められている。
【0029】
センサ取付け面45の上面には、プレート部材47を介してリミットスイッチからなる中立検出スイッチ49が固定されており、センサ取付け面45の下面には、補助ブラケット50が取り付けられている。中立検出スイッチ49は、レバーガイド17とガイドカバー19との間に配置されている。補助ブラケット50は、図3及び図5に示すように、L字状に折曲加工されて規制面50a及び取付け面50bを有しており、センサ取付け面45と後進案内面46の下面に跨って取り付けられている。
【0030】
補助ブラケット50の取付け面50bには、リミットスイッチからなる後進検出スイッチ51と、コ字状のスイッチ操作部材52と、が取り付けられている。すなわち、レバーガイド17の上面側には中立検出スイッチ49が配置され、下面側には後進検出スイッチ51が配置されており、これら中立検出スイッチ49及び後進検出スイッチ51から出力された信号は、信号線を介して制御部100(図1参照)に伝達される。
【0031】
これら後進検出スイッチ51及びスイッチ操作部材52は、ガイド溝16に対して複数のノッチ35が位置する側、すなわち左側に設けられている。スイッチ操作部材52は、回動軸53を中心に回動可能に補助ブラケット50に対して支持されており、主変速レバー20が中立位置と後進範囲位置との間で移動する際に、主変速レバー20に固定されたブラケット60(図6参照)によって押圧されることで回動する。そして、スイッチ操作部材52は、後進検出スイッチ51をオフとするオフ位置(図8及び図10に示す位置)と、後進検出スイッチ51をオンとするオン位置(図12に示す位置)と、の間で回動可能となっている。すなわち、スイッチ操作部材52は、後進検出スイッチ51と主変速レバー20との間に介在し主変速レバー20の移動に応じて移動可能である。
【0032】
なお、図3に示すように、スイッチ操作部材52は、上方に延びるストッパピン54を有しており、ストッパピン54が補助ブラケット50の規制面50aに突き当たることで、スイッチ操作部材52の回動角度が制限されている。具体的には、主変速レバー20が中立位置から前進範囲位置に向けて操作される際に、スイッチ操作部材52がオフ位置を超えて前進側に連れ回ってしまって異常に回動しないように、スイッチ操作部材52の回動角度が制限されている。また、主変速レバー20が中立位置から後進範囲位置に向けて操作される際に、スイッチ操作部材52が後進検出スイッチ51の検出フラグ51aを押し込みすぎないように、スイッチ操作部材52の回動角度が制限されている。これにより、後進検出スイッチ51の破損を防止することができる。また、スイッチ操作部材52の回動軸53には、ダブルナット55が螺合されており、ダブルナット55の位置を調整することでスイッチ操作部材52の動きやすさを調整することができる。
【0033】
ここで、図6を参照して主変速レバー20及びブラケット60について説明する。主変速レバー20は、ガイドカバー19の上方に露出し作業者が把持可能な把持部20aと、把持部20aから下方に延び、ガイドカバー19の孔19a及びレバーガイド17のガイド溝16を貫通するアーム部20bと、を有している。アーム部20bには、ブラケット60が固定されており、ブラケット60は、上部及び下部がそれぞれ折曲加工されてL字状に形成されている。
【0034】
ブラケット60の上部に形成された第1押圧面61は、レバーガイド17の上側に配置された中立検出スイッチ49を押圧操作可能に構成されている。ブラケット60の下部には、上記スイッチ操作部材52の第1当接部71(図8参照)を押圧可能(当接可能)な押圧端部62と、上記スイッチ操作部材52の第2当接部72(図8参照)を押圧可能な第2押圧面63と、が形成されている。第1当接部71及び第2当接部72は、互いに対向して形成されており、押圧端部62及び第2押圧面63は、第1当接部71及び第2当接部72を押圧可能な押圧部160を構成している。
【0035】
ブラケット60の第2押圧面63の上方には、左右方向に切り欠かれた凹部65が形成されており、凹部65は、レバーガイド17のガイド溝16に係合及び摺接可能に構成されている。上述したように、レバーガイド17は、図5に示すように、それぞれ平面形状の取付け面41,42、前進案内面43、センサ取付け面45及び後進案内面46によって構成されており、取付け面41、前進案内面43、センサ取付け面45及び後進案内面46に亘ってガイド溝16が形成されている。このため、第1回動軸25を中心に前後方向に回動する主変速レバー20に固定されたブラケット60の凹部65は、これら取付け面41、前進案内面43、センサ取付け面45及び後進案内面46に形成されたガイド溝16に対して接触箇所が一定とならない。このため、ブラケット60が摩耗しにくく、耐久性を向上することができる。なお、凹部65は、取付け面41、前進案内面43、センサ取付け面45及び後進案内面46に形成されたガイド溝16に摺動可能となるように、上下方向に幅広に形成されている。
【0036】
次に図7を参照して、レバーガイド17のガイド溝16の形状について説明する。ガイド溝16は、図7に示すように、前進範囲位置に位置する主変速レバー20を案内する前進側領域Fと、後進範囲位置に位置する主変速レバー20を案内する後進側領域Rと、前進側領域Fと後進側領域Rとの間の中立領域Nと、を有している。後進側領域Rにおけるガイド溝は、前進側領域Fにおけるガイド溝に対して、左右方向における一方側である左側にずれて形成されており、前進側領域F及び後進側領域Rにおけるガイド溝16は、前後方向に沿って延びている。すなわち、ガイド溝16は、全体でクランク形状に形成されている。
【0037】
主変速レバー20が前進側領域F内に位置している際には、HST13(図3参照)は前進側に出力状態となっており、主変速レバー20が前方へ傾けられるほど高速側に無段階で変速される。主変速レバー20が後進側領域R内に位置している際には、HST13は後進側に出力状態となっており、主変速レバー20が後方へ傾けられるほど高速側に無段階で変速される。主変速レバー20が中立領域N内に位置している際には、HST13は非出力状態となる。以下、前進案内面43、センサ取付け面45及び後進案内面46に形成されたガイド溝を、それぞれガイド溝16A,16B,16Cとする。
【0038】
レバーガイド17の前進案内面43及び後進案内面46のガイド溝16A,16Cは、それぞれ前進側領域F及び後進側領域Rに位置しており、またブラケット60の凹部65が係合することで複数の位置で主変速レバー20を位置決め可能となるように、左側にそれぞれ複数のノッチ35が形成されている。
【0039】
複数のノッチ35は、のこぎり刃状に形成されており、主変速レバー20を前後方向に操作する際に、低速側から高速側への操作は許容し高速側から低速側への操作は許容しないように構成されている。すなわち、主変速レバー20は、引っ張りバネ33(図5参照)によって左側(複数のノッチ35側)に付勢されているが、高速側に主変速レバー20を操作する際には、複数のノッチ35にブラケット60の凹部65(図6参照)が摺接しながら、作業者は自然な感覚で前後方向に主変速レバー20を操作すればHST13を変速させることができる。主変速レバー20を高速側から低速側へ操作する際には、作業者は、引張りバネ33の付勢力に抗して主変速レバー20を右側に倒しながら主変速レバー20を前後方向に操作する必要がある。
【0040】
他方、レバーガイド17のセンサ取付け面45のガイド溝16Bは、ブラケット60の凹部65が係合することで主変速レバー20を中立位置に位置決め可能となるように、中立位置決めノッチ80が形成されていると共に、中立領域Nだけでなく前進側領域F及び後進側領域Rの一部(それぞれ低速側)に含まれている。
【0041】
このため、センサ取付け面45のガイド溝16Bは、前進範囲位置及び後進範囲位置の一部(中立位置に近い側)に位置する主変速レバー20を案内可能に形成されており、また中立位置決めノッチ80以外のノッチが形成されていない非ノッチ領域を構成している。このため、センサ取付け面45のガイド溝16Bが主変速レバー20を案内する領域では、中立位置決めノッチ80以外で主変速レバー20を位置決めすることがなく、前進、中立及び後進といった変速の変わり目での操作性を向上することができる。
【0042】
また、センサ取付け面45のガイド溝16Bは、段部81と、段部81及び中立位置決めノッチ80の後方に設けられる傾斜面82,83を有している。段部81は、前進範囲位置から後方に向けて操作された主変速レバー20に突き当たり、主変速レバー20が前進範囲位置からいきなり後進範囲位置へ操作されることを防止するので、安全性を向上できる。また、中立位置決めノッチ80に連続して傾斜面82が形成されているため、主変速レバー20を中立位置から後進範囲位置に向けて引っ掛かりなく自然な感覚で操作することができ、操作性を向上することができる。傾斜面82,83は、左右方向及び前後方向に対して傾斜するように主変速レバー20を中立位置と後進範囲位置との間で案内可能な傾斜部84を構成している。
【0043】
次に、主変速レバー20の回動操作に伴う中立検出スイッチ49及び後進検出スイッチ51の動作について説明する。図7に示すように、ブラケット60の凹部65(図6参照)が中立位置決めノッチ80に係合し主変速レバー20が中立位置に位置決めされている状態では、ブラケット60の第1押圧面61が中立検出スイッチ49を押圧している。これにより、中立検出スイッチ49はオンとなり、制御部100(図1参照)にオン信号を出力する。制御部100は、該オン信号を受け取ることにより、エンジンEが始動することを許容する。すなわち、主変速レバー20が中立位置に位置していない限りはエンジンEの始動が規制されるので、エンジンEが始動してすぐにトラクタ1が前進又は後進することがなく、安全性を向上することができる。
【0044】
また、図8に示すように、主変速レバー20が中立位置に位置している状態では、ブラケット60は、オフ位置に位置するスイッチ操作部材52の第1当接部71と第2当接部72との間に入り込んだ状態となっている。この時、スイッチ操作部材52の後進検出スイッチ51に対向するスイッチ押圧面73は、後進検出スイッチ51の検出フラグ51aに対して離間している。このため、後進検出スイッチ51はオフとなっている。
【0045】
次いで、図9に示すように、作業者が主変速レバー20を中立位置から前進範囲位置に移動させる際には、まず主変速レバー20を引っ張りバネ33(図5参照)の付勢力に抗して右方に移動させる。これにより、ブラケット60の凹部65が中立位置決めノッチ80から抜け、主変速レバー20を前方へ回動可能な状態とすることができる。また、主変速レバー20の右方への移動に伴って、ブラケット60の第1押圧面61が中立検出スイッチ49から離間し、中立検出スイッチ49がオンからオフとなる。
【0046】
図10に示すように、オフ位置に位置するスイッチ操作部材52の第2当接部72は、中立位置決めノッチ80と面一又は中立位置決めノッチ80より僅かに前方に配置されている。このため、主変速レバー20が右方に移動する際には、ブラケット60の第2押圧面63がスイッチ操作部材52の第2当接部72を前方に押圧することは無い。したがって、主変速レバー20が中立位置から前進範囲位置に操作されても、スイッチ操作部材52はオフ位置のまま移動せず、後進検出スイッチ51はオフのままとなる。よって、主変速レバー20が前進範囲位置に位置する際には、中立検出スイッチ49及び後進検出スイッチ51はオフとなる。
【0047】
次いで、図11に示すように、作業者が主変速レバー20を中立位置から後進範囲位置に移動させる際には、主変速レバー20を僅かに右方へ移動させつつ後方に移動させる。このとき、中立位置決めノッチ80に連続して傾斜面82が形成されているため、作業者はほとんど主変速レバー20を右方に移動させる必要は無く、自然な感覚で主変速レバー20を後方に操作するだけで主変速レバー20に固定されたブラケット60の凹部65が傾斜面82に摺接し、主変速レバー20を後進範囲位置に移動させることができる。これにより、主変速レバー20の後進操作をフィーリング良く行うことができる。また、ブラケット60の凹部65が中立位置決めノッチ80から傾斜面82に差し掛かる過程で、主変速レバー20が右方に移動するため、ブラケット60の第1押圧面61が中立検出スイッチ49から離間し、中立検出スイッチ49がオンからオフとなる。
【0048】
図12に示すように、ブラケット60の凹部65が傾斜面82に摺接しながら主変速レバー20が傾斜部84を移動する際、すなわち、主変速レバー20が中立位置から後進範囲位置に移り変わる際には、ブラケット60の押圧端部62がスイッチ操作部材52の第1当接部71を押圧し、スイッチ操作部材52が後方に回動する。スイッチ操作部材52が後方に回動してオン位置に位置する際に、スイッチ操作部材52のスイッチ押圧面73が後進検出スイッチ51の検出フラグ51aを押圧することで、後進検出スイッチ51がオン操作される。後進検出スイッチ51のオン信号を制御部100が受け取ることにより、制御部100は、トラクタ1の走行機体5の後方に接続された作業機を上昇させるように不図示の昇降シリンダを制御する。
【0049】
なお、第1当接部71は、ブラケット60が後方に折曲されることで形成されており、主変速レバー20のアーム部20b(図6参照)に対して後方にオフセットしている。このオフセット量は、主変速レバー20が中立位置から後進範囲位置に入ってすぐに後進検出スイッチ51がオンとなるように設定されている。これにより、主変速レバー20が後進範囲位置に位置してHST13の出力回転が後進状態となったのとほぼ同時に、作業機の上昇制御を行うことができ、作業機の破損等を防止することができる。
【0050】
また、主変速レバー20を後進範囲位置から中立位置に移動操作する際には、傾斜部84においてブラケット60の第2押圧面63がスイッチ操作部材52を前方に押圧し、スイッチ操作部材52をオフ位置に位置させる。これにより、スイッチ操作部材52のスイッチ押圧面73が後進検出スイッチ51の検出フラグ51aから離間し、後進検出スイッチ51がオフ操作される。なお、スイッチ操作部材52は、検出フラグ51aの弾性力によって前方に回動しないように、上述したダブルナット55(図3参照)を操作されることで滑りやすさが調整される。このため、主変速レバー20が後進範囲位置の高速側に位置している状態では、スイッチ操作部材52の第1当接部71からブラケット60の押圧端部62が外れるが、スイッチ操作部材52はオン位置に位置したままとなり、後進検出スイッチ51はオンのまま維持される。すなわち、主変速レバー20が後進範囲位置のどこに位置したとしても後進検出スイッチ51をオンのまま維持することができる。
【0051】
また、傾斜面82は、前後方向及び左右方向に対して傾斜しており、かつ主変速レバー20が引っ張りバネ33(図5参照)によって左方に付勢されているため、傾斜面82にノッチが形成されていないことと相まって、作業者が傾斜部84において主変速レバー20から手を離したとしても、引っ張りバネ33の付勢力によって自動的に中立位置に位置するように構成されている。このため、主変速レバー20が傾斜部84に置き残されることを低減し、後進検出スイッチ51のオン/オフの検知状態が振動等によって簡単に切り替わらず、作業機や昇降シリンダの破損を防止することができる。
【0052】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、主変速装置をHST13によって構成し、HST13のトラニオン軸15を主変速レバー20を操作することによって回動させ、無段階に変速できる。そして、主変速レバー20の中立位置及び後進範囲位置を、ポテンショメータではなくリミットスイッチからなる中立検出スイッチ49及び後進検出スイッチ51によって検出するので、主変速装置としてギヤ変速装置を用いたトラクタと部品をモジュール化することができる。具体的には、中立検出スイッチ49、後進検出スイッチ51及び制御部100の制御プログラム等をモジュール化でき、コストダウンすることができる。
【0053】
また、主変速レバー20の前後方向の回動軸である第1回動軸25から遠いレバーガイド17の上面側に中立検出スイッチ49を配置しているので、主変速レバー20の回動量が大きい部分で中立検出スイッチ49をオン/オフ操作することができ、中立検出スイッチ49の検出精度を向上することができる。さらに、主変速レバー20に固定されたブラケット60が、中立検出スイッチ49をオン/オフ操作する第1押圧面61と、中立位置決めノッチ80に係合する凹部65と、を有しているので、同一部材で主変速レバー20の中立位置保持及び中立検出スイッチ49の操作を行うため、部品交差が少なく、主変速レバー20の中立位置を精度良く検知することができる。
【0054】
また、ブラケット60は、第1押圧面61及び凹部65に加えて、スイッチ操作部材52を押圧可能な押圧部を有しているので、中立検出スイッチ49、スイッチ操作部材52、後進検出スイッチ51及びブラケット60をコンパクトかつ操作誤差を少なく構成することができ、また部品点数を少なくしてコストダウンすることができる。
【0055】
また、レバーガイド17を曲げ加工することで前進案内面43、センサ取付け面45及び後進案内面46を形成したので、レバーガイド17を簡易に構成することができると共に、平面であるセンサ取付け面45に中立検出スイッチ49及び後進検出スイッチ51を配置し、曲面よりも安定してこれらのセンサを取付けすることができる。
【0056】
なお、スイッチ操作部材52は、コ字状に限らず、L字状等の他の形状でもよい。
【0057】
また、中立検出スイッチ49をレバーガイド17の下面側に、後進検出スイッチ51をレバーガイド17の上面側に配置してもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、主変速レバー20が中立位置に位置することでエンジンEの始動を許可し、主変速レバー20が後進範囲位置に位置することで作業機を上昇する制御を行ったが、これらの制御に限定されず、他の制御を行うように制御部100のプログラムを構成してもよい。
【0059】
また、本発明はトラクタに限らず、田植機やコンバイン等の他の作業車輌に対しても適応可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 作業車輌(トラクタ)
13 無段変速機構(HST)
16 ガイド溝
17 レバーガイド
20 主変速レバー
35 複数のノッチ
49 中立検出スイッチ
51 後進検出スイッチ
52 スイッチ操作部材
60 ブラケット
65 凹部
E エンジン

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12